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[8056] リリカルフロンティア(リリカルなのは×デジモンフロンティア)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/07/05 20:47
前書き及びご注意


どうもです。

ゼロ魔掲示板でゼロの使い魔と炎の使い魔を投稿している友です。

この度は、リリなのとデジモンとのクロスを投稿したいと思います。

この小説を読むに当たっての注意点として、



オリキャラ、オリジナルデバイスが少々出てきます。

恐らくご都合主義です。

違う作品のキャラ同士がくっつきます。

拓也が結構強い設定になってます。

デジモンそのものは暫く出てくる予定がありません。

ゼロの使い魔と炎の使い魔以上に不定期更新になると思います。



以上を呼んで、気に入らないと思った人は、読む事をお勧めしません。

ゼロの使い魔と炎の使い魔を読んでも大丈夫だった方は、恐らく問題ないと思います。

では、大丈夫と思える方は、お楽しみくださいませ。



7月5日 チラシ裏から移動してきました。
     
     改めてよろしくお願いします。



[8056] プロローグ
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/04/12 20:39
リリカルフロンティア



プロローグ 神原家の引越し。海鳴市へ


6人の子供たちがデジタルワールドを救ってから半年。

3月に入った時の事だった。

神原家の夕食の席で、重大な事が話し合われていた。

それは、

「ええっ!?引越し!?」

デジタルワールドの冒険でリーダー的存在だった神原 拓也が驚いて叫んだ。

「ああ。急に転勤が決まってな・・・・・・」

そう言ったのは、拓也の父、神原 宏明。

「それで、何処に?」

そう尋ねたのは、拓也の弟、神原 信也。

その問いに答えたのは、拓也の母親である神原 由利子であった。

「海鳴市って所よ」

再び、運命の歯車は回りだす。



[8056] 第一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/04/12 20:40
第一話 驚愕!弟と少女は魔法使い!?


神原家が、ここ海鳴市に引っ越してから1ヶ月がたった。

拓也と信也が通うことになった学校は私立聖祥大附属小学校である。

拓也は6年、信也は3年に転入した。

そして、この1ヶ月で変わったことがある。

ひとつは、信也がフェレットを拾ってきて飼い始めたのだ。

名前はユーノである。

そして二つ目。

信也の夕方から夜にかけての外出が多くなったのだ。

何をやっているのは拓也も知らない。

拓也がそれとなく聞いてみても、はぐらかされるばかりであった。

そして、最後に拓也のことだが、海鳴市のサッカークラブに入部したのだ。

偶々道端でサッカーの練習をしていたところ、高町 士郎という名の男性に声をかけられた。

士郎は、サッカークラブのオーナー兼コーチをやっていて、拓也にクラブに入らないかと誘ったのだ。

拓也は両親に相談したところ、快く了承を貰えたので、その誘いを受けたのだ。



それで日曜日の本日。

拓也が所属しているサッカークラブ、『翠屋JFC』の試合の日である。

拓也は試合が行なわれる、河川敷のグラウンドで、チームメイトと共にアップを行なっていた。

因みに拓也は『翠屋JFC』に入ってからの初試合であった。

気合を入れてアップを行なっていると、

「ん?」

ふと視線を向けた観客席に、よく知る人物が見えた。

「・・・・・・信也?」

それは弟の信也であった。

信也は、3人の女の子達と一緒に観客席に座っている。

気になった拓也は、観客席のほうに歩いていくと、

「お~い、信也。何やってんだお前?」

そう信也に声をかけた。

「に、兄ちゃん!?」

信也が驚いて叫ぶ。

因みに信也の肩にはユーノが乗っている。

「そんなに驚くなよ」

「いや、ごめん。兄ちゃんが入ったサッカークラブって『翠屋JFC』だったの?」

「ああ、そうだけど」

信也の言葉に拓也は頷く。

すると、

「ねえ、信也君」

信也と一緒にいた3人の女の子のうち、茶髪のツインテールの女の子が話しかけてきた。

その子は、ユーノと同じフェレットを腕に抱いている。

「何?なのは」

「その人って・・・・」

信也になのはと呼ばれた女の子は、拓也を見て尋ねる。

「あ、ごめん。こっちは僕の兄ちゃんの・・・・」

「神原 拓也だ。よろしく」

信也の言葉を引き継ぎ、拓也が自己紹介する。

「信也君のお兄さんですか。はじめまして、高町 なのはです」

なのはが自己紹介する。

なのはの苗字を聞いたとき、拓也はふと思った。

「高町?高町ってもしかしてコーチの・・・・・」

「はい。高町 士郎は私のお父さんです」

「あ、やっぱり」

拓也は納得すると、金髪の女の子と、紫髪の女の子に目を向ける。

「それで、君達は?」

拓也は尋ねる。

「はじめまして。アリサ・バニングスです」

金髪の女の子が名乗り、

「月村 すずかです。よろしくお願いします」

紫髪の女の子も名乗る。

「ああ。よろしく」

拓也がそう返すと、

「それで、こっちがエリスちゃんです」

なのはが、抱いていたフェレットを持ち上げ、そう言った。

「ユーノと同じイタチ・・・・じゃなくてフェレットか」

「ユーノ君とエリスちゃんは、一緒に怪我してた所を見つけたんです」

「ほ~。そうだったのか」

そのとき、集合の合図がかかる。

「あ、もう始まるみたいだな」

拓也がチームメイトの所へ戻ろうとすると、

「兄ちゃん。ファイト」

「お兄さん、頑張ってください」

「負けんじゃないわよ」

「応援してます」

4人からそれぞれ声がかかる。

「ああ!」

拓也はサムズアップで答えた。



そして、いよいよキックオフ。

相手ボールからである。

相手はパスを回し、攻撃のチャンスを窺っていた。

だが、その時だった。

「せいっ!」

ボールを受け取った相手選手の一瞬の隙を突き、拓也がスライディングでボールを奪い取った。

「わっ!凄いスライディング!」

応援席で見ていたなのはが驚く。

拓也はすぐに体勢を立て直し、近くのチームメイトにボールを渡す。

チームメイトたちが攻撃の為に動き出し、拓也もマークを振り切るように動く。

拓也が一時的にマークを振り切ったとき、拓也にパスが出された。

拓也はそのボールを受け取るが、背後から相手選手がボールを奪おうと駆け寄ってくる。

しかし、拓也はボールを巧みに操り、あっさりと相手選手をかわした。

拓也はドリブルで切り込んでいき、ゴール前にセンタリングを上げる。

チームメイトがそのボールに合わせ、シュートを放った。

そのシュートは止めようとした相手キーパーの手を掠め、ゴールネットに突き刺さった。

「やったぁ!!」

応援席では、信也たちが歓声を上げる。

拓也達もお互いに手を叩き合う。

そして、再び相手ボールからスタート。

先程の教訓を生かしてか、隙が少なくなっている。

先程よりもボールの回しが速くなっている。

そして、此方のディフェンスを振り切り、シュートが放たれた。

そのシュートはゴールの左端ギリギリに決まりそうな軌道だ。

だが、キーパーが横っ飛びでそのシュートを止めた。

歓声が上がる。

「キーパーすごーい!」

アリサが興奮した声を上げる。

キーパーのファインプレイにより、更に勢いづいた『翠屋JFC』はその後、更に2点を加え、3-0で快勝した。

因みに、拓也の活躍は、1得点の2アシストである。

「おーし!皆、よく頑張った!いい出来だったぞ!練習どおりだ!」

コーチである士郎が労いの言葉をかける。

「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」

チームメイト達も返事をする。

「特に神原。このチームにきて初めての試合だったが、チームワークもばっちりだ。上出来だぞ!」

「はい!」

拓也が元気良く返事を返す。

「じゃ、勝ったお祝いに飯でも食うか!」

「「「「「「「「「「「イェーーーーーー!!」」」」」」」」」」」

士郎の言葉に喜ぶチームメイトたちであった。



場所は変わって、喫茶店『翠屋』。

ここは、士郎達高町家が経営する喫茶店である。

士郎がサッカークラブの為に貸切にして、中では選手たちが食事を楽しんでいる。

一方、信也、なのは、アリサ、すずかは、外に用意されたテーブルで、フェレットのユーノとエリスを話題にしていた。

そして、食事が終わり、

「「「「「「「「「「「ご馳走様でした」」」」」」」」」」」

選手たちが、店の外に出る。

「皆、今日はすっげーいい出来だったぞ。来週からまたしっかり練習頑張って、次の大会でも、この調子で勝とうな!」

「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

「じゃ、皆解散。気をつけて帰るんだぞ」

「「「「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」」」」

皆が一礼して、それぞれの帰路につく。

拓也は信也に声をかける。

「信也。俺は帰るけど、お前は如何する?」

「う~ん・・・・・僕はもう少しいるよ」

信也はそう答える。

「そうか・・・・・・で、信也」

拓也は信也の首に腕を回し引き寄せ、小声で話す。

「3人の中の誰が本命なんだ?」

「ななっ!?そんなんじゃないよっ!た、ただっ、転校したばかりで何も分からなかったときに、親切にしてくれただけで!」

拓也の突然の質問に、信也は真っ赤になって取り乱す。

「照れるな照れるな」

「兄ちゃん!」

慌てる信也を他所に、拓也はなのは達3人に話しかける。

「3人とも。これからも信也と仲良くしてやってくれよな」

その言葉に、

「はい、もちろんです」

「ま、しょうがないわね」

「喜んで」

なのは、アリサ、すずかがそれぞれ答えた。




信也達と別れ、拓也が家に帰る道を暫く歩いていると、

「ん?」

目の前に、男子と女子が並んで歩いていた。

(あの2人・・・・・確かキーパーとマネージャーだったよな)

拓也がそんなことを思いながら歩いていると、交差点で赤信号となり立ち止まる。

その時、キーパーの男子がポケットから青い宝石のような石を取り出し、マネージャーに差し出した。

マネージャーがその石を受け取ろうとして、その石を掴んだ瞬間、その石が途轍もない光を放った。

「な、なんだぁ!?」

突然の出来事に、拓也は驚く。

光が2人を包み込むと、2人の足元の地面がひび割れ、木が凄まじい勢いで成長していく。

「おわっ!?」

拓也もその急激に成長する木の枝に引っ掛かり、持ち上げられていく。

「い、一体何が!?」

拓也は振り落とされまいと、木にしがみ付く。

一般人なら、大いに混乱しているところだろうが、拓也はデジタルワールドの経験もあり、起こっている出来事に驚いてはいるが、混乱し取り乱す事はなかった。

木の成長が落ち着き、多少余裕が出てきたようなので、拓也は周りを見渡す。

「一体何だってんだよ・・・・・」

拓也がいたところは巨大な木の頂上近くであり、拓也からすぐ見上げたところには、キーパーの男子とマネージャーの女子が光に包まれ抱き合っている。

「・・・・・さっきの現象を考えるに、原因はあの2人・・・・・いや、あの宝石のような石か?」

拓也はそう呟き、町を見下ろす。

街は、巨大な木が何本も生えており、被害もそれなりにあるようだった。

拓也は携帯電話を取り出し、信也の携帯にダイヤルした。




一方、とあるビルの屋上。

2人の子供が屋上まで駆け上がってきた。

信也となのはであった。

「レイジングハート!お願い!!」

なのはが、赤く丸い宝石を上に投げる。

「ブレイブハート!!」

信也が青く丸い宝石を掲げた。

『『Stand by, Ready. Set up.』』

なのはの投げた赤い宝石から女性の声が、信也の掲げた青い宝石から男性の声がした。

その瞬間、2つの宝石は光り輝き、形を変える。

なのはのレイジングハートは、拳大の赤い宝石が先に付き、その回りを金色の半環が囲い、そこから取っ手に繋がる杖となる。

信也のブレイブハートは、西洋剣の柄の形となり、その中央に青い宝石が埋め込まれている。

2人がそれぞれのデバイスを掴むと、私服だった服装が光を放ち変化してゆく。

なのはは小学校の制服を元にした白い服の所々に青いラインが入ったものに。

信也は、どこぞの勇者のような青い鎧を身に纏い、手に持った柄からは青い光の刀身が出現した。

ビルの屋上から街を見渡した2人は愕然とした。

街のいたるところに巨大な木が生えていた。

「ひどい・・・・・」

なのはが呟く。

フェレットのエリスがなのはの肩に乗る。

そして、

「たぶん、人間が発動させちゃったのよ」

喋った。

「強い想いを持ったものが、願いを込めて発動させたとき、ジュエルシードは、一番強い力を発揮するから」

そう言ったのは、信也の肩に乗ったユーノ。

それを聞いて、なのはははっとする。

なのはは、キーパーの男子がジュエルシードを持っているところを目撃していたのだ。

(私・・・・・気付いてたはずなのに・・・・・こんなことになる前に、止められたかもしれないのに・・・・・・)

なのはの心に罪悪感が広がる。

なのはは俯く。

「なのは・・・・・」

信也が呟く。

「・・・・エリスちゃん、ユーノ君。こういう時は、如何したらいいの?」

「え?」

突然の言葉にエリスは戸惑う。

「エリスちゃん!」

なのはの強い言葉に、エリスは答える。

「う、うん。封印するには接近しないとダメなの。先ずは、元となっている部分を見つけないと・・・・でも、これだけ広範囲に広がっちゃうと、どうやって見つければ・・・・・・・」

と、その時、信也の携帯から着信音が鳴る。

「誰だろ?こんな時に・・・・」

信也が携帯を取り出すと、相手は拓也になっていた。

信也は電話に出る。

「もしもし。兄ちゃん?」

『おお、信也。無事か?街じゃ大変な事になってるけど・・・・』

「え?う、うん。僕は大丈夫だよ。兄ちゃんこそ大丈夫?」

『え~、まあ~、何と言うか・・・・』

拓也の言葉は歯切れが悪い。

「如何したの?」

信也が尋ねる。

『まあ、多分だけど、この騒動の原因が目の前にいるんだよな』

「ええっ!?」

拓也の言葉に信也は驚愕する。

「そ、それで場所は!?」

『場所は・・・・』

「うん・・・・・うん・・・・・分かった」

そう言うと信也は電話を切る。

「如何したの?信也君」

信也の焦った表情が気になったなのはは尋ねる。

「その・・・・・今、兄ちゃんの目の前にジュエルシードがあるみたいなんだ」

「ええっ!?」

その言葉に、なのはも驚愕する。

「場所は聞いたから、急ごう!」

信也は飛行魔法を発動させ、飛び立つ。

「ああ!信也君、待って!」

『Flier Fin』

なのはも、足に光の翼を発生させ、飛び立った。




再び、拓也。

「さて、如何したもんかな?」

信也の無事を確認した拓也は枝に身体を預けつつ、如何するか考えていた。

目の前には、相変わらず光の中で抱きあっているキーパーとマネージャー。

と、その時、

「兄ちゃん!」

信也の声が聞こえた。

拓也は振り向く。

「は?」

拓也は素っ頓狂な声を上げた。

そこには青い鎧を着た信也が、手に持った青い光の剣で枝を切り払いながら空を飛んできたのだ。

「し、信也?何だよ、そのどこぞの勇者みたいな格好は?そんで、何で飛んでるんだ?」

「あ、あはは・・・・・今は気にしないで」

信也は苦笑する。

「信也君、あれ!」

続けて飛んできたなのはが、光に包まれ、抱き合ってるキーパーとマネージャーに気付く。

「おいおい・・・・なのはは魔法少女か?」

なのはを見た拓也の感想である。

「すいません。このことは後で説明しますので、今は僕たちを信じてください」

そう言うのは信也の肩に乗ったユーノ。

「まあ、いいけど・・・・」

拓也は取り乱しもせず、そう答える。

「なのは、ジュエルシードの封印を!」

エリスが叫ぶ。

「うん!」

なのはが杖を構えた。

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル Ⅹ。封印!」

杖を、光に包まれた2人に振り下ろす。

桜色の光が、キーパーの男子が手に持っていた青い宝石、『ジュエルシード』を絡め取る。

『Sealing』

桜色の光が膨れ上がり、巨大な木を包みこんだ。




ジュエルシードを封印した事で、巨大な木は消滅した。

しかし、それによって出来た街の傷跡は戻らない。

ビルの屋上から、夕日に照らされる街を見ながら、なのはは呟いた。

「いろんな人に・・・・・迷惑掛けちゃったね・・・・・」

「え?何言ってるのよ。なのははちゃんとやってくれてる」

エリスがなのはを元気付けるためにそう言う。

「私・・・・気付いてたんだ・・・・あの子が持ってるの・・・・・・・でも、私、気のせいだって思って・・・・・」

なのはは俯く。

「なのは・・・・・」

信也も俯いてしまう。

その時、

「失敗するのは仕方ないさ。誰にだって、間違いはある」

拓也がそう言った。

信也となのはが拓也を見た。

「だから、失敗した事を後悔するより、この失敗を糧にして、次から失敗しないようにするのが大切だと俺は思うぞ」

拓也の言葉は、2人の心に響く。

「次から失敗しないようにする・・・・・・」

「ああ、その通りだ」

拓也は頷く。

「それで、教えてくれるんだろ?」

「え?」

「お前たちがやっている事。最近出歩いてる事と関係あるんだろ?」

「う、うん」

と、その時、

「それは、僕達が説明します」

フェレットのユーノとエリスがそう切り出した。

ユーノとエリスはこの世界とは違う世界から来た事。

とある遺跡から発掘したジュエルシードと呼ばれるものが、輸送中の事故によりこの世界にばら撒かれた事。

ユーノとエリスは、自分たちの責任なので、自分たちでジュエルシードを集めようとした事。

しかし、力が及ばず、念話と呼ばれる魔法で助けを呼んだところ、信也となのはがその念話に反応し、助けに来た事。

信也となのはは、魔法の素質があったので、デバイスと呼ばれる魔法の杖のようなものを渡し、ジュエルシードを封印してもらった事。

それから、ジュエルシードを集めるために2人に協力してもらっている事。

「・・・・・・と、言う訳なんです」

「なるほどな・・・・・」

「あ、あのっ!」

ユーノが、慌てた調子で言い出す。

「信也を怒らないでやってください!元々、悪いのは僕なんです!信也を責めないで!」

そう必死に懇願する。

拓也は、信也に視線を向ける。

「いや、別に信也が自分で決めた事なら口を出すつもりはないんだけど・・・・・・」

「え?」

てっきり反対されるかと思っていた信也は声を漏らす。

「ただ、必ず無事に帰ってくること。俺が言いたいのはそれだけだ」

「兄ちゃん・・・・・」

拓也は信也に微笑んだ。

「あの・・・・・所で・・・・・」

なのはがおずおずと言い出した。

「お兄さん、ユーノ君とエリスちゃんと普通に話してますけど、驚かないんですか?」

ユーノとエリスはフェレットである。

普通の人なら驚愕ものだ。

だが、

「ん?それもありなんじゃないか?異世界から来たんだろ?」

拓也は何でも無いようにそう言った。

拓也からしてみれば、人間以外が喋る事など、デジタルワールドで沢山見ている。

獣型や竜型、はては植物型デジモンまで喋るのだ。

今更フェレットが喋ったぐらいでは、全く驚かない拓也であった。

しかし、その拓也自身も、魔法の道に踏み込むことになるのである。




オリキャラ


エリス・スクライア

スクライアの一族で、ユーノの幼馴染。

この物語では、彼女がレイジングハートを持っていた。

ユーノと同じく補助系の魔法が得意。

密かにユーノに想いを寄せているが、肝心のユーノは、その事に全く気がついていない。




オリジナルデバイス


ブレイブハート

レイジングハートと同じ、インテリジェントデバイス。

この物語ではユーノが持っていたデバイス。

拓也の弟の信也が使う事になる。

剣形態のソードモードと弓形態のアローモードがある。

ソードモードは、柄のみで、刀身はビームソードのような魔力で作られる。

因みに信也の魔力光は青。

モチーフは、ブイドラモンにしようかな~、と思ってます。



[8056] 第二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/04/12 20:41


第二話 極寒の戦い。目覚めよ拓也!


信也達のジュエルシード探しの事を知ってから暫くして。

ある日、信也が落ち込みながら家に帰ってきた。

拓也が話を聞くと・・・・・

「金髪の魔法少女が現れて、2人がかりでもボロ負けしたと?」

拓也の言葉に信也が頷く。

女の子相手に負けたのは、信也としても悔しかったらしい。

しかも2人がかりで負けたので、落ち込みようはかなりのものだ。

とりあえず、拓也は、元気出せと言っておいた。



5月の連休に入ったが、何故か信也が高町家の小旅行についていく事となった。

拓也は、いい機会だから、ゆっくり休んで来いと送り出した。

拓也の方も休みの間は、特に予定は入ってなかったので、街をぶらつく事にした。

街をぶらついていると、道端にアクセサリーの露天商が店を出していた。

拓也は、アクセサリーには特に興味はなかったので、そのまま通り過ぎようとした。

その時だった。

『・・・な・・・・よ』

「ん?」

拓也の頭に何かが響いた。

『わ・・・をあ・・・』

拓也は立ち止まり、周りを見渡した。

ふと、露天商のアクセサリーの一つに、炎のように赤い宝石のような石がついた物があることに気がついた。

拓也の視線がそれを捉えたとき、何か引き込まれるような感覚を覚えた。

(なん・・・だ?この感覚は・・・・・?)

拓也はその石から目が離せないでいた。

『・れに・・・たえ・』

繰り返し頭の中に響く、ノイズ交じりの声。

拓也はどうしてもその石が気になった。

値段を見ると、今の手持ちの小遣いで、ギリギリ足りる値段であった。

拓也は少し躊躇したが、その石の付いたアクセサリーを購入した。

拓也はその石を手に取ってみてみたが、特に変わったところは無さそうであった。

さっきまで頭の中に響いていた声も聞こえない。

「無駄遣いしたかな?」

拓也は、気のせいだったのかと思い、そのアクセサリーをポケットの中に突っ込むと、再び歩き出した。




街中を回って、ふと空を見ると、日が傾いてきていた。

いつの間にか相当な時間が経っていたようだ。

拓也はそろそろ帰るかと思い、足を家に向けたときだった。

――ドクンッ!

「ッ!?」

何か嫌な存在を感じた。

「な、何だ!?」

拓也は、周りを確認する。

――ドクンッ!

再び感じる力の波動。

今度は方向もはっきりとわかった。

拓也は其方のほうを向くと、動物園が見えた。

拓也は、後先考えずに駆け出した。




――数分前。

動物園内。

日も傾いてきたので、客は少なく、ちらほらと数人が見えるだけである。

そして、北極熊の檻の片隅に、青く輝く宝石、ジュエルシードが転がっていた。

それに、檻の中の北極熊が近付き、ジュエルシードに触れたとき、ジュエルシードが発動した。

「グォオオオオオオオッ!!」

北極熊の体が巨大化し、凶悪な姿に変わる。

そして、その周囲から凄まじい冷気が発生する。

瞬く間に回りが凍り付いていく。

ジュエルシードで変貌した北極熊は、檻を易々とぶち破る。

その時の音で、客たちが異常に気付き、変貌した北極熊の姿を見た者から一目散に逃げ出していく。

それとは逆に、動物園に駆け込んできた拓也は、北極熊の姿を確認した。

「まさかジュエルシードか!?くそっ、信也達がいないこんなときにっ!」

拓也は携帯で、信也にこの事を伝えようとした。

だが、

「ママァ~~~!!」

幼い子供が泣きながら、北極熊の視界に入ってしまっている。

「拙いっ!!」

拓也は瞬間的に駆け出した。

熊の腕が振り上げられる。

「間に合えっ!!」

拓也は、その子供を抱きかかえ、庇うように押し倒した。

一瞬遅れて、その子供がいた場所に熊の腕が振り下ろされ、コンクリート製の地面が砕かれる。

拓也はすぐに立ち上がろうとした。

だが、

「ッ!?」

足が動かなかった。

それと同時に、凄まじい痛みが拓也を襲う。

「ぐあっ!?」

拓也が足を確認すると、北極熊からの強力な冷気によって足が凍り付いている。

「ぐっ!」

拓也は、腕の中の子供を突き飛ばすと、

「逃げろっ!!」

そう叫んだ。

子供は暫く、オドオドしていたが、

「早く逃げろ!!」

拓也の強い言葉に突き動かされ、言うとおり逃げていく。

拓也はそれを見届けると、微笑む。

しかし、

「があっ!?」

再び凄まじい痛みが拓也を襲う。

強力な冷気により、拓也の体全体が凍りつき始めているのだ。

それに伴い、拓也の体温が急激に失われていく。

(や、やべえ・・・・眠くなってきた・・・・・)

拓也は、雪山で凍死するのと同じ状況に陥っていた。

(畜生・・・・・諦めて・・・・たまるかよ・・・・・・)

拓也は心を強く持つ。

拓也は、気合だけで意識を繋ぎとめていた。

(くそっ・・・・俺にも力があれば・・・・・・)

拓也は思う。

(俺にも力を・・・・・・皆を護る・・・・・力を・・・・・・・力を!)

強く、強く思った。

やがて、拓也にも限界が訪れる。

(・・・・・ちっ・・・く・・・・・・しょう・・・・・・・)

拓也の意識が薄れ往く。

その時だった。

『我に名を与えよ』

ハッキリと、拓也の頭の中に声が響いた。

拓也は、目を開ける。

そこには、昼間に露天商で買った赤い石のアクセサリーが転がっていた。

恐らく、子供を庇ったときに、ポケットから落ちたのだろう。

しかも、その赤い石は淡い光を放っている。

『我に名を与えよ』

(・・・・名前・・・・?)

拓也はその声に意識を繋ぎとめる。

『我は炎の化身。 我は炎の力を具現するもの。 炎の魂を持つ者よ。 我に名を与えよ』

頭の中に声が響く。

拓也は淡い光を放つ石を見つめていたが、胸の奥に炎が灯ったような感覚があった。

拓也は力を振り絞り、凍りかけた腕を動かし、赤い石をその手に掴む。

そして、その石を握り締め、

(分かった・・・・・お前に名前をつけてやる・・・・・だから・・・・その代わりに・・・・・俺に力を・・・・皆を護れる力を!)

『Yes. My lord』

今度は、ハッキリとその耳に聞こえた。

(なら・・・・・つけてやる・・・・・お前の名は・・・・)

拓也は叫んだ。

「サラマンダー!!!」

『O.K. My name is Salamander.  Stand by, Ready. Set up.』

その瞬間、拓也の体が炎に包まれた。

拓也を蝕んでいた氷は、瞬く間に溶け、蒸発した。

「こ、これは!?」

その現象に驚く拓也。

『我が主。力の形を創造せよ』

「力の形?」

その言葉を聞き、真っ先に思い浮かんだのは・・・・・

「へっ・・・・俺の力の形と言ったら、これしかねえだろ!!」

『バリアジャケット展開』

炎が形を取る。

そして、炎が消え去ったとき、拓也は赤い鎧を・・・・アグニモンの鎧を纏っていた。

サラマンダーの本体である石は、光るとまるでデジヴァイスのような形になり、鎧に吸い込まれるように同化した。

拓也は、変貌した熊を見上げる。

そこからは、相変わらず強力な冷気が吹き荒れているが、今の拓也には通用しない。

熊は、腕を振り上げ、拓也に向かって振り下ろした。

拓也はすぐに反応して飛び退く。

「うおっ!?」

だが、軽く飛び退くつもりだったのが、5mほども跳躍していた。

「な、何だぁ?身体能力も上がってるのかよ!?」

感覚の違いに驚く拓也。

態勢を立て直し、着地する拓也。

「でも、これなら!」

拓也は地面を蹴り、熊の頭部に向かって跳躍する。

「はぁああああああっ!!」

熊の頭部に拳の一撃を喰らわした。

「グォオオオオオッ!」

熊は、鳴き声を上げ、転倒する。

拓也は着地すると、両拳を合わせる。

「これが、俺の思ったとおりなら!」

『Burning Salamander』

拓也のバリアジャケットの手甲から炎が発し、両拳に炎を纏う。

「バーニング!サラマンダー!!」

その纏った炎を、北極熊に向け放った。

「ギャォオオオオオオオッ!!」

北極熊は炎に包まれ、叫び声を上げる。

そして、炎が消えたときには、体中が焼け焦げた北極熊が横たわっていた。

「ふう・・・・やったか・・・・・」

拓也が一息ついたとき、

「グォオオオオオオッ!!」

北極熊が起き上がり、腕を叩き付けてきた。

「何っ!?」

油断していた拓也は避けることが出来ず、仕方なく受け止める。

「ぐぅっ!?な、何て力だ・・・・・」

何とか受け止めたが、北極熊の凄まじい力により、じりじりと押されていく。

北極熊は地上最大の肉食獣とも呼ばれているのだ。

それが、ジュエルシードによって増幅されている。

その力は計り知れない。

(ぐっ・・・・アグニモンの力じゃダメだ・・・・・・ヴリトラモンのパワーじゃないと・・・・・)

拓也は、心の中でそう思った。

すると、

『O.K. My lord. Form change. Vritra form.』

再び鎧が炎に包まれる。

そして、背中に翼。

腕にルードリー・タルパナ。

顔のフェイスガードは、顔の上半分から頭を覆うヘルメット型になる。

鎧の装甲は更に重厚となり、見るからに防御力が高まっている。

ヴリトラモンの姿を模したバリアジャケットとなった。

更に、

「うぉおおおおおおおおっ!!」

身体能力がパワー重視になっており、北極熊のパワーを押し返した。

更には、5m近くある北極熊を持ち上げる。

「はぁあああああああっ!!」

そして、ぶん投げた。

地面に叩きつけられる熊。

拓也の両腕に装備されているルードリー・タルパナが回転。

銃口が前を向く。

『Corona Blaster.』

「コロナブラスター!!」

その銃口から炎の弾丸が連射される。

「グォオオオオオッ!!」

北極熊が苦しみの声を上げる。

「うぉおおおおおおおっ!!」

拓也が叫び声を上げると、拓也が炎に包まれる。

『Flame Storm』

「フレイム!ストーム!!」

その場で回し蹴りを放つと共に、その炎が北極熊に襲い掛かる。

「グギャァアアアアアアアアッ!!」

熊が断末魔の叫びのような声を上げ、地面に倒れた。

『主、封印を』

サラマンダーにそう言われ、拓也は熊に近付いていく。

その手にはいつの間にか、デジヴァイスのような形になった、サラマンダーの本体が握られていた。

そして、拓也の呪文を口にした。

「穢れた悪の魂を、我が炎が浄化する! ジュエルシード、シリアル Ⅱ。封印!!」

サラマンダー本体から放たれた炎が北極熊に巻きついた。

そして、その炎が北極熊を包み込むと、その炎の中からジュエルシードが飛び出てくる。

『Sealing』

そのジュエルシードはサラマンダー本体に吸い込まれた。

その場には元の大きさに戻った北極熊が気絶している。

と、その時、パトカーのサイレン音が聞こえてきた。

「・・・・・・こりゃあ・・・・逃げたほうがいいな」

拓也は背中の翼を羽ばたかせ飛び立つ。

そのすぐ後に、警官たちが突入してきた。

拓也は、日が落ち、暗くなった空を飛びながら、これから如何するかを考えていた。




オリジナルデバイス


サラマンダー

拓也の専用デバイス。

分類は、スピリットデバイス(オリジナルです。説明は後ほど)。

何故か露天商で売られていた。

拓也が名を与え、その本領を発揮した。

拓也が扱っているため、炎の闘士をモチーフにしている。





あとがき

またやってしまいました、デジモンとのクロス小説。

とりあえずこれで様子見。

ご都合主義全開?

初顔合わせが、なんか変なのは、申し訳ありません。

上手く纏まりませんでした。

にしても、文才の無い自分が2つの作品を平行してやろうとするなど、無謀の極みですな。

とりあえずこっちも頑張っていこうと思うのでよろしくお願いします。





[8056] 第三話  4/20修正
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/04/20 20:53

第三話 運命の出会い? もう1人の魔法少女


拓也がサラマンダーを手に入れてから数日経ったある日。

信也たちと都合が合わず、未だにデバイスとジュエルシードを手に入れたことを信也たちには言っていない。

そして、今日も学校が終わった後、家に帰ってみたが、既に信也は街に出かけた後。

仕方なく拓也は、個人で街を回る事にした。

暫く街を歩いているが・・・・・・

「・・・・・・つっても、ジュエルシードって、どうやって探せばいいんだ?」

『探し方も知らずに探そうとしていたのか?主』

サラマンダーからの突込みが入る。

「んなこと言っても、魔法の事なんてサッパリだし。信也やユーノから話が聞ければと思ってたんだけど・・・・・」

『魔法関係者だけになる機会が無かったのだ。仕方あるまい』

「まあこの前みたいに発動したジュエルシードなら分かるみたいだけど・・・・・・」

『皆を護る事が目的の主にとって、それは遅すぎる、か?』

「そうなんだよな・・・・・・発動する前のジュエルシードを見つけるのが一番いいんだけどよ」

『今の主では、発動前のジュエルシードの魔力を見つけることは難しいだろう』

「はあ・・・・・やっぱりか。結局後手に回るしかないってか?」

『運を天に任せて、目で探す、という方法もあるが』

「広い街中で、手のひらサイズの宝石を探すのにどれだけかかると思ってるんだよ?」

『今の主では、それしか方法が無いのだ。仕方あるまい』

「・・・・・それしかないか」

拓也は、ため息を吐きつつ再び街を回りだした。




時間は、午後7時を回った頃。

「あ~あ、結局何の手がかりも無しか・・・・・」

ビルの看板に備え付けられた時計を見ながら拓也は呟いた。

そろそろ晩御飯の時間なので帰らなければならない。

「そろそろ帰るか・・・・」

そう思ったとき、

「ッ!?」

大きな魔力を感じた。

「何だ?ジュエルシード?いや・・・・違う・・・・・」

その時、空に雷が走る。

『主、この近くで何者かが魔法を使っている』

「何だって!?何のために!?」

『恐らくジュエルシードを強制発動でもさせようというのだろう』

「ちっ!こんな街中で!場所は!?」

『ここから東に500mといったところだ』

サラマンダーの言葉を聞くと、拓也は駆け出した。

次の瞬間、膨大な魔力が溢れたと思ったら。ぱったりと何も感じなくなった。

「何だ?いきなり何も感じなくなったぞ」

『恐らく結界だ、主』

「結界?」

『魔法効果の生じてる空間と通常空間の時間進行をずらすものだ』

「はい?」

『簡単に言えば、結界の内と外を遮断するものだ』

「入れるのか?」

『よほどの結界でない限り、魔力を持つものなら出入りは自由のはずだ』

「わかった!」

拓也はそのまま駆けていく。

暫く走り続けていくと、空間の違いがあった。

「これが結界か?」

拓也は一度立ち止まり、慎重にその空間に手を伸ばした。

特に抵抗もなく手は結界内に侵入する。

拓也はそのまま結界内に入り込んだ。

結界内に入ると、回りに大勢いたはずの人々が全くいなくなった。

目線の先には、ジュエルシード。

そして、そのジュエルシードに撃ち込まれる桜色、青色、金色の魔力光。

「うおっ!派手にやってるな!」

『ふむ、あの魔力。力の大きさだけなら、3つとも主を超えているな』

「なんだよ?俺から3人の誰かに乗り換えるか?」

『見損なっては困る。我が主は主だけだ。何より、我は普通の魔導師には扱えん』

「どういうことだよ?」

『話すと少々長くなる。先ずは目の前の問題を片付けるのが先決だ』

「それもそうか」

やがて魔力光が途切れる。

どうやら封印された様だ。

そのジュエルシードに近付く2人の人物。

信也となのはだ。

その2人に駆け寄る2匹のフェレット。

「やった。2人とも、早く封印を」

ユーノがそう言った時、

「そうはさせるかい!!」

その言葉と共に、上空から赤毛の狼が襲い掛かる。

「なのは!」

信也がその狼を迎え撃つ。

激突した衝撃で、お互いに間合いを取った。

「なのは!こっちは僕に任せて!なのはは、あの子に言いたいことを伝えるんだ!」

信也がそう言って、赤毛の狼と対峙した。

「ありがとう、信也君!」

そう言って、なのはが上を見上げると、金髪の少女が電灯の上に立っていた。

「・・・・・あの子が信也の言ってたもう1人の魔法少女か・・・・・」

少しはなれたところで、様子を窺っていた拓也が呟く。

なのはと金髪の少女は暫く見詰め合っていたが、なのはが一歩踏み出し、

「この間は、自己紹介できなかったけど・・・・・・・私、なのは。高町 なのは。私立聖祥大附属小学校3年生」

なのはが自己紹介を始めるが、

『Scythe form』

金髪の少女が持つデバイスが変形し、金色の魔力刃が形成され、大鎌となった。

それを見たなのはが慌てて杖を構える。

そして、金髪の少女がマントを翻し、なのはに斬りかかった。

「あっ」

『Flier fin』

なのはも足に光の翼を発生させ、飛び立った。

一方、信也は、

「でやぁあああああああっ!!」

手に持った剣で、信也を縛りつけようとしたバインドを切り裂く。

「僕ちゃん。少しはやるようになったじゃないか」

赤毛の狼は余裕のある声で信也に言った。

「このっ!」

『Arrow mode』

信也の持つブレイブハートが変形。

V字型の弓になる。

矢は無かったが、信也が弓の先に手を添え、矢を引き絞るように手を引くと、青い魔力光の矢が形成される。

それと共に、V字型の弓全体が青く輝きだす。

『V-Breath Arrow』

「いけぇっ!!」

信也が手を離すと、V字型の魔力矢が放たれる。

「こんなもの!」

赤毛の狼は、魔力障壁を発生させ、その攻撃を防ぐ。

信也の放ったブイブレスアローは、その障壁に当たり一旦停止する。

「ふん・・・・・・ッ!なんだって!?」

赤毛の狼は一旦止めた事によって余裕の声を漏らしたが、すぐに驚愕の声に変わった。

青い魔力矢は、徐々に魔力障壁に食い込んでくる。

「ちぃっ!!」

赤毛の狼が飛び退いた瞬間、魔力矢は障壁を貫通した。

「このガキンチョ!」

その狼は信也に対する評価を改め、再び信也に襲い掛かった。



なのはと金髪の少女は、空中での砲撃戦を繰り返していた。

なのはの後ろに金髪の少女が回りこむ。

『Flash move』

瞬間、超スピードでなのはが金髪の少女の後ろに回りこんだ。

『Divine shooter』

そのまま、杖の先から砲撃を放つ。

『Defenser』

その金髪の少女は咄嗟に障壁を作り出し、その砲撃を防ぐ。

衝撃に吹き飛ばされながらも、その金髪の少女がデバイスを構えた瞬間。

「フェイトちゃん!!」

なのはが、その金髪の少女の名を叫んだ。

「ッ!?」

なのはの呼びかけに、金髪の少女、フェイトの動きが止まる。

「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど。だけど、話さないと、言葉にしないと伝わらない事もきっとあるよ!」

なのはの言葉に、フェイトは動揺している。

「ぶつかり合ったり、競い合うことは仕方が無いのかもしれない。でも、何もわからないままにぶつかり合うのは、私、嫌だ!」

なのはは必死にフェイトに呼びかける。

「私がジュエルシードを集めるのは、それがエリスちゃんとユーノ君の探し物だから。ジュエルシードを見つけたのはエリスちゃんとユーノ君で、エリスちゃんとユーノ君は、それを元通りに集めなおさないといけないから。私達はそのお手伝いで・・・・・だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だけど、今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や、自分の周りの人達に危険が降りかかったら嫌だから!・・・・これが!私の理由!!」

フェイトはその言葉を聞くと、一度目を伏せる。

「・・・・私は」

ポツリと、フェイトが言葉を発しようとしたその時、

「フェイト!!答えなくていい!!」

信也と戦っていた赤毛の狼が叫んだ。

「優しくしてくれた人達のとこで、ぬくぬく甘ったれて暮らしてるガキンチョになんか、何も教えなくていい!!私達の最優先事項は、ジュエルシードの捕獲だよ!!」

その言葉に感化されたのか、フェイトもデバイスをなのはに突きつける。

その時、

「今の言葉のどこが甘ったれたガキンチョの言葉なんだ?」

拓也の声がその場に響いた。

戦いの場に歩いてくる拓也。

「に、兄ちゃん?なんで・・・・?」

信也が驚いた顔でそう呟く。

なのはとフェイトも、驚きで動きを止めている。

「今の言葉は、少なくとも単なる甘ったれに言える言葉じゃない。それなりの困難を乗り越えてきた、強い心の持ち主が言える言葉だ」

拓也の言葉は静かに響く。

「フン!あんたたちにフェイトの何が分かるっていうんだ!?」

赤毛の狼が拓也に向かってそう言った。

「何も知らないさ」

「何だって!?」

「何も言ってくれなきゃ何も分からない。いや、それ以前に、知ってもらおうとも思わなきゃ、相手が分かるはずもない。何も言わずに相手にわかってもらおうなんて、それこそ甘ったれた考えだ」

「何だって!?」

赤毛の狼は毛を逆立てて怒りを露にする。

拓也は、そんな狼を無視して、上空のなのはに呼びかけた。

「なのは!お前はその子の話を聞きたいんだな!?」

「え?は、はい!」

なのははいきなりの質問に多少驚いたようだが、すぐにはっきりと返事を返す。

「そうか」

拓也はポケットに手を突っ込むと、

「これ、な~んだ?」

そこから取り出したのは、以前拓也が封印したジュエルシード。

「ジュ、ジュエルシード!?」

ユーノが叫ぶ。

「なんで兄ちゃんがジュエルシード持ってるの!?」

信也が驚いて尋ねた。

「ああ、お前たちが温泉に行ってるときにちょっとな」

拓也はそう答える。

拓也はフェイトに向き直ると、

「でだ。君の事を話してくれれば、このジュエルシードは無条件で君に渡す。で、どうだ?」

そうフェイトに問いかけた。

「ちょ、何言ってるんですか!?」

エリスが拓也に詰め寄る。

「ま、このまま争い続けるのは、信也もなのはも納得しないだろ?」

「それは・・・・そうだけど・・・・・・」

信也が呟く。

「で、どうする?」

再び拓也はフェイトに問いかけた。

「・・・・・・・」

フェイトは悩んでいるようだったが、

「フェイト!話す事はないよ!バカだねアンタも。そんなもの、奪えばいいだけの話さ!!」

赤毛の狼が拓也に襲いかかろうとする。

「アルフ!」

フェイトが自分の使い魔、アルフの名を叫んだ。

「やっぱそうなるか」

とはいえ、拓也もこうなる事は予想していたらしい。

「それじゃ、抵抗だけはさせてもらうぞ!サラマンダー!アグニフォーム!」

『Yes, My lord. Stand by, Ready. Set up.』

拓也が炎に包まれ、赤き鎧を身に纏う。

「ちっ、アンタも魔導師だったのかい!」

アルフは、それでも拓也に襲い掛かる。

だが、

「はぁあああああっ!!」

拓也の蹴りが側頭部に命中する。

「がっ!?」

そのひるんだ瞬間、

「はあっ!!」

拓也の掌底がアルフの体に入り、アルフは吹き飛ぶ。

「がはっ!?」

アルフは苦しそうな声を漏らす。

「アルフ!」

フェイトがアルフに心配そうな声をかける。

「ア、アタシは大丈夫。けど、気を付けて。こいつ、そこの2人とは違う。明らかに戦い慣れてる!!」

フェイトは、デバイスを拓也に向ける。

「あのさあ・・・・ジュエルシードをやるからそっちの話を聞かせてくれって言ってるんだけど・・・・・女の子を殴る趣味はないんだけど・・・・」

拓也の言葉には何も答えず、フェイトは大鎌を振りかぶり、拓也に斬りかかった。

拓也は跳んでその攻撃を避ける。

だが、フェイトはすぐに空中の拓也にデバイスを向けると、

「フォトンランサー、ファイア!」

金色の魔力弾を放つ。

「ちっ!」

空中で身動きが取れない拓也は、腕を振りかぶると、

「はああっ!!」

裏拳を放つように腕を振り、魔力弾を弾いた。

「弾かれた!?」

フェイトは驚愕の表情を浮かべる。

「くっ、フォトンランサー、ファイア!」

今度は連続で来た。

拓也は左手の甲から、炎を発生させ、

「ファイアダーツ!!」

炎を手裏剣のように幾つも飛ばし、フェイトの攻撃を相殺する。

「に、兄ちゃん、強い」

「え・・・・えっと・・・」

信也は、拓也の強さにあっけに取られ、なのはも如何したらいいのか混乱している。

「やっぱり、拓也のデバイスは、スピリットデバイスだ」

ユーノが気付いたように言った。

「スピリットデバイス?」

なのはが尋ねる。

「うん。とても珍しいデバイスだよ。デバイスにも種類があって、ブレイブハートやレイジングハートのようなインテリジェントデバイスの他に、何種類かあるんだけど、その中でも特に珍しいものの1つがスピリットデバイス。僕達の世界でも、使ってる人は皆無ってくらいの」

「え、何でそんなに少ないの?」

信也が問いかけた。

「うん。まず、スピリットデバイスを使うためには、特殊な才能がいるんだ。魔導師は誰もが魔力を持ってるんだけど、その中に魔力変換資質を持った人がいるんだ。魔力変換資質っていうのは、自分の魔力を自然に物理エネルギーに変換できる資質のこと。その魔導師は、『電気』、『炎熱』、『凍結』のどれか1つを持つんだ。あのフェイトって子が『電気』の魔力変換資質を持ってるようにね」

その説明に信也となのはが頷く。

「そして、更にその中に稀にいるんだ。属性特化型が」

「属性特化型?」

「そう。属性特化型の持つ属性は、さっき言った3つの枠には入らない。人それぞれで違うんだ。そして、最大の違いは、魔力変換資質を持つ人は、自分の意思で変換するか如何かを決められる。だから、基本的な、魔法もつかえるんだ。けど、属性特化型の人は違う。魔力を放出すれば、勝手にその魔力が持つ属性に変換しちゃうんだ。だから、その属性以外には基本的な魔法すら覚えられない。魔法陣すら無しに魔力を変換しちゃうからね。ほら、さっき拓也が魔法を使ったときも、魔法陣が現れなかったでしょ?」

「あ、そういえば」

「そして、その属性特化型専用のデバイスがスピリットデバイス。属性特化型の人はは普通のデバイスは使えないんだ。属性特化型の人そのものが稀な上に、その人の属性に合ったスピリットデバイスじゃないと起動しない。だから、使う人が皆無なんだよ。けど、その使い手の属性とデバイスの属性が一致した魔導師が、今目の前にいる」

「兄ちゃん・・・・」



「くっ!」

フェイトは再び大鎌で拓也に斬りかかってきた。

しかし、今度は避けずにフェイトの斬撃を見て、そして、

「そ、そんなっ・・・・」

フェイトは驚愕した。

拓也は、フェイトの斬撃を白刃取りで受け止めていた。

「捕まえた」

拓也はそう言って、フェイトの腕を掴んだ。

「くぅ・・・・」

フェイトはもがくが、デバイスによって身体能力が上がった拓也の力の前にはビクともしない。

「王手だ」

そう言って、拓也はフェイトの顔の前に拳をすん止めしていた。

「う・・・・・」

フェイトは、悔しそうな顔をする。

「あ、あのさ・・・・そんな顔するなよ。俺たちはただ、話を聞きたいだけで・・・・」

拓也はフェイトの顔を見て罪悪感を覚え、焦って弁明する。

そんな時、

「フェイトを放しな!この変態!!」

後ろから人間形態となったアルフがとび蹴りをかましてきた。

弁明に必死になっていた拓也はそれに気付くのが遅れ。

「うごっ!?」

真後ろからそのとび蹴りを喰らう。

「きゃっ!?」

そのまま、拓也は前のめりになり、フェイトの腕を掴んでいるので、フェイトも巻き込みそのまま倒れた。

そして、

「あ・・・・・」

信也が、

「にゃ!?」

なのはが、

「え・・・・」

ユーノが、

「う・・・・」

エリスが、

「フェ、フェイト・・・・・・・」

アルフが固まる。

なぜならば、

「「んんっ!?」」

今、拓也とフェイトは唇を合わせていた。

完全な事故ではあるが、

「どわぁあああああっ!!!ご、ゴメンっ!!」

拓也は正気を取り戻すと、真っ赤になって慌てて放れる。

フェイトはゆっくりと立ち上がると、自分の唇を触っている。

「・・・・・・・・」

フェイトは何も言わない。

その頬は、ほんのり赤く染まっているように思える。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

2人の間に気まずそうな雰囲気が流れる。

そんな時、

――キィン

魔力反応を感じた。

それは、ジュエルシードからだった。

それで、気付いたのかフェイトはジュエルシードに向かって飛んでいく。

それと同時になのはもジュエルシードに向かっていた。

そして、

――ガキィン

2人のデバイスは、ほぼ同時にジュエルシードに組み付いた。

瞬間、2人のデバイスに罅が入る。

そして、ジュエルシードから膨大な光が放たれた。

その光は上空に伸び、雲を吹き飛ばす。

その衝撃で、2人は吹き飛ばされる。

「なのはっ!!」

吹き飛ばされたなのはを信也が受け止める。

「あ、ありがとう、信也君」

なのははお礼を言って、自分の足で立つ。

フェイトは自力で持ち直した。

だが、フェイトはボロボロの自分のデバイスを見ると、

「大丈夫?戻って、バルディッシュ」

心配そうに自分のデバイスに声をかける。

『Yes,Sir』

フェイトのデバイス、バルディッシュは光に包まれ、待機状態になる。

フェイトは、ジュエルシードを見ると、何かを決心した表情になり、ジュエルシードに向かって飛んだ。

「フェイト!?」

アルフがフェイトの行動に驚く。

フェイトはそのままジュエルシードに手を伸ばし、掴んだ。

「フェイト!!ダメだ!危ない!!」

アルフが必死で呼びかける。

ジュエルシードを包んだ手の隙間から、ジュエルシードの力があふれ出す。

「くぅ・・・・・止まれ・・・・・・・止まれ、止まれ・・・・・」

フェイトは必死にジュエルシードを抑えようとする。

「あの子・・・・・・」

次の瞬間、フェイトの手袋が破れ、血が吹き出る。

それでもフェイトは、ジュエルシードを放そうとしない。

「・・・・・・・ええい!もう、如何にでもなれ!」

その様子を見た拓也は、後先考えずに行動に出た。

拓也はフェイトの目の前まで駆ける。

「無茶な事を。そんなことしたら、手が壊れちまうぞ」

「え?」

そして、フェイトの腕を掴み、無理やりジュエルシードから手を放させた。

「きゃっ・・・・何を!」

フェイトの手を離れた事によって、ジュエルシードの力は今にも解放されそうだ。

「君はもう少し自分を大切にしろ!」

「ッ!?」

拓也はフェイトに背を向け、ジュエルシードに向き直る。

「それに・・・・・こういう無茶は、男の仕事だ!!」

拓也はそう叫んで。

ジュエルシードを掴んだ。

「うおおおおおおおおおっ!!」

拓也は両手で押さえつけようとするが、先程より力が増したジュエルシードは、更なる光を放つ。

「ぐぐぐぐ・・・・・・・」

拓也の両手が、ジュエルシードの力に押され、徐々に離されようとした時、

「サラマンダー!!ヴリトラフォーム!!」

『O.K. My lord. Form change. Vritra form.』

拓也の体が炎に包まれ、鎧が形を変える。

ヴリトラフォームとなった拓也は、再び両手でジュエルシードを押さえつけた。

「はぁああああああっ!!フレイム!ストーム!!」

拓也の全身を炎が包む。

やがて、ジュエルシードは落ち着き、輝きが収まる。

それを確認すると、拓也は膝をついた。

「はあ~~~疲れた!」

拓也はバリアジャケットを解除する。

拓也は近くで呆然としていたフェイトに気付く。

「よ!大丈夫だったか?」

「え?は、はい・・・・」

突然声をかけられ、フェイトはびっくりしながらも返事を返す。

拓也はその時、ボロボロになったフェイトの手に気付く。

「手を見せてみろ」

「え?・・・・あ」

拓也は半ば強引にフェイトの手を取り、傷を確認する。

「うわ・・・結構酷いな・・・・ちょっと待ってろ」

拓也はポケットに手を突っ込むと、簡易の救急セットを取り出した。

拓也はサッカーで怪我が多いので、自分でもこういう物を持ち歩いていた。

拓也は慣れた手つきで、傷口を消毒し、ガーゼを当て、テーピングで固定していく。

瞬く間に、両手を治療し終わる。

「よし。応急処置だけど、こんなもんでいいだろ」

拓也は処置を終えると、簡易救急セットをしまう。

「・・・・・あ、ありがとう・・・・」

フェイトがか細い声でお礼を言った。

「如何いたしまして」

拓也もそう返す。

更に、

「サラマンダー」

拓也は自分のデバイスに呼びかける。

サラマンダーは最初からわかっていたと言わんばかりにすぐに行動に移した。

『Put out』

サラマンダーがジュエルシードを吐き出す。

そのジュエルシードを拓也はフェイトに握らせた。

「え?あの・・・・」

拓也の不可解な行動に、フェイトは声をかけようとするが、

「男のけじめだ」

拓也はそう言った。

拓也は事故とはいえ、さっきのキスは悪かったと思っている。

拓也は先ほど抑えたジュエルシードを持って、信也たちのほうに歩き出した。

だが、拓也は一度立ち止まると、

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は神原 拓也。君は」

「フェ、フェイト。フェイト・テスタロッサ」

名を聞かれ、フェイトは咄嗟に答えてしまった。

「そっか。フェイト、さっきは悪かったな。事故とはいえあんな事になっちまって」

フェイトは一瞬何のことか分からなかったが、すぐにキスのことを思い出し、顔を赤く染める。

「い、いえ・・・・あれはアルフが・・・・・・」

「それでも、そうする原因を作ったのは俺だ。本当に悪かった」

拓也はそう言うと、再び信也たちの方へ歩き出した。

少しすると、呆然となっていたアルフが正気を取り戻し、フェイトに駆け寄る。

「フェ、フェイト・・・・・・」

「・・・・帰ろう、アルフ」

フェイトはそう言うと、踵を返し、飛び立つ。

アルフも慌てて後を追った。

その途中、

「フェイト~、ゴメンよ。アタシの所為であんな事になっちゃって・・・・・」

アルフは申し訳無さそうに謝る。

「いいよ・・・・・気にしてないから・・・・・」

フェイトはそう言うと、自分の唇に触れて、一度後ろを見る。

「・・・・・・・また、会えるかな?」

そう呟いたフェイトの言葉は、アルフには聞こえなかった。





あとがき

とりあえず三話完成。

この物語の拓也のヒロインはフェイトです。

どうだろうか?

あと、魔法の独自解釈がメチャクチャかな?

とりあえずスピリットデバイスの説明を入れてみたけど・・・・・・納得できます?

序に言えば、拓也が簡易救急セットを持ち歩いているという完全ご都合主義。

サッカーやってれば、怪我が絶えないと思ったので、持ち歩いてても不思議じゃないかな~と、思ったんですけど。

とまあ、早速フェイトフラグ立てた拓也ですが、次回かその次に出てくるクロノは如何しましょう?

アニメの通り大人しく進めるか。

それとも、フェイトを攻撃された拓也が怒ってクロノを凹ってみるか。

でも、拓也でクロノを凹に出来るかが疑問かな。

さてさて、如何するかは、作者の気まぐれしだいですが、次もお願いします。

では、今回はこれで。


4月20日 スピリットデバイスの説明を修正

『0』様の感想を元に修正してみました。

少しは筋が通ってきたと思います。

感想お待ちしてます。



[8056] 第四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/05/09 11:53
第四話 時空管理局


フェイトが去った後、拓也はジュエルシードを持って信也達のところへ戻っていった。

「・・・・・・何も言わないのか?」

拓也はジュエルシードを渡してしまったことについて尋ねた。

「えっと・・・・・まあ、あれはしょうがないですし・・・・・」

ユーノがそう呟く。

「普通なら怒るところですけど・・・・・・」

エリスも仕方ないといった感じだ。

「それよりも、私としてはフェイトちゃんと初対面のお兄さんが自己紹介を済ませた事が凄いと思います。私なんてお互いの名前をいうのに3回もかかったんですよ」

なのはが若干悔しそうな表情で言った。

「それで兄ちゃん、何で兄ちゃんが魔法使いになってるの?」

信也が一番の疑問を口にした。

「それはな・・・・・・・」

拓也はサラマンダーとジュエルシードを手に入れた経緯を説明した。

「・・・・・・っていうわけだ」

「僕達が温泉に行ってる間にそんなことがあったんだ」

「ああ・・・本当はお前たちと相談するつもりだったんだけどな。都合が合わなかった」

「そうなんだ」

そこで、拓也は一息つく。

「とりあえず・・・・・」

拓也は呟く。

「とりあえず?」

信也が尋ねるように聞き返す。

「早く帰るぞ。晩御飯の時間とっくに過ぎてるから」

拓也にそう言われ、信也となのはは、はっとなる。

時計を見れば、既に8時に近い。

3人と2匹は急いで帰った。

しかし、結局、拓也と信也は、両親から説教を受けることになったのあった。





翌日。

いつも通り学校へ登校した拓也達だが、特に特別な事は無く、あっという間に下校時間になる。

拓也は信也たちとは別行動でジュエルシードを探していた。

《兄ちゃん、何か手がかりはあった?》

信也から念話が入る。

《いや、ジュエルシードらしき魔力が膨らみ始めてるのは分かるけど、何処にあるかはさっぱりだ》

拓也はそう返す。

《そう・・・・こっちも一緒だよ》

《了解。何か分かったら連絡する》

そう言って念話を終える。

因みにこの念話は、昨晩ユーノから教わったものである。

街を歩いていた拓也だが、ふとビルを見上げた。

「う~ん、高いところにいたほうが方向も分かりやすいし、デバイスを展開するときも人目がつかなくていいかな」

拓也は、とあるビルに入り、屋上を目指した。



拓也は屋上につき、扉を開ける。

と、そこには先客がいた。

「あ」

拓也は思わず声を漏らした。

「え?」

拓也の漏らした声で、その人物は振り返る。

フェイトであった。

「あ・・・・・」

フェイトも驚いたように声を漏らした。

「アンタは!」

傍にいた赤毛の狼、アルフも拓也に気付き、警戒心を露にする。

「ちょっと待った。無闇に争うつもりは無いよ」

拓也は両手を上げ、敵意が無い事を示す。

しかし、

「ふん!そんな言葉に騙されるもんかい!」

アルフは、拓也の言葉を信じず、臨戦態勢をとる。

「待ってくれよ、ここに来たのは偶然なんだから」

それでもアルフは警戒を解かない。

と、そこへ、

「大丈夫だよアルフ。タクヤはそんな嘘つかないと思う」

意外にもフェイトからフォローが入った。

「名前、ちゃんと覚えてくれたんだな。フェイト」

拓也はその事に笑みを浮かべる。

「え?・・・・・う、うん・・・・」

フェイトは少し動揺しながら頷いた。

「ところで、手の怪我は大丈夫か?」

拓也は昨日のフェイトの怪我が気になり、そう聞いた。

「うん、もう大丈夫」

フェイトは手を見せながらそう言った。

拓也はかなり酷かったはずの怪我がたった1日で治っている事に驚いた。

「え?もう治ってるのか?」

「あれくらいの怪我、魔法の力を使えば1日で十分治せるさ」

拓也の疑問に、アルフが誇るように言った。

「へ~。魔法って凄いんだな」

拓也が感心したように言う。

「って、何でそんなことに驚いてるのさ?あんたも魔導師だろ?」

不思議に思ったのか、アルフが聞き返してくる。

「ああ。俺は魔法の力を手に入れてから、まだ一週間程度の初心者だよ」

「「えっ!?」」

拓也の言葉を聞き、フェイトとアルフは同時に驚いた。

「ほ、本当なの?」

フェイトが聞き返してくる。

「ああ。サラマンダー・・・・・俺のデバイスを手に入れたのも偶然だし」

「冗談だろ?じゃあ、何であんなに戦いなれてるのさ?」

「戦いなれてたのは、魔法関係じゃないけど、ちょっと普通とは違う体験をしたからだな」

「如何いう事?」

意味の分からなかったフェイトが、首を傾げて尋ねる。

「これ以上は秘密」

拓也はそう言った。

デジタルワールドでの冒険を、そう易々と他人に語る気にはなれない。

あれは、拓也にとって大切な思い出なのだ。

拓也の言葉を聞いたフェイトは、少しムッとして、

「教えて」

と、言ってきた。

「秘密」

そう拓也は返す。

「教えて!」

なおもフェイトは食い下がる。

「だから秘密だって」

再び拓也はそう返すが、

「教えて!!」

フェイトは、ムキになっていた。

拓也はやれやれと、ため息を吐くと、

「じゃあ、昨日みたいにキスしてくれたら話してやるぞ」

と言った。

拓也にしてみれば、フェイトの追求をかわすための冗談である。

「はっはっは、冗談冗だ「キスすればいいんですか?」ん!?」

拓也が笑って済ませようとしたところ、フェイトはそんなことを言ってきた。

「フェ、フェイト!?」

アルフも今の言葉には唖然とした。

拓也は冗談と思いたかったが、フェイトは頬を赤く染め、顔を近づけてくる。

それには拓也も慌てた。

「待て待て待て待て!冗談と言ってるだろうが!って言うか、昨日会ったばかりの男に何本気でキスしようとしてるんだ!?普通それは好きな相手同士でやるもんだぞ!」

拓也は慌てて近付いてくるフェイトの肩を掴み、引き離す。

「昨日も言ったが君はもう少し自分を大事にしろ!そりゃあ俺としてはフェイトみたいな可愛い子にキスされれば嬉しいけどさ。って、何を俺は言ってるんだ!?」

フェイトの行動は、拓也に大きな動揺を与えていた。

一方、フェイトは今の拓也の言葉を聞き、

「か、可愛い?わ、私が?」

頬を赤く染めて、ブツブツと呟いている。

そんな2人を見て、アルフがどうしたもんかと思ったとき、

――キィン

ジュエルシードの波動を感じた。

2人はそれで我に返る。

「ジュエルシードが発動した!」

アルフが叫んだ。

フェイトはすぐに思考を切り替えると飛び立つ。

「行くよ、アルフ!」

「あいよ!」

アルフはフェイトの後を追った。

「サラマンダー、アグニフォーム!」

『Yes, My lord. Stand by, Ready. Set up.』

拓也の体が炎に包まれ、赤い鎧を纏う。

拓也はビルの屋上を跳躍して、ジュエルシードを目指した。

何故空を飛べるヴリトラフォームでは無いのかと言われれば、スピードはヴリトラフォームで空を飛ぶより、アグニフォームで駆けた方が速いからだ。



ジュエルシードの反応があった場所、海鳴臨海公園では、ジュエルシードによって怪物と化した木が動き出そうとしていた。

信也、なのはと共にその場に駆けつけたユーノとエリスがすぐさま結界を発動させた。

信也となのはが木の怪物に向かって構えた瞬間、後方より、無数の金色の魔力弾が飛んでくる。

それは、木の怪物に当たるかと思われたが、木の怪物はバリアを張り、その攻撃を防いだ。

信也となのはが振り向くと、フェイトとアルフがいた。

「うおぅ!生意気に。バリアまで張るのかい!」

「うん。今までのより強いね。それに・・・・・あの子もいる」

フェイトの視線がなのはを捉えた。

少し遅れて、拓也も現場に到着した。

「少し出遅れたか?」

その時、木の怪物の根元がひび割れ、根っこが触手のように襲い掛かってくる。

なのはは空高く飛んで避け、信也は自分を狙ってきた一本の根っこを切断する。

拓也も跳躍して避けたが、

「ファイヤーダーツ!!」

そのまま無数の炎を手裏剣のように飛ばした。

だが、先ほどと同じようにバリアで防がれる。

「ちょっと硬いな。・・・・・けど!!」

拓也は跳躍しながら炎を纏い、回転を始める。

『Salamander Break』

拓也が炎に包まれ、炎の竜巻のようになる。

「サラマンダー・・・・ブレイク!!」

拓也の炎を纏った強力な回転回し蹴りが炸裂した。

木の怪物はバリアで防いだが、

――バリィン

サラマンダーブレイクの威力に耐え切れず、バリアは砕ける。

拓也は着地すると、

「どうだ!!」

木の怪物に向け叫んだ。

「グオオオオオオオッ!!」

木の怪物は苦しむような叫び声をあげる。

だが、次の瞬間、

「何っ!?」

地面から根の触手が伸び、拓也の体に巻きついた。

「くっ!しまった!?」

拓也は油断していた事に歯噛みした。

「兄ちゃん!」

信也が急いで駆けつけようとした時、

『Arc Saver』

それよりも早く金色の魔力刃が拓也に巻きついていた根を切り裂く。

「フェイト!?」

拓也は驚いて、助けてくれた人物に目をやる。

「大丈夫?タクヤ」

「あ、ああ」

拓也は少し呆然としたが、再び根が襲い掛かってくる。

『Form change. Vritra form.』

拓也はヴリトラフォームになると、体に引っ掛かっていた根を引きちぎった。

そして、腕のルードリー・タルパナが回転。

銃口が前を向く。

「コロナブラスター!!」

フェイトに襲い掛かろうとした根を無数の炎の弾丸が粉砕していく。

先ほどの拓也と同じく驚いた顔で振り向いたフェイトに拓也は微笑む。

その様子を上空で見ていた信也となのはは、

「ど、どうなってるの?」

「お兄さんとフェイトちゃんが助け合ってるの・・・・・」

どうなってるのか分からず呆然としていた。

その時、

「信也!なのは!ボーっとするな!次で止めだぞ!!」

「「は、はいっ!」」

拓也の喝に正気を取り戻す2人。

『Shooting mode』

なのはのレイジングハートが砲撃モードに変形する。

『Arrow mode』

信也のブレイブハートは、V字型の弓に変形する。

「貫け轟雷!!」

フェイトは、魔法陣を発生させる。

「うおおおおおっ!!」

拓也は体中から炎を発する。

そして、次の瞬間、

「ディバインバスター!!」

レイジングハートから放たれる桜色の魔力砲撃。

「ブイブレスアロー!!」

ブレイブハートが放つ、V字型の青色の魔力矢。

『Thunder Smasher』

魔法陣を通してバルデッシュから放たれる雷撃。

「フレイム!ストーム!!」

拓也が回し蹴りを放つと共に放たれる炎。

4人の攻撃が同時に木の怪物に向かって放たれた。

それは、バリアを砕かれた木の怪物にとって、いや、例えバリアが張れたとしても耐え切れるものではなかった。

消滅する木の怪物。

そして、後にはジュエルシードだけが残された。

「ジュエルシード、シリアルⅦ!」

「封印!」

なのはとフェイトが同時にジュエルシードを封印する。

光と共に封印されるジュエルシード。

そのジュエルシードを挟んで、フェイトとなのはは睨み合う。

「・・・・ジュエルシードには、衝撃を与えたらいけないみたいだ」

「うん。夕べみたいな事になったら、私のレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュもかわいそうだもんね」

「だけど・・・・譲れないから」

フェイトはそう言うとバルディッシュを構える。

『Device form』

バルディッシュがデバイスフォームになる。

「私は・・・・フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」

『Device mode』

なのはのレイジングハートもデバイスモードになる。

「私が勝ったら・・・・ただの甘ったれた子じゃないってわかってもらえたら・・・・・お話・・・・聞いてくれる?」

なのはの真剣な表情に、フェイトは小さく頷いた。

それを見ている拓也と信也だが、今の2人の邪魔をするほど無粋ではない。

フェイトとなのはは同時に動き、お互いのデバイスを振りかぶった。

それが同時に振り下ろされ、激突するかと思われた時、2人の間に光が迸り、魔法陣が現れる。

そして、何者かがレイジングハートを素手で掴み、バルディッシュをデバイスで受け止めた。

「ストップだ!!」

その何者かが叫ぶ。

「ここでの戦闘は危険すぎる!」

受け止められたなのはとフェイトは呆然としている。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!詳しい事情をきかせてもらおうか」

そこにいたのは黒髪の少年だった。

背丈は拓也と同じぐらいだろうか。

「時空管理局?」

ユーノが呟く。

「先ずは2人とも武器を引くんだ」

クロノと名乗った少年はなのはとフェイトにそう命令する。

3人は地面に降りていく。

「このまま戦闘行為をつづけるなら・・・・・・・」

そこまで言いかけたところで、急に空を見上げる。

数発の魔力弾が迫ってきた。

クロノは咄嗟に障壁を張り、その攻撃を弾く。

その攻撃は、アルフが放ったものだ。

「フェイト!撤退するよ!離れて!」

アルフは魔力弾を生み出す。

フェイトは一瞬躊躇したが、アルフの魔力弾が放たれると共にジュエルシードに向かって飛んだ。

4人は飛び退いて攻撃を避けるが、魔力弾は地面に着弾し、爆煙を巻き上げる。

拓也は、他の3人とは別方向へ飛び退いたが、クロノがデバイスをフェイトに向けようとしていた事に気付く。

「ちぃ!間に合え!!」

拓也は全力で羽ばたく。

フェイトがジュエルシードに手を伸ばしたとき、煙を切り裂いてフェイトに魔力弾が襲い掛かる。

だが、

「うおおおおっ!!」

拓也がその前に割り込み、クロノの魔力弾を受ける。

拓也は直撃を受けるが、ヴリトラフォームの装甲は大したダメージを受けなかった。

フェイトは、拓也が割り込んだときの衝撃で少し吹き飛ばされていた。

そのせいで、ジュエルシードを取り損なっている。

拓也はフェイトに叫んだ。

「早く逃げろ!」

「え?」

「どういう状況かはよく分からないけど、逃げるんだろ!?」

「で、でも・・・・」

「アルフ!!」

ジュエルシードを見て躊躇しているフェイトを見て、拓也はアルフに呼びかける。

「フェイト!早く逃げるんだよ!」

アルフに急かされ、フェイトはその場を離れていく。

そのフェイトたちに、クロノのデバイスが向けられたが、その前に拓也が立ちはだかった。

「どういう心算だ!?」

クロノは拓也に問いかける。

「それはこっちの台詞だ!いきなり現れて訳のわからない事をゴチャゴチャと!果ては女の子相手に問答無用で攻撃するし!」

拓也が言い返す。

「先ほど名乗っただろう!僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。君の行動は公務執行妨害に当たるぞ!」

「だからそれが訳の分からないことだって言ってるだろ!時空管理局なんて聞いた事もねえよ!!第一、俺と同年代のくせして上から見下ろした物言いが気に入らない!」

「失礼な!僕は14歳だ!!」

それを聞いた拓也は固まる。

「嘘っ!?俺より3つ上!?身長なんて、俺と同じぐらいじゃねえか!?」

「うぐっ・・・・・」

拓也のその一言はクロノの心に突き刺さる。

クロノはこれでも背が低い事を気にしているのだ。

「に、兄ちゃん、ハッキリ言いすぎだよ・・・・・」

「お兄さん、クロノ君が可哀想です」

2人の純真無垢な言葉だが、それが止めになることに気付いていない。

クロノはうな垂れている。

自覚が無いからこそ、その言葉には遠慮が無いのだ。

「・・・・・どうしたもんかな?」

拓也がそう考えていると、

「ちょっといいかしら?」

空中に画面が現れ、女性が映る。

「誰だ?」

「私は、時空管理局提督 リンディ・ハラオウンよ」

「またジクウカンリキョクとかいう奴か・・・・」

「その説明は後でしてあげるわ。それにしてもあなた達、うちの執務官のコンプレックスを見事に抉ってくれちゃって。ほらクロノ、しゃんとなさい」

リンディがクロノに声をかける。

「は、はい、提督」

クロノは何とか復活したようだ。

「それで、あなたの言うとおり、こちらにも落ち度があるわ。執行妨害については不問にするから、あなたたちの詳しい話を聞かせてくれないかしら?」

これが、時空管理局との初めての出会いであった。





あとがき

四話完成です。

まあ、なんというか、フェイトの性格がちょっとおかしいかな?

突っ込みたくなるかもしれませんが、それはそれで・・・・・・・

でもって、クロノ君。

凹にするのは良くないというか無理という意見が出ましたので、身体的に凹るのはやめ。

精神的に凹にしときました。

アニメで見ても、クロノ小さいよな~。

小学3年生のなのはより少し大きいだけですからね。

中学2年であの背は低いと思う。

あと、拓也の年齢はこの時期はまだ11歳で良いはず。

拓也は8月生まれなので、まだ12歳にはなってないはずです。

まあ、少しクロノが可哀想ですかね?

あくまで思いついたことのなので、ヘタレにする心算はないです。

では、次も頑張ります。




[8056] 第五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/05/10 20:31

第五話 それぞれの選択



――次元航行船 アースラ艦内

拓也、信也、なのは、ユーノ、エリスは、クロノに連れられ、アースラ艦内に転移してきた。

(エリスちゃん、ユーノ君。ここって一体?)

