2011年5月6日12時52分
「自転車に乗れるようになったばかりの、まだ小さい子どもだった。何でこんなことになったのか」
楽しい父子の食事から1週間後、6歳の息子を食中毒で亡くした富山県高岡市の男性(38)は、目に涙を浮かべて悔しさを語った。
父親によると、「焼肉酒家えびす砺波店」に行ったのは4月22日夜。男児が以前から「焼き肉を食べに行きたい」とせがんでいたので、忙しい仕事の合間を縫って2人だけで出かけた。
店で、ごく普通に、ほかの肉とともにユッケを頼んだ。男児はつまむ程度だったが箸を付けた。食事は30分ほどで終えたという。
男児に異変が起こったのは24日の朝。元気な様子だったが下痢をした。自分もおなかがゆるかったが、さほど気にならなかった。
男児の容体は急変、午後8時ごろから5分おきにトイレに行くようになった。日付が変わるころ、血が尻から出た。
高岡市内で緊急入院し、検査するとO111が便から検出。付き添った母親によると、入院中、ずっと苦しんでいたという。小さい体にカテーテルが通され、人工呼吸器が口にあてがわれた。29日朝、脳症で死亡した。
同店での食事は2回目だった。それに男児がユッケを食べたのは初めてではなかった。だからこそ、胸に「なぜ」が去来する。
「この子のためにも、原因を究明していただきたい」。父親は振り絞るように言った。
同じ店で4月23日にユッケを食べた43歳の女性が5月4日、その母親(70)が5日に相次いで死亡した。福井市内の系列店で4月17日に食事をした6歳の男児も27日に亡くなっている。(小峰健二)