焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」で発生した集団食中毒を受け、兵庫県内の焼き肉店でも、ユッケの提供を取りやめる店が相次いでいる。店側からは「衛生管理に注意を払ってきたのに…」と困惑した声が漏れるとともに、「衛生基準順守の徹底が必要」など規制強化を求める意見も。一方、厚生労働省の要請で、県などが緊急調査に乗り出すことを決めた。
兵庫県内を中心に焼き肉店舗を展開するチェーン運営会社は、集団食中毒の発生後すぐ、フランチャイズ店にユッケなど生食メニューの自粛を要請した。担当者は「ユッケを出す方が競争力がある」と厳しい表情。姫路市内のホルモン鍋店も、ユッケや生レバーなどの販売を取りやめた。「今後、客の入りがどうなるか…」と心配する。
一方、衛生管理を徹底して出し続ける店も。神戸市中央区の焼き肉店の経営者(65)は「生肉と焼き肉用、部位ごとなどで、まな板10枚を使い分けている」と話すが、「食中毒の発生後、生肉は普段の半分も注文がない」と戸惑いを隠せない。
生肉については、国の衛生基準があるものの、基準を満たした出荷実態はなく、加熱用のものが生肉として提供されているのが実態という。ある自治体の担当者は「消費者ニーズが高く、加熱用の生肉を出さざるを得ないのでは」と指摘する。
神戸市の2010年の調査では、同市内の焼き肉店など約360店のうち6割ほどがユッケなどを販売していたという。
西宮市の業者は「安全性が十分に確保されていない食品が、当然のようにメニューに上る現状がそもそもおかしい」と規制の強化を求める。
集団食中毒後、業者から、姫路市保健所に「生食用食肉の提供をやめるつもりだが、人気メニューなので、他店もやめるようしっかり指導してほしい」という相談が2件寄せられたという。
こうした中、厚労省は各自治体に対し、焼き肉店などを対象に緊急の監視指導を行うよう通知。兵庫県などが生食用食肉の加工や保存方法について調査に入る。
(紺野大樹、井垣和子、広岡磨璃)
(2011/05/06 14:36)
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