なのはが念話で話しかける。

(時空管理局の次元航行船の中ね)

(簡単に言うと、いくつもある次元世界を自由に行き来するための、そのための船)

(あんまり、簡単じゃないかも)

エリス、ユーノが答え、信也が呟く。

ユーノとエリスは、時空管理局がどのようなものかを説明していく。

一方、拓也は黙って歩いていく。

やがて、転移してきた部屋を抜けると、クロノが振り返り、言った。

「ああ。何時までもその格好というのは窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは、解除してもらって平気だよ」

「そっか・・・・そうですね。それじゃあ・・・・・」

「わかりました」

クロノの言葉に、なのはと信也は返事をして、バリアジャケットを解除し、デバイスを待機状態にする。

拓也は無言で、バリアジャケットを解除した。

すると、クロノはユーノとエリスに視線を向け、

「君達も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

そう言った。

「あ、そうですね」

「ずっとこの姿でいたから、忘れてました」

ユーノとエリスは頷いた。

「「?」」

信也となのはは何のことかと首を傾げる。

すると、2匹の身体が光だし、

「「え?・・・・・・え!?」」

信也となのはの目が点になった。

そこには、黄土色の髪で、民族衣装のような服装をした少年と、黒髪で、同じく民族衣装のような服装をした少女がいたからだ。

「2人にこの姿を見せるのは、久しぶりになるのかな」

そう言って立ち上がり、信也たちに視線を向ける少年となったユーノ。

しかし、信也となのはは、2人を指差しながら固まっていて、

「「ふぇえええええええええええええ!?」」

アースラ全体に響き渡りそうな大声を上げた。

一方、

「何だ?お前たちも人間だったのか」

少し驚いたようだが特に取り乱してはいない拓也。

拓也にとっては、人間がドラゴン、狼、ライオンetc・・・・になる所を見慣れているのだ。

今更、フェレットが人間になったぐらいで、なんだ?といった具合である。

「?」

ユーノは、一体なんで信也となのはが叫んだのか分からず首をかしげている。

「ユーノ・・・・私たちがこの姿を見せるのは初めてなんだけど・・・・」

「えっ!?そうだっけ!?」

エリスの言葉に、ユーノは2人に聞き返す。

「そうだよ~~~!最初っからフェレットだったよ~~!」

「うんうん!」

なのはの言葉に信也が頷き、ユーノは頭に手を添えて思い出そうとする。

「・・・・・・・・・・・ああ!そうだそうだ!ご、ごめん、この姿を見せてなかった」

どうやら思い出したらしく、ユーノは2人に謝る。

その時、

「ゴホン。ちょっといいか?」

クロノは咳払いをして話し出す。

「君達の事情は良く知らないが、艦長を待たせているので、できれば早めに話を聞きたいんだが?」

「は、はい・・・・」

「すみません・・・・」

謝罪の言葉を聞くと、

「では、こちらへ」

クロノは再び、先導して歩き出した。



クロノはとある部屋に入ると、

「艦長、来てもらいました」

そう言った。

その部屋は、盆栽、茶釜、など、和風に彩られていた。

そこには、

「お疲れ様、まあ皆さん、どうぞどうぞ楽にして」

正座し、笑顔でそう言うアースラ艦長、リンディ・ハラオウンがいた。



「なるほど、そうですか。あのロストロギア・・・・ジュエルシードを発掘したのはあなた達だったのですね」

ジュエルシードの経緯を聞いたリンディがそう言う。

「はい・・・それで、僕達が回収しようと・・・・・」

ユーノが頷き、同時にそれがジュエルシードを回収しようとした理由である事を言った。

「立派だわ」

リンディはそう言うが、

「だけど、同時に無謀でもある」

クロノが直球にそう言った。

クロノの言葉に、ユーノとエリスはしゅんとなる。

その時、

「そういう言い方は気に入らないな」

拓也が言葉を発した。

「ユーノ達はジュエルシードを発見してしまった事に責任を感じてるんだ。そういったユーノ達の気持ちも汲み取ってやるべきだろ?」

「君は事の重大さが理解できていないようだな。これは個人の責任で済まされる問題ではない。ジュエルシードがどの位危険なものか分かっているのか!?」

「ジュエルシードが危険だからこそユーノ達は自分たちで責任を取ろうとしたんだろうが」

拓也とクロノは睨み合う。

「はいはい、落ち着きなさい2人とも」

一触即発な2人を、リンディが宥める。

「・・・・・あの、ロストロギアって何なんですか?」

なのはが尋ねる。

「ああ・・・・遺失世界の遺産・・・・って言っても分からないわよね。えっと・・・・・次元空間の中には幾つもの世界があるの。それぞれに生まれて育っていく世界。その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるの。技術や科学、進化しすぎたそれが、自分たちの世界を滅ぼしてしまって。その後に取り残された失われた世界の危険な技術の遺産」

「それらを総称して、ロストロギアと呼ぶ。使用方法は不明だが、使いようによっては世界どころか、次元空間を滅ぼすほどの力を持つ、危険な技術」

「然るべき手続きを持って、然るべき場所に保管されていなければいけない危険な品物。あなた達の集めているロストロギア・・・・ジュエルシードは次元干渉型のエネルギーの結晶体。いくつか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、最悪の場合次元断層まで引き起こす危険物」

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時に起こった振動と爆発。あれが次元震だよ」

クロノの言葉に、なのはは、はっとなる。

「たった1つのジュエルシードの・・・・・何万分の一の発動でもあれだけの影響があるんだ。数個集まって動かしたときの影響は、計り知れない」

その言葉を聞いて、ユーノが思い出したように言った。

「聞いた事あります。旧暦の462年、次元断層が起こったときのこと」

「ああ。あれは酷いものだった」

「隣接する次元世界が幾つも崩壊した、歴史に残る悲劇・・・・・・・・繰り返しちゃいけないわ」

リンディは神妙な顔でそう呟くが・・・・・・・

「「「あ」」」

拓也、信也、なのはが同時に声を漏らした。

リンディは、お茶の中に砂糖を入れたのだ。

そして、リンディはそれを全く躊躇することなく口に運ぶ。

そして一息つくと、

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については、時空管理局が全権を持ちます」

「「「「えっ?」」」」

信也、なのは、ユーノ、エリスが声を漏らす。

「君達は今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

クロノがそう言った。

「・・・・・・・・・・」

拓也は、どこか気に食わないといった表情をする。

「でも・・・・・そんな・・・・・」

なのはは何か言おうとするが、

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

クロノがきっぱりとそう言う。

「でも!」

「まあ、いきなり言われても気持ちの整理がつかないでしょうから、今夜一晩、ゆっくり考えて、それぞれで話し合って、それから改めてお話をしましょう」

「送っていこう。元の場所でいいね?」

そう言って、クロノが立ち上がった。

「あ、そうそう」

リンディが思い出したように口を開いた。

「あなた達が関係してるとは思わないけど、一応聞いておくわ。この世界でおよそ半年前に一度、小規模の次元震が起きているの。そのときは管理局が極秘裏に調べたんだけど、何も分からなかったの。何か知らないかしら?」

その言葉を聞いて、信也となのはは顔を見合わせて首を傾げる。

「えっと・・・・何のことか分かりません」

信也がそう答える。

「あなたは?」

リンディは拓也に話しかけた。

実際のところ、拓也には思い当たる節があった。

それは、ルーチェモンの人間界侵攻。

ルーチェモンが一時的に次元の壁をぶち破り、人間界に現れた事があった。

その時は、スサノオモンとなった拓也達がギリギリ間に合い、ルーチェモンをデジタルワールドに引き戻した。

だが、ルーチェモンが次元の壁をぶち破ったときに次元震が起きたのだろう。

世界を滅ぼす力を持つルーチェモン サタンモードなら次元震が起きても不思議ではない。

「・・・・・・心当たりは無いです」

しかし、拓也はそう答えた。

クロノやリンディの話を聞いていると、彼らはデジタルワールドの存在を知らない。

そして、彼らの話を聞いていると、危険と判断したものは一方的に回収、管理すると言っているように聞こえる。

彼らからみれば、デジモン達・・・・・特に究極体デジモンは、ロストロギアクラスの危険物と判断するだろう。

そうなれば自由に生きているデジモン達を管理し、下手をすれば危険だと言う理由で排除するかもしれない。

そうならない為に、拓也は嘘を吐いた。

確かにデジモン達の中には悪意をもつ者もいる。

しかし、それはごく一部であり、それを言えば、人間たちも一緒である。

その後、拓也達は念話で話し合う事を決め、それぞれの帰路についた。




拓也たちが帰った後のアースラでは、

「すごいや!3人ともAAAクラスの魔導師だよ!」

アースラのオペレーターであるエイミィ・リミエッタが、なのは達の戦闘データを見て、驚きの声を上げた。

「ああ」

クロノが頷く。

「こっちの白い服の子は、クロノ君の好みっぽい可愛い子だし」

「エイミィ・・・・・そんなことはどうでもいいんだよ!」

エイミィの冗談に呆れるクロノ。

「魔力の平均値を見ても、白い服の子で127万。青い鎧の男の子が130万。黒い服の子が143万。最大発揮時は更にその3倍以上。魔力だけならクロノ君より上回っちゃってるね!」

「魔法は魔力値の大きさだけじゃない。状況に合わせた応用力と、的確に使用できる判断力だろ」

「それはもちろん!信頼してるよ。アースラの切り札だもん、クロノ君は」

エイミィの言葉に微妙な顔になるクロノ。

「でねでね。もう一つ驚く事があるんだ」

エイミィがそう言いながら、モニターを切り替える。

そこに映ったのは拓也。

「この赤い鎧の男の子。鎧の変化前の魔力の平均値は約80万。最大発揮時でも200万ちょい。鎧の変化後は平均値で100万、最大発揮時で250万。魔法初心者でこの数値なら十分驚きだけど、他の3人と比べると数値上では少し見劣りするね。けど、驚くべきはこの子の使っているデバイス!なんとスピリットデバイスなの!」

エイミィの言葉にクロノはピクリと反応する。

「いや~、スピリットデバイスの使い手をこの目で見ることが出来るなんてラッキーね!」

クロノは、拓也の戦闘データを見ながらエイミィの話に耳を傾ける。

「彼はどうやら炎の属性特化型魔導師。戦い方を見るに魔力の集中が得意そうだね。他の3人に魔力値では劣るけど、魔法の威力は勝るとも劣らないよ」

「あと、4人の中では彼が一番実戦慣れしている。恐らく、4人の中では一番強い」

エイミィの言葉の後にクロノが付け足した。

「あれ?クロノ君があの子を誉めるなんてね」

「どういう意味だ?」

クロノは半分にらみつけるような目でエイミィに問いかける。

「だっていきなりコンプレックス抉られてたし。クロノ君とは、ウマが合いそうになかったと思ったけど?」

「それとこれとは話が別だ。確かに僕個人としては彼に対して、余り好ましい感情は持っていない。けど、魔導師としての実力は認める」

「ふ~ん・・・・大人だねぇ~」

そんな話をしていると、リンディが部屋に入ってきた。

「あ、艦長」

「ああ。あの子達のデータね」

リンディがモニターを見つめる。

「確かに、凄い子達ね」

「これだけの魔力がロストロギアに注ぎ込まれれば、次元震が起きたのも頷ける」

「あの5人がジュエルシードを集める理由は分かったけど、こっちの黒い服の子は何でなのかしらね?」

リンディが疑問を口にする。

「随分と、必死な様子だった。何かよほど強い目的があるのか・・・・・」

「目的・・・・ね」

リンディは呟いた後、少し哀しそうな目でフェイトが映ったモニターを見つめる。

「小さな子よね・・・・普通に育っていたら、まだ母親に甘えていたい年頃でしょうに・・・・」




その夜。

信也となのはは念話で話し合っていた。

(じゃあなのは。なのはもあの人達に協力してジュエルシードを集めるんだね)

(うん。少しでもお手伝いがしたいんだ)

(それは僕も同感だよ。ここでやめちゃったら、後味悪いし)

(そうだね)

(それで、お兄さんは?)

(兄ちゃん?兄ちゃんは・・・・・・)

(俺はパスだ)

2人の念話に拓也が割り込んだ。

(兄ちゃん!?)

(えっ!?何でですか!?)

信也となのはが驚く。

(時空管理局はなんとなく気に入らない。組織の目的のためなら個人の意思を蔑ろにするような傾向がある。ま、クロノやリンディさん自身はそんなつもりはないのかも知れないけど)

((・・・・・・・・))

2人は黙り込んでしまう。

(それに俺にはジュエルシードより気になる事があるんでね)

(ジュエルシードより気になる事?)

(・・・・・もしかして・・・・)

信也は首を傾げたが、なのはは心当たりがあるような反応をする。

(まあ、そういう事だ。ジュエルシードの方はお前らにまかせた。あっちの方には、ジュエルシードには自分からは関わらないようにするって伝えといてくれ)

拓也はそう言って、念話を終了した。


翌日、信也は両親に、魔法のことを秘匿しつつ事情を説明し、暫く家を空ける許可を貰った。

そしてその夜、なのはと共にアースラに乗り込むのだった。





あとがき

とりあえず五話完成。

短いですね。

キリがいいところで終えたら短くなりました。

結局、拓也は管理局には協力しませんでした。

予想してた人はいたみたいですが。

あと、ルーチェモンが人間界に侵攻してきたときは、流石に次元震ぐらい起きているだろうと予想して、話に組み込みました。

時空管理局については結構自己解釈が多分にあるので、気に食わなかったらごめんなさい。

次回は海上のジュエルシードのお話。

さて、どうしようかな?

次回もお楽しみに。




[8056] 第六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/12 22:56
第六話 海の上の決戦!燃えろ!拓也!!


とある森の中。

結界の張られたそこでは、ジュエルシードによって変貌した巨鳥が暴れまわっている。

その巨鳥の目の前になのはが現れた。

その巨鳥がなのはに気を向けた時、

「ブイブレスアロー!!」

青いV字型の魔力矢が巨鳥の翼を貫く。

巨鳥がバランスを崩したとき、ユーノとエリスのバインドが巨鳥の動きを封じる。

「なのは!今よ!」

「うん!」

エリスの声になのはは頷き、レイジングハートがシーリングモードに変形する。

桜色の光が巨鳥を絡めとったとき、巨鳥の顎下にⅧの文字が現れる。

「リリカル・マジカル。ジュエルシード シリアルⅧ 封印!」

巨鳥が光に包まれ、ジュエルシードが封印される。

ゆっくりと降りてきたジュエルシードはレイジングハートに吸い込まれた。



その様子を見ていたアースラでは、

「状況終了です。ジュエルシード NoⅧ、無事確保。お疲れ様、なのはちゃん、信也君、ユーノ君、エリスちゃん」

アースラのオペレーターが、なのはたちにそう言う。

「ゲートを作るね。そこで待ってて」

「う~ん。4人ともなかなか優秀だわ。このままうちに欲しいくらいかも」

その様子を見ていたリンディがそう言った。



別のモニター室では、エイミィがフェイトの事について調べていた。

「この黒い服の子。フェイトって言ったけ?」

「フェイト・テスタロッサ。かつての大魔導師と同じファミリーネームだ」

クロノが答える。

「え?そうなの?」

「だいぶ前の話だよ。ミッドチルダの中央都市で、魔法実験の最中に、次元干渉事故を起こして、追放されてしまった大魔導師」

「その人の関係者?」

「さあね。本人とは限らない」

エイミィは、フェイトの位置を特定しようとするが、

「ああ・・・・やっぱりダメだ。見つからない。フェイトちゃんはよっぽど高性能なジャマー結界を使ってるみたい」

「使い魔の犬。おそらくこいつがサポートしてるんだ」

「おかげで、もう2個もこっちが発見したジュエルシードを奪われちゃってる」

「しっかり探して捕捉してくれ。頼りにしてるんだから」

「はいはい・・・・・」




一方、拓也は何時も通り学校へ行っていた。

放課後になり、家に帰り、私服に着替えて海岸線を歩いている。

拓也はフェイトを捜し歩いていた。

拓也は、何でかわからないが、フェイトの事が気になっていた。

管理局に協力しなかったのは、フェイトを探すためでもあった。

「サラマンダー、何か分からないか?」

『無理だな。あの少女は、恐らく管理局とやらに見つからないように、ジャマー結界を使っているのだろう。我ではあの少女の魔力を捕捉できん』

「そっか・・・・・」

それを聞き、拓也はがっかりしながら当てもなく海岸線を歩いていた。

そして、とある岩場に差し掛かったとき、

「あ・・・・・」

偶然にもフェイトを見つけてしまった。

フェイトも拓也に気付く。

「アンタは!?」

アルフは拓也に敵意を見せる。

「おいおい!ただ会っただけで敵意を見せるなよ」

拓也に敵意をぶつけてくるアルフに拓也はそう言うが、

「何言ってるんだい!?アンタは時空管理局に協力してるんだろ!?」

「は?」

おもわぬ言葉に声を漏らした。

「管理局はフェイトを捕まえようとしてるんだろ!?でも、そうはいかないよ!!」

そう言って、アルフは拓也に飛び掛ってくる。

「おわっ!!」

拓也は慌てて逃げる。

少し前まで拓也がいたところにアルフが着地し、

「フェイトには指一本触れさせないよ!」

拓也に向かってそう言い放つ。

「ちょっと待て!誤解してるぞ!俺は管理局には協力してない!!」

「そんなこと言ったって、騙されるもんかい!!」

アルフは信じていないが、

「アルフ、待って」

フェイトがアルフを止める。

「フェイト、でもさ・・・・」

「タクヤなら大丈夫」

フェイトはそう微笑んで言う。

「うん・・・・・」

アルフはそう言われたら黙るしかない。

「で?フェイトはまだジュエルシードを探してるのか?」

「うん。あれは必要なものだから」

「そうか」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

そこで一旦会話が止まってしまうが、

「ねえタクヤ・・・」

なんとフェイトの方から話しかけてきた。

「何でタクヤは時空管理局に協力しなかったの?」

フェイトはそう問いかけた。

「ん?何でって・・・・・時空管理局の考え方が個人的に気にいらなかったってこともあるけど・・・・・」

「けど?」

「なんかさ、フェイトの事が気になって・・・・」

「え?私?」

フェイトはきょとんとして首を傾げる。

「信也となのはは協力したけど、俺は協力する気にはなれなかったんだ」

拓也は正直に言った。

その時、

「フェイト、そろそろ移動しないと拙いよ」

アルフがそう言った。

「うん、わかった・・・・」

そう言って。フェイトはアルフと共に立ち去ろうとした。

「フェイト!」

拓也はそんなフェイトを呼び止める。

「?」

フェイトは立ち止まって振り返った。

「無茶・・・・するなよ」

拓也の口から出てきたのは、そんな言葉だった。

その言葉に、

「・・・・・うん」

フェイトは微笑んで頷いた。

そして、フェイトは立ち去る。

その場に残された拓也は、

「・・・・・なんであんな事言ったんだろうな?」

自分の行動にポツリと呟いたのだった。





信也となのはが管理局に協力してから10日目。

休日に、街に出ていた拓也は強力な魔力反応を感じた。

「なっ!?これは!?」

『主よ。この魔力はあの少女のものだ!』

「何だって!?」

『場所は海上だ!』

「分かった!」

拓也は駆け出した。




その時、海上では、巨大な魔法陣が展開され、その中央にフェイトがいた。

「アルカス・クルタス・エイギアス・・・・・煌きたる電神よ、今導きの元、降り来たれ・・・・・バウエル・ザルエル・ブラウゼル・・・・」

魔法陣に稲妻が走る。

その様子を見ていたアルフは思った。

(ジュエルシードは、多分海の中。だから、海に電気の魔力流を叩き込んで、強制発動させて、位置を特定する。そのプランは間違ってないけど・・・・でも、フェイト!)

フェイトは呪文を唱え続ける。

「撃つは雷・・・・響くは轟雷・・・・アルカス・クルタス・エイギアス・・・・・」

フェイトの周りに複数の魔力球が生み出され、雷を纏う。

「はぁああああああああっ!!」

フェイトがバルディッシュを振り下ろすと、雷が海に叩き込まれた。

それと共に、海の中からジュエルシードの反応が起こる。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・見つけた・・・・残り5つ」

荒い息をつきながらフェイトは呟く。

(こんだけの魔力を撃ち込んで、更に全てを封印して。こんなのフェイトの魔力でも、絶対に限界超えだ!)

そう考えているアルフにフェイトは言った。

「アルフ!空間結界とサポートをお願い!」

「ああ!任せといて!」

アルフは直ぐに返事を返す。

(だから、誰が来ようが、何が起きようが、アタシが絶対守ってやる!)

その心に決意を秘めて。



ジュエルシードの影響で、海面が荒くなり、竜巻が巻き起こる。

「行くよバルディッシュ。がんばろう」

フェイトはバルディッシュを構え、ジュエルシードに立ち向かった。




一方、その様子はアースラでも確認されていた。

「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」

リンディが半分叫ぶように言った。

「無謀ですね。間違いなく自滅します。あれは、個人の成せる魔力の限界を超えてる」

クロノが冷静に分析する。

その時、ブリッジになのは達が駆け込んでくる。

「フェイトちゃん!」

なのはは、モニターに映るフェイトの姿を見て慌てて言った。

「あの!私達!急いで現場に!」

しかし、

「その必要はないよ。放っておけば、あの子は自滅する」

クロノが冷酷にそう言った。

その言葉に、なのは達は足を止める。

クロノは言葉を続けた。

「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」

「でも・・・」

「今のうちに、捕獲の準備を!」

「了解」

何か言いかけたなのはを無視して、クロノは局員に命令した。

「私達は、常に最善の選択をしなければいけないわ。残酷に見えるかも知れないけど、これが現実・・・・」

リンディはなのは達にそう言う。

「でも・・・・」

それでも何か言いたげななのはだったが、

「え?ちょっと!この魔力反応って!」

オペレーターをしていたエイミィが突如叫んだ。

「どうしたの!?エイミィ!」

リンディが問いかけた。

「い、今現場に近付く魔力反応を捉えたんですが、この前の赤い鎧の子です!」

「兄ちゃんが!?」

その報告に驚いた信也が叫んだ。






拓也はヴリトラフォームで海上を飛んでいた。

視線の先には荒れ狂う海。

そして、それに必死で抵抗するフェイトの姿。

「無茶するなって言ったのに・・・・・・」

そう呟いたとき、

「何をやってるんだ君は!?」

拓也のすぐ近くにモニターが開き、クロノが怒鳴った。

「君はジュエルシードには関わらないと約束しただろう!」

そう言われたが、

「ああ。ジュエルシードに関わるつもりはないさ。けど、フェイトに関わらないとは言ってない。フェイトのいるところに偶々ジュエルシードがある。それだけだ」

そう返す。

「そんなの屁理屈だ!」

「かもな」

「第一、君があの子を助ける理由はなんだ!?」

「別に何も・・・・強いて言えば、フェイトが気になるからだな」

「ふざけるな!」

クロノが怒鳴る。

「ふざけちゃいない。それが俺の理由だ。頑張ってる女の子を助けてやりたい。男として当然だと思うけど?」

「ええい!話が進まない!いいから君はこれ以上関わるんじゃない!あの子はいずれ自滅するか封印に成功したとしても力を使い果たす!そこで管理局がジュエルシードとあの子の確保を行なう!これで全て解決するんだ!」

「なるほど・・・・いってる事は理解できる」

「だったら!」

「けど納得は出来ない!!」

拓也は叫んだ。

「俺の心は・・・・いや、魂はそんな選択じゃ納得しない!俺はフェイトを助ける!それが今俺が納得する答えだ!!」

クロノは一瞬気圧される。

「だ、だが!その選択が絶対に正しいと言い切れるのか!?」

クロノはそう問い返す。

「・・・・・・少なくとも・・・・・あんな幼い女の子の頑張りを利用して漁夫の利を掠め取ろうとしているふざけた組織の選択よりかは間違ってないと言い切れるね!」

「何っ!?」

その言葉に、クロノは頭に血が上ったが既に拓也は遥か先へ飛んでいってしまった。



その話を聞いていたアースラでは。

「幼い女子の頑張りを利用して漁夫の利を掠め取ろうとしているふざけた組織・・・・か。耳に痛いわね」

リンディがポツリと呟く。

クロノは暫く通信機の前で、イラついていたが、

「まあいい。彼の魔力値ではあれだけのジュエルシードの魔力には対抗できないだろう。結果は変わらない」

「そんなっ!兄ちゃんを見捨てるの!?」

「此方の警告を無視した彼の自業自得だ。僕達のやる事は変わらない」

そう言って、クロノは準備を始めた。

しかし、

(くそっ!何で僕はこんなにもイラついてるんだ!?僕の選択は執務官として間違っていないはずなのに!)

その心は大きく揺れ動いていた。




フェイトは、海上で必死に戦っていた。

サイズフォームでジュエルシードのエネルギーを切り裂き、ジュエルシード本体に近付いていくが、

「きゃあっ!?」

勢いに耐え切れず弾き飛ばされる。

「フェイト!?フェイトー!!」

アルフが助けに行こうとしたが、ジュエルシードのエネルギーに阻まれる。

フェイトはそのまま落下していき、海に落ちるかと思われた。

だが、突如落下感が消え、誰かに抱えられる感覚がする。

「大丈夫か?」

続けて聞こえてきた声にフェイトは目を開ける。

「タク・・・ヤ・・・・?」

そこにいたのは拓也。

「ああ」

拓也は微笑む。

「飛べるか?」

「う、うん・・・・」

フェイトは自分で飛ぶと、拓也の腕から離れる。

「全く、無茶するなって言っただろ?」

「ご、ごめんなさい・・・・」

拓也の言葉にフェイトは謝る。

その時、

「フェイト!大丈夫かい!?」

エネルギーを振り切ったアルフが、フェイトに近付いてきた。

「アルフ、私は大丈夫だよ」

フェイトの言葉にアルフが安心すると、

「アンタ、何でここに?」

アルフが拓也に疑問を投げかける。

「バーカ、助けに来たに決まってるだろ」

拓也はそう言った。

その瞬間、荒れ狂うエネルギーが、3者を襲う。

「うぉっと!?和やかに話してる場合じゃないな」

拓也は体勢を立て直すと、

「コロナブラスター!!」

炎の弾丸を竜巻に放った。

しかし、

「チッ!効いてないか!」

コロナブラスターは僅かに竜巻を乱させただけで、全く効いていない。

それを見たフェイトは、

「タクヤ・・・・ここは危ないから逃げて」

そう言って、拓也を守るように立ちはだかる。

「フェイト?」

「アンタの魔力じゃ、これだけのジュエルシードの魔力に対抗できないんだ。確かにアンタは強いよ。1対1ならフェイトよりも強い。けどね、ジュエルシードを相手にするには、戦い方じゃどうしようもないんだ。ジュエルシードを相手にするために必要なのは純粋に魔力の高さだよ」

アルフもフェイトの横に並ぶ。

そして、フェイトは一度振り向き、言った。

「タクヤ・・・・・助けてくれて嬉しかったよ」

そんな風に笑ったフェイトの顔を見て、拓也は吹っ切れた。

「・・・・・・そんなこと言われたら、尚更ほっとけねえだろうが!!」

拓也は叫んだ。

「え?」

「で、でもさ・・・・」

いきなり叫んだタクヤに2人は困惑する。

「魔力が高ければいいんだな!?」

「う、うん」

拓也の勢いについ答えるアルフ。

「だったら!ぶっつけ本番!やるぞ!サラマンダー!!」

拓也は自分のデバイスに呼びかける。

『O.K. My lord. Form change.』

瞬間、拓也が炎に包まれる。

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

拓也は叫び声を上げた。

拓也の鎧が変化していく。

そして、炎が消えた時、

アグニフォームとヴリトラフォームの長所を兼ね備えた、第3の形態になっていた。

その名も、

『Alda form』

その身体からは凄まじい魔力が感じられる。

アースラでもそれを捉えていた。

「何なの!この数値!」

エイミィが叫んだ。

「今の状態でも魔力値250万を超えてます!」

拓也の情報を見て、驚きの声を上げる。

その時、拓也が動き出した。

フェイト達の前に出る。

『Rudori Tarpana. Set up』

両腕に装備されているルードリー・タルパナが反転。

更に展開され、二股の矛先のようになる。

『Brahma Sutra』

「ブラフマストラ!!」

拓也は両腕を交互に連続で繰り出し、無数の火球を放つ。

それは、2つの竜巻を一気に吹き飛ばした。

「「なっ!?」」

その事実に、フェイトとアルフは驚愕する。

その時、

「フェイトちゃん!!」

なんと、空からなのはが降りてきた。

信也もその後に続いている。

「手伝って!一緒にジュエルシードを止めよう!」

なのはのレイジングハートから、桜色の光がバルディッシュに注がれる。

『Power charge』

バルディッシュの魔力が回復した。

「2人でせーので一気に封印!」

なのはが言った。

フェイトはなのはを呆然と見ている。

「フェイト、どうするかを決めるのはおまえ自身だ。俺は封印がしやすいように竜巻を吹き飛ばしてやる」

拓也がそう言って、残り3つの竜巻に向かった。

「信也、ユーノ、エリス、アルフ!お前たちは2人を守れ!」

拓也は4人にそう指示した。

信也、ユーノ、エリスは直ぐに。

アルフは少し迷った後、動き出した。

4人は迫り来るジュエルシードのエネルギーから2人を守る。

なのはは先に魔法陣を展開し、封印の準備を完了する。

そして、フェイトを見た。

フェイトはまだ迷っていたが、

『Sealing form. Set up』

バルディッシュが自動的にシーリングフォームになる。

「バルディッシュ?」

一度、バルディッシュを見た後、フェイトはなのはを見上げた。

なのははウインクする。

フェイトは続けて、拓也に視線を向ける。

拓也も微笑んで頷いた。

フェイトは決心し、魔法陣を展開した。

それを確認した拓也は、3つの竜巻に向き直り、

「行くぞ!!」

向かい合わせた手の中央に火球を作り出した。

「うおおおおおおおっ!!」

拓也は魔力を込め、火球を巨大化させる。

「な、なんて高密度の魔力だ!」

それを見ていたユーノは驚く。

拓也はまるで小さな太陽を思わせるような高密度の豪火球を作り出した。

『Brahma Shil』

「ブラフマシル!!」

その豪火球を、3つの竜巻に向け放った。

豪火球は、3つの竜巻を物ともせずに吹き飛ばす。

「今だよ!フェイトちゃん!せーのっ!」

「サンダー・・・・・」

「ディバイィィン・・・・・・」

「レイジィィィィッ!!」

「バスターーーーーッ!!」

2人の魔力は、凄まじい衝撃をおびながら、ジュエルシード全てを封印する。



「ジュエルシード!5つ全ての封印を確認しました!」

エイミィが報告する。

「な、なんて出鱈目な!」

クロノが呆気に取られる。

「・・・・でも凄いわ」

呆然と見ていたリンディがそう呟いた。



封印した5個のジュエルシードを挟んでなのはとフェイトが対峙していた。

なのはは、少し考えた後、胸に手を当てて、はっきりと言った。

「友達に・・・・なりたいんだ・・・・」

その言葉に、フェイトは目を見開く。

2人は見つめ合う。

その2人を拓也達は見守った。

だが、その時、アースラに警報が鳴り響く。

「次元干渉!?別次元から、本艦及び戦闘空域に向けて、魔力攻撃来ます!ああっ!あと6秒!」

エイミィが慌てて報告する。

その直ぐ後に、雷がアースラを直撃する。

凄まじい揺れが乗組員たちを襲う。

戦闘空域にも雷が落ちる。

それに一番驚愕していたのはフェイト。

「・・・・母さん!?」

続けて落ちてきた雷がフェイトに直撃する。

「ああっ!うわあああああああああっ!!」

悲鳴を上げるフェイト。

「フェイト!!」

「フェイトちゃん!」

拓也となのはが叫び近付こうとしたが、

「きゃあっ!?」

なのはは落ちてきた雷の衝撃に吹き飛ばされ、

「ぐうっ!!」

拓也は直撃し、幾分かダメージを貰い足止めを喰う。

海に落下していくフェイトを、人間形態になったアルフが受け止めた。

アルフは、そのままジュエルシードに手を伸ばすが、

――ガキィ

転移してきたクロノのデバイスに止められる。

だが、

「邪魔ぁ・・・・するなぁ!!」

「うわっ!?」

そのまま魔力弾を放ちクロノを吹き飛ばす。

アルフはジュエルシードに目をやるが、

「3つしかない!?」

アルフは吹き飛ばしたクロノを見る。

その手には2つのジュエルシードがあった。

「あっ!」

その2つは直ぐにデバイスに吸い込まれる。

「うううっ!」

アルフは怒りの形相でクロノを睨み付ける。

「うああああああああっ!!」

拳を振り上げ、魔力弾を海面に叩き付けた。

水しぶきが上がり、視界を塞ぐ。


アースラでは、攻撃が止む。

「逃走するわ!捕捉を!」

リンディがそう指示するが、ダメージの影響で追跡不能との報告が来る。


水しぶきが収まり、なのはが目を開けたとき、そこにはフェイトもアルフも居なかった。

「あ・・・・・」

なのはは声を漏らす。


「機能が回復するまで、対魔力防御。次弾に備えて」

リンディはそう指示し、

「それから、なのはさん、信也君、ユーノ君、エリスさん、クロノの回収・・・・・それにあの拓也君もね」


海上では、呆然とする6人を雨が冷たく濡らしていた。




あとがき

とりあえず6話完成。

自分なりに考えたらこんな感じになりました。

何というか・・・・クロノが悪役っぽい?

う~ん、微妙だ。

後は、出ましたアルダフォーム。

結構強すぎたかも?

とりあえず流れ的には原作のまま。

はてさてこの先は?

次も頑張ります。




[8056] 第七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/05/17 22:28
第七話 少年たちの戦い。少女たちの戦い。


アースラに帰還した信也、なのは、ユーノ、エリスを待っていたのは、リンディの説教であった。

実はこの4人、先程の出撃は4人の勝手な判断であった。

4人は、組織として動く場合、個人の勝手な判断の危険性を聞かされた。

しかし、得ることもあったので今回は不問となった。

ただし、次は無いと念を押されて。

「クロノ。事件の大元について何か心当たりが?」

リンディがクロノに問う。

「はい。エイミィ、モニターに」

「はいは~い」

リンディの座るテーブルの中央にモニターが開き、そこに女性が表示される。

「あら!」

リンディはその女性を見て、驚いた声を上げる。

「そう。僕らと同じ、ミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサ。専門は、次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法な研究と事故で放逐された魔導師です。登録データとさっきの攻撃の魔力波動も一致しています。そして、あの少女フェイトは恐らく・・・・・」

クロノはそう言って、なのはに視線を向ける。

「そういえばフェイトちゃん。あの時、「母さん」って・・・・」

なのははその時を思い出し、そう言った。

「親子・・・・ね」

リンディが呟く。

「そ、その・・・・・驚いてたって言うより、怖がってたって感じでした・・・・」

なのはが続けて言った。

リンディは少し考えると、

「エイミィ!プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる?放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも!」

エイミィにそう指示する。

「はいはい!直ぐ探します!」

エイミィは返事をした。

なのはは、モニターに映し出されたプレシアの姿を見て、

「この人が・・・・・フェイトちゃんのお母さん・・・・・」

そう呟いた。

リンディは、部屋の隅にいた拓也に向き直る。

拓也が先に口を開いた。

「俺を連れてきた理由は何ですか?」

「そうね・・・・遠回しに言っても意味無いでしょうからはっきり言うわ。私たちに協力してくれないかしら?」

その言葉に拓也はピクリと反応する。

「何故ですか?」

「あなたの力は私たちにとっても魅力的だからよ」

「・・・・・本当ですか?」

拓也は疑わしそうにリンディを見る。

「・・・・はぁ~、やっぱりごまかし切れないか。はっきり言うわ。貴方の力は脅威と成りえるからよ。前までのあなたのデータは、魔力値としてのランクはAA~AA+。戦術を含めた総合的な魔導師ランクはAAA~AAA+。これならクロノでも十分に対処可能だった。でも先程のあなたの能力は平時の魔力値でも250万。最大発揮時では、800万を超えていたわ。この数値はなのはさんや信也君を超える数値。ランクにすればAAA+。それなら総合的な魔導師ランクは、Sランクは硬いわ。こちらにいるクロノの魔導師ランクでもAAA+。対処できるレベルを超えてしまっている」

リンディは素直に白状する。

「なるほど、だから味方に付けておきたいと・・・・・」

「そういう事よ。・・・・・で、どうかしら?」

「・・・・・気が進まないな」

拓也はそう呟く。

「理由を聞いても良いかしら?」

「・・・・・・じゃあ、逆に質問します。たとえ話ですけど、10人の人がいて危険な目に遭ってるとする。でも、1人を犠牲にすれば9人は確実に助かる。10人を救う方法もあるが、その成功率は1%未満。失敗した場合、10人全員が犠牲になる。こういった場合、時空管理局はどうする?」

拓也の問いに、リンディは俯き、

「セオリー通りにいくなら、1人を犠牲にする選択を選ぶでしょうね・・・・・・成功率が1%未満の危ない橋は渡れないわ」

そう呟く。

「でしょうね。だから気に入らない」

「何を言ってるんだ!君は!?」

拓也の言葉に、クロノが叫ぶ。

「俺は、そういう状況になったら迷わずに全員が助かる道を選ぶ」

「君は自分の言ったことを理解してるのか!?失敗したら全員を犠牲にするんだぞ!しかも成功する確率は1%未満!そんな選択馬鹿げてる!!」

「やる前からそんなことを言ってるから気に入らないんだ。成功率が0.1%だろうが0.01%だろうが、成功させりゃ100%さ。別にそっちが間違ってるってワケじゃない。ただ、俺はそっちの選択よりこっちの選択がいい。それだけだ」

「ぐっ・・・・・・」

クロノは拳を握り締める。

「これだけは言っておくけど、俺は別に時空管理局と敵対するつもりは無い。気には食わないけど、間違ってるとは言えないからな。ただし、管理局が俺の大切なものを傷つけようとするなら話は別だけどな」

拓也はそう言った。

「そう・・・・・そこまで決心してるなら私たちが言えることは無いわね」

リンディはため息をつきながらそう言った。

その時、

「艦長!」

クロノが叫んだ。

「彼との模擬戦の許可をください!」

唐突に、クロノは言った。






数分後。

拓也とクロノは、アースラ艦内にある訓練室で対峙していた。

その様子をモニターで見つめる、信也、なのは、ユーノ、エリス、リンディ、エイミィ。

「それにしても艦長。よく許可しましたね?」

エイミィがリンディにそう言う。

「そうね・・・・確かに私も驚いたけど、クロノが勝てば、彼の協力が得られる。やってみる価値はあるわ」

「でも、その代わりにクロノ君が負けたら、今後一切、あの子には口出し禁止なんですよね」

リンディとエイミィの言うとおり、拓也とクロノの模擬戦は、ある賭けをしている。

それは、もしクロノが勝てば、拓也は管理局に協力するという約束。

逆に拓也が勝てば、今後の拓也の行動に口出し無用という約束である。

「けど・・・・・・」

リンディが言葉を続けた。

「この戦いはクロノにとって必要な戦いになる。なんとなくそう思うの」

「必要な戦い・・・・ですか?」

「ええ。勘だけどね」

2人はそう言葉を交わすと、モニターに目を向けた。



2人はデバイスを展開する。

「行くぞ!」

クロノが叫ぶ。

クロノがデバイスを拓也に向け、

「スティンガーレイ!」

高速の光の弾丸を発射する。

それを、拓也は横に跳んで避ける。

「ファイアダーツ!」

拓也は炎を手裏剣のように幾つも飛ばした。

「そんなもの!」

クロノは、ラウンドシールドを発生させ、その炎を防ぐ。

だが、拓也はその間に両拳に炎を纏っていた。

「バーニング!サラマンダー!!」

集中された2発の火球がクロノに向け放たれる。

「くっ!」

クロノは、ラウンドシールドに更に魔力を籠める。

火球がラウンドシールドに当たると、

「ぐ・・・ぐぐぐ・・・・」

クロノはバリアが破られそうになるのを必死に堪える。

堪えきったところで、クロノは息を吐こうとしたが、

「何!?」

目の前に炎の竜巻があった。

「サラマンダー・・・・・ブレイク!!」

炎の竜巻の中から拓也が炎を纏った回転回し蹴りを、ラウンドシールドに叩き込んだ。

「うわっ!?」

クロノのラウンドシールドは、あっけなく破られ、クロノは衝撃で吹き飛ばされる。

だが、直ぐに体勢を立て直し、拓也に向かってきた。

クロノは、デバイスを振りかぶり、拓也に叩き付けてくる。

「はぁっ!」

「くっ」

拓也は両腕を頭上でクロスさせ、その攻撃を受け止める。

一瞬、2人の動きが止まる。

その時、

「ブレイクインパルス!!」

凄まじい衝撃が拓也を襲い、拓也は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

「がはっ!?」

更にクロノは間髪いれず、

「ブレイズキャノン!!」

先程よりも巨大な魔力弾が発射される。

その攻撃は、壁にめり込み、身動きの取れない拓也に直撃した。

爆発に飲まれる拓也。

だが、

「くぅ・・・・」

クロノは声を漏らした。

爆煙の中から、ヴリトラフォームになった拓也が現れた。

拓也は、大したダメージを負っていない。

腕のルードリー・タルパナが反転する。

「コロナブラスター!!」

銃口から、炎の弾丸が発射される。

クロノは再びラウンドシールドを張る。

コロナブラスターの一発一発はそれほど威力は無いのだが、

「はぁああああああああっ!!」

拓也は連射し続ける。

「く・・・この・・・・」

耐え切れなくなったクロノは飛び退いた。

そこが拓也の狙い目だった。

拓也は身体全体に炎を纏う。

「フレイム!ストーム!!」

拓也は炎を纏った状態でクロノに突撃した。

クロノの体勢は悪く、避けられそうに無い。

だが、クロノはここで思いがけない行動に出た。

炎に包まれた拓也にデバイスを振り下ろす。

ヴリトラフォームであり、先程より防御力が上がった拓也に、それだけでは効かない。

その間にも、クロノは炎でダメージを受けている。

しかし、次の瞬間、

「ブレイクインパルス!!」

「なっ!?」

再びブレイクインパルスが放たれ、拓也は床に叩き付けられた。

「ぐぐぐ・・・・」

拓也は何とか起き上がる。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・」

クロノも息を吐いていた。

「僕は・・・・・君だけには負けられない」

クロノは拓也に向かってそう言った。

そして、再びデバイスを構え、

「スティンガースナイプ!!」

1発の弾丸を放った。

「ッ!?」

拓也は咄嗟に避ける。

だが、その弾丸は弧を描いて再び拓也に襲い掛かる。

「チッ・・・・誘導弾か!サラマンダー、アグニフォーム!」

拓也は機動力重視のアグニフォームに変更する。

迫り来る誘導弾を跳び退き、伏せ、かわす。

それでも、しつこく迫ってくる誘導弾。

そこで拓也は、クロノに向かっていった。

クロノはそれに気付く。

「僕の直前まで引き付けて、ギリギリで避けようというんだろうけど・・・・そんな古い手には引っ掛からないぞ!」

拓也は、クロノに向かって突っ込んでくる。

クロノは弾の誘導に集中し、タイミングを見極めようとする。

しかし、クロノにはここで誤算があった。

クロノは拓也が自分の直前で回避行動を取ると思っていたのだ。

だが、拓也はそのまま腕を振りかぶり、クロノの腹に強烈なボディーブローを見舞った。

「ぐふっ!?」

当然、その瞬間は拓也の動きも止まるために、魔力弾の直撃を拓也は受ける。

「ぐうっ・・・・」

拓也はそれを根性で耐えた。

クロノは膝を着く。

「き、君って奴は、なんて出鱈目な・・・・・」

「へっ・・・・戦いに出鱈目も何もあるかよ」

拓也はそう言うが、拓也も装甲の薄いアグニフォームで攻撃を受けたため、結構なダメージがある。

クロノは、足を踏ん張って立ち上がる。

「僕は・・・・負けられないんだ!」

「・・・・・・お前がそこまで俺に突っかかる理由って何だよ?」

「君は、自分の力を理解しているのか!?君の力は時空管理局でも上位の部類に入る!そんな力を持った人間を放っておけるわけないだろ!」

クロノはそう叫ぶが、

「本当にそうか?」

拓也はそう聞き返した。

「管理局の人間として俺が危険だという事は、まあわからないでもない。お前たちにとって、こういう事は当たり前なんだろう。だけど、今のお前を見てると、心の底から俺に対してムキになっている。組織の目的の為にそこまでムキになる奴は滅多にいないと思うけど?」

「・・・・・・・・・」

拓也の言葉に、クロノは黙ってしまう。

「じゃあ、もう一つ聞く。お前の“戦う理由”って何だ?」

「ッ!そんなことは決まっている!」

そう叫びながら、クロノは拓也にデバイスを叩き付ける。

拓也はそれを手甲で受け止めた。

「時空管理局の決めた法を守り、次元世界の安定を保つためだ!」

クロノはそう叫んだ。

「そうか・・・・」

拓也は呟く。

「だったら、お前は俺に勝てねえよ!!」

拓也の拳が、クロノの頬に直撃した。

クロノは吹き飛ぶ。

「そんな他人任せの戦う理由を持った奴に、俺は負けない!」

拓也は言い放つ。

「ぐ・・・」

クロノは起き上がる。

「なら!君の戦う理由は何だ!」

クロノは逆に問いかける。

「決まっている!俺の家族を!仲間を!大切なものを護る為に!そして、俺が俺の信じた道を進むために!俺は戦う!!」

拓也は、そうはっきりと言い放った。

「・・・・・・・・」

クロノは暫く黙っていたが、

「・・・・・やっとわかった」

ポツリとクロノが呟いた。

「如何してここまで君の事が気に入らなかったのか・・・・・・」

クロノは突然、デバイスとバリアジャケットを解除した。

そして駆け出す。

「僕は!君に嫉妬していたんだ!」

拓也の顔面に殴りかかった。

その一撃を受けた拓也も、バリアジャケットを解除する。

「何がだよっ!」

拓也もクロノの顔面を殴り返す。

「君のその真っ直ぐな心に!自分の想いを貫ける意志の強さに!」

クロノは足を踏ん張り、再び拓也を殴りつける。

「自分の想いを貫こうとするのは当然だろうが!」

拓也も負けじと殴り返す。

「僕だってそうしたい!けど!執務官としての義務を僕は果たさなければいけない!」

クロノはまた殴り返す。

「そんなこと言うなら、時空管理局なんて辞めちまえ!」

拓也もまた殴り返す。

「時空管理局で、人助けをすることが僕の夢だ!」

「夢だって言っても、自分の納得できない事をしたら意味無いだろうが!」

「けど、それは結果的に多くの人を救う事になるんだ!」

「そのために少数の人が犠牲になるとしてもか!」

「僕だってその事に納得してるわけじゃない!」

「だったら全員救いやがれ!」

「簡単に言う!」

「出来なかったときのことは考えるんじゃねえ!」

「何!?」

「さっきも言ったが、成功率がいくら低かろうが成功させちまえば100%なんだよ!」

殴り合いを続けていた2人だったが、拓也の拳がクロノを少し吹き飛ばし、距離が開く。

「大切なのは信じる事だ。自分を、そして仲間を!」

拓也は続ける。

「お前らは、ただ失敗する事を恐れてるだけの臆病者だ!何のための組織だよ!1人じゃ出来ない事も2人ならできる。3人ならもっと出来る!だから組織を組んだんじゃないのかよ!」

拓也のその言葉は、クロノの心に響く。

顔を上げたクロノの表情は、どこかすっきりしていた。

「全く、君って奴は、馬鹿というか・・・・・考えなしというか・・・・・・」

クロノは苦笑しながら呟く。

「何だと~!!」

拓也はクロノの言葉に怒った。

「だからこそ、君は君なんだろうな」

クロノはそう言って、拳を振りかぶる。

「これが最後だ」

そう言ってクロノは駆け出す。

「上等だ!」

拓也もクロノに向かって駆ける。

「「うおおおおおおおおおっ!!」」

2人の放った拳は互いに交差し・・・・・

お互いの顔面に直撃した。

一瞬の静寂の後・・・・・・・

2人が同時に仰向けに倒れた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・・やるじゃねえか。温室育ちのお坊ちゃんだと思ってたのによ」

拓也が寝転がったままそう言った。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・見くびってもらっては困る。これでも執務官なんだ。訓練は欠かしていない」

クロノもそう返す。

「は・・・・ははは・・・・」

「ふ・・・・はははは・・・」

どちらからでもなく笑い声が漏れる。

そして、ほぼ同時に身体を起こした。

「改めて、神原 拓也だ」

拓也は右手を差し出す。

クロノはその手に手を伸ばし、

「クロノ・ハラオウンだ」

しっかりと握り返した。




結局2人の勝負は引き分けとなったので、拓也の扱いは現状維持という事になった。

尚、信也となのはには一時帰宅が許可された。

因みに、信也の10日間をごまかす為にリンディが家を訪ねたのだが、そのときのリンディの言葉の手腕は見事という他無かったそうな。



翌日。

拓也は何時も通りに、信也は久しぶりに学校に登校した。

信也もなのはも、心配はされたが、特に問題は無かった。

しかし、そこで信也となのはがアリサから、額に宝石のついた赤毛の大型犬を保護したという事を聞いた。

この犬の特徴を聞いてアルフを想像した2人は、放課後にアリサの家に行くこととなった。

序に拓也も信也のお目付け役という口実で一緒に行く事になっている。



そして、アリサの家。

庭に置かれた檻の中に、アルフはいた。

(やっぱりアルフさん・・・・・)

なのはが念話で話しかける。

(アンタか・・・・それに・・・・)

アルフは拓也に視線を向ける。

(その怪我・・・・もしかしてフェイトに関係する事か?)

拓也がそう問いかける。

(ああ・・・・アンタなら信用できる。お願いだよ、フェイトを助けて)

(どういうことだ?っと、信也、なのは、2人はアリサとすずかと一緒に)

(え?で、でも・・・・・)

(大丈夫よ。私たちも残るから)

そう言って、エリスとユーノは、檻に近付いていく。

「こら。ユーノ、エリス、危ないぞ」

アリサがそう言うと、

「大丈夫だよ。エリスちゃんとユーノ君は」

なのはがフォローする。

「この犬は俺が様子を見てるから、ちびっ子たちは、遊んでこいよ」

拓也が、そう言う。

アリサが少し文句を言ったが、なのはたちは家の中へ入っていった。

拓也はアルフに向き直る。

「じゃあ、アルフ。詳しい話を聞かせてくれるか?」

「ああ。確認するけど、この様子は管理局も見てるんだろ?」

「う、うん・・・・・」

ユーノが頷く。

『時空管理局、クロノ・ハラオウンだ。どうも事情が深そうだ。正直に話すなら悪いようにはしない。君の事も、君の主、フェイト・テスタロッサの事も』

クロノが通信でそう言う。

「話すよ。全部・・・・だけど約束して!フェイトを助けるって!あの子は何も悪くないんだ!」

アルフは哀願するようにそう言う。

『約束する』

クロノのその言葉を聞くと、アルフは話し始めた。

「フェイトの母親、プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ・・・・・・・・」

アルフの話す事実は拓也にも衝撃を与えた。

ジュエルシードを求めているのは、プレシアだという事。

フェイトはプレシアの命令でジュエルシードを集めていたという事。

しかし、事あるごとに、プレシアはフェイトを虐待していたという事。

そして遂に先日、アルフは耐え切れなくなり、プレシアに襲い掛かったが、あっけなく返り討ちにされた事を。

それを聞いたクロノは、目的をプレシアの捕縛に切り替えると報告してきた。

なのはと信也も、そのことに協力することを明言した。

そして、

「俺にも協力させてくれ」

拓也の言葉だった。

『君ならそう言うと思っていた。艦長には僕から話をしておこう。君の力も心強い』

クロノはそう言う。

「頼む」



翌日の早朝。

海鳴臨海公園。

そこで、なのはとフェイトが対峙していた。

その場にいるのは、上の2人と、拓也、信也、アルフ、ユーノ、エリスであった。

アルフがフェイトに呼びかける。

「フェイト・・・・もうやめよう。あんな女のいう事なんか、もう聞いちゃダメだよ。フェイト、このままじゃ不幸になるばっかりじゃないか。だからフェイト!」

アルフの言葉に、一瞬哀しそうな目をしたフェイトは、首を横に振る。

「・・・・それでも私はあの人の娘だから・・・・」

フェイトがそう呟いたとき、

「子供だからって、親のいう事全てを聞かなきゃいけないわけじゃない。あくまで決めるのは自分自身。フェイト自身なんだ。もう一度聞くぞフェイト。やめるつもりは無いんだな?」

フェイトは一瞬迷ったが、小さく頷く。

「それは、間違いなく自分で決めた意志なんだな?」

もう一度問いかける拓也にフェイトはもう一度頷いた。

「そうか・・・・・なら、俺から言えることは何もない」

拓也は少しがっかりした様子で下がる。

なのははレイジングハートを起動させ、バリアジャケットを纏う。

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね・・・・・逃げればいいって訳じゃ、もっと無い。きっかけは、きっとジュエルシード。だから賭けよう・・・・お互いが持ってる、全部のジュエルシード!」

『Put out』

レイジングハートが12個のジュエルシードを排出する。

『Put out』

バルディッシュも同じく9個のジュエルシードを排出する。

「それからだよ・・・・・・全部それから・・・・・・」

なのははレイジングハートを構え、フェイトも同じくバルディッシュを構える。

「私達の全ては、まだ始まってもいない。だから・・・・本当の自分を始めるために!」

なのははフェイトを見つめる。

「だから始めよう・・・・・最初で最後の本気の勝負!」

2人の戦いの火蓋が切って落とされた。



その様子は、アースラでも観測されていた。

「戦闘開始みたいだね・・・・」

エイミィが呟く。

「ああ」

「でも、珍しいよね。クロノ君が、こういうギャンブルを許可するなんて」

「まあ、なのはが勝つに越した事はないけど、2人の勝負自体、どちらに転んでもあんまり関係ないからね」

「そんなこと言って。ホントは拓也君の影響でも受けたんでしょ?」

エイミィはからかい半分でそんなことを言った。

「・・・・・そうかもね」

あっさりと認めたクロノに、エイミィは呆然となる。

「それよりもエイミィ、追跡の準備だけは怠らないようにね」

「はいは~い」

気を取り直したエイミィは、クロノの言葉に頷いた。



空中で、デバイス同士をぶつけ合う。

互いに弾きあい、距離を取る。

『Photon Lancer.』

バルデッシュが変形、フェイトの周りに複数の雷球が生み出される。

『Divine Shooter.』

なのはも、複数の桜色の魔力弾を生み出す。

一瞬にらみ合い、

「ファイア!」

「シュート!」

お互いが同時に魔力弾を放つ。

その攻撃は交差し、それぞれの標的に向かって飛ぶ。

なのはは、高速移動でフォトンランサーを避ける。

フェイトは避けようとしたが、ディバインシューターは誘導性を持っていたので、仕方なく障壁を張って、魔力弾を防ぐ。

「はっ!?」

フェイトがなのはの姿を確認したとき、なのはは既に次のディバインシューターを放とうとしていた。

「シュート!」

5発の魔力弾がフェイトに向かって放たれる。

『Scythe Form』

フェイトは魔力刃を発生させ、魔力弾を切り裂く。

4発を切り裂き、1発をかわして、その勢いでなのはに斬りかかった。

「あっ!くっ!」

なのはは、手を前に出し、

『Round Shield.』

魔力障壁を発生させた。

その障壁は、フェイトの斬撃を受け止める。

その隙になのはは、先程フェイトに避けられた1発の魔力弾をコントロール。

再びフェイトに向かわせた。

その事に気づいたフェイトは、すぐさま魔力障壁を発生させ、その攻撃を防いだ。

そして、直ぐになのはに視線を向けようとするが、なのはの姿は何処にも無い。

フェイトは辺りを見回す。

『Flash Move.』

「てぇええええええいっ!!」

なのはは、フェイトの真上から高速で突撃してきた。

打ち付けられようとするデバイスを、フェイトはバルディッシュで受け止める。

凄まじい衝撃が周りを襲う。

『Scythe Slash』

フェイトはなのはの隙を突き斬りかかる。

なのはは間一髪それを避けるが、

「はっ!」

避けた先には、フォトンランサーが待ち構えていた。

『Fire』

バルディッシュの合図と共に、それらがなのはに襲い掛かる。

なのはは咄嗟に障壁を張り、その攻撃を何とか逸らした。

「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・・」

「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

2人は息をつく。

なのはを見て、フェイトは思う。

(初めて会ったときは、魔力が強いだけの素人だったのに・・・・もう違う。速くて・・・・強い!・・・・・迷ってたら・・・・やられる!)

フェイトの目つきが変わる。

フェイトは巨大な魔法陣を展開した。

『Phalanx Shift.』

フェイトの周りに、無数のフォトンスフィアが生み出される。

「はっ!?くっ・・・・・・」

なのはがデバイスを構えようとしたが、なのはの両手が金色のバインドに拘束される。

「ライトニングバインド!まずい!フェイトは本気だ!」

「なのは!」

アルフの言葉に、信也は飛び出しそうになった。

だが、その信也を、拓也の手が制する。

「この勝負は2人の勝負だ。俺達が手を出すべきじゃない」

「でも!」

「信じてやる事も、仲間の役目だ。それに、ここで手を貸す事はなのはも望まない。そうだろ?」

拓也はなのはに念話を送りながら、そう言った。

(お兄さんの言う通りだよ!信也君、手を出さないで!)

「でも、フェイトのそれはホントに拙いんだよ!」

(平気!)

アルフの言葉にもなのははそう答える。

なのはの目の前のフェイトは呪文を唱えだす。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

フォトンスフィアが輝きを増す。

「フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイア!!」

フォトンスフィア一基ごとから、無数のフォトンランサーが放たれる。

身動きの取れないなのはは、すべて直撃する。

爆煙に包まれるなのは。

「なのは!」

「フェイト!」

信也とアルフが叫ぶ。

消耗したフェイトは、縮んでしまったフォトンスフィアを左手に集める。

そして、煙が晴れていくと、ラウンドシールドを張り、何とか攻撃を耐え切ったなのはの姿があった。

「撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね。今度はこっちの・・・・」

レイジングハートのシューティングモードを構える。

『Divine・・・・』

「番だよ!!」

『Buster.』

レイジングハートから放たれる、桜色の魔力波。

「はぁああああっ!」

フェイトは左手に集めた魔力弾を投げつける。

だが、

「あっ!?」

桜色の魔力波は、あっさりとその魔力弾を飲み込み、フェイトに襲い掛かる。

フェイトは咄嗟に障壁を張ってディバインバスターを受け止める。。

(直撃!?でも、耐え切る。・・・・あの子だって耐えたんだから!)

フェイトは障壁に魔力を籠める。

手袋が破れ、マントがボロボロになる。

「くっ・・・・う・・・あ・・・・・」

フェイトはもう耐え切れそうに無かった。

フェイトが挫けようとした時、

(フェイト・・・・・)

拓也の念話がフェイトに届いた。

(頑張れ!)

「タクヤ・・・・!」

その励ましに、気力を取り戻したフェイトは、

「はぁあああああっ!」

残った魔力を障壁につぎ込んだ。

そして、収束する魔力光。

「・・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

バリアジャケットがボロボロになりながらも、耐え切ったフェイトの姿があった。

しかし、桜色の光に気付く。

「受けてみて!ディバインバスターのバリエーション!」

なのはが魔法陣を展開する。

『Starlight Breaker.』

空気中の魔力が集束されていく。

「く・・・・」

フェイトが動き出そうとした時、手足を固定された。

「くっ!?バインド!?」

フェイトはもがくが抜け出せない。

「なのは・・・・意外と容赦ないな~・・・・」

流石の拓也も、これには冷や汗を流した。

「これが私の全力全開!スターライト・・・ブレイカー!!!」

放たれる特大の魔力砲撃。

フェイトは、なすすべなくその魔力光に呑まれた。

「な、なんつー馬鹿魔力!」

「うわ~、フェイトちゃん。生きてるかな!?」

アースラで2人の戦いを見ていたクロノとエイミィも驚愕している。


光が収束すると、なのはは荒い息をつく。

流石になのはもかなり消耗しているようであった。

フェイトは、気を失い海へ落下していく。

「フェイトちゃん!」

なのはは叫んだが、

「おっと」

フェイトを拓也が受け止めた。

その姿はアルダフォーム。

「あ、お兄さん」

「決着だな」

拓也は微笑する。

その時、フェイトが目を覚ます。

「う・・・・うん・・・・・・・・」

「気が付いたか?フェイト」

「・・・・タクヤ?」

なのはがフェイトに近付く。

「ごめんね、大丈夫?」

なのはの言葉にフェイトは頷く。

「私の・・・・勝ちだよね?」

「そう・・・・みたいだね・・・・・」

『Put out』

バルディッシュが、ジュエルシードを排出する。

「よし、なのは。ジュエルシードを確保して。それから彼女を・・・・」

「いや、来た!」

クロノの指示の途中でエイミィが叫んだ。

そらに暗雲が立ち込める。

そして、稲妻が走る。

それに気付いた拓也は、

「来るか!?けど、俺が編み出したオリジナルの・・・・」

拓也はフェイトを抱きかかえたまま、右手に炎を纏う。

「ファイヤー・・・・・」

手を真上に突き出すと同時に、

「ウォール!!」

炎の壁が生み出された。

紫の稲妻が襲い掛かる。

稲妻は炎の壁に当たった。

「ぐぅ!・・・・負けるかっ!!」

拓也は一瞬押されたが、直ぐに持ち直す。

だが、その押された一瞬の間に、9個のジュエルシードは奪われてしまった。

しかし、それが管理局の狙い目。

「ビンゴ!尻尾掴んだ!」

「よし。不用意な物質転送が命取りだ。座標・・・」

「もう割り出して、送ってるよ」

仕事が早いエイミィである。

座標が確認されたアースラでは、リンディが命令を下した。

「武装局員!転送ポートから出撃!任務は、プレシア・テスタロッサの身柄確保です!」

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

武装局員たちは転送されていった。



クロノは現場にいる拓也達に言った。

「とりあえず、君達はアースラに来てくれ。それから、フェイト・テスタロッサとその使い魔については、身柄を拘束させてもらう。拓也、文句を言いたいとは思うが、この位は理解してくれ」

「わかったよ。仕方ねえな」

そう言って、フェイトたちを含めた7人はアースラに転送されていった。





あとがき

とりあえず七話完成。

なのはとフェイトの少女組が撃ち合いで友情を深めるなら、男はやっぱり拳と拳の殴り合いですよ!(爆)

なんとなく拓也とクロノの殴りあいをさせてみたかった。

言葉のつながりがおかしいかな?

それに殴り合いに持ってこさせるのも結構強引かも?

序に友情深めてます。

拓也はとりあえず、クロノやリンディ個人に協力するのはやぶさかではないと思っております。

単に管理局全体の体制が気に入らないだけです。

なのは対フェイトは大体アニメの通り。

少し拓也が口出した程度です。

さてさて、早くも無印のクライマックス。

それでは、次も頑張ります。





[8056] 第八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/06/21 20:45
第八話 決戦!時の庭園


アースラ内に転送された拓也達。

そこでフェイトは、武装解除され拘束される。

アルフの方は、協力的だったためか拘束されることはなかった。

拘束されたフェイトを連れ、拓也達がブリッジに入ると、

「お疲れ様・・・・」

そうリンディが出迎えた。

モニターには、武装局員が突入した映像が映っている。

リンディはフェイトに視線を移し、

「それからフェイトさん。初めまして」

フェイトは何も答えず、待機状態になったバルディッシュを握り締める。

すると、念話でリンディが言った。

(母親が逮捕されるシーンを見せるのは忍びないわ。皆、フェイトさんを別の部屋へ)

(は、はい・・・)

リンディの言葉に、なのはが答える。

「フェイトちゃん。よかったら私の部屋・・・・・」

と、なのはが言いかけたその時、

「総員、玉座の間に侵入。目標を発見」

オペレーターから報告が来る。

モニターには、その様子が映し出されていた。



「プレシア・テスタロッサ!時空管理法違反、及び管理局艦船への攻撃容疑で、あなたを逮捕します!」

「武装を解除して、こちらへ」

そう局員が、玉座に座るプレシアを取り囲みながら言った。

「フッ・・・・・」

しかし、プレシアは余裕の態度を崩さず、それどころか不敵な笑みを漏らす。

数人の局員が、危険物が無いかを調べるために、玉座の後方に向かう。

すると、プレシアの目つきが変わった。

局員は扉を発見し、その扉を開ける。

そこには、

「えっ!?」

モニターでその様子を見ていたなのはが思わず声を漏らした。

その扉の先には、一つのシリンダー。

その中には、フェイトと瓜二つの少女がいた。

「あ・・・・あ・・・・・・」

フェイトはその光景を見て驚愕する。

次の瞬間、プレシアが魔法で武装局員を吹き飛ばす。

「私のアリシアに・・・・近寄らないで!」

プレシアが、シリンダーの前に立ちはだかる。

「う、撃て!」

局員たちは魔法を放つが、プレシアは微動だにしない。

「うるさい・・・・」

プレシアが前に手をかざすと、魔力が集中する。

「危ない!防いで!」

気付いたリンディがそう叫ぶ。

しかし、紫色の雷が部屋全体に降り注ぐ。

「「「「うわぁああああああああ!!」」」」

局員たちの悲鳴が響く。

雷が収まったときには、局員は全員床に倒れていた。

「フッフフフ・・・・・アッハハハ・・・・・」

プレシアは怪しく笑う。

「いけない!局員たちの送還を!」

リンディがエイミィにそう命令する。

「りょ、了解です!」

エイミィは慌てて転送準備を開始する。

「アリ・・・・シア・・・・?」

その様子をモニターで見ていたフェイトは呆然と呟いた。

「座標固定!0120 503!」

「固定!転送オペレーションスタンバイ!」

局員たちが転送される中、そんなことには微塵も興味を向けずに、プレシアは少女の入ったシリンダーに手を触れる。

「もうダメね・・・・時間が無いわ・・・・・たった9個のロストロギアでは、アルハザードに辿り着けるかわからないけど・・・・」

すると、プレシアはモニター越しにこちらを睨んだ。

「だけど、もういいわ・・・・・終わりにする。この子を亡くしてからの暗鬱な時間も・・・・・この子の身代わりの人形を、娘扱いするのも」

「ッ!?」

その言葉を聞いたフェイトが目を見開く。

「聞いていてフェイト?あなたの事よ。せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない。私のお人形」

それを聞いたエイミィは、俯いて話し出した。

「最初の事故の時にね、プレシアは実の娘、アリシア・テスタロッサを亡くしているの。彼女が最後に行なっていた研究は、使い魔とは異なる、使い魔を超える人造生命の生成。そして、死者蘇生の秘術。『フェイト』って名前は、当時彼女の研究に付けられた開発時のコードネームなの」

「よく調べたわね。そうよ、その通り。だけどダメね。ちっとも上手くいかなかった。作り物の命は所詮作り物・・・・失ったものの代わりにはならないわ。アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々我侭も言ったけど、私のいう事をとてもよく聞いてくれた」

「やめて・・・・・」

なのはが哀しそうに呟く。

「アリシアは・・・・いつでも私に優しかった・・・・・フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽者よ。せっかくあげたアリシアの記憶も、あなたじゃダメだった」

「やめて・・・・やめてよ!」

「アリシアを蘇らせるまでの間の、私が慰みに使うだけのお人形・・・・・だからあなたはもう要らないわ。何処へなりと消えなさい!」

残酷な言葉を突きつけられるフェイトの目には涙が滲んでいた。

「お願い!もうやめて!!」

なのはが悲鳴を上げるように叫ぶ。

「フッハハハハ!・・・・・ハッハハハハハ!」

プレシアは笑う。

フェイトの脳裏では、昔の記憶の優しいプレシアと、最近の虐待の記憶が蘇る。

「いいことを教えてあげるわフェイト。あなたを作り出してからずーっとね、私はあなたが・・・・・・大嫌いだったのよ!」

「あっ・・・・」

フェイトの手からバルディッシュが落ち、床に当たって罅割れる。

フェイトの瞳からは光が失われ、その場で崩れ落ちる。

「フェイトちゃん!」

なのはが声をかけるが、フェイトは反応しなかった。

「アッハハハハ!」

プレシアの笑い声が響く。

その時、

「ふざけるなっ!!!」

拓也の怒号が響いた。

その様子に近くにいた信也やなのはたちは驚き、ビクッと身体を一瞬震わせる。

「さっきから聞いていれば、ふざけてるのかお前はっ!!?」

拓也の表情は鬼気迫るものがあった。

「同じ命は1つしかない!違う命を生み出せば、違う人間になるのは当然だろうが!そんなこともわからなかったのかお前はっ!!お前は命を何だと思ってるんだ!!」

拓也の言葉は止まらない。

「フェイトがアリシアの偽者?それこそ大きな間違いだ!フェイトはフェイト!アリシアじゃない!フェイトにアリシアの代わりは出来ないし、逆にアリシアだってフェイトの代わりは出来ない!それにフェイトは人形なんかじゃない!自分の心を持った、1人の人間だ!!」

拓也の魂の叫び。

それを聞いたプレシアは、

「くだらないわね」

その言葉を一蹴した。

「局員の回収、完了しました」

アースラのオペレーターが、局員の回収を報告する。

その時、

「た、大変です!ちょっと見てください!」

エイミィが慌てた声で報告してきた。

「屋敷内に、魔力反応多数!」

「何だ?何が起こってる!?」

時の庭園内の至る所から傀儡兵が出現する。

「庭園敷地内に魔力反応多数!いずれもAクラス!」

「総数60・・・・80・・・・まだ増えています!」

オペレーターの報告が届く。

「プレシア・テスタロッサ・・・・一体何をするつもり?」

拓也は、その騒動を無視して、フェイトに近付く。

そして、フェイトを抱き上げた。

「信也、医務室は何処だ?」

拓也は信也に尋ねる。

「あ・・・うん・・・案内するよ」

突然声をかけられた信也は少し慌てた。

なぜならば、拓也の声は冷静に聞こえたが、その内心は怒りでいっぱいである事に気付いていたからだ。

付き合いの浅い者は気付かなかったが、一緒に暮らしている信也は、その事を敏感に感じ取った。

信也が先導して歩き出す。

その後に拓也、なのは、アルフ、ユーノ、エリスが続く。

だが、拓也はブリッジの扉を出る前に一度立ち止まり、

「クロノ」

クロノに声をかけた。

「クロノ、直ぐにあいつの所に向かうだろうけど、そのときは俺も連れて行け」

拓也はそう言うと、返事を待たずにブリッジから出て行った。



医務室のベッドにフェイトを寝かせた拓也。

「フェイト、俺は行ってくるから。お前は怒るかもしれないけど、あの分からず屋を一発殴ってこないと気が済まないから・・・・・・」

拓也はフェイトの手を握る。

「フェイト、お前は何もかも失ったと思ってるかも知れないけど、そんなことは無い。お前はまだ生きてる。お前にはまだ明日が、未来がある。だから俺はそこで待ってる。お前が立ち上がるのを。立ち上がって手を伸ばせば、俺はその手を掴んでやる。本当のお前は、そこから始まるんだ」

そう言って拓也は、罅割れたバルディッシュをその手に握らせる。

そして、踵を返し、医務室を出ようとした時、

「あの、お兄さん!」

なのはが声をかけてきた。

「私も行きます!」

「僕も行く!」

なのはと信也がそう言った。

「当然、私たちも」

エリスもそう言い、ユーノが頷く。

拓也は微笑すると、

「行くぞ」

そう言って駆け出した。

4人もその後に続く。

アルフは、5人を心配そうに見つめた。



駆けていく5人の先で、クロノが待っていた。

「来たか。やっぱりなのはたちも」

信也やなのはたちの行動も、クロノはお見通しだったようだ。

「準備はいいか?」

クロノの言葉に全員が頷いた。



時の庭園の入り口に転送された拓也達の目の前には、十数体の傀儡兵。

「いっぱいいるね」

ユーノが呟く。

「ここはまだ入り口だ。中にはもっといる」

クロノがそう言う。

「こいつらは?」

拓也が尋ねた。

「近くの相手を攻撃するだけの、ただの機械だ」

クロノの答えを聞くと、

「そうか。なら遠慮する事はないな。皆、ここは俺にやらせてくれ」

拓也が前に歩み出る。

「えっ?兄ちゃん?」

「さっきから俺は頭にきてるんだ。こいつらでウサ晴らしさせて貰う!!」

拓也がそう言うと、拓也は炎に包まれる。

『Alda form』

アルダフォームとなった拓也は、一気に間合いを詰める。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

一番近くにいた傀儡兵をぶん殴った。

殴られた傀儡兵は吹き飛び、後方にいた数体を巻き込んで爆発する。

その時、後ろから別の傀儡兵が攻撃しようとして来るが、

「はぁああああああああああっ!!」

回し蹴りが炸裂し、攻撃しようとしていた傀儡兵は胴から真っ二つになる。

空中からも数体が襲い掛かってくるが、何の問題も無く返り討ちにする。

あっという間に小型の傀儡兵を片付け、最後の1体、今までより巨大な傀儡兵を見上げる。

大型の傀儡兵は、手に持ったバトルアックスを振り上げ、拓也に向かって振り下ろす。

――ガキィ

だが、拓也はそれを左手1本で受け止めた。

そして、右の拳を握り締める。

「おおおおおおおおおおっ!!」

渾身の拳を、傀儡兵の胴体に叩き込んだ。

その傀儡兵は、胴体に大きな穴を開ける。

拓也がその場を飛び退いた一瞬後、爆発して粉々に砕け散った。

「に、兄ちゃん凄い・・・・・」

「魔法使わずに勝っちゃった」

一分とかからずに全滅させた拓也の実力に驚く信也達。

「ぼうっとしない!行くよ!」

クロノが信也達に声をかけ、内部に突入した。



通路を走る拓也達。

通路の所々は崩れていて、外の空間が露になる。

「この穴・・・・黒い空間があるところは気を付けて!虚数空間、あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間なんだ。飛行魔法もデリートされる。もしも落ちたら、重力の底まで落下する。二度と上がってこれないよ!」

「き、気を付ける!」

クロノの言葉になのはが返事をした。

行く先にあった扉をクロノが蹴り開ける。

その中には、またもや傀儡兵たちがいた。

「ここで二手に分かれる。君達は最上階にある駆動炉の封印を!」

「クロノ君は?」

「プレシアの所へ行く。それが僕の仕事だからね」

クロノがそう言ったとき、

「俺もそっちに行かせて貰うぞ」

拓也が言った。

「そうか・・・・・わかった」

クロノは何を言っても無駄だろうと思い、同行を許可した。

「今道を作るから、そしたら!」

「「うん」」

信也となのはが頷く。

『Blaze Cannon』

クロノのデバイスの先から巨大な魔力弾が撃ち出される。

それは、上へ続く階段周辺の傀儡兵を吹き飛ばす。

その隙に、信也がユーノを、なのはがエリスを掴み、階段へ飛んでいく。

「お兄さん!クロノ君!気をつけて!」

最後になのはがそう声をかけてきたので、2人は微笑んで答えた。

2人は目の前の傀儡兵に向き直る。

「さて、やるかクロノ!」

「ああ!」

2人は戦闘を再開した。



一方、アースラでは、

「私も出ます。庭園内でディストーションシールドを展開して、次元震の進行を抑えます」

リンディがそう宣言して現場に向かう。

医務室でも、モニターで様子を見ていたアルフがフェイトに語りかけた。

「・・・・あの子達が心配だから、アタシも・・・・ちょっと手伝って来るね。すぐ帰ってくるよ・・・・・それで、全部終わったら、ゆっくりでいいから、アタシの大好きな、本当のフェイトに戻ってね。これからは、フェイトの時間は、フェイトが自由に使っていいんだから・・・・・」

そう言って、アルフは医務室の扉に向かう。

途中、一度振り返ったが、そのまま医務室を出て行った。

アルフが出て行った後、フェイトの瞳は僅かに光を取り戻し、モニターに視線を向ける。

(母さんは、最後まで私に微笑んでくれなかった・・・・・私が生きていたいと思ったのは、母さんに認めて欲しかったからだ・・・・・どんなに足りないといわれても・・・・どんなに酷い事をされても・・・・・・だけど・・・・・・笑って欲しかった・・・・・あんなにはっきり捨てられた今でも・・・・・私、まだ母さんにすがり付いてる・・・・・・・)

モニターに、なのは達と合流するアルフの姿が映る。

(アルフ・・・・・・ずっと傍にいてくれたアルフ・・・・・・言う事を聞かない私に、きっと、随分と悲しんで・・・・・)

フェイトはなのはに視線を移す。

(何度もぶつかった、真っ白な服の女の子・・・・・・・初めて私と対等に、真っ直ぐに向き合ってくれたあの子・・・・・何度も出会って、戦って・・・・・何度も、私の名前を呼んでくれた・・・・・何度も・・・・)

モニターの場面が変わり、拓也達の戦う様子が映し出される。

(・・・・タクヤ・・・・初めて会ったときから、とても気になってた男の人・・・・・出会いが衝撃的過ぎたからかも知れないけど・・・・・タクヤも私のことをずっと気に掛けてくれた・・・・・・私の為に・・・・・本気で怒ってくれた・・・・・・・)

フェイトは身を起こす。

(生きていたいと思ったのは、母さんに認めて貰いたかったからだった。それ以外に、生きる意味なんて無いと思ってた!それが出来なきゃ生きていけないんだと思ってた!)

