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浜岡原発:全面停止へ G8前、不信感和らげる狙いも

会見にのぞむ菅直人首相。後ろは海江田万里経産相=首相官邸で2011年5月6日午後7時13分、小林努撮影
会見にのぞむ菅直人首相。後ろは海江田万里経産相=首相官邸で2011年5月6日午後7時13分、小林努撮影

 菅直人首相が中部電力浜岡原発の停止要請に踏み切ったのは、東京電力福島第1原発事故が深刻化する中、「非常に高い確率でマグニチュード8程度の地震に見舞われる」(経済産業省幹部)浜岡原発を止めることで、原子力行政を「安全優先」へ転換する姿勢を打ち出すためだ。26、27日にフランスで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)を前に、世界的に広がった日本の原発に対する不信感を和らげる狙いもある。

 「浜岡原発の安全性についてさまざまな意見を聞き、海江田万里経産相と熟慮を重ねたうえで、内閣総理大臣として本日の決定をした」。菅首相は6日夜の記者会見で、自身の決断を強調した。

 民主党内の意見は反原発と推進に割れているが、菅政権は「新成長戦略」として原発プラントの輸出を推進してきた。ところが、その旗振り役だった仙谷由人官房副長官も4月28日の経済閣僚らによる非公式会合で「浜岡を止めるべきだ」と提起。福島第1原発と同じ構造の浜岡原発を停止することにより、ほかの原発の安全性を主張できるとの判断から経産省も受け入れた。

 首相自身は東日本大震災の発生後、「脱原発」には踏み込まないまでも、再生可能な自然エネルギーへの転換を進める意欲を国会答弁などで示してきた。「おれの大好きな風力発電を東電が放置してきた」と周辺に語るなど、政・官・業一体で安全神話を作り上げた「原子力村」に対する反発も隠していない。

 ただ、首相の意気込みを政府全体で共有しているとは言えず、日本の新エネルギー政策をサミットで表明できるかは不透明。経済界や与野党との調整が迷走すれば、野党が批判してきた首相の指導力不足をかえって印象づけることになりかねない。【平田崇浩】

毎日新聞 2011年5月6日 21時07分(最終更新 5月7日 0時49分)

 

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