浜岡原発を巡っては周辺住民らが03年7月、耐震性に問題があり、国の地震想定も甘いなどとして、中部電力に1~4号機の運転差し止めを求めて提訴。静岡地裁は07年10月、「安全評価に問題はなく、安全余裕は十分に確保されている」として住民側全面敗訴の判決を言い渡した。
訴訟では、福島第1原発で発生した「地震で重要設備が同時に壊れる事故」が起きる可能性も争点となった。中部電側の証人として班目(まだらめ)春樹・原子力安全委員長(当時・東京大教授)は07年2月、「非常用発電機2台が同時に壊れる事態は想定していない」と断言。判決は証言通りに「安全基準を満たせば、重要設備が同時故障することはおよそ考えられない」と認定した。
訴訟は控訴審で係争中。ただ、控訴審中の09年1月、中部電力は1、2号機を廃炉にする方針を表明した。運転開始から30年以上経過し、耐震性確保に費用がかかるためにとられた判断だった。また3、4号機については05年10月、耐震補強工事を始め、1000ガルの揺れにも耐えられると説明。5号機も同様の対策をしている。
津波については、1854年の安政東海地震の例から、満潮でも最大6メートル程度と判断し対策を進めていた。敷地の高さは6~8メートル。さらに、敷地前面に高さ10~15メートルの砂丘がある上、原子炉建屋の出入り口は防水構造で、中部電は「津波に対する安全性は十分確保している」としていた。
福島第1原発事故を受け、中部電は高さ15メートルの防潮堤設置や非常用電源確保などに約300億円をかける緊急対策をまとめた。だが、原告側は「せめて防潮堤が完成するまで運転を止めるべきだ」として、6月にも運転差し止めの仮処分申請を行う方針だった。【北村和巳、飯田和樹】
毎日新聞 2011年5月6日 22時24分(最終更新 5月6日 23時27分)