そう思うフェイトの目からは涙が溢れている。

フェイトの脳裏になのはの言葉が思い浮かぶ。

『ただ捨てればいいって訳じゃないよね・・・・・逃げればいいって訳じゃ、もっと無い』

(私の・・・・私たちの全ては・・・・・まだ始まってもいない)

次に、先程言われた拓也の言葉。

『お前にはまだ明日が、未来がある。だから俺はそこで待ってる。お前が立ち上がるのを。立ち上がって手を伸ばせば、俺はその手を掴んでやる。本当のお前は、そこから始まるんだ』

(私の明日・・・・・私の未来・・・・・私が立ち上がって明日に手を伸ばせば、そこにいるタクヤが私の手を掴んでくれる・・・・・・私が私の明日を掴んだとき、その時に本当の私が始まる・・・・・・・)

フェイトの手の罅割れたバルデッシュが輝き、デバイスフォームになる。

その姿も罅割れていた。

「そうなのかな?バルディッシュ・・・・・私、まだ始まってもいなかったのかな?」

『Get set』

バルディッシュが無理に起動する。

フェイトはバルディッシュを抱きしめた。

「そうだよね・・・・バルディッシュも、ずっと私の傍にいてくれたんだもんね・・・・・お前も・・・・このまま終わるのなんて、嫌だよね・・・・」

『Yes, sir』

フェイトはバルディッシュを構える。

「上手くできるかわからないけど、一緒に頑張ろう」

フェイトはバルディッシュに魔力を籠める。

フェイトの魔力により、バルディッシュが金色に輝く。

そして、表面が砕けるのと同時に、新品同然のバルディッシュの姿があった。

『Recovery.』

「私たちの全ては、まだ始まってもいない・・・・」

フェイトはマントを具現しそれを纏う。

それと同時にバリアジャケットを纏った。

「だから、本当の自分を始めるために」

フェイトは足元に魔法陣を展開する。

「今までの自分を、終わらせよう」

その言葉と同時に転送魔法を起動させ、時の庭園へと向かった。



その頃のなのは達は、数の多い傀儡兵達に苦戦を強いられていた。

信也が傀儡兵を切り裂き、なのはが撃ちぬく。

アルフは、牙で食い千切り、ユーノとエリスはバインドで拘束している。

その時、ユーノが拘束していた大型の傀儡兵が、バインドを引きちぎり、なのはに襲い掛かる。

「なのは!」

ユーノの声になのはが振り返ったとき、傀儡兵のバトルアックスが振り上げられていた。

「なのは!!」

信也も叫ぶ。

なのはは不意を突かれ、避けられない。

なのはは覚悟して目を瞑った。

しかし、次の瞬間、

『Thunder Rage』

雷が降り注ぎ、傀儡兵の動きを止める。

驚いたなのはが上を見上げると、フェイトが魔法陣を展開していた。

『Get set』

「サンダー・・・・・レイジィィィィィ!!」

雷撃が傀儡兵に直撃し、破壊する。

「フェイト!?」

アルフが驚愕した声を漏らした。

フェイトは、なのはと同じ高度まで降りてくる。

それをなのはは感極まった表情で見つめた。

フェイトは、少し顔が合わせ辛いのか、少し顔を背けている。

その時、壁をぶち破って今までより更に巨大な傀儡兵が姿を現す。

その傀儡兵は背中に背負ってあったショルダーキャノンを展開する。

「大型だ。今までよりバリアが強い」

よく知るフェイトが説明する。

「うん、それにあの背中の・・・・」

なのはがそういうと、ショルダーキャノンにエネルギーがチャージされ始める。

「だけど・・・・2人でなら・・・・」

フェイトのその言葉に、なのはは顔を輝かせ、

「うん!うん、うん!」

笑顔で頷く。

と、その時、

「なのは~~~?僕は無視?」

信也が、自己主張するように拗ねた声を上げる。

そんな信也になのはは苦笑し、

「にゃはは・・・・ごめんごめん。それじゃあ改めて3人で・・・・」

フェイトは、バルデッシュを構える。

「行くよ、バルディッシュ!」

『Get set』

なのはもレイジングハートを構える。

「こっちもだよ、レイジングハート!」

『Stand by, Ready.』

レイジングハートがシューティングモードに変形する。

「僕達も負けないよ、ブレイブハート」

『Arrow mode』

ブレイブハートがV字型の弓に変形する。

傀儡兵のショルダーキャノンが放たれようとした時、

「サンダー・・・・・スマッシャーーーー!!」

「ディバイィィィン・・・・バスターーーーー!!」

「ブイブレス・・・・・アローーーーー!!」

3つの閃光が傀儡兵に襲い掛かる。

傀儡兵はバリアで防ぐ。

3つの閃光がバリアに当たり、一瞬止められるが、

「「「せぇーのっ!!」」

3人同時に更に魔力が込められ、バリアを突き破った。

それは、凄まじい威力を誇り、壁をぶち抜いて外まで続く大穴を開ける。

それを確認したなのはが、

「フェイトちゃん!」

笑顔でフェイトに声をかける。

「フェイト!フェイト!フェイトー!」

人間形態となったアルフが泣きながらフェイトに抱きついた。

「アルフ・・・・心配かけてゴメンね。ちゃんと自分で終わらせて・・・・それから始めるよ。本当の私を・・・・・」





やがて、フェイトを加えた一行は、駆動炉へと向かうエレベーターのある部屋へと到着する。

「あそこのエレベーターから駆動炉へ向かえる」

「うん。ありがとう・・・・・・フェイトちゃんは、お母さんの所に」

「うん」

なのはは、レイジングハートを置き、フェイトに近付く。

「私・・・・その・・・・上手く言えないけど・・・・・」

なのはは、フェイトの右手に自分の手を重ねる。

フェイトは少し驚いた顔でなのはを見る。

「・・・・がんばって・・・・」

なのはがフェイトにそう呟く。

フェイトは少しの間なのはを見つめ、なのはの手に自分の左手を重ねて言った。

「ありがとう・・・・・」

2人は見つめあう。

「今、拓也とクロノが向かってる!急がないと間に合わないかも!」

ユーノが慌てた調子で言った。

「フェイト!」

アルフが呼びかける。

「うん!」




信也、なのは、ユーノ、エリスは駆動炉へ到達する。

そこには、まだ数十体の傀儡兵がいた。

なのはは吹き飛ばそうとレイジングハートを構えようとしたが、

「なのは!なのはは封印に集中するんだ!露払いは僕達がやる!」

信也がそう言った。

「信也の言うとおりよ。防御は私たちに任せて」

エリスもそう言う。

「うん、何時もどおりだよね」

なのはが笑顔で言った。

3人は不思議そうな顔でなのはを見る。

「皆、いつも一緒にいてくれて、守っててくれたよね」

なのははレイジングハートを構え、シーリングモードにする。

「だから戦えるんだよ。背中がいつも暖かいから」

その言葉に、3人は微笑む。

なのはは、魔法陣を展開した。

「いくよ!ディバインシューターフルパワー!!」

なのはは、4つの魔力弾を生み出す。

そして、レイジングハートを振りかぶり、

「シューーーーーーーートッ!!」

なのはは全力で魔力弾を放った。




最下層のプレシアがいる場所にもその振動が届いていた。

プレシアにリンディから念話が届く。

(プレシア・テスタロッサ。終わりです。次元震は、私が抑えています。駆動炉は、じき封印。あなたの元には、執務官が向かっています。忘れられし都、アルハザード。そして、そこに眠る秘術は、存在するかどうかも曖昧な、ただの伝説です!)

その言葉にプレシアは反論する。

「ッ・・・・違うわ。アルハザードへの入り口は、次元の狭間にある。時間と空間が破壊されたとき、その狭間に滑落していく輝き・・・・・道は、確かにそこにある」

(ッ!?随分と分の悪い賭けだわ・・・・・・・・あなたはそこへ行って何をするつもりなの?失った時間と、犯した過ちを取り戻す?)

「そうよ・・・・・私は取り戻す・・・・・私とアリシアの・・・・過去と未来を!・・・・・取り戻すのよ・・・・・この愛せなかった世界の全てを!」

その時、壁が爆発し吹き飛ぶ。

「ッ!?」

そこから、2人の人影が現れる。

「世界は何時だって!こんなはずじゃないことばっかりだよ!何時だって、誰だって、昔からずっと、そうなんだ!」

その時、上からフェイトとアルフが降りてくる。

「こんなはずじゃない現実から、逃げるか?それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、何処の誰にもありはしない!!」

フェイトは哀しそうな瞳でプレシアを見つめる。

「ゴホッ・・・・ゴホッ・・・・・」

その時、プレシアが咳き込み、吐血する。

「母さん!?」

フェイトが駆け寄ろうとしたが、

「何しに来たの?」

プレシアは冷たく言い放つ。

フェイトは足を止める。

「消えなさい・・・・・もうあなたに用はないわ」

プレシアはそう言う。

だが、フェイトは、

「あなたに言いたい事があって来ました」

そうプレシアに言う。

「私は・・・・・・私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが作った、ただの人形なのかもしれません・・・・・・・だけど・・・・・私は・・・・・・フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらった・・・・・あなたに育ててもらった・・・・あなたの娘です!」

「ッ・・・・・・フッ・・・フフフフ・・・・アハハハハハハッ!だから何?今更あなたを娘だと思えばいいの?」

「あなたが・・・・・それを望むなら・・・・・・それを望むなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からも、あなたを守る・・・・・」

フェイトは真剣な眼でプレシアを見つめる。

「私があなたの娘だからじゃない・・・・・・あなたが私の母さんだから」

フェイトは一歩踏み出し、手を前に伸ばす。

それを・・・・プレシアは・・・・・・

「くだらないわ」

跳ね除けた。

「ッ!?」

フェイトは悲しみに満ちた目で、前に伸ばした手を見つめる。

「それが・・・・・お前の答えか」

いつの間にか。拓也がフェイトの隣に進み出て、プレシアに言った。

「一つ、教えといてやる。仮にアリシアが生き返ったとして、お前の事をどう思うか」

プレシアはピクリと反応する。

「失望だ」

拓也はそう言った。

「そんなはずないわ!!アリシアは喜んでくれる!子供に何がわかるって言うの!!」

プレシアは激昂したように叫んだ。

「子供だからこそ・・・・・子供の気持ちは大人以上に分かるつもりだ。確かに自分の為に母親が頑張ってくれた・・・・・その事については、喜ぶさ・・・・・・けど、そのために多くの人々を傷つけてきた・・・・・・優しかった母親がそんなことをしていたと知れば、少なくとも俺は大きく失望する。アリシアがフェイトと違って、他人が傷つく事に何の痛みも感じないと言うなら話は別だけどな」

「アリシアは優しい子よ!!人形なんかと比べないで!」

「そんなことを言ってるからお前は母親失格なんだ!!」

拓也の気迫が、プレシアを黙らせる。

「よくわからねえけど、フェイトはアリシアのクローンって奴なんだろ?だったら、フェイトはアリシアの妹じゃないのかよ。クローンっていうのは、言わば双子みたいなものなんだろ。違うのか、クロノ」

拓也はクロノに確認するように問いかける。

「君の言うとおりだ。双子もクローンも、自然と人工の差はあれど、全く同じ遺伝子を持つという点では、どちらも変わりは無い」

クロノの言葉に、拓也は安心する。

「お前は、フェイトをアリシアの妹だと、自分の娘だと認めなかった時点で、お前は間違ってたんだよ!」

拓也はプレシアに言い放った。

「・・・・・・・・フッ・・・・・フフフ・・・・・・私は、それ以前から取り戻すのよ!あの事故の時から!」

プレシアは、杖で床を突く。

魔法陣が展開され、衝撃が、庭園全体に響く。

庭園全体が崩れだした。

「私は向かう!アルハザードへ!そして全てを取り戻す!過去も!未来も!たった1つの幸福も!」

プレシアの足元が崩れ、プレシアは虚数空間へ落下する。

「母さん!」

「フェイト!」

駆け寄ろうとしたフェイトを、アルフが抑える。

フェイトは虚数空間に消え往くプレシアを見つめた。

「フェイト・・・・・」

拓也は、フェイトの肩に手を置いた。

「立つんだフェイト。お前は生きるんだ」

「タクヤ・・・・・」

フェイトが立ち上がろうとした時、落石が起こり、床を砕いた。

「フェイトー!」

アルフが、拓也とフェイトから逸れる。

拓也とフェイトの乗った岩盤は虚数空間に落下し始めていた。

見ると、拓也の翼も、消え始めている。

「くっ!拙い!」

その時、天井を破壊し、なのはが姿を見せた。

「フェイトちゃん!お兄さん!」

拓也はそれを確認すると、フェイトの腰を抱き、

「なのはぁーーーーーッ!!」

フェイトをなのはに向け、投げ飛ばした。

「ッ!?タクヤ!?」

フェイトは驚いた声を上げる。

「フェイトちゃん!」

なのははフェイトを受け止める。

「お兄さん!」

「タクヤッ!」

2人が叫ぶ。

拓也は落ちてくる岩盤を足場にし、駆ける。

「とどけぇーーーーーッ!!」

拓也は、思い切り跳んだ。

「くっ!」

拓也は片手で、ギリギリぶら下がれた。

その様子を見たフェイトと、なのははホッと息をつく。

拓也も安堵した。

だが、それは一瞬の油断。

――ガラッ

拓也の掴んでいた場所が崩れる。

「なっ!?」

拓也は重力に引かれ、落ちていく。

翼も消えているため、飛ぶことは不可能。

「あっ!」

なのはが、

「兄ちゃん!」

駆けつけた信也が叫ぶ。

拓也は、虚数空間に消える。

「いや・・・・・」

フェイトが呟く。

「いやぁあああああああっ!!!」

フェイトの悲鳴が木霊した。




あとがき

八話 完成。

とりあえずプレシア決着まで。

やっぱ拓也はキレました。

他は、大体原作どおり。

拓也が虚数空間に落ちましたが・・・・

さて、この後は予想できる方も多いと思われますが・・・・

ともかく、次回をお楽しみに。

では、次も頑張ります。



[8056] 第九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/06/21 20:40


第九話 なまえをよんで  そして・・・・・


――アースラブリッジ

「庭園崩壊終了。全て虚数空間に吸収されました」

「次元震停止します。断層発生はありません」

アースラのオペレーターがリンディに状況を報告する。

「了解」

「第三戦速で離脱。巡航航路に戻ります」


医務室では、クロノ、なのは、信也がそれぞれ、エイミィ、エリス、ユーノに傷の手当を受けていた。

しかし、雰囲気は暗い。

「あの・・・・フェイトちゃんは?」

なのはがクロノに尋ねる。

「アルフと一緒に護送室に。彼女はこの事件の重要参考人だからね。申し訳ないが、暫く隔離になる」

「そんな・・・・ったたた!」

「なのは、ジッとして」

治療の最中に動いたなのはにエリスが言う。

「今回の事件は、一歩間違えれば次元断層さえ引き起こしかねなかった、重大な事件なんだ。時空管理局として、関係者の処遇には慎重に成らざるをえない。それはわかるね?」

「うん・・・・・・あの、フェイトちゃんは大丈夫なんですか?」

なのはは頷くとフェイトの状態を尋ねる。

「身体的にはさほど問題は無い。ただ・・・精神的にかなり参っているようだった」

「そうですか・・・・・」

なのはは俯く。

その間、信也は一言も言葉を発することなく俯き続けていた。




それから数日間、信也となのはは次元震の余波が収まるまでアースラで過ごしていた。

信也はその間、余り喋る事はなく、考え込むような仕草ばかりしていた。

フェイトは、本来なら数百年以上の幽閉が普通だが、事情が事情のため、刑はかなり軽く出来るとのことだ。

そして、漸く次元震の余波も落ち着き、地球に行き来できるようになった。

ユーノとエリスは、ミッドチルダ方面の航路が安定するまで今まで通り、信也となのはの家に居ることになった。

そして、リンディ、クロノ、エイミィと別れを済ませ、臨海公園に転送される。

臨海公園に信也となのは。

そして、2人の肩にのったフェレット姿のユーノとエリス。

暫く沈黙が流れる。

「ねえ、信也君・・・・・」

なのはが信也に話しかける。

「・・・・泣いてもいいんだよ」

なのはの言葉に信也はピクリと動揺する。

信也はこの数日間、暗い雰囲気を纏ってはいたが、泣いてはいなかった。

「だ、大丈夫・・・・僕は・・・・兄ちゃんの弟だから・・・・・」

信也のその声は震えている。

明らかにやせ我慢だ。

と、その時、ユーノが信也の肩から飛び降りる。

「エリス、行くよ」

ユーノがなのはの肩に乗ったエリスに呼びかける。

「えっ?・・・でも」

「いいから」

戸惑うエリスにユーノが促す。

エリスはユーノの言うとおり、なのはの肩から飛び降り、公園の奥へ消える。

そして、

「信也君・・・・私、こういう時は男の子だって我慢しなくていいと思うの・・・・・」

「く・・・・うぐっ・・・・うう・・・・」

なのはの言葉に、信也の瞳から涙が溢れる。

無理矢理に抑えていた感情が溢れ出した。

「うわああああああああああああ!!」

泣き叫びながら、なのはに縋り付く。

「何でっ!・・・・・何でっ!!・・・・やだよ!・・・・やだよこんなの!!・・・・もう会えないなんてやだよ!!会いたいよ!!兄ちゃんに!!・・・・・兄ちゃんに会いたい!!会いたい!!」

「・・・・・・・・・・」

そんな信也をなのはは何も言わずに抱きしめる。

なのはの瞳からも涙が溢れていた。

「ぐずっ・・・・・兄ちゃんに・・・・・会いたい・・・・・」

なのはは、信也が落ち着くまで抱きしめ続けた。






それから数日後。

朝早くにアースラから信也となのはに連絡が入る。

フェイトが裁判の為に身柄を本局に移される事。

それでも、ほぼ確実に無罪になる事。

そして、移送の前にフェイトがなのはに会いたがっている事。

あと、信也にも拓也の事情説明をどうするかが決まったので、それの報告の為になのはと一緒に来て欲しい事を。



なのはと信也は、知らされた場所へ向かう。

そこには、クロノとアルフ。

そして、フェイトがいた。

「フェイトちゃ~ん!」

なのはは思わず叫んで駆け寄る。

するとクロノが、

「暫く話すといい。僕たちは向こうにいるから」

そう言って2人に気を利かせる。

エリスはなのはの肩から降りて、アルフの肩に乗る。

「ありがとう」

「ありがとう・・・・」

なのはとフェイトはお礼を言う。

2人を残して、信也達は離れていく。

2人は互いに向き直る。

「なんだか話したい事一杯あったのに・・・・・・変だね、フェイトちゃんの顔見たら、忘れちゃった」

「私は・・・・・そうだね。私も上手く言葉に出来ない・・・・・・だけど嬉しかった」

「えっ?」

「真っ直ぐ向き合ってくれて・・・・」

「うん・・・・友達になれたら良いなって思ったの」

そう笑顔でフェイトに言う。

しかし、

「でも・・・・今日は、これから出かけちゃうんだよね」

暗い顔になりながらそう呟く。

「そうだね・・・・少し長い旅になる」

「また会えるんだよね?」

「・・・・・少し悲しいけど、やっとホントの自分を始められるから・・・・・来てもらったのは、返事をするため」

「えっ?」

「君が言ってくれた言葉・・・・“友達になりたい”って・・・・」

「うん!うん!」

「私に出来るなら・・・・私で良いならって・・・・だけど私・・・・どうして良いか分からない・・・・・だから教えて欲しいんだ。どうしたら友達になれるのか」

フェイトは俯く。

「・・・・・・・・簡単だよ」

なのはの言葉に、フェイトは驚いた表情をして顔を上げる。

「友達になるの、凄く簡単」

そして、なのはは一呼吸置き、

「名前を呼んで。初めはそれだけでいいの。“君”とか“あなた”とか、そういうのじゃなくて。ちゃんと相手の目をみてはっきりと相手の名前を呼ぶの。私、高町 なのは。なのはだよ!」

「なの・・・は?」

「うん!そう!」

小さく呟かれたフェイトの言葉に、なのはは嬉しそうに答える。

「なのは・・・・」

「うん!」

先程よりも少し声が大きくなる。

「なのは!」

今度は、はっきりと笑顔で。

「うん!」

なのはは、フェイトの手を取る。

「ありがとう・・・・なのは」

「うん・・・・!」

なのはは感極まって瞳に涙を滲ませている。

「なのは・・・・・」

「・・・・・うん!」

「君の手は暖かいね、なのは」

なのはは思わず泣き出してしまう。

「少しわかったことがある。友達が泣いていると、同じように自分も悲しいんだ」

「フェイトちゃん!」

なのははフェイトに抱きつく。

「ありがとう・・・・なのは。今は分かれてしまうけど、きっとまた会える。そうしたら、また、君の名を呼んでもいい?」

「うん!・・・うん!」

「会いたくなったら、きっと名前を呼ぶ。だから・・・・なのはも私を呼んで・・・・なのはが困った事があったら、今度は私が助けに行くから・・・・」

なのはは声を漏らして泣いた。



なのはとフェイトの様子を見ながら泣きじゃくるアルフの横で、クロノが信也に説明をしていた。

「拓也の件だが・・・・・やはり、君たちの両親には全てを話す事にした」

「そう・・・・」

「管理外世界の一般の人々に魔法の事を教えるのは余り良くは無いが、事情が事情だからね」

「・・・・・・・」

クロノの説明に、信也は俯く。

まだ完全には吹っ切れていないようだった。





なのはとフェイトが抱き合っているとき、ふとフェイトが口を開いた。

「ねえ、なのは・・・・・なのはに聞いて欲しい事があるんだ」

「何?フェイトちゃん」

涙を流したまま聞き返すなのは。

「あの・・・・私・・・・きっとね・・・・・タクヤの事が好きだったんだよ・・・・・」

フェイトは涙を流しながらそう告白する。

「フェイトちゃん・・・・・」

「馬鹿だよね・・・・・私・・・・・・失ってから気付くなんて・・・・・馬鹿だよね・・・・・」

「フェイトちゃん!」

なのはは、再びフェイトに強く抱きつく。

涙を流しながら抱き合う2人。














































「何泣いてるんだよ?」













































その時、有り得るはずの無い、もう聞けないと思っていた人物の声がした。

「えっ?」

フェイトは、思わず顔を上げる。





そこには・・・・・







見間違う事の無い・・・・・







虚数空間に消えたはずの・・・・・・・・・






拓也の姿がそこにあった。











あとがき

九話完成。

短いです。

まあ、約半日で書き上げたものですから。

とりあえず次で無印編は最終話です(早っ)。

さて、どうやって拓也は戻ってきたのか?

大部分の人は予想ついてると思いますが、お楽しみに。

では、次も頑張ります。




[8056] 最終話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/07/05 20:52
――時の庭園崩壊時

虚数空間に落ちていく拓也。

「くそっ!どうすれば!?」

拓也の姿は、バリアジャケットが完全に消失し、何時もの私服姿である。

それでも拓也は如何にかしようともがく。

そんな拓也の下には、先に落ちたプレシアと、アリシアが入ったシリンダーが見える。

そんな時、拓也は自分の携帯電話を入れているポケットから光が漏れている事に気付く。

「何だ?」

拓也は落下しながらも、ポケットに手を突っ込み、携帯電話を取り出す。

光は、携帯電話の画面から発せられていた。

そして、その画面を見た拓也は驚愕した。

「この紋章は!!」

拓也の携帯電話の画面に表示されていたのは、拓也の運命を変えた紋章。

デジタルワールドでの冒険の始まりを告げた印。

「オファニモンの・・・・紋章」

オファニモンの紋章が映し出されていた。

拓也がそう呟いたとき、その光は更に強く光り輝き、あたり一帯を白く染め上げる。

そして、その光が収まったとき、そこには拓也の姿は無く、ただの虚数空間が広がっていた。

そう、プレシア達の姿も・・・・・・





「うっ・・・・・ここは?」

次に目覚めたとき、拓也は何処かの草原に倒れていた。

拓也は立ち上がり、辺りを見回す。

少し離れたところに、気を失っているプレシアと、シリンダーが割れ、外に出たアリシアの遺体があった。

拓也が近付こうとすると、プレシアが目を覚ました。

「う・・・・・」

プレシアは額に手を当てながら、意識を覚醒させる。

そして、

「アリシア!!」

シリンダーの外に出てしまっているアリシアに気付くと慌てて駆け寄り抱き上げる。

その時、初めて拓也の存在に気付いた。

プレシアはアリシアを庇うように抱きしめながら、拓也を睨み付ける。

「アリシアに近付かないで!」

プレシアは右手を拓也に向け、拓也に魔法を放とうとした。

「くっ」

拓也も身構える。

しかし、何も起きない。

「え?」

拓也は声を漏らす。

「そんな・・・・」

プレシアは信じられないような顔をして自分の手を見つめた後、もう一度右手を前に突き出す。

それでも、何も起きない。

「どういうことだ?」

拓也も疑問に思う。

プレシアは大魔導師と呼ばれていた。

そんなプレシアがただの攻撃魔法を失敗するはずが無い。

「サラマンダー、セットアップできるか?」

拓也は、サラマンダーに問いかける。

『こちらも無理だ。それどころか、主の身体からも魔力の欠片すら感じられない。相手からもな』

「そうか・・・・」

サラマンダーの言葉に拓也は相槌を打つ。

そんな時、上空を横切る生物に気付いた。

それは、竜のような姿をしていた。

その竜は、そのまま飛んでいってしまう。

だが、それを見た拓也は思わず声を上げた。

「エ、エアドラモン!?」

『知っているのか?主よ』

拓也の言葉にサラマンダーが問いかける。

「あ、ああ・・・・・まさか、ここは・・・・・」

拓也は信じられないといった顔で辺りを見渡した。

元の世界とは全く違った雰囲気。

しかし、それでいて懐かしい雰囲気。

「デジタルワールド!?」

そう声を上げたときだった。

「神原 拓也君」

空から聞こえた拓也を呼ぶ声に、拓也は上を見上げる。

そこには、8枚の純白の翼を持った女性の天使型デジモン。

そして、その両側には、同じく8枚の翼をもった男性の天使型デジモンと、どこか兎を思わせる姿をしたデジモンがいた。

「て、天使!?」

プレシアが驚愕する。

拓也は、その3体のデジモンを見たとき、直ぐに直感した。

「もしかして、オファニモン?」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫

――エンジェウーモン

・大天使型、完全体デジモン。

 オファニモンの生まれ変わりであるプロットモンが、完全体まで進化した女性型天使デジモンだ。

 必殺技は、聖なる矢で敵を貫く、『ホーリーアロー』。



――ホーリーエンジェモン

・大天使型、完全体デジモン。

 セラフィモンの生まれ変わりであるパタモンが、完全体まで進化した姿だ。

 とは言っても、腹巻はしていないぞ。

 必殺技は、亜空間へのゲートを作り出し、そこに敵を吸い込み葬り去る『ヘブンズゲート』だ。



――アンティラモン

・聖獣型、完全体デジモン。

 ケルビモンの生まれ変わりであるロップモンが、完全体まで進化したデジモンだ。

 必殺技は『アシパトラヴァナ』。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「危ないところでした」

オファニモンの生まれ変わりであるエンジェウーモンが言った。

「じゃあ、やっぱり俺達を助けてくれたのはオファニモンだったのか」

拓也がそう言うと、エンジェウーモンは頷く。

「はい・・・・ですが、空間が安定していなかったために、助け出せるかどうかは賭けでした」

「そうだったのか・・・・まあ、助かったから良かったけど」

エンジェウーモンの言葉に少々驚いたが、結果オーライだと気を取り直した。

「それで、元の世界には戻れるのか?」

拓也は一番気になることを聞いた。

「それは可能です・・・・・しかし、未だ空間が安定していないことと、ルーチェモンに破壊されたターミナルの修復を行なわなければならない事から、今しばらくの時間が必要です」

「そうか。それはしょうがないな」

拓也は頷く。

「それまでは、火の街で過ごすと良いでしょう。かつてあなた達と共に旅をした2人もそこにいます」

「ああ。そうするよ」

エンジェウーモンの言葉に拓也は頷く。

そして拓也はプレシアに向き直った。

プレシアは、未だ拓也に警戒の眼差しを向けている。

「そんなに警戒するなよ。何もしやしないって。第一、多分この世界じゃ魔法は使えないだろうし」

「・・・・・どういうこと?」

プレシアは警戒したまま拓也に問いかける。

「ここはデジタルワールド。この世界に存在する全てはデータで構成されてるんだ。もちろん、俺達の身体もデータに変換されてる。さっきから魔法が使えないのは多分そのせいだろ。データに魔力も何もあったもんじゃないから」

「そう・・・」

プレシアは諦めたように警戒を解く。

そして、

「ゴホッ!・・・・・ゴホッ!・・・・・」

突如咳き込み、吐血する。

「お、おい!?」

拓也は突然の事に驚愕し、プレシアに声をかける。

プレシアは口を押さえた手についた血を見ながら、

「フフフ・・・・・・私も、もう長くはないわね・・・・・」

そう呟く。

「お前・・・・まさか病気なのか?」

拓也が問いかける。

「・・・・・ええ・・・・でも、もういいわ。アリシアがいなければ、私に生きる意味なんて無いもの・・・・・」

プレシアは諦めたようにそう言った。

その言葉を聞いた瞬間、拓也は思わずプレシアの胸倉を掴んだ。

「おい!ふざけるなよ!生きる意味が無い?だったらフェイトはどうなるんだ!?」

「あの子は人形よ・・・・・どうなろうと・・・・・」

「本当にそう思ってるのかよ!!」

「・・・・・・・・・・・」

拓也の言葉にプレシアの言葉が止まる。

「もう一度聞くぞ!お前にとってフェイトは本当にどうでもいい存在なのかよ!!お前はフェイトのあの時の言葉を聞いて、本当になんとも思わなかったのかよ!?」

拓也は真っ直ぐな瞳で、プレシアの目を見ながら問いかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・・本当は・・・・・分かっていたのよ」

プレシアは、か細い声で呟いた。

「あなたに言われたときに気付いたわ・・・・・・・・どれだけ自分が酷い事をしてきたか・・・・・・・・あんな事をしても・・・・アリシアは喜ばないって判っていたのに・・・・・・・・あなたに言われるまで、そのことから目を背けていた・・・・・・」

「だったら如何して!?あの時フェイトの手を取ってやらなかったんだ!?」

拓也は叫びながら問いかける。

「私は既に大罪人よ。確実に管理局に捕まり、相当な刑を受けることになるわ。そして、あの子のことだから、私を守ろうとするでしょう。そうなれば、あの子も共犯者として、重い罰を受けることになってしまう・・・・・・・」

「まさか、お前は・・・・・フェイトの罪を軽くするために・・・・・・・」

「あの子が、ただ利用されてた立場なら、管理局も重い罰は与えないはずよ。だから私は・・・・・最後まで最悪の母を貫くしかなかったの」

「くっ・・・・・・」

拓也はプレシアの胸倉から手を離す。

「でもっ・・・・・・でもよぉ!」

拓也はやりきれないといった表情で叫ぶ。

拓也は、フェイトにやさしい言葉をかけてやって欲しかった。

しかし、下手に答えるとフェイト共々大罪人だ。

どうにもならない選択に、拓也は歯噛みするしかなかった。

「それに・・・・私には余り時間は残されていないわ・・・・・・余計にあの子を悲しませてしまう」

「・・・・・・・くそっ!何とかならないか!?オファニモン!」

拓也はオファニモンに望みを託すように叫んだ。

「・・・・・・・・わかりました」

エンジェウーモンはホーリーエンジェモンに視線を向ける。

ホーリーエンジェモンは頷くと、

「ホーリー・ディスインフェクション」

ホーリーエンジェモンの上半分の4枚の羽が虹色の光を放ち、プレシアを照らす。

「・・・・これは・・・・・」

拓也は、プレシアの変化に気付いた。

よく見れば顔色が悪く、色も蒼白だったプレシアが、見る見るうちに血行が良くなり、健康的な顔色になった。

やがて光が消えると、プレシアは驚いたように自分の身体を確認した。

「まさか・・・・あれだけどうしようもなかった病が・・・・・・」

プレシアは、驚いた表情で声を漏らす。

すると、三大天使は空中で、片手をそれぞれが3体の中心に向かって伸ばす。

「「「三大天使の力を結集し、今ここに、失われし命を呼び戻さん」」」

その伸ばされた手の中心に、光の球が現れ、ゆっくりと下りていき、アリシアの身体に吸い込まれた。

すると、

――トクン    トクン

アリシアを抱きかかえていたプレシアが驚いたようにアリシアを見た。

アリシアから感じるのは心臓の鼓動。

「アリ・・・・・シア・・・・・・・」

プレシアが呟くと、アリシアの瞼がゆっくりと開いていく。

「う・・・・・ん・・・・・・あれ?お母さん?」

アリシアは寝ぼけたような表情と声でそんなことを言った。

「アリシア・・・・・・」

プレシアの瞳から涙が溢れる。

「お母さん?何で泣いてるの?」

アリシアはどういう状況か分からず首を傾げている。

プレシアはそんなアリシアを抱きしめた。

「お、お母さん!?く、苦しいよ!」

抱きしめられたアリシアは、呼吸が上手くできず、そう声を漏らす。

「ごめんなさい・・・・・ごめんなさいアリシア・・・・・私はダメなお母さんだわ」

プレシアは、懺悔する様に呟いた。

その後、プレシアは三大天使を見上げる。

エンジェウーモンは優しい表情で見下ろしていたが、表情を引き締め、厳しい表情をする。

「死者蘇生とは、命を軽くしてしまう行為です。次はありませんよ」

プレシアに向かって、そう宣言するエンジェウーモン。

プレシアは、その言葉の深さを理解すると、無言で頷いた。




3人はトレイルモンで火の街に向かっていた。

その途中、プレシアはアリシアに全てを告白していた。

「じゃあ、お母さんは、そのフェイトっていう私の妹をずっと虐めてたってこと?」

「ええ・・・・・そうよ。今思えば、なんて事をしていたのかしら、私は・・・・・・」

プレシアは俯きながら答える。

「お母さんは、その事を反省してるの?」

プレシアに問いかけるアリシア。

「ええ・・・・・・気付くのが遅すぎたけどね・・・・」

「じゃあ、ちゃんと謝らなきゃ」

「え?」

アリシアの言葉にプレシアは一瞬呆気に取られる。

「悪いと思ったら、ちゃんと謝らなきゃ。お母さんも言ってたことだよ」

アリシアは無垢な笑顔でそうプレシアに言う。

「・・・・・そうね」

プレシアは微笑し、頷く。

その顔は少し前までの怪しい雰囲気はなく、優しさに満ちた微笑だった。

「その顔、ちゃんとフェイトにも向けてやれよ」

拓也がまるで釘を刺すように言った。

「わかっているわ」

プレシアは頷く。

「あ、そういえばあんたは今、犯罪者なんだよな・・・・・戻ったところで捕まっちまうか?」

拓也は肝心な事を思い出した。

「そうなるわね」

プレシアも肯定する。

捕まる事はプレシアの自業自得とはいえ、せっかくフェイトとプレシアの関係が改善された直後に、彼女たちから母親が取り上げられてしまうのは忍びない。

拓也は考える。

「・・・・・・・だったら、暫くデジタルワールドで過ごすか?」

「え?」

拓也の提案に、プレシアは声を漏らす。

「いや、あんたは死んだ事にして暫くこのデジタルワールドで過ごしてもらう。んで、ほとぼりがさめた頃に俺がフェイトをここに連れてくる。その後のことは、その時決める。で、どうだ?」

単純な上に行き当たりばったりとも言える案にプレシアは苦笑する。

「単純ね」

「う、うるさいな。これでも一生懸命考えたんだよ!この世界は管理局に知られてないみたいだし。それにこの世界じゃ魔法は使えないから管理局もそうそう手が出せないと思ったんだよ!」

拓也のいう事も、尤もである。

そうこうしている内に、トレイルモンは火の街に到着する。

拓也は車両から降りると、辺りを見渡した。

初めて来た時のような穴だらけの景色ではなく、そのままの景色がそこにあった。

「ははっ!ちゃんと直ってるな」

拓也は、デジタルワールドが復活した直後に人間界に送り返されてしまったので、地上からの景色は見ていなかった。

そうやって辺りを見回していると、見覚えのある2人(?)組が目に付いた。

それは、かつて共にデジタルワールドを旅したボコモンとネーモン。

「ボコモン!ネーモン!」

拓也は思わず声をかけた。

2体は同時に振り返る。

2体は一瞬、誰がいるのか理解できなかった。

しばし呆けていたが、

「た、拓也はんかえ?」

ボコモンが信じられないといった表情で呟いた。

拓也は駆け寄り、

「ああ、久しぶりだな、ボコモン、ネーモン」

拓也はそう答える。

「た、拓也は~~~~ん!!」

「久しぶりだね拓也~~~~~!!」

ボコモンとネーモンが泣きながら抱き付いて来た。

そして、2体は泣き続け、泣き止ますのに拓也が苦労したのは余談である。





それから何日かが経ち。

三大天使から、現実世界へ戻るための準備が整ったという連絡があり、拓也はトレイルモンの駅にいた。

そして、見送りとして、ボコモン、ネーモン、プレシア、アリシア。

「じゃあボコモン、ネーモン。2人のこと頼んだぞ」

拓也がボコモンとネーモンにそう告げる。

「まかしときんしゃい!プレシアはんとアリシアはんは、わし等がしっかりと面倒を見るんじゃマキ」

「うん、こっちはまかせて~」

ボコモンとネーモンはそう返した。

「ああ、頼むぞ」

次に拓也はプレシアとアリシアに視線を向ける。

「プレシア、フェイトに伝言はあるか?」

「そうね・・・・自由に生きなさい、とだけ」

「わかった」

プレシアの言葉に拓也は頷く。

すると、

「お兄ちゃん!絶対にフェイトを連れてきてね!」

アリシアが、元気いっぱいにそう言う。

「ああ。すぐにとはいかないだろうけど、必ず」

「約束だよ!」

「ああ。約束だ」

拓也は振り返ると、トレイルモン(ワーム)に話しかけた。

「じゃあトレイルモン、よろしくな」

「任せとけ。お前さんは責任もって人間界まで送り届けてやるぞ~」

トレイルモン(ワーム)は頼もしい返事を返し、車両の扉を開ける。

拓也は車両に乗り込むと皆の方に振り返る。

「じゃあ皆、またな」

手を上げながらそう言った。

それと同時に扉が閉まる。

プレシアは軽く手を振り、アリシアは元気いっぱいに手を振る。

ボコモンとネーモンも小さい身体をめいっぱい使って手を振った。

そして、トレイルモンは走り出した。

人間界へ向かって。





やがて、トレイルモンは停止する。

拓也がトレイルモンから降りると、そこは見覚えのある場所だった。

「ここは・・・・・渋谷駅の地下ホーム!?」

かつてルーチェモンに破壊されたそこは、すっかり元通りになっていた。

拓也は一度振り返る。

「ありがとうトレイルモン」

「な~に、お安い御用さ。それじゃ、元気でな」

トレイルモンはそういい残すと再びデジタルワールドに向けて走り去った。

拓也はエレベーターへ向かう。

拓也が近付くと扉が開いたので、それに乗り込む。

やがて自動的にエレベーターが動き、上昇を開始した。

暫くしてエレベーターが停止し、扉が開く。

拓也がエレベーターから出ると、そこは予想通り渋谷駅であった。

それはともかく、拓也は一つの問題に直面していた。

「どうやって海鳴まで帰ろう?」

携帯電話も電池切れな上に金も持ってない拓也にとって、重要な問題であった。



結局拓也は、夜の内に飛んで帰ることにした。

デジタルワールドを旅した仲間を頼ろうかと思ったが、流石に金銭的な迷惑を掛けるのは気が引けた。

故に人目を避けるために夜を選び、飛んで帰ることにしたのだ。

とはいっても、流石に海鳴まで一直線に帰れる体力と魔力があるわけではないので途中、何度か休憩を入れた。

そのため、海鳴市に着いたのは、早朝であった。

拓也は、最後の休憩を取るために海鳴臨海公園にやってきた。

そこで、なのはとフェイトが泣きながら抱き合っているのを目撃した。

何故泣いているのかわからない拓也は、声をかけることにした。

「何泣いてるんだよ?」




第十話 また会う日まで


フェイトとなのはは、驚いた表情で拓也を見つめた。

「タク・・・・ヤ・・・・・?」

フェイトが、何とか声を絞り出す。

その声は震えている。

「おいおい、それ以外の誰に見えるんだよ?」

拓也は笑って答えた。

「お、お兄さん!?幽霊じゃないよね!?」

「失礼だな。ちゃんと足もあるだろ」

なのはの言葉に拓也は呆れながら答える。

「タクヤ!!」

次の瞬間、フェイトが叫んで拓也に抱きついた。

そのまま、拓也の胸に顔を埋めて泣き出す。

そのフェイトの行動で拓也は焦った。

「お、おいフェイト。何で泣くんだよ?」

その問いにフェイトは答えず、ただ泣き続けている。

「お兄さん、鈍いです!」

「はあ?」

なのはの言葉に、思わず声を漏らす拓也。

その時、

「兄ちゃん!!」

信也が叫んで駆け寄ってきた。

「おお、信也。無事だったみたいだな」

「それはこっちの台詞だよ!!僕、もう・・・・・・兄ちゃんが死んだと思って・・・・・」

信也が泣き出しそうになる。

「俺がそう簡単に死ぬかよ」

拓也が自信に満ちた声でそう言った。

「拓也」

「クロノか」

クロノが拓也に話しかけてきた。

「聞きたい事は沢山あるが、ともかく無事で良かったよ」

「心配かけたな」

「全くだ。ただ、これだけは聞かせてくれ。どうやって虚数空間から戻ってきたんだ?」

「まあ・・・・運が良かったというか・・・・・日頃の行いがよかったんだろ?」

拓也は軽い雰囲気でそんなことを言った。

「・・・・・・話す気はないという事か・・・・」

「悪いな」

とりあえず拓也の考えを察したクロノは、これ以上問い詰めてもとぼけるだけだろうと判断する。

拓也は、未だ抱きついているフェイトにだけ聞こえるように念話を送る。

(フェイト、プレシアからの伝言だ)

「えっ!?」

その言葉で、拓也の胸に顔を埋めていたフェイトは驚いたように顔を上げる。

(“自由に生きなさい”ってさ)

その念話を聞いたフェイトは再び涙を流し始める。

「・・・・っく・・・・ううっ・・・・かあ・・・・さっ・・・・ん」

拓也は、そんなフェイトの頭を撫でながら抱きしめる。

「タ・・・・クヤ・・・・・」

再びフェイトは拓也にすがり付く。

しばらくそうしていると、

「すまないがそろそろ時間だ。もういいか?」

クロノがそう告げる。

「うん」

フェイトは少し名残惜しそうに拓也から離れ、頷く。

「フェイトちゃん!」

なのはは、悲しそうな顔でフェイトを見つめる。

フェイトはなのはに微笑んだ。

すると、なのはは自分の髪を止めていたリボンを外し、フェイトに差し出す。

「思い出に出来るの、こんなのしかないんだけど・・・・」

その言葉を聞いたフェイトは、

「じゃあ・・・・私も・・・・」

そう言って、自分もリボンを外し、なのはに差し出す。

お互いが、同時に相手のリボンに手を出す。

「ありがとう・・・・なのは」

「うん・・・・・フェイトちゃん」

「きっとまた・・・・」

「うん・・・・・きっとまた」

そして、お互いが差し出されたリボンを受け取る。

そのなのはの肩に、アルフがエリスを乗せる。

「ありがとう。アルフさんもお元気で」

「ああ。いろいろとありがとな、なのは、エリス、シンヤ、ユーノ、それにタクヤ」

「ああ、そっちも頑張れよ」

アルフとの別れも済ませると、

「それじゃ、僕も」

「クロノ君もまたね」

「ああ。特に拓也との決着は、はっきりさせときたいしね」

「望むところさ。いつでも相手になってやるぜ」

拓也とクロノは互いに拳をぶつけ合う。

3人は拓也達から少し離れる。

すると、3人の足元に魔法陣が現れた。

転送用の魔法陣だ。

なのはと信也は、3人に手を振る。

「じゃあ3人とも、またな」

拓也もそう言った。

その時、フェイトが決心したような表情をして、拓也に駆け寄った。

そして、そのまま拓也の首に手を回し・・・・・・

「んっ・・・!?」

フェイトは拓也の唇にキスをした。

突然の不意打ちに拓也は固まる。

ほんの3~4秒のキス。

フェイトは拓也から離れる。

「あ・・・・」

拓也は無意識にフェイトに手を伸ばす。

フェイトは魔法陣のところに戻ると、

「タクヤ!」

拓也の名を呼びながら顔を上げ、そして言った。

「大好きだよ!」

最高の笑顔で。





《エンディングテーマ》

イノセント ~無邪気なままで~






あとがき


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(以下無限ループ)。

ご都合主義全開で突っ込みどころ満載な第十話で無印編最終話が完成です。

いや、ホントに突っ込みどころ満載です。

プレシアの心変わりが突然すぎたり、三大天使の力でアリシア生き返ったり(死者蘇生が命を軽くする行為というのは自論です)。

フロンティアのデジタルワールドと人間界の関係、結構無視してたりetc・・・・・・

他の人から見たら結構メチャクチャかも。(っていうかメチャクチャでしょうな)

一応、これでも自分は面白いだろうと考えて書きました。

まあ、突っ込みどころは置いといて、とりあえず無印編終了です。

因みにA`S編からは、フロンティアキャラが2名参戦することに決めました。

次回からA`S編なんですが、皆様にご相談。

丁度無印編が終わってキリが良いのでそろそろとらハ板に移ろうかとも考えているのですが、どうでしょうか?

こういう事は自分で決められない優柔不断な作者ですので皆様の意見が聞きたいです。

真に勝手なお願いですが、どうかよろしくお願いします。

では、次も頑張ります。





[8056] リリカルフロンティアA`S  プロローグ
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/07/05 20:49
リリカルフロンティアA`S


プロローグ 車椅子の少女と2人の少年。


――5月  海鳴市  丘の上の墓地へと続く道の途中

「まいったなぁ・・・・」

車椅子に乗った少女がそうぼやいた。

少女の名は八神 はやて。

はやては、足が麻痺しているため車椅子生活を余儀なくされていた。

その上、両親も既に他界し、親類と呼べる人もおらず、天涯孤独の身であった。

今日は、両親の墓参りの為に、墓地へと向かっていたのだが、はやての乗った車椅子のタイヤが、溝にはまってしまい、身動きが取れずにいた。

「物思いに耽って溝にはまるなんて、アホやなぁ・・・・・」

先程から何とかしようとはしているが、タイヤが溝に完全にはまってしまい、どうにもならない。

はやてが、どうしようか悩んでいたとき、

「どうかしたのか?」

少年と思わしき声が聞こえ、はやては振り返る。

そこには、バンダナを巻いた少年と、その少年にそっくりな顔立ちをした少年がいた。




[8056] 第一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/12 20:30
第一話 新たなる戦いの始まり


――12月1日 早朝 桜台

「でやぁああああああっ!」

信也が拓也に向かって竹刀を振る。

「甘い!」

拓也はその一撃を受け流すと、体勢が崩れた信也の頭に軽い一撃を喰らわせる。

「ったぁ~~~!」

信也は打たれた所を摩りながら振り返る。

「何度も言うけど、しっかりと相手の動きを見ろ。突っ込むだけじゃ勝てないぞ」

拓也が信也にアドバイスをする。

その2人から少しはなれたところで、なのはが魔力弾のコントロールの練習をしている。

拓也と信也が格闘戦の特訓を、なのはが射撃の特訓をするのが、3人の毎日のトレーニング風景である。

とは言うものの、信也は拓也相手に殆ど勝てていない。

拓也は、命がけの戦いを乗り越えたからなのか、めっぽう強い。

信也も、半年間の特訓で強くなってはいるが、まだ拓也には及ばなかった。




ジュエルシードの騒動から半年。

フェイトとは、ビデオメールでやり取りしていた。

因みに、フェイトからは、なのはと、それとは別で拓也宛にも来ていたりする。

ビデオメールの中身については割合しておこう。

この半年は、特に事件も無く、特訓以外は通常通りの日常を過ごしていた。

そう、この日までは。




――12月2日 夜

拓也と信也はこの日も何時も通り学校へ行き、何時も通り授業を受け、帰宅した。

夕食を終え、それぞれの部屋で、宿題などをこなしていた時、

『主よ、魔力反応だ!』

サラマンダーが叫んだ。

「魔力反応?」

拓也が聞き返したとき、周りの空間に変化がある。

「結界!?」

拓也は叫ぶと、部屋を出る。

丁度、信也も気付いて部屋から飛び出てきた。

「兄ちゃん!」

「ああ。信也も気付いたか。サラマンダー、結界を張った奴はわかるか!?」

拓也はサラマンダーに問いかける。

『結界を張ったと思われる魔力反応は、高町 なのはの方へ向かっているようだ』

「なのはに!?」

サラマンダーの答えに信也が叫んだ。

「行くぞ!」

「うん!」

拓也の言葉に信也は力強く頷いた。





――同時刻

なのはの方も異変を感じ取り、とあるビルの屋上に出てきていた。

『来ます』

レイジングハートの警告に空を見上げると、鉄球のような魔力弾が飛んでくる。

『誘導弾です』

レイジングハートの言葉で、なのはは手を前に出し、魔力障壁を発生させる。

魔力弾が障壁に激突する。

「くっ・・・・・ううっ・・・・・」

その魔力弾はかなりの威力を持っており、なのはは声を漏らす。

だが、その時、反対側から赤い服を着た朱色の髪の少女が襲い掛かってきた。

「テートリヒ・シュラーク!!」

少女が手に持ったハンマーをなのはに振り下ろす。

なのはは、咄嗟に2枚目の魔力障壁を発生させるが、勢いに押され吹き飛ばされる。

「きゃあああっ!」

なのはは、ビルの屋上から落下する。

「レイジングハート!お願い!」

なのはは、落下しながらもレイジングハートを起動させる。

『Stand by, Ready. Set up.』

レイジングハートが起動し、なのははバリアジャケットを纏う。

その様子をみた少女は鉄球を取り出し、

『Schwalbefliegen』

手に持ったハンマー型のデバイスで、その鉄球を打ち込んだ。

「ふっ!」

打ち放たれた鉄球は、未だ光に包まれたなのはに直撃し、爆煙に包む。

その少女は、間髪いれずハンマーで殴りかかった。

「うぉらぁあああああっ!!」

その攻撃は、煙を切り裂くが、それを避けたなのはが煙の中から飛び出す。

「いきなり襲い掛かられる覚えは無いんだけど!何処の子?一体なんでこんなことするの!?」

なのはの問いには答えず、次弾を用意する少女。

「教えてくれなきゃ、わからないってばーっ!!」

なのははそう叫び、先程攻撃を受けたときに放っておいた2発の魔力弾をコントロールし、少女の背後から攻撃する。

その事に気付いた少女は、1発目は何とか避けたが、2発目は避けきれずに魔力障壁を発生させる。

その魔力障壁は、なのは達のような円の魔法陣ではなく、三角形の角の先に小さな円がついた魔法陣であった。

魔力弾を防ぎきった少女は、

「このやろぉおおおっ!!」

そう叫びながら再び殴りかかってくる。

『Flash move』

なのはは、冷静に高速移動でその一撃を避ける。

それと同時に、

『Shooting mode』

レイジングハートをシューティングモードに変形させる。

そして、レイジングハートを少女に向け、

「話を・・・・・」

『Divine・・・・・』

レイジングハートの先に魔力が集中する。

「聞いてってばぁーっ!!」

『Buster』

放たれる魔力砲撃。

それは少女を掠める。

「くっ!」

少女は衝撃で吹き飛ばされるが、直ぐに体勢を立て直す。

しかし、

「あっ」

その際、帽子がボロボロになりながら飛んでいってしまう。

「く・・・・」

それを見た少女が目の色を変え、敵意の篭った目でなのはを睨み付ける。

「あっ?」

なのはは、その様子にたじろいでしまう。

少女はハンマー型のデバイスを構えなおし、三角形の魔法陣を発生させると、デバイスが一度せり出し、

「グラーフアイゼン!カートリッジロード!!」

『Explosion.』

少女の命令と共に、何かが装填されるような音を立てて元に戻る。

そして、

『Raketenform.』

ハンマー型のデバイスが変形。

ハンマーヘッドの片方が推進剤噴射口に、その反対側がスパイクに変形する。

「ラケーテン・・・・・」

推進剤噴射口からジェット噴射が起こり、その勢いで少女は数回回転する。

そして、その勢いを殺さず、なのはに襲い掛かった。

なのはは、咄嗟に障壁を張る。

「うぉおおおおおおっ!!」

その少女はそのまま障壁にハンマーを叩き付けた。

その攻撃は、なのはの障壁を軽々と破り、レイジングハートに直撃。

大きな傷を入れる。

「えっ!?」

なのはは、その事に驚愕する。

「ハンマァーーーーーーーッ!!」

少女はそのハンマーを振りぬいた。

「きゃあああああああああああっ!!」

なのはは勢い良く吹き飛ばされ、そのままビルに激突するかに思われた。

その時、

「なのはっ!!」

信也がギリギリ間に合い、なのはを受け止める。

「信也君!」

なのはは笑顔を信也に向ける。

「なのは、大丈夫?」

信也はなのはに声をかける。

「うん、私は大丈夫・・・・・でも・・・」

なのははボロボロになったレイジングハートに視線を向ける。

「そんな・・・レイジングハートが・・・」

信也は驚いた顔で呟く。

「ちっ、仲間か」

少女はそう漏らすが、

「何者だ、お前は?何故なのはを襲った?」

拓也がヴリトラフォームで少女の前に現れ、そう問いかける。

だが、少女は答えずにハンマーを構えなおす。

「何人来ようと関係ない!全員ぶっ潰すだけだ!」

その少女は再びハンマーをジェット噴射させ、振り回す。

「ラケーテン・・・・ハンマァーーーーーッ!!」

勢いを付け、拓也に殴りかかった。

「問答無用かよっ!!」

拓也はその一撃を左手で受け止める。

だが、

「ぐっ・・・・僅かに押されてる!?」

拓也は、パワー重視のヴリトラフォームにも関わらず、左手だけとはいえパワー負けしている事に驚いた。

「ぶちぬけぇ!!」

少女の命令に答え、ジェット噴射が更に激しくなる。

更に押されていく拓也。

「くっ・・・こいつ!」

拓也はすぐに判断を切り替え、両手でそのハンマーを受け止める。

「うぉおおおおおおおっ!!」

そのハンマーを押し返していく拓也。

「なっ!?」

その少女は驚愕する。

「はぁああああああっ!!」

その動揺を見逃さず、拓也は掴んだハンマーを振り回し、少女を投げ飛ばした。

「うわっ!」

少女はそのまま投げ飛ばされ、ビルの壁に激突する。

それでも警戒を解かない拓也。

「兄ちゃん」

信也がなのはを抱きかかえたまま飛んでくる。

「信也、お前はなのはを安全な所へ。あいつの相手は俺がする」

「え?でも・・・」

「早くしろ!奴の攻撃はお前じゃ防げない!ヴリトラフォームですら何とか押し返せる位なんだ!」

「う、うん!」

拓也の言葉に信也は頷き、飛んでいく。

拓也は少女の方に向き直る。

そこはまだ煙に包まれていた。

だが、次の瞬間、

「おりゃぁあああああっ!!」

少女がハンマーを振りかぶり、飛び出してきた。

拓也はその攻撃を両手で受け止める。

しかし、そこで違和感を感じた。

(なんだ?さっきよりも格段に攻撃力が低い。どういうことだ?)

拓也は疑問に思うが、考えるのを止め、その攻撃を押し返す。

「くっ・・・」

先程よりもパワーの無い攻撃は、余裕で押し返す事が出来た。

その少女は、一度距離を取ると、4つの鉄球を取り出す。

『Schwalbefliegen』

その鉄球を、ハンマーで打ち込んだ。

拓也に襲い掛かる4つの魔力弾。

拓也はそれを避けるが、それは高い追尾性能を持っており、拓也を追ってくる。

「誘導弾か」

拓也は一度ビルの屋上に降りると、

「サラマンダー、アグニフォーム」

『O.K. My lord. Form change.  Agni form.』

アグニフォームに変更する。

そして、一度横に跳び、誘導弾が来る方向を同じにすると、

「ファイアダーツ!!」

ファイアダーツで、誘導弾を全て撃ち落した。

「なっ!?アイツのデバイス、まさか!?」

少女は驚愕している。

拓也は跳躍し、少女に接近する。

拓也は拳を放つが、少女が咄嗟に障壁を張り、それを防ぐ。

その少女が再びハンマーを振るおうとしたが、その前に拓也は障壁を足場にしてその場を離れる。

先程よりも機動力が上がった拓也にその少女は焦るような顔をする。

「何なんだよコイツは!何でコイツの甲冑の変化が、アイツそっくりなんだよ!」

少女は叫ぶように言った。

少女の言葉に疑問を持つが、気を取り直して構える。

だが、その時、

「なっ!?」

拓也の目の前に桃色の髪をしたポニーテールの女性が現れ、手に持った剣を一閃する。

「くっ!」

拓也は咄嗟に手甲で防御した。

少し吹き飛ばされる。

「シグナム」

少女が、その女性の名を呟く。

「どうしたヴィータ?油断でもしたか?」

シグナムと呼ばれた女性は、少女に向かってそう言う。

「うっせーよ!こっから逆転するところだったんだ!」

ヴィータと呼ばれた少女はそうムキになって言う。

「そうか、それは邪魔をしたな。すまなかった。だが、余り無茶をするな。お前が怪我でもしたら、我らが主は心配する」

「わーってるよ」

ヴィータはそっぽを向きながら答える。

「それから、落し物だ」

シグナムはヴィータの頭に帽子をかぶせながら言った。

「あ・・・・・」

「破損は直しておいたぞ」

「ありがと・・・シグナム」

2人は拓也に向き直る。

「気をつけろシグナム。コイツの甲冑、アイツの甲冑みたいに変化するんだ」

「アイツの甲冑?なるほど、お前もスピリットデバイスの使い手か。一度の現界で3人ものスピリットデバイスの使い手に会うとは、珍しい事もあるものだな」

シグナムは拓也を見ながら言った。

「3人?」

拓也はシグナムの言葉の3人という言葉が気になった。

だが、

「レヴァンテイン!カートリッジロード!」

『Explosion.』

シグナムの掛け声に、剣の柄の一部がスライド。

薬莢のようなものが排出される。

それと同時に剣が激しい炎を纏う。

「なっ!?」

拓也は驚く。

「紫電一閃!!」

シグナムが拓也に襲い掛かる。

「くっ、サラマンダー!ヴリトラフォーム!!」

拓也は咄嗟にバリアジャケットをヴリトラフォームに変更する。

「はぁああああああああっ!!」

シグナムが斬りかかる。

拓也は一番防御力のあるルードリー・タルパナの部分で防御した。

――ガギィ

「くぅ!」

凄まじい衝撃が拓也を襲う。

そして、攻撃された部分を見て驚いた。

「そんな!」

防御した部分、ルードリー・タルパナには、かなり深い傷が付いていた。

「我が必殺剣をそれだけの破損で防ぎきるとは、防御力はアイツ以上だな」

シグナムは冷静に観察し、そう呟く。

「シグナム。1対2っていうのは気が進まないけど、ここは早く終わらせる方が先決だ。私が奴の動きを止める。その隙に攻撃しろ」

ヴィータがハンマーを構えながら言った。

「わかった」

シグナムが頷く。

「グラーフアイゼン!カートリッジロード!」

『Explosion.』

ヴィータのハンマーが再び伸長し、装填されるような音を立てて元に戻る。

『Raketenform.』

先程と同じ、スパイクと推進剤噴射口を持った形態に変形する。

そのハンマーのジェット噴射で回転しながら勢いを付ける。

「ラケーテン・・・・ハンマァーーーーーーッ!!」

拓也に向かって、ハンマーが振り下ろされる。

「くそっ!」

拓也は両手でそれを受け止めた。

拓也の動きが止まる。

「今だ!シグナム!」

ヴィータが叫んだ。

「貰ったぞ!!」

シグナムが後方から斬りかかって来た。

「くっ!」

拓也は正に手も足も出ない状況だった。

少しでも気を抜けば、ヴィータに押し切られる。

シグナムの刃が拓也に迫る。

その時、

――ガキィン

金属音が響き渡る。

止められるシグナムの剣。

「何者だ!?」

シグナムが問う。

シグナムの剣を止めた人物。

風になびく金髪。

黒いマントにバリアジャケット。

デバイスから発する鎌のような魔力刃。

それは、

「時空管理局、嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ」

フェイトが名乗る。

「フェイト!?」

ヴィータのラケーテンハンマーを防ぎきった拓也が驚いた声で叫んだ。

フェイトは拓也に視線を向けると、微笑む。

だが、戦闘中であるため、気を引き締めなおし、シグナムに向き直る。

「民間人への魔法攻撃。軽犯罪では済まない罪だ。抵抗しなければ弁護の機会はあなた達にはある。同意するなら武装を解除して」

フェイトはシグナムとヴィータに向けてそう言う。

「誰がするか!」

ヴィータが即答で答えた。

「私も、その言葉に報いる事はできない」

シグナムも静かに否定する。

2人はデバイスを構えなおす。

その時、

「兄ちゃん!」

信也が飛んでくる。

「信也・・・・なのはは?」

拓也が問う。

「ユーノとエリスが来たから、2人に任せて僕はこっちに」

「そうか」

次に拓也は気になることをフェイトに尋ねた。

「フェイト、さっき相手の剣を受けたとき、問題なく受け止めれたか?」

「え?うん。かなり強力な一撃だったけど、バルディッシュも問題ないよ」

「そうか・・・・」

拓也の疑問が少し明らかになる。

「どうしたの?」

フェイトが問いかける。

「2人とも、相手のデバイスから薬莢のようなモノが排出されたり、特殊なギミックが発動したときは注意しろ!そのときは一時的に魔力が跳ね上がるらしい。俺のヴリトラフォームに深い傷を付けるぐらいにな」

拓也は傷ついたルードリー・タルパナを見せながら言った。

その傷を見て、フェイトは驚愕する。

「相手からの攻撃は俺が防御する。2人は、隙を見て攻撃してくれ!」

「わかった」

「うん」

拓也の言葉にフェイトと信也は頷く。

拓也は役割分担をして、相手に備えようとした。

しかし、

『Licht Sieger』

聞こえたデバイスの声に拓也は上を見上げた瞬間。

光の一閃が拓也に襲い掛かった。









あとがき

A`S編、プロローグと第一話です。

さて、フロンティア勢、誰が出てくるかはもうお分かりですね。

殆どの人が予想されてたようですが、ヴォルケンリッター側で出てくることは予想してたでしょうか?

いるとは思いますが。

とりあえずプロローグ。

早速ご都合主義な出会いです。

この一言だけですな。

第一話は、日常編が全く書くこと無くて、丸々すっ飛ばしてしまった。

とりあえず最後のシーンまでは行きたかったので・・・・・・

なのはがやられる所まではアニメの通りですが、その後はどうですかね?

拓也が強すぎます?

その事も含めてご感想お待ちしてます。

・・・・・え?ゼロ魔の方は如何したのかって?

ちゃんと書いてますよ。

・・・・・・・・一日に2~3行ぐらいづつですが。

日常編にてネタがなくて躓いてます。

とりあえず投げ出すつもりは無いので、其方は気長にお待ちください。

では、次も頑張ります。





[8056] 第二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/07/25 22:31
シグナム、ヴィータと拓也の戦いを、高いビルの屋上から見下ろす2人の人影があった。

「まさか、拓也まで魔法に関わっているなんてな」

1人が呟く。

「そうだな。それで、どうするんだ輝二?」

「俺たちがやっている事は確かに間違いだろう・・・・・・けど、アイツを助けるためにはこれしかない」

「拓也と戦う事になるぞ?」

「わかっている。覚悟の上だ」

輝二はそう言って、屋上の端に移動する。

「無理に付き合わなくても良いんだぞ、輝一」

「水臭いこというなよ。俺だって、ほっとけるわけ無いじゃないか」

輝一はそう言って輝二の横に並ぶ。

下を見ると、3対2となって、不利になっているシグナムたちの姿が見える。

「・・・・・行くぞ『フェンリル』」

『Yes,My king』

「俺たちもだ『レオン』」

『Roger, My master』

2人はそれぞれ、光と闇に包まれ、ビルの屋上から飛び降りた。


第二話 光と闇


『Licht Sieger』

聞こえたデバイスの声に拓也は上を見上げた瞬間。

光の一閃が拓也に襲い掛かった。

「なっ!?」

拓也は、咄嗟にルードリー・タルパナで防御する。

拓也が受け止めたのは光の剣。

そして、その剣を使う白と青の鎧を纏った少年。

「お、お前はっ!?」

拓也は驚愕した声で叫んだ。

顔は顔上半分を隠すヘルメット型の仮面で分からなかったが、その鎧の形は、拓也の親友を連想させる。

拓也は、剣を弾き返す。

その少年は、体勢が崩れ、吹き飛ばされるが、宙返りで体勢を立て直し、無事に着地する。

「何で・・・・・何でお前が!?」

拓也が思わず問いかける。

だが、

『Ghost move』

拓也の背後に、黒い鎧を纏った少年が現れる。

その鎧には複数の目玉のような装飾が施されており不気味な雰囲気を持っていた。

そして、その少年も仮面をしており、顔は分からないが拓也はもう1人の親友を連想した。

瞬間的に紅の刃が振るわれる。

「くっ!?」

ギリギリその事に気付いた拓也は、ルードリー・タルパナで防ごうとするが、

――バキャァ

両腕のルードリー・タルパナは砕け散った。

「なっ!?」

拓也は驚愕するが、

『Licht Kugel』

間髪いれず、白と青の鎧の少年が左腕を拓也に向け、その腕に装備されていた砲身から、光のレーザーを放つ。

「がはっ!?」

拓也は直撃を受け、よろける。

更に、

『Geisterabend』

黒い鎧を着た少年の目玉の装飾から、紅の光線が放たれる。

「うあああああああああっ!!」

拓也は叫び声を上げる。

拓也のバリアジャケットにも無数の罅が入った。

そして、

『Form change.』

白と青の鎧の少年が光に包まれる。

『Garm form.』

その鎧は、拓也と同じように重厚になる。

白を基底として、青と金の装飾が入る。

だが、ヴリトラフォームよりも幾分か装甲が薄く、かかと部分にはホイールが、両肘の部分にはブレードが装備されている。

『Speed Star』

肘側に向かって装備されていたブレードが手の先の方に展開される。

そして、かかと部分に装備されているホイールが地面を叩くように展開され、高速回転する。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

その少年は、フェイトと信也が反応できないほどの超スピードで拓也に突撃した。

「ぐぁあああああああっ!!」

その突撃をもろに受け、拓也はビルの屋上から、後方のビルの壁に叩き付けられ、壁をぶち破ってビルの中に吹き飛ばされた。

拓也のバリアジャケットは砕け、拓也は気絶する。

「タ、タクヤッ!!」

「兄ちゃん!!」

そこで漸く、フェイトと信也は声を発した。

正に一瞬の出来事であった。

一瞬で拓也がやられた事に、フェイトと信也は驚愕する。

白い鎧の少年、輝二と、黒い鎧の少年、輝一はシグナムとヴィータの傍に着地する。

「ミナモト、キムラ・・・・・」

シグナムが呟く。

「少し不利そうに見えたからな。余計な事だったら悪かった」

輝二がそう言う。

「いや、そんなことは無い。助かった」

シグナムは、そう礼を言う。

そして、フェイトたちに向き直る。

フェイトは、

(アルフ、タクヤをお願い!)

念話で、傍に控えていたアルフに呼びかける。

(あいよ)

アルフは、拓也が吹き飛ばされたビルに飛んだが、

「おおおおおおおっ!!」

「はっ!」

銀髪の男が現れ蹴りを放ち、アルフは吹き飛ばされる。

「くっ・・・・まだいたのかい!」

その男はアルフと同じように獣の耳と尻尾を持っていた。

その男はアルフの前に立ちはだかる。

「こんのぉ!!」

アルフは、その男に殴りかかった。



フェイトたちと対峙する輝二たち。

「4対2か・・・・・あと2人向こう側に動ける奴がいたな」

輝二が呟く。

すると、

「ここは俺が受け持とう。輝二達はその2人を」

輝一が前に出て、言った。

「わかった」

輝二は頷く。

「私はこの場に残ろう。1対1ならば、ベルカの騎士に負けは無い」

シグナムがそう言う。

「そうか」

輝一も了承する。

「ならば、この場は任せる」

輝二はそう言って、踵を返し、

「行くぞ、ヴィータ」

「おう!」

輝二は、ビルの屋上を跳躍し、ヴィータは飛ぶ。

「待て!」

フェイトが後を追おうとしたが、その前にシグナムが立ちはだかる。

「お前の相手は私だ」

「くっ」

フェイトはバルディッシュを構えた。

輝一も信也と相対する。

信也が青い魔力刃の剣を構え、輝一は両手に紅の剣を持つ。

信也が輝一に斬りかかった。

「でやぁああああああっ!!」

だが、その一撃は輝一に容易く片手の剣で受け止められる。

そして、もう一方の紅の刃が信也に襲い掛かる。

「くぅ!」

信也はラウンドシールドを発生させる。

一瞬、紅の刃が止められる。

だが、

「はぁああああああっ!!」

輝一が力を込めると、ラウンドシールドに刃がめり込んでいく。

「そんなっ!?」

信也は驚愕する。

「はあっ!!」

輝一は力を込め、ラウンドシールドを切り裂いた。

「うわっ!」

信也はその衝撃で吹き飛ばされ、体勢を崩す。

信也が何とか体勢を立て直そうとした時、振り上げられる2つの紅の刃が見えた。

その刃が振り下ろされる。

「く!」

信也はもう一度ラウンドシールドを張った。

だが、

「おおおおおおっ!!」

その刃は、ラウンドシールドを砕き、魔力刃をも貫き、ブレイブハートの本体に直撃する。

「ブレイブハート!?」

傷つき、罅だらけになるブレイブハート。

信也はそのまま屋上の床に叩き付けられ、何階かぶち抜く。

「あ・・・ぐ・・・・・」

気絶はしなかったものの、かなりのダメージを負った信也は身動きが出来なくなった。



一方、フェイトの方も押されぎみであった。

先程も、カートリッジロードしたレヴァンテインで、バルディッシュの柄を断たれていた。

それは何とか修復したものの、シグナム自身の技量も相当なものであり、フェイトは防戦一方であった。

そんな様子を心配そうに見ているなのは。

つい先程までは、ユーノとエリスが傍にいたのだが、輝二とヴィータが近付いてきたので迎え撃つためにその場から離れていた。

現在なのはは、回復と防御の結界内にいるのだが、不利な状況をみて、じっとしていられる訳がなかった。

なのはは、痛む身体を何とか動かし、歩き出す。

「助けなきゃ・・・・・私が皆を助けなきゃ・・・・・」

そんななのはの想いに応えるようにレイジングハートが変形する。

「レイジングハート・・・・・・」

『撃ってください。スターライトブレイカーを』

「そんな・・・・無理だよ、そんな状態じゃ・・・・」

『撃てます』

「あんな負担のかかる魔法・・・・・レイジングハートが壊れちゃうよ!」

『私はマスターを信じています。だから、私を信じてください』

レイジングハートの言葉に、なのはは一度目をつぶり、レイジングハートを構えながら言った。

「・・・・・・・レイジングハートが私を信じてくれるなら・・・・・・私も信じるよ」

なのはは魔法陣を展開する。

(皆、私が結界を壊すから、タイミングを合わせて転送を!)

なのはが念話で、皆に呼びかける。

(なのは・・・・)

(なのは、大丈夫なのかい?)

エリスとアルフが心配そうに尋ねる。

(大丈夫。スターライトブレイカーで撃ち抜くから!)

「レイジングハート!カウントを!」

『わかりました』

魔法陣に魔力が収束されていく。

『カウント9・・・・・8・・・・・・7・・・・・・6・・・・・・5・・・・・・・4・・・・・・・3・・・・・・3・・・・・・3・・・・』

調子が悪くなるレイジングハートになのはは声をかける。

「レイジングハート、大丈夫?」

『大丈夫です。カウント3』

カウントを再開するレイジングハートを構え、後ろに振りかぶる。

『2・・・・・・1・・・・・・・』

そして、なのはがスターライトブレイカーを放とうとした瞬間、

「あっ!?」

突如、なのはの動きが止まる。

「なの・・・・は・・・・・?」

シグナムと戦っていたフェイトは思わずなのはを見る。

「あ・・・・ああ・・・・・・・・あ・・・・・・」

なのはの胸から人の腕が飛び出ていた。

そして、その手にはなのはのリンカーコアが掴まれている。

なのはがいるビルから少し離れたビルの屋上の影に金髪で緑の服を着た女性がいた。

その女性は、目の前の空間に穴のようなものを開け、そこに腕を入れている。

この女性が、ヴォルケンリッター最後の1人、シャマルであった。

「なのはぁーーーーーーっ!!ッ!?」

なのはの元へ向かおうとするフェイトの前にシグナムが立ち塞がる。

「リンカーコア、捕獲」

シャマルは、持っていた本を目の前の空間にかざすと、

「蒐集開始!」

その本がなのはのリンカーコアから魔力を吸い始める。

徐々に小さくなっていくなのはのリンカーコア。

「あ・・・あ・・・ああ・・・・」

なのはは、突然の事に恐怖し、身体が動かないでいた。

その間にも、吸われ続ける魔力。

だがその時、

「バーニング!サラマンダー!!」

灼熱の炎がシャマルに襲い掛かった。

「はっ!?」

それに気付いたシャマルは、咄嗟に腕を引き抜き、本を持って飛び退く。

拓也はそれを確認すると、

「撃てっ!!なのは!!」

なのはに向かって叫ぶ。

「お兄さん!・・・・・・行くよ!レイジングハート!」

『カウント0』

「スターライト・・・・・・ブレイカァーーーーーーッ!!」

凄まじい桜色の魔力砲撃が放たれた。

それは、街を覆っていた結界を吹き飛ばす。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

スターライトブレイカーを撃ち終えたなのはは、疲労で座り込む。

魔力も相当吸われ、気絶してもおかしくない状態だった。

(結界が抜かれた!離れるぞ!)

