2011年5月7日0時3分
■大腸菌の仲間が毒素をつくる
O(オー)111やO157など「腸管出血性大腸菌」と呼ばれる大腸菌の仲間が怖いのは、「シガ(ベロ)毒素」と呼ばれる毒素を作るからだ。この毒素は血管の内側にくっついて、血管や細胞を破壊する。腸管の血管につくと出血を伴う腸炎が起こり、血便が出る。毒素が腎臓に回ると、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」になり、腎臓が働かなくなる。脳内に入れば、脳神経細胞に障害が出て、脳症が起こる。
腸管出血性大腸菌の中でO111は1割に満たない。厚生労働省によると、この10年で国内の食中毒患者はゼロだった。一方で、O157は9割を占め、この10年で約2600人が発症、10人が死亡している。
O111で重症化しやすいのは、抵抗力の弱い子どもや高齢者だ。成人でもO111が大量についた食品を食べれば危険だ。理由は不明だが、女性は男性より重症化しやすいとされている。
■食肉処理時に菌がつく可能性
腸管出血性大腸菌は家畜の腸内に生息し、皮膚にも付いている。普段食べる肉は筋肉部分でここには本来いない。しかし、家畜をと畜解体する際に細菌が肉の表面に移ることがある。と畜場でも腸管の中身が出ないよう処理し、ナイフや機械を消毒しているが、品川邦汎・岩手大名誉教授(食品微生物学)は「生きものである家畜を完全に消毒はできず、細菌をゼロにはできない」と話す。
ユッケは加熱処理しないため、菌が付いていれば、そのまま口に入る。汚染されたものを放置すれば、細切れにして肉の表面積が増えた分、増殖も激しい。
焼き肉店1161店舗が加盟する全国焼肉協会(東京都)は2008年秋、ユッケの製造マニュアルを加盟店に配布した。肉を0〜4度で保管することや、専用の包丁、まな板、味付け用ステンレスボウルを使うなどの注意点を挙げた。しかし、加盟店でどれだけ実践されているかはわからない。フーズ社はこの協会には加盟していなかった。