政治首相「菅降ろし」に解散で対抗? 被災地の選挙ボイコットで衆院大量欠員も+(2/2ページ)(2011.5.7 01:15

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首相「菅降ろし」に解散で対抗? 被災地の選挙ボイコットで衆院大量欠員も

2011.5.7 01:15 (2/2ページ)

 仮に被災者が避難先で住民登録しても選挙人名簿に登録されるのは3カ月後となる。それまでは旧居住地で選挙権を有するが、投票所入場券を受け取ることが難しい上、避難所が旧居住地から離れている場合は投票に行くのも大変だ。

 さらに深刻なのは、宮城県女川、南三陸両町など津波で役場が損壊し、住民基本台帳が損傷した自治体。選挙人名簿は各自治体の住民基本台帳に基づいて作成されるが、これらの自治体では選挙人名簿を作成することさえできない。

 加えて被災地で多数の行方不明者が存在する。住民基本台帳に行方不明の事実が反映されるのは、通常ならば災害から1年後。家裁が失踪宣告を行った後となる。今回の大震災では警察に届け出がある行方不明者だけでも1万人を超えており、生存する有権者数さえも正確に確定できない。

 つまり、この状況で国政選挙が行われれば、多くの被災者が憲法15条で保障された選挙権を行使できなくなるわけだ。

 ところが、延期特例法の対象は地方選に限られており国政選挙は対象外。法解釈上は首相の解散権は制約を受けていない。

 そこで首相が衆院解散を強行するとどうなるか。

 4月の千葉県議選で浦安市が選挙事務を拒否したように被災地の多くの自治体が選挙事務を拒否する公算が大きい。県レベルで拒否する可能性もある。

 そうなると政府は地方自治法に基づき是正指示を出すことができるが、法的拘束力はない。「準備ができたら速やかに実施してほしい」とお願いするしか手はないのだ。

 自治体が選挙事務を拒否すれば、その選挙区は国会議員が不在となる。仮に岩手、宮城、福島の被災3県が選挙をボイコットすれば、衆院比例代表の東北ブロックも選出できず、29議席が空席となる。岩手4区選出の小沢一郎民主党元代表も議席を失うことになる。

 国政選挙で一部地域の投票が延期されたのは、昭和40年参院選の熊本県坂本村と五木村、49年参院選の三重県伊勢市と御薗村の2例のみだ。水害発生がその理由でいずれの自治体も投開票日を1週間延期しただけだった。衆院選での部分延期は例がない。

 一方、「一票の格差」訴訟で最高裁大法廷が3月23日に出した判決も重くのしかかる。この判決は最大格差2・30倍だった平成21年の衆院選を「違憲状態」と断じ、衆院小選挙区の定数300を47都道府県に1ずつ割り振った上で残りを人口比で比例配分する「1人別枠方式」の廃止を求めた。現行選挙制度のまま解散すれば、違憲判決を受ける公算が大きい。

 だが、現行制度で一票の格差を是正するには小選挙区で都道府県別に「21増21減」の区割り見直しが必要となる。この案で与野党が一致する可能性はほとんどなく、仮に今国会で法改正しても衆院選挙区画定審議会(区割り審)が首相に新たな区割りを答申するのは早くても半年後となる。

 それでも首相が解散を強行すればどうなるか。

 首相は激しい非難を浴び、選挙無効などを訴える訴訟を山ほど抱えることになるだろう。自ら議席を失う可能性もある。ただ、「死なばもろとも」とばかりに宿敵の小沢氏の失職を狙って首相が強引に解散することを決して「あり得ない」とは言えまい。

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