シグナムが呼びかける。

皆が了承の意を返し、シグナムが輝一の、ヴィータが輝二の手を掴む。

そして、それぞれが光に包まれ、高速でその場を離れた。

拓也はその光を見上げ、

「輝二・・・・・輝一・・・・・どう・・・・し・・・・・て・・・・・・・・」

拓也はそう呟くと同時に、無理して動いていたため限界をむかえ、気を失って倒れた。

「タクヤ!」

それに気付いたフェイトが慌てて飛んでくる。

なのはのほうには、何とか動けるようになった信也とエリスが向かっていた。

そして、治療の為にアースラに転送されることになった。




要望があったので次回予告を始めます↓(デジアド風です)



次回予告


親友が敵になることに困惑する拓也。

魔力を奪われてしまったなのは。

傷ついたデバイスたち。

そんな中、時空管理局が打ち出す対策とは。

次回!リリカルフロンティアA`S

第三話 再会と引越し

今、魔法の力が進化する。





オリジナルデバイス


――フェンリル

輝二が持つ『光』のスピリットデバイス。

輝二が扱っているので光の闘士がモチーフとなっている。

因みに手に入れた経緯は、拓也と同じくどこぞの露天商より。




――レオン

輝一が持つ『闇』のスピリットデバイス。

輝一が扱っているので闇の闘士がモチーフとなっている。

間違いを自覚しつつ戦っているので、ダスクモンが元になっている。

手に入れた経緯は、同じくどこぞの露天商より。






あとがき

第二話完成です。

すこし短いかな。

とりあえず、拓也たちに良いとこなし。

最初はこんなもんで。

拓也は瞬殺されすぎかな?

因みに輝一は、拓也、輝二よりも魔力が高い設定になってます。

そうしないと、バランスが悪いので。

まあ今言いたいことは・・・・・・・・・

ゼロ魔の小説が進まねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

今現在、次話が20行って・・・・・・・

こっちはスラスラと話が思いつくのに。

とりあえずそっちも頑張りますんで気長にお待ちください。

では、次も頑張ります。






[8056] 第三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/12 20:31
戦いで負傷した拓也と魔力の殆どを奪われてしまったなのは。

アースラメンバーは、至急時空管理局本局へと向かう。


第三話 再会と引越し。


「う・・・・ぐ・・・・・・・」

とある一室で、拓也は目を覚ました。

拓也は、上半身を起こす。

だが、その時、

「ぐっ!?」

身体を痛みが襲い、拓也は蹲る。

その痛みが、気を失う前の事が現実だと知らしめる。

「何で・・・・何であいつ等が・・・・・・」

拓也は拳を握り締める。

仮面で顔は分からなかったが、あのバリアジャケットの形は、間違いなく輝二と輝一のものであった。

しかも、2人は迷いなく攻撃してきた。

「くっ・・・・・・」

拓也は俯き、声を漏らす。

そんな拓也の心の内は、2人の親友に対する疑問と信じられない気持ちで一杯であり、困惑していた。

「・・・・・くそっ!」

――ガンッ

いくら考えても答えの出ないイラつきに、拓也は壁を殴りつける。

と、それと同時に、部屋の扉が開いた。

「ッ!?」

入ってこようとした人物は驚いて足を止める。

それに気付いた拓也が顔を向けると、

「・・・・・フェイト」

フェイトが驚いた顔で立っていた。

「ああ・・・・・ごめん。驚かせちまったな」

「あ・・・・うん・・・・・気がついたんだね」

お互い気まずい雰囲気が流れる。

「・・・・・・久しぶり・・・・・だな」

拓也がポツリと呟いた。

「うん・・・・・そうだね」

フェイトも頷く。

「身体は大丈夫?」

今度はフェイトが尋ねる。

「ああ。少し痛むけど大丈夫だ」

拓也が少し元気な声で言った。

「そう。良かった」

フェイトも微笑んでそう言う。

「ははは・・・・それにしても、いきなりカッコ悪いところ見せちまったな」

拓也が苦笑混じりにそう言った。

「ううん。仕方ないよ。相手も強かったし、いきなりの不意打ちだったから」

フェイトはそう言うが、

「・・・・・・・・それだけじゃ・・・・・ないんだけどな」

拓也は小声で呟いた。

「え?」

フェイトは聞き取れなかったのかそう声を漏らす。

「いや。何でも無い」

拓也はそう言うと、ベッドから降りて立ち上がろうとした。

「ぐっ!」

その時、身体に痛みが走りふらついてしまう。

「タクヤ!」

フェイトが駆け寄ってきて肩を支えた。

「わ、悪い。まだ本調子じゃ無いみたいだ」

拓也はそう苦笑する。

「無理しないで」

フェイトはそう言うが、

「お前こそ無理すんなよ。腕、怪我してるんだろ?」

拓也がそう指摘する。

拓也の言った通り、フェイトの腕には包帯が巻かれている。

「こ、こんなのタクヤに比べたら全然平気だよ!」

フェイトは誤魔化す様に叫んだ。

そして、半ば強引に拓也の腕を取り肩に回す。

「お、おい・・・・・」

拓也は若干赤くなる。

「今はタクヤの方が酷い怪我してるんだから、無理しないで」

フェイトはそう言い切った。

「・・・・・・わかったよ」

拓也は諦めたように呟き、フェイトに支えられながら部屋を出た。




2人がとある部屋に入ると、

「兄ちゃん!」

「お兄さん!」

「タクヤ!」

信也、なのは、アルフが声をかけてきた。

その部屋には、他にユーノ、エリス、クロノがおり、ユーノが操作している機材の先には、傷ついたレイジングハート、ブレイブハート、バルディッシュの姿があった。

「兄ちゃん、もう大丈夫なの?」

信也が尋ねてくる。

「ああ、俺がこれくらいでじっとしてるわけないだろ」

拓也は自信を持って言った。

「あの、お兄さん・・・・・」

なのはがおずおずと切り出した。

「先程はありがとうございました。お兄さんのお陰で助かりました」

「気にするなよ。それよりもなのはの方は大丈夫なのか?」

「あ、はい。私の方は、魔力を取られてしまって、暫く魔法は使えませんが、身体の方は大丈夫です」

「そうか」

拓也はアルフに向き直る。

「久しぶりだな、アルフ」

「ああ。久しぶりだね、タクヤ」

「クロノ達もな」

クロノ達にもそう声をかける。

「そうだな」

クロノも返す。

「それにしても、不意打ちを受けたとは言え、君ともあろう者が無様じゃないか」

「・・・・・・・ああ・・・・・俺もそう思う・・・・・」

拓也はそう呟くと俯く。

「タクヤ?」

フェイトが心配そうに拓也の顔を覗き込む。

拓也はそれに気付くと、

「あ、いや、何でもないよ」

誤魔化す様に笑顔を作った。

「それにしても、デバイス達は大丈夫なのか?」

拓也は気になったことを尋ねた。

それには、ユーノが答えた。

「正直、あんまり良くない。今は自動修復をかけてるけど、基礎構造の修復が終わったら、一度再起動して部品交換とかしないと」

あまり状況は良くなさそうであった。

すると、アルフが切り出した。

「そういえばさぁ、あいつらの魔法って、ちょっと変じゃなかった?」

「あれは多分、ベルカ式だ」

クロノが答える。

「ベルカ式?」

アルフが聞き返す。

「その昔、ミッド式と勢力を二分した魔法体系だよ」

「遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法で、優れた術者は『騎士』と呼ばれる」

ユーノとクロノがそれぞれ答える。

「確かに・・・・・あの人、「ベルカの騎士」って言ってた」

クロノの言葉で、フェイトが思い出したように言った。

「最大の特徴は、『カートリッジシステム』って呼ばれる武装。儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る」

「危険で物騒な代物だな」

「なるほどね・・・・」

ユーノとクロノの言葉にアルフは頷いた。

「そういえば、ユーノと信也が相手をした2人は、ミッド式ともベルカ式とも違ったわね」

エリスが気付いて言った。

「タクヤを一瞬で倒した2人だね」

フェイトが確認を取るように言った。

「うん」

エリスは頷く。

「あの2人はスピリットデバイスだ」

拓也が言った。

「え?」

「フェイトが戦った剣士が俺を見たときに言っていた。「3人ものスピリットデバイスの使い手に会うとは、珍しい事もあるものだ」って」

「そうか・・・・・何の属性か分かるか?」

クロノが信也とユーノに尋ねる。

「ちょっとそこまでは・・・・・」

「僕もあっという間にやられちゃったし」

2人は分からないと言った。

だが、

「光と闇・・・・・」

再び拓也が答えた。

「何?」

「俺が感じた2人の属性だ」

一瞬でやられた俺じゃ信憑性が無いだろうけどなと付け加えながら、自傷気味に笑う。

「そうか・・・・・・まあいい。その事は後回しだ。フェイト、そろそろ面接の時間だ」

「うん・・・・・」

「拓也、なのは、信也もちょっといいか?」

クロノはそう言ってついてくるように促した。




クロノに連れて行かれた先、とある部屋で待っていたのは、時空管理局顧問官 ギル・グレアム。

クロノの指導教官だった人物で、歴戦の勇士である。

そして、このグレアムは、フェイトの保護監察官を担当するらしく、今回の面接はそのためのものである。

保護監察官とは言っても、形だけのものらしく、フェイトが友達や仲間を裏切らないなら、行動を制限しないとまで言い切った。

そんな中、グレアムは拓也達と同じ地球の出身だという事を話した。

グレアムは、なのはや信也はもちろんの事、属性特化型である拓也にも大層な興味を持っていたらしい。

この場に呼んだのは話をしてみたかったらしいという事だ。





――同時刻 海鳴市 八神家

八神家にて、ヴォルケンリッターのシグナム、シャマル、ヴィータ、狼形態のザフィーラは、闇の書の主である八神 はやてと共に、食後のゆったりとした時間を過ごしていた。

「はやてちゃん。お風呂の用意が出来ましたよ」

シャマルがはやてにそう言う。

「うん、ありがと」

「ヴィータちゃんも一緒に入っちゃいなさいね」

「はーい」

ヴィータは返事をする。

「明日は朝から病院です。あまり夜更かしされませぬよう」

シグナムがそう言った。

「はーい」

はやてが返事をする。

そして、自分で歩けないはやてをシャマルが抱き上げようとした時、

「あ、シャマル、ちょっとまってな」

はやては時計で時間を確認するとそう言った。

シャマルも時計を見る。

時刻は、間も無く21時を指し示すところであった。

それを見たシャマルは、どういう事かを察する。

「ああ。何時もの時間ですね」

そして、時計が21時を指し、少しすると、

――♪♪♪~~~~~~♪♪~~~~~

はやての携帯電話がメールの着信を知らせる。

「来た!」

はやては嬉しそうに携帯電話を手に取り、画面を見る。

そこには、2つのメールの着信があった。

「いつものキムラとミナモトからですか?」

シグナムが尋ねる。

はやては頷き、

「うん!コーにぃとイチにぃ」

そう笑顔で言う。

因みにコーにぃとは輝二のことで、イチにぃとは輝一の事である。

輝二と輝一は、はやてとメル友なのだ。

「それにしても、毎日毎日律儀だよな。私らがこの家に来てからずっと続いてるし」

ヴィータがそういう。

「正確には、皆が来る一ヶ月ぐらい前からやな」

はやてが、返事のメールを打ちながら答える。

メールを打ち終えると、はやてはシャマルに抱き上げられる。

「よいしょ・・・・っと。シグナムは、お風呂どうします?」

シャマルがシグナムに尋ねる。

「私は今夜はいい。明日の朝にするよ」

「そう?」

「お風呂好きが珍しいじゃん」

シグナムの答えに、シャマルが頷き、ヴィータがそういう。

「偶には、そういう日もあるさ」

シグナムはそう答える。

「ほんならお先に」

はやてがそう言い、3人は浴室へ向かう。

部屋のドアが閉まると、

「今日の戦闘か?」

狼形態のザフィーラがシグナムに尋ねた。

「聡いな。その通りだ」

シグナムはそう言って、服を捲り上げ、傷ついた腹部を見せた。

「お前の鎧を打ち抜いたか」

ザフィーラが感心したように呟く。

「澄んだ太刀筋だった。良い師に学んだのだろうな。武器の差がなければ、少々苦戦したかもしれん」

「だが・・・・それでもお前は負けないだろう」

「そうだな」






「えっ?親子って、リンディさんとフェイトちゃんが?」

フェイトと一旦別れ、拓也、信也、なのはが、丁度エレベーターで一緒になったエイミィからフェイトとリンディの養子縁組の話を聞いていた。

「そう。まだ本決まりじゃないんだけどね。養子縁組の話をしているんだって。プレシア事件でフェイトちゃん、天涯孤独になっちゃったわけだし。艦長の方からうちの子になるって。フェイトちゃんもプレシアの事とか色々あるし。今は気持ちの整理がつくのを待ってる状態だね」

「そうですか・・・・」

エイミィの言葉になのはは俯く。

「なのはちゃん的には如何?」

「んと・・・・なんだか、すっごくいいと思います」

「そっか」

なのはの答えを聞いたエイミィは笑顔で頷いた。

「・・・・・・・となると、早めに会わせといた方がいいな」

ぼそりと拓也が呟いた。

「え?」

信也が首を傾げる。

「ああ、いや。こっちの話」

その場を何とか誤魔化す拓也であった。





それから少しして、とある部屋にアースラスタッフが集まっていた。

リンディが切り出す。

「さて、私達アースラスタッフは今回、ロストロギア『闇の書』の捜索、及び魔導師襲撃事件の捜査を担当する事になりました。しかし、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時の作戦本部を置く事になります」

リンディはスタッフに役割を伝えていく。

その途中で、クロノが拓也に話しかけた。

「拓也・・・・君はいいのか?君は嘱託でもなんでもない。ただの民間人だ。何の関係もないこの事件を無理に手伝わなくてもいいんだぞ」

そのクロノの言葉を聞くと、

「何言ってるんだよ。信也もフェイトも、なのはまで協力するんだ。俺が協力しなかったらカッコつかないだろ」

「フッ・・・・それもそうだな」

「・・・・・・それに今回の事件。俺にとって全くの無関係、って訳じゃなさそうだ」

「どういうことだ?」

「すまん。まだ何とも言えない」

「そうか・・・・・話す気になったら教えてくれ」

「ああ・・・・・」

2人が会話を切り上げると、

「因みに司令部は、なのはさんの保護を兼ねて、なのはさんのお家の、すぐ近所になりま~す」

リンディがいたずらっ子のような笑みを浮かべてそういった。

「え?」

なのはは一瞬ポカンとしたあと、フェイトと顔を見合わせ、

「わぁ~~~~~~!」

嬉しさから笑みを零した。





翌日、引越しが始まっていた。

なのはは、本当に家からすぐ近くだったので、信也、フェイトと一緒にはしゃいでいる。

拓也も出来る事は少なかったが、手伝いに来ている。

そして、アルフが新形態子犬モードのお披露目をし、ユーノとエリスは久々のフェレットモードである。

そんな中、アリサとすずかが遊びに来て、翠屋にてお茶をすることになった。


「ユーノ君、エリスちゃん久しぶりだね~」

すずかがユーノとエリスを抱き、

「う~ん・・・・何かあんたの事どっかで見た気がするんだけど・・・・・気のせいかな?」

アリサが子犬モードのアルフを見ながら首をかしげている。

いくら子犬モードでも、狼形態の面影があるので、一時期アルフを保護した事のあるアリサはなんとなく連想したのだろう。

そんな2人を笑顔で見ていたなのはだが、向こうから見覚えのあるアースラスタッフがこちらに来ている事に気付いた。


一方、翠屋の中では、リンディがなのはの両親である士郎と桃子に挨拶していた。

「そんなわけで、これから暫くご近所になります。よろしくお願いします」

リンディはそう言って頭を下げる。

「ああ、いえいえ。こちらこそ」

「どうぞ、ごひいきに」

桃子と士郎も頭を下げる。

「フェイトちゃん、3年生ですよね?学校はどちらに?」

士郎が尋ねる。

「はい。実は・・・・」

そういいかけた所で店のドアが開き、フェイトたちが入ってくる。

「リンディ提と・・・・リンディさん」

危うく提督と言いそうになったフェイトは慌てて言い直す。

「はい。なあに?」

「あの・・・・これ・・・・・・これって・・・・・」

フェイトが箱に入った聖祥の制服を見せながら言った。

「転校手続き取っといたから、週明けからなのはさんのクラスメートね」

「あら!素敵!」

「聖祥小学校ですか。あそこはいい学校ですよ。なあ、なのは」

「うん!」

「良かったわね、フェイトちゃん」

「あと・・・・えと・・・・・あの・・・・はい、ありがとう・・・・・ございます・・・・・」

フェイトは、顔を赤くしながら制服を抱きしめ、そう言った。









――同日 夜 東京

とあるビルの屋上に輝二と輝一がいた。

「時間だ。そろそろ行くか」

輝二が言った。

「ああ」

輝一も頷く。

すると、輝一が手を前にかざす。

「闇よ集え・・・・・」

輝一がそう呟くと、輝一の前に闇が集まり、2mほどの楕円形になる。

「光よ導け・・・・・」

輝二も手を前にかざし、そう呟くと、輝二の手から光が放たれ、輝一の生み出した闇にぶつかる。

「「混沌の道よ!我らの望む場所へ!開け!カオスロード!!」」

2人がそう唱えると、光と闇の力で空間に穴が開く。

2人は迷わずその穴に飛び込む。

そして、次の瞬間には、

「来たか」

目の前にはヴォルケンリッターの姿があった。

2人は一瞬で東京から海鳴まで移動したのだ。

「これからは管理局の動きも本格化してくるだろうから、今までのようには行かないわよ」

シャマルが注意するようにそう言う。

「少し遠出をする必要があるな。なるべく離れた世界で蒐集を」

シグナムがそう言った。

「今、何ページまで来てるっけ?」

ヴィータが尋ねる。

「・・・・・340ページ。この間の白い服の子でかなり稼いだわ」

シャマルが答えた。

「おし!半分は超えたんだな!ズバッと集めてさっさと完成させよう!・・・・・早く完成させて、ずっと静かに暮らすんだ・・・・・はやてと一緒に」

「行くか。もう余り時間がない」

「ああ」

ザフィーラの言葉にシグナムが頷く。

「行くぞ!レヴァンティン!!」

『Sieg.』

「導いて!クラールヴィント!!」

『Anfang.』

「やるよ!グラーフアイゼン!!」

『Bewegung.』

「輝け!フェンリル!!」

『Yes,My king.』

「闇に咆えろ!レオン!!」

『Roger.』

それぞれがデバイスを起動し、バリアジャケットを展開する。

「それじゃあ、夜明け時までにまたここで」

「ヴィータ、余り熱くなるなよ」

「わーってるよ」

それぞれが言葉を交わす。

転送魔法の使えない輝二と輝一は、輝二はザフィーラと、輝一はシグナムと行動を共にしている。

それぞれが転送魔法を使い、別々の世界へと転移した。





それと同じ頃、エイミィの元に通信が届く。

「はいは~い。エイミィですけど?」

『あ、エイミィ先輩。本局メンテナンススタッフのマリーです』

「ああ。何?どうしたの?」

『先輩から預かっているインテリジェントデバイス3基なんですけど、なんだか変なんです』

「えっ?」

『部品交換と修理は終わったんですけど、エラーコードが消えなくって・・・・』

「エラー?何系の?」

『ええ・・・・必要な部品が足りないって・・・・・今、データの一覧を・・・・』

エイミィの元にデータが送られてくる。

「あ、来た来た・・・・・・え?足りない部品って・・・・これ?」

エイミィはその内容を見て驚愕する。

『ええ・・・・・これ、何かの間違いですよね?』

そのデータに記されていた事は、

【エラーコード203。必要な部品が不足しています。エラー解決のための部品“CVK-792”を含むシステムを組み込んでください】

『3基とも、そのメッセージのまま、コマンドを全然受け付けないんです。それで困っちゃって・・・・・・』

「レイジングハート・・・・・・ブレイブハート・・・・・・・バルデッシュ・・・・・・本気なの?」

エイミィは真剣な顔で呟く。

「CVK-792・・・・・・ベルカ式、カートリッジシステム・・・・・・」

最後にデバイスたちの言葉が表示される。

【お願いします】






次回予告


なのはのクラスに転校してくるフェイト。

日常を満喫するなのはたち。

しかし、戦いの時はやってくる。

新たな力を手にし、ヴォルケンリッター、そして、輝二、輝一と再び対峙する。

次回!リリカルフロンティアA`S

第四話 新たな力。戦う決意。

今、魔法の力が進化する。





オリジナル魔法


――カオスロード

輝二と輝一が協力して使える転移魔法。

光と闇の力で空間に穴を開け、空間を跳躍できる。

輝二と輝一が2人とも知る場所でなければ移動できない。

世界間の移動は出来ないが、同じ世界内であれば結界を無視できる。



あとがき

とりあえず三話完成。

出来はまあまあ。

輝二と輝一をどうやって東京から引っ張ってくるかで悩んだ結果、オリジナルの転移魔法で無理やり解決。

他は大体アニメの通り。

では、次も頑張ります。





[8056] 第四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/08/10 20:50
聖祥小学校に転入することになったフェイト。

その結果は。


第四話 新たな力。戦う決意。


週明けの小学校。

拓也が通う6年の教室でも、3年生のクラスに外国からの留学生が転入してきたという噂が拡がっていた。

言うまでもなくフェイトのことである。

そんな日の昼休み。

「おーい拓也。噂の転校生見にいかねえか?」

クラスメイトから声がかかる。

拓也は、フェイトと知り合いだという事がばれると、質問攻めが目に見えていたので、

「俺はパス。屋上で昼飯にする」

そう言って、弁当を持って屋上へ向かった。




「あ、兄ちゃん」

「お兄さん」

「あ、タ、タクヤ・・・・・」

上から、信也、なのは、フェイトである。

その3人の他には、アリサとすずかもいる。

拓也は、信也たちがほぼ毎日屋上で昼食をとっている事を忘れていた。

信也やなのはがいるとなれば、当然フェイトもついてくる。

「・・・・・しまったな」

拓也は5人に聞こえないように呟く。

こうなれば、一緒に昼食をとることは決定事項である。

後で、質問攻めに遭う事も決定事項だろう。

「兄ちゃんも一緒にどう?」

信也から思った通りの提案が来る。

「それじゃ、一緒に食うか」

拓也は、少し諦めたような苦笑を浮かべ、そう言った。



昼食の最中、

「そういえばさ、信也のお兄さんもフェイトの知り合いだったみたいだけど、どういう関係なの?」

突然アリサが切り出した。

「え・・・・えっと・・・・・その・・・・・・」

フェイトは頬を赤く染めて俯く。

「まあ・・・・なんだ・・・・・?」

拓也も頬をかきながら、言葉を濁す。

しかし、なのはは笑顔で、

「フェイトちゃん、お兄さんの事大好きだもんね」

そう爆弾発言をかました。

「な、なのは!」

フェイトは顔を真っ赤にして叫ぶ。

拓也は照れ隠しにお茶を飲んで落ち着こうとしている。

だが、

「キスだって2回もしてるしね」

「グボォ!・・・・ガホッ!ゲホッ!」

信也の更なる爆弾発言に咳き込む。

「し、信也ぁーーーーーーっ!!?」

拓也は叫んで信也に詰め寄る。

だが、

――ガシィ

と拓也は両肩に手を置かれ、動けなくなる。

見ると、アリサとすずかが両肩を固定していた。

「その話、もっと詳しく!」

「興味あるよ」

アリサとすずかは、目をキラキラさせ興味津々といった表情で信也となのはに詰め寄った。

女は他人の色恋沙汰に興味あるというのは、小学3年生のアリサとすずかにも有効らしい。

「あうあうあう・・・・・」

フェイトに至っては、顔を真っ赤にして、恥ずかしさの余り言葉に出来なかった。

その後、信也が調子に乗って魔法以外のことをベラベラと喋ったので、拓也とフェイトは顔を真っ赤にして何も言えなくなっていた。

因みに、翌日の特訓で拓也が信也を叩きのめしたのは、因果応報と言っておこう。




―― 一週間後 時空管理局本局

なのはのリンカーコアの検査が終わり、完治した事が分かった。

そして、デバイスたちの修理も無事に終わり、なのは、信也、フェイトの手に返された。

そんな時、警報が鳴り響いた。





――海鳴市上空

ヴィータと人間形態のザフィーラが十数人の武装局員に囲まれていた。

「管理局か・・・・」

ザフィーラが呟く。

「けど、チャラいよこいつ等」

ヴィータがそう判断し、

「返り討ちだ!」

ヴィータがデバイスを構えた。

だがその時、武装局員達が離れていく。

「え?」

意外な行動にヴィータは声を漏らすが、

「上だ!」

ザフィーラの声に上を見上げる。

そこには、クロノが無数の魔法の剣を発生させていた。

「スティンガーブレイド!エクスキューションシフト!!」

クロノはデバイスを振り下ろす。

「いけぇっ!!」

無数の刃が、ヴィータとザフィーラに襲い掛かる。

「でぇい!」

ザフィーラが障壁を張った。

刃が降り注ぎ、爆煙に包まれる。

「はあ・・・・・はあ・・・・・はあ・・・・・・少しは・・・・・通ったか・・・・・」

クロノは、激しく息を吐きながらそう呟く。

煙が晴れると、腕に3本の魔力刃が突き刺さったザフィーラの姿があった。

「ザフィーラ!」

ヴィータが叫ぶ。

「気にするな。この程度でどうにかなるほど・・・・・・」

ザフィーラは腕に力を込める。

「やわじゃない!」

ザフィーラの腕に刺さっていた魔力刃が砕け、消滅する。

「上等!」

ヴィータがそう言ってクロノを見上げる。

「くっ」

クロノがデバイスを構えたとき、エイミィから通信が入った。

『武装局員、配置終了!オッケー!クロノ君!』

「了解!」

『それから今、現場に助っ人を転送したよ!』

「えっ?」

クロノが見下ろすと、ビルの屋上に、拓也、信也、なのは、フェイトの姿があった。

その後ろのビルには、アルフ、ユーノ、エリスの姿。

「皆!」

信也、なのは、フェイトは、強い意思の篭った瞳でヴィータ達を見上げる。

拓也は、ヴィータ達を見た後に、周りを見渡し、

「・・・輝二と輝一は・・・・・まだいないか・・・・・」

誰にも聞こえないようにそう呟く。

「あいつら!」

拓也達に気付いたヴィータが叫ぶ。

信也、なのは、フェイトがそれぞれのデバイスを構え、

「ブレイブハート!」

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

3人がデバイスを掲げ、

「「「セーット!アップ!!」」」

光に包まれる。

だが、それは今までと違っていた。

「えっ?」

「こ、これって・・・・」

「今までと違う」

3人が違いに動揺していると、エイミィから通信が入った。

『3人とも、落ち着いて聞いてね。ブレイブハートもレイジングハートもバルディッシュも、新しいシステムを積んでいるの』

「新しい・・・・システム?」

『その子たちが望んだの。自分の意思で、自分の想いで!・・・・・呼んであげて。その子たちの、新しい名前を!』

3人は、気を取り直し、叫んだ。

「ブレイブハート・ビクトリー!!」

「レイジングハート・エクセリオン!!」

「バルデッシュ・アサルト!!」

『『『Drive ignition.』』』

3人はデバイスを起動させ、バリアジャケットを纏う。

起動したデバイスには、カートリッジシステムが付き、バリアジャケットも、一部が微妙に異なっていた。

「あ、あいつらのデバイス、まさか!?」

デバイスの変化を見たヴィータが驚きの声を上げた。

そんなヴィータ達に、フェイトが声をかけた。

「私たちは、あなた達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて・・・・・」

「闇の書の完成を目指している理由を」

なのはも呼びかける。

だが、ヴィータは胡散臭そうな顔をして、

「あのさぁ。ベルカの諺にこういうのがあんだよ。『和平の使者なら槍は持たない』」

その言葉に、なのはたちは顔を見合わせる。

「話し合いをしようってのに、武器を持ってやってくる奴がいるか!バカ!って意味だよ!バーカ!」

ヴィータはそう言う。

「・・・・・・なのはを問答無用で襲った奴に言われても、説得力皆無だな」

「それもそうだね」

拓也が呟き、信也が同意する。

「それにそれは諺ではなく、小話のオチだ」

ザフィーラもヴィータの言葉に突っ込む。

「うっせー!いいんだよ細かい事は!」

ヴィータが誤魔化す為にそう叫んだとき、外から結界を破って、何者かが拓也達の近くのビルに着地した。

その際の煙が晴れていくと、そこにはシグナムの姿があった。

「シグナム!」

フェイトが気付く。

すると、

「エリスちゃん!ユーノ君!クロノ君!手ぇ出さないでね!私、あの子と1対1だから!」

なのはが叫ぶ。

「マジか?」

「マジだよ」

「なのはは、あーいう子なんだから」

クロノ、ユーノ、エリスが呟く。

(アルフ)

フェイトから、アルフに念話が届く。

(私も・・・・・彼女と・・・・・・)

フェイトもシグナムとの1対1を望んでいた。

それを聞くと、

「ああ・・・・アタシも野郎に、ちょいと話がある」

そう言いながら、アルフはザフィーラを見上げる。

すると、シグナムの近くの空間に穴が開く。

「「「「「「!?」」」」」」

拓也達が身構えた。

すると、そこから出てきたのは、バリアジャケットを展開した、輝二と輝一であった。

「バカな!?結界を越えて転送してきた!?」

クロノが驚愕した声を漏らす。

「お前ら・・・・何で・・・・?」

ヴィータが不思議そうな声を漏らす。

「私が呼んでおいた。2人の力も必要になると思ったからな」

シグナムがそう言った。

その時、拓也が声を上げた。

「俺はお前たちに話がある!」

輝二と輝一に呼びかける。

「タクヤ?」

フェイトは不思議そうな顔をして拓也を見つめた。

「お前たちは何故こんなことをする!?答えろ!輝二!輝一!」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

拓也が輝二と輝一の名を出したとき、輝二と輝一以外全員が、驚愕する。

「拓也・・・・・・・」

輝二が拓也の名を呟く。

再び全員が驚愕の表情をする。

「知り合い・・・・・?」

フェイトが呟いた。

「答えろ!!」

拓也は再び叫ぶ。

「・・・・・・・譲れないものがある」

輝二が呟く。

「俺達がやっている事は確かに間違いだ・・・・・だが!アイツを助けるためには、これしかないんだ!!」

輝一が叫んだ。

「だから、今の俺達は、お前たちの『敵』だ!!」

輝二が光の剣、リヒト・ズィーガーを抜き、拓也に向かって突きつけ、叫んだ。

「・・・・・・・・・・そうか」

拓也は俯き、呟く。

拓也は悟った。

たったそれだけのやり取りで、輝二と輝一の意志を。

間違いと自覚しながらも、その譲れないものの為に、拓也とも迷いなく戦う覚悟を。

そして、拓也は顔を上げる。

その顔にもう、迷いは無かった。

「それなら、俺はもう迷わない!俺はお前たちと戦う!そして、お前たちの戦う理由!力尽くでも聞かせてもらうぞ!!」

その叫びに呼応し、サラマンダーが起動する。

拓也が炎に包まれ、アグニフォームとなった。

「信也」

拓也は信也に呼びかける。

「何?兄ちゃん」

「輝一を・・・・黒い鎧のほうをお前に任せる。俺は輝二の相手で精一杯だ」

「あ、うん・・・・・わかったよ」

次に、拓也は念話を送る。

(ユーノ、エリス。どっちか信也のサポートを頼む。信也1人じゃ輝一相手は荷が重い)

(わかった。今回は僕がいくよ)

返事を返したのはユーノだった。

(タクヤ、詳しい話は後で聞かせてもらうぞ)

クロノがそう言ってきた。

(・・・・・・・わかった)

拓也は、再び輝二に視線を戻す。

そして、構えた。

「いくぞ!!輝二!!」

拓也は叫ぶと同時に地面を蹴った。

それと同時に、輝二も地面を蹴った。

拓也は拳を振りかぶり、輝二はリヒト・ズィーガーを振りかぶる。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

「はぁああああああああああっ!!」

お互いの一撃がぶつかり合った。





次回予告

それぞれの戦いを繰り広げる拓也達。

一方、クロノはシャマルの捕縛に成功するが・・・・

次回!リリカルフロンティアA`S

第五話 それぞれの戦いと仮面の戦士

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第四話完成。

短いですね。

でも、出来はそこそこだと思います。

因みにブレイブハートのカートリッジですが、リボルバータイプで、鍔の中心に埋め込まれています。

イメージ的には、FF8のガンブレードのリボルバーが西洋剣の柄に突いている感じです。

次はバトルです。

拓也と輝二のバトルはど派手にいくつもりです。

楽しみにしててください。

では、次も頑張ります。





[8056] 第五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/12 20:32
親友と戦う決意をした拓也。

今、炎と光が激突する。


第五話 それぞれの戦いと仮面の戦士


「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

「はぁあああああああああああっ!!」

拓也の拳と、輝二の剣が激突する。

それは、凄まじい衝撃を放ち、互いを弾きあう。

拓也は、左手の甲から炎を発生させ、

「ファイアダーツ!!」

右手で手裏剣のように幾つも飛ばした。

「なんの!」

輝二は、光の剣で全てを迎撃する。

「バーニング!サラマンダー!!」

続けて拓也は、両腕から炎を放った。

「リヒト・クーゲル!!」

対して輝二は左腕から光線を放つ。

炎と光線がぶつかり合い、爆発を起こす。

未だ爆煙が立ちこめる中、

「サラマンダーブレイク!!」

「ツヴァイ・ズィーガー!!」

拓也の炎を纏った蹴りと、輝二の2本の光の剣を交差させた一撃がぶつかり合う。

その衝撃は、立ち込めていた爆煙を一気に吹き飛ばした。

再び拓也と輝二ははじき合い、間合いが広がる。

ほぼ同時に、拓也は炎に包まれ、輝二は光に包まれる。

『『Form change.』』

『Vritra form.』

『Garm form.』

フォームをパワータイプに変更した。

互いにそれを確認すると、2人は口の端を吊り上げ、

「輝二ぃいいいいいいっ!!」

「拓也ぁああああああっ!!」

再び激突した。





拓也と輝二の激突に、少し呆気にとられながらも、信也、なのは、フェイトの3人は気を取り直す。

その時、

『マスター』

レイジングハートからなのはに声がかかる。

『“カートリッジロード”を命じてください』

「うん!」

なのはは、レイジングハートを構えなおすと、

「レイジングハート!カートリッジロード!」

『Load Cartridge.』

レイジングハートの追加された機構が駆動し、カートリッジが装填される。

レイジングハートに魔力が満ち溢れる。

『Sir.』

「うん、私もだね」

バルデッシュの呼びかけに、フェイトが応える。

フェイトもバルデッシュを構え、

「バルデッシュ!カートリッジロード!」

『Load Cartridge.』

バルデッシュに追加されたリボルバーが回転。

カートリッジが装填される。

バルデッシュにも、魔力が満ち溢れた。

「僕たちも行くよ!ブレイブハート!カートリッジロード!」

『Load Cartridge.』

ブレイブハートの柄に追加されたリボルバーが一発分回転。

魔力刃が勢いを増し、一回り大きくなる。

その様子を見たザフィーラが言った。

「デバイスを強化してきたか・・・・・・気をつけろ。ヴィータ」

「言われなくても!」

そして、次の瞬間それぞれが動き出す。

なのはとヴィータは空中へ。

ヴィータの後をなのはが追う。

「ふんっ!結局やんじゃねえかよ!」

「私が勝ったら、お話を聞かせてもらうよ!いいね!」

「やれるもんなら!」

ヴィータは鉄球のような魔力弾を4つ生み出し、デバイスでなのはに向かって打ち出す。

『Axelfin.』

なのはの足の光の羽が更に大きくなり、その魔力弾を上昇する事によってかわす。

その行動を見越していたのか、なのはに向かってヴィータは突っ込む。

「アイゼン!!」

『Explosion.』

ヴィータの呼びかけに答え、グラーフアイゼンがカートリッジをロードする。

『Raketenform.』

そして、グラーフアイゼンが変形。

以前、なのはのシールドを破ったフォルムになる。

「でぇえええええええええええいっ!!」

ヴィータが回転しながら殴りかかる。

『Protection Powered.』

だが、なのはは、今までよりも分厚い障壁を発生させる。

ヴィータの一撃は、その障壁に止められていた。

「くっ・・・・・か、かてぇ・・・・・」

「あ・・・・・ほんとだ」

ヴィータの言葉に、なのは自身も驚いた表情で呟く。

『Barrier Burst.』

すると、レイジングハートが障壁を破裂させ、その衝撃で両者を吹き飛ばす。

なのはは、あらかじめ分かっていたのかすぐに体勢を立て直したが、ヴィータは吹き飛ばされる。

その隙に、

『アクセルシューターを撃ってください』

レイジングハートの呼びかけに、なのはは応える。

「うん!アクセルシューター!」

『Accel Shooter.』

レイジングハートに魔力が集まる。

「シュート!!」

レイジングハートから12発もの魔力弾が発射される。

「えっ!?」

その数に驚くなのは。

「なっ!?」

体勢を立て直し、発射されたアクセルシューターを見たヴィータも驚愕の声を漏らす。

『コントロールをお願いします』

レイジングハートに言われ、なのははコントロールに集中する。

なのはにコントロールされ、魔力弾がヴィータの周りを飛び交う。

「アホか!こんな大量の球、全部制御できるわけが!」

ヴィータはそう言って、4発の魔力弾をなのはに向けて放つ。

『出来ます。私のマスターなら』

なのはが更に集中すると、ヴィータの周りを飛び交っていた内の4発が軌道を変え、なのはの方へ向かう。

そして、ヴィータの放った4発の魔力弾全てを迎撃した。

ヴィータは驚愕する。

「約束だよ!私たちが勝ったら事情を聞かせてもらうって!」

なのはは、手を高く掲げる。

「アクセル・・・・・・シューーーート!!」

残りの魔力弾が一斉にヴィータに襲い掛かる。

『Panzerhindernis.』

ヴィータは、全方位障壁を張る。

最初こそ魔力弾を弾けていたものの、弾かれた魔力弾も何度も向かってくるため、徐々に障壁に罅が入り始める。

「こんのぉ~・・・・・」

ヴィータは更に魔力を込めて、乗り切ろうとした。





フェイトとシグナムは、超スピードによる斬り合いをしていた。

お互いに接近戦が得意なため、そのレベルは高い。

そして、お互いに弾きあい、間合いを開ける。

『Plasma Lancer.』

フェイトが金色の魔力弾を8つ発生させる。

シグナムは集中力を高める。

「プラズマランサー・・・・・ファイア!!」

フェイトは、その魔力弾を放つ。

「はあっ!!」

シグナムは、炎を纏ったレヴァンティンの一振りで、8つ全てを弾き飛ばす。

だが、弾かれた魔力弾が突如停止する。

「ターン!」

フェイトの号令と共に、魔力弾が反転。

再びシグナムに向かって放たれた。

「くっ・・・・」

八方から襲い来る魔力弾を上に飛び退く事で避けるシグナム。

それでも再び向きを変え、シグナムに向かう魔力弾。

「レヴァンティン!!」

『Sturmwinde.』

レヴァンティンは、カートリッジをロードする。

『Blitz Rush.』

バルディッシュの命令で、魔力弾が加速する。

「でぇええええええええいっ!!」

シグナムの渾身の一振りで放たれた炎が、魔力弾全てを砕く。

しかし、その時に隙が出来る。

フェイトはそれを見逃さず、シグナムに斬りかかった。

『Haken Form.』

バルディッシュのカートリッジがロードされ、変形する。

バルデッシュは、サイズフォームに似ているが、刃の部分が大きくなっており、反対側にも姿勢制御を行うフィンブレードが3枚発生している。
だが、それに対し、

『Schlangeform.』

レヴァンティンも刃の部分が分離し、鞭のような連結刃となってフェイトの攻撃を迎撃する。

魔力の衝突による爆発が起こり、再び間合いが取られる。

だが、今の攻撃は、互いにかすめており、僅かだが傷が出来ていた。

「強いな。テスタロッサ」

シグナムは、レヴァンティンを振り、元の剣に戻す。

『Schwertform.』

「それにバルデッシュ」

そう言うシグナムの口元は、僅かに笑みを浮かべている。

『Thank you.』

バルディッシュが礼を言い、

「あなたのレヴァンティンも・・・・・・シグナム」

フェイトがそう言う。

『Danke.』

レヴァンティンも答える。

「この身に、成さぬ事が無ければ、心躍る戦いだったはずだが・・・・・・」

シグナムはそう言って鞘を具現する。

「仲間達と我が主の為に、そうも言っていられん」

シグナムは剣を鞘に納める。

「殺さずに済ます自信はない・・・・・・この身の未熟を、許してくれるか?」

シグナムはそう言って抜刀の構えをする。

フェイトもバルディッシュを構え、

「構いません・・・・・・勝つのは、私ですから」

フェイトも、一点の曇りの無い声で、そう答えた。



地上では、アルフとザフィーラが派手な格闘戦を行なっていた。

「でりゃぁあああああああああっ!!」

「ぬおっ!・・・・ぐぉおおおおおおっ!!」

アルフの渾身の拳をザフィーラが受け止める。

「デカブツ!あんたも誰かの使い魔か!?」

「ベルカでは・・・・騎士に仕える獣を使い魔とは呼ばぬ・・・・・」

「!?」

「主の牙。そして盾。守護獣だぁ!!」

「同じようなもんじゃんかよぉ!!」

込められた魔力により、爆発が起こった。





『Aero wing』

「でやぁああああああああっ!!」

信也が、背中から青い魔力の翼を生み出し、猛スピードで輝一目掛けて正面から斬りかかる。

それを輝一は2本の紅の剣を交差させて受け止める。

「はあっ!」

輝一は信也を押し返す。

信也は、その力に逆らわずに後ろに間合いを取る。

その時、輝一を絡めとらんとユーノのバインドが発生する。

「ふっ!」

輝一は、その場で一回転するように剣を振る。

それだけでバインドは全て切り裂かれる。

「そこっ!」

その隙を突いて、信也が斬りかかったが、

「甘い」

輝一によって簡単に受け止められた。

再び信也は弾かれる。

すると、輝一の鎧の目玉の装飾が信也の方を向いた。

「ッ!ユーノ!!」

信也はユーノを呼ぶ。

「分かった!」

ユーノはすぐに信也の近くに行く。

「ガイストアーベント!!」

紅の光線が信也に向けて放たれる。

「はぁあああっ!!」

「やらせない!!」

信也とユーノは同時に障壁を張る。

もともと防御が得意なユーノと、カートリッジシステムによって更に強固な障壁が張れるようになった信也の障壁は、輝一の攻撃を受けきった。

「何っ!?」

これには輝一も少々予想外だったらしく、僅かな動揺を見せる。

「今だ!」

ユーノが叫ぶと、輝一のすぐ傍に魔法陣が発生し、そこからバインドが伸びる。

そのバインドは、輝一の足を絡めとった。

それは、ユーノが仕掛けていた、トラップ型のバインドだった。

「はああっ!!」

ユーノが更にバインドを巻きつける。

「この位で!」

輝一は力ずくでバインドを振りほどこうとした。

だが、

「負けるもんか!」

ユーノも負けじとバインドに魔力を込める。

「信也!今だよ!!」

ユーノは信也に呼びかける。

「わかった!」

『Arctery mode』

ブレイブハートがV字型の弓に変形する。

信也は魔力で弓矢を形成し、引き絞る。

「ブレイブハート!カートリッジロード!!」

『Yes,My master.』

弓の中央に付いたリボルバーが回転する。

V字型の魔力矢が、更に輝く。

『V-Breath Arrow MAX.』

「いけぇっ!!」

今までよりも2倍以上巨大なブイブレスアローが放たれる。

輝一は、バインドを振りほどこうとするが、ユーノの全力のバインドはそう簡単に外れない。

「くっ・・・・・・」

輝一は、青い閃光に飲み込まれた。

「やったぁっ!」

信也が喜びの声を漏らす。

「コーイチ!」

「キムラ!」

その瞬間を目撃したヴィータとシグナムは叫ぶ。

「信也君!やったぁ!」

なのはも喜びの声を上げた。

だが、次の瞬間、

『Form change.』

着弾点から、黒い光の柱が発生する。

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

そして、その闇の中から現れたのは、

『Velge form.』

漆黒の翼を持ち、ダスクフォームより更に醜悪な雰囲気を持った姿。

頭部のフェイスガードはまるで鳥のくちばしのように長く、額に当たる部分には第三の目があるような装飾。

手に装備されている手甲は、指に直接刃がついており、鋭い爪のようになっていた。

「この形態は、余り使いたくは無かったんだがな・・・・しかし、そうも言っていられない。俺達は負けるわけにはいかないんだ」

輝一はそう告げる。

「あいつも・・・・コージみたいに甲冑の変化が出来たのか・・・・・」

「初めて見るな」

ヴィータもシグナムも、輝一のベルグフォームの姿を見るのは初めてらしい。

輝一は飛び立ち、信也達と同じ高度に来る。

すると、輝一の魔力が、額に集まりだした。

『Master of Darkness.』

「マスターオブ・・・・ダークネス!!」

額から紅の光線が放たれた。

「ユーノ!」

「分かってる!」

信也とユーノは、再び同時に障壁を張った。

紅の光線が障壁に当たる。

しかし、

「なっ!?」

「そ、そんなっ!?」

輝一のマスターオブダークネスは2人の魔力障壁に罅を入れていき、爆発と共に砕け散った。

「うわっ!」

「くうっ!」

爆発に2人は吹き飛ばされるが、なんとか持ち直す。

ユーノが再びバインドで拘束しようとするが、輝一が勢い良く羽ばたくと、そこから溢れた魔力の風でバインドが掻き消える。

「ははは・・・・・やっぱり一筋縄じゃいかないか・・・・・」

信也は、乾いた笑いを漏らした。







「コロナブラスター!!」

連続で放たれる炎の弾丸。

それを輝二は、ホイールを使った高速移動で避けていく。

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

輝二はそのまま腕のブレードを展開。

拓也に向かって突っ込んでくる。

しかし、拓也はその場で構えた。

「来い!輝二!!」

「いいだろう!喰らえ!!」

輝二は全力で拓也に向かって突っ込んだ。

輝二のブレードを両腕で受け止める。

「うぉおおおおおおおっ!!」

「はぁあああああああっ!!」

輝二の勢いに押され、拓也は次々と後退していく。

「ぬぉおおおおおおおっ!!」

拓也は、更に足を踏ん張る。

地面は抉れ、更に100mほど押されるが、やがて停止する。

だが、輝二は両手の付け根を合わせ、手をまるで獣の口のような形にしていた。

「ッ!?まさか!」

拓也は気付いたが、遅かった。

『Solar Laser.』

「ソーラーレーザー!!」

輝二の手から、極太のビームが放たれる。

零距離からの砲撃。

「ぐあっ!?」

拓也は、成すすべなくそれに飲み込まれた。



「うっし!あっちの勝負はコージの勝ちだ」

「これで勝負あったな」

それを確認したヴィータとシグナムは、大勢を占めたと感じた。

しかし、

「タクヤは負けない」

フェイトは、シグナムに向かってそう言った。

次の瞬間、

「「なっ!?」」

炎の柱が立ち上る。

『Alda form』

その炎の柱の中からアルダフォームとなった拓也が姿を現した。

ヴィータやシグナムも、拓也から感じる魔力に驚きを隠せない。

「な、なんて魔力だ・・・・・」

「こ、この魔力の差では・・・・」

拓也は、ゆっくりと地面に降りると、輝二を見据える。

「輝二・・・・ここからが本当の勝負だ」

輝二は一度目をつぶり、

「・・・・・そうだな」

目を見開く。

その瞬間、輝二から光の柱が立ち昇る。

「「「「「「「!?」」」」」」」

今度は、信也達も含めて驚愕した。

『な、そんな!拓也君と互角の魔力量!』

観測していたエイミィが、通信で報告してくる。

『Beowolf form』

輝二も、ヴォルフフォームとガルムフォームの長所を併せ持った形態に変身した。

手には、ガルムフォームのブレードを合わせ大剣を握っている。

「いくぞ!」

「おお!」

次の瞬間には激突していた。

激突の衝撃で、周りのビルの窓ガラスが割れ砕ける。

「うぉおおおおおお!!」

「せぇええええええい!!」

2人は次々に激突を繰り返す。

拓也の手甲と輝二の大剣。

拳と拳。

蹴りと蹴り。

その一撃一撃が凄まじい魔力を含んでいる。

2人はビルを跳ね回りながら激突を繰り返す。

2人のスピード、パワー共に凄まじく一瞬であらゆる所に移動し、巻き込まれた場所は砕かれていく。

やがて互いに弾きあい、拓也は空中に、輝二はビルの屋上に着地する。

拓也のルードリー・タルパナが反転。

更に展開する。

『Brahma Sutra』

輝二は左腕を拓也に向けると、左腕の装甲が展開。

砲身と無数のミサイルが発射態勢に入る。

『Lichtangriff』

「ブラフマストラ!!」

拓也が両腕を連続で交互に繰り出し、無数の火球を放つ。

「リヒトアングリフ!!」

輝二の左腕から、無数のミサイルと、砲身からレーザーが発射される。

お互いの攻撃は、両者の中央でぶつかり合い、大爆発を起こす。

「な・・・・す、凄い・・・・」

フェイトが驚愕した声を漏らす。

『Sランクオーバー同士の激突だからね。巻き込まれないように注意して!』

エイミィから注意が飛ぶ。

更に、両者は爆炎の中に突っ込み、激突する。

その激突の衝撃で、爆炎は掻き消える。

そのまま両者はビルの屋上を跳ね回りながら、激突を繰り返した。




ザフィーラは状況を見て、シャマルに念話を飛ばす。

(状況は、余りよくは無いな。シグナムやヴィータが負けるとは思わんが、ここは退くべきだ。シャマル、何とかできるか?)

シャマルは、結界の外にいた。

(何とかしたいけど、局員が外から結界維持してるの。私の魔力じゃ破れない。シグナムのファルケンや、ヴィータのギガント級の魔力を出せなきゃ)

(2人とも手が離せん・・・・・止むをえん。あれを使うしか・・・・・・)

(ならばその役目、俺に任せてくれ)

輝一が念話に割り込んだ。

(コウイチか!)

(キムラ君!?)

(俺ならこの結界を破壊できる)

(信じていいんだな?)

ザフィーラが尋ねる。

(任せてくれ)

輝一が自信を持って答える。

(ならば頼む。出来るだけ急いでくれ。主を待たせているからな)

(分かった)

輝一は、念話を終えると、信也を見下ろす。

「悪いけど、相手をしている暇は無くなった」

輝一は信也たちに言い放つ。

そして、大きく翼を羽ばたくと、凄まじい風と魔力の奔流が起こり、信也とユーノの足を止める。

その隙に、輝一は、結界の外へと向かう。

結界にぶつかると抵抗があったが、輝一は問題なく打ち破って結界の外に出た。



シャマルは、結界を見つめていると、後ろからデバイスを突きつけられた。

それはクロノであった。

「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いで、あなたを逮捕します。抵抗しなければ、弁護の機会があなたにはある。同意するなら武装の解除を」

その様子を見ていたリンディとエイミィも感心した声を漏らす。

その時、

「はっ!!」

何者かがクロノを蹴り飛ばした。

「ぐっ!?」

クロノは後方のビルのフェンスに叩き付けられる。

「・・・・な、仲間・・・?」

『エイミィ!?今のは!?』

通信でリンディが叫ぶ。

『わ、分かりません。こっちのサーチャーには何の反応も・・・・・何で?どうして?』

エイミィは困惑した声を漏らした。

クロノを蹴り飛ばしたのは、仮面の男だった。

そこに、輝一が飛んでくる。

「何者だ!?お前は!?」

輝一はそう言うが、その男は答えず、

「使え」

「何?」

「闇の書の力を使って結界を破壊しろ・・・・・」

「でも、あれは!」

シャマルが叫ぶが、

「使用して減ったページは、また増やせばいい。仲間がやられてからでは遅かろう・・・・・」

シャマルは手に持った闇の書を見つめる。

「その必要は無い」

輝一が言い放った。

「結界は、俺が破壊する!」

輝一は、仮面の男を睨み付ける。

「俺はお前みたいな怪しい奴を無条件で信じられるほどお人よしじゃない!」

「・・・・・・構わんさ・・・・闇の書のページを使わずに済めば、それに越した事は無い。あちらの足止めは任せてもらおう」

仮面の男は、クロノの方を向いて言った。

「チッ」

輝一は舌打ちしながら、疑わしそうな視線を向けるが、すぐに結界の方に集中する。

輝一は飛び立つと、魔力を高める。

高まった魔力を右腕に集中させると右手が黒く輝く。

輝一は、結界の表面に円を描いていく。

(皆!これから結界を破壊する。輝二)

(分かっている。目くらましだな)

(タイミングを合わせるぞ)

(ああ)

結界の中の輝二は、拓也との間合いを取ると、大剣を掲げる。

『Zweihänder』

光の魔力が狼を形作った。

「くっ・・・・」

『Brahma Shil』

それに対して、拓也は巨大な火球を生み出す。

「ツヴァイ!ハンダー!!」

輝二は光の狼を放つ。

「ブラフマシル!!」

拓也は火球を投げつけた。

凄まじい魔力が圧縮されたそれらはぶつかり合い、凄まじき大爆発を起こす。

それは、結界内の全員の視界を塞ぐ。

(今だ!輝一!)

(分かった!)

『Zone Deleter』

輝一が、その名を告げる。

「ゾーンデリーター!」

輝一が描いた円の端から闇が競りあがり、巨大な口が飲み込むように真っ黒な球体となる。

そして次の瞬間、

――バリィン

結界が砕け散った。

「なっ!?結界が!?」

その事実にフェイトが驚愕する。

「悪いなテスタロッサ。この勝負、預ける」

「シグナム!」

シグナムは飛び去る。

「ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士、ヴィータ。あんたの名は?」

ヴィータがなのはに話しかける。

「なのは。高町 なのは」

「タカマチ ナヌ・・・・・ナノ・・・・?ええいっ!!呼びにくい!!」

「逆ギレ~!?」

「ともあれ勝負はあずけた。次は殺すかんな!ゼッテーだ!」

そう言って、ヴィータは輝二を拾って飛び去る。

「えと・・・・あの・・・・ヴィータちゃん!?」

エイミィがサーチャーで追いかけようとするが、

「輝二!」

輝一が呼びかける。

輝一の前には闇が集っていた。

「わかった!」

輝二は、闇に光を放つ。

空間に穴が開き、カオスロードが開いた。

「皆!飛び込め!」

ヴォルケンリッター、輝二、輝一はそれに飛び込む。

カオスロードはすぐに閉じ、追跡不能だった。

拓也達は、消滅していく結界の中、夜空を見上げるしかなかった。





次回予告


戦いの後、輝二、輝一との関係を聞かれる拓也。

守護騎士たちの正体について話すクロノ。

そんな中、ヴォルケンリッター達の。

そして、輝二、輝一の真意とは?

次回!リリカルフロンティアA`S

第六話 小さな願い

今、魔法の力が進化する。




あとがき

五話完成。

だったけど、拓也と輝二の戦いが表現仕切れなかった~~~~!!

ちくしょ~~~~~!!

なんか物足りないです。

申し訳ない。

自分の力不足です。

まあとりあえず、輝一のベルグフォームと、輝二のべオウルフフォームは出せたから良かったんだけど・・・・・

輝一のダスクフォームがなんか弱く感じるなぁ~

いくら2人がかりとはいえ、あっさりとやられすぎたかな?

ともかく、次も頑張ります。




[8056] 第六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/09/06 18:12
ヴォルケンリッター達に逃げられた拓也達。

そして、拓也は・・・・・・


第六話 小さな願い


ヴォルケンリッターとの戦いの後、拓也達は臨時の司令部に戻ってきていた。

そこで、信也、なのは、フェイトは、エイミィからデバイスの説明を受けていた。

「カートリッジシステムは扱いが難しいの。本来なら、この子達みたいに繊細なインテリジェントデバイスに組み込むようなものじゃないんだけどね。本体破損の危険も大きいし、危ないって言ったんだけど・・・・・その子たちがどうしてもって。よっぽど悔しかったんだね。その子達が、自分のご主人様を守ってあげられなかった事とか・・・・・・・・ご主人様の信頼に応えきれなかった事とか・・・・・」

その言葉に、なのはは涙を滲ませる。

「ありがとう・・・・・レイジングハート」

『All right』

なのはの礼にレイジングハートが応える。

「バルデッシュ・・・・・」

『Yes, sir』

フェイトとバルデッシュも短いながら言葉を交わす。

「ブレイブハートもありがとう」

『All right』

信也も、ブレイブハートに礼を言った。

「モードはそれぞれ3つずつ。レイジングハートは、中距離射撃のアクセルと砲撃のバスター。フルドライブはエクセリオンモード。バルディッシュは汎用のアサルト、鎌のハーケン。フルドライブはザンバーフォーム。ブレイブハートは剣のビクトリー、遠距離射撃のアーチェリー。フルドライブはアルフォースモード。破損の危険があるからフルドライブはなるべく使わないように。特になのはちゃん」

「はい?」

「フレームの強化が済むまで、エクセリオンモードは起動させないでね」

「はい」

デバイスの説明が済むと、クロノが切り出した。

「さて、拓也。君とあの2人の関係を教えてもらおうか」

全員の視線が、拓也に集中する。

「タクヤ・・・・・」

フェイトが心配そうな表情で見つめる。

「・・・・・・とりあえず、あの2人の名前は、源 輝二と木村 輝一。あの2人は・・・・・・」

拓也はいったん言葉を切る。

拓也以外の全員は息を飲む。

「あの2人は、俺の親友だ」

「「「えっ!?」」」

拓也から発せられた予想外の言葉に、信也、なのは、フェイトは驚愕した。

「1年以上前の話だけど、一緒に旅をしたんだ・・・・」

「旅?」

フェイトが聞き返す。

「ああ・・・・・たった1日だけの・・・・・・短いようで・・・・・・長い旅さ・・・・・」

拓也は遠い目をする。

「タクヤ・・・・・・」

そんな拓也を不思議そうに見つめるフェイト。

「・・・・・まあ、それは置いておくとして、何故その2人だと判断が付いたんだ?あの2人は仮面に近いバリアジャケットを纏っていた。顔から判断するのは不可能だったはずだ」

クロノが尋ねる。

「ああ・・・・・それは、バリアジャケットさ」

「バリアジャケット?」

「そう・・・・・あの2人・・・・・俺もそうだけど、バリアジャケットの元になったモノがあるんだ。俺は、それを知っていたからだ」

「それは?」

クロノが尋ねる。

「それは言えない。ただ、その事については、魔法関係は一切無いと断言できる」

拓也の言葉に、クロノはやれやれといった表情をする。

「そして、もう一つ言える事は、輝二や輝一は、よっぽどの理由がない限り、蒐集なんて行為に力を貸すような奴らじゃないってことだ。あと、戦って分かった事だけど、輝二の剣に迷いは無かった。無理矢理に戦わされてるわけじゃないみたいだな」

拓也ははっきりと告げる。

「そうなると、問題は彼らの目的よね」

リンディが口を開いた。

「ええ。どうも腑に落ちません。彼らはまるで、自分の意思で闇の書の完成を目指しているようにも思えますし・・・・・・・・」

クロノが同意する。

「え?それって何かおかしいの?闇の書ってのも、ようはジュエルシードみたく、すっごい力が欲しい人が集めるモンなんでしょ。だったら、その力が欲しい人の為に、あの子達が頑張るってのも、おかしくない気がするんだけども・・・・」

アルフが気になり尋ねる。

クロノとリンディは、一度顔を見合わせたあと、クロノが話し出した。

「第一に、闇の書はジュエルシードみたいに自由な制御が効くものじゃないんだ」

「完成前も完成後も、純粋な破壊にしか使えない。少なくとも、それ以外に使われたという記録は、一度も無いわ」

「あ・・・・そっか・・・・・」

2人の説明に、アルフは納得する。

「それからもう一つ。あの騎士たち・・・・」

クロノが続ける。

「闇の書の守護者の性質だ。彼らは人間でも使い魔でもない」

「「「え?」」」

クロノの言葉に驚く。

「闇の書に合わせて、魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて行動する、ただそれだけのプログラムに過ぎないはずなんだ」

その言葉に沈黙が流れる。

すると、

「あの・・・・・」

フェイトがおずおずと口を開いた。

「人間でも使い魔でもない擬似生命っていうと・・・・・・私みた「アホ」きゃうん!?」

フェイトの言葉の途中で、拓也がフェイトの頭に拳骨を落とした。

「あうぅ・・・・・何するの?」

フェイトは、頭を抑えながら涙目で拓也を見る。

「お前が馬鹿な事を言うからだ」

拓也は真面目な顔で言った。

「お前は人間だ。前にもそう言っただろうが」

「拓也の言うとおりだ。検査の結果でも、ちゃんとそう出てただろ。滅多な事は言うもんじゃない」

「はい・・・・ごめんなさい・・・・・」

拓也とクロノの言葉に、フェイトは謝罪する。

「ま、例えフェイトが人間じゃなかったとしても、俺はフェイトの事を嫌ったりなんかしないさ。フェイトが何者であれ、俺が俺であるように、フェイトもフェイトだ。そうだろ?」

「・・・・・うん・・・・・ありがとうタクヤ」

拓也の言葉に、フェイトは少し頬を赤らめながらそう言った。

「はいはい2人とも、ストロベリー空間を作るのは良いけど、それ以上は人の居ないところでやってね」

エイミィが茶化すように言ってくる。

その言葉に、2人の顔が赤くなる。

「じゃあ今度は、モニターで説明するね」

エイミィが話を戻し、部屋の電気を消してモニターを映す。

「守護騎士は、闇の書に内蔵されたプログラムが人の形をとったもの。闇の書は、転生と再生を繰り返すけど、この4人はずっと、闇の書と共に、あらゆる主の元を渡り歩いている」

「意思疎通のための対話能力は、過去の事件でも確認されているんだけどね。感情を見せたって言う例は、今までに無いの」

「闇の書の蒐集と主の護衛。彼らの役目はそれだけですものね」

クロノ、エイミィ、リンディが説明していく。

「でも、あの帽子の子・・・・・ヴィータちゃんは怒ったり悲しんだりしてたし・・・・・・」

「シグナムからも、はっきり人格を感じました。成すべき事があるって・・・・・仲間と主のためだって・・・・・」

なのはとフェイトがそう言う。

「主のため・・・・・・か」

クロノが呟く。

「ようするに、クロノたちが言いたい事は、あの守護騎士たちはプログラム生命体だから心を持ってるのはおかしいってことか?」

拓也がそう聞く。

「当然だろう?インテリジェントデバイスのようなAIは別として、プログラムそのものが意思を持つなどありえない」

クロノはそう答えた。

「・・・・・・俺にとっちゃ、プログラムが心を持つなんて、不思議でも何でもないんだけどな・・・・・・」

拓也はポツリと呟く。

「何か言ったか?」

「いや、何でもない」

拓也からしてみれば、データで構成されたデジモン達も心を持っていたので、特におかしいとは思わなかった。

「まあ、それについては、調査に当たっている局員からの情報を待ちましょうか」

リンディがそう言う。

「転移頻度からみても、主がこの付近にいるのは確実ですし。案外、主の方が先に捕まるかもしれません」

「ああ。そりゃ分かりやすくていいね」

クロノの言葉にアルフが笑ってそう言った。

「だね。闇の書の完成前なら、持ち主も普通の魔導師だろうし」

「うん・・・・・それにしても、闇の書についてもう少し詳しいデータが欲しいな」

クロノは、ふと信也となのはの肩に乗っているユーノとエリスに目がいく。

すると微笑し、近付いていった。

「ユーノ、エリス。明日から少し頼みたい事がある」

「え?」

「いいけど・・・・・」

クロノの言葉に2匹はキョトンとした。





一方、カオスロードで撤退した輝二達は・・・・・・

「そんなら、如何いう事か説明してくれへんかなぁ?何で、コーにぃとイチにぃがいるんや?それに何をやっとったんや?」

はやての目の前で、全員が正座させられていた。

何故こんな状況になったのかというと、輝二と輝一は本当ならカオスロードをはやての家の玄関前に繋げるつもりだった。

だが、状況が状況であり、咄嗟の事だったので、転移先のイメージが僅かにズレ、はやての家の中につなげてしまい、しかもはやてが目の前にいた。

輝二達は全員バリアジャケットを纏い、デバイスも起動状態だったので、はやてはただ事ではないと思い、説明を求めているのだ。

全員は困っていた。

流石に正直に話すわけにはいかなかった。

その時、

(皆、俺に話を合わせてくれ)

輝一から、はやて以外に念話が送られる。

皆は、了承の意を返すと、輝一は話し出した。

「あははは・・・・・・これは誤魔化しきれないな」

そう切り出す。

「実は、俺と輝二にも魔法の資質があることが分かったんだ」

「ほえ?そうなんか、シグナム」

はやては、少し驚いた表情でシグナムに確認を取る。

「あ、は、はい。キムラの言うとおり、2人は魔法の資質を持っています」

「ふむふむ。それで?」

はやては、輝一に話の先を促す。

「それで、最近になって、シグナムたちに魔法の訓練を頼んだんだ。ほら、最近皆の帰りが遅い時があっただろ?」

「確かにそうやね」

はやても頷く。

「その時は、ちょっと訓練に熱が入っちゃってね。時間を忘れて遅くなったりしたんだ。それに今回は、俺と輝二の転移魔法の練習も兼ねて俺たちが転移させたんだけど、ちょっと失敗してはやての目の前に繋がっちゃったんだ。あと、バリアジャケットを纏っていたのは、万が一の事態に備えてだよ」

「そうやったんや・・・・・・・秘密にしとったのは何でや?」

はやては、納得しかかったが、ふと気になったことを尋ねる。

輝一はそこまで考えていなかったので、言葉に詰まったが、

「ああ、それはもうすぐクリスマスだろ?だから、その時にお披露目して、はやてを驚かせようと思ってたんだ。まあ、間違ってこんなに早くばれることになったけどな」

輝二はそう笑っていった。

「そうやったんや・・・・・皆、変に勘繰ったりしてゴメンな」

はやては、そう笑顔で謝った。

「いえ、キムラやミナモトの頼みとはいえ、主はやてを欺いていた事、真に申し訳なく思います」

シグナムが頭を下げる。

「ええんよ。そういう理由やったら、私も怒りはせえへん」

「ありがとうございます。主はやて」



はやてやヴィータが風呂に入っている時、輝二、輝一、シグナムは庭で星を眺めていた。

「キムラ、ミナモト。主はやてへの説明も含めて、今日は助かった。礼を言う」

「気にしなくていい。本当のことを言うわけにはいかないからな」

輝一はそう言う。

「俺たちが蒐集を行っている事を知れば、はやては悲しむ」

輝二もそう呟いた。

「そうだな・・・・・・それについてもお前たちにはすまないと思っている」

シグナムは、申しわけなさそうにそう言う。

「それこそ気にしなくていい」

輝一が言った。

「俺たちは自分の意思で協力しているんだ。シグナムが謝る事じゃない」

輝二は再び夜空を見上げる。

輝二は、はやてと会ったときのことを思い出していた。




――5月

連休を利用して、輝二と輝一は海鳴市に来ていた。

海鳴市には輝二の義母の実家があり、輝一も連れて遊びに来ていたのだ。

輝二と輝一は2人で海鳴市を回っていた。

2人の携帯にはGPS機能も付いているので、特に迷子になるという事態にはならなかった。

そんな時、丘に向かう道の途中で、輝二達は、車椅子に乗った少女を見つけた。

その少女は、車椅子が溝にはまり込んでしまい、身動きが取れないようだった。

輝二はその少女に近付き、話しかけた。

「どうかしたのか?」

その少女が振り返る。

「あ、いえ・・・・・車椅子のタイヤが溝にはまり込んでしもうて、身動きがとれへんようになってしもうたんや」

輝二がそれを聞き、見ると確かにタイヤの片方が溝に完全にはまり込んでしまい、自力では抜け出せないようだった。

「輝一、そっち持ってくれ」

「ああ」

輝二は輝一に声をかけると、2人で車椅子を持ち上げ、溝から出す。

「あ、お、おおきに。ほんま助かりました」

その少女は礼を言う。

「それで、何処に行こうとしてたんだ?」

輝二は少女に聞く。

「えっと、この先の墓地ですけども・・・・・」

すると、輝二は車椅子を押し出す。

「送っていこう。ここで会ったのも何かの縁だろう」

「え?そ、そんな。悪いです。そこまでしてくれへんでも」

「気にしなくていい。俺がそうしたいんだ」

輝二は微笑してそう言う。

「お、おおきに・・・・・」

少女は少し顔を赤らめながら礼を言った。

「あ、私、八神 はやていいます。よろしゅうお願いします」

はやてが自己紹介したので、輝二と輝一も名乗る。

「源 輝二だ。」

「俺は木村 輝一。よろしくなはやて」

2人がそう名乗った時、はやては不思議そうな顔をした。

「どうした?はやて」

輝二が尋ねる。

「あ、いえ、輝二さんと輝一さんはそっくりやったんで、てっきり兄弟かと思ったんですけど・・・・・」

「ああ、その事か。確かに俺と輝一は血の繋がった双子の兄弟さ。輝一の方が兄に当たる」

「そうなんですか?でも、苗字が・・・・・」

はやては、不思議そうに尋ねる。

「俺たちが物心着く前に両親が離婚してね。俺は母親の方に、輝二は父親の方に引き取られたんだ」

輝一がそう説明する。

「お互いに双子の兄弟がいるのを知ったのはつい半年前さ。それまで兄弟がいるなんて全く知らなかった」

輝二もそう言う。

「あ、すんません。へんな事聞いて・・・・・」

はやては申しわけなさそうに謝る。

「気にするな」

輝二はそう笑みを浮かべて言った。

墓へと行く道すがら、輝二と輝一は、はやての身の上話を聞いていた。

はやての両親は既に他界しており、今から行くのは両親の墓だという事。

親戚もおらず、はやては独り暮らしをしていること。

財産の管理は、父親の友人がしてくれていることを。

やがて、墓参りも終わり、輝二達ははやてを自宅まで送っていく事にした。

はやての家の前で、

「輝二さん、輝一さん、今日はほんと助かりました」

はやては笑顔で礼を言う。

「いいさ。それにしても、結構広い家に住んでるんだなはやてって」

「ですけど、1人なんでちょっと寂しいんやけどね」

はやては、少し寂しそうな笑みを浮かべた。

それを見た輝二が、

「はやて、携帯持ってるよな?」

輝二がそう尋ねる。

「え?は、はい」

そう言って、はやては携帯電話を取り出す。

「俺の番号とメルアド教えとくから、寂しくなったら話し相手ぐらいにはなれるさ」

「えっ?いいんですか?」

「ああ」

輝二はそう言って、はやてに番号とメールアドレスを教える。

「それじゃあ、俺も」

輝一も同じく番号とメールアドレスを教える。

「ほんまおおきに!」

はやては、本当に嬉しそうにそう言った。

すると、

「あ、あの、輝二さん、輝一さん・・・・・」

はやては頬を少し赤らめながらおずおずと言い出した。

「ん?」

「何だ?」

「これから輝二さんと輝一さんの事、コーにぃとイチにぃって呼んでいいですか!?」

はやては、思い切ってそう言った。

2人は一瞬呆気に取られたが、すぐに微笑み、

「ああ」

「いいよ」

2人はそう答える。

はやては、笑顔になり、

「良かった。私、お兄ちゃん欲しかったんや!コーにぃ!イチにぃ!」

改めて2人の名を呼んだ。





――夏休み

夏休みになり、時間が空くようになったので、輝二と輝一は再び海鳴に来ていた。

2人がはやての家に向かっていると、道端で露天商がアクセサリーを売っていた。

2人は特に気にもせずに通り過ぎようとした。

だが、

『わ・・な・・・・よ』

「「ッ!?」」

輝二と輝一の頭の中に声が響いた。

「輝一、今何か聞こえたか?」

輝二が輝一に尋ねる。

「ああ・・・・輝二も聞こえたんだな」

輝一も確認する。

2人は辺りを見回すと、露天商で売っている、品物に目がいった。

輝二は、そこで売られている白い宝石のような石がついたペンダントに。

輝一は、黒い宝石のような石がついたペンダントに釘付けになる。

2人は思わず、それぞれのペンダントを購入した。

どうしても気になったのだ。

2人は、それぞれを首にかけ、その場を後にした。



2人がはやての家に着き、玄関で呼び出しベルを鳴らす。

すると、玄関の扉が開き、

「はい、何でしょうか?」

出てきたのは、桃色の髪をポニーテールにした女性。

2人の知らない女性が出てきた事で、少し驚く。

「えっと・・・・・俺たちはやての知り合いなんだけど・・・・」

輝一がそう言う。

「少々お待ちください」

そう言って、その女性は家の中に戻っていく。

しばらくすると、はやてが嬉しそうにやってきた。

「コーにぃ!イチにぃ!いらっしゃい!まずは上がってな」

2人は、はやてに言われ、はやての家に上がる。

すると、家の中には先程の桃色の髪の女性の他に、金髪の女性と朱色の髪の少女。

それに青色の毛の大型犬がいた。

「はやて、その2人って誰だ?」

朱色の髪の少女がはやてにそう尋ねる。

「ヴィータ、この2人がコーにぃとイチにぃや」

はやてがそう言う。

「ふーん、その2人がはやての言ってた2人か」

ヴィータと呼ばれた少女は納得する。

「はやて、この人達は?」

輝二が尋ねる。

「う~ん・・・・・コーにぃとイチにぃには隠し事したぁないしな・・・・・」

すると、はやては話し出す。

この3人と1匹、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラは、闇の書と呼ばれる魔法の本から現れた守護騎士だということ。

はやては、その闇の書と守護騎士の主だということ。

闇の書は、魔力を蒐集して666ページ全てを埋めて完成させると、大いなる力を手に入れることができ、はやての足も治るだろうという事。

だが、はやてはそんな力は要らないために、守護騎士の皆には家族として暮らしてもらっているという事を。

「・・・・・というわけや」

はやてが説明を終える。

「なるほどな」

輝二と輝一は納得する。

デジタルワールドの経験もあり、ぶっ飛んだことには慣れているため、輝二と輝一はすんなりと話を信じる。

それ以前に、はやてはこんな嘘をつくような少女ではないと分かっているのだ。

そして、前以上に笑顔の増えたはやてを見て、

「良かったな、はやて」

輝二はそう呟いた。





――11月上旬

土日の連休を利用して、はやての家に来た輝二と輝一は、守護騎士たちの様子がおかしい事に気が付いた。

はやては気付いていないようだが、守護騎士ははやてに申し訳なさそうにしている表情を見せる時があった。

輝二と輝一は、はやてがいない時を見て、シグナムに問い詰めた。

問い詰めた結果、

はやての足の麻痺が進行してきている事。

このまま麻痺が進めば、やがて死んでしまうだろうという事。

その麻痺の原因は、闇の書がはやての魔力を吸収している副作用ということ。

闇の書を完成させれば、はやての麻痺は治り、少なくとも麻痺の進行は止まるだろうという事。

そのために、守護騎士ははやてとの約束を破り、はやてに秘密で蒐集を行なっているという事を。

それを聞いた輝二から出た言葉は、

「俺にも何か手伝えないか?」

その一言だった。

もちろん輝一も手伝うと言い出す。

シグナムは足手まといだと言い張ったが、輝二と輝一は一歩も引かなかった。

やがて、折れたシグナムは、一度だけ蒐集に連れて行くと言った。

シグナムからすれば、そこで蒐集の危険性を分からせ、諦めさせようという目的だった。



そして、輝二と輝一は初めて蒐集に連れて行ってもらい、別世界に足を踏み入れた。

そこでは、まるで御伽噺やデジタルワールドでしか見ないような生物が沢山いた。

巨大なゴリラのような生物。

巨大な蛇。

恐竜のような生物など。

沢山の獣たちがいた。

人間では全く敵いそうもない生物たちであった。

そんな生物たちに守護騎士たちは果敢に向かっていく。

シグナムは炎を纏った剣で斬りかかり、ヴィータの鉄槌は全てを砕く。

相手の攻撃をザフィーラが防ぎ、シャマルが仲間たちをサポートし、動かなくなった生物たちから魔力を蒐集する。

そんな様子を見ていた輝二と輝一は、シグナムの言っていた事が正しいと感じていた。

ただの人間の力など足手まとい以外の何者でもない。

デジモンに進化できない輝二たちは歯噛みする。

「けど・・・・・俺達だって、はやてを助けたい・・・・」

「例え・・・・間違った方法だとしても・・・・・みんなの・・・・手助けをしたいんだ!」

輝二と輝一がそれぞれの思いを口にする。

『『我に名を与えよ』』

突如として声が聞こえた。

輝二と輝一は、直感したのか以前買ったペンダントを見つめた。

『光の王よ』

輝二のペンダントから声がする。

『闇の主よ』

輝一のペンダントも声を発する。

『『我に名を与えよ』』

「名前を?」

「与える?」

輝二と輝一は、胸の奥に何かが吹き上がる感覚を覚えた。

輝二と輝一は、顔を見合わせると、互いに頷く。

その時、2人の後方から今までで一番巨大な恐竜のような生物が現れた。

その生物は2人に襲い掛かる。

「キムラ!ミナモト!」

シグナムがそれに気付き、戻ってこようとするが、いくらなんでも間に合わない。

それでも、2人は冷静だった。

2人はそれぞれ、ペンダントの石を握る。

そして叫んだ。

「『フェンリル』!!」

「『レオン』!!」

その瞬間、それぞれの石から光と闇が噴き出す。

『O.K. My name is Fenrir.』

『O.K. My name is Leon.』

『『Stand by, Ready. Set up.』』

輝二と輝一が光と闇に包まれた。

その間にも襲い来る恐竜。

しかし次の瞬間、

「ギャォオオオオオオオッ!!」

苦しみの声を上げて恐竜は倒れ伏した。

その胸部には十字に傷が付いている。

その様子に守護騎士たちは驚く。

そして、その恐竜の倒れた先には、白と青の鎧を纏い、光の剣を持った輝二と、黒い鎧を纏い、紅の剣を持った輝一の姿がそこにあった。

「なっ!?」

シグナムが驚愕していると、

「ガァアアアアアアッ!!」

後ろから巨大なゴリラのような生物が襲い掛かった。

「しまった!?」

シグナムは気付くのが遅れ、攻撃を受けることを覚悟した。

だが、光線が飛んできてそのゴリラのような生物に直撃する。

「ガアッ!?」

その生物がひるんだ時、

『Ghost move』

その生物の背後に輝一が現れ、紅の剣を一閃する。

ゴリラのような生物は倒れ伏した。

「下がってろ」

輝一は、半ば呆けているシグナムにそう言うと、敵の大群の真っ只中に跳躍する。

「キムラ!?」

シグナムは、輝一の無謀な行動に驚愕する。

だが、次の瞬間に、その驚愕は別の意味に変わった。

輝一は、両手に持った紅の剣を振り回す。

『Eroberung Storm.』

黒い竜巻が発生し、大群を飲み込む。

「なっ!?」

そして、シグナムは気付いた。

竜巻に呑まれた生物から魔力が吸い出されていることに。

「魔力を・・・・キムラが吸収している?」

そして、その黒い竜巻が収まった時には、生物は全て気を失っており、輝一の手には集められた魔力の塊があった。

その塊を手に、輝一は守護騎士の元に歩いてくる。

「これでいいのか?」

シグナムに魔力の塊を差し出しながら輝一は尋ねた。

「あ、ああ・・・・・シャマル」

シグナムはシャマルに呼びかけ、闇の書で魔力を蒐集する。

「これで俺たちも足手まといにはならないだろ?」

いつの間にか傍に来ていた輝二がそう言った。

「・・・・・そうだな。足手まといと侮辱した事は詫びよう。これからはよろしく頼む」

「ああ」

「頼む」

シグナムの言葉に輝二と輝一は頷いた。






星を見ながら、今までのことを思い返していた輝二は、自分の掌をみる。

「はやては・・・・・絶対に助けてみせる・・・・・・」

その掌を握り、輝二は改めて自分の決意を口にするのだった。







次回予告

無限書庫で闇の書の情報を集めるユーノとエリス。

その間にも、被害は増え続ける。

そんな中、再び守護騎士の位置を捉えた管理局。

再び守護騎士、そして、輝二、輝一と激突する。

次回!リリカルフロンティアA`S

第七話 譲れない想い

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第六話完成。

でもなんか、最初以外殆どダイジェスト?

