11月18日付 鳴門わかめ偽装 何度やれば気が済むのか
県が原料原産地表示に鳴門産と記された県内外23社のワカメ加工30商品の成分分析をしたところ、県内2社、県外3社の計5商品に中国産のワカメが混入している疑いがあることが分かった。 鳴門わかめの産地偽装は2008年1月、09年7月、今年7月と3年続けて発覚し、信頼回復に向けて業界、行政挙げて対策に取り組んでいるところだった。まだ疑惑の段階とはいえ、食に対する国民の目は厳しくなっており、さらなるイメージダウンは避けられない。 偽装は消費者に対する裏切り行為である。モラルを欠いた業者がまだいることにがく然とさせられる。 鳴門わかめは、県内のワカメ関係者が長年にわたって育ててきた全国でもトップ級のブランドだ。にもかかわらず、こんな偽装が相次ぐのはブランドに対する認識があまりにも低すぎるからだろう。鳴門わかめの信頼を失いかねない問題である。 県は生産・加工業者ら関係団体と一体となって、偽装の動機や経過を徹底的に解明すべきだ。消費者の信頼を取り戻すのは並大抵ではないだろうが、地道に再発防止策を講じていくしかない。 業者にとっては、ブランドを扱うプロとしてのモラルが厳しく問われよう。 県は鳴門わかめ信頼確保緊急会議を開き、偽装の経過を報告して対応策を協議した。 今回の偽装は、県が5月と8月に県内の量販店や土産物店の商品を抜き打ち検査して発覚した。この方法は食の安全安心を確保するための強化策として本年度から導入したもので、早速一定の成果を挙げたことを評価したい。今後、さらに検査回数を増やすなど、監視態勢の強化を図ってほしい。 日本農林規格(JAS)法では、こうした科学的分析結果だけでは違反の根拠にならないという。しかし、伝票や取引書類など帳簿上で偽装が確認できなければ違法性が問えないというのは疑問だ。 DNA鑑定など科学的な検査方法は飛躍的に進歩している。それなのに今回、業者名や商品名を公表できず、消費者に不安を与えるものとなった。国はJAS法を早急に見直すべきである。 飯泉嘉門知事も記者会見で「JAS法に科学的な検証方法が取り入れられるよう国に提言する」と述べた。知事会などと連携し、法改正に向けて全力を挙げてもらいたい。 県は相次ぐ偽装に対応するため「食の安全・安心基本指針」の強化策を検討しており、来年7月にまとめる予定という。より実効性が上がる中身にしてほしい。 業者も鳴門わかめのブランドで販売するのなら、ブランド名をこれ以上傷つけてはならない。産地偽装などの行為はモラルの問題では済まず、悪質な場合は罪に問われることを肝に銘じるべきだ。 懸念されるのは、今回の偽装で徳島ブランド全体のイメージが揺さぶられかねないことだ。官民一体となって、早急に鳴門わかめの信頼を取り戻さなければならない。
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