まあとりあえず、輝二、輝一とはやての出会いと、魔法との出会いも書いてみました。

納得できますかねえ?

ご都合主義なのは変わりないですけど・・・・・

この後はとりあえず2つのルートを考えています。

一つは原作沿いルート。

もう一つは和解ルート。

和解ルートでは、輝二、輝一による仮面の戦士(つまりリーゼ姉妹)フルボッコフラグが立つ・・・・・かも。

原作沿いルートは結構しっかり考えているので、矛盾も(和解ルートに比べれば)少ないだろうと思います。

和解ルートは最近になって閃いた事なので話を形にできるか心配です。

どちらにせよ闇の書の闇フルボッコは変わりありませんが・・・・・

今のところは原作沿いに行こうとは思ってますが、皆様のご要望があれば、和解ルートも視野に入れております。

では、次も頑張ります。




[8056] 第七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/09/21 19:42
第七話 譲れない想い


輝二、輝一との戦いから数日。

未だヴォルケンリッターの情報は入っておらず、拓也達は何時も通りの日常をこなしていた。

ユーノとエリスは、クロノの頼みで、本局の無限書庫という場所で闇の書について調べている。

そんなある日。

「タクヤ!」

今日も情報を確認するために、放課後、臨時本部へ向かっていた拓也にフェイトから声がかけられた。

「何だ、フェイト?」

拓也は聞き返すが、

「あ、あの・・・・・その・・・・・・」

フェイトは頬を赤くしてなにやら言いよどんでいる。

「落ち着けフェイト。一体如何したんだ?」

拓也はフェイトを落ち着かせる。

フェイトは息を整えると、

「あ、あの、タクヤ」

「何だ?」

拓也は聞き返す。

「携帯の番号・・・・・教えてくれないかな?」

頬を染めてそう言った。

拓也は少し驚いて、

「いいけど、携帯持ってたのか?」

「うん・・・・・さっきリンディ提督に買ってもらったの」

「そっか」

拓也はフェイトに携帯の番号を教える。

当然、フェイトの番号も教えてもらっている。

「うん、ありがとうタクヤ」

フェイトは笑ってお礼を言った。




臨時本部に、拓也、信也、なのは、フェイト、アルフがいると、

「たっだいま~!」

買い物に行っていたエイミィが帰ってくる。

買ってきた物を冷蔵庫や棚などにしまっていく。

「艦長、もう本局に出かけちゃった?」

エイミィがフェイトに尋ねる。

「うん。アースラの武装追加が済んだから、試験航行だって・・・・・アレックスたちと」

「武装って~と・・・・・アルカンシェルか・・・・・あんな物騒な物、最後まで使わずに済めばいいんだけど・・・・」

フェイトの言葉に、エイミィはため息をつきながら答える。

「クロノ君もいないですし・・・・・・戻るまではエイミィさんが指揮代行だそうですよ」

なのはが言い、

(責任重大)

子犬モードのアルフが干し肉をかじりながら念話でそう言う。

「それもまた物騒な」

エイミィがフェイトの持っていたカボチャを撫で、そして掴んで持ち上げながら言った。

「でも、そうそうに非常事態なんて起こるわけが・・・・・・」

その瞬間、警報が鳴り響く。

エイミィは思わずカボチャを落した。




モニター室で、情報を纏めるエイミィ。

「文化レベル0。人間は住んでいない、砂漠の世界だね」

モニターには、シグナムとザフィーラ。

そして、輝二の姿が映っていた。

「結界を張れる局員の集合まで、最速で45分。・・・・・ああ・・・・・拙いなぁ・・・・・」

エイミィが呟く。

「俺が行こう」

拓也が切り出した。

「輝二がいるのなら、相手を出来るのは俺だけだろ?」

「うん。そうだね」

エイミィも頷く。

モニターを見ていたフェイトとアルフも顔を見合わせて頷く。

「エイミィ、私も行く」

「私もだ」

フェイトとアルフがそう言った。

エイミィはしばし考えたが、

「うん、お願い」

フェイトとアルフにも許可を出す。

「なのはちゃんと信也君はバックス。ここで待機して」

「「はい」」





砂漠の世界では、シグナムと輝二が巨大なワームを相手にしていた。

「はあ・・・・・はあ・・・・・・ヴィータが手こずるわけだな・・・・・・少々厄介な相手だ」

カートリッジを補給しようとした時、後方の砂中から、ワームの尾が飛び出し、触手がシグナムに伸びる。

「はっ!?」

不意打ちに反応が遅れたシグナムには避けきれない。

だが、

「リヒト・ズィーガー!」

輝二が光の剣で触手を切り裂く。

「油断するな!シグナム!」

「すまない、ミナモト」

2人は、ワームに向き直る。

その時、

『Brahma Sutra』

火球が次々に降り注ぎ、ワームを行動不能に陥れる。

「なっ!?」

輝二は空を見上げる。

そこには、アルダフォームの拓也と、バルデッシュを構えたフェイトがいた。

エイミィから通信が入る。

『拓也君!助けてどーするの!?捕まえるんだよ!』

「勝負の途中で横槍入れられた方が危ないと思ったから」

拓也はそう言う。

「拓也・・・・・・」

輝二は拓也の姿を確認すると呟く。

拓也は地上に降り、輝二と向きあう。

「輝二、今更ゴチャゴチャいわねーよ。お前が何でこんな事をするかは知らない。けど、それに迷いがないのは分かった。理由を教えてくれないのなら、意地でも聞き出してやる」

拓也は輝二に向かって構えた。

輝二は何も言わずに、バリアジャケットをべオウルフフォームに変更する。

輝二は大剣を構える。

「行くぞ!!」

拓也は叫んで飛び出した。

「うおおっ!!」

輝二も駆け出し、

――ドゴォオオオオン

激突により、大量の砂が舞い上がった。





その頃、エイミィが別の反応をキャッチした。

「はっ!もう一箇所!?」

モニターには闇の書を手に空を飛んでいるヴィータとベルグフォームの輝一の姿。

「なのはちゃん!信也君!」

「はい!」

「わかりました!」





拓也と輝二の激突で砂煙が舞う中、フェイトとシグナムは対峙する。

「あちらは相変わらず激しいな・・・・・・」

拓也と輝二の戦いを見て、シグナムは呟く。

そして、フェイトに向き直ると、

「預けた決着は、できれば今暫く先にしたいが・・・・・・速度はお前のほうが上だ。逃げられないなら、戦うしかないな」

「はい。私も、そのつもりで来ました」

お互いが同時にデバイスを構える。

暫くの沈黙の後、同時に動き出した。




「はぁあああああっ!!」

輝二の蹴りが拓也を吹き飛ばす。

「うわっ!」

拓也は何度か地面をバウンドして転がるが、最後には持ち直して着地する。

だが、その時には輝二は武装を展開した左腕を拓也に向けていた。

「リヒト・アングリフ!!」

光線と無数のミサイルが放たれる。

「くっ!」

タイミング的に、拓也には避けきれず迎撃も間に合わない。

輝二は捉えたと確信した。

しかし、拓也は右手に炎を纏わせ、

「ファイヤー・・・・・ウォール!!」

目の前に突き出すと共に、炎の壁を作り出し、リヒト・アングリフを防いだ。

「何だと!?」

輝二は防がれるとは予想外で、一瞬隙を見せてしまう。

その隙に、拓也はルードリー・タルパナを展開する。

「ブラフマストラ!!」

拓也は無数の火球を放った。

「ちぃっ!!」

輝二は高速移動で避け、最後は跳躍で避ける。

だが、空中では空を飛べる拓也の方が有利である。

「おおおおおおっ!!」

勢いを付け、輝二に殴りかかる。

「くっ!」

輝二は大剣で拓也の拳を受け止める。

だが、拓也はそのまま輝二に拳を受け止められたまま押し続ける。

輝二を地面に叩きつけるが如く急降下した。

だが、輝二も上手く足から着地し、数十m押されながらも何とか受け止めきった。

「輝二!答えろ!何で蒐集なんかに手を貸してやがる!完成した闇の書の力なんか欲しいわけじゃねえだろ!?」

「そんな物は関係ない!!だが!闇の書を完成させなければ、アイツは助からないんだ!!」

「アイツ!?アイツっていうのは闇の書の主のことか!?助からないってどういう事だ!?」

「俺たちのやっている事は確かに間違っている事だ!だから、この事にお前を巻き込むつもりは無い!お前は俺達の邪魔をしていればそれでいい!全てが終わったら、罪は償う!!」

「なにカッコつけようとしてやがる!俺達は仲間だろ!?仲間が困っているのに、放って置けるわけねえだろ!!」

「仲間だからこそ、俺はお前を巻き込みたくは無い!!」

「このっ・・・・・バッカヤロウ!!」

お互いの魔力が激突し、爆発が起こった。





別の場所では、アルフとザフィーラが戦闘を行なっていた。

「あんたも使い魔・・・・・守護獣ならさぁ!ご主人様の間違いを正そうとしなくていいのかよ!?」

アルフがザフィーラに問いかける。

「闇の書の蒐集は、我らが意志。我らの主は・・・・・我らの蒐集について、何もご存知無い」

「何だって!?そりゃ一体・・・・・?」

ザフィーラの言葉に、アルフが驚愕する。

「主のためならば血に染まる事も厭わず。我と同じ守護の獣よ、お前もまたそうではないのか?」

「・・・・そうだよ・・・・でも・・・・・だけどさぁ!」

アルフは、悲しそうな声を張り上げた。





別の世界にいるヴィータ、輝一にも、シャマルから連絡が入っていた。

(シグナムたちが?)

(うん、砂漠で交戦してるの・・・・・テスタロッサちゃんと・・・・・・・その守護獣の子と・・・・・・・それから、キムラ君達の親友って言ってたカンバラ君って子)

(・・・・・長引くと拙いな・・・・・・助けに行くか・・・・・)

「ヴィータ。前だ!」

輝一の声にヴィータが気付き、進行方向にいた人物達に気がついた。

そこには、なのはと信也がいた。

(ヴィータちゃん?キムラ君?)

(くそ、こっちにも来た。例の白服と青の甲冑)

「タカマチなんとか!」

ヴィータの言葉になのはは真剣だった顔を崩し、

「なのはだってば~!な・の・は!・・・・・もう」

なのはは気を取り直し、

「ヴィータちゃん。やっぱり、お話聞かせてもらう訳にはいかない?もしかしたらだけど・・・・・手伝えることとか・・・・あるかもしれないよ」

なのはは微笑んでそう言った。

「あ・・・・・・」

ヴィータは一瞬、なのはの微笑がはやての笑顔とかぶる。

だが、すぐに気を取り直し、

「ウルセー!!管理局の人間のいう事なんか信用できるか!!」

ヴィータはそう叫ぶ。

「私・・・・管理局の人じゃないもの・・・・・民間協力者。それに、横にいる信也君のお兄さんは、ヴィータちゃんの隣にいる輝一さんの親友だって聞いてるよ」

すると、輝一が口を開く。

「悪いが、俺達が拓也と対立しているのは拓也を巻き込まないためだ。俺達がやっている事は理由は如何あれ、間違っている事には変わりは無い。そんなことに、お前たちを巻き込みたくはない。もちろん、全てが終れば、俺は罰を受ける」

「そんな・・・・」

なのははそう声を漏らす。

「ヴィータ、目くらましだ」

「おっしゃ!!」

ヴィータが魔力弾をグラーフアイゼンで叩くと、魔力が爆発のような音と光を放ち、なのはと信也の目と耳を塞ぐ。

その隙に2人は遠くへ離れる。

「・・・・・あ」

なのはと信也の視界が戻った時には、2人は既にかなりの距離をとっていた。

『マスター』

「うん」

レイジングハートの呼びかけに、なのはは頷いた。



ヴィータと輝一はある程度距離を取ると、

「よし、ここまで離せば攻撃もこねえ。次元転送・・・・・」

次元転送のための魔法陣を発生させる。

だが、

『Buster mode. Drive ignition.』

なのはが、レイジングハート バスターモードを構えていた。

「いくよ!久しぶりの長距離砲撃!」

『Load cartridge.』

カートリッジが2発装填され、魔法陣を展開する。

それを見たヴィータは驚愕する。

「まさか・・・・撃つのか?・・・・あんな遠くから!?」

「ヴィータ!落ち着け!」

冷静な輝一がヴィータを落ち着けようとするが、あまり効果は無い。

レイジングハートの先に魔力が集中する。

『Divine buster. Extension.』

「ディバイィィィィィン・・・・・・・・バスターーーーーーーーッ!!!」

強力な魔力砲撃が一直線にヴィータに向かう。

「嘘っ!?」

砲撃がヴィータに直撃するかに思われた時、

「うおおおおおおおっ!!」

輝一が割り込み、魔力を纏った翼で防ぐ。

「ぐぐぐ・・・・・・」

翼に僅かに罅が入るが、輝一は何とか耐え切った。

「何とか防いだか・・・・・・・」

輝一は一度、息を吐くが、

「分かってたよ。あなたがあの位じゃ倒せないことぐらい」

上から声がした。

輝一が見上げると、そこには青い魔力の翼を広げた信也がいた。

「いつの間に!?」

ヴィータが驚愕する。

信也は、フェイトに次ぐスピードの持ち主だ。

なのはの攻撃で時間を稼いでいる間に接近したのだ。

「受けてみろ!僕たちの新技!!」

『Load cartridge.』

ビクトリーモードのブレイブハートが、カートリッジを2発装填する。

魔力刃が勢いを増し、それと同時に翼の魔力も勢いを増す。

信也はブレイブハートを真っ直ぐに突き出す。

『V-Wing Blade.』

「Vウイングブレード!!」

信也は全身に魔力を纏い、輝一に突撃した。

「くっ!マスターオブダークネス!!」

輝一は信也を迎撃するためにマスターオブダークネスを放つ。

「いっけぇえええええっ!!」

信也はかまわず突撃する。

信也の魔力を纏った突撃と輝一の紅の光線が激突する。

信也は光線を弾きながら、輝一に近付いていく。

「うおおおおおおおっ!!」

輝一も負けじと魔力を高める。

その時だった。

突如信也がバインドに絡め取られる。

「な、何!?」

突然の事に信也は驚く。

「信也君!!」

なのははその事に気付き、もう一度レイジングハートを構える。

だが、

『マスター!』

レイジングハートが警告を出す。

「えっ!?」

なのはが気付いた時には遅かった。

なのはもバインドに捉えられる。

「きゃあ!?バ・・・・・バインド!?」

なのはがもう一度輝一達の方に視線を向けると、輝一、ヴィータ、信也の他に、もう1人の人影が見えた。

それは、以前クロノの邪魔をした、仮面の男だった。

「そんな・・・・あんな遠くから、一瞬で?」

仮面の男は、冷静な声で告げた。

「行け。闇の書を、完成させるのだ」

輝一は、怪訝な顔でその仮面の男を見た。

「またお前か」

「・・・・・・・」

輝一に言葉には、何も答えない仮面の男。

「チッ・・・・ヴィータ、転送だ」

輝一はヴィータに呼びかける。

「あ、ああ」

ヴィータは再び、次元転送の魔法陣を発生させる。

「くぅうう!」

信也となのはがバインドを振りほどいた時には、もう輝一とヴィータ、そして、仮面の男の姿は何処にも無かった。





拓也と輝二の激突は続き、2人は一旦間合いを取っていた。

「はあ・・・・・はあ・・・・・分かっちゃいたけど・・・・・・やっぱり輝二は強い・・・・・」

拓也は呟く。

「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・流石だ拓也。ここまでは全くの互角・・・・」

輝二も冷静に状況を判断しながら呟く。

(速さでは輝二に敵わない・・・・・・肉を切らせて骨を絶つ・・・・・・少しぐらい攻撃を受けても、とっ捕まえて一撃で決める)

(力と防御力は拓也の方が上・・・・・・・ここはヒットアンドウェイで、少しずつ削っていくしかない)

各々がそれぞれの考えを巡らし、再び集中する。

拓也は今まで以上に意識を集中する。

(思い出せ・・・・・デジモンの時の感覚を・・・・・気配を感じろ・・・・・・神経を研ぎ澄ませろ)

拓也の感覚はこの辺り一帯の気配を察知するまでになっていた。

だが、そこでおかしい事に気付く。

(何だ?気配が4つ?気配が1つ増えてる!?拙い!この動き、フェイトを狙ってる!)

「間に合えっ!!」

拓也はフェイトに近付く気配に気付き、思わず輝二に背を向け、フェイトに向かって飛び出した。

「拓也!?」

輝二は突然の拓也の行動に驚き、一瞬固まるが、すぐに拓也の後を追った。




同じ頃、フェイトとシグナムも激しい戦いを繰り広げていた。

お互いが傷だらけでボロボロである。

「はあ・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・」

(ここにきて、尚速い。目で追えない攻撃が出てきた。早めに決めないと拙いな)

シグナムは、再び構える。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・はあ・・・・・・」

(強い。ミドルレンジもクロスレンジも圧倒されっぱなしだ。今は、スピードでごまかしてるだけ。まともに喰らったら叩き潰される)

フェイトも構えた。

(シュツルムファルケン・・・・・当てられるか?)

(ソニックフォーム・・・・・やるしかないかな?)

シグナムとフェイトが、それぞれの考えを巡らす。

そして、お互いに飛び出そうとした時、

「フェイト!!」

突然飛んできた拓也に驚く。

「タクヤ!?」

フェイトが叫ぶが、拓也は構わずフェイトを突き飛ばした。

「きゃっ!?」

フェイトは思わず軽い悲鳴を上げる。

そして次の瞬間、

――ドシュ

「が・・・・あ・・・・・」

拓也の胸部が腕に貫かれていた。

だが、血は出ておらず、何か魔法によって間接的に貫かれているようだった。

拓也の後ろには、仮面の男がいた。

「タクヤ!」

フェイトが叫ぶ。

「ぐ・・・・・」

拓也は体を動かそうとした。

しかし、

「狙いが外れたが、まあいい。貴様の魔力、闇の書の贄に・・・・」

仮面の男が腕に力を入れると、魔力光が迸る。

「ぐぁあああああああっ!!」

拓也は叫び声を上げた。

「タクヤ!!」

フェイトはバルデッシュを構えた。

だが、

「動くな!動けばこの男の命はない」

その言葉に、フェイトの動きが止まる。

拓也の全身から力が抜ける。

そして、仮面の男が拓也を貫いた腕の拳を広げると、そこには炎のように真っ赤なリンカーコアがあった。

「なっ・・・・・」

驚愕するシグナムに、仮面の男が告げた。

「さあ・・・・・奪え・・・・・・」

仮面の男はシグナムに拓也のリンカーコアを差し出すようにする。

しかしその時、

――ガシィ

仮面の男の腕を拓也が掴んだ。

「なめっ・・・・・るなっ・・・・・!」

拓也は何とか声を絞り出す。

「タクヤ!」

フェイトは拓也の意識があった事に、幾分か安堵が混じった声を漏らす。

「ほう・・・・まだ意識があったか・・・・しぶといな」

「へっ・・・・・そんな余裕の態度・・・・・・取れなくしてやるよ」

拓也は気丈にもそう言う。

「フッ・・・・・できるものならやってみるがいい」

仮面の男は相変わらず余裕の態度を崩さない。

「じゃあ聞くけど・・・・・俺が・・・・・・炎の属性特化型魔導師という事は・・・・・・知っているか・・・・・?」

拓也は問いかけた。

「それが如何した?」

仮面の男はそう返す。

「属性特化型魔導師は・・・・・自分の意思とは無関係に・・・・・魔力を自身が持つ属性に・・・・変換する・・・・・・じゃあ・・・・・リンカーコアから・・・・・・漏れ出した魔力は・・・・・・どうなるかな?」

拓也がそこまで言った時、仮面の男は己の失敗に気がついた。

「なっ!し、しまった!!」

拓也は、仮面の男を逃がすまいと、自分を貫いていた腕を更に強く掴む。

「さあ!どっちがタフかな!?」

その瞬間、拓也のリンカーコアから激しい炎が噴き出す。

「があああっ!!はっ、離せっ!!」

仮面の男は、焼かれて苦しむ。

自分の魔力の為に拓也にはダメージは無い。

だが、仮面の男は貫いた腕に魔力を通す。

拓也の体に衝撃が走る。

「ぐあああっ!・・・ぐっ・・・・はっ・・・・・放すかよ!!」

拓也は更に強く腕を握る。

――ボキリ

と、仮面の男の腕の骨が折れる音が聞こえた。

「ぐがああああああっ!!お、おのれぇ!!」

仮面の男は、拓也を貫いていた手とは反対の手に魔力刃を発生させる。

「死ねぇ!!」

仮面の男は腕を振り上げる。

「タクヤ!!」

フェイトが悲鳴に近い声を上げる。

だが、

――ドゴッ

仮面の男が吹き飛ばされた。

輝二が仮面の男を蹴り飛ばしたのだ。

支えを失い、倒れようとした拓也を輝二が支える。

「相変わらず無茶しやがって」

輝二は拓也に向かってそう言う。

「へへっ・・・・俺の無茶は何時ものことだろ?」

「それには同感だ」

拓也の言葉に、輝二は呆れ半分に答えた。

拓也のリンカーコアから噴出していた炎は収束し、拓也の胸部に戻る。

「う・・・・・・・」

そして、気が抜けたのか、拓也は気を失った。

すると、輝二は拓也を支えたまま、厳しい目を仮面の男に向け、左腕を突き出し、展開する。

だが、仮面の男はすぐに転送魔法を発動し、その場から消え去った。

「タクヤ!!」

フェイトが、一目散に拓也に駆け寄る。

その表情は不安で一杯であった。

「心配ない。拓也は気絶してるだけだ」

輝二は安心させるようにそう言って、フェイトに拓也を託す。

「あ、あの・・・・・」

フェイトは困惑した表情で輝二を見た。

「確か拓也にフェイトと呼ばれていたな?」

「は、はい・・・・」

フェイトは、困惑しながら返事を返す。

「そうか・・・・フェイト、君は拓也の恋人か?」

予想外の言葉にフェイトは真っ赤になり、

「えっ!?あの・・・・私は・・・・・その・・・・・・」

言葉が上手く纏まらない。

ただ、否定していないところが肯定しているようなものだろう。

そんな様子を見ていた輝二は微笑み、

「フェイト・・・・拓也を頼む」

静かで真剣な言葉でフェイトに言った。

「は、はい・・・・・」

その言葉に、フェイトは気を取り直し、そう返事をした。

「行こう、シグナム」

輝二はシグナムに呼びかける。

「分かった。テスタロッサ、決着はまたいずれ・・・・・」

シグナムもそう言い残し、輝二と共に転送魔法でその場から消えた。

その場にはフェイトと、気を失いフェイトの腕に抱かれた拓也だけが残された。







次回予告


武装追加が終わり、動けるようになったアースラ。

無限書庫のユーノとエリスにより、少しずつ露になる闇の書の事実。

そんな中、闇の書の主であるはやての体調に異変が起こる。

ヴォルケンリッター、そして、輝二は、輝一はどうするのか?

次回!リリカルフロンティアA`S

第八話 悲しい決意。勇気の選択。

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第七話完成。

それなりに上手くできたと思います。

因みに、皆様の意見を聞き、原作沿いに行く事にしました。

和解ルートでは、この話の最後に輝二が拓也を置いていくのではなく、一緒に付いていって、なんやかんやで和解するという流れにするつもりでした。

まあ、原作沿いのほうが作りやすいんですけどね。

今回の話の中では、ちょっとぬこを痛めつけときました。

一方的にやられるのは好きじゃないんで。

まあ、ここでフェイトの魔力を蒐集しなくても良いのかという話になるかも知れませんが、この話では破壊の雷は使ってないですし、輝二、輝一もいることから、原作以上に集まっててもおかしくないだろうという考えです。

さて、次回はバトルが無いから苦労しそうだな・・・・・・・

それでも、頑張りますんで、よろしくお願いします。




[8056] 第八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/03 21:36
仮面の男との攻防により、気を失った拓也。

急遽、アースラに収容される。


第八話 悲しい決意。勇気の選択。


アースラに運ばれた拓也は、あまり時間を置かずに目を覚ました。

検査の結果、リンカーコアは無傷。

単に、強引にリンカーコアを抜き出されたショックと、仮面の男による魔力ダメージで気を失っていただけとのこと。

身体的には、かすり傷と打撲が多々あるものの、特に問題のある怪我は無かった。

それでも、フェイトは拓也のことを心配していた。

2人は今、ブリーフィングルームに向かって歩いている。

「タクヤ・・・・ホントに大丈夫?」

「心配すんなって。検査の結果でも問題なしって出てただろ?」

「でも・・・・・・・」

フェイトは、拓也は自分を庇って敵の攻撃を受けたので、それも相まって必要以上に心配していた。

「フェイト、もしかして自分を庇ったせいで俺が怪我をしたって思ってるのか?」

拓也は、そんなフェイトの心情を的確に察する。

フェイトは、ピクッと反応した。

拓也は、その反応を見ると、やれやれといった表情になり、フェイトの頭に手を置きながら言った。

「フェイト、そう思ってるならそれは間違いだ。俺はただお前を護りたかった。俺がそうしたかったからそうしたんだ。だから、お前が気にすることじゃない」

それでもフェイトの雰囲気は暗く、顔を俯かせる。

拓也はため息を吐き、周りに誰もいないことを確認する。

「フェイト」

名を呼ばれ、フェイトは顔を上げると拓也の方を向く。

その瞬間、

「んっ!?」

拓也はフェイトの唇にキスをした。

思わずフェイトは足を止める。

ほんの2~3秒で拓也は離れると、そっぽを向き、

「お、お礼は頂いたからな」

そう言った。

その顔は真っ赤である事は、言うまでもない。

一方、フェイトの方も突然の事に頭が回っておらず、固まっていた。

そして、漸く何が起こったかを理解すると、

「ッ!!!」

一気に顔が赤く茹で上がった。

「あ、あう・・・・・タ・・・タクヤ・・・・・・・?」

「ははは・・・・・・こんなこと柄じゃなかったな」

お互いに顔を真っ赤にして、言葉にならないフェイトと苦笑する拓也。

ある程度冷静さを取り戻した拓也は、

「元気出たか?」

そう聞いた。

「う、うん・・・・・・・・ねえタクヤ・・・・・」

「なんだ?」

「私たちって・・・・・・・・恋人同士なのかな・・・・・・?」

「な?・・・・・・いきなり如何した?」

「そ、その・・・・・・タクヤと戦ってた人に言われたんだ・・・・・・・『君は拓也の恋人か?』って・・・・・・」

「こ、輝二の奴・・・・・・・・そ、それで、なんて答えたんだ?」

「そ、その・・・・・上手く答えられなくて・・・・・・・」

「そうか・・・・・・・・・・・す、少なくとも、俺は好きだぞ。フェイトの事・・・・・・」

拓也は少し照れながらそう呟く。

「ま、前にも言ったけど、私もタクヤの事好きだよ」

フェイトもそう返した。

「じゃ、じゃあ、これで正式な恋人同士だな」

「うん、そうだね」

お互いに頬を染めつつ微笑んだ。

「じゃあ・・・・・いくか」

「うん」

フェイトは拓也の腕に抱きついた。

拓也は頬を赤く染めるが何も言わない。

そのまま、ブリーフィングルームへと向かった。




ブリーフィングルームには、なのは、信也、クロノ、リンディ、エイミィ、アースラのオペレーターの1人であるアレックス、そして、ギル・グレアムの2匹の使い魔の1匹であるリーゼロッテが既に揃っていた。

リーゼロッテは、左腕にギブスを巻いて、所々に治療の跡があった。

聞いた話では、ちょっとしたミスをしたらしい。

信也は、拓也達が入ってきた事に気付くと、

「兄ちゃん、もう大丈夫なの?」

そう声をかける。

「ああ」

拓也は頷く。

拓也とフェイトは席に着く。

「アースラが稼働中で良かった。なのはの時以上に、救援が早かったから」

クロノがそう言い、

「だね」

リーゼロッテが頷く。

「4人が出動して暫くして、駐屯所のシステムがクラッキングであらかたダウンしちゃって・・・・・・それで、指揮や連絡が取れなくて・・・・・・ごめんね・・・・・私の責任だ」

エイミィが申し訳なさそうに言った。

「んなことないよ。エイミィがすぐシステムを復旧させたからアースラに連絡が取れたんだし」

リーゼロッテが手元のパネルを操作しながらそう言う。

そして、仮面の男の画像が表示される。

「仮面の男の映像だってちゃんと残せた」

「でもおかしいわね。向こうの使っているシステムは、管理局で使っているものと同じシステムなのに、それを外部からクラッキングできる人間なんて、いるものなのかしら?」

リンディが疑問を口にする。

「そうなんですよ!警報も、防壁も、全部素通りで、いきなりシステムをダウンさせるなんて・・・・・」

「ちょっと・・・・・ありえないですよね」

「ユニットの組み換えはしてますけど、もっと強力なブロックを考えないと・・・・・」

エイミィとアレックスがそう言った。

「それだけ・・・・・凄い技術者がいるって事ですか?」

なのはが尋ねる。

「うん・・・・・もしかして、組織立ってやってんのかもね」

なのはの問いにリーゼロッテが答えた。

「あと、なのはの方から聞いた話も、よくわからないな」

「はい、輝一さんが言っていました。『俺達が拓也と対立しているのは拓也を巻き込まないためだ。俺達がやっている事は理由は如何あれ、間違っている事には変わりは無い。そんなことに、お前たちを巻き込みたくはない』って。あと、全てが終わったら罰は受けるとも言っていました」

その話を聞いて、拓也はため息を吐く。

「はぁ・・・・・・輝二も同じような事を言っていたな・・・・・・・っと、そうだ。輝二はこんな事を言っていたぜ」

拓也の言葉に、全員が拓也に視線を向ける。

「『闇の書を完成させなければ、アイツは助からないんだ』ってな。アイツっていうのは、多分闇の書の主のことだと思う」

拓也はそう言う。

「どういうことだ?闇の書を完成させなければ、闇の書の主は助からない?」

クロノが疑問を口にする。

「俺が思うに、闇の書って蒐集しないと、主に何らかの悪影響を与えるんじゃないのか?多分、命に関わるぐらいの。そうであれば、輝二や輝一が蒐集に協力していることも納得できる」

「なるほど、それは後でユーノとエリスに確認を取ってみる。だが、もう1つ疑問が残る。闇の書は今まで完成させると、破壊にしか使われた事がないことだ」

「それについてはなんとも言えないけど、よほど闇の書の主を信頼しているのか。それとも、その事実を知らないのか・・・・・」

「そうか・・・・・・」

拓也とクロノの話に区切りがつくと、リンディが言った。

「アレックス!アースラの航行に問題は無いわね?」

「ありません」

「うん。それでは、予定より少し早いですが、これより、司令部をアースラに移します。各員は所定の位置に」

「「「はい!」」」

「っと、なのはさん達はお家に戻らないとね」

「あ、はい」





翌朝。

八神家では異変が起こっていた。

はやてが倒れたのだ。

胸を押さえ、苦しそうな表情をするはやてにヴィータを始めとして、ヴォルケンリッターは慌てた。

そして、すぐに救急車を呼び、病院へと運ばれた。

医師の話によると、麻痺が広がり始めている可能性があるので、検査の為にしばらく入院させるとのことだ。

入院することを知ったはやては、

「入院?」

「ええ・・・・・そうなんです」

はやての言葉にシャマルが答えた。

はやては、不安そうにヴィータと顔を見合わせる。

「あ、でも、検査とか念のためとかですから、心配ないですよ。ね?」

シャマルは、シグナムに確かめるように聞いた。

「はい」

シグナムは頷く。

「いや・・・・・それはええねんけど、私がおらなんだら、みんなのご飯は誰が作るんや?」

「ううっ・・・・」

はやてのボケにヴィータが声を漏らした。

シグナムは、はっとしたように、

「そ、それはまあ・・・・・・・そうですね・・・・・・キムラにでも頼んで何とかしてもらいましょうか」

そう言った。

「イチにぃに?あ、そやったな。イチにぃ達も魔法使いさんやから、東京から海鳴まで来るのも一瞬やったな」

「ええ。キムラの料理も、中々美味ですので・・・・」

シグナムは微笑みながらそう言う。

「そうだったな。コーイチの料理は、はやてには及ばねーけど、中々旨かったもんな。コージの方は全然駄目だったけどよ。てか、シャマルの料理より見栄えは良かったのに、味はシャマル以下ってどういう事だよ?」

「あははは・・・・・コーにぃの方は私がお嫁さんになってあげんとあかんかもしれんなぁ」

ヴィータの言葉にはやては苦笑しながらそう言った。

「それがいいかもしれませんね」

シグナムも苦笑しながらそう言う。

すると、はやてはシグナムの顔をジッと見る。

「シグナムにも、イチにぃぐらいの旦那さんがおらんとあかんかもしれんなぁ?」

はやてのその言葉に、シグナムの頬が赤く染まる。

「あ、主はやて!いきなり何を!?」

シグナムは、半分叫びながらはやてに問いかける。

「だってシグナム、家事とか全然できんやん。対してイチにぃは、家事とか出来るからなぁ」

「うっ・・・・・・・」

はやての突っ込みに、シグナムは言葉が止まる。

「シグナム、顔真っ赤よ」

シャマルが更に突っ込んだ。

「ッ――――――――!?」

その言葉に、シグナムは更に顔を赤くする。

「まあ、イチにぃやったら、シグナムあげてもええかな」

はやては笑ってそう言う。

「は、話を飛躍させないでください!」

シグナムは叫ぶ。

「あはははは」

はやては笑う。

「そんなら私は、3食昼寝つきの休暇をのんびり過ごすわ」

はやてはそう言ってベッドに横になる。

「ミナモト君やキムラ君にも都合が合えばお見舞いしてもらえるように頼んでおきますね」

シャマルがそう言う。

「うん。楽しみにしとくわ」

その後、言葉を幾つか交わして、シグナムたちは病室を後にした。

だが、暫くすると、はやては胸を押さえて苦しみだす。

皆の前では、我慢をしていた。

病室の窓から見える夕日が妙に寂しかった。






クロノ達は、無限書庫のユーノとエリスに闇の書について分かったことの報告を受けていた。

「ここまでで分かった事を報告しとく。まず、“闇の書”っていうのは本来の名前じゃない。古い資料によれば、正式名称は“夜天の魔導書”。本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して、研究するために作られた、主と共に旅する魔道書。破壊の力を振るうようになったのは、歴代の持ち主の誰かが、プログラムを改変したからだと思う」

「ロストロギアの力を使って、むやみやたらと力を得ようとする輩は、今も昔もいるって事ね」

「その改変の所為で、旅をする機能と、破損したデータを自動修復する機能が暴走しているんだ」

それを聞いて、クロノが言った。

「転生と、無限再生は、それが原因か?」

「古代魔法ならそれくらいはアリかもね」

リーゼロッテもそう言う。

「一番酷いのは、持ち主に対する性質の変化。一定期間蒐集が無いと、持ち主自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら、持ち主の魔力を際限なく使わせる。無差別破壊の為に。だから、これまでの主は、完成してすぐに・・・・・・」

「そうか・・・・・・拓也の予想が当たったな・・・・・停止や、封印についての資料は?」

「それは今調べてる。でも、完成前の停止は多分難しい」

「何故?」

「闇の書が、真の主と認識した人間でないと、システムへの管理者権限を使用できない。つまり、プログラムの停止や改変が出来ないんだ。無理に外部からの使用を操作しようとすれば、主を吸収して転生しちゃうシステムも入ってる」

「そうなんだよねぇ・・・・・・だから、闇の書の永久封印は不可能って言われてる」

「元は健全な資料本が、なんというかまあ・・・・・」

「闇の書・・・・・夜天の魔導書も可哀想にね・・・・・」

「調査は以上か?」

「現時点では。まだ色々調べてる。でも、さすが無限書庫。探せばちゃんと出てくるのが凄いよ」

「じゃあ、すまんがもう少し頼む」

「うん」







翌日の午後。

はやてから預かっている携帯電話にすずかからメールが入った。

はやてとすずかは図書館の利用者関係で友達になっていたのだ。

メールの内容は、友達と一緒にはやてのお見舞いに行っても良いかというものだった。

だが、メールと一緒に送られてきた写真に、なのは、フェイト、信也の姿があったことから、シャマルは焦った。

急いでシグナムに報告するが、シグナムは自分たちがなのはたちと鉢合わせる事が無ければいいと言う。

はやてや、医師である石田先生に自分たちのことを口止めするようにお願いすれば大丈夫だという結論になった。



結局は、特にトラブルも無くお見舞いは無事に終わった。

だが、シャマルは更なる異変に気付く。

闇の書の侵食速度が速くなってきているのだ。

もって1ヶ月。

もっと早いかもしれないとのこと。

輝二と輝一も、冬休みに入ったら海鳴に来て、1日通して蒐集を手伝うことを約束した。

ヴォルケンリッター達の戦いも、更に激しいものになるのだった。







次回予告


冬休みに入る学校。

人々で賑わう聖夜。

なのは達は、はやてにクリスマスプレゼントを渡すために、はやてに秘密で、はやての病室を訪れるが・・・・

次回!リリカルフロンティアA`S

第九話 クリスマス・イブ

今、魔法の力が進化する。




あとがき

第八話完成。

・・・・・・なんつーか・・・・・ラブコメ?

なんかこんな流れに・・・・・・

拓也が拓也じゃねえ~~~~~!

拓也からキスするって、想像できねえ~~~~~!

後悔はしている。

だが、反省はしていない(ダメじゃん)

あと、輝一は料理が出来るという設定は、母と二人暮らしなので、手伝いを頻繁にしてるだろうと予想して造った設定です

まあ、短いですし、最後の方に手抜きが少々目立ちますが、日常編はネタが思いつかないんです(言い訳にもならん)

ともかく、次回も頑張ります。



[8056] 第九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/04 22:27
それぞれの想いを胸に戦い続ける者たち。

そして、運命の聖夜を迎える。


第九話 クリスマス・イブ


なのはたちは、入院しているはやてのために、クリスマスプレゼントを渡すことを計画していた。

連絡を取り合い、終業式が終わった後に集まって、はやての病室に秘密で行く事を決めた。

クリスマスイブの日は、丁度、聖祥小学校の終業式なのである。

そして、何事もなく終業式が終わり、なのは、フェイト、信也、アリサ、すずか、そして拓也が集まって、はやてが入院している病院へやってきた。

何故拓也がいるのかといえば、フェイトの頼みだからである。

まあ、拓也は信也のお目付け役という名目で同行している。

やがて、『八神 はやて』の表札がある病室の前にやってきた。

アリサが先頭きって病室のドアを開ける。

そして、アリサとすずかが先に入り、なのはとフェイトが次に。

最後に拓也と信也が中に入ろうとするが、病室に入ったところで、なのはとフェイトが足を止めた。

「ん?如何した?」

拓也が気になって病室の中を覗く。

「な・・・・・・」

思わず拓也は声を漏らした。

そこには、ベッドにいるはやてと僅かに驚愕した顔で、シグナム、ヴィータ、シャマル。

そして、輝二と輝一がそこにいた。

アリサとすずかは、初めましてと挨拶する。

シグナムは僅かに身構え、シャマルは戸惑い、ヴィータはなのはを睨み付ける。

その時、

(落ち着け!シグナム、ヴィータ!はやての前で騒ぐのは拙い!)

輝二から念話が飛ぶ。

「どうしたんや?コーにぃ、イチにぃ?」

はやてが輝二達に尋ねる。

(すまん拓也。話を合わせてくれ)

(わかった)

輝二は拓也にも念話を飛ばし、協力を仰いだ。

「・・・・・何で拓也がこんな所にいるんだ?」

輝二が拓也に向かって言った。

「え?」

はやては不思議そうな顔をする。

「それはこっちの台詞だ輝二。俺は単に弟の信也が、知り合いのお見舞いに行くって言うんで、年長者としてお目付け役で付いて来ただけだぞ。お前こそ東京にいるんじゃ無かったのか?」

「半年ぐらい前に海鳴の義母さんの実家に遊びに来た時にはやてと知り合ってな。それからちょくちょく遊びに来てるんだ」

「お知り合いですか?」

拓也と輝二のやり取りを聞いて、アリサが尋ねた。

「ああ。親友同士だよ。東京に居たときのな」

拓也が答える。

「コーにぃとイチにぃの親友なんですか?」

「ああ。挨拶が遅れたけど初めまして。信也の兄で神原 拓也だ。よろしくな」

「あ、こちらこそ。それで皆は今日どないしたん?」

それを聞くと、アリサとすずかは笑みを零しながら顔を見合わせる。

「「せーのっ・・・・」」

そして、はやての前に来ると、手に持っていたものを隠していたコートを取り去る。

その下には、プレゼントの箱があった。

「「サプライズプレゼント!」」

プレゼントの箱を差し出しながら言った。

「わぁ~」

はやては思わず笑顔になる。

「今日はイブだから、はやてちゃんにクリスマスプレゼント」

すずかが言った。

「ほんまか~!」

はやては嬉しそうに受け取る。

「皆で選んだんだよ」

「後で開けてみてね」

「うん!」

すずか、アリサ、はやてがそういうやり取りをしている間、なのはやフェイト、信也はすこしバツが悪そうな顔をしていた。







その夜。

とあるビルの屋上で、拓也達とシグナム、シャマル、輝二、輝一は対峙していた。

「・・・・・はやてちゃんが、闇の書の主・・・・・・」

なのはが呟く。

「悲願は後僅かで叶う」

「邪魔をするなら、はやてちゃんのお友達でも」

シグナムとシャマルがそう言う。

「待って!ちょっと待って!話を聞いてください!闇の書を完成させたら、はやてちゃんは・・・・・!」

なのはがクロノから聞いた話を説明しようとした時、

「はぁあっ!!」

飛んできたヴィータがグラーフアイゼンでなのはに殴りかかった。

なのはは咄嗟に障壁で防ぐものの、

「きゃああっ!!」

吹き飛ばされ、フェンスに叩き付けられる。

「「なのは!」」

信也とフェイトが叫ぶ。

その瞬間、シグナムがレヴァンティンを起動させ、フェイトに斬りかかる。

フェイトは飛び退くと、バルディッシュを起動させる。

「管理局に、我らの主の事を伝えられては、困るのだ!」

「私の通信妨害範囲から出すわけには、いかない」

シグナムとシャマルは、覚悟をしたような雰囲気でそう言った。

拓也と信也も、輝二、輝一と対峙していた。

既にバリアジャケットは展開している。

「待て輝二!輝一!話を聞け!」

拓也は呼びかけるが、輝二はベオウルフフォームの大剣を構え、突っ込んでくる。

「ぐっ・・・・」

拓也は咄嗟に手甲で防御するが、勢いに押され、屋上から飛び出る。

拓也は空中で体勢を立て直そうとするが、間髪いれず輝二が斬りかかってくる。

「くそっ!」

拓也はまた防御するが、そのまま輝二と共に屋上から落下していった。

「兄ちゃん!」

信也が後を追おうとした時、

「はぁああああああっ!!」

輝一がダスクフォームの剣で斬りかかってくる。

「うわっ!?」

信也は咄嗟に剣で防御するものの、剣圧に押され、吹き飛ばされて落下していく。

輝一も、屋上から飛び降りた。



フェンスに叩き付けられ、よろよろと立ち上がったなのはの前に、ヴィータが立ち塞がる。

「ヴィータ・・・・・・ちゃん・・・・・」

なのはが呟く。

ヴィータはバリアジャケットを纏い、呟いた。

「・・・・・・邪魔・・・・・すんなよ・・・・・・・・・もう後ちょっとで助けられるんだ・・・・・・・はやてが元気になって、あたしたちの所に帰ってくるんだ!」

ヴィータの瞳から、涙が零れる。

「必死に頑張ってきたんだ・・・・・・もう後ちょっとなんだから・・・・・・・・」

ヴィータはグラーフアイゼンを振り上げる。

「邪魔すんなぁあああああっ!!!」

カートリッジロードと共に繰り出された一撃。

爆発が起こり、なのはがいた一帯を炎が包んだ。

「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・」

息を切らすヴィータ。

だが、炎の中からバリアジャケットを纏ったなのはが姿を見せた。

なのはをヴィータが睨み付ける。

「悪魔め・・・・・・」

「・・・・・・・悪魔で・・・・いいよ・・・・・」

なのはは、左手を横に伸ばし、レイジングハートを起動させ、その手に掴み、構えた。

「悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから!」

決意の篭った声で、そう言い放った。




対峙するフェイトとシグナム。

「シャマル、お前は下がって通信妨害に集中していろ」

「うん」

シグナムの言葉に頷き、シャマルは下がるとバリアジャケットを纏う。

「闇の書は、悪意ある改変を受けて、壊れてしまっている。今の状態で完成させたら、はやては・・・・!」

フェイトは、シグナムの説得を試みる。

だが、シグナムはレヴァンティンをフェイトに突きつけ、

「我々はある意味、闇の書の一部だ」

その上空で、ヴィータがなのはにハンマーを叩き付けながら叫んだ。

「だから当たり前だ!私たちが一番闇の書のことを知ってんだ!!」

その一撃を防ぎながら、なのはは叫ぶ。

「じゃあ!どうして!?」

『Accel Shooter.』

アクセルシューターを発動させた事に気付いたヴィータは一旦下がる。

なのはは、魔力弾を発生させながら、ヴィータに向けて叫んだ。

「どうして、『闇の書』なんて呼ぶの!?」

「え?」

なのはの言葉の意味が判らず、ヴィータは声を漏らす。

「何で・・・・・本当の名前で呼ばないの?」

「本当の・・・・・名前・・・・・?」




シグナムの説得が無理と判断したフェイトは、バルデッシュを構えなおす。

『Barrier jacket. Sonic form.』

フェイトは、バリアジャケットを纏う。

だが、そのバリアジャケットは、今までよりも更に薄かった。

『Haken.』

バルディッシュがハーケンフォームになり、フェイトが構える。

「薄い装甲を、更に薄くしたか」

「その分、速く動けます」

「ゆるい攻撃でも、当たれば死ぬぞ。正気か?テスタロッサ」

「あなたに勝つためです。強いあなたに勝つためには、これしかないと思ったから」

シグナムはその言葉を聞くと、歯をかみ締める。

そして、上を向くとバリアジャケットを纏う。

「こんな出会いをしていなければ・・・・・私とお前は、いったいどれ程の友になれただろうか・・・・・・」

シグナムはそう呟く。

「まだ・・・・・間に合います!」

フェイトはそう叫ぶが、シグナムは剣を構える。

「・・・・・・止まれん」

その呟きと共に、レヴァンティンのカートリッジがロードされる。

「我ら守護騎士。主の笑顔のためなら、騎士の誇りさえ捨てると決めた・・・・・・もう、止まれんのだ!」

そう叫ぶシグナムの瞳からは涙が零れていた。

「止めます・・・・・私と、バルディッシュが!」

『Yes, sir.』

フェイトは、決意を込めた言葉で、そう言った。




なのはやフェイト達が戦っているビルから少し離れたビルの屋上で、拓也と輝二、信也と輝一は戦っていた。

「あと少しなんだ!邪魔をしないでくれ!」

輝二が叫びながら拓也に斬りかかる。

「ちょっと待て!落ち着け輝二!」

拓也はかわしながら呼びかける。

その上空で信也と輝一は鍔迫り合いをしている。

「話を!話を聞いてください!」

信也も輝一に呼びかける。

「話すことは・・・・・無い!」

そのまま信也を弾き飛ばす。

「うぉおおおおおっ!」

輝二が再び拓也に斬りかかる。

だが、拓也は今度は避けなかった。

輝二の一撃が、拓也の左肩にヒットする。

「ぐっ!・・・・・」

「なっ!?」

拓也は痛みを堪える声を漏らし、輝二は拓也の行動に驚く。

拓也は、そのまま左手で輝二の大剣を掴み、

「話を聞けと・・・・・・」

右腕を振りかぶる。

「言ってるだろっ!!」

その言葉と共に、輝二の頬を殴った。

「ぐあっ!!」

輝二はそのまま吹き飛び、壁に叩き付けられる。

だが、その輝二に向かって拓也が突撃してきて、そのまま壁に押し付ける。

「聞け輝二!闇の書についてはこっちでも調べた!闇の書は一定期間蒐集がないと主の魔力や資質を侵食する!あの子の・・・・・はやての身体が悪いのも、それが原因なんだろ!?」

「・・・・・ああ、そうだ!だから、闇の書を完成させなければ!はやてはっ!」

輝二も肯定の言葉を叫んだ。

「だから待てと言ってるだろっ!このまま闇の書を完成させても、はやては助からない!」

「「何っ!?」」

輝二と、その言葉を聞いていた輝一が同時に驚愕の声を漏らす。

「どういうことだ!?」

輝二が叫んだ。

「こっちで調べて分かったことだ。闇の書・・・・・いや、本当の名は夜天の魔導書。夜天の魔導書の本来の目的はあらゆる魔導師たちの技術を集めて、研究するための、いわゆる資料本みたいなものだ。けど、歴代の持ち主たちが改変を重ねていくうちに、その機能に変化が起きた。その中でも一番酷いのが、持ち主に対する性質の変化だ。1つは、さっき言った、一定期間蒐集がないと、主の魔力や資質を侵食する事。そして、もう1つは、完成したら主の意志に関係なく、無差別破壊の為に魔力を際限なく使わせることだ!」

「そんな・・・・そんなこと、シグナムたちは一言も・・・・・・・」

「あいつ等がお前らを騙すような奴らじゃないって事は俺だって分かってる・・・・・・こういういい方はしたくないけど、あいつらは元々闇の書に組み込まれたプログラム。だったら、闇の書に都合のいい様に記憶を書き換えられている可能性だってある」

輝二と輝一は、その言葉を聞くと俯く。

「じゃあ・・・・・俺達が今までやってきたことは・・・・・・」

輝一が呟く。

今までやってきたことの罪悪感が一気に押し寄せてきたようだ。

そんな2人に、拓也が声をかけた。

「輝二!輝一!落ち込んでる暇はねえぞ!間違いが分かったら、それを正せばいいだけだ!まだ間に合う!」

拓也の言葉に、輝二と輝一は顔をあげる。

「拓也・・・・・」

輝一が呟く。

「俺達を・・・・・許してくれるのか・・・・?」

輝二がそう問う。

拓也はそれを聞くと、

「許すも何も、俺達は仲間だろ!それにお前たちのやってきた理由も分からないわけじゃない。俺がお前たちの立場でも、同じ事をしただろうさ」

「すまない・・・・」

輝二はそう謝る。

「気にすんな・・・・じゃあ、行くぜ!」

「「ああ」」

輝一がベルグフォームとなり、輝二が掴まる。

そして4人は、なのはたちのいるビルに向かって飛び立った。




4人が、なのはたちのいるビルに近づいた時、異変に気付く。

ビルの上空にクリスタルケージがあったのだ。

そして、その中には、バインドで縛られたなのはとフェイト。

「フェイト!なのは!」

それに気付いた拓也が叫ぶ。

「俺たちに任せろ!」

輝二がそう言い、輝一と共にクリスタルケージを通過する。

その一瞬の間に、輝二は大剣を振るう。

それだけで、2人を閉じ込めていたクリスタルケージとバインドは切り裂かれた。

2人は一瞬驚いたが、すぐに体勢を立て直す。

「大丈夫?2人とも」

信也がすぐに声をかけた。

「信也君。うん、大丈夫だよ」

フェイトは輝二と輝一に視線をむけた。

すると、

「すまない、俺達はとんでもない間違いを犯してたみたいだ」

輝一が頭を下げる。

「あ、いえ・・・・・・い、今はそれどころじゃないんです!」

フェイトは慌てたように視線をビルの屋上へ向けた。

そこには、なのはとフェイトの姿をした何者か。

その2人の間の空中に吊り下げられているような姿のヴィータ。

屋上に倒れているザフィーラ。

そして、それらを呆然と見つめるはやて。

「はやて!」

「ヴィータ!ザフィーラ!」

輝二と輝一が叫ぶ。

「あの2人は一体!?」

拓也がなのはとフェイトの姿をした2人を見て、疑問を口にする。

「仮面の男だよ!」

フェイトが言った。

「仮面の男は2人いたの!」

続けてなのはが説明する。

なのはとフェイトの姿をした仮面の2人は、はやてに向かってなにやら言っていた様子だったが、2人は手に持っていた輝くカードをヴィータに向かって振り上げる。

「まさか!?」

「やめろぉおおおおおおっ!!」

輝二と輝一は飛び出す。

だが、流石に距離がありすぎた。

その手が振り下ろされる。

辺りを包む閃光。

それが収まった時、ヴィータとザフィーラの姿は、何処にもなかった。

それを間近で見たはやては、下を向き、震えている。

その近くに闇の書が現れる。

「はやて!」

輝二は、はやての近くに着地すると、近付こうとする。

だが、

「うわぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

悲痛な叫びと共に、凄まじい魔力の奔流がはやてを包んだ。

「ぐぅ!!」

輝二は吹き飛ばされまいと、必死で耐えた。

そのとき、なのはとフェイトに変身していた仮面の男が元に戻る。

魔力の奔流の中、はやては呟く。

「我は闇の書の主なり。この手に、力を。封印、解放」

『Freilassung.』

手に持った闇の書から、黒い稲妻のような魔力が発生し、はやてを包む。

それと共に、はやての身体が急速に成長していく。

髪が伸び、銀髪に変わる。

黒い衣を纏い、漆黒の翼を背中に生やす。

はやてだった者は、空を見上げながら涙を流す。

「また・・・・・全てが終わってしまった・・・・・・一体幾たび、このような悲しみを繰り返せばよいのか・・・・・」

「はやて!」

輝二が叫ぶ。

だが、相手はそれに答えず、

「我は闇の書・・・・・・我が力の全ては・・・・・・」

右手を上にかざす。

『Diabolic emission.』

黒紫色の魔力球体が膨れ上がる。

「主の願いの、そのままに」




その時、輝一はこの混乱に乗じて離脱する2人の仮面の男を見つけた。

「・・・・・・なのはと、フェイトだったな」

輝一が仮面の男から視線を外さぬまま、2人に話しかけた。

「え?」

「は、はい・・・・」

「シグナムたちは・・・・・どうなった?」

輝一は、半ば察した雰囲気で問いかけた。

「そ、それは・・・・・・」

「仮面の男たちによって・・・・・・闇の書に・・・・・・・」

なのはは言えなかったが、フェイトの言葉で確信してしまった。

「・・・・・そうか・・・・」

輝一は若干俯くが、すぐに顔を上げ、

「はやての事は任せる。俺は、あの2人を追う!」

輝一はそう言うと、飛び立っていった。






次回予告


仮面の男たちを追う輝一。

圧倒的な闇の書の力に苦戦する拓也達。

そんな中、仮面の男の正体を知ったクロノは・・・・・・

第十話 運命

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第九話完成。

まあ、原作沿い。

殆ど変わりなし。

でも最後に、輝一によるぬこのフルボッコフラグが立ってたり?

さて、どうなる事やら。

あとA`S編最終話まで、こっち一本で行こうと思ってます。

では、次回も頑張ります。



[8056] 第十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/10 01:57
遂に完成してしまった闇の書。

はやては一体どうなるのか?


第十話 運命


闇の書と一体化したはやては、頭上に巨大な魔力球を生み出している。

「デアボリック・・・・・・エミッション・・・・・」

呪文を呟く。

すると、巨大な魔力球が圧縮されていく。

「あっ!」

「空間攻撃!」

なのはが驚いた声を上げ、フェイトが攻撃を予想する。

「拙い!輝二!」

拓也は急いで闇の書の前にいる輝二の元へ駆けつける。

「闇に・・・・・沈め・・・・・・」

闇の書がそう呟くと共に、圧縮された魔力が、一気に解放される。

「なっ!?」

たじろぐ輝二の前に、間一髪拓也が割り込み、

「ファイヤーウォール!!」

炎の壁を発生させて輝二を守る。

『『Round Shield.』』

なのはと信也も、フェイトを守るようにシールドを発生させて、攻撃を防ぐ。

闇の書の攻撃は、半径100m以上にも及んだ。



そこからかなりはなれたビルの屋上に、2人の仮面の男はいた。

1人が魔法陣を展開し、結界を張っている。

「よし、結界は張れた。デュランダルの準備を」

結界を張った仮面の男が、もう1人の仮面の男に話しかける。

「出来ている」

もう1人の仮面の男が手を前に翳すと、その手にカード型のデバイスが出現した。

だが、次の瞬間、気配を感じたのか2人の仮面の男は上を向く。

そこには、

「はぁあああああああっ!!」

ベルグフォームの輝一が、渾身の力を込めて殴りかかってきた。

「「なっ!?」」

2人の仮面の男は、慌てて飛び退いた。

――ドゴォオオン

凄まじい破砕音と共に、輝一が屋上の床を砕いた。

「お前は!?」

仮面の男の1人が驚いた声を上げる。

だが、輝一はそんなことは意に介さず、

「貴様たちは、絶対に許さない!!」

凄まじい闇の魔力を放ちながらそう言い放った。

「ぬぐっ!?」

仮面の男たちは、一瞬輝一に気圧されるが、

「フッ!」

仮面の男の1人がカードを放ち、バインドとなって輝一を縛りつけようとした。

だが、輝一はバリアジャケットをダスクフォームに変更すると、2本の紅の剣でバインドを断ち切る。

「何っ!?」

バインドを放った仮面の男が驚愕の声を漏らす。

「くっ!」

もう1人の男が格闘戦を挑もうと、輝一に接近するが、

『Ghost move』

輝一は霞のようにその場から消え去り、仮面の男の一撃は空ぶる。

そして、次の瞬間には、その男の後ろに現れた。

「なっ!?」

驚愕する仮面の男。

振るわれる紅の剣。

咄嗟に仮面の男は障壁を張るが、輝一は力ずくで剣を振りぬく。

「ぐわっ!」

吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる仮面の男。

それを見て不利と悟ったのか、バインドを使う仮面の男が慌てて話し始めた。

「ま、待て!我らにはお前と争う意思は無い!」

輝一は、そう言う仮面の男に向き直る。

「我らの目的は、闇の書の永久封印にある!その為に、一度闇の書を完成させる必要があったのだ!」

輝一は動きを止め、その話を黙って聞いている。

「闇の書には、転生機能があり、ただ破壊したり封印しようとしたりすれば、主を吸収して転生してしまう!だが!暴走寸前の数分間だけ無防備状態になることが我々の調べで分かってる!そして、その時に氷結魔法で主ごと凍結させれば、転生機能は働かない!」

仮面の男は必死に説明している。

「確かに今回の主には申し訳ないとは思う!だが、今までの闇の書の主も、アルカンシェルによって消滅させてきた!今回の主もそれに似た、いや、今回の主で闇の書の最後の犠牲にするためなのだ!」

仮面の男は、そう言った。

「・・・・・・・そんな・・・・」

輝一が呟く。

「・・・・そんな理由で、お前たちは俺の仲間を5人も奪ったというのか!!!」

凄まじき怒りの篭った叫びと共に、再び輝一の身体から、闇の魔力が溢れ出す。

「ご、5人!?そ、それは守護騎士たちも入っているのか!?だ、だが、守護騎士は、単なるプログラムだぞ!」

輝一に吹き飛ばされた仮面の男が、慌てた様子で言った。

だがその言葉は、輝一を更に逆撫でしたに過ぎない。

「ふざけるな!!」

その叫びと共に、ふざけた事をのたまった仮面の男の腹部を思い切り殴りつけた。

「ごはぁっ!!」

「貴様たちにとっては、あいつらはそう見えたのかもしれない・・・・・・だが!俺たちにとっては違う!!」

輝一は、バインドを使う仮面の男を睨み付けた。

その仮面の男は、再びバインドを放ってきた。

だが、輝一は一瞬でその場から消え去る。

「なっ!?」

驚愕する仮面の男。

「・・・・・・口は悪くても、はやての事が大好きで、大切に思っていたヴィータ」

その呟きが聞こえ、仮面の男は慌てて振り向くが、

――ドゴッ

それと同時に殴り飛ばされる。

「おのれぇ!」

もう1人の仮面の男が蹴りを放ってくる。

それを輝一は、片方の剣の腹で、何でもないように受け止めた。

「・・・・・・いつも無口だったけど、皆に気を使ってくれたザフィーラ」

輝一のバリアジャケットの目玉の装飾が仮面の男に向き、紅の光線を放つ。

「ぐあああああっ!!」

仮面の男は叫び声を上げ、その場に倒れる。

だが、その隙に、バインドで拘束される。

「油断したな!」

バインドを使った仮面の男はそう言うが、

「・・・・・・・・料理が下手で、ドジも多かったけど、誰にでも優しかったシャマル」

輝一はベルグフォームとなり、力ずくでバインドを引きちぎる。

「なんだと!?」

仮面の男が驚愕している隙に、相手の懐へ踏み込み、強烈な一撃をお見舞いする。

「がはぁっ!?」

倒れ伏すもう1人の仮面の男。

輝一は、空へと飛び上がる。

2人の仮面の男を見下ろす。

「・・・・そして・・・・・凛々しく、誇り高かったシグナム!!」

その叫びと共に、マスターオブダークネスを放つ。

「「ぐぁああああああっ!!」」

ズタボロになる2人の仮面の男。

はっきり言って、輝一はシグナムに惹かれていた。

いや、惚れていたと言っても過言では無かった。

そんなシグナムを目の前の2人は奪った。

輝一の最大の怒りはそこにあった。

「・・・・・そんなあいつらを・・・・・・お前たちは奪った!・・・・・・どんな理由であれ・・・・・許すわけにはいかない!!」

輝一はそう言い放つ。

「な、ならばお前は・・・・・その為にこの世界の全ての人間を犠牲にしても良いというのか?・・・・この方法しか・・・・・闇の書を永久に封印する方法は無いんだぞ」

仮面の男が、ボロボロになりながらもそう問いかける。

「違うな・・・・・・その方法しか無かったんじゃない・・・・・・お前たちはそこで諦めたんだ」

「「ッ!?」」

「俺は・・・・・いや、俺達は最後まで諦めない・・・・・・絶対にはやてだけは助けてみせる!」

輝一はそう言うと、

「だが・・・お前たちは許せない・・・・・・消えろっ!!」

2人の仮面の男の周りに、円が描かれる。

「ゾーンデリーター!!」

描いた円から闇がせり上がり、巨大な口が飲み込むように球状になっていく。

仮面の2人は動けないためにこのまま消滅するかに思われた。

だが、闇の口が閉じられる寸前、

「そこまでだ!!」

その言葉と共に、闇の口の中に数本のバインドが侵入する。

そして、仮面の男を絡め取ると、間一髪闇の中から仮面の男を引き上げる。

口が閉じられ、完全な闇の球になる。

次の瞬間、衝撃と共にその空間は消滅した。

「空間内を完全消滅させる魔法か・・・・・非殺傷もなにも有ったものじゃないな」

その言葉に、輝一は振り向く。

そこには、仮面の男をバインドで絡め取ったクロノがいた。

「何故邪魔をする?」

輝一が問いかける。

「君が拓也の親友なら、殺しは拙い。今までの行動なら、ある程度酌量の余地は与えられるが、殺しをしてしまっては、重罪は確定だ」

「・・・・・・・」

クロノの言葉で頭が冷えてきたのか、ある程度冷静になる。

「・・・・すまない・・・・頭に血が上りすぎてたようだ」

「それに、この2人には、まだ聞きたいことがある」

バインドで拘束していた2人から、淡い光が漏れる。

「ストラグルバインド。余り使い所の無い魔法だけど、こういうときに役に立つ。変身魔法も、強制的に解除するからね」

2人から放たれる光が強くなる。

そして、変身魔法が解除されたそこには、ギル・グレアムの使い魔である、リーゼアリアとリーゼロッテがそこにいた。

「クロノ!このっ・・・・・」

「こんな魔法、教えてなかったのに・・・・」

「1人でも精進しろと教えたのは、君たちだろう?アリア、ロッテ」

クロノは、少し悲しそうな目をしながらそう言うと、輝一に向き直る。

「この2人の黒幕には心当たりがある。僕はそっちを当たるから君は・・・・・」

「わかってる。拓也達の援護をする」

「頼む」





拓也達は、闇の書から少し離れたビルの影に隠れていた。

「いっつ~~!」

拓也は、右手を振りながらそう声を漏らす。

「すまん拓也。大丈夫か?」

拓也の左手に掴まっていた輝二は、声をかける。

「ああ。ちょっと休めれば問題ないさ。フェイトたちは大丈夫だったか?」

拓也は3人に尋ねる。

「うん、私は2人が守ってくれたし・・・」

「僕となのはは、2人でシールドを張ったから、それほど負担は掛からなかったんだ」

「そうか」

その言葉を聞き、拓也はホッとする。

フェイトは、闇の書の方角に顔を向けると、

「あの子、広域攻撃型だね。避けるのは、難しいかな」

相手の戦力を冷静に分析すると、

「バルディッシュ」

バルデッシュに呼びかける。

『Yes, sir. Barrier jacket, Lightning form.』

フェイトのバリアジャケットが輝き、いつものバリアジャケットになる。

その時、

「信也!」

「なのは!」

「フェイト!」

ユーノ、エリス、アルフの3人が飛んできた。

「エリスちゃん、ユーノ君、アルフさん!」

3人が拓也達に合流する。

その時、闇の書によって結界が張られる。

「な、何?」

フェイトが驚く。

「前と同じ、閉じ込める結界だ!」

アルフが叫んだ。

「やっぱり、私たちを狙ってるんだ」

アルフの言葉で、フェイトはそう察する。

「今、クロノが解決方法を探してる。援護も向かってるんだけど、まだ時間が・・・・」

ユーノがそう言った。

「それまで、私たちで何とかするしかないか」

だが、なのはは悲しそうな表情で闇の書を見つめる。

「なのは・・・・」

心配そうにフェイトは呟いた。

その言葉に、なのはははっとすると、

「うん、大丈夫!」

気を取り直してそう頷いた。





その頃、本局ではクロノがギル・グレアムを問い質していた。

「リーゼたちの行動は、あなたの指示ですね?グレアム提督」

クロノが問う。

「違うクロノ!」

「あたし達の独断だ。父さまは関係ない」

リーゼ姉妹はそう言う。

だが、

「ロッテ、アリア。いいんだ。クロノはもう、あらかたの事は掴んでる。違うかい?」

グレアムは自分の行いを認め、クロノに問いかける。

クロノは一瞬複雑な顔をして目を逸らす。

そして、口を開いた。

「11年前の闇の書事件以降、提督は独自に闇の書の転生先を探していましたね。そして、発見した。闇の書の在り処と、現在の主、八神 はやてを。だが、完成前の闇の書と主を抑えても、余り意味は無い。主を捕らえようと、闇の書を破壊しようと、すぐに転生してしまうから。だから、監視をしながら、闇の書の完成を待った。見つけたんですね?闇の書の、永久封印の方法を」

「両親に死なれ、身体を悪くしていたあの子を見て、心が痛んだが、運命だと思うんだ。孤独な子であれば、それだけ、悲しむ人は少なくなる」

「あの子の父親の友人を語って、生活の援助をしていたのも提督ですね?」

「永遠の眠りに就く前ぐらい、幸せにしてやりたかった・・・・・・偽善だな・・・・・」

「封印の方法は、闇の書を主ごと凍結させ、次元の狭間か、氷結世界に閉じ込める。そんなところですね」

「そう・・・・それならば、闇の書の転生機能は働かない・・・・・」

グレアムはそう呟いた。

「これまでの闇の書の主だって、アルカンシェルで蒸発させたりしてたんだ。それとあんまり変わらない!」

リーゼロッテがそう言うと、リーゼアリアが頷き、

「クロノ、今からでも遅くない。あたし達を解放して。氷結をかけられるのは、暴走が始まる数分間だけなんだ」

そう忠告する。

「その時点では、闇の書の主はまだ、永久凍結をされるような犯罪者じゃない。違法だ」

しかし、クロノはそう言った。

「そのせいで!そんな決まりの所為で、悲劇が繰り返されてるんだ!クライド君だって・・・・・あんたの父さんだってそれで「ロッテ」う・・・」

リーゼロッテの言葉をグレアムが止める。

クロノは立ち上がると、出入り口に向かって歩く。

そして、ふと足を止めると、

「法以外にも、提督のプランには、問題があります。まず、凍結の解除はそう難しくないはずです。何処に隠そうと、どんなに守ろうと、いつかは誰かが使おうとする。怒りや悲しみ・・・・・欲望や絶望・・・・・そんな願いが導いてしまう・・・・・・封じられた力へと・・・・・・」

その言葉を聞くと、グレアムは俯く。

「じゃあ!如何するのさ!」

リーゼロッテが叫ぶ。

「・・・・・・・前に拓也に言われた事があります」

クロノの言葉にグレアムが顔をあげる。

「拓也君というのは、前に会った炎の属性特化型魔導師の少年だね?」

「はい・・・・・・彼に初めて会った頃に言われた事です。10人が危機に陥っているとして、1人を犠牲にすれば9人は確実に助かり、10人を助ける方法の可能性は1%以下。こういった場合、管理局では如何するのかと・・・・・・母さん・・・・・リンディ提督は、セオリー通り1人を犠牲にする方法を答えました。ですが、彼は迷わず全員が助かる道を選ぶと答えたのです」

「そんな無茶苦茶な!」

リーゼアリアも叫んだ。

「その後、彼の言っていた事に納得できなかった僕は、彼に模擬戦を挑みました。その中で、彼はこう言いました。“失敗する事は考えるな”“成功率が0.1%だろうが0.01%だろうが、成功させてしまえば100%だ”と。もちろん、彼の言葉には根拠も何もありません。でも、何故か彼ならやってくれると思えるんです。感じさせてくれるんです・・・・・先程言った、怒りや悲しみ、欲望や絶望に対抗する・・・・・・・“希望”というものを。そして、先程提督は、運命と仰いましたね?」

「うむ・・・・」

グレアムは小さく頷く。

「彼なら・・・・いえ、守護騎士たちと行動を共にしていた、彼の親友も含めて、彼らならこう言うでしょう・・・・・・そんな運命なんか認めない。そんな運命変えてやる。とね」

「・・・・・・変わったな、クロノ。昔のお前なら、そんな根拠の無いことは言わなかった」

グレアムはそう呟く。

「そうかもしれません。彼の・・・・・拓也の考え方は、管理局の方針とは合わないでしょう・・・・・・でも、拓也の言葉には、とても重いものを感じるんです。12歳の子供とは思えないくらいの重いものを・・・・・良かれ悪かれ、拓也は周りの者に影響を与えやすい人間なんでしょう・・・・・・」

クロノは、一旦グレアムに向き直り、

「現場が心配なので、すみません。一旦失礼します」

一礼すると、部屋を出ようとする。

すると、グレアムが立ち上がり、

「クロノ」

クロノを呼び止めた。

「はい?」

クロノが振り向く。

「アリア、デュランダルを彼に」

「父さま?」

「そんな・・・・」

「私たちに、もうチャンスは無いよ。持っていたって、役に立たん」

グレアムの言葉で、リーゼアリアはデュランダルをクロノに差し出す。

「如何使うかは、君に任せる。氷結の杖、デュランダルを」






海鳴の街の上空で、闇の書を相手に拓也達は戦っていた。

防御力と格闘能力の高い拓也と輝一が前衛に。

スピードのあるフェイトと信也がかく乱を。

接近戦が苦手ななのはと、飛ぶ事が出来ない輝二が砲撃に徹し、ユーノ、エリス、アルフが補助魔法で援護していた。

「「はっ!」」

ユーノとエリスのバインドが、闇の書の両足を絡め取る。

「ふっ!」

アルフのバインドが、片手を封じる。

一瞬、闇の書の動きが止まるが、

「・・・・砕け」

そう呟く。

『Breakup.』

それだけで、3人のバインドは砕け散る。

だが、その一瞬でも彼らには十分だった。

『Plasma smasher.』

「ファイア!!」

フェイトが金色の砲撃を。

『Divine buster, extension.』

「シューーーーーーーート!!」

なのはが桜色の砲撃を放ち、

『V-Breath Arrow MAX.』

「貫け!」

信也が巨大な魔力矢を撃ち、

『Brahma Sutra』

「はぁあああああっ!!」

拓也が火球を連射し、

『Lichtangriff』

「当たれ!」

輝二が屋上から光線とミサイルを放ち、

『Master of Darkness.』

「喰らえ!」

輝一が紅の光線を放った。

6つもの必殺と呼べる攻撃が闇の書に向かう。

だが、

「盾」

闇の書がそう呟く。

『Panzerschild.』

魔法陣の障壁が現れ、それぞれを受け止める。

「刃以て、血に染めよ」

『Blutiger Dolch.』

闇の書がそう呟くと、闇の書の周りに無数の紅の短剣が出現する。

「穿て、ブラッディダガー」

その瞬間、高速でその短剣が発射され、一瞬で全員に着弾する。

爆煙に包まれる拓也達。

だが、少し立つと、煙の中から全員飛び出してくる。

「いって~な畜生。あれだけやって無傷だと流石にへこむぞ!」

拓也が思わずグチを零す。

すると、闇の書は右手を前に翳す。

「咎人達に、滅びの光を」

闇の書がそう呟くと、桜色の魔法陣が発生し、桜色の魔力が集中していく。

「まさか・・・・」

「あれって・・・・」

エリスとアルフが声を漏らす。

「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」

魔力が更に集中していく。

「スターライト・・・・・ブレイカー?」

なのはが呆然とした声で呟く。

「アルフ!ユーノ!エリス!」

フェイトが呼びかけると、言いたいことを理解し、即座に離脱する。

「貫け・・・・閃光・・・・・」

闇の書は呪文を唱え続ける。

「なのはの魔法を使うなんて!」

「なのはは一度蒐集されてる!その時にコピーされたんだ!」

アルフの言葉に、ユーノが答える。

「輝二!掴まれ!」

拓也の呼びかけに答え、輝二は拓也の手に掴まる。

それを確認すると、拓也は全力でフェイトたちの後を追った。

輝一も拓也と共に離脱する。

「拓也!あの魔法は!?」

輝一が離脱しながら問いかける。

「なのはの魔法!スターライトブレイカー!単純な魔法の出力は、ブラフマシルやツヴァイハンダーを上回る!!」

拓也は叫びながら説明する。

「ちょ、フェイトちゃん!こんなに離れなくても」

「至近で喰らったら、防御の上からでも落される!回避距離を取らなきゃ!」

「なのははもうちょっと自分の魔法を理解して!」

自分の魔法の威力を、イマイチ理解してないなのはに、フェイトと信也は言った。

実際に喰らったフェイトとしては、その威力は、言葉通り身を持って知っている。

フェイトは全速で距離を取る。

だがその時、

『左方向300ヤード、一般市民がいます』

バルディッシュの報告に、3人は驚愕した。

すぐさま方向を変え、バルデッシュが報告したところへ向かう。

3人が付近を捜すと、路地から出てくる2人の人影を見つけた。

その2人になのはは声をかけた。

「あの、すみません!危ないですから、そこでじっとしてて下さい!」

その2人は振り返る。

「え?」

「今の声って・・・・・」

その2人が呟いた。

2人がなのは達の姿を捉える。

「なのは?」

「フェイトちゃん?それに・・・・信也君?」

その2人は、アリサとすずかだった。

なのはとフェイト、信也の顔が驚愕に染まる。

その時、

(フェイト!信也!なのは!一体如何した!)

念話で拓也が呼びかけてきた。

途中で方向を変えた3人に疑問を持ったのだ。

(拓也、その・・・・アリサとすずかが結界内に取り残されてて・・・・)

(なっ!?・・・・分かった。俺達もすぐそっちに向かう)

念話を終え、少しすると、拓也達3人も合流する。

その時、

「スターライト・・・・ブレイカー!」

闇の書のスターライトブレイカーが眼下に向け放たれた。

街を覆いつくしていく桜色の閃光。

(フェイトちゃん、アリサちゃんたちを!)

(うん!)

フェイトはカートリッジを2発ロードする。

「2人とも、そこでジッとして!」

バルデッシュを2人に向ける。

『Defenser plus.』

ドーム型の障壁が、アリサとすずかを包んだ。

そして、2人の前に立つと、自身も障壁を展開する。

更にその前になのはと信也が立ち、

「レイジングハート!」

「ブレイブハート!」

それぞれがカートリッジを2発ロード。

『『Wide area protection.』』

大きな障壁を張り、衝撃に備える。

迫ってくる閃光。

しかし、なのはと信也の前に更に拓也と輝二、輝一が立ち塞がった。

「兄ちゃん!?」

輝一がなのは達の前で翼を広げ、魔力を放出する。

翼にそって流れる魔力は、まるで壁のようになのは達を守る。

拓也と輝二は、それぞれ巨大な火球と光の狼を生み出す。

「攻撃は最大の防御ってね・・・・・・行くぜ!!」

「応!」

拓也の言葉に、輝二は返事を返す。

「ブラフマシル!!」

「ツヴァイハンダー!!」

巨大な火球と光の狼が迫って来る桜色の閃光にぶつかり、攻撃範囲に穴を開ける。

流石に余波はあるものの、輝一となのは、信也によって殆どが防がれ、フェイトとアリサ、すずかには殆ど衝撃は無かった。

その時、エリスたちから念話が飛んでくる。

(なのは!なのは、無事!?)

(信也!?)

(フェイト!?)

ユーノとアルフからも心配そうな声が聞こえる。

(な、なんとか・・・・・)

(大丈夫ではあるんだけど・・・・・)

(アリサとすずかが・・・・結界内に取り残されてるんだ!)

「なんだって!」

その事を聞いたアルフは驚愕する。

「エイミィさん!」

ユーノが通信でエイミィに呼びかける。

『余波が収まり次第、すぐに避難させる!何とか堪えて!』

「はい!」

エイミィは転送の準備を急ぐ。

スターライトブレイカーの余波が収まり、フェイトがアリサとすずかに声をかける。

「もう大丈夫・・・・」

その言葉で、抱き合っていた2人は立ち上がる。

「すぐに安全な場所に運んでもらうから、もう少しジッとしててね」

なのはもそう声をかける。

「なのはちゃん・・・・・フェイトちゃん・・・・」

「ねえ!ちょっと・・・・・」

その時、2人の足元に転送の魔法陣が浮かび上がり、すぐに2人は転送されていった。

「見られちゃったね・・・・・」

「うん・・・・・」

なのはとフェイトが気落ちした雰囲気でそう呟く。

(エリスちゃん、ユーノ君。悪いけど、アリサちゃんたちのほうをお願い)

(アルフもお願い)

(でも、フェイト)

「行こう、アルフ」

「でもさ!」

「気がかりがあると、皆が思い切り戦えないから」

「あ・・・・うん・・・・・」

渋るアルフをユーノが説得し、その場を離れる。



拓也達にエイミィから通信が入る。

『皆!クロノ君から連絡!闇の書の主に、はやてちゃんに投降と停止を呼びかけてって!』

「はい!」

なのはが返事を返す。

そして、念話で呼びかけた。

(はやてちゃん・・・・・それに闇の書さん・・・止まってください!ヴィータちゃんたちを傷つけたの、私たちじゃないんです!)

(シグナムたちと・・・・・私達は・・・・・)

「我が主は・・・・・・この世界が・・・・・・自分の愛する者たちを奪った世界が・・・・・・悪い夢であって欲しいと願った・・・・・・だから我は・・・・・・ただそれを叶えるのみ・・・・・主には・・・・・穏やかな夢の内で・・・・・永久の眠りを・・・・・・・・そして、愛する守護騎士たちを奪った者には・・・・・・永久の闇を!」

「闇の書さん!」

「お前もその名で・・・・・私を呼ぶのだな・・・・・」

闇の書は一瞬、悲しそうな表情をする。

次の瞬間、地面が割れ、そこから巨大なワームが飛び出してくる。

「なっ!?コイツは!!」

輝二は驚愕する。

その生物は、以前砂漠で蒐集対象にした生物だったからだ。

その生物の一部である触手が、全員を拘束する。

「それでもいい・・・・・」

闇の書が呟く。

「私は・・・・・・主の願いを叶えるだけだ」

「願いを・・・・叶えるだけ?その願いを叶えて・・・・・はやてちゃんは本当に喜ぶの!?心を閉ざして・・・・・何も考えずに、主の願いを叶えるだけの道具でいて、あなたは!それで良いの!?」

闇の書の言葉を聞いたなのはが叫んだ。

「我は魔道書・・・・・ただの道具だ」

「だけど・・・・!」

「自分を自分で道具だと思っているのなら、お前は道具にしかなれない」

輝一が口を開いた。

「シグナムたち・・・・・守護騎士たちは、最初はただのプログラムだったのかもしれない・・・・・けど!あいつらは、はやてと出会い!触れ合い!自分の感情を持った!心を持った!人間じゃなくても、“ヒト”になった!!そうでなければ、はやてとの約束を破って、蒐集行為なんかするもんか!!」

輝一は、バリアジャケットをダスクフォームに変更し、触手を切り裂き、皆を解放する。

続けて、輝二が口を開いた。

「それにお前の言っているはやての願いは、願いなんかじゃない。大切な者を失った事による、一時の気の迷いに過ぎない!確かにヒトはどうしようもない絶望に陥った時、全てを否定してしまうかもしれない!その絶望に耐え切れずに、押しつぶされてしまう者もいるかもしれない!けど!はやてはそんなことにはならない。必ずその悲しみを乗り越え、強く生きる心の強さをもった娘だ!!」

更に拓也も口を開く。

「お前はさっきから自分を道具だと、主の願いを叶えるだけだと言ってるけど!なら、その涙はなんだ!!ただの道具に、涙を流す事が出来るもんか!!」

拓也の言うとおり、先程から闇の書の瞳からは、涙が溢れ続けている。

「この涙は主の涙・・・・・私はただの道具だ・・・・・悲しみなど・・・・無い」

拓也の叫びに闇の書が呟く。

「そんな言葉!そんな悲しそうな表情で言われて、誰が信じるかよ!!」

拓也が更に叫ぶ。

「拓也の言うとおりだ!お前が自分を道具である事を否定すれば、お前はその場で道具じゃなくなる!お前も心を持ってる!守護騎士たちと同じように、“ヒト”に成れるんだ!闇の・・・・・いや!夜天の魔導書!!」

輝一の叫び。

「・・・・・・・・・・・」

暫く沈黙する闇の書。

だが突如、大地が震えだす。

すると、所々から火柱が上がる。

「えっ!?」

「なっ!?」

それに驚く全員。

「早いな・・・・もう崩壊が始まったか・・・・・・私もじき意識を無くす・・・・・そうなれば、すぐに暴走が始まる。意識の在るうちに・・・・主の願いを・・・・・叶えたい・・・・・」

闇の書の呟き。

「だからそれは・・・・・」

輝二が震える。

「このぉ・・・・・・・」

拓也も拳を握り締める。

そして次の瞬間、2人は同時に飛び出した。

「一時の気の迷いだと!言ってるだろうが!!」

「わからずやがぁあああああっ!!」

輝二が大剣を振りかぶりながら大地を高速で駆け、拓也が右腕を思い切り振りかぶりながら一直線に闇の書に向かう。

輝二は跳躍して斬りかかり、拓也は拳を繰り出す。

そんな2人を見て、

「お前たちも、我が内で・・・・眠るといい・・・・」

闇の書がそう呟くと、手に持っていた闇の書のデバイスが浮き上がり、闇の書の前でページが開かれる。

輝二の大剣と、拓也の拳は、そこから発生した三角形の魔法陣に止められた。

すると、2人の身体が光に包まれる。

「な、何だ・・・・?」

「これは・・・・・?」

光が強くなり、

「タクヤ!!」

「兄ちゃん!!」

「輝二!!」

フェイト、信也、輝一が叫ぶ。










そして、













2人の姿が消えて、












『Absorption.』
















闇の書のデバイスが閉じた。














次回予告


闇の書に吸収された拓也と輝二。

必死に戦い続けるなのは達。

だが、闇の書は強大な力を振るい続ける。

しかし、絶望の中、はやての心が目覚め、闇の書に新たな名を与える。

次回!リリカルフロンティアA`S

第十一話 聖夜の贈り物

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第十話完成。

一日で書き上げました。

って言うか今回台詞多いな。

とりあえずぬこフルボッコ。

闇の力は怒りや憎しみと相性が良いので、あの時の輝一は普段よりも更に強くなってるという設定です。

クロノとグレアムの会話もちょっと追加してみましたけど、どうですかね?

あと、闇の書とのやり取りもフロンティアの3人が色々突っ込んでみました。

そんで最後に、フェイトではなく、拓也と輝二が吸収されました。

どうなるのかな?

では、次も頑張ります。




[8056] 第十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/11 00:52
闇の書に吸収されてしまった拓也と輝二。

2人の運命やいかに。


第十一話 聖夜の贈り物


「・・・・・・や・・・・・・くや・・・・・・・たくや!・・・・・・・・拓也!早く起きなさい!」

拓也は自分を呼ぶ声で意識を覚醒させる。

「う・・・・・・」

拓也が目を覚ますと、

「やっと起きたわね」

そう言ったのは、拓也の母である由利子であった。

「え?・・・・・・母さん?何で此処に?」

拓也は何故母親の由利子がこんな所にいるのか疑問に思う。

「何寝ぼけてるの?今日はフェイトちゃんとデートなんでしょ。ガールフレンドを待たせるなんて失礼よ」

「へ?」

由利子の言葉に素っ頓狂な声を上げる拓也。

そこで気付くが、今拓也がいるのは、自宅の自分の部屋のベッドだ。

「な、何で・・・・・・?」

「はいはい、いい加減に準備しなさい」

訳のわからない拓也は、由利子に言われるままに起き出した。







拓也と輝二が目の前で消えた事に驚愕するなのは、フェイト、信也、輝一。

「エイミィさん!」

なのはが思わずエイミィに確認を取る。

『状況確認!拓也君と輝二君のバイタル、まだ健在!闇の書の内部空間に閉じ込められただけ!助ける方法、現在検討中!』

エイミィは、調べたデータからそう報告する。

その報告を聞いた瞬間、フェイトが飛び出した。

「フェイトちゃん!?」

なのはが呼び止めようとするが、フェイトは聞かない。

「はぁあああああっ!!」

フェイトはハーケンフォームで斬りかかる。

だが、闇の書は、微動だにせず障壁を展開してその攻撃を受け止めた。

フェイトは、それでも力を込め続ける。

「タクヤを返せっ!!」

フェイトは怒りの表情でそう叫ぶ。

「我が主もあの2人も、覚めること無い眠りのうちに、終わり無き夢を見る」

闇の書は、淡々とそう告げた。

一向に障壁が破れる兆しがないことから、フェイトは一旦飛び退く。

そして、再び飛び込もうとした時、その肩を輝一に掴まれた。

「落ち着け!焦っていては助けられるものも助けられなくなるぞ!」

輝一の言葉に、フェイトは踏みとどまる。

「今は堪えろ。チャンスを待つんだ」

輝一のその言葉に、フェイトの熱くなっていた頭は冷めていく。

「ごめん、頭に血が上ってた」

フェイトはそう言って、一旦体から力を抜き、再び構えなおす。

「それでいい」

輝一も、フェイトの肩から手を離した。

「生と死の、狭間の夢。それは、永遠だ」

闇の書が告げる。

「永遠なんて、あるもんか!」

信也が叫ぶ。

「皆変わってく・・・・・変わらなきゃいけないんだ!私も、あなたも!」

なのはが強き意思を込めてそう叫んだ。





暗き闇の中にはやてはいた。

「眠い・・・・・・眠い・・・・・・・」

はやては、重い瞼を何とか開く。

その視線の先には、銀髪で赤い瞳の管制人格の姿があった。

『そのまま御休みを、我が主。あなたの望みは、全て私が叶えます。目を閉じて・・・・・心静かに夢を見てください』






4人は戦いながらも、闇の書を海上へと誘導していた。

輝一が闇の書の左手の一撃を受け止める。

「ぐっ・・・・・」

だが、闇の書は既に右腕を振りかぶっていた。

『Schwarze Wirkung.』

その右腕に、黒紫色の魔力を纏わせる。

輝一は、咄嗟に両腕をクロスさせて防御した。

闇の書の右腕が繰り出される。

「ぐあっ!」

ガードしても吹き飛ばされる輝一。

海面に叩き付けられ、水飛沫が上がるが、輝一はすぐに海面に出てくる。

その間に、なのはは念話でアースラに連絡を取っていた。

(リンディさん、エイミィさん、戦闘位置を海の上に移しました。市街地の火災をお願いします)

『大丈夫。今、災害担当の局員が向かっているわ』

リンディから通信で報告が来る。

(それから、闇の書さんは駄々っ子ですが、何とか話は通じそうです。もう少しやらせて下さい!)

「行くよ!レイジングハート!」

『Yes, My master』









夢の中の拓也は、朝食を食べ終えたところだった。

拓也は未だに、混乱から立ち直ってはいなかった。

故に状況に流されるまま進んでいた。

朝食を終えて暫くすると、

「おはようございます!」

玄関から聞きなれた声がする。

フェイトの声だ。

「ほうら、ガールフレンドの到着よ。早く行きなさい」

由利子がニコニコ顔でそう言った。

今の拓也に選択肢などある訳はなく、玄関へ向かう。

そこには、いつもよりおしゃれに着飾ったフェイトがいた。

「タクヤ、早く行こうよ!」

フェイトは手を引いて急かす。

「あ、ああ」

拓也は曖昧に返事を返して、急かされるままに玄関を出る。

すると、フェイトが腕を絡ませてきた。

拓也は顔を赤くする。

「お、おい・・・・・」

だが、フェイトは恥らってる様子はない。

「?  如何したのタクヤ。いつもの事だよ」

そんな事まで言ってくる。

「・・・・・・まあ、いっか」

拓也は半ば諦めたのかそう呟き、フェイトと並んで歩いていった。

街を歩く中、拓也は信じられない光景を幾つも目にした。

プレシアとアリシアが子犬のアルフと一緒に散歩しており、尚且つフェイトと一緒に暮らしていること。

信也となのはも恋人同士と言っていいほど仲が良くなっていたこと。

共にデジタルワールドの冒険をした仲間たちが同じ街に住んでいること。

ボコモンとネーモンまでも同じ街に住んでいた。

このことは全て、拓也が心のどこかで望んでいた光景だった。






激しい戦いを繰り広げる4人と闇の書。

だが、なのは、フェイト、信也の3人は、カートリッジに限りが見え始め、少し焦りだす。

スピリットデバイスの輝一は魔力が尽きるまで戦い続ける事は可能だが、3人はカートリッジが無くなれば戦力は大きくダウンする。

決着は早めにつけなければならなかった。

そんな時、デバイス達から思いがけない提案が上がった。

それは、

『フルドライブモードを起動してください』

というものだった。

当然、3人、特になのはは反対する。

「駄目だよ!あれは本体の補強が終わるまで、使っちゃ駄目だって!私がコントロールに失敗したら、レイジングハート壊れちゃうんだよ」

なのははそう言うが、

『Call me. Call me, my master.』

それがレイジングハートの答えだった。

バルディッシュとブレイブハートも答えは同じである。





はやては虚ろな意識の中、思った。

「私は・・・・・・何を望んでたんやっけ・・・・・?」

『夢を見ること・・・・・悲しい現実は、全て夢となる。安らかな眠りを』

管制人格が答える。

「そう・・・・・なんか・・・・?・・・・・・私の・・・・・・ほんとの・・・・・・望みは・・・・・・・」





闇の書が対峙する4人に言った。

「お前たちも、もう眠れ」

「いつかは眠るよ」

なのはが答えた。

「でも、それは今じゃない」

信也が続ける。

「タクヤ達を救いたい・・・・・」

フェイトが呟き、

「・・・・そして、お前もだ!夜天の魔導書!」

輝一が締める。

レイジングハート、バルデッシュ、ブレイブハートが一発ずつカートリッジをロードする。

「レイジングハート!エクセリオンモード!!」

「バルデッシュ!ザンバーフォーム!!」

「ブレイブハート!アルフォースモード!!」

「「「ドライブ!!」」」

『『『Ignition.』』』

3人の掛け声と共に、デバイスが変形する。

レイジングハートは槍のような形に。

バルデッシュは大剣に。

ブレイブハートは、肘から手の甲まで覆う腕輪が両手につき、背中のエアロウイングが更に大きくなる。

3人は、デバイスを構える。

すると、

「囲え・・・・ブラッディダガー」

闇の書はそう呟く。

すると、4人を中心に、360度全方位に無数の短剣が浮かび上がる。

「なっ・・・・」

なのはは驚くが、

「任せて!」

信也が叫び、左手を構える。

『Tensegrity Shield.』

左手の腕輪が輝く。

その瞬間、短剣が一斉に襲い掛かった。

爆発に飲まれる4人。

だが、煙が晴れると、青い結界が4人を包み、その全てを防ぎきっていた。

その結界を解除すると、信也は右腕を掲げる。

『Ulforce Saber.』

右腕の腕輪から、光の剣が発生した。

「アルフォース!セイバー!!」

信也は右腕を振る。

そこから放たれる青き斬撃。

それは闇の書に直撃する。

次にフェイトがバルデッシュを構える。

「疾風・迅雷!」

『Sprite Zamber.』

フェイトの大剣の一撃が、信也の攻撃で揺らいでいた障壁を破壊する。

「なのは!今!」

フェイトがなのはに向かって叫ぶ。

なのはは既にレイジングハートを構えていた。

「エクセリオンバスター!!」

レイジングハートの切っ先に光球が発生し、魔力がチャージされていく。

「ブレイク!シューーーーーーーート!!」

その魔力が一気に放たれた。

闇の書を飲み込む桜色の閃光。

更に、

「マスターオブ・・・・・ダークネス!!」

輝一がダメ押しとばかりに紅の光線を放った。

更なる爆発に飲み込まれる闇の書。

「障壁破壊後の砲撃2連発・・・・・如何だ?」

輝一が着弾点に意識を集中させる。

爆煙が晴れていく。

そこから現れたのは、流石に無傷ではないものの、未だ余裕のある姿の闇の書であった。

「・・・・・もうちょっと、頑張らないとだね」

なのはが自分に言い聞かせるようにそう呟いた。







夢の中の拓也が、フェイトと公園に行くと、自分の足で歩いているはやてと共にいる輝二と出会った。

お互いの視線が交わった時、何か言いたいことが互いにあると感じ、フェイトとはやてに遊んでいるよう伝えると、2人は公園のベンチに座った。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

暫く互いに無言だったが、

「なあ・・・・・拓也・・・・・」

先に輝二が口を開いた。

「・・・・何だ?」

拓也が聞き返す。

「・・・・・いい夢だな」

はやての姿を見つめながら、そう呟いた。

「何だ、気付いてたのか?」

拓也がさして驚くような事もなく、そう返した。

「お前が気づくんだ。俺が気付かないわけないだろう?」

「どーいう意味だよ!?」

「そのまんまの意味だ」

輝二の冗談とも本気とも取れる言葉に拓也は苦笑する。

「・・・・・・確かに、いい夢だよな」

拓也が呟く。

「ああ。はやての身体が健康で、俺を生んでくれた母さんも再婚して、輝一も幸せになって。守護騎士たちもはやてと一緒に幸せに暮らしている」

「本当に・・・・・このままでも良いと思えるぐらいに・・・・・・・・・・・」

拓也はそう呟いて辺りを見回す。

「・・・・・・・・・・・けど」

拓也は一呼吸置いて言った。

「夢はやっぱりただの夢だ」

その瞬間、周りの景色が、ビデオの停止画面のように動かなくなった。

「ああ・・・・・夢に何の意味も無い」

続けて輝二がそう呟くと、その景色が粉々に砕け散る。

その後に残るのは闇。

「どんなに苦しくても、前を向いて進んでいく」

「それが、デジタルワールドの冒険で知った、大切な事の1つだ」

2人は、闇の中に輝く、一点の光を見つけた。





「私が・・・・・欲しかった幸せ・・・・・」

はやては呟く。

『健康な身体。愛する者達と、ずっと続いていく暮らし。眠ってください。そうすれば、夢の中であなたはずっと、そんな世界にいられます』

管制人格はそう言う。

だが、はやては首を横に振った。

「せやけど・・・・・・それはただの夢や」

はやてははっきりと言った。

「私、こんなん望んでない。あなたも同じはずや!違うか?」

はやては管制人格に問いかけた。

『私の感情は、騎士達の心と深くリンクしています。だから騎士達と同じように、私もあなたを愛おしく思います。だからこそ、あなたを殺してしまう自分自身が許せない・・・・・・・自分ではどうにもならない力の暴走。あなたを侵食する事も、暴走してあなたを喰らい尽くしてしまうことも、止められない』

はやては、その言葉を聞き、悲しそうな顔をする。

「覚醒の時に、今までのこと少しはわかったんよ。望むように生きられへん悲しさ。私にも少しは分かる!シグナムたちと同じや!ずっと悲しいも思い寂しい思いもしてきた・・・・・・」

「・・・・・・」

管制人格は俯く。

「せやけど忘れたらあかん」

その言葉に、管制人格は驚いた表情をする。

「あなたのマスターは、今は私や。マスターのいう事は、ちゃんと聞かなあかん」

はやては管制人格の頬に手を添える。

2人の足元に、ベルカ式魔法陣が浮かび上がる。

「名前をあげる。もう“闇の書”とか“呪いの魔導書”とか言わせへん。私が呼ばせへん!」

はやての言葉に、管制人格の瞳から涙が溢れる。

「私は管理者や。私にはそれが出来る」

『無理です・・・・・自動防御プログラムが止まりません・・・・・・管理局の魔導師達が戦っていますが・・・・・それも・・・・・』

「あきらめるな」

管制人格の声を遮って、輝二の声が響いた。

はやての後ろに輝二が現れる。

「え?」

「コーにぃ!?」

2人が驚いた声を上げる。

「最後まで諦めるんじゃない」

拓也も姿を現す。

「拓也さん!?」

「輝一が言っていただろう?お前にも心があると。だったら、最後まで諦めるな」

拓也がそう言う。

「はやて、夜天の魔導書を助けるんだ」

輝二がはやてに告げた。

はやては頷くと目を閉じ、

「止まって」

静かに、しかし強く願った。

外では、今まで暴れ続けていた闇の書の動きが急に止まる。

はやては、続けて外とコンタクトを取ろうとした。

だが、はやての背後より、周りの闇とは違う一層不気味な闇が迫っていた。

「な、なんや!?」

はやては驚く。

『暴走した防御プログラムです!強引に管制システムを使おうとしたことに反応して、先に主を飲み込むつもりなんです!』

管制人格が焦った表情で告げる。

その闇がはやてを飲み込もうとした時、光と炎がその闇を押し返した。

光を放つ輝二が言った。

「俺の光は、どんな暗黒の中でも輝きを失わない希望の光」

続けて、炎を発している拓也が言った。

「俺の炎は、どんな絶望の前でも決して消えない勇気の炎」

2人は闇を抑え続ける。

「此処は俺達が食い止めておく。お前たちは先に外に出てろ」

「俺達は後から何とかするさ」

輝二と拓也はそう言った。

「で、でも、コーにぃ!」

「心配するな。ちゃんと後から俺たちも出るさ。約束する」

はやての心配そうな言葉に、答える輝二。

「ほんまやろうね!嘘ついたら泣くで!」

そう言うはやて。

「ああ。お前を泣かせたくはないから、必ず脱出するよ」

輝二は微笑んで言った。

その言葉に満足したのか、はやては外とのコンタクトを試みる。





急に動きを止めた闇の書を4人が怪訝に思っていると、

(外の方!えと・・・・管理局の方!こちら・・・・・そこの子の保護者。八神 はやてです)

闇の書内部から、はやての念話が届いた。

「「「「はやて(ちゃん)!?」」」」

4人が同時に驚く。

(え?イチにぃ!?なのはちゃん!?フェイトちゃんに信也君!?ほんまに!?)

「ああ!今闇の書と戦ってる!そっちから何とかならないか!?」

輝一がはやてに問いかける。

(ごめんイチにぃ!何とかその子止めてくれる!?魔導書本体からはコントロールを切り離したんやけど、その子が奔ってると管理者権限が使えへん!今そっちに出てるのは、自動行動の防御プログラムだけだから!)

「・・・・・・・つまり、何でも良いからブッ飛ばせってことか?」

輝一は、はやての言葉からそう推測する。

その時、ユーノとエリスから念話が入る。

(その人の、輝一さんの言ってることで合ってる!)

(目の前の子に、魔力ダメージを与えるの!全力全開!手加減無しで!)

2人の念話を聞くと、

「さっすがユーノ君とエリスちゃん!わっかりやすい!」

なのはがレイジングハートを構える。

「エクセリオンバスター!バレル展開!中距離砲撃モード!!」

『All right. Barrel shot.』

レイジングハートの石突側が伸び、6枚の光の翼が発生する。

切っ先に魔力が集中し、衝撃波が放たれる。

その衝撃波が闇の書に当たると、不可視のバインドが闇の書を拘束する。





「夜天の主の名において、汝に新たな名を送る。強く支える者、幸運の風、祝福のエール・・・・・・“リインフォース”」

闇の空間に光が満ちた。




「エクセリオンバスター!フォースバースト!!」

更に魔法陣が展開される。

切っ先に特大の魔力の塊が集中していく。

「ブレイク!シューーーーーーーート!!」

先程よりも凄まじい桜色の閃光が闇の書を飲み込んだ。




光の中、はやてに声が聞こえる。

『新名称、“リインフォース”認識。管理者権限が使用可能になります』

「うん」

リインフォースの声にはやては頷く。

『ですが、防御プログラムの暴走は止まりません。管理から切り離された膨大な力は、じき暴れだします』

「うん・・・・・まあ、何とかしようか。行こうか、リインフォース」

『はい、我が主』

目の前に現れた夜天の魔導書をはやては抱きしめた。

外では、はやてがいる白い光と、暴走した防御プログラムの黒い渦に分かれていた。

「管理者権限発動」

『防衛プログラムの進行に割り込みをかけました。数分程度ですが、暴走開始の遅延が出来ます』

「うん、それだけあったら十分や」

はやての周りに4つのリンカーコアが浮かび上がる。

「リンカーコア送還。守護騎士システム、破損修復」

小さかったリンカーコアが、元の大きさを取り戻す。

守護騎士達が消えたビルの屋上に4つの魔法陣が浮かび上がり、守護騎士が再び現れる。

「おいで・・・・・私の騎士達・・・・・」

はやてを包んでいた光が破裂するような光を放つ。

外にいた全員はあまりの光に目を庇う。

そして、再び目を開けたとき、はやてがいる光の周りに、守護騎士達が集まっていた。

「シグナム!ヴィータ!シャマル!ザフィーラ!」

思わず輝一が叫んだ。

「我ら、夜天の主の元に集いし騎士」

「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」

「この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」

「我らの主、夜天の王、八神 はやての名の元に」

シグナム、シャマル、ザフィーラ、ヴィータが言葉を紡いだ。

「リインフォース、私の杖と甲冑を」

『はい』

はやては黒き衣を纏う。

そして、目の前に現れた杖に手を伸ばし、掴んだ瞬間、はやてを包んでいた光は砕け散った。

そのお陰で、はやての姿が外からも確認できた。

「はやてちゃん!」

なのはが叫ぶ。

はやては、それに微笑みで答えた。

すると、はやては杖を掲げる。

「夜天の光よ!我が手に集え!祝福の風リインフォース、セーット!アップ!!」

はやての杖から黒と白の光が迸る。

黒の腰巻、白の上着と帽子。

髪は銀色になり、背中に漆黒の翼を生やした。

はやては、守護騎士たちに向き直る。

「はやて・・・・・」

ヴィータが申し訳なさそうに呟く。

しかし、はやては微笑んだ。

「すみません・・・・・」

「あの・・・・はやてちゃん・・・・・私たち・・・・・」

シグナムとシャマルも言いにくそうに口を開く。

「ええよ。みんな分かってる。リインフォースが教えてくれた。せやけど、細かい事は後や。今は・・・・・おかえり、みんな」

その言葉に耐え切れなくなったヴィータがはやてに泣きついた。

「うわぁあああああああん!!はやて!はやて!はやてぇ!」

そんなヴィータをはやては優しく抱きしめる。

そんなはやてたちに、輝一はゆっくりと近付いていった。

「はやて・・・・・・」

「イチにぃ」

「すまない、はやて」

輝一は頭を下げる。

「ええよイチにぃ。イチにぃ達は私を助けようとしてくれただけや。謝る事はなんも無い」

「それでも、はやてを騙していたことに変わりは無い。はやてを救うためだとしても、沢山の生物達に迷惑をかけた」

「真面目やなイチにぃは」

その言葉に、輝一は苦笑する。

輝一は守護騎士達を見渡した。

「みんなも、無事でよかった」

「お前こそな。暴走した防御プログラムを相手に良く戦った」

シグナムがそう言う。

「ありがとう、シグナム」

輝一も微笑んで答えた。

「まあ、イチにぃの場合、シグナムに会えた事が一番嬉しいんとちゃうかな?シグナムもそんな風に言わんでも素直に無事でよかったと言えばええのに」

はやてが爆弾発言をかました。

「「なっ!?」」

シグナムの顔が真っ赤に染まる。

輝一はバリアジャケットで顔は見えないが、その顔は真っ赤だろう。

ふと輝一とシグナムの視線が合う。

「あ・・・・いや・・・・・」

「まあ・・・・なんだ・・・・・」

お互いが言葉を続けることができない。

と、その時、

『Form Delet』

レオンの言葉と共に、輝一のバリアジャケットが消滅する。

「えっ?」

当然、属性特化型の輝一は飛行魔法など使えないのでそのまま重力に引かれ、落ちる。

「コウイチ!」

シグナムが叫んで輝一の手を掴んだ。

「あ、ありがとう、シグナム。助かったよ」

「一体何が起きたのだ?」

「レオン?」

輝一はレオンに尋ねる。

『ダスクフォームとベルグフォームが削除され、新たな形態が2つ追加されました』

輝一はその言葉に納得する。

「そうか・・・・すまないシグナム。足場を作ってくれないか?俺はもう飛べないみたいだ」

「分かった」

シグナムは足元に魔法陣を発生させる。

輝一はそこに着地した。

「そういえばシグナム、さっきキムラ君のこと名前で呼ばなかった?」

シャマルが尋ねる。

その言葉に、シグナムの顔が赤くなった。

「い、今は名前の呼び方など気にしている場合ではないだろう!今はそれどころではないのだ!」

「あ、ごまかした」

そうやっていると、なのはとフェイト、信也が近付いてくる。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、信也君もごめんな。うちの子たちが色々迷惑かけてもうて」

「ううん」

「平気。それよりはやて」

「何?フェイトちゃん」

「タクヤは、どうなっているか分からない?」

「それなら心配あらへん。後でコーにぃと一緒に出てくるって言うとった」

「まだ・・・・・あの中にいるの?」

フェイトは、防御プログラムの方を見て心配そうに尋ねた。

「うん・・・・だけど大丈夫や。コーにぃは私と約束したからな。拓也さんも出てくる気満々やったから」

「そう・・・・・」

そう言うが、フェイトの顔から心配そうな雰囲気は抜けない。

すると、輝一が口を開いた。

「聞くけど、君たちの知ってる拓也は、こんな事で死ぬような奴か?」

そう尋ねる。

その言葉で全員が考える。

「・・・・まず死にそうに無いねぇ」

アルフが言った。

「・・・・兄ちゃんの無茶はいつものことだし・・・・・」

信也が言う。

「挙げ句の果てに虚数空間に落ちても戻ってきたからね」

ユーノが思い出したように言った。

「そういう事だ。心配するなとは言わないけど、拓也を信じろ」

「うん!」

フェイトは元気良く返事をした。

その間、防御プログラムは不自然なぐらいに沈黙を保っていた。







次回予告


暴走する防御プログラム。

それを食い止めるため、力を結集する者たち。

今、闇の書との最終決戦が始まる。

次回!リリカルフロンティアA`S

第十二話 夜の終わり。旅の終わり

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第十一話完成。

ちょっと後半が無理やり言葉を繋げた感がある。

後最後も無理やり話を切ったのがモロ分かり。

まあそれは置いといて、拓也の夢はあんな感じで如何でしょう?

一応頑張って考えました。

やはりオリジナルの事を考えようとすると、明らかにレベルが落ちてる。

もっと精進です。

あと、色々と設定追加してみましたけど、どんなモンですかね?

それと闇の書が強くなってますな。

とりあえず、次回はフルボッコシーンですけど、ちっとは苦労してもらうつもり。

ホントにちっとですけど。

では次も頑張ります。





[8056] 第十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/12 22:57
リインフォースに名を与え、真の夜天の主となったはやて。

今、暴走した防御プログラムとの最終決戦が始まる。


第十二話 夜の終わり。旅の終わり


皆が集まっているところに、クロノが到着する。

「すまないな・・・・水を注してしまうんだが、時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間が無いので簡潔に説明する。あそこの黒い淀み・・・・・闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始する。僕らはそれを、何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在2つある。1つ、きわめて強力な凍結魔法で停止させる」

クロノが、デュランダルを見せながら言った。

「2つ、衛星軌道上の艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。これ以外に、他にいい手は無いか?闇の書の主と、その守護騎士の皆に聞きたい」

クロノは皆を見回す。

シャマルがおずおずと手を上げた。

「え~っと、最初のは多分難しいと思います。主のいない防衛プログラムは、魔力の塊みたいなモノですから」

「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん」

シグナムもそう告げる。

「アルカンシェルも絶対駄目!こんな所でアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」

両手で×の字を作りながらヴィータが叫んだ。

「そんなに凄いの?」

なのはがエリスに尋ねる。

「発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を反応消滅させる魔導砲・・・・・って言えばわかるかな?」

エリスがそう説明した。

「はやての家どころか、海鳴市が丸々吹っ飛ぶな・・・・・」

輝一が呟く。

「あのっ!私もそれ反対!」

「僕も反対!」

「同じく!絶対反対!それにまだ、タクヤ達が中にいるし!」

なのは、信也、フェイトが反対意見を述べる。

「僕も艦長も使いたくはないよ。でも、アレの暴走が本格的に始まったら、被害はそれより、遥かに大きくなる」

クロノはそう言う。

「暴走が始まると、触れたものを侵食して、無限に広がっていくから」

ユーノが特性を説明する。

『はーい!皆!暴走臨界点まで残り15分切ったよ!』

エイミィがそう報告してくる。

「何かないか?」

クロノが、守護騎士たちに尋ねた。

「すまない。あまり役に立てそうも無い」

「暴走に立ち合った経験は、我らにも殆ど無いのだ」

シグナムが謝り、ザフィーラが説明する。

「でも・・・・何とか止めないと・・・・はやてちゃんのお家が無くなっちゃうの、嫌ですし」

「いや・・・・・そういうレベルの話じゃないんだがな・・・・」

シャマルのボケに思わず声を漏らすクロノ。

「そうだ!コーイチのゾーンデリーターなら!」

ヴィータが思いついたようにそう声を上げるが、

「すまない、それは無理だ。ベルグフォームが消滅した今、ゾーンデリーターは使えないし、もし使えたとしても、あれだけの範囲を消滅させるには魔力が圧倒的に足りない」

輝一は謝りながらそう説明する。

「そっか・・・・・」

ヴィータはがっかりしたように俯く。

「戦闘地点をもっと沖合いに出来れば・・・・」

ユーノがそう言うが、

「海でも空間湾曲の被害は出る」

シグナムにばっさりと切られた。

「う~ん」

皆で悩み続けているが、

「あ~~~~~~!!もう、なんだかゴチャゴチャ鬱陶しいな!皆でズバッとブッ飛ばしちゃうわけにはいかないの!?」

元々考える事が苦手なアルフは、我慢できなくなりそう叫んだ。

「ア、 アルフ・・・・・・これはそんなに単純な話じゃ・・・・」

クロノがアルフを宥めようとした。

「ズバッと・・・・ブッ飛ばす・・・・・?」

「ここで撃ったら被害が大きいから撃てへん・・・・・」

「でも・・・・・此処じゃなければ・・・・・・・」

「そう・・・・・例えば・・・・・・・・」

なのは、はやて、フェイト、信也が考えを巡らす。

そして、

「「「「あ!」」」」

同時に同じ考えに行き着いたのか顔を見合わせた。

「クロノ君!アルカンシェルって何処でも撃てるの?」

なのはが尋ねる。

「何処でもって・・・・・例えば?」

クロノが聞き返す。

「今、アースラのいる場所」

「軌道上、宇宙空間で!」

フェイトとはやてがそう答えた。

『管理局のテクノロジー・・・・・舐めてもらっちゃ困りますなぁ・・・・・・撃てますよぉ・・・宇宙だろうが、何処だろうが!』

エイミィがサムズアップしながら叫ぶ。

「おい!ちょっと待て君ら!・・・・まさか」

クロノが言いたいことに気付いたのか驚いた声を上げる。

「「「「うん」」」」

4人は揃って頷いた。





「なんとまあ・・・・相変わらず物凄いというか・・・・・」

アースラのブリッジで、リンディが驚き半分、呆れ半分の声を漏らす。

「計算上では、実現可能ってのがまた怖いですね」

エイミィがデータを整理しながらそう言う。

「クロノ君!こちらの準備はオッケー!暴走臨界点まで、あと10分!」

クロノにそう報告した。



「実に個人の能力頼りで、ギャンブル性の高いプランだが、まあ・・・・・やってみる価値はある」

クロノがそう切り出す。

「防衛プログラムのバリアは、魔力と物理の複合4層式。まずはそれを破る」

「バリアを破ったら、私たちの一斉砲撃でコアを露出」

「そうしたら、ユーノ君たちの強制転移魔法で、アースラの前に転送!」

「後は、アルカンシェルで蒸発・・・・ってね」

はやて、フェイト、なのは、信也が続けた。

全員が、攻撃準備を始める。

「提督、見えますか?」

クロノはグレアムに通信を繋ぐ。

『ああ、良く見えるよ』

「闇の書は、呪われた魔導書でした。その呪いは、幾つもの人生を喰らい、それに関わった多くの人の人生を狂わせて来ました。アレのお陰で、僕も母さんも・・・・・他の多くの被害者遺族も、こんなはずじゃなかった人生を進まなきゃならなくなった。それはきっと、あなたも・・・・・リーゼ達も・・・・・無くしてしまった過去は、変える事が出来ない」

クロノはデュランダルをセットアップする。

「だから、今を戦って、未来を変えます!」

デュランダルをその手に掴んだ。





『暴走開始まで、あと2分!』

エイミィが作戦開始までの時間を伝える。

皆は、黒い淀みに意識を集中させていたが、はやてがなのは、フェイト、信也、輝一がボロボロなのに気付いた。

「あ・・・・イチにぃ、なのはちゃん、フェイトちゃん、信也君」

4人ははやての方を向く。

「シャマル」

はやてがシャマルにそう言うと、

「はい、4人の治療ですね」

シャマルは微笑んで言った。

「クラールヴィント、本領発揮よ」

『Ja.』

「静かなる風よ。癒しの恵みを運んで」

シャマルが言葉を紡ぐと、緑の光が混じった風が4人を包む。

すると、怪我やボロボロだったバリアジャケットが、一瞬にして治った。

「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です!」

そう言って微笑む。

「すごいです」

「ありがとうございます。シャマルさん」




暫くすると、黒い淀みの周りに黒い光の柱が立ち始める。

「始まる」

クロノが呟いた。

「夜天の魔導書・・・・・呪われた闇の書と呼ばせたプログラム。闇の書の・・・・・闇」

はやてが呟くと、黒い淀みの中から、巨大な獣とも、巨大な虫とも取れるような怪物が現れた。

「チェーンバインド!」

「「ストラグルバインド!」」

アルフ、ユーノ、エリスが闇の書の闇の周りの触手を締め上げ切断する。

「縛れ!鋼の軛!!」

ザフィーラの発生させた魔法陣から光が伸び、触手を薙ぎ払う。

続けて、なのはとヴィータが前に出る。

「ちゃんと合わせろよ!高町 なのは!」

「ヴィータちゃんもね!」

ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶる。

「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン!」

グラーフアイゼンがカートリッジをロードする。

『Gigantform.』

グラーフアイゼンが巨大なハンマーになる。

「轟天爆砕!」

その言葉と共にハンマーを振り回すと、それが更に巨大化する。

「ギガント!シュラーーーーーク!!」

凄まじい大きさになったハンマーを振り下ろした。

その一撃はバリアの一枚を見事に砕く。

「高町 なのはとレイジングハート・エクセリオン!行きます!」

なのははレイジングハートを構える。

『Load cartridge.』

レイジングハートがカートリッジを4発ロードする。

「エクセリオンバスターーーー!!」

その時、闇の書の闇から触手が迫るが、

『Barrel shot.』

レイジングハートから放たれた衝撃波が吹き飛ばす。

「ブレイク・・・・・シューーーーーート!!」

桜色の砲撃がバリアをもう一枚吹き飛ばした。

「次!シグナムとテスタロッサちゃん!」

シャマルの合図で、シグナムが剣を抜く。

「剣の騎士、シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。刃と連結刃に続く、もうひとつの姿」

シグナムがレヴァンティンの柄の先に鞘を合わせると、剣と鞘が一体化。

弓の姿になる。

『Bogenform.』

シグナムは矢を具現し、引き絞る。

「駆けよ!隼!」

『Sturmfalken.』

魔力光で輝く矢が放たれる。

その矢がバリアに当たると爆発。

バリアを一枚破壊した。

「フェイト・テスタロッサ、バルデッシュ・ザンバー、行きます!」

バルデッシュがカートリッジを3発ロード。

フェイトが大剣を振り回すと衝撃波が発生し、闇の書の闇の周りに再び出てきた触手を吹き飛ばす。

そして、フェイトがバルデッシュを掲げると、その刀身が稲妻を帯びる。

「撃ちぬけ、雷神!」

『Jet Zamber.』

刀身が伸び、それでフェイトは斬りつける。

その一撃は最後のバリアを破壊し、闇の書の闇の一部を切り裂いた。

「信也君!キムラ君!畳み掛けて!」

シャマルが信也と輝一に合図を出す。

「神原 信也とブレイブハート・アルフォース!行きます!」

ブレイブハートがカートリッジを4発ロード。

右手の魔力刃が輝き、信也はVの字を描く。

「閃光・一撃!」

『Shining V Force』

放たれる青き閃光。

闇の書の闇の側面に辺り、6本ある足のうち3本を吹き飛ばす。

闇の書の闇はバランスを崩し倒れこんだ。

「闇の主、木村 輝一と闇の獅子レオン。今こそ真の闇を見せてやる!レーべフォーム、セットアップ!」

『Löwe form. Set up.』

輝一を闇が包む。

その闇の中から現れたのは漆黒の鎧を纏った輝一。

だが、ダスクフォームのような醜悪な姿ではなく、所々に獅子のレリーフがあり、闇の怖さよりも、頼もしさを感じる姿だ。

輝一は闇の書の闇を見下ろす。

「乱されし邪悪な心よ、闇に埋もれて眠るがいい!」

輝一は、胴についている獅子の口に闇の魔力を集中させていく。

「おおおおおおおっ!エントリヒ・メテオール!!」

放たれる闇の魔力。

闇は触れたところを消滅させる。

輝一の一撃は、闇の書の闇を5分の1ほど消し飛ばした。

闇の書の闇は苦しそうな声を上げる。

その時、触手が砲撃を放とうとした。

「盾の守護獣ザフィーラ!砲撃など撃たせん!!」

ザフィーラが放った鋼の軛が砲撃を放とうとした触手を串刺しにしていく。

「はやてちゃん!」

シャマルがはやてに合図を送る。

はやては夜天の魔導書を広げ、詠唱を始める。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」

光の槍が闇の書の闇に突き刺さり、石化させていく。

完全に石化すると、ガラガラと崩れていく。

しかし、その下から姿を醜悪にさせながらも再生していく。

『やっぱり、並みの攻撃じゃ通じない。ダメージを入れた傍から再生されちゃう!』

「だが、攻撃は通っている。プラン変更は無しだ!」

クロノはデュランダルを構える。

「行くぞ、デュランダル!」

『OK, Boss.』

クロノは詠唱を開始する。

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」

すると、海諸共闇の書の闇が凍りついていく。

「凍てつけ!」

『Eternal Coffin.』

闇の書の闇は完全に凍りつき、動きを封じられる。

「行くよ!フェイトちゃん!はやてちゃん!」

「うん」

「うん」

なのはの言葉にフェイトとはやては頷いた。

『Starlight Breaker.』

なのはは、魔力を集めだす。

「全力全開!スターライト・・・・・・」

「雷光一閃!プラズマザンバー・・・・・」

フェイトが振りかぶったバルデッシュ・ザンバーに稲妻が落ちる。

はやては杖を掲げ、魔力を集中させる。

そして、闇の書の闇を見下ろすと、

「・・・・・ごめんな・・・・・おやすみな・・・・・・」

悲しそうな表情でそう呟くと、覚悟を決めた顔になり、

「響け!終焉の笛!ラグナロク!」

「「「ブレイカーーーーーーーーッ!!!」」」

3発もの特大の魔力砲撃。

誰もが、これで決まったと思った。

だが、突如3つの砲撃の着弾点から巨大な黒い柱が立ち上る。

「何だ!?」

クロノが叫んだ。

予想外の出来事に、皆が驚愕している。

『これは!?』

リインフォースが何かに気付いたような声を上げる。

「リインフォース!一体何がおこっとるんや!?」

はやてが叫びながら尋ねる。

『闇の書の防御プログラムが、我々に対抗するために、絶望を形にしようとしています!』

「絶望を・・・・形に?」

『闇の書が今まで蓄えた知識、情報から、一番強力な姿を取ろうとしているのです!』

「なんやて!?」

はやてはリインフォースの言葉に、驚愕の声を漏らす。

やがて、黒い光の柱が収束していく。

そして、その中から現れたのは暗黒球体を抱えた、巨大な竜の姿。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

その竜は雄叫びを上げる。

「何・・・・あれ・・・・・・私・・・・怖い・・・・・・」

なのはが怯えた表情で呟く。

幾多の戦いを潜り抜けた守護騎士たちも、その竜の威圧感に身体を震わせていた。

「何なのだ・・・・・奴は・・・・・」

シグナムが呆然とした声で呟いた。

「リインフォース!あれはなんや!」

はやてがリインフォースに問いかける。

『わ、わかりません・・・・・私の知識には・・・・あんな竜は存在しません!』

「ど、どういうことや!?闇の書の闇は、今までの情報と知識からあの姿をとったんやろ?なら、リインフォースが知らんなんてこと・・・・・・」

『1つだけ・・・・・例外があります・・・・・』

「例外?」

『はい。我々を助けるために闇の書の内部に残った2人・・・・・』

「コーにぃと拓也さんか!?」

『そうです。あの2人の記憶にあるものなら、私が知らず今の闇の書の闇が知っていてもおかしくありません』

「う、嘘やろ?もしそうやったとしても、何でこないな怪物をコーにぃたちが知ってるんや!?コーにぃたちが魔法のことを知ったのは、ここ半年ぐらいの話やで」

『それは私も承知していますが、それ以外に理由がないのです』

その時、竜の口から、赤紫色の炎が漏れ出す。

「拙い!全員退避しろ!!」

それに気付いた輝一が叫んだ。

呆然としていた皆は、輝一の声で我に返り、慌ててその場を離脱する。

吐き出される赤紫色の炎。

その炎は、先程クロノのエターナルコフィンで凍り付いていた海を完全に融解させ、更に一気に蒸発させて水蒸気爆発を起こす。

辺りに水飛沫が降り注ぐ。

「な、なんて熱量の炎だ・・・・あんなもの喰らったらひとたまりもないぞ」

クロノが呆然とした表情で呟く。

クロノを始めとして、殆どがその威力に絶句している。

しかし、ただ1人だけ違っていた。

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

その竜の背中に回りこみ、槍を突き立てた輝一の姿。

「コウイチ!」

シグナムが叫ぶ。

槍を突き立てた一部が消滅する。

しかし、すぐに再生が始まった。

だが、

「エントリヒ・メテオール!!」

闇の砲撃を放つ。

また更に一部が消滅する。

輝一は元いた魔法陣に着地すると、

「何を呆けているんだ!!」

全員に喝を飛ばした。

「相手が強大な力を持っていたら諦めるのか!?そこでやめてしまうのか!?」

輝一は叫び続ける。

「相手が何であれ、この街を救うためには、俺達は自力で奴のコアを露出させなければいけない!そう!やる事は何も変わらない!」

輝一のその言葉に、全員がハッとなった。

「そうだよ・・・・・・そうなんだ!」

信也が叫ぶ。

「この街を救うためには、戦うしかないんだ!」

信也は構えなおした。

皆は、次々に気を取り直す。

「そうだ・・・・僕達のやる事は、何も変わらない!皆!作戦続行だ!」

クロノが叫んで指揮を取り始めた。






拓也と輝二は闇の中を漂っていた。

「・・・・・うっ・・・・・」

今まで気絶していたのか首を振って意識を覚醒させる。

「一体、どうなったんだ?」

「はやてが外に出たと思ったら、物凄い衝撃が来て吹き飛ばされたからな」

輝二が割と落ち着いて答える。

因みに輝二が言っている衝撃とは、なのはのエクセリオンバスターである。

まあ、本人たちは知る由も無いが。

「時間はどのくらい経った?」

「さあな、俺もさっき気がついたところだ。正確な時間はわからない」

拓也の問いに輝二が答えた。

「そっか。なら、こんな所でのんびりしてるわけには行かないな」

「ああ」

拓也の言葉に輝二が頷いた。

「サラマンダー、切り札を使うぞ」

『Yes. My lord.』

「フェンリル、俺たちもだ」

『Yes,My king』

拓也が炎に、輝二が光に包まれる。

そして・・・・・・

『KaiserGrey form』

『MagnaGaruru form』

闇の空間に炎と光が満ちた。





外では、激しい戦いが繰り広げられていた。

しかし、状況は若干不利。

皆は、一撃喰らうと終わりという緊張感により、体力の消費が著しい。

それによって、攻撃する頻度が少なくなってしまうため、相手の再生速度を超える攻撃ができない。

それに、少しダメージを与えても、すぐに再生してしまう。

その時、竜が再び炎を吐き出そうとする仕草をしたとき、突如として動きが止まる。

そして、苦しむように暴れ狂う。

「何だ?」

クロノが怪訝に思う。

すると、エイミィから通信が入った。

『クロノ君、大変だよ!今調べてみたんだけど、今闇の書の闇から、2つのSSランクオーバーの魔力が分離しようとしてる!注意して!』

「なんだって!?」

クロノが竜に視線を戻すと、竜が抱えていた暗黒球体に罅が入る。

全員に緊張が走る。

そして、次の瞬間、その暗黒球体が砕け、

「あっ・・・・・」

「あれはっ・・・・・」

思わずフェイトとはやてが声を漏らした。

暗黒球体の中から飛び出してきたのは炎の龍と光の狼。

その2匹は竜の身体を蹂躙しつつ一旦空へ昇り、皆のところへ急降下してきた。

龍を形作っていた炎と、狼を形作っていた光が収まると、それぞれから新フォームを纏った拓也と輝二が姿を見せた。

拓也は焔の鎧を身に纏い、身の丈程もある大剣をその手に持っている。

輝二は青い鎧を纏い、砲身や銃身を装備した重武装である。

「タクヤッ!」

「コーにぃ!」

フェイトとはやては思わず近寄った。

「待たせたな」

拓也がフェイトに微笑む。

フェイトは瞳に涙を滲ませている。

「お、遅いよ!」

フェイトは目を擦りながら言った。

「それで、ちょっと聞きたいんだが」

輝二が口を開き、竜を指差しながら言った。

「何で、アレがルーチェモン サタンモードの姿をしてるんだ?」

「えっ?やっぱりコーにぃ達、アレが何か知ってるん?」

「まあな。で、何であの姿なんだ?」

「リインフォースが言うには、防衛プログラムが今までの情報と知識から一番強いと判断したものに変化したみたいなんや。けど、リインフォースはあれは見たこと無いって言うとるから、コーにぃ達の記憶から再現したんやないかって言っとる」

「なるほど、分かった」

輝二が頷く。

「俺達の記憶から再現した・・・・・か。それにしちゃ強さが全然違うけどな」

拓也の言葉に、

「それはそうだろう。奴は今まで蒐集した魔力を使ってるんだ。オリジナルより強くなっても不思議は・・・・・」

「あ~、違うぞクロノ。逆だ逆」

クロノが答えたが、すぐに拓也が否定した。

「俺が言いたいのは、本物より全然弱いってことだよ」

「何っ!?」

その言葉に驚くクロノ。

拓也は、手に持っていた大剣、龍魂剣をルーチェモン サタンモードもどきに突きつける。

『Dragon Soul Sword, Shooting mode』

龍魂剣が展開する。

そして、

『Flaming Dragon Shot』

「炎龍撃!!」

龍魂剣の刀身が凄まじい熱量を含むエネルギー体となり、一気に撃ち出された。

その一撃は、竜の首元に直撃、頭を含めた約3分の1を吹き飛ばした。

「本物のルーチェモンは、そんなに脆くないぜ」

拓也は言い放つ。

その竜は、吹き飛ばされた首を徐々に再生しようとしていた。

だが、その前に輝二が飛び立つ。

「それに!ルーチェモンの再生速度も、そんなに遅くは無い!!」

『Machine Gun Destroy』

「マシンガン!デストロイ!!」

ウイングに付いていたミサイル。

左腕の大口径砲。

右腕の大砲。

武装を乱射し、竜の再生速度を超えるスピードで粉砕していく。

そして最後に、両肩に装備されていた砲身から、強力なビームを放ち、竜を海面に叩き落す。

「これなら、行ける!」

輝一はこのチャンスを逃すまいと、その勢いに便乗する。

『Form change.』

輝一が闇に包まれる。

『KaiserLeoform』

カイザーレオモンを模したバリアジャケットになった。

「シュバルツ・ドンナー!!」

輝一は手から圧縮された魔力弾を放つ。

「まだまだ!!」

輝一は何発も連射した。

その身を削られていく闇の書の闇。

「うおおおおおっ!!」

輝一の体中から闇が溢れ出し、獅子を形作った。

「シュバルツ・ケーニッヒ!!」

そして突撃する。

また大部分を削り取った。

輝二は、バリアジャケットをパージし、身軽になり、2本のレーザーソードをその手に持つ。

『Starlight Velocity』

「スターライト!ベロシティ!!」

輝二の体が光に包まれ、超スピードで闇の書の闇に突撃した。

海面諸共真っ二つになる闇の書の闇。

拓也は、割れて露になった海底に着地し、龍魂剣を地面に突き刺した。

『Nine Headed Dragon Formation』

「九頭竜陣!!」

剣を突き刺した地面の罅が8方向に広がる。

その1つ1つから炎の龍が生み出され、最後に拓也の足元から一際大きな炎の龍が現れ、それを拓也は纏う。

合計9匹の炎の龍が、闇の書の闇を飲み込まんと襲い掛かり、焼き尽くす。

その時、シャマルがコアを見つける。

「本体コア、露出。捕まえ・・・・たっ!!」

コアの捕獲に成功する。

「長距離転送!」

「目標!軌道上!」

「「「「転送!!」」」」

シャマル、ユーノ、エリス、アルフの力で、コアをアースラの目の前まで転送する。




それは、アースラでも確認されていた。

「コアの転送。来ます!転送されながら、生体部品を修復中!凄い速さです!!」

「アルカンシェル!バレル展開!!」

エイミィが操作し、アルカンシェルの発射態勢に入る。

「ファイアリングロックシステム、オープン!」

リンディがシステムを起動させる。

「命中確認後、反応前に安全距離まで退避します!準備を!」

「「「了解!」」」

コアの転送が完了する。

リンディは引き金であるキーを鍵穴に差し込む。

「アルカンシェル!発射!!」

その言葉と共にキーを回した。

アルカンシェルは発射され、見事コアに命中。

跡形もなく、完全に消滅させた。

「効果空間内の物体、完全消滅。再生反応・・・・ありません!」

「うん。準警戒態勢を維持。もう少し、反応空域を観測します」

「了解!」

その言葉と共に、エイミィは身体から力を抜いた。




『というわけで、現場の皆、お疲れ様でした!状況、無事に終了しました!』

エイミィから報告が入る。

『この後、まだ残骸の回収とか、市街地の修復とか、色々あるんだけど、皆はアースラに戻って、一休みしてって』

皆は息をつく。

「ふう・・・・一時はどうなる事かと思ったけど、拓也達のお陰で助かったよ」

クロノはそう言って拓也に視線を向ける。

拓也の傍には、すでにフェイトが行っていた。

「タクヤ、お疲れ様」

「ああ、フェイトもな・・・・・で、早速悪いんだけど・・・・・」

「え?」

「ごめん。もう限界」

拓也は気を失い、バリアジャケットも解除されて落下する。

「タクヤ!?」

慌ててフェイトは受け止める。

見ると、輝二も同じように気を失っていた。

おまけにはやてまで倒れる。

一行は、急いでアースラに運び込んだ。





次回予告


防衛プログラムの破壊は成功した。

だが、リインフォースは新たな防衛プログラムを生み出してしまう可能性が高かった。

はやての為に、リインフォースは自らを消滅させる事を決意する。

次回!リリカルフロンティアA`S

第十三話 スタンバイ・レディ?

今、魔法の力が進化する。





あとがき

第十二話完成。

一日で書き上げたけど、ストーリーはともかく表現が上手くいかなかったな。

結構ぐだぐだしてると思います。

とりあえず原作のまま完全にフルボッコでも良かったんですけど、それだとあんまりカイゼルとマグナの形態が目立たないかな~と思ったので、ルーチェモンサタンモードもどきを出しました。

強さとしては多分オリジナルの千分の一以下だと思います。

オリジナルのルーチェモンは軽く星を壊せる力を持ってますんで、千分の一でもまだ足りないかも・・・・・

とりあえず、次回はアニメでは最終回ですが・・・・・・・?

リインフォースはどうしようかな~?

いや、もう決まってますけどね。

では、次回も頑張ります。






[8056] 第十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/12 20:27
闇の書との決着はついた。

だが、拓也、輝二、はやての3人は倒れてしまう。


第十三話 スタンバイ・レディ?


アースラに運び込まれた拓也達は、すぐに検査を受けた。

その結果は、

「魔力切れ?」

フェイトが尋ねる。

「ああ」

クロノが頷いた。

「前々から不思議に思っていたことだけど、拓也の魔力量のランクはAA。なのはやフェイトたちよりも少ないんだ。それなのに、彼らはAAA+。今回にいたってはSSランクオーバーの魔力を記録している」

「それって、ただ力を抑えてただけじゃないんですか?」

なのはが質問する。

「いや、検査でも明らかになっていることだけど、拓也の魔力ランクがAAという事に間違いはなかった。だから、アグニフォームやヴリトラフォームが拓也にとっての標準と言っていい」

「じゃあどうして?」

信也が首を傾げる。

「これは僕の仮説だが、リンカーコアが魔力を体内に蓄積する事は、もう知っていると思う」

フェイト、なのは、信也は頷く。

「だが、問題はその放出量だ。僕達普通の魔導師は、一度に放てる魔力の限界が決まっている。その限界は、リンカーコアの魔力生成量に比例するから、よほどの短時間に魔力の限界量を放出し続けない限り、魔力切れを起こす事はまず無い。しかし、拓也達属性特化型の魔導師は、魔力の放出量を意図的に限界を超えて放出できるんじゃないかと考えている」

「如何いう事?」

良く分からなかったフェイトが尋ねる。

「う~ん・・・・・・蛇口がついたタンクに、一定量の水が供給され続けているところを想像してくれ。水が魔力。タンクが魔力の蓄積量の限界だ」

クロノの説明に、皆はクロノの言われたとおりに想像する。

「普通の魔導師は、タンクの蛇口の限界量と、供給される水の量がほぼ同じ。これならタンクが空になることはまず無い」

その言葉を理解して皆は頷く。

「だが、属性特化型の魔導師は、タンクの蛇口が大きいんだ」

「あっ!」

そこまで言われて、なのははクロノの言いたい事に気付き、声を上げた。

「そう、拓也のアグニフォームやヴリトラフォームは、タンクの蛇口を少しだけ開けて、水の供給量とほぼ同じ水の量を放出している。アルダフォームは蛇口を半分ぐらい開けて、水の供給量を超える量を放出しているが、タンクの中にある水に余裕があるので暫くは持った」

「けど・・・・・さっきの形態はそのタンクの蛇口を全開にした?」

信也が確かめるように聞いた。

「その通り、水の供給量を遥かに超えて放出すれば、あっという間にタンクは空になる」

クロノがそう言って、説明を終えた。

「で、でも、身体に異常は無いんだよね?」

フェイトが少し不安そうに聞いた。

「ああ、それは心配ない。ただ魔力を使いきっただけだから少し休めば、じきに目を覚ます」

「そう。良かった」

クロノの言葉にフェイトは安心する。

「八神 はやての方は、初めて魔力を扱ったことによる反動だ。こちらも心配は要らない。じきに目を覚ますだろう」

「よかった~」

はやてが無事という報告に、なのはは笑顔になる。

「だが、夜天の魔導書のことなんだが・・・・・・・」

クロノは言いにくそうに言葉を紡いだ。




「夜天の書の破壊!?」

フェイトが驚いた声を上げる。

「どうして!?防御プログラムは、もう破壊したはずじゃ!?」

なのはも抗議の声を上げた。

「闇の書・・・・・夜天の書の管制プログラムからの進言だ」

「管制プログラムって、僕達が戦ってた?」

信也が尋ねる。

「ああ」

「防御プログラムは無事破壊できたけど、夜天の書本体は、すぐにプログラムを再生しちゃうんだって。今度ははやてちゃんも侵食される可能性が高い。夜天の書が存在する限り、どうしても危険は消えないんだ」

「だから夜天の書は、防御プログラムが消えている今のうちに、自らを破壊するよう申し出た」

クロノとユーノがそう説明する。

「そんな・・・・・」

「でも、それじゃシグナムたちも・・・・」

「いや」

フェイトの言葉の途中で、シグナム達が食堂に入ってくる。

「私達は残る」

「シグナム・・・・」

「防御プログラムと共に、我々守護騎士プログラムも、本体から解放したそうだ」

狼形態のザフィーラがそう言う。

「それで・・・・リインフォースからなのはちゃんたちにお願いがあるって・・・・・」

シャマルがそう言った。

「お願い?」




その後、目を覚ました拓也は、フェイトから話を聞いていた。

「リインフォースの破壊?」

「うん、このままじゃ、防御プログラムがいつか再生しちゃうからって・・・・」

「そう・・・・なのか・・・・・」

「うん・・・悲しいけど・・・・・他に方法がないから・・・・・・」

「なんとか・・・・したいな・・・・・・」

「それはそうだけど・・・・・方法を探してる時間も無いって・・・・・・」

「そうか・・・・・・リインフォースを破壊するのはいつだ?」

「明日の朝・・・・・海鳴の丘の上で・・・・・」

「わかった・・・・」

頷くと、なにやら考え込む仕草をした。




翌朝。

なのは達が海鳴の丘の上に向かうと、そこにリインフォースはいた。

「ああ・・・・・来てくれたか・・・・・」

「リインフォース・・・・さん・・・・・」

なのはが呟く。

「そう呼んで・・・・くれるのだな・・・・」

「うん・・・・・」

「あなたを空に帰すの・・・・・私達でいいの?」

フェイトが尋ねた。

「お前たちだから・・・・頼みたい・・・・・お前たちのお陰で、私は主はやての言葉を聞くことが出来た。主はやても食い殺さずに済み・・・・・守護騎士たちも生かすことが出来た。感謝している・・・・・・だから最後は、お前たちに私を閉じて欲しい」

「はやてちゃんと、お別れしなくて良いんですか?」

なのはがそう聞く。

「主はやてを・・・・悲しませたくないんだ」

「リインフォース・・・・・」

「でもそんなの、なんだか悲しいよ」

フェイトが呟き、なのはがそう言う。

「お前たちにもいずれ分かる。海より深く愛し・・・・・その幸福を守りたいと思える者と出会えればな・・・・・」

リインフォースのその言葉を、フェイトは若干だが理解する。

その時、守護騎士たちと、輝二、輝一、信也が丘に歩いてくる。

だが、何故か拓也はいなかった。

「そろそろ始めようか・・・・・・夜天の魔導書の、終焉だ・・・・・」

リインフォースは、空を見上げながらそう呟いた。




リインフォースと守護騎士は大きなベルカ式魔法陣を展開し、そのリインフォースを挟んでなのはとフェイトがミッド式魔法陣を展開している。

『Ready to set.』

『Standby.』

レイジングハートとバルデッシュが準備完了を告げる。

「ああ・・・・・短い間だったが、お前たちにも世話になった」

『気にせずに』

『良い旅を』

リインフォース、レイジングハート、バルデッシュが言葉を交わす。

その時、

「リインフォース!!皆ぁ!!」

はやての声が響く。

見ると、車椅子を必死に操り、こちらに向かってくるはやての姿。

「はやてちゃん」

「はやて!」

ヴィータは思わず駆け寄ろうとしたが、

「動くな!」

リインフォースに止められる。

「動かないでくれ、儀式が止まる」

そう言うリインフォース。

「あかん!やめて!!リインフォース!やめて!!」

はやては必死に叫ぶ。

「破壊なんかせんでええ!!私が!ちゃんと抑える!!大丈夫や!こんなん、せんでええ!!」

はやては泣きそうな声でそう叫ぶ。

「・・・・主はやて、良いのですよ」

「いい事ない!良い事なんかなんもあらへん!!」

「随分と長い時を生きてきましたが・・・・・最後の最後に、私はあなたに綺麗な名前と心をいただけました。騎士たちもあなたの傍にいます。何も心配はありません」

「心配とかそんな・・・・」

「ですから、私は笑って逝けます」

「話聞かん子は嫌いや!マスターは私や!話聞いて!!私がきっと何とかする!暴走なんかさせへんて、約束したやんか!!」

「その約束は・・・・もう立派に守っていただけました」

「リインフォース!!」

「主の危険を祓い、主を守るのが魔導の器の務め。あなたを守るための、もっとも優れたやり方を、私に選ばせてください」

「せやけど・・・・ずっと悲しい思いをしてきて・・・・やっと・・・・やっと・・・・救われたんやないかぁ・・・・・」

「私の意志は、あなたの魔導と、騎士たちの魂に残ります。私はいつも、あなたの傍にいます」

「そんなんちゃう!そんなんちゃうやろ!リインフォース!!」

「駄々っ子は、ご友人に嫌われます。聞き訳を、我が主」

「リインフォース!」

はやてはリインフォースに近付こうと車椅子を前進させるが、段差にぶつかり車椅子が倒れ、はやては投げ出される。

「何で・・・・・?」

はやては、身を起こしながら呟く。

「これから・・・・これからずっと幸せにしてあげなあかんのに!」

はやては叫ぶ。

そんなはやてにリインフォースは近付いていき、膝をついて手をはやての頬に添える。

「大丈夫です・・・・・・私はもう、世界で一番幸福な魔導書ですから」

「リインフォース・・・・」

はやては涙を滲ませる。

リインフォースは微笑んだ。

「主はやて、1つお願いが・・・・・私は消えて、小さく無力な欠片へと変わります。もしよければ、私の名はその欠片ではなく、あなたがいずれ手にするであろう、新たな魔導の器に送っていただけますか?“祝福の風、リインフォース”。私の魂は、きっとその子に宿ります」

「リインフォース・・・・」

はやては、涙を流しながら呟く。

「はい、我が主」

そう言って、リインフォースが立ち上がろうとした時、

「ちょぉっと待ったぁ!!」

上空よりアルダフォームの拓也がすっ飛んで来て、墜落するような勢いで丘の上に着地した。

「いてて・・・・・ギリギリセーフって所か?」

拓也がそう言いながら立ち上がる。

「タクヤ!?」

フェイトが驚いた声を上げる。

拓也は、はやてとリインフォースの近くに歩いていくと、

「はやて、リインフォースの事だが、何とかなるかもしれない」

その言葉に、はやては食いついた。

「ほんまか!?ほんまにリインフォースを助けられるんか!?」

「あ、まあ、一緒に暮らせるかどうかは何とも言えないけど、少なくとも消滅するような真似はしなくて良い」

拓也は立ち上がるとリインフォースを見て、

「諦めるのはまだ早いぜ、リインフォース。フェイト、なのは、儀式は中断しろ」

「えっ?」

「は、はい」

展開していた魔法陣が消滅する。

輝二は、はやてを抱き上げ、車椅子に乗せる。

「それで拓也、一体如何するつもりなんだ?」

輝二が尋ねる。

「まずはリインフォースをとある場所に連れて行く。その場所にいれば、少なくとも暴走の危険性は全くなくなる」

「ほんまか!?」

はやてが凄い勢いで詰め寄る。

「あ、ああ。けど、その場所が特殊なだけであって、根本的な原因解決にはならないから、そこで協力者に如何にかなるか見てもらうことになってる。そこで何とかなれば、はやてたちとも暮らせるし、もし、方法が無くても、そこにいれば暴走の心配はない」

「そこは何処や!?」

「え~っと・・・・リインフォースとはやては当然連れて行くとして、輝二、輝一もだな。それにフェイト」

「え?な、何?」

突然声をかけられたフェイトは、一瞬慌てる。

「フェイトも付いて来てくれ。お前に逢わせたい人達がいる」

「う、うん・・・・・」

逢わせたい人とは誰だろうと思ったが、フェイトは頷く。

「後はついて来るのは自由だけど如何する?・・・・・って、聞くまでも無いか」

当然、全員行く気満々である。

それを確認すると、

「クロノ!見てるんだろ!?」

拓也はそう言う。

すると、モニターが現れる。

『ああ』

「聞いてたと思うけど、ちょっとリインフォース達を連れて行くから、送って欲しいところがあるんだ」

拓也は、手を合わせながらそう頼む。

『何処でも良いが、その場合は僕も連れてってもらうぞ。闇の書の消滅を確認しないと、上が煩いからね』

クロノの言葉を聞くと、拓也は少し考える。

「・・・・・ついて来るなら、約束して欲しいことがある」

『何だ?』

「付いて来るなら、時空管理局執務官としてじゃなく、クロノ・ハラオウン個人として来て欲しい。そして、闇の書の消滅以外の、見たこと、聞いたことは管理局に報告しないで欲しい。それが条件だ」

『如何いうことだ?』

「それは言えない・・・・もし、この約束を破って、その場所の事を管理局に報告したら・・・・・」

拓也は一呼吸置き、覚悟の表情で口を開いた。

「高確率で、俺は管理局の敵になる!」

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

輝二と輝一を除く、その場にいた全員が驚愕した。

輝二と輝一は、拓也の話から大体の察しは付いたようだ。

「その時は、俺と輝一も敵に回るな」

輝二がそう宣言し、輝一も頷く。

「コーにぃ!?イチにぃ!?」

はやてが驚いた声を上げる。

『し、しかし・・・・・・』

クロノは渋っていたが、

『分かりました。約束しましょう』

リンディが答えた。

『艦長!?』

『ただし、現場には私も随伴します。もちろんリンディ・ハラオウン個人としての行動です。そして、そこで見たこと聞いたことを、管理局に報告しない事も約束しましょう』

「わかりました」

拓也は頷く。

『それで、送って欲しい場所は何処かしら?』

リンディが尋ねる。

「あ、はい。渋谷駅です」

あまりにも魔法とはかけ離れた場所を指定された事で、拓也、輝二、輝一以外は固まった。





渋谷駅に一行が転移してくると、拓也の先導でエレベーター乗り場まで歩いてくる。

拓也が携帯を取り出し、なにやら喋ると、エレベーターの入り口の扉の2つが勝手に開いた。

「じゃあ、皆。このエレベーターに乗ってくれ」

一行は2組に分かれてエレベーターに乗り込む。

すると、扉が勝手に閉まり、エレベーターが勝手に下降を開始した。

暫く下降が続くが、やがて到着し、扉が開いた。

そこは、デジタルワールドへ続く地下ホームであった。

そして、一台のトレイルモンが待機している。

「な、何なんだ?ここは?」

思わずクロノが声を漏らす。

なのはやフェイトも、物珍しそうに辺りを見回した。

少し遅れて、輝二達が乗ったエレベーターも到着する。

はやても、渋谷駅の地下に、このような空間があったことに驚いていた。

「へ~、こんな風になっていたのか?」

輝一が地下ホームを見渡す。

因みに輝一は、地下ホームへ来るのは初めてである。

「こっちだ」

拓也が皆に声をかけ、トレイルモンの車両に乗るように促す。

全員が乗り込むと、車両の扉が勝手に閉まる。

そして、トレイルモンは走り出した。

暗いトンネルを走り続けるトレイルモン。

なのはやフェイト、信也は窓から前の方の様子を覗こうとしている。

暗いトンネルの先に光が見え始め、それが徐々に近付いてくる。

そして、その光をトレイルモンが通り抜ける。

暗いところから明るいところへ出たためになのは達は一瞬目を庇う。

そして、次に目を開けたとき、窓の外には広大なデジタルワールドの大地が広がっていた。

「「「わぁ~~~!」」」

なのは達は思わず声を上げる。

クロノや守護騎士たちも驚いた表情をしていた。

トレイルモンは走って行き、やがて火の街の駅に到着する。

車両の扉が開き、拓也達は降りる。

フェイトは、辺りをキョロキョロしながら拓也に尋ねた。

「タクヤ、ここって一体?」

フェイトの言葉に、拓也は振り向き、笑みを浮かべながら言った。

「ようこそ、デジタルワールドへ」





次回予告


三大天使にリインフォースの修復を頼む拓也。

プレシア、アリシアと再会するフェイト。

そして、リインフォースを救うために、防衛プログラムと再び戦う拓也達は、

かつての戦友と再会を果たす。

次回!リリカルフロンティアA`S

最終話 スピリットエボリューション!!

今、伝説が進化する。




あとがき

第十三話完成。

少し短めです。

最初に出てきた魔力云々の話は自分で辻褄合わせただけなので間違ってるかも。

ほぼアニメの通りに進むと思いきやそうは問屋がおろしません。

シリアスな雰囲気一気にぶち壊し。

一同、デジタルワールドへ。

なんていうか、困った時のデジタルワールド頼みですな。

まあ、最終話も頑張ります。







[8056] 最終話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/18 14:46
リインフォースをデジタルワールドへと連れて来た拓也。

そこでは・・・・・・


最終話 スピリットエボリューション!!


「デジタル・・・・・ワールド・・・・・・?」

フェイトが不思議そうな顔をして呟く。

「ああ。デジタルモンスター、略してデジモン達が住んでいる世界さ。この世界の全てはデータで構築されている。当然俺達の身体もデータに変換されてる。だから、この世界じゃ魔法は使えないから注意するように。逆に言えば、この世界ならリインフォースは暴走する心配はないんだけどな」

拓也が皆にそう言う。

その時、シグナムが尋ねてくる。

「待て、この世界では魔法が使えないと言ったな?ならば、何故我々守護騎士やテスタロッサの守護獣は存在している?我々の身体は魔力で構成されている。それならば、この世界にはいられないはずだが・・・・・・・」

その問いには、輝一が答えた。

「厳密に言えば、今のシグナムたちの身体はデータとして存在していない。恐らく、魂だけの存在としてここにいるんだ」

「魂だけ?何も違和感は感じないが・・・・・・」

「まあ、気にするほどのことじゃないよ。俺も前に来た時はその状態だったけど、言われるまで気付かなかったし」

輝一はそう言った。

一方、クロノは当然の如く拓也に詰め寄った。

「拓也!この世界は地球とは違うのか!?」

「ああ」

拓也は普通に頷く。

「ならば何故このことを管理局に報告しなかった!?」

クロノは叫びながらそう問う。

「クロノ、勘違いしないでくれ。俺は、クロノやリンディさんたちは信用しているし、信頼もしてる。けど、俺は時空管理局自体を信用してるわけじゃない。次元世界の安定を守ると言えば聞こえは良いけど、結局は自分たちの考えを他の世界にも押し付けて、世界を思い通りに管理してるとも取れる。俺はそんな組織に、第2の故郷とも言えるデジタルワールドを管理して欲しくなかっただけだ。まあ、デジモン達が黙って管理されるとは思わないけどな」

「なっ!?」

「やめなさいクロノ」

思わず掴みかかろうとしたクロノをリンディが宥める。

「ですが艦長!!」

「ク・ロ・ノ!今の私達は、時空管理局員ではなく、唯の個人としてここにいるのよ。約束を忘れたの?」

「・・・・分かりました。母さん」

クロノは納得はしていないようだったが、しぶしぶと下がった。

「タクヤ、デジモンって?」

フェイトが尋ねる。

すると、拓也は今まで乗っていたトレイルモン(ワーム)に近付き、話しかけた。

「ありがとなトレイルモン。帰りも頼むぜ」

「おう。まかせとけ~!」

そう言葉を放つトレイルモン。

「うわぁああっ!?列車が喋った!?」

信也が盛大に驚く。

他の皆も驚愕の表情を浮かべている。

「コイツはトレイルモン。トレイルモンもデジモンさ」

拓也は笑みを浮かべて言った。

その時、

「神原 拓也君」

空から声が聞こえ、拓也は上を向く。

そこには、オファニモン、セラフィモン、ケルビモンの三大天使デジモンがいた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

≪Digimon Analyzer≫

――オファニモン

・座天使型、究極体デジモン。

10枚の金の翼をもつ女性系天使デジモンの最終形態。

 必殺技は、輝く無数の宝石を飛ばす『セフィロートクリスタル』。



――セラフィモン

・熾天使型 、究極体デジモン。

 最も「神」に近い存在と言われている、10枚の金色の翼を持ったデジモンだ。

 必殺技は、聖なる力を込めた7つのエネルギー弾を放つ『セブンヘブンズ』。



――ケルビモン

・智天使型、究極体デジモン。

 神の膨大な知恵を受け継ぐ三大天使の一体。

 必殺技は、裁きの雷『ヘブンズジャッジメント』。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「て、天使!?」

なのはが驚いた声を上げる。

「オファニモン!」

「セラフィモン!」

「ケルビモン!」

拓也、輝二、輝一がそれぞれの名を呼ぶ。

オファニモンはにっこりと笑った。

三大天使は地上に降りてくる。

「お久しぶりです」

「ああ。究極体まで進化出来たんだな」

拓也が近付いてそう言う。

「はい。それで、私たちに救ってもらいたい者がいると聞きましたが・・・・・」

「ああ。リインフォース!」

拓也がリインフォースを呼ぶ。

リインフォースが前に出てくる。

それを見たオファニモンは口を開いた。

「彼女は人間ではありませんね?どちらかと言えば、私たちデジモンに近いと感じます」

拓也は頷き、リインフォースは夜天の魔導書というデバイスの管制プログラムという事を説明する。

「・・・・・・そうですか・・・・・・この世界では、あなた方の言う魔法は使えませんので、どれだけお役に立てるか分かりませんが、全力を尽くす事を誓います。もう少し詳しく調べたいので、少々お時間を頂けますか?」

「ああ。よろしく頼むよ」

三大天使がリインフォースに手を翳し、リインフォースを光に包む。

「さて、少し時間がかかるようだけど、皆は如何する?」

拓也が皆に話しかける。

「私はリインフォースの傍におる」

はやては即答した。

「ならば、我々もこの場に残ろう」

シグナムが守護騎士を代表して言った。

「そうか・・・・・ああ、そうだフェイト」

拓也が思い出したように、フェイトに言った。

「何、タクヤ?」

「ついて来てくれ。今の内に会わせたい人たちがいるから」

「う、うん」

拓也はそう言って、フェイトを連れて行こうとする。

「あ、あの、お兄さん?」

なのはが声をかけてきた。

「ん?何だ?」

「それって、私たちも付いてって良いですか?」

そう尋ねる。

「ああ、別にかまわないけど」

拓也は、特に渋る事もなく許可する。

「じゃあ、俺たちも久々にボコモンたちに会いたいし、付いて行かせて貰うとするか」

輝二がそう言った。

「そうだな」

輝一も頷く。

結局、はやてと守護騎士だけがこの場に残り、残りは火の街に向かう事にした。




街中を歩く一行。

デジタルワールドを初めて見たなのは達は、色々なデジモンに目を奪われている。

「わぁ~、色々いるね」

なのはが声を上げる。

「この生き物たちも全部データなの?」

信也が尋ねる。

「ああ。つーか、さっきも言ったが今の俺たちもデータの塊だぞ」

拓也はそう答える。

「はぁ~、この世界を見ると、守護騎士プログラムに心があることで悩んでた自分がバカらしくなってくるな」

クロノは頭を押さえながら呟いた。

「そうだろ?この世界のデジモン達はデータで構築されているが、みんな、心と魂を持ってるんだ」

拓也はそう言う。

「タクヤ、私に会わせたい人って誰なの?」

フェイトが尋ねてくる。

「ああ、この辺だったと思うんだけど・・・・・」

と、その時、建物から数匹の幼年期デジモンと一緒に、金髪の少女が出てきた。

その少女は、フェイトそっくりの顔立ちをしていた。

「え・・・・・?」

「フェ、フェイト・・・・ちゃん・・・・・?」

フェイトとなのはは思わず立ち止まって声を漏らす。

しかし、拓也はそのままその少女に近付いていき、

「よお、アリシア。久しぶりだな」

そう声をかけた。

「あ!お兄ちゃん!」

アリシアは笑って駆け寄る。

「約束どおり、連れて来たぜ」

拓也は、親指で後ろを指差しながら言った。

アリシアが、拓也の後ろをひょっこりと覗き、フェイトの姿を捉えた。

「あ!」

アリシアがフェイトに駆け寄る。

フェイトは呆然とアリシアを見ている。

「フェイト?フェイトだよね!?」

アリシアは、笑顔でフェイトに詰め寄った。

「アリ・・・・シア・・・・・?」

フェイトは呆然と呟く。

「うん!そうだよ!フェイトのお姉ちゃんなんだから!」

アリシアは、小さい身体で胸を張って答える。

フェイトは未だ呆然としていた。

すると、アリシアは先程出てきた建物の中に駆け込んでいく。

「お母さーん!」

建物の中で、アリシアの声が響く。

「なあにアリシア?」

その声を聞いた瞬間、フェイトの心臓の鼓動は跳ね上がった。

「お母さん、ちょっと来て!」

「そんなに引っ張らないの。一体如何したの?」

アリシアが、建物の中から誰かの手を引っ張って出てくる。

「この声って・・・・・」

信也が、どこかで聞いたことがある声に首を傾げる。

その女性が外に出てきた時、

「あ・・・・あ・・・・・・」

フェイトの顔は驚愕に染まった。

その女性は、アリシアとフェイトの母親である、プレシア・テスタロッサ。

「プ、プレぐぇ・・・・!」

叫んで駆け寄ろうとしたクロノの行動を予測していた拓也は羽追い締めにして止める。

「はいはい、クロノ。今のお前は管理局とは全く関係ないんだろ?」

プレシアは、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑んでフェイトに近づいていく。

フェイトは、驚きのあまり固まって、まともな思考が出来ていない。

プレシアは、フェイトの目の前に来ると立ち止まる。

その目には、涙が滲んでいた。

「か・・・・・母さ・・・・ん・・・・・・?」

フェイトは思わずそう呟く。

「私を・・・・・・まだ母と呼んでくれるのね・・・・・」

そう呟き、プレシアは膝立ちになる。

そして次の瞬間、フェイトを抱きしめた。

「ごめんなさい・・・・・ごめんなさいフェイト・・・・・私がバカだったわ・・・・・」

プレシアは、フェイトをしっかりと抱きしめ、涙を流しながら謝る。

プレシアに抱きしめられている事に気付いたフェイトの瞳からは、大粒の涙がボロボロと零れていた。

「母・・・・・さん・・・・・・母さん!」

フェイトもプレシアに抱きついた。

そんな様子を笑みを浮かべながら見ていた拓也は、

「これなら心配ないかな」

そう呟く。

「拓也君。あなた、全部見越してあんな約束をさせたのね?」

リンディが頭を抱えながらそう聞いてくる。

「俺は、「プレシアが死んだ」なんて、一言も言った覚えは無いですけど?」

拓也は、悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべてそう言った。

「本当ね。拓也君が生きていた時点で、プレシア・テスタロッサも生きてる可能性が高い事は。容易に予想できた事なのに・・・・・」

「正直、フェイトたちから母親が取り上げられるのは、心苦しいですし。今のプレシアなら何の危険も無いですよ」

「それは見れば分かるけど・・・・・はぁ・・・・・」

リンディはため息を吐く。

「・・・・・それはそうと、そろそろクロノを放してくれないかしら?」

「え?」

拓也は未だにクロノを羽追い締めにしていたことを思い出した。

見ると、クロノの顔は、見事に青くなっていた。





一行は、プレシア、アリシア、そして、ボコモン、ネーモンを交え、ほのぼのとした雰囲気で話し合っていた。

クロノはともかく、リンディは最早開き直って、プレシアと子育てについてなどの世間話をしていたりする。

アルフも、最初はプレシアに対して警戒していたようだが、笑顔のフェイトを見て、ま、いっかといった雰囲気になっている。

輝二と輝一も、久しぶりにボコモンとネーモンに出会い、笑顔で話し合っていた。

すると、狼形態のザフィーラが現れた。

「リインフォースについて、何か手があるらしい。オファニモンたちから、ミナモト、キムラ、カンバラの3人を連れてきてくれと頼まれた」

それを聞くと、全員が移動を開始する。



ザフィーラに案内された場所は、トレイルモンの駅ではなく、街から少しはなれた草原だった。

そこに、はやてとリインフォース、守護騎士達がいた。

拓也がオファニモンに話しかける。

「オファニモン、リインフォースについて、何か手があるって聞いたんだけど?」

「はい。まず、彼女の身体は、今のままでは私達では手が出せません。ですので、私たち三大天使の力で、彼女にデジコアを与えます」

「デジコア?」

オファニモンの言葉に輝二が尋ねる。

「デジコアというのは、デジモンの中枢を成す、いわばデジモンの心臓のような物です。これを彼女に与え、彼女の身体をデジモンと同じものにします」

「そうなると、何が変わるんだ?」

輝一が尋ねる。

「基本的には、何も変わりません。彼女の能力もほぼ全てデータで再現できます。しかし、あくまで再現しているだけであり、あなた方が言う非殺傷は出来なくなります」

オファニモンは続ける。

「以上の事は、既に八神 はやてさんに確認を取り、それを承諾していただいています」

皆は頷く。

「そして、彼女の身体をデータ化すれば、私たちの力で、歪められたデータを分離させる事が出来ます。その上で、歪められたデータを浄化します」

「じゃあ、リインフォースさんは助かるんですね!?」

なのはは嬉しそうに尋ねる。

「ああ・・・・・・だが、その歪められたデータは、闇の書の闇の暴走体と同等、それ以上の力を持つことになる」

リインフォースはそう説明する。

「そんな・・・・」

フェイトが呟く。

「そんなもの、どうやって止めるの!?この世界じゃ僕達は魔法を使えないんだよ!」

信也もそう言う。

「ですので、あなた方を連れてきてもらったんです」

オファニモンはにっこりと笑い、拓也、輝二、輝一に視線を向ける。

「え?」

拓也は声を漏らす。

「今回は、彼らも力を貸してくれます」

オファニモンが横に移動すると、その後ろに薄く輝く3体のデジモンがいた。

「アグニモン!」

「ヴォルフモン!」

「レーベモン!」

拓也、輝二、輝一は思わず叫んで近付いた。

『久しぶりだな、拓也』

『輝二』

『輝一』

アグニモン、ヴォルフモン、レーベモンはそれぞれの戦友(とも)の名を呼ぶ。

拓也たちは一度振り返り、

「オファニモン!」

オファニモンの名を呼ぶ。

オファニモンは頷く。

それを確認すると、拓也はアグニモンに向き直る。

「・・・・・こう言ったら不謹慎かもしれないけど・・・・・また一緒に戦う事が出来て嬉しいよ」

そう言って拓也は右手を差し出す。

アグニモンは笑みを浮かべ。

『俺もだ』

アグニモンは差し出された手を握る。

「また一緒に戦ってくれるか?ヴォルフモン」

『もちろんだ』

輝二とヴォルフモンも握手し、

「よろしく頼むよ、レーベモン」

『こっちこそな』

輝一とレーベモンも握手を交わした。

すると、アグニモン、ヴォルフモン、レーベモンの3体が輝き、スピリットの形を取る。

拓也達は携帯電話を取り出すと、それぞれのスピリットに画面を向ける。

そのスピリットが携帯電話に吸い込まれると、携帯電話が光り輝き、デジヴァイスの形に変わった。

それぞれが笑みを浮かべ、デジヴァイスを見た後、オファニモンたちに振り返る。

「こっちは準備OKだぜ!オファニモン!」

拓也がそう言うが、

「待ちなさい」

セラフィモンが言った。

「木村 輝一君。デジヴァイスを」

「え?う、うん」

セラフィモンに言われ、不思議に思いながらも、輝一はデジヴァイスをセラフィモンに向ける。

すると、セラフィモンが手を翳し、セラフィモンの手から光が放たれる。

その光は、輝一のデジヴァイスに吸い込まれる。

すると、輝一は気付く。

「感じる・・・・・これは・・・・・新しい力だ!」

輝一は言った。

すると、セラフィモンが口を開く。

「君にも融合進化の力を与えた」

その言葉に、

「ありがとう、セラフィモン」

輝一は、礼を言った。

「では、よろしいですか?」

オファニモンが3人に確認を取る。

3人は頷く。

「大丈夫・・・・なの?」

フェイトが心配そうに声をかけてくる。

「・・・・・そういえば、ずっと前に言ってたよな。何で、俺は戦いなれてるのかって?」

「え?う、うん・・・・」

フェイトは頷く。

「その理由を、これから見せてやるよ」

拓也は自信を持った顔で、そう言った。

「いきます」

オファニモンが宣言する。

三大天使が手を翳した中心に、光の球が発生する。

それが、ゆっくりとリインフォースの胸から吸い込まれる。

すると、リインフォースがデジコードに包まれた。

「邪悪なる力よ、退け!」

オファニモンが叫ぶと、デジコードの一部がリインフォースから離れ、一行から少し離れたところで巨大化。

その内部から、闇の書の闇の暴走体が現れる。

リインフォースを覆っていたデジコードが消えた。

「リインフォース、大丈夫なんか?」

はやてが心配そうに声をかける。

「はい、大丈夫です。我が主」

リインフォースは微笑んだ。

「じゃあ、後は俺達の仕事だな」

輝二が言った。

「ああ、奴を倒せば全てが終わる!」

輝一も気合を入れる。

「輝二!輝一!行くぞ!」

拓也が叫び、

「「応!」」

2人が応える。

「進化だ!!」

3人の突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、ヒューマンスピリットの形が描かれる。

突き出した左手に、デジコードの輪が発生。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせる。

「「「スピリット!エボリューション!!」」」

3人の身体がデジコードに包まれる。

その中で3人はスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

3人の身体にスピリットが合わさる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「アグニモン!!」

「ヴォルフモン!!」

「レーベモン!!」

かつてデジタルワールドを救った十闘士の3体がそこに存在した。

その姿に驚く一同。

「あれこそ!かつてデジタルワールドを救った伝説の十闘士の内の3体!『炎』のアグニモン!『光』のヴォルフモン!『闇』のレーベモンじゃ~!!」

ボコモンがそう叫ぶ。

「・・・・・バリアジャケットに似てる」

フェイトが呟いた。

「バリアジャケット“が”似ているんだ。俺達のバリアジャケットは、この姿を元にしたものだからな」

アグニモンがそう訂正する。

「行くぞ!」

3体が駆け出す。

アグニモンが両拳を合わせると、手甲から炎を発する。

その炎が両拳に宿る。

拓也の魔法と同じ技。

しかし、その炎の密度は遥かに高い。

「バーニング!サラマンダー!!」

拳に宿した炎を放つ。

「リヒト・クーゲル!!」

ヴォルフモンが、左腕に装備されている砲身からレーザーを発射する。

レーベモンは胴部にある獅子の口に闇のエネルギーを溜め、

「エントリヒ・メテオール!!」

そのエネルギーを一気に放つ。

3つの必殺技は、暴走体のバリアにぶち当たり、4枚のバリア全てを破壊する。

その様子にクロノは驚愕した。

「なっ!?暴走体のバリアを一気に全て吹き飛ばした!?」

「すごい・・・・」

なのはも思わず声を漏らす。

暴走体は、自分の周りに砂漠の世界にいたワームを10匹呼び出す。

「なっ!?アレが10匹も!」

「冗談だろ!?」

そのワームに手こずったシグナムとヴィータは叫ぶ。

だが、アグニモンが炎を纏い、回転を始め、瞬く間に炎の竜巻となる。

「サラマンダー!ブレイク!!」

その炎の竜巻の中から、アグニモンは炎を纏った回し蹴りを3匹連続で叩き込む。

炎のエネルギーを叩き込まれたワームは、内部から爆発を起こし、データに分解され、消滅する。

「「なっ!?」」

ヴィータとシグナムは同時に驚く。

「リヒト・ズィーガー!!」

ヴォルフモンは、光の剣を抜き、それを振るう。

「はぁあああああああっ!!」

一瞬で3匹のワームは切り裂かれ、同じようにデータに分解され消滅する。

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

レーベモンは闇の力を纏った槍を振るい、周りにいた3匹のワームを薙ぎ払うように切断した。

すると、残ったワームの1匹が触手を放ってきて、アグニモンを締め上げる。

「タクヤッ!」

フェイトが心配そうな声を上げる。

だが、アグニモンはデジコードに包まれる。

「アグニモン!スライドエボリューション!」

そして、そのデジコードが消えると、

「ヴリトラモン!!」

大きなオレンジ色の翼を持った、赤き竜に姿を変えていた。

ヴリトラモンは、力ずくで触手を引きちぎる。

そして、翼を広げて空へ飛び立った。

その姿に、再び驚く一同。

「あれは『炎』の闘士のビースト形態!ヴリトラモンじゃマキ!」

ボコモンが、またそう叫ぶ。

ヴリトラモンの両腕に装備されているルードリー・タルパナが反転。

銃口が前を向く。

「コロナブラスター!!」

銃口から炎の弾丸が連射され、ワームに降り注ぐ。

ワームは粉砕され、消滅した。

ヴォルフモンとレーベモンは互いに顔を見合わせると頷き合う。

すると、2体もデジコードに包まれた。

「ヴォルフモン!」

「レーベモン!」

「「スライドエボリューション!」」

2体もビースト形態へ移行する。

「ガルムモン!」

「カイザーレオモン!!」

背中にブレードを装備した白き狼と、身体に黒きオブシダン・デジゾイドを纏った獅子となった。

「あ、輝二と輝一も、ガルムモンとカイザーレオモンになったね」

ネーモンがいつも通り力が抜けそうな声でそう言った。

ガルムモンは、暴走体に向けて、口を大きく開ける。

「ソーラーレーザー!!」

そこから放たれるのは、極太のレーザー。

それは、暴走体の正面にある大きな口を丸々吹き飛ばす。

カイザーレオモンは大きく跳躍した。

上空から大きく口を開け、背中の撃鉄のような物が伸長し、

「シュバルツ・ドンナー!!」

それが、勢い良く押し込まれると共に、口から圧縮された闇のエネルギー弾を放つ。

その一撃は、暴走体の身体を削り取る。

ガルムモンは、背中のブレードを展開し、足に装備されているホイールが、地面を叩くように展開すると、そのホイールが高速回転する。

「スピードスター!!」

ガルムモンは猛スピードで暴走体に突撃、背中のブレードで暴走体の足を切り裂く。

更に、一瞬で切り返し、反対側の足も切り裂いた。

大地に倒れる暴走体。

カイザーレオモンが、闇のエネルギーを身体中に纏う。

「シュバルツ・ケーニッヒ!!」

闇のエネルギーが巨大な獅子の姿を形作り、カイザーレオモンが突撃。

暴走体の身体に大きな穴を開ける。

「うぉおおおおおおっ!!」

ヴリトラモンが身体中から炎を発し、

「フレイム!ストーム!!」

尾を振ると共に、炎を暴走体に向け放った。

炎に包まれる暴走体。

ヴリトラモン、ガルムモン、カイザーレオモンは、一箇所に集まる。

「次で止めだ!」

「応!」

「わかった!」

3体は、一度進化を解き、拓也、輝二、輝一に戻る。

そして、再びデジヴァイスを構えた。

デジヴァイスの画面に、光が走ると同時に獣のシルエットが浮かび上がり、咆える。

ヒューマンスピリットと、ビーストスピリットが重なって描かれた。

突き出した左手に、長い帯状のデジコードが集まり、球状になったデジコードが宿る。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせた。

「「「ダブルスピリット!エボリューション!!」」」

3人の身体が再びデジコードに包まれる。

「「「ぐっ・・・・あああああああっ!!」」」

3人は叫び声を上げた。

激しいエネルギーの奔流の中、3人は2つのスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

2つのスピリットが重なる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「アルダモン!!」

「ベオウルフモン!!」

「ライヒモン!!」

ヒューマンタイプとビーストタイプの長所を併せ持った闘士が誕生した。

アルダモンは人型をベースに、頭部、肩、手、腿などの間接部分はアグニモン。

翼、体、足、そして腕のルードリー・タルパナはヴリトラモン。

ベオウルフモンは、同じく人型をベースに、頭部、両肩、右腕、腰、両足がヴォルフモン。

体、左腕、両腿がガルムモン。

更には、ガルムモンのブレードを合わせた大剣も持っている。

ライヒモンは、同じく人型で、頭部、手、足、関節部分がレーベモン。

肩から腕、体、腿がカイザーレオモン。

更にその手には槍を持ち、背中にも金の翼があった。

「おお!あれこそ伝説の十闘士の融合形態、『炎』のアルダモン!『光』のベオウルフモン!『闇』のライヒモンじゃ~!!」

ボコモンが興奮して叫ぶ。

「アルダモンとベオウルフモンは知ってるけど、だからなんで初めて見るライヒモンまで知ってるの?」

ネーモンが突っ込む。

「バカモン!そんなこともわからんのか!?」

ボコモンはそう言うが、

「うん」

ネーモンは頷く。

「それは!・・・・・・・」

ボコモンは叫ぶ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

全員の視線がボコモンに集中する。

が、

「・・・・・・がんばれーー!!アルダモン!ベオウルフモン!ライヒモン!!」

ボコモンは3体を応援しだした。

「ああ~~ッ!また誤魔化した!」

ネーモンが叫んだ。



アルダモンは両手の間に火球を発生させ、それにエネルギーを込め続け巨大化させる。

「ブラフマシル!!」

それを暴走体に向け放った。

超圧縮された豪火球の熱量が解放され、再生スピードを超えるスピードで焼かれていく暴走体。

ベオウルフモンが大剣を掲げると、光のエネルギーが狼を形作る。

「ツヴァイ・ハンダー!!」

その光の狼を纏って突撃。

地面ごと暴走体は真っ二つになる。

その時、ライヒモンは空中にいた。

ライヒモンは槍を構える。

「暗黒定理(シュバルツ・レールザッツ)!!」

ライヒモンは槍を投擲した。

その槍が突き刺さった暴走体は闇に包まれる。

ライヒモンの必殺技、暗黒定理(シュバルツ・レールザッツ)は、効果範囲内の物理法則を無力化させる技であり、この効果範囲内では、あらゆる事が許される。

その闇の中で起こっていることを知っているのは、ライヒモンのみ。

その闇が砕けたとき、暴走体はズタボロで、デジコードを浮かび上がらせていた。

そこにベオウルフモンが近付いた。

「闇にうごめく魂よ!」

ベオウルフモンの手には、いつの間にかデジヴァイスが握られている。

「聖なる光で浄化する!デジコード!スキャン!!」

ベオウルフモンは、暴走体のデジコードをデジヴァイスでなぞるように滑らせる。

すると、暴走体のデジコードがベオウルフモンのデジヴァイスに吸い込まれていくと共に、暴走体の身体が消滅していく。

暴走体は、デジコードを完全にスキャンされると、消え去った。

それを確認した3体は進化を解く。

3人に駆け寄ってくる一同。

拓也と輝一は、皆の方に歩いていく。

「ん?」

輝二も、そちらに歩き出そうとした時、暴走体がいた所に、光る物を見つけた。

気になった輝二は、そこに歩いていきそれを拾う。

それは、ベルカの十字架のペンダントだった。

輝二は、これが暴走体の生まれ変わった姿だと確信した。

「コーにぃ!!何やってるんや!」

はやてが輝二に呼びかける。

拓也と輝一は、もう皆の所にいた。

輝二は、はやての所に歩いていき、

「はやて・・・・・」

拾ったペンダントを差し出した。

それを見たはやては驚いた顔をする。

「コーにぃ・・・・・・これ・・・・」

はやては、輝二の顔を見る。

輝二は頷き、

「防御プログラムを浄化した後に残った物だ」

そう言った。

はやては、輝二の手からそれを受け取り、握り締める。

「ごめんな・・・・・・助けてあげれんくて・・・・・・ごめんな・・・・・・」

はやては涙を流しながらそう呟く。

「我が主・・・・・」

リインフォースが呟く。

はやては、暫く俯いていたが、突然顔を上げ、

「決めたで!」

そう言った。

「この子を、生まれ変わらせる!リインフォースの妹にするんや!」

はやてはそう宣言する。

「なるほど・・・・いい考えだ」

輝二はそう言う。

「それで私がこの子のお母さんや!」

次に、はやては輝二を見ると、ビシッと指をさし、

「それでコーにぃがこの子のお父さんや!」

「はぁ!?」

はやての爆弾発言に思わず声を漏らす輝二。

驚く輝二にはやては言った。

「今更何いうてんのや?私、コーにぃのこと大好きなんやで!」

軽く頬を染めながら、はやては叫ぶ。

「あ・・・・いや・・・・・」

輝二は頬を赤くしてアタフタする。

「ほ~~~・・・・・・そういえば夢の中でも、お前ははやてと一緒にいたな」

拓也がニヤニヤしながら輝二を見る。

「う、煩いな!そういうお前だってフェイトと腕組んでただろ!」

輝二が照れ隠しに叫びながらそう言う。

「俺とフェイトは恋人同士だ。悪いか?」

拓也は何でも無い様にそう言った。

その頬は、少し赤くなっていたが。

「「えええええぇぇぇ~~っ!!?」」

なのはと信也が盛大に驚く。

「そうなのフェイト?」

アリシアが無垢に聞いてくる。

「あ、あうう~~~・・・・」

フェイトは拓也の言葉に真っ赤になっている。

と、その時、後ろから物凄いプレッシャーが拓也にかかる。

「あら?それは私も初耳なんだけど?」

プレシアの言葉が重い。

拓也はギギギとブリキ人形のように首を回した。

「フェイトは私の娘よ。だったら、如何すればいいか分かるかしら?」

「え、え~と・・・・・」

拓也は冷や汗がだらだらと流れている。

だが、拓也は思い切って、

「フェイトとの婚約を認めてください」

拓也はプレシアに頭を下げながら言った。

その瞬間、時が止まる。









































































































































































「「「「「「「「「「「「「「「「えぇえええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」








皆纏めて盛大に驚いた。

「~~~~~~~~~~ッ」

フェイトは耳まで真っ赤にして、オーバーヒートしてしまった。

「え?俺なんかへんな事言ったか?」

拓也は何で皆がそんなに驚いているのか分かってない。

因みに、物凄い爆弾発言をしたが、元々拓也は、頭が弱い方であり、しかもプレシアの物凄いプレッシャーの中だったので、『関係』と『婚約』を言い間違えたのだ。

しかも、間違えた事に気付いていない。

「ウフフ・・・・・まさかいきなりそんな事まで言われるとは予想外だったわ・・・・・」

プレシアは予想を超えた拓也の言葉に、呆れ半分、関心半分の言葉を漏らす。

「けど、逆に気に入ったわ!良いでしょう!フェイトとの婚約を認めます。しかし、もしフェイトを傷つけて泣かした時は・・・・・・」

魔法は使えないはずなのに、その手に雷を纏わすプレシア。

「分かっているでしょうね?」

「はいっ!!!」

プレシアから放たれるプレッシャーに、拓也ははっきりと返事する以外に無かった。

「むむむ・・・・・フェイトちゃん、いきなり婚約者かいな・・・・・・私も負けんでぇ!コーにぃ!ウチらも婚約やーーーーー!!」

何故かフェイトに対抗意識を燃やすはやて。

「お、落ち着けはやて!」

ヒートアップするはやてに、アタフタする輝二。

そして、そんな様子を見て、何故か輝一をちらちら見るシグナム。

そんなシグナムに、輝一が気付いた。

「ん?どうした、シグナム?」

「な、なんでもない!」

いきなり声をかけられたが、そっぽを向くシグナム。

その頬は少し赤い。

そんなシグナムの肩を、ちょんちょんとシャマルが突っつく。

「な、何だシャマル?」

シャマルはシグナムの耳に口を近づけ、

「シグナムもキムラ君に婚約申し込んだら?」

そんな事を言ってきた。

「か、からかうなシャマル!!」

シグナムは顔を真っ赤にして叫ぶ。

シャマルは笑って逃げた。

そんな様子を笑って見ているユーノ。

じーっとエリスから視線を送り続けられているのに気付きもしない。

苦笑しているなのはと信也。

良く分かってなさそうなアリシア。

デジタルワールドやプレシアの事を報告しない事で、頭を悩ませながらも、悪い気はしていないクロノとリンディ。

騒ぐはやてを、微笑ましく見つめるリインフォースとヴィータ。

そんな騒ぎを遠巻きに見つめ、ため息を吐く狼形態のザフィーラと、わくわく顔のアルフ。

何か馬鹿なことを言ったみたいでボコモンにゴムパッチンされるネーモン。

そんな様子を、微笑みながら見下ろす三大天使。

すると、三大天使は翼を羽ばたかせ青い空へ飛び立つ。

その途中、オファニモンはもう一度一行を見下ろし、呟いた。

「願わくば、彼らの未来に幸あらん事を・・・・・・」

デジタルワールドの空に天使の羽音が響き、金の羽根が舞い散った。






エンディングテーマ ≪an Endless tale≫






あとがき

リリカルフロンティアA`S最終話完成!!

いや~、ノリノリで書きました。

怒涛の4連続投稿。

疲れた疲れた。

みなさんお待ちかねのフェイトとプレシア、アリシアの再会。

如何ですかね?

もうちょっと長くした方が良かったかな?

リインフォースの修復も結構無理矢理?

んでもって、闇の書の闇の暴走体。

哀れ。

アニメ以上のフルボッコ。

いや~、デジモンひいき気味?

とりあえず輝一だけ融合体になれないのは、なんか仲間はずれみたいだったんで、ライヒモンに進化!

ライヒモンの必殺技の暗黒定理(シュバルツ・レールザッツ)は、説明読んでも良く分からなかった。

物理法則の無力化ってなにさ?

やりたい放題って事?

というわけで自己解釈。

あんな感じにしてみました。

そんで最後は相変わらず?のラブコメ調。

結構やりたい放題ですな・・・・・・・

最後の纏め方は、自分でもかなり上手く行ったかなと思っております。

関係ないですが、初めてフォントを変えてみました。

それで、話は変わりますが、StS編に入る前にいくつか話を入れるつもりですが、StSキャラを絡ませた方が良いですかね?

因みに最後には、なのは撃墜事件を書くつもりです。

その辺りは少し変えるつもりなので、書かないとStSの最初が全く分からないと思います。

では、A`S編はこれにて終了。

まずは幕間を頑張ります。






[8056] 幕間その一
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/25 09:57
リリカルフロンティアA`S~StS


幕間その一 ミッドチルダでの出来事。


闇の書事件から数日。

拓也達はミッドチルダに来ていた。

理由は、輝二、輝一を始め、はやてやヴォルケンリッター達は、闇の書事件の重要参考人である。

しかし、裁判は始まってもいないが、クロノの話ではフェイトと同じく、保護監察と奉仕活動程度で済むだろうという見解だ。

今日は、輝二達が暫くミッドチルダに留まる事になるので、見送りの為に拓也達は付いて来たのだ。

因みに魔法関連の事は、家族には教えてあるので問題はない。

尚、拓也、フェイト、信也、なのはは、エイミィの勧めで、ミッドチルダ観光を行う事になっている。





輝二達を見送った拓也達は、本当なら今頃ミッドチルダの首都クラナガンの観光を行なっていたはずなのだが・・・・・・・

4人は現在、銀行で待ちぼうけを喰らっていた。

理由は、エイミィがキャッシュカードを財布ごと忘れて、現在取りに行っている為だ。

戻ってくるまで約1時間の間、銀行内で待っているように言われた。

4人は銀行内のベンチに座っている。

すると、

「あのっ!ちょっと、隊長!?」

近くで通信機を使っている青く長い髪の女性の姿。

その女性の傍らには、その女性の娘と思われる2人の少女。

その女性は、通信機をしまうと、

「もう隊長ってば人使い荒いんだから・・・・」

なにやらグチを言って、しゃがみ込む。

「ギンガ、スバル。お母さん、ちょっと行かなきゃいけないから、戻ってくるまで此処でいい子で待っててね」

その女性は、2人の少女に優しく言い聞かせる。

「うん!」

「うん」

姉と思われるギンガと呼ばれた少女は元気良く頷き、妹と思われるスバルと呼ばれた少女も頷く。

その女性は2人の少女を拓也達の近くのベンチに座らせると、銀行を飛び出て行ってしまった。

「・・・・・・管理局の人か?」

拓也は呟く。

「多分・・・・今のやり取りからすれば・・・・・」

フェイトが答えた。




そして、約30分ぐらいすると、

『ただ今入ったニュースです。つい先程、首都クラナガンにおいて、魔導師犯罪者が4名脱走したとの報告が入りました。現地の住民には、外出を控えるよう警告が出ています』

そんなことがテレビで流れた。

「うわ~・・・・怖いね・・・・」

「うん・・・・」

なのはと信也はそんなことを言う。

因みに拓也が、そんじょそこらの魔導師よりもお前らの方がよっぽど強いんじゃね~か?と思うのは当然だろう。

それから更に約15分後。

それは突然起こった。

銀行の出入り口が、突如閃光によって吹き飛ぶ。

「全員動くな!!」

男の叫び声が響く。

吹き飛んだ入り口から、4人の男がなだれ込んでくる。

その4人の男の顔は先程ニュースでやっていた脱走犯と同じ顔であった。

その4人は、奪ったのか隠し持っていたのか、それぞれがデバイスである杖を持っている。

銀行の客たちが騒ぎ出す。

「騒ぐんじゃねえ!」

男の1人が魔力弾を放ち、カウンターの一部を粉砕して黙らせる。

警備員と思われる者が、数人カウンターの奥から出てくるが、

「バカが!」

あっさりと魔力弾を喰らい、気絶する。

「ひゃははは!俺様の魔導師ランクはAAランク!そして、炎熱の魔力変換資質も持っている!後ろの3人もAランク相当の使い手だ!バカな真似はやめといた方が身のためだぜ!」

4人の男の中の、リーダー格らしき男が、下品な笑い声を上げながら言った。

その話を聞いて、拓也が小声でフェイトに話しかける。

「なあ・・・・アイツAAランクって言ってたけど、そんなに威張れる事なのか?」

知り合いの魔導師ランクはAAA以上が多いので、拓也が疑問に思ったことを聞いた。

「うん・・・・AAA以上は管理局全体で見ても5%に満たないって話だから、AAって言えばかなり凄い方だよ」

「あ、そうなんだ」

フェイトの言葉で拓也は納得する。

その時、外から声が聞こえた。

「こちらは時空管理局、首都防衛隊だ。お前たちは既に包囲されている。諦めて投降せよ」

管理局からの降伏勧告であった。

しかし、4人の男たちは聞く耳を持たない。

(お兄さん、如何するんですか?)

なのはから念話が入る。

(俺達だけならあの位如何とでもなるけど、他の客まで巻き込まないのは難しい。ここは大人しく従っておこう)

拓也はそう判断する。

(分かりました)

(分かった)

なのはと信也はそう返事をした。

4人の男たちがなにやら話し合っている。

何故か時々視線をこちらによこす。

そして、4人の男がこちらに向き直った。

「おい!そこのガキ!こっちに来い!」

リーダー格の男が叫んだ。

拓也は自分を指差す。

「そうだ、てめぇだ!」

拓也はその男たちに近付いていく。

すると、腕で首を絞められ、頭の後ろにデバイスを突きつけられる。

「おい!そこの一番ちっせえガキも連れて来い!」

リーダー格の男は仲間の1人にそう命令した。

命令された男は、スバルに近付き、その腕を掴む。

「やだっ!」

スバルは暴れる。

「スバルッ!」

姉であるギンガは妹のスバルを助けようと、男の腕にしがみ付く。

「鬱陶しいんだよ!ガキッ!!」

そう叫んでギンガを突き飛ばす。

「お姉ちゃんっ!」

スバルはギンガに駆け寄ろうとしたが、後ろから羽追い締めにされる。

ギンガには信也たちが駆け寄った。

男たちは拓也とスバルを連れて、外へ出る。

フェイト、なのは、信也も出入り口から外の様子を窺った。

すると、

「おらぁ!管理局のクソッタレ共!!このガキの命が惜しけりゃ道を開けな!!」

リーダー格の男が管理局員に向かってそう叫ぶ。

「スバルッ!!」

管理局員の1人から、叫び声が上がる。

見れば、先程銀行から出て行った女性だった。

「お母さん!!」

捕まっているスバルが叫ぶ。

それを聞くと、リーダー格の男はニヤリと口を歪める。

「おいてめえら!俺様が言ってる事が脅しじゃねえことを教えてやるよ!」

そう言うと、拓也を突き飛ばす。

拓也はつんのめるが、何とか堪えた。

そして、リーダー格の男に視線を向けると、デバイスをこちらに向けていた。

「おいガキ、恨むなら俺様じゃなく、大人しく道を開けなかった管理局を恨むんだな!」

そういうと魔法陣が発生。

「まさかっ!?」

「やめてっ!!」

管理局員の中から声が飛ぶ。

だが、魔法陣から炎が放たれる。

その炎は拓也を包んだ・・・・・・様に見えた。

「うわ・・・・うわああああああああ!(棒読み)」

拓也は炎に包まれながらそう叫んでふらつき、スバルを捕まえている男の前で倒れる。

「ああっ!」

「くそぉ!」

管理局員や周りから悲鳴が上がる。

因みに、今拓也を包んでいる炎は、拓也が自分で出した炎であり、リーダー格の放った炎など、あっさりとかき消した。

それが分かっていたので、フェイトたちも落ち着いていたが、このまま黙っているのも怪しまれるのかと思い、

「タッ、タクヤッ!いやぁあああああああっ!!(かなり棒読み)・・・・・・・・こんな感じかな・・・・・?」

「お、お兄さん!死んじゃだめぇええええええっ!!(相当棒読み)・・・・・・・・良いんじゃないかな・・・・・・・?」

「に、兄ちゃぁあああああああん!!(すんげー棒読み)・・・・・・・・・・・大げさかな・・・・・・・・?」

それぞれがそう叫ぶ。

普通の人が平常心で聞けば、棒読みという事が一発で分かるほどのものだったが、幸運にも、犯人たち、管理局員ともに緊張感で感覚が高ぶっており、その程度を気にする者はいなかった。

「ひゃははははは!さあクソッタレ共!こっちのガキの丸焼きの姿を見たくなかったら、大人しく道を開けな!」

リーダー格の男は高笑いを続ける。

それにつられたのか、仲間の男たちも笑い出した。

次の瞬間、

――カァン

スバルを捕まえていた男のデバイスが空高く蹴り上げられる。

「は・・・・・・?」

そう声を漏らした瞬間、

「おらぁっ!!」

アグニフォームを纏った拓也に、顔面を殴りつけられる。

その男は吹っ飛ぶ。

拓也はすぐにスバルを抱え、その場を大きく飛び退いた。

拓也はフェイト、なのは、信也の前に着地する。

拓也がスバルを放すと、ギンガが駆け寄ってスバルに抱きついた。

その様子を見て、拓也は微笑む。

すると、

「このガキがッ!!舐めやがって!!」

拓也の行動にキレたのか、管理局そっちのけで拓也達に魔力弾を放ってくる。

しかし、

『『『Round Shield.』』』

金色、桜色、青色の3枚の魔法陣の障壁にあっさりと防がれる。

「なっ!?て、てめえらも魔導師だったのか!?」

その事実に焦る男たち。

それでもリーダー格の男は、拓也に向かって炎を放ってくる。

拓也はそれを避けもせず炎に包まれる。

だが、腕を一振りするだけで、その炎は消え去る。

「ぬるいな・・・・・・俺を燃やしたかったら・・・・・・・・」

拓也はそう呟くとともに、バリアジャケットをヴリトラフォームに変更する。

「このぐらいやってみやがれ!!」

拓也の身体から炎が吹き上がった。

「ほげぇ~~~!?」

拓也の身体から噴出す炎の大きさに、声にならない声を漏らす男たち。

後ろにいるギンガやスバルもその光景に見入っている。

「フレイム!」

拓也は身体を捻る。

「ストーム!!」

回し蹴りを放つと共に、纏っていた炎を男たちに向け放った。

「「「「うぎゃぁああああああああああっ!!」」」」

その炎に巻き込まれ、悲鳴を上げる男たち。

4人は見事に真っ黒コゲになった。

しかし、

「お・・・・おのれぇ・・・・・」

リーダー格らしき男は、まだ起き上がろうとしていた。

「しぶとい奴・・・・・・ん?」

拓也はそう呟くが、上から何かが降ってくるのに気付いた。

上から降ってきたそれは、

「ぐぇ!?」

見事に起き上がろうとしていた男を踏み潰した。

「私の娘に手を出して、ただで済むとは思ってないでしょうね!?」

降って来たのは先程のギンガとスバルの母親の、長く青い髪の女性。

両手には手甲のようなデバイス。

足にはインラインスケートのようなものを履いていた。

「「お母さ~ん!」」

拓也の後ろからそう声が聞こえる。

「ギンガッ!スバルッ!」

その女性は、一目散に2人に駆けて行き、抱きしめる。

「良かった・・・・2人とも、怪我は無い?」

その問いには答えず、2人は母親に抱きつき、わんわん泣き出す。

その女性は2人を宥める。

そんな親子を腕を組みながら微笑ましそうに見つめる拓也。

すると、

「ぐぐぐ・・・・・どいつもこいつも俺様を舐めやがって・・・・・」

と言いながら、デバイスを女性親子に向けようとする男。

「しつ・・・こいっ!」

拓也は少し力を入れて、腕を組んだまま男を踏ん付けた。

「ぎゃっ!?」

今度こそ男は気絶した。

すると、フェイトたちが駆け寄ってくる。

拓也もバリアジャケットを解除した。

それがきっかけになったかのように、管理局員たちが動き出し、男達を捕縛していく。

そんな中、局員たちに指示を出していた大柄の男性が、拓也達に気付き、こちらに歩いてきて、話しかけた。

「時空管理局・首都防衛隊、ゼスト・グランガイツだ。君たちの協力に感謝する」

その男性、ゼストは敬礼をしながらそう言った。

「時空管理局・嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサです。偶然にも現場に居合わせた為、真に勝手ながら友人と共に事態の収拾に当たりました」

フェイトがそう返す。

「いや、それは構わない。お陰で誰一人犠牲を出す事もなく犯人を捕まえる事が出来た。改めて感謝する」

ゼストはそう言うと、拓也に視線を向ける。

「何ですか?」

その視線が気になり、拓也は尋ねる。

「いや、先程君は、どうやってあの炎を防いだのか気になってね」

ゼストの言葉に、ああそうかと納得する。

「簡単ですよ。相手の炎が当たる瞬間に、自分から炎を噴出させて相手の炎を防ぎ、その炎を全身に纏う事で火達磨になった様に見せかけただけです」

そう言って、拓也は掌に炎を発生させる。

その瞬間、ゼストは目を見張った。

「な、何か?」

その目に驚いて思わず拓也は少し引いてしまう。

その時、

「ああ~~!君っ!」

横から女性の声が響き、先程のギンガとスバルの母親の女性が割り込んで来て、拓也の手から出ている炎をまじまじと見つめた。

「やっぱり!魔力を炎に変換してるのに魔法陣が発生してない!君!属性特化型魔導師でしょ!?」

珍しい物を見るような顔で、その女性は拓也に詰め寄った。

まあ実際、属性特化型魔導師は珍しいというか、稀なのだが。

「ええ、そうですけど・・・・・あなたは?」

「あ、ごめんね。私はクイント・ナカジマ。さっき君に助けてもらったスバルの母親よ」

そう言って、先程拓也が助けたスバルに顔を向ける。

拓也も其方に視線を向け、スバルの姿を確認すると、ああ、と頷く。

「遅れたけど、娘を助けてくれてありがとう。あなたのお陰でスバルは怪我をすることもなかったわ」

「ああ・・・・いえ、困った時はお互い様です」

拓也は、真っ直ぐにお礼を言われ、少し照れながらそう返す。

「おいクイント」

ゼストがクイントに声をかける。

「あ、隊長・・・・・」

クイントは冷や汗を流した。

「さっさと仕事をしろっ!」

「は、はいい~!」

ゼストのお叱りにクイントは駆けて行った。

「すまんな。部下が迷惑をかけた」

「いえ・・・・・」

ゼストが謝り、拓也はそう返す。

その時、

「ごめんごめん!まったぁ~!?」

エイミィが駆け寄ってきた。

「エイミィ」

フェイトがエイミィの名を呼ぶ。

「さっきこの辺りで犯罪者が脱走したって聞いて、慌てて戻ってきたんだよ」

「あ、それなら・・・・・」

なのはが答えようとした時、

「それならば、先程この子達が捕まえてくれた」

ゼストが言った。

「ええっ!?」

驚くエイミィ。

「時空管理局・首都防衛隊、ゼスト・グランガイツだ」

ゼストが名乗ると、

「失礼しました。巡航L級8番艦アースラ所属、執務官補佐、エイミィ・リミエッタです。それで皆、一体何があったの?」

エイミィが名乗り返し、拓也達に説明を求める。

拓也達は、銀行で待っていたとき、犯罪者が押し入り、拓也とスバルを人質にして包囲網の突破を図ろうとしたので、4人(ほぼ拓也1人)で犯人を無力化したことを説明した。

「ふ~ん。運が無いねぇ、その犯人たちも。よりにもよって拓也君を人質にするなんて」

事の成り行きを説明すると、エイミィはさほど驚いた様子はなく、逆に納得してしまった。

まあ、拓也の強さを知っているエイミィからすれば当然の反応だろう。

エイミィはゼストに向き直ると、

「あ、この子達は私が責任もって送りますのでご心配なく」

「そうか・・・・私も事後処理があるのでな。これで失礼する」

お互いに敬礼すると、ゼストは去っていく。

「さて、何か色々あったけど、予定通り観光しよっか」

エイミィの言葉に全員が頷き、移動しようとした時、スバルがトコトコと駆けて来る。

「お兄ちゃん!」

拓也を呼び止めた。

「助けてくれてありがとう!」

スバルはそうはっきりとお礼を言った。

拓也は微笑んでスバルの頭を撫でる。

「気にすんな。困った時はお互い様だ」

そう言って、拓也はスバルに背を向ける。

スバルは、拓也の姿が人混みで見えなくなるまで手を振り続けた。






あとがき

とりあえず幕間その一完成。

こんな感じでいいのかな?

幕間なんて書くの初めてだからこれで良いのか分からない。

とりあえずストライカーズキャラを絡ませてみたけど、この設定が活かせるかは分かりません。

あと、話の流れは納得できますかね。

最初はベタに銀行強盗ネタでもやろうと思ってた。

場所が銀行なのはその名残。

保護者代行はエイミィ以外に思いつかなかった。

しかも、エイミィを離れさせる理由が結構強引。

相変わらずのご都合です。

幕間は、今回のミッド編。

地球編を1話と????編を1話。

そして、なのは撃墜編(仮)を書いて、StS編に行こうと思ってます。

では、次も頑張ります。





[8056] 幕間その二
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/10/31 23:20
幕間その二 海鳴での出来事。


闇の書事件から約一ヶ月。

ミッドでの出来事を除き、特に事件も無く拓也達は日常を過ごしていた。

変わったことといえば、今までデジタルワールドにいたプレシアとアリシアが海鳴に引っ越してきた。

2人の戸籍などは、クロノやリンディが頑張ったらしい。

そして、書類上はフェイトとは血の繋がりは無く、フェイトがプレシアの養子になるという形である。(特に偽名は使っていない。同姓同名でも、アリシアの生存と年齢差が証拠となり、別人扱い)

戸籍上は義母と義姉(アリシアが姉と言い張った。見た目と肉体年齢はフェイトの方が上。ただし、生まれたときからの実年齢で言えば〇0歳以上のお〇さん)だが、名実共に家族となった。

そんなある日の事。




今日も何事もなく学校が終わり、放課後になる。

拓也はいつも通りフェイトと待ち合わせている。

拓也がフェイトと一緒に帰るのは、この一ヶ月で当たり前となった。

既に拓也とフェイトが恋人同士なのは周知の事実となっており、最初こそからかわれたりしたが、今では表向き平穏である。

しかし、実際は―――――――




「まてぇい!」

待ち合わせ場所に向かっていた拓也が、何処からか聞こえてきた声に呼び止められる。

「・・・・・・またか」

拓也は疲れたようにため息を吐く。

拓也の前に1人の男子生徒が現れた。

学年は拓也と同じ位である。

「我こそはフェイトちゃんファンクラブ、FFF(ファースト・フレンド・フェイトちゃん)所属!会員ナンバー053!ファントム藤崎!我らのアイドル、フェイト・テスタロッサちゃんを我が物にせんと企む諸悪の根源、神原 拓也よ!正義の拳で打ち砕いてくれるわ!!」

そう叫んで問答無用で拓也に向かって一直線に殴りかかってくるファントム藤崎。

しかし、拓也はもう一度ため息を吐き、少し身体を横にずらす。

唯それだけで、拓也は拳を避けた。

渾身の一撃をあっさりと避けられ、その勢いでつんのめるファントム藤崎。

「ほい」

その足を払う拓也。

バランスが悪かったファントム藤崎はあっさりと崩れた。

「ぷぎゃっ!?」

顔面から床に倒れ、動かなくなる。

「やれやれ・・・・」

拓也は何でもなかったように歩き出した。





―――――――このように拓也は、フェイトのファンクラブを名乗る生徒たちから度々襲撃を受けている。

まあ、幾度も戦いを潜り抜けた拓也に普通の小学生が敵うわけもなく、適当にあしらわれているのだが。

そんなこんなで、今回も襲撃者を返り討ちにした拓也は、フェイトとの待ち合わせ場所に到着する。

「あ、拓也!」

待ち合わせ場所には、既にフェイトがいて、拓也が来た事に気付くと笑みを浮かべる。

「待ったか?」

「ううん、私もさっき来たところ」

デートの待ち合わせのような会話だが、本人たちに自覚はない。

2人は揃って校門を出る。

ふと、なのはと信也が翠屋の方向に歩いていくのを見かける。

神原家と翠屋は別方向なのだが、最近の信也はなのはを送っていくようになっている。

「あれで未だに友達って言ってるんだからなぁ・・・・・・」

拓也は半ば呆れた声を漏らす。

「あはは・・・・・なのはって鈍感みたいだから」

フェイトが苦笑する。

「まあ・・・・・あの友達以上恋人未満の関係がいつまでつづくのかねぇ・・・・」

拓也はそう呟いて2人を見送り、自分たちの家の方向に歩き出す。

すると、拓也達が歩いている横を見覚えのある高級車が走って行く。

「あれって、アリサの車だよね?」

フェイトが呟く。

「だな。相変わらずのお嬢様だぜ」

後部座席の窓から、アリサとすずかの姿が見える。

恐らく、これから習い事なのだろう。

そう思って、2人が再び帰路につこうとした時、

――キキィイイイイ   ドガァ

目の前でアリサ達が乗った車に、トラックが衝突していた。

その時、トラックの荷台から、10人近い覆面を被った男たちが出てきて、アリサ達の車を取り囲む。

そして、後部座席からアリサとすずかを引っ張り出した。

「何すんのよっ!このっ!」

「嫌ですっ!放してください」

暴れる2人。

「アリサッ、すずかっ!?」

フェイトが思わず叫び駆け出そうとした。

「フェイト!?」

「フェイトちゃん!?」

フェイトの叫びで2人に気付くアリサとすずか、そして覆面達。

覆面の1人が、懐から何かを取り出す。

「フェイト!危ねえ!!」

その事に気付いた拓也が咄嗟にフェイトを押し倒そうとした。

「きゃっ!?」

フェイトの短い悲鳴。

そして、

――バスッ

「ぐっ!?」

音が聞こえた時、拓也が苦しそうな声を漏らす。

覆面が持っていたのは、サイレンサー付きの拳銃だった。

だが拓也は、フェイトを庇うように地面に倒れる。

「チッ」

覆面は舌打ちすると、アリサとすずかをトラックに連れ込み、トラックで逃走した。

「く・・・・くそ・・・・」

拓也は何とか身体を起こす。

「た、タクヤ・・・・血が・・・・・・」

フェイトが震える声で言った。

拓也の左肩からはかなりの量の血が流れていた。

「心配するな、かすり傷だ」

拓也は、左肩を押さえて立ち上がると、アリサ達が乗っていた車に駆け寄る。

拓也は、運転手でもあったアリサの執事の鮫島の様子を見る。

鮫島は、どうやらトラックと接触した時に頭を打っていたらしく、頭部から血を流して気絶している。

とりあえずの命の危険はなさそうであった。

「フェイト!救急車を呼んで!それから念話で信也となのはにアリサとすずかがさらわれた事を大人の人達に伝えるように頼め!俺はあのトラックを追う!」

「う、うん!分かった!」

フェイトは頷く。

拓也は、周りに人影が無い事を確認すると、

「サラマンダー!アグニフォーム!」

アグニフォームを纏い、建物の屋根に飛び乗る。

拓也は辺りを見回し、例のトラックを見つけた。

「逃がすかっ!」

拓也は屋根から屋根に跳躍し、トラックの後を追った。




暫く拓也が追い続けると、トラックはとある廃ビルの敷地内へ入っていく。

拓也はその隣のビルの屋上に着地する。

そこから様子を窺うと、トラックから連れ出されたアリサとすずかが廃ビルの中へ連れて行かれた。

「ここが奴らのアジトか・・・・・」

拓也は念話でフェイトに報告をする。

(フェイト、聞こえるか?フェイト)

(タクヤ?)

返事はすぐに返ってきた。

(フェイト、そっちはどうなった?)

(うん。こっちは鮫島さんが救急車で運ばれて、アリサとすずかが誘拐されたことは、なのはと信也からなのはのお兄さんの恭也さんと、すずかのお姉さんの忍さんに伝わったよ)

(そうか。こっちは誘拐犯のアジトらしき廃ビルを突き止めた。後は警察に連絡してもらえば何とか・・・・・・・)

拓也がそう提案したが、

(その事なんだけど、すずかの家、色々と訳ありらしくて・・・・・警察沙汰になると厄介なことになるかもって恭也さんと忍さんが・・・・・・)

(・・・・じゃあ如何するんだ?)

(恭也さんが助け出すって言ってる。場所を教えて)

(ここは・・・・・・って、口で説明するより、俺の魔力反応探した方が早いだろ)

(あ、そうだね。じゃあ、そこを動かないでね)

(ああ)

そう言って念話を終える。

すると、

「うっ・・・く・・・?」

拓也はふらついた。

拓也の肩の怪我は、思ったよりも深く、未だに血が止まらない。

今はバリアジャケットで押さえているので出血は最小限で済んでいるものの、今の目眩は、失血から来るものだった。



少しすると、拓也の前に転送の魔法陣が浮かび上がり、フェイト、信也、なのは、恭也が現れた。

「これが転送という奴か・・・・・・」

初めての転送で声を漏らす恭也。

「お兄さん!アリサちゃんとすずかちゃんは!?」

なのはが一目散に聞いてきた。

「落ち着けなのは。アリサとすずかは隣の廃ビルに連れて行かれた」

「じゃあ、早く助け出さないと!」

といって話も聞かずレイジングハートを起動させ、バリアジャケットをまとって飛び出そうとした。

「落ち着けと言ってるだろうが!」

拓也は飛び出そうとしたなのはの首根っこを引っ掴む。

「にゃっ!?」

なのはは声を漏らす。

「相手は最低でも10人。あのビルの中に居るのなら、もっと多い可能性がある。それに、拳銃持ち。まあ、それだけだったらなのは1人でも大丈夫だけど、今はアリサとすずかがいるんだぞ。闇雲に突っ込んでも2人が人質にとられる可能性が高い」

そこまで聞いて、なのはが大人しくなる。

「ちゃんと作戦を立てるぞ」

という事で作戦タイム。

「まず聞くけど、お前ら1対複数の経験は?」

拓也が尋ねる。

「え~っと・・・・・・時の庭園での傀儡兵相手にした時だけかな?」

「僕も同じだよ」

なのはと信也が答える。

「私は、訓練でなら何回かあるけど、実戦だとなのは達と同じだよ」

フェイトが答える。

「そうか・・・・・恭也さんは?」

拓也は恭也に尋ねる。

「何故魔法使いじゃない俺に?」

恭也が問う。

「戦いを続けていると、なんとなく相手の強さが分かるんですよ。俺の実戦経験の数は、この3人より遥かに多いんで」

確かに拓也の実戦経験の数はデジタルワールドの戦いも含めれば遥かに多い。

しかも、魔法みたいに非殺傷などというものは無い為、常に命がけであり、敵の強さも同等どころか格上と戦うことが多かったため、戦闘の密度も非常に高い。

「ふむ、君はなのは達以上に戦士の心得があるようだな。一度手合わせしてみたいものだ」

その言葉に、拓也は苦笑する。

「それで、答えは?」

拓也は尋ねる。

「ああ。俺は問題ない。1対多数の経験も何度かある」

恭也は2本の木刀を取り出しながらそう言った。

それを聞くと、拓也は思案する。

そして、少しすると拓也は切り出した。

「なあフェイト。結界を張ってアリサとすずかだけを確保するって出来るか?」

拓也はフェイトに尋ねる。

「え、え~っと・・・・・私じゃ無理かな。アリサとすずかが魔導師なら何とかなったと思うけど、一般人の中から特定の人物だけを確保するのは無理だよ。結界魔法はあまり得意じゃないし・・・・・・ユーノやエリスなら出来たと思うけど・・・・・・ごめんね」

フェイトは気落ちしながら答えた。

「気にするなよ。今のはダメもとの案だったんだ。そうなると、力ずくで何とかするしかないか。じゃあ俺が考えた作戦を説明するぞ」

全員が拓也に集中する。

「まず、今回の作戦の最優先事項は、アリサとすずかの救出だ。そこでなのは」

拓也はなのはを指名する。

「は、はい!」

「お前がサーチャーで廃ビルの中を調べて、アリサとすずかが何処に捕まっているか調べるんだ。あと、犯人たちの人数と位置も調べて作戦中に念話で常に知らせて欲しい」

「はい!」

なのはは元気良く返事をする。

「次にフェイトと信也」

「うん!」

「何?」

「お前たちはスピードがある。お前たちは直接アリサとすずかを救出する役目だ。犯人たちに構うな。アリサとすずかの安全を最優先にするんだ」

「分かったよ兄ちゃん」

「あ、でもタクヤ」

信也は返事をしたが、フェイトが口を挟む。

「何だ?」

「きっと、アリサとすずかの周りには、見張りが沢山いると思うよ?」

「ああ。それは分かってる。そこで俺と恭也さんの出番だ」

フェイトの言葉に拓也が答えた。

「俺と恭也さんは、正面から乗り込んで暴れる。そうすれば、注意は俺達に向くはずだ」

「なるほど、つまりは陽動か」

恭也が、納得するように頷いた。

「そういう事です」

拓也が頷く。

「そんな!?危険だよ!」

フェイトが叫んだ。

「大丈夫だよ。いざとなったらアルダフォームでブッ飛ばすから」

「でも・・・・タクヤ、肩に怪我を・・・・・」

「そっちも大丈夫だ。かすり傷だって言ったろ?」

実際はかなり深い怪我なのだが、拓也はフェイトに心配を掛けないために見栄を張った。

「じゃあなのは、サーチャーを頼む」

「分かりました」

なのははサーチャーを飛ばし、ビルを隅から隅まで調べていく。

「見つけた!」

なのはがアリサとすずかを見つける。

「アリサちゃんとすずかちゃんは、3階の丁度真ん中辺りの部屋に2人一緒に居る。同じ部屋に犯人が5人。ビルのあちこちに10人の計15人」

「わかった。じゃあ恭也さん、行きますか」

「ああ」

2人はビルの玄関前に移動する。

念のために防音結界が張られたことを確認した。

拓也が両拳を合わせる。

その時、

「ぐっ!」

肩の傷が痛み、拓也は声を漏らすが、

「バーニング!サラマンダー!!」

バーニングサラマンダーを放ち、派手に入り口を吹き飛ばした。





同じ頃、アリサとすずかはとある部屋にロープで縛られていた。

「ちょっとあんた達、私達を誘拐して如何しようって言うのよ!?」

アリサは気丈にもそう問いかける。

「そんなの決まってるだろ?身代金目的さ。バニングス家のご令嬢殿」

「くっ・・・・だったらすずかは関係ないじゃない!すずかは解放して!」

「ア、 アリサちゃん・・・・・」

アリサはそう言うが、

「いいや、其方のお嬢さんも中々の家に住んでいるようで。いやはや、偶然とは怖いですな」

今の言葉で、すずかが地主の家の令嬢ということが既に知られていることに気付く。

「あんたら・・・・・全部計算づくで・・・・・」

と、その時、

――ドゴォオオン

爆発音が響いた。

「何事だ!?」

犯人の1人が叫ぶ。

すると、外から1人が駆け込んでくる。

「侵入者のようです!」

そう報告する。

「なんだと!?警察か!?」

「い、いえ、それが・・・・・・」

「どうした!?はっきりと言わんか!」

「は、はい、それが、男1人と・・・・ガキが1人の計2人です」

「は?」

信じられない報告に、犯人は声を漏らした。





外では、なのはがサーチャーで様子を窺っていた。

たった今突撃していった2人は、入り口付近の4人をあっという間に片付けた。

そして、それに呼応して、ビルに散り散りになっていた犯人たちが、拓也と恭也に集まってくる。

(お兄さん!6人が集まってきます!気をつけて!)

(了解!)

念話で拓也に注意を促す。

「フェイトちゃん、信也君。準備はいい?」

「うん」

「オッケーだよ」

2人は返事をする。

「じゃあ、北側の窓から侵入して、そのまま真っ直ぐ行った壁がアリサちゃんとすずかちゃんが居る部屋の壁だよ」

「「了解」」

フェイトと信也はなのはの言ったとおり北側の窓から侵入する。

そして、真っ直ぐ行くと壁に辿り着いた。

フェイトと信也は顔を見合わせると頷く。

信也がブレイブハートを構えた。

「ブレイブハート!カートリッジロード!」

『Load Cartridge.』

ブレイブハートのカートリッジがロードされ、信也の魔力刃が勢いを増す。

そして、その魔力刃で壁を切り裂いた。

崩れていく壁。

その向こうでは、アリサとすずか。

そして犯人たちが呆気に取られた顔をしていた。

その瞬間、

「プラズマランサー!ファイア!!」

フェイトの放った電撃弾が、犯人たちに降り注ぐ。

「「「「「あぎゃぁああああああああああっ!?」」」」」

電撃に見舞われ、倒れ伏す犯人たち。

それを確認すると、2人はアリサとすずかに駆け寄った。

「アリサ、すずか、大丈夫?」

フェイトが心配そうに声をかける。

「フェイト・・・・・」

「信也君・・・・・・」

アリサとすずかが2人を見た。

「ちょっと動かないで」

信也が魔力刃でアリサとすずかを縛っていたロープを切断する。

アリサとすずかを解放したとき、すずかが気付いた。

フェイトと信也の後ろで、電撃を受けた犯人の1人に意識があり、銃をこちらに向けていたことに。

「危ない!」

咄嗟にすずかは3人を庇うように前に出て、

――ズドォオオン

音が響いた。







その少し前、

隣のビルの屋上で、サーチャーを使い様子を窺っていたなのは。

拓也と恭也の方は、既に殆ど鎮圧されている。

「お兄ちゃんとお兄さんの方は大丈夫みたいだね」

そう言って、意識をフェイトたちの方向に向ける。

しかし、そこで気付いた。

アリサとすずかを助けたフェイト達の後ろで、犯人の1人がまだ意識があったことに。

そして、銃をフェイト達に向けようとしていた。

「危ない!レイジングハート!」

『Buster mode. Drive ignition.』

なのはの呼びかけに応え、レイジングハートがバスターモードに変形する。

そして、狙いを定めた。

本当なら、フェイトと信也に念話で注意するように呼びかければ良いだけの筈だが、躊躇無く砲撃を選ぶ所は、なのはらしいと言えばらしい。

「ディバイィィィィィィィン・・・・・・・・・バスターーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

桜色の閃光が放たれた。






フェイト、信也、アリサ、すずかは呆気に取られていた。

すずかが突然前に飛び出たかと思うと、犯人が銃を構えていたのでフェイトと信也は咄嗟に障壁を張ろうとした。

しかしその瞬間、目の前を桜色の閃光が覆いつくした。

犯人たちは全員階下に叩き落された。

まあ、非殺傷なので死んではいないだろうが。

(皆!大丈夫!?)

なのはから念話が飛んできた。

(う、うん、ありがとうなのは)

信也がそう返した。

だが、

(コラァ!なのは!お前砲撃撃ちやがったな!!)

拓也が念話で怒鳴ってきた。

(にゃ!?で、でもそうしないとフェイトちゃんたちが・・・・・)

(そのために念話で現状を知らせろって言ったんだろうが!)

(あ・・・・・・)

ようやくなのはは、念話を使えばよかったことに気付いたらしい。

(ったく!砲撃を撃たせないために、お前にはその役目を与えたって言うのに!)

(あ、あの、お兄さん?私が砲撃を撃つと何か問題が?)

何故砲撃を撃たせないようにしていたのか分からないなのはは尋ねる。

(あのな・・・・・ここは廃ビルだぞ・・・・・・それで、そんなボロボロのビルにお前の強力な砲撃なんぞぶちかませばどうなるか・・・・・・・)

そこまで言った時、ビルの中で天井からパラパラと欠片が落ちてくる。

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

(・・・・・・・・・・・)

(あ・・・・・・あはは・・・・・・)

その後の展開がどうなるか予想した一同は沈黙し、なのはは乾いた笑いを漏らす。

――ズゴゴゴゴゴ

ビルが崩壊を始める。

(フェイト!アリサとすずかを連れて脱出!信也!犯人達を外まで運ぶぞ!)

(う、うん!)

(わ、わかった!)

崩壊するビルの中、慌しく脱出する一同。

特に怪我をすることも無く全員無事に脱出できた。

しかし、ビルが崩れれば、流石に人が集まってくる。

すると恭也が、

「ここは、俺とアリサちゃんで何とか誤魔化す。皆は逃げろ。アリサちゃん、すまないが・・・・・」

「分かってます。誘拐されたのは私1人。偶々現場を目撃した恭也さんに助け出されたってことにすればいいんですね?」

アリサが、察した雰囲気で言った。

恭也が頷く。

「アリサちゃん・・・・・」

すずかが何か言いたげだったが、

「ほら、早く行きなさい。何か訳ありみたいだけど、無理に聞こうとは思わないわよ」

「う、うん・・・・・ありがとうアリサちゃん」

「すずか、早く」

フェイトは転送用の魔法陣を展開して、その場から転移した。




転移した先は、フェイトの家である。

プレシアに事情を説明して、口裏を合わせてもらうようにお願いする。

その後、

「あなたたち、疲れたでしょう?お風呂を貸してあげるから入りなさい」

プレシアはそう言って、半ば強引にフェイト、なのは、すずかをお風呂に入れる。

その後、拓也に向き直ると、

「ほら、肩を見せてみなさい。怪我してるんでしょう?さっきからバリアジャケットを解除しないのはそれが理由でしょう?」

プレシアには、拓也が怪我を負っている事は、バレバレだった。

拓也は大人しくバリアジャケットを解除し、傷口を見せる。

その傷口を見て、かすり傷だと聞いていた信也は顔を青くする。

「かなり酷いわね。とりあえず表面だけでも治療しておくわ」

プレシアは治癒魔法を唱え、傷口を塞ぐ。

「ありがとうございます」

拓也は礼を述べた。

「傷口は塞いだけど、それは表面だけよ。それに失った血も戻った訳じゃないから、暫くは無理は禁物ね」

「わかりました」

「それにしても、良く我慢したわね?」

「フェイトに心配かけたくなかったんで」

プレシアの言葉に、そう答える拓也。

「それでも、そのせいであなたが死んだりしたら、フェイトは悲しむわ」

「大丈夫です。死ぬ気なんかありませんよ」

拓也は笑ってそう言う。

「それならいいけどね」

因みにその後、風呂から上がってきたフェイトが、血まみれの服装の拓也を見て倒れたのは余談である。






あとがき

幕間その二完成。

ベタベタの誘拐ネタです。

月村家の夜の一族云々は、自分がとらハ3を知らないので、訳ありというだけで終わらせました。

何気にこの小説初登場の恭也。

恭也の強さもあんまり分かってないんで戦闘シーン飛ばしました。

やっぱり最後の切り方が上手く行かないな。

めっちゃ強引に切りました。

もっと精進です。

さて、次回は・・・・・秘密です。

因みにゼロ魔の方がスランプに陥ったらしく、上手く書けそうにありません。

無理して書くと五十一話の二の舞になるので、暫くリリフロ一本になると思います。

申し訳ない。

ともかく、次もお楽しみに。





[8056] 劇場版(という名の幕間その三)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/01 21:44
闇の書事件から1年。

輝二、輝一、はやて、リインフォース、ヴォルケンリッターの裁判は無事に終わり、当初の見解通り、奉仕活動と保護観察という判決が下った。

そして、皆の裁判が終わったその日、闇の書事件に関わったメンバーで集まる事になった。



アースラに集まる拓也、フェイト、なのは、信也、アルフ。

輝二、輝一、はやて、リインフォース、ヴォルケンリッターの面々は、ミッドチルダから戻ってきたために、既にアースラに乗っている。

今日は、裁判の勝訴祝い(?)で、アースラの食堂で、簡単なパーティーのような事をするためである。

現在のアースラは、闇の書事件の時と同じように、衛星軌道上にいる。

アースラのブリッジには、リンディとエイミィだけが居り、残りのメンバーは既に食堂であった。

「エイミィ、そろそろ始めるけど?」

リンディが、オペレーター席で作業中のエイミィに話しかける。

「あ、はい。もうすぐ終わりますから、もう少し待ってください」

作業を続けながら、エイミィがそう返す。

エイミィが、最後にデータの確認を行なっていたとき、

――ピピッ

コンピューターが、異常を知らせる音声を鳴らす。

「あれ?何だろう?」

エイミィが、原因を調べるためにパネルを操作していく。

「エイミィ?如何したの?」

気になったリンディが声をかける。

「はい。今調べてみたんですけど、意味不明なデータが混じってるみたいなんです」

「意味不明なデータ?」

「はい、今、画面に出します」

メインモニターに、データが表示される。

それを見たリンディは、

「・・・・・・・タマゴ?」

思わず呟いた。

表示されたデータはタマゴの形をしていた。

そのタマゴのようなデータは、生きているように脈動している。

そして、そのタマゴのデータが孵ると同時に、

【Hello】

そんなメールが送られてきた。





劇場版(笑) リリカルフロンティアA`S


~~僕らのウォーゲーム~~





イメージOP


氷牙様作のETERNAL BLAZE OF FRONTIERを脳内放送でお楽しみください。(感想の164にあります)





タマゴから孵ったデータは、クラゲに一つ目が付いた様な形をしていた。

そして、それはアースラのデータを食べ始める。

「こ、これ!データを食べてる!コンピューターウイルス!?」

エイミィが驚きなら叫ぶ。

「エイミィ!すぐに抗体プログラムを!」

リンディが指示を出す。

「了解!抗体プログラム、発射します!」

エイミィは指示通りパネルを操作し、抗体プログラムを使用する。

抗体プログラムがクラゲのようなデータに送られ、

「嘘っ!?」

エイミィは思わず声を漏らした。

抗体プログラムが送られた時、そのクラゲのようなデータは身体を変化させ、一回り大きくなり、下部分に爪が付いた形態になる。

それと同時に、またメールが送られてきた。

【オナカスイタ】

「お腹空いたぁ!?」

エイミィが叫ぶ。

しかし、そのすぐ後に、データを食べるスピードが増す。

「データ侵食スピードが加速!?」

エイミィは焦った声を漏らす。

「エイミィ、このまま侵食が進むとどうなると思う?」

リンディが問いかける。

「は、はい、このままデータが食べ続けられると、アースラの彼方此方でトラブルが発生。最悪、アースラが操舵不能になり、地球に墜落します」

「そう・・・・・私も同じ意見ね。エイミィ!何としてでもあのデータを排除するわよ!」

「了解!」





その頃食堂では、パーティーの準備が完了していた。

しかし、リンディとエイミィが来ないので、始める事が出来ない。

「リンディさんとエイミィさん、遅いね」

なのはが呟く。

「うん、何かあったのかな?」

フェイトも気になるようでそう言った。

「はよ来な始められんで」

はやてもそう言う。

因みにはやての足は順調に回復してきており、今は松葉杖を使えば移動できるまでになっていた。

「クロノ、連絡とってみろよ」

拓也がクロノにそう言った。

「仕方ないな・・・・・」

そう言ってクロノはモニターを開き、ブリッジに通信を繋ごうとした。

だが、ノイズが映るだけで、一向に繋がらない。

「おかしいな?」

クロノは首を傾げる。

クロノはその後も操作するが、変わりはない。

「故障でもしたんじゃねえのか?」

ヴィータがそう言う。

「そんなはずないと思うんだが・・・・・」

クロノはそう言うが、繋がる気配すらない。

「全く、面倒くさいな。俺がひとっ走り行って呼んでくるよ」

拓也がそう言って、食堂の出入り口に向かって駆けて行く。

「あ、私も行くよ」

フェイトもそう言って、拓也の後を追う。

アースラの扉は、ほぼ全て自動ドアなので、拓也は余りスピードを落さずに食堂を出ようとした。

だが、

――ガンッ

「んがっ!?」

食堂の出入り口の扉は開かずに、拓也は扉に激突する。

「タ、タクヤ!?大丈夫!?」

フェイトは慌てて拓也に駆け寄った。

拓也は打った顔に手を当てながら起き上がる。

「いって~~・・・・・何なんだよ?」

拓也はもう一度ドアに近付くが、扉は全く反応しない。

試しに拓也はドアを横に引いてみるが、これまたビクともしない。

「んぎぎぎ・・・・・・」

拓也は全力で扉を開けようとしたが、開く様子は全く無い。

そんな拓也の様子に気が付いたのか、他のメンバーが近付いてくる。

「如何したんだ?」

輝二が尋ねる。

「ああ、ドアが開かないんだ」

「何?」

輝二は、試しに拓也と一緒に開けようとするが、それでも開かなかった。

すると、クロノが出てきて、ドアの隣で屈みこむ。

それで予想がついた輝二は、その時点で引くことを止めたが、拓也は未だに開けようと頑張っている。

そして、クロノがドアの隣の下の方にあった小さな扉を開け、そこにあったレバーを引いた。

その瞬間、ビクともしなかった扉が急に軽くなった。

「おわっ!?」

開ける事に全力を注いでいた拓也は、突然の事態に対応できず、派手にすっ転んだ。

「いざという時に、手動で開けられる非常レバーぐらい付いてるよ」

クロノがさらっと言った。

「早く言え!!」

拓也が起き上がると同時に叫んだ。




一同がブリッジまでやってきて、ブリッジの扉も手動で開ける。

「艦長!エイミィ!一体何が?」

クロノがブリッジに入ると同時にリンディとエイミィに尋ねる。

「あ、クロノ君、皆。実は、アースラのコンピューターにウイルスが入り込んだみたいで・・・・」

「ウイルス?抗体プログラムは使ったのか?」

「それはもちろん!・・・・・だけど、そのウイルス、抗体プログラムを使うたびに形態を変化させて強力になっていくみたいなの」

エイミィは、パネルを操作して、現在の状態を表示する。

そこには、先程とはまた違った姿になったウイルスがいた。

それは、全体的に紫色をしており、顔の下から伸びた無数の触手が身体になっており、同じ部分から2本の手が伸びている。

「何これ?」

シャマルが、ヘンテコな姿に思わず声を漏らした。

「うん。最初はタマゴだったんだけど、何回か形態を変えていって今はこの姿なの」

エイミィがそう言いながら、今までの形態の変化を画面に出す。

最初がタマゴ。

次に、クラゲに一つ目の姿。

その次が、前のクラゲの下に爪が付いた姿。

そして、今の姿である。

「それで、さっきも言ったけど、姿を変えるたびに強力になっていくみたいなんだよ」

エイミィはそう言った。

そのデータを見て、拓也は思い当たる事があった。

(・・・・・・最初がデジタマ?それで幼年期前半、幼年期後半。そして成長期・・・・・・)

「まさかこいつ・・・・」

拓也はそう声を漏らしながら、輝二と輝一に視線を向ける。

2人も同じことを考えているようで、

「ああ、間違いないだろう」

輝二が頷きながら答え、

「デジモンだ」

輝一が確信を得て言った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――クラモン

・幼年期前半

 不気味な一つ目が特徴の幼年期デジモン

 必殺技は『グレアーアイ』






――ツメモン

・幼年期後半

 クラモンが進化した姿。

 人間の足のような姿をしている。

 必殺技は『ネイルスクラッチ』






――ケラモン

・成長期

 ネットワーク上のデータを次々と食い破壊し続ける成長期デジモン。

 必殺技は、エネルギー弾を吐き出す、『クレイジーギグル』。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





その言葉で、デジタルワールドに行った事の無いエイミィ以外が反応した。

「今、デジモンと言ったか?」

クロノが確認するように問いかける。

「ああ、十中八九間違いないだろう。奴はデジモンだ」

輝二が答える。

「ク、クロノ君?デジモンって?」

エイミィが戸惑うように聞くが、

「話は後だ。これ以上進化されたら厄介だぞ!」

拓也が話を切り、其方に意識を向けた。

「でも、如何するんや?コンピューター内に居る以上、こっちからは手出しできへんやん」

はやてが言った。

その言葉は的を射ており、こちらからは如何する事も出来なかった。

しかし、その時、

「私が行きます」

はやての傍にいたリインフォースがそう言った。

全員の視線がリインフォースに集まる。

「今の私の身体は、デジモンと同じくデータで構成されています。ですので、私なら電脳世界に入る事が可能です」

「本当か!?」

クロノが叫んだ。

「はい」

リインフォースは頷く。

「で、でも、危険やで!」

はやてがそう言うが、

「我が主、恐らくこのままでは、アースラが操舵不能に陥り、地球へ墜落する危険性があります」

「なんやて!?」

はやては驚愕する。

「リインフォースの言うとおりだよ。このままデータを食べ続けられれば、アースラが動けなくなっちゃう」

それを聞くと、はやては俯く。

そして、顔を上げると、

「リインフォース、絶対に無理はあかんで」

「わかりました」

はやての言葉に、頷くリインフォース。

すると、リインフォースは、エイミィの居るモニターの前に立ち、手をモニターに伸ばす。

そして、手がモニターに触れた瞬間、リインフォースの身体がデジコードになり、モニターに吸い込まれていった。

その現象に驚き、固まるエイミィ。

モニターの向こうでは、リインフォースがネットワーク内に現れた。

そのリインフォースに、拓也たちは声をかける。

「これ以上進化されると、リインフォースでも倒すのは難しい」

「だから、出し惜しみせずに一気に決めろ!」

「最初から全開だ!」

輝二、輝一、拓也の順で声をかけた。

「了解した」

リインフォースは返事を返すと、

「スレイプニール」

背中に黒い翼を生やし、ケラモンがいるブロックへ向かった。




ケラモンの居るブロックに入ると、データを食べ続けるケラモンを発見する。

「あれか!」

リインフォースはケラモンの姿を確認すると、

「刃以て、血に染めよ」

無数の紅の短剣を具現させる。

「穿て、ブラッディダガー!!」

その短剣を、高速で射出した。

それは、こちらに気付いていなかったケラモンに直撃。

不意打ちを受けたケラモンは吹き飛ばされる。

ケラモンの視線がリインフォースを捉えた時、再びエイミィ達の元にメールが届いた。

【アソブ?】

「また!?」

エイミィが困惑した声を漏らす。

「ふざけやがって・・・・・!」

輝二が怒りが篭った声で呟いた。

リインフォースは、近付きながら追撃のブラッディダガーを放つ。

だが、ケラモンは木の葉のように舞い、その攻撃を避けた。

更に近付くリインフォースに向け、口からエネルギー弾を吐き出す。

「はっ!」

リインフォースは障壁を張り、その攻撃を防ぎ、一気に接近、右腕を振りかぶる。

「シュヴァルツェ・ヴィルクング!!」

右腕に黒いエネルギーを纏わせ、一気に殴り飛ばした。

そのエリアの壁に叩き付けられるケラモン。

リインフォースは右腕を掲げ、巨大なエネルギー球を作り出す。

「闇に沈め!」

その巨大なエネルギー球を圧縮。

そして、一気に解放させた。

「デアボリック・エミッション!!」

ケラモンが居る周辺をエネルギーが蹂躙していく。

ケラモンに逃げ場は無い。

ケラモンは、そのエネルギーに飲み込まれた。

「やったか!?」

拓也はそう言うが、

「待って!」

エイミィが叫んだ。

ケラモンのデータを写していたモニターに変化が生じる。

「しまった!進化か!」

ケラモンが姿を変え、蛹の様な姿に6本の触手を生やしたデジモンになった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――クリサリモン

・成熟期

 蛹のような姿をしたデジモン。

 ワイヤ状の触手で触れたデータを破壊する『データクラッシャー』が必殺技。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



クリサリモンは、リインフォースに向かってワイヤ状の触手を伸ばす。

リインフォースはその攻撃を障壁で受け止めようとした。

だが、触手の先に付いた刃物の怪しい輝きに不吉な予感がした輝一が叫んだ。

「避けろ!リインフォース!!」

突然の叫びに、咄嗟ながらも飛び退き、触手の攻撃を避ける。

触手はそのままエリアの壁に突き刺さり、

「なっ!?」

突き刺さった場所のデータを破壊した。

リインフォースは驚いていたが、触手が次々とリインフォースに襲い掛かる。

「くっ!」

リインフォースは距離を取りながら戦闘を再開した。




「拙いな・・・・・」

拓也が状況を見ながら呟く。

「ああ・・・・・リインフォースは決め手に欠ける。スターライトブレイカーなら話は別だが、そんな暇は与えてくれないだろう・・・・・」

輝二もそう判断した。

モニターの向こうでは、リインフォースが必死になって戦っている。

だが、ブラッディダガーやノーマルのディバインバスターでは、クリサリモンの装甲には効果が薄い。

「くそっ・・・・レーベモン達がいれば、俺達も戦えるのに・・・・・!」

輝一は、思わず言葉を漏らした。

輝一が言った事は、拓也と輝二も同じことを考えている。

仲間がたった1人で戦っているのに、見ていることしか出来ない現実に3人は歯噛みする。

3人は、無意識に服の上からデジヴァイスだった携帯電話を握り締めた。

その時だった。

『戦いますか?しませんか?』

聞き覚えのある声が響いた。

「えっ?何、今の声」

エイミィが声を漏らす。

拓也、輝二、輝一の3人は、慌てて携帯電話を取り出した。

その画面に映るのは、オファニモンの紋章。

「「「オファニモン!」」」

3人は同時に叫ぶ。

『神原 拓也君、源 輝二君、木村 輝一君。貴方達に尋ねます。再び、戦う覚悟はありますか?』

オファニモンが問いかける。

「ある!」

拓也が即答し、

「仲間が危険に晒されているのを黙って見ていられるほど、俺は大人しくはない」

輝二が答え、

「だからお願いだ!もう一度俺達に戦う力を!」

輝一が頼む。

『・・・・・・そうですか・・・・・・ならば、もう一度問います。 戦いますか?しませんか?』

「「「戦う!」」」

3人は同時に即答する。

『分かりました・・・・・貴方達に再び、十闘士の力を・・・・・・』

オファニモンのその言葉と共に、携帯電話が輝き、デジヴァイスに形を変える。

そして、拓也のデジヴァイスには、『炎』、『土』、『木』のスピリットが。

輝二のデジヴァイスには、『光』、『水』、『鋼』のスピリットが。

輝一のデジヴァイスには、『闇』のスピリットが入っていた。

拓也はデジヴァイスを見て一旦微笑むと、デジヴァイスをモニターに翳そうとした。

その時、

「タクヤ・・・・・」

フェイトが心配そうな顔で声をかけてきた。

拓也は、一旦フェイトに向き直る。

「フェイト・・・・・」

「タクヤ・・・・大丈夫だよね・・・・?」

フェイトは、不安が拭えないまま問いかける。

その言葉を聞くと、拓也は安心させるように笑いかける。

「大丈夫だ。ここは俺達に任せとけ。ちゃっちゃと片付けて、すぐに戻ってくるよ」

そう言いながら、フェイトの頭にポンポンと手を置く。

「うん・・・・絶対に戻ってきてね・・・・・」

「ああ。約束だ」

拓也はそう言うと、サラマンダーを取り出し、フェイトに託す。

「預かっててくれ。後でちゃんと返して貰いに来るからな」

それは、必ず帰って来るという拓也の意思表示。

「うん」

フェイトはそれを理解し、サラマンダーを受け取った。

輝二と輝一も、はやてとシグナムに自分のデバイスを託していた。

3人は、モニターに向き直る。

そのモニターの向こうでは、リインフォースが戦っている。

「待たせたなリインフォース」

「すぐに助けに行くぞ」

「じゃあ、行くぜ!」

輝二、輝一、拓也の順でそう言う。

3人は、モニターに向けてデジヴァイスを翳した。

3人の身体がデジコードになり、モニターに吸い込まれていく。

「頼んだぞ、3人とも」

クロノがそう呟いた。



電脳世界に現れた拓也達は、リインフォースとクリサリモンの居るブロックに急ぐ。

そこでは、クリサリモンの触手攻撃を、リインフォースが必死に回避していた。

「行くぞ!」

拓也が声をかけ、

「「応!」」

2人が応える。

3人の突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、ヒューマンスピリットの形が描かれる。

突き出した左手に、デジコードの輪が発生。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせる。

「「「スピリット!エボリューション!!」」」

3人の身体がデジコードに包まれる。

その中で3人はスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

3人の身体にスピリットが合わさる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「アグニモン!!」

「ヴォルフモン!!」

「レーベモン!!」

3体の闘士がそこにいた。



リインフォースは触手の攻撃を必死に回避していたが、

「しまった・・・・!」

回避した方向から、絶妙のタイミングで別の触手が迫ってきた。

(避けきれん・・・・!)

そう思った時、

「リヒト・クーゲル!!」

突如飛んできた光線が、クリサリモンを吹き飛ばした。

「リインフォース!大丈夫か!?」

ヴォルフモンが声をかける。

「お前たち!」

リインフォースが驚いた表情を見せる。

「後は、俺達に任せろ」

レーベモンがそう言う。

「そうか・・・・・すまん」

「いや・・・・礼を言うのはこっちの方だ。此処まで良く頑張った」

アグニモンがそう言うと、クリサリモンに向き直る。

「リインフォースは戻っていろ。後は俺達がやる」

「わかった」

リインフォースは頷くと、電脳世界から外へ出る。

アグニモン達は、クリサリモンに向かって飛び出した。

クリサリモンは、触手を伸ばして攻撃してくる。

だが、

「リヒト・ズィーガー!!」

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

ヴォルフモンの光の剣と、レーベモンの闇の槍が触手を断ち切る。

「「アグニモン!!」」

ヴォルフモンとレーベモンは、同時にアグニモンに呼びかける。

アグニモンが2体の真ん中から飛び出し、炎を纏う。

「サラマンダー・・・・・・ブレイク!!」

炎を纏った回し蹴りで、クリサリモンを吹き飛ばした。

派手に吹き飛び、エリアの壁に激突するクリサリモン。

「やった!」

モニターの外では、信也がそんな声を上げた。

だが、

「くっ、なんて装甲だ。サラマンダーブレイクを喰らっても倒れないなんて・・・・・」

アグニモンはそう声を漏らした。

「ヴォルフモン、レーベモン。こいつを進化させたらかなり厄介だ。ビースト形態で一気に決めるぞ!」

「「分かった!」」

3体がデジコードに包まれる。

「「「スライドエボリューション!」」」

3体は、使用スピリットをビーストスピリットに変更する。

「ヴリトラモン!!」

「ガルムモン!!」

「カイザーレオモン!!」

炎の竜、光の狼、闇の獅子に姿を変える。

「手加減無用だ!一気に行く!」

ヴリトラモンは、体中から炎を発する。

「フレイム!ストーム!!」

その炎を尾を振ると同時に放った。

ガルムモンは口を大きく開け、

「ソーラーレーザー!!」

極太のレーザーをクリサリモンに向け放った。

カイザーレオモンは、口を開け、背中の撃鉄が伸長し、

「シュバルツ・ドンナー!!」

それが押し込まれると共に、圧縮された闇のエネルギー弾を放った。

炎、光、闇の3つの必殺技がクリサリモンに直撃。

爆炎に包む。

「如何だ?」

ヴリトラモンが呟き、様子を窺う。

爆炎が晴れていく。

そして、そこには、

「「「なっ!」」」

3体が同時に声を漏らした。

そこには、更に進化し、赤と白のボディに、触手のような足が6本付いた姿になったクリサリモンがいた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――インフェルモン

・完全体

 クモのような姿をしたデジモン。

 手足を引っ込める事で、高速移動が出来る。

 必殺技は、口から強力な弾丸を放つ『ヘルズグレネード』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



インフェルモンは、ヴリトラモン達を見上げると、一旦後ろに飛び跳ねる。

3体は身構えた。

インフェルモンは、エリアの壁から壁へ跳ね回る。

そして、一気に3体へ突っ込んできた。

「ちぃ!」

3体は散開して避ける。

そして、振り向くと同時、

「コロナブラスター!!」

ヴリトラモンは炎の弾丸を連射する。

インフェルモンは爆煙に包まれるが、すぐに飛び出す。

更に手足を引っ込め、高速でヴリトラモンに突撃してくる。

「くっ・・・・」

ヴリトラモンは身構え、インフェルモンの突撃を受け止める。

だが、

「な、なにっ!?」

ヴリトラモンは、勢いに押され始める。

「こ、こいつ!ヴリトラモンのパワーを上回るのか!?」

ヴリトラモンは、何とか堪えようとした。

しかし、インフェルモンの口が開き、弾丸が発射され、無防備なヴリトラモンの腹部に直撃する。

「ぐああっ!!」

ヴリトラモンは吹き飛ばされ、エリアの壁に激突。

進化が解けてしまう。

「タクヤッ!!」

モニターの外では、フェイトが悲鳴を上げる。

「ううっ・・・・・」

拓也が気を取り直したとき、インフェルモンは再び拓也に向かって突撃しようとしていた。

その時、

「スピードスター!!」

「シュバルツ・ケーニッヒ!!」

ガルムモンがブレードを展開した体当たりで体勢を崩し、カイザーレオモンが闇のエネルギーを纏った体当たりで吹き飛ばす。

インフェルモンは、錐揉み回転しながら吹き飛んでいくが、再び手足を伸ばして体勢を立て直し、エリアの壁に難なく着地する。

その隙に、ガルムモンとカイザーレオモンは拓也に近付く。

「拓也、大丈夫か?」

ガルムモンが声をかける。

「ああ・・・・何とかな」

拓也はそう返す。

「それにしても、完全体なのになんてスピードとパワーだ」

カイザーレオモンが、相手の能力を分析する。

「こりゃあ、マジで究極体まで進化されると厄介だぞ」

拓也がそう言う。

「ならば、こっちの最大戦力で一気にカタをつける」

ガルムモンが叫ぶ。

「そうだな」

カイザーレオモンも頷いた。

ガルムモンとカイザーレオモンは、進化を解く。

そして、3人は再びデジヴァイスを構えた。

デジヴァイスの画面に、光が走ると同時に獣のシルエットが浮かび上がり、咆える。

ヒューマンスピリットと、ビーストスピリットが重なって描かれた。

突き出した左手に、長い帯状のデジコードが集まり、球状になったデジコードが宿る。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせた。

「「「ダブルスピリット!エボリューション!!」」」

3人の身体が再びデジコードに包まれる。

「「「ぐっ・・・・あああああああっ!!」」」

3人は叫び声を上げた。

激しいエネルギーの奔流の中、3人は2つのスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

2つのスピリットが重なる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「アルダモン!!」

「ベオウルフモン!!」

「ライヒモン!!」

ヒューマンタイプとビーストタイプの長所を併せ持った闘士が誕生した。

3体は構え、インフェルモンに向かって飛び出そうとした。

だが、突如上の方に気配を感じ、その場を飛び退く。

数瞬後に、何かがそこを通過する。

それに視線を向けると、

「何!?」

思わずアルダモンが声を漏らした。

そこにいたのはクリサリモン。

周りを見渡せば、今まで何処にいたのか、わらわらと沸いて出てくる。

その数10匹以上。

「こいつら、隠れていたのか!」

ベオウルフモンが叫ぶ。

それが切っ掛けになったのか、一斉に襲い掛かってくる。

次々に襲い来るクリサリモン。

3体は、あるものは避け、またあるものはカウンターで吹き飛ばす。

しかし、そうやって隙を見せた時、インフェルモンが的確に弾丸を放ってくる。

「ぐあっ!?」

「くっ!?」

「あいつめ!」

融合形態の為に、ダメージはそれほどではないが、非常に厄介である。

3体は集まり、エリアの壁を背にしている。

「チッ、1匹1匹は大した事ないけど、これだけ集まると厄介だな」

「ああ、それに奴の援護も的確だ」

ベオウルフモンがインフェルモンを睨み付けながら言う。

「だが如何する?このままではジリ貧だ」

ライヒモンがそう言った時、背後のエリアの壁に、『強制接続』の文字と共に、ゲートが開く。

「嘘っ!外部からの強制接続!?」

エイミィが驚愕の声を漏らした。

「新手か!?」

クロノが声を上げる。

しかし、そのゲートから飛び出してきたのは、3人の少年少女。

「泉!?」

「純平!?」

「友樹!」

アルダモン、ベオウルフモン、ライヒモンがそれぞれ声を上げる。

彼らは、かつて拓也、輝二、輝一と共にデジタルワールドを旅した仲間の織本 泉、柴山 純平、氷見 友樹。

「お前ら!何で!?」

仲間の3人が何故ここにいるのか理解できないアルダモン。

「私達もオファニモンに呼ばれたの」

「お前らを助けてくれってな」

「僕達も戦うよ!」

3人は自分のデジヴァイスを取り出す。

「拓也、彼らは?」

モニターの外から、クロノが尋ねる。

アルダモンは笑みを浮かべ、

「仲間だ!」

はっきりとそう言った。

3人はデジヴァイスを構えた。

3人の突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、ヒューマンスピリットの形が描かれる。

突き出した左手に、デジコードの輪が発生。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせる。

「「「スピリット!エボリューション!!」」」

3人の身体がデジコードに包まれる。

その中で3人はスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

3人の身体にスピリットが合わさる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「フェアリモン!!」

「ブリッツモン!!」

「チャックモン!!」

『風』、『雷』、『氷』の闘士がそこにいた。

此処に、デジタルワールドを救った6人の闘士が、一堂に集まった。

「行くぞ!」

アルダモンの掛け声で、皆が一斉に動き出した。

「プッレツァ・ペタロ!!」

フェアリモンが指先から竜巻を発生させ、5匹のクリサリモンを巻き込む。

その身動きが取れなくなったクリサリモンに向かって、

「トールハンマー!!」

「スノーボンバー!!」

ブリッツモンが両腕から強力な電撃を。

チャックモンが、ミサイルランチャーのような物から氷の弾丸を発射する。

強力な竜巻、電撃、氷の弾丸を受けたクリサリモン達は、耐え切れずに消滅する。

その隙を突いて、インフェルモンがフェアリモンたちに弾丸を放った。

だが、ライヒモンが立ち塞がり、

「暗黒定理(シュバルツ・レールザッツ)!!」

闇を発生させ、インフェルモンの攻撃を完全に無効化した。

暗黒定理(シュバルツ・レールザッツ)は、物理法則を無効化する技なので、攻撃だけでなく、防御にも使えるのだ。

「ブラフマストラ!!」

「リヒトアングリフ!!」

アルダモンが火球を連射し、ベオウルフモンが光線とミサイルを放つ。

それによって、残っていたクリサリモンは全滅した。

「よし!残りはアイツだけだ!!」

全員がインフェルモンに向き直る。

フェアリモン、ブリッツモン、チャックモンがデジコードに包まれる。

「「「スライドエボリューション!」」」

3体はビーストタイプに変更しようとした。

だがその時、インフェルモンが動き出す。

進化途中の3体に向かって、弾丸を放った。

「させん!」

その事に気付いたライヒモンが、3体の前に立ちはだかり、再び闇を発生させて、その攻撃を防ぐ。

その間に、3体はスライドエボリューションを完了する。

「シューツモン!!」

「ボルグモン!!」

「ブリザーモン!!」

3体は進化中に攻撃されそうになり、肝を冷やしていた。

だが、気を取り直し、インフェルモンに攻撃を仕掛ける。

ボルグモンの両腕が高速回転を始め、電撃を纏う。

「アルティメット!サンダー!!」

強力な電撃弾が放たれる。

インフェルモンはすぐに飛び退いたが、着弾時の爆風に吹き飛ばされる。

そのチャンスを逃さず、シューツモンが攻撃を仕掛ける。

「ウィンドオブペイン!!」

強力な風と共に、風の刃が放たれ、インフェルモンを吹き飛ばす。

インフェルモンは壁に叩き付けられ、動きが止まる。

「グレッチャートルペイド!!」

ブリザーモンが銛の付いた髪の毛を伸ばし、インフェルモンの動きを封じた。

「アルダモン!ベオウルフモン!今だ!」

ブリザーモンが合図を送る。

アルダモンは、火球を生み出し、それを巨大化させる。

「ブラフマシル!!」

その巨大な火球をインフェルモンに向け、放った。

ベオウルフモンは大剣を掲げ、光のエネルギーが狼を形作る。

「ツヴァイ・ハンダー!!」

その光の狼がインフェルモンに向け、放たれた。

今迄で、一番の爆発に飲み込まれるインフェルモン。

「今度こそやったか!?」

確かな手応えを感じ、そう言ったアルダモン。

やがて爆煙が晴れていき・・・・・・・

「うわぁあああああああっ!?」

インフェルモンを捕らえていたブリザーモンが、髪の毛をつかまれて振り回された。

「ブリザーモン!!」

ライヒモンが叫ぶ。

ブリザーモンは、そのまま壁に叩き付けられ、進化が解ける。

爆煙の下からは、更に進化したデジモンがいた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ディアボロモン

・究極体

 伸縮自在な手足を持ち、トリッキーな動きで相手を翻弄する。

 必殺技は、胸部の砲門から強力なエネルギー弾を放つ『カタストロフィーカノン』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ディアボロモンは飛び跳ねる。

そのスピードはかなり速く、伸ばされた両腕に、シューツモンとボルグモンが捕まり、そのまま壁に叩き付けられた。

「うあっ!?」

「ぐあっ!?」

攻撃を受けた2体は、進化が解けてしまう。

「泉!純平!このっ!!」

アルダモン、ベオウルフモン、ライヒモンはディアボロモンに攻撃しようと其方を向くが、

「「「なっ!?」」」

ディアボロモンは、すぐにアルダモン達に向きを変え、胸部から必殺技のエネルギー弾、カタストロフィーカノンを3発放った。

その3発の弾丸は、的確にアルダモン達を捉えた。

「ぐああっ!!」

「うぐっ!!」

「ぐうっ!!」

融合形態だった3体も、その一撃ずつの攻撃で進化が解けてしまう。

「タクヤッ!」

「コーにぃ!」

「コウイチ!」

モニターの外から、フェイト、はやて、シグナムの叫び声が聞こえる。

6人は、進化は解けてしまったものの、まだ動けないほどではなく、6人が一箇所に集まる。

「あいつ、ケルビモン並の強さだぜ」

純平がそう呟き、皆もそう思っている。

「なら、あれしかないな」

「ああ」

拓也がそう言って、輝二も頷いた。

モニターの外では、フェイトたちが心配そうにモニターを見つめている。

そんなフェイトたちに、信也は声をかけた。

「大丈夫だよ」

その言葉に、フェイト、はやて、シグナムは信也に視線を向ける。

「何でそう思うんや?」

はやてが尋ねた。

「兄ちゃんたちのバリアジャケットは、さっきまでの姿を元に作り出した物。だったら、兄ちゃんと輝二さんには、もう1つ上の進化があるんじゃないかな?」

信也の言葉に、全員がはっとする。

「そうでしょ?兄ちゃん?」

信也はモニターの向こうの拓也に問いかけた。

その言葉に、拓也は笑みを浮かべる。

「へっ・・・・それじゃあ、リクエストに応えるとするか!行くぜ!輝二!」

「ああ!」

拓也の言葉に、輝二は応え、2人は前に出る。

そして、その後ろで4人がデジヴァイスを掲げた。

「風は炎へ!」

「氷は炎へ!」

『風』と『氷』のスピリットが拓也に集い、

「雷は光へ!」

「闇は光へ!」

『雷』と『闇』のスピリットが輝二に集う。

『炎』、『風』、『氷』、『土』、『木』の5種類のスピリットの力で拓也は進化する。

拓也の左手にデジコードが宿る。

そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。

「ハイパースピリット!エボリューション!!」

拓也がデジコードに包まれる。

「はぁああああああああああああっ!!!」

拓也は叫び声を上げながらスピリットを宿す。

体に『炎』のヒューマンスピリット。

右腕に『風』のヒューマンスピリット。

左腕に『氷』のヒューマンスピリット。

右足に『木』のヒューマンスピリット。

左足に『土』のヒューマンスピリットを宿す。

更に『風』、『氷』、『木』、『土』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『炎』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、拓也は姿を変えた。

それは、焔の鎧を纏いし、紅蓮の竜戦士。

「カイゼルグレイモン!!」




『光』、『雷』、『闇』、『水』、『鋼』の5種類のスピリットの力で輝二は進化する。

輝二の左手にデジコードが宿る。

そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。

「ハイパースピリット!エボリューション!!」

輝二がデジコードに包まれる。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

輝二は叫び声を上げながらスピリットを宿す。

体に『光』のヒューマンスピリット。

右腕に『雷』のヒューマンスピリット。

左腕に『闇』のヒューマンスピリット。

右足に『水』のヒューマンスピリット。

左足に『鋼』のヒューマンスピリットを宿す。

更に『雷』、『闇』、『水』、『鋼』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『光』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、輝二は姿を変えた。

それは、重火器を装備した、高機動爆撃型サイボーグ。

「マグナガルルモン!!」




2体の超越形態が並ぶ。

「兄ちゃん、カッコいい~・・・・」

「コーにぃもかっこええわぁ~・・・・・」

モニターの外では、初めて見る進化に驚きながらも、そう声を漏らす信也とはやて。

その2体が動き出す。

「皆の勇気、受け取った!」

「行くぞ!」

カイゼルグレイモンが飛び出し、マグナガルルモンが背部のブースターで加速する。

「うぉおおおおおおおっ!!」

カイゼルグレイモンは一直線にディアボロモンに向かう。

ディアボロモンは迎撃のカタストロフィーカノンを放ってくる。

しかし、カイゼルグレイモンは避けずに、直撃を貰い、爆炎に包まれる。

「タクヤ!?」

フェイトが声を上げるが、すぐに爆炎の中から、殆どダメージを受けていないカイゼルグレイモンが飛び出す。

その突然の事に、ディアボロモンは対処できない。

「はぁあああああっ!!」

カイゼルグレイモンは、右腕を振りかぶり、思い切りディアボロモンを殴り飛ばした。

吹き飛んでいくディアボロモン。

何とか体勢を立て直し、壁に上手く着地するが、そのディアボロモンに無数のミサイルが降り注ぐ。

見れば、マグナガルルモンが武装を乱射している。

ディアボロモンは攻撃を避けようとするが、無数の攻撃の嵐は避けられるものではない。

ディアボロモンは爆風に吹き飛ばされる。

そして、壁に叩きつけられたとき、カイゼルグレイモンが龍魂剣を抜き、ディアボロモンに向かって構えていた。

龍魂剣が展開される。

「炎龍撃!!」

龍魂剣の刀身が、膨大なエネルギーの塊に変化し、鍔の部分にある引き金を引くと同時に発射される。

ディアボロモンは爆発に包まれる。

「やったか?」

カイゼルグレイモンは呟く。

「油断するにはまだ早い。奴は得体が知れないんだ」

マグナガルルモンが釘を刺すように言った。

「そうだったな」

2体は気を抜かずに、爆炎が晴れるのを待つ。

そして、爆炎が晴れたところには、ゲートが開いていた。

「しまった!逃げられた!」

カイゼルグレイモンが叫ぶ。

「エイミィ!すぐに追跡と捜索を!急げ!!」

マグナガルルモンが叫んだ。

「了解!」

エイミィはすぐに作業を開始する。

「それからクロノ。仲間達を其方に避難させてくれ」

「わかった。こちらについての説明もしておこう」

「頼む」

クロノが了承してくれたので、2体は皆の元へ行く。

「皆は電脳世界から避難してくれ、ここに居るよりかは安心だ」

カイゼルグレイモンがそう言う。

「その場の説明は、輝一とクロノがしてくれる」

輝一、泉、純平、友樹は頷き、電脳世界から出て、アースラに向かった。



エイミィが作業を続け、泉、純平、友樹がクロノから説明を受けていた。

すると、ディアボロモンからメールが送られてきた。

その内容は、

【トケイヲ モッテイルノ ダーレダ】

「時計?」

エイミィが首を傾げると、設定時間が20分のタイマーが表示される。

「何?このタイマー・・・・・」

エイミィがパネルを操作し、タイマーの原因を調べる。

そして、それが分かった時、エイミィの顔は驚愕に染まった。

「艦長!!大変です!アルカンシェルが起動しています!!」

「何ですって!?」

報告を受けたリンディを始め、周りのメンバーも驚愕する。

「このタイマーの通りなら、残り20分弱で発射されます!」

「目標は!?」

「待ってください・・・・・・・・出ました!目標!海鳴市です!!」

その報告に驚愕する海鳴出身者達。

「止められないの!?」

リンディは尋ねるが、

「ダメです!さっきから試していますが、こちらからの操作を、全く受け付けません!!」

そう返すエイミィ。

「仕方がないわ。彼らに任せるしかないわ」

「分かりました。報告します」





電脳世界にいるカイゼルグレイモンとマグナガルルモンにエイミィから報告が入る。

「2人とも、相手のいる場所が判ったよ!場所は、アルカンシェルの制御コンピューター!しかも、プログラムが乗っ取られちゃって、このままじゃ後19分で海鳴市にアルカンシェルが発射されちゃう!」

エイミィが焦った表情で報告する。

「「何っ!?」」

その報告に驚く2体。

「こっちからじゃ、制御を全く受け付けないの!お願い2人とも!アイツを倒して!」

「ああ、言われるまでも無い!」

「案内してくれ!すぐに向かう!」

「了解!私が誘導するね!」

エイミィがパネルを操作し、ゲートが開く。

2体はそのゲートに飛び込んだ。




2体はエイミィの誘導に従い、アルカンシェルの制御コンピューターに向かっていく。

「2人とも、もうすぐ着くよ!」

「「了解!」」

そして、長いトンネルを抜け、アルカンシェルの制御コンピューターのエリアに入った2体が見たものは・・・・・・

視界全てを埋め尽くす、ディアボロモンの群れ。

多くのメンバーの表情が、絶望に染まる。

「こいつら・・・・・・何体いるんだ?」

クロノが思わず呟く。

エイミィが数を計測する。

「4000・・・・8000・・・・・ああっ!またコピーした!16000!どんどん増えてるっ!!」

エイミィが悲痛な声で報告する。

増殖を続けていたディアボロモンは動きを止めると、全員が2体の方を向く。

その光景を直に目にしていたカイゼルグレイモンの握りこぶしがゆっくりと開かれていき・・・・・・・・・・

背中の龍魂剣を力強く握った。

カイゼルグレイモンは、龍魂剣を抜く。

「行くぞ!!マグナガルルモン!!」

「応!!」

マグナガルルモンはブーストを噴かした。

「なんて子達なの・・・・・この数を見て、諦めるどころか怯みもしないなんて」

その様子を見ていたリンディが思わず呟く。

それと同時に、ディアボロモンの群れが、一斉にカタストロフィーカノンを放つ。

マグナガルルモンは、攻撃の隙間を掻い潜り、カイゼルグレイモンは、その場で龍魂剣を大きく振りかぶった。

そして、無数のカタストロフィーカノンがカイゼルグレイモンに着弾する寸前、カイゼルグレイモンは龍魂剣を力強く振り回す。

その一振りで、カタストロフィーカノンは全て弾かれた。

「弾いた!」

「すごい!」

フェイトとなのはは思わず声を上げる。

弾かれたほうにいたディアボロモン約1000体は消滅した。

マグナガルルモンは、武装を乱射する。

この数ならば外す方が難しい。

マグナガルルモンは次々とディアボロモンを粉砕していく。

だが、数が多ければその分攻撃も激しい。

一発のカタストロフィーカノンを受け、一瞬怯むと、次々に攻撃が叩き込まれる。

爆発に飲まれるマグナガルルモン。

「コーにぃ!!」

はやてが叫ぶ。

「ぐう・・・・・・ッざけんなよ!!」

マグナガルルモンは叫ぶと、武装をパージ。

身軽になると、2本のレーザーソードを装備し、

「スターライト!ベロシティ!!」

超高速で、次々と切り伏せていった。

カイゼルグレイモンも攻撃を受けている。

だが、それでもカイゼルグレイモンは止まらない。

「負けるものか!!」

そう叫んで龍魂剣を突き刺し、

「九頭竜陣!!」

9匹の炎の龍が現れ、ディアボロモン達を飲み込んでいく。

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

激闘は続く。





残り時間が10分を切った時、ディアボロモンも数を10000匹以下に減らしていた。

その激闘の様子を窺っていたエイミィは、今までの撃破数と、かかった時間を計算する。

「うん。この調子で行けば、時間内にギリギリ間に合うよ」

計算した結果から、エイミィ達の顔にも希望が見え始める。

「タクヤ、頑張って!」

「頑張れ!兄ちゃん!」

「お兄さん!頑張ってください!」

「頑張れ!カイゼルグレイモン!」

「負けないで!カイゼルグレイモン!」

「コーにぃ!頑張れー!!」

「コージ!気合いれろぉ!」

「ミナモト君、頑張って!」

「ミナモト!油断するなよ!」

「あと少しだ!マグナガルルモン!」

「頼むぞ!マグナガルルモン!」

皆の応援にも力が篭る。

皆の応援を力に変え、ディアボロモンの群れと戦い続けるカイゼルグレイモンとマグナガルルモン。

しかし、ディアボロモンの動きに変化が訪れる。

今までカイゼルグレイモンとマグナガルルモンに降り注いでいた攻撃が止む。

「何だ?」

カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは怪訝に思う。

すると、ディアボロモン1体が無数のクラモンに分裂する。

それが切っ掛けになったように、ディアボロモンはどんどんと無数のクラモンになっていく。

そして、そのクラモンたちは一箇所に集まり始めていた。

「何が起こっている!?」

何が起こっているか分からないマグナガルルモンはそう叫びながら、近くのクラモン達を攻撃する。

だが、大量のクラモンには焼け石に水だ。

やがて、一匹残らずクラモンが集まると、巨大なタマゴに姿を変える。

「デジタマ?」

「何が生まれるんだ?」

少しすると、タマゴが真っ二つに割れ、中から巨大なデジモンが出現する。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――アーマゲモン

・究極体

 膨大な数のクラモンが融合進化して生まれたデジモン。

 その力は計り知れない。

 必殺技は、背中から無数の誘導性エネルギー弾を発射する『ブラックレイン』と口から超圧縮されたエネルギー弾を放つ『アルティメットフレア』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「何だ!?奴は!」

マグナガルルモンは、得体の知れないアーマゲモンに危機感を覚える。

「怯むな!単なる寄せ集めだ!行くぞ!!」

カイゼルグレイモンは嫌な不安を振り切って、そう叫んだ。

カイゼルグレイモンは龍魂剣をアーマゲモンに向ける。

「炎龍撃!!」

カイゼルグレイモンが放った必殺技はアーマゲモンに直撃する。

マグナガルルモンも攻撃を仕掛ける。

「スターライト!ベロシティ!!」

光に包まれ、超高速の体当たりを仕掛ける。

しかし、アーマゲモンには全く聞いている様子はなかった。

「効いてない!?」

その時、アーマゲモンの背中から無数のエネルギー弾が発射され、マグナガルルモンに襲い掛かる。

「チィ!そんなものに当たるものか!!」

マグナガルルモンは高速移動でそのエネルギー弾を避ける。

だが、

「気をつけろ!マグナガルルモン!!」

カイゼルグレイモンが叫ぶ。

「何だと!?」

アーマゲモンの放ったエネルギー弾は、マグナガルルモンを追尾してくる。

マグナガルルモンは避けきることが出来ずに直撃を貰う。

「ぐああああああっ!!」

マグナガルルモンは叫び声を上げ、進化が解ける。

「コーにぃ!!」

悲鳴を上げるはやて。

更にアーマゲモンは、口に膨大なエネルギーを溜めている事が分かった。

「拙い!!」

その事に気付いたカイゼルグレイモンは、急いで輝二の前に立ち塞がる。

そして、超圧縮されたエネルギー弾が吐き出された。

避けるわけにはいかないカイゼルグレイモンは、その攻撃をモロに受けた。

爆炎に包まれるカイゼルグレイモン。

「ああっ!」

モニターの外では悲鳴が上がる。

そして、その煙が晴れたとき、そこには気を失い、力なく漂う拓也と輝二の姿があった。

「タ、タクヤ・・・・・・」

「コー・・・・にぃ・・・・・」

余りのショックに力なく呟くフェイトとはやて。

フェイトとはやては、震える手をモニターに伸ばす。

触れる事は出来ないと解っていても、そうせずにはいられない。

そんな2人の様子を見て、悲痛に思いながらも、リンディはエイミィに問いかけた。

「エイミィ・・・・・残り時間は?それから、転送は使える?」

「残り時間・・・・・5分を切りました・・・・・・転送システムは・・・・・無理です・・・・・其方も掌握されてしまっています」

エイミィは力なく呟く。

リンディは、そう、と呟くと再び顔をあげる。

「アルカンシェル発射1分前になったとき、状況の好転が望めないようならば、本艦を自爆させます」

リンディはそう宣言する。

被害を最小限に止める、苦渋の決断であった。

「転送が使えないために、本艦にいる人員達を巻き込んでしまう事。真に申し訳ありません。恨み言でも何でもかまいません。本当にごめんなさい」

そんなリンディの言葉に、

「そんなこと言わないでくれよ!」

純平が叫んだ。

「そうよ!まだ終わってはいないわ!」

泉も叫ぶ。

「最後まで諦めちゃダメだ!」

友樹も、

「リンディ提督。最後まで希望を持ってください!最後の最後、その瞬間まで!」

輝一もそう言った。

彼らの言葉に、リンディは気を取り直す。

「そうね・・・・ごめんなさい・・・・・・あなたたちの言うとおりだわ。最後の最後まで足掻きましょう」

そこでふと気付く。

「あら?フェイトさんとはやてさんは?」

フェイトとはやての姿がいつの間にか消えていた。

信也となのはが、呆然とモニターを指差し、

「「そこ・・・・」」

そう言った。





フェイトとはやては、電脳世界に入り込んでいた。

「タクヤ・・・・・・タクヤ・・・・・!」

フェイトは、拓也に呼びかける。

しかし、拓也は目を覚ます様子はない。

はやても、輝二に寄り添う。

「コーにぃ・・・・・来たで・・・・私も来たで!一緒に戦いに来たんや!・・・・もう・・・・コーにぃだけを戦わせたりせえへん・・・・・・私が傍におる・・・・・私がついとるでコーにぃ!」

はやてが必死に輝二に呼びかけていた。

「タクヤ・・・・・・・私だよ・・・・・フェイトだよ!・・・・・お願い・・・・・目を覚まして!」

フェイトは涙を流しながら拓也に呼びかけた。

その時、

「・・・・・う・・・・・フェイ・・・・・ト・・・・・?」

拓也が身動ぎし、フェイトの名を呟く。

「タクヤ!」

「ぐっ!」

フェイトが拓也の名を呼び、拓也は何とか身体を起こす。

「・・・・・はやて・・・・・」

輝二の方も意識を取り戻し、はやての名を呟いた。

「コーにぃ・・・・コーにぃ!大丈夫なんか!?」

「ああ・・・・何とかな・・・・」

輝二も無理して身体を起こす。

アーマゲモンはそんな様子をあざ笑うかのように見ている。

「あの野郎・・・・調子扱きやがって・・・・・」

拓也が闘志の篭った目で睨み付けながらそう言う。

「ぐっ!」

だが、痛む身体を押さえる。

「タクヤ、無理しちゃダメだよ!」

そんな拓也をフェイトが支える。

心配そうなフェイトの顔を見ながら、拓也は笑みを浮かべる。

「お前が来てくれて良かった」

突然拓也はそんなことを言った。

「え?」

意味が分からなかったフェイトは声を漏らす。

「お前がこうやって傍にいてくれるだけで、力が湧いてくる」

拓也は拳を握り締める。

「拓也の言うとおりだ・・・・・大切な奴が傍にいるだけで・・・・・俺達の心には闘志が溢れてくる!」

輝二も拳を握り締めた。

そして、

「・・・・・はやて、頼みがある」

「何や!?何でもするで!」

「俺を・・・・しっかりと支えていてくれ!」

真っ直ぐな瞳で輝二は言った。

「わかった。いくらでも支えたるで!ずっとずっと支える!」

はやては輝二に抱きつく。

そんなはやてに輝二は微笑むと、デジヴァイスを取り出す。

すると、そこから『光』のスピリットと『闇』のスピリットが出てきた。

輝二は、その2種類のスピリットを抱くように己の胸の内に納める。

「光と・・・・闇を1つに・・・・・・」

『光』と『闇』、それは決して交わる事が無いもの。

それを無理やり1つにしようすれば、

「うっ!・・・・・ぐっ・・・・・あああああああっ!!」

輝二は悲鳴を上げる。

『光』と『闇』の相反する力が、輝二の中で暴れまわる。

「頑張れ、輝二!」

「輝二!」

「輝二!」

「輝二さん!」

輝一、純平、泉、友樹が輝二に呼びかける。

「輝二!」

拓也も輝二の名を呼ぶ。

そして、はやてが輝二を抱きしめ、

「頑張れ!!コーにぃいいいいいいいい!!」

想いを込めて輝二の名を呼んだ。

「・・・・・はやて・・・・・・・・うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」

はやての呼びかけるように、輝二が叫び声を上げ、輝二の身体から白と黒の光が迸る。

拓也は、フェイトに向き直る。

「タクヤ・・・・・」

「大丈夫だ。お前が傍にいてくれるなら、俺は負けない!」

「・・・・・うん!」

互いに微笑み合い、拓也はアーマゲモンに向き直った。

「なら、いっくぜぇえええええええええっ!!!」

拓也の身体から炎が吹き上がり、輝二と共にその炎に包まれる。

「「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

2人の叫びと共に、スピリットが輝いた。

「「エンシェントスピリット!エボリューション!!」」

十闘士のスピリットと共に、拓也と輝二の身体が1つになり、巨人の身体を作り上げる。

その身体に、鎧が装着されていく。

それは最強の十闘士。

全てのスピリットを一つにした究極の姿。

デジタルワールドの破壊と再生を司る究極武神。

その名は、

「スサノオモン!!」

スサノオモンがアーマゲモンの目の前に降臨する。

スサノオモンの両肩には、フェイトとはやての姿。

アーマゲモンは、スサノオモンを敵と認めたのか、口を大きく開けてエネルギーを溜める。

その様子を見たスサノオモンは、

「フェイト、はやて、しっかり掴まっていろ!」

2人に呼びかけ、右腕を振りかぶる。

アーマゲモンが超圧縮されたエネルギー弾を放ってきた。

そのエネルギー弾に、

「はぁあああああああっ!!」

スサノオモンは殴りかかった。

膨大なエネルギーが凝縮されたそれを、スサノオモンは拳で跳ね返した。

跳ね返ったエネルギー弾は、アーマゲモンに直撃する。

スサノオモンは、両手を上に掲げた。

すると、上の方に、渦巻状の雲が発生する。

次に、スサノオモンの背中にある光臨が輝き、その雲に向かって光が伸びる。

その光は渦巻状の雲の上に出ると、8つに別れ、今度は下に向かう。

そして、再び雲を通る時、

「八雷神(やくさのいかずち)!!」

8匹の雷の龍となり、アーマゲモンに降り注いだ。

その8匹の雷の龍はアーマゲモンに喰らいつき、動きを完全に封じる。

スサノオモンは、今度は両手を前に翳す。

するとそこに、神器・ゼロアームズ:オロチが具現される。

ゼロアームズ:オロチの先にエネルギーが集中する。

スサノオモンは、それを大きく振りかぶった。

「天羽々斬(あまのはばきり)!!」

ゼロアームズ:オロチの先から、途轍もなく長い光の剣が発生する。

「はぁあああああああああああああっ!!!」

スサノオモンはそれを横薙ぎに払う。

光の剣は何もない様にアーマゲモンの身体を通過し、真っ二つにした。

アーマゲモンの身体から、デジコードが発生する。

「デジコード!スキャン!!」

スサノオモンは2つのデジヴァイスでそのデジコードを吸収する。

アーマゲモンは完全に消滅した。

「やったぁ!!」

「勝ったぁ!!」

モニターの外からは、勝利に喜ぶ声がする。

だが、

「待って!まだタイマーが動いてる!」

エイミィがそう報告してくる。

「なんやて!?」

はやてが叫ぶが、

「あれ!」

フェイトが一点を指差して叫んだ。

そこには、1匹だけだがディアボロモンが存在していた。

「多分アレが最後の1体、時計を持ってる奴だよ!」

エイミィが叫ぶ。

ディアボロモンは壁を跳躍する。

スサノオモンが目で追うと、またすぐに跳躍する。

スサノオモンは、着地地点にゼロアームズ:オロチを向けたが、そこにはもうディアボロモンの姿は無かった。

「おらん!」

姿は確認できないが、ディアボロモンの跳躍する音だけがその空間に響く。

「1分を切ったよ!」

しかし、スサノオモン、フェイト、はやてはディアボロモンの姿を捉えられない。

「兄ちゃん!急いで!もう時間が無いよ!」

信也が叫ぶ。

「奴のスピードが速すぎるんだ。このままじゃパワーで勝っても、スピードの差でアウトだ!」

クロノがそう叫ぶ。

「後30秒!」

信也がまた叫ぶ。

「何とかして、相手の動きを止めないと・・・・・」

その時、なのはがはっとなったように顔をあげた。

「デジモンはデータで構成されてるって言いましたよね?だったら、こっちから大量のデータを送り込めば、パソコンの処理速度が遅くなるように、相手の動きも鈍るんじゃ・・・・」

「そうかも!・・・・・あ、でも、送り先が・・・・・」

エイミィはそう思ったが、

「なら、さっきのメールに返信すれば!」

信也が叫んだ。

「ビンゴ!その手があったか!」

エイミィは手早くデータをかき集める。

「アースラにあるありったけのデータ。いっけぇ!!」

大量のデータがディアボロモンに送り込まれる。

かなりのスピードで移動していたディアボロモンだが、突然に送られてきた大量のデータに処理速度が追いつかず動きを止める。

その時、スサノオモンがディアボロモンを発見した。

アルカンシェルのバレルが展開され、発射態勢に入る。

「後10秒!」

クロノが叫ぶ。

スサノオモンがゼロアームズ:オロチについている剣の柄を握ると、外装が吹き飛び、一本の剣が露になる。

「9!」

輝一が叫んだ。

スサノオモンは、ディアボロモンに向かって全力で飛ぶ。

「8!」

純平が、

「7!」

泉が、

「6!」

友樹が、

「5!」

シグナムが、

「4!」

リインフォースが、

「3!」

ヴィータが叫ぶ。

スサノオモンは剣を振りかぶる。

「2!」

なのはが叫び、

「いっ・・・・」

フェイトが叫ぼうとする。

「1!」

信也が目をつぶりながら叫んだ。

「っけぇえええええっ!!」

はやてが叫んだ。

そして・・・・・・

――ドシュッ














スサノオモンの剣が、ディアボロモンの頭部を貫いた。

アルカンシェルにエネルギーが集中していき、

「ま、間に合わなかっ・・・・・」

エイミィが、そう言おうとしたが、

アルカンシェルに集中していたエネルギーが四散した。

スサノオモンが貫いたディアボロモンの頭部が剥がれ落ち、その下から時計が現れ、スサノオモンの剣がギリギリで時計を止めていた。

タイマーの方は、100分の1秒と2秒の間を行ったり来たりしていた。

「ま・・・・ま・・・・ま・・・・・・」

エイミィが思わずつぶやこうとした時、

「間に合ったぁ・・・・・」

その横で、クロノが崩れ落ちた。




エンディングテーマ 『作品No.2「春」イ長調 ~ぼくらのウォーゲーム!~』




あとがき

はい、劇場版という名の幕間その三の完成です。

読んで解るとおり、デジモンアドベンチャー劇場版 ぼくらのウォーゲームをリリフロのメンバーでやってみたら、というコンセプトで作りました。

台詞も色々同じです。

まあ、太一の台詞はフェイトに言わせるより、はやてに言わせたほうが違和感無いかなと思ってそうしました。

因みに今回の話は、リリフロを始めた時点で既に考えていたことです。

スサノオモンを出したかったので、オリジナル展開でアーマゲモン出しましたが。

一応アーマゲモンは、ルーチェモンに迫る力を持っているという設定です。

にしても、ディアボロモン強すぎたかな?

まあいっか。

次はなのは撃墜事件(仮)。

上手く書けるかな?

では、次も頑張ります。






[8056] 幕間その四
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/02 23:08
信也となのはは、闇の書事件の後、管理局に入局した。

それから2年。

若輩であるにも関わらず才能の高さを垣間見せる2人。

だが・・・・・・



幕間その四 折れた翼



ある日、信也、なのは、ヴィータは、武装隊の演習で、とある異世界に来ていた。

その世界では雪が降っていた。

3人は演習を終え、空を飛びながら帰還している最中である。

そんな時、信也はなのはに話しかけた。

「ねえ、なのは。最近無理してない?」

「えっ?いきなり如何したの?」

なのははきょとんとして聞き返す。

「なのはって、最近ロクに休んでないと思ってさ・・・・・僕は兄ちゃんから忠告を受けてそれなりに休んでるけど・・・・・」

信也は心配そうな表情でそう言う。

信也には、なのはの顔色が、心なしか悪く見えていた。

「大丈夫だよ。私って結構頑丈だもん。元気元気♪」

しかし、なのははいつも通りの笑顔でそう言った。

「シンヤ、心配すんなよ。なのはは、つえぇからな」

ヴィータは、なのはを信頼しているようで、笑みを浮かべながらそう言った。

だが、信也の不安は拭えない。

それには訳があった。

それは、信也が管理局に入局する時に拓也に言われた事だった。





「信也、お前が管理局に入る事については、俺は別に反対しない。お前が決めたことだからな。ただし、無理だけはするなよ。特に、カートリッジシステムは身体が出来上がるまで、いざという時以外は使わないほうがいい」

「え?どうして?」

「前々から思ってたことなんだけど、アレは子供の身体には荷が重い」

「如何いう事?」

拓也の言っている意味が分からない信也は首を傾げる。

「お前な・・・・・威力が高いってことは、当然反動もある。人間の身体だって、普段は自分の身体が壊れないように無意識の内に力を抑えてるって話だ。当然魔法も一緒だ。それをお前らときたら、カートリッジシステムで軽く限界突破してるんだぞ。身体に負担がかからない訳ないだろ!」

「そ、それを言ったら兄ちゃんたちのフォームチェンジも一緒じゃないの?」

「あのな・・・・フォームチェンジすると身体能力が上がるのは何のためだと思ってるんだ?」

「えっと・・・・・そっちの方が強いからじゃないの?」

「そうだったら、炎なんか使わずに魔力を全部身体強化に回した方が良いだろうが」

「・・・・・・・・」

「俺達が身体能力をアップさせてるのは、魔法の反動を最小限に抑えるためだ。まあ、最初は無意識でやっていた事だけど、後で考えてみたらそういう事だったんだよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「俺達がデジタルワールドで激しい戦いを乗り越えても特に影響が無かったのも、デジモンに進化して、デジモンの技の反動に耐えうるだけの身体になっていたからだ」

「な、なんとなく言いたいことは分かったんだけど・・・・・・」

信也の口調は、それほど心配するほどの事じゃないんじゃないのといった口調だ。

「あ~~~、もうちょっと解りやすい例えで言うぞ。お前らの魔法が戦車の大砲だとする」

「う、うん」

「それで、その戦車の大砲が普通の車に付いていたとしたら、大砲を撃ったときどうなると思う?」

「もちろん反動でひっくり返ると思うけど・・・・・・」

「正解。お前らは、正にその状態なんだよ。まあ、普通の車に大砲は言いすぎだが、大砲の反動に完全に耐え切れる土台じゃないのは確かだ。そのまま大砲を撃ち続けていれば、いつかは壊れる」

「あ・・・・・・」

「解ったようだな。カートリッジシステムは、今のお前らにとっては諸刃の剣なんだよ、」

「う、うん・・・・わかったよ」





拓也の忠告どおり、信也はカートリッジの使用は極力控えてきた。

そして、休みも適度に取り、身体に負担がかからないようにしてきた。

もちろん、信也は拓也から聞いた話をなのはにも聞かせた。

しかし、なのははどんな時でもカートリッジを惜しみなく使い、その上休みもロクに取ってはいない。

拓也の言ったとおりなら、なのはの身体には負担が蓄積しているはずである。

信也は、演習中もずっとなのはを気に掛けていた。

そんな時、3人に連絡が入る。

正体不明の反応をキャッチしたので、調査に向かって欲しいといった内容だった。

3人はコースを変更し、現場へと向かった。






反応があった場所へ到着すると、3人は地上へ降りる。

そこは、何かの遺跡のようで、所々崩れた建築物があった。

3人は辺りを見回す。

――ガシャ

金属音が聞こえ、3人は其方に振り向く。

そこには、機械の身体を持つ、ロボットのようなものがいた。

そのロボットの手足は、刃物のように鋭く、昆虫のような姿であった。

「こいつが正体不明の反応か?」

3人はデバイスを構える。

「けど、大した事はなさそうだな」

ヴィータがそう言った。

その時、ロボットが突っ込んでくる。

『Aero wing』

『Axelfin.』

3人は飛行魔法を発動させ、散開するようにそのロボットの突撃をかわす。

「へっ、このノロマ!」

ヴィータが挑発するような言動を放つ。

だが、そのロボットは一番近くにいたなのはに向き直る。

すると突然、刃物で出来ていた手足の1本を、なのはに向かって射出した。

回転しながら飛んでくる刃物。

「はっ!」

突然の事になのはは驚いたが、ある程度距離があった為、落ち着いて高速移動魔法を発動させようとした。

「レイジングハ・・・うっ・・・・!?」

突如、なのはの視界が歪む。

今まで蓄積された負担が、ここに来て現れてしまった。

目眩を起こし、集中力が一瞬途切れ、魔法を発動させる事ができなかった。

「・・・・・・・あっ・・・・」

気を取り直したなのはの視界に映ったのは、回転しながら向かってくる刃物。

最早完全に避けきれないタイミング。

「なのはぁっ!!!」

ヴィータが叫ぶ。

なのはは覚悟して目を瞑った。











その一瞬がなのはにとって長く感じる。
















『Aero Wing. Full Speed.』















――ドシュッ














何かを貫く音が聞こえたが、なのはの身体に痛みは無い。












――ピチャッ

なのはの頬に、生温かい物が付着する。

「シンヤッ!!」

ヴィータが叫んだ。

「・・・・・え?」

なのはは、恐る恐る目を開ける。

目の前には、良く知る青い魔力光の翼。

「信也・・・・君?」

なのはが呟く。

信也は首だけを回してなのはの方を見る。

「なのは・・・・・・怪我は無い?」

信也は、そう問いかけた。

「う、うん!信也君のお陰だよ!」

なのはは笑顔で言った。

その笑顔を見ると、信也も微笑む。

「シッ、シンヤッ!お前っ!」

ヴィータは焦った表情で信也に呼びかける。

なのはは、何故ヴィータがそんなに焦っているのか不思議に思う。

しかし、信也は自傷気味に笑う。

「はははっ・・・・・・兄ちゃんみたいにはいかないや・・・・・・」

「えっ?」

なのはが声を漏らした時、

「ガハッ!・・・・・ゲホッ!」

信也が口から血を吐き出した。

その光景が信じられないなのはは呆然となった。

なのはは、先程頬に付いた生温かい物を、震える指で拭い、その目で見た。

それは、真っ赤な血であった。

信也のエアロウイングが消失し、信也は地上へ落下していく。

なのははそこで初めて気付いた。

信也の腹部に、巨大な刃物が突き刺さっていた事に。

「し、信也君・・・・・・?」

呆然自失となるなのは。

その時、

――ドグシャ

ヴィータがロボットを、ギガントフォルムで叩き潰していた。

ヴィータはすぐに信也に駆け寄る。

「おい!シンヤ!しっかりしろ!」

信也を抱き上げながら呼びかける。

なのはは、呆然と空から降りてくる。

「なのはっ!救護班を呼べ!」

ヴィータが叫ぶが、なのはは聞こえていないのか、反応が無い。

「おいなのは!なのは!」

なのはは、呆然と立ち尽くし、血を流し続ける信也を見つめていた。







あの後、ヴィータがすぐに救護班の出動を要請し、信也は病院へ運ばれた。

すぐに集中治療室に運び込まれ、丸一日がかりで治療を施し、何とか峠は越えたが、未だ楽観を許さない状態であった。

当然、拓也達神原家の人間にも知らせが届き、信也に付っきりの状態である。

そして、医師からは信じられない事を告げられる。

このまま意識が戻らなかった場合、とても危険であること。

そして、たとえ完治したとしても、空を飛ぶ事は愚か、歩くことさえ困難になる可能性があることを告げられた。

その報告を聞いたなのはは、これ以上ないほどにショックを受けていた。

そしてその後、フェイトやはやて達ヴォルケンリッター、話を聞いたユーノやエリス、クロノ達も見舞いへ訪れたが、なのはの姿だけはその中に無かった。





信也が入院して数日後。

なのはは、ヴィータと共に武装隊の訓練に参加していた。

局員1人の為に何日も休んでいられないのは、管理局の一員の辛いところである。

なのはは、未だに引きずっているのか、暗い雰囲気を纏わせている。

なのはは、事の成り行きを拓也達神原家の人間に話した。

演習の帰りに、正体不明の反応があったために、調査に行ったこと。

そこで未確認のロボットに襲われた事。

普段なら苦戦するような相手ではなかったが、今までの無理が祟って、戦闘中に目眩を起こしてしまったこと。

そんな自分を庇って、信也が重症を追ってしまった事を説明した。

なのはにとっては、思い切り責めてくれた方がよかった。

自分の所為で信也が死にそうになっているから、その位は当然だと思っていた。

しかし、拓也達はそれをしなかった。

拓也を始め、宏明も由利子も、なのはを責めたりはしなかった。

しかし、それが逆になのはが思い詰める原因になってしまっていた。

「おいなのは?」

空中からヴィータが呼びかける。

物思いに耽っていたなのはは、はっとなる。

「そんなに暗い顔してると、シンヤが起きたときに心配かけちまうぞ」

ヴィータは、なのはを元気付けるためにそう言う。

「あ、う、うん。ごめん、ヴィータちゃん」

なのははとりあえず謝る。

「ほら、早く行こうぜ」

ヴィータはなのはを促した。

「う、うん。レイジングハート」

『Axelfin.』

なのはが、足に桜色の翼を発生させる。

そして、飛び立ったその瞬間だった。

なのはの脳裏に、あの時の光景が鮮明に蘇る。

「いや・・・・いやぁあああああああっ!!」

なのはは、すぐに飛行魔法をキャンセルする。

「な、なのは!?」

突然のなのはの悲鳴に驚くヴィータ。

なのはは、怯えるように頭を抱える。

「信也君!信也君っ!!・・・・・・・やぁ!私の所為で!・・・・私の所為で信也君が!!」

「なのは!おい!なのは落ち着け!」

ヴィータはなのはを落ち着けようとする。

「くそっ!おい!医務室から鎮静剤持って来い!!早く!!」

ヴィータは近くの隊員に呼びかける。

「信也君が死んじゃうよぉっ!!」

錯乱するなのはをヴィータは押さえつけ、届けられた鎮静剤を打った。

全身から、力が抜けるなのは。

それでも、なのはは涙を流しつつ信也の名を呟き続けた。




なのはは、空を飛ぶ事が完全にトラウマになってしまった。

空を飛ぼうとすると、信也が重症を負った光景がフラッシュバックし、怯えて錯乱してしまうようになった。






信也が入院して一週間。

「う・・・・・・」

信也が意識を取り戻した。

「おう信也。やっと起きたか?」

そうやって声をかけて来たのは拓也だった。

「・・・・・兄ちゃん?」

信也は呟く。

「ああ・・・・・・ったく、心配かけやがって」

拓也は笑みを浮かべてそう言った。

言葉は素っ気なさそうだが、その顔は安堵感で一杯だった。

「兄ちゃん・・・・僕、どの位眠ってたの?」

信也が尋ねる。

「そうだな・・・・丁度一週間ってとこだな」

「そう・・・・・」

「俺は先生を呼んでくるからな。大人しくしてろよ」

「うん・・・・・」




信也は診察を受け、命の危険は無くなった事が確認された。

信也は、医師から歩くことさえままならなくなる可能性があると聞いても、決して悲観したりはしなかった。

そして、それから数日後。



――コンコン

病室のドアがノックされる。

「どうぞ」

信也は、まだ身体を起こす事は出来ないので、寝そべったまま答える。

扉を開けて入ってきたのは、

「やあ、信也君」

「士郎さん・・・・・」

なのはの父、高町 士郎であった。

「思ったよりも元気そうだね」

「ええ。まだ、身体を起こす事は出来ませんが・・・・・・」

そう言葉を交わす。

「・・・・・信也君。君は身を挺してなのはを護ってくれたと聞いた。本当にありがとう」

そう言って、士郎は頭を下げる。

しかし、信也は、

「・・・・・士郎さん・・・・・なのはは・・・・・どうしたんですか?」

そう尋ねる。

「なのはは無傷だよ。君のお陰だ」

士郎はそういうが、

「士郎さん!」

信也はもう一度士郎の名を呼ぶ。

その信也の声に、士郎は一度ため息をつくと、

「なのはは・・・・・君に会いたくないと・・・・・・・自分には会う資格が無いと言っていた・・・・こっちには無理を言って連れて来ては貰ったが、決して君に会おうとはしなかった」

そう呟く。

「・・・・・・そうですか・・・・・・・ごめんなさい士郎さん」

信也は突如謝る。

「何故君が謝る?」

士郎は聞き返した。

「なのはを・・・・・泣かせてしまいました・・・・・」

信也はそう言った。

「何を言うんだ!君はなのはを護ってくれた!それだけでも・・・・」

「それじゃダメなんです!!」

士郎の言葉の途中で、信也は叫んだ。

「それじゃダメなんです!なのはの命を護れても、なのはの笑顔が護れなかったら意味が無いんです!!」

信也はそう叫ぶと、無理矢理身体を起こす。

「信也君!何を!?」

止めようとする士郎を信也は目で制した。

「士郎さん。お願いがあります!」

そして、士郎の目を真っ直ぐ見て、信也は言った。

「・・・・僕に、剣を教えてください!」

そう言って信也は頭を下げる。

「あの時、僕がちゃんと攻撃を捌けていれば、なのはを泣かせる事も無かったんです。僕も兄ちゃん・・・・・いえ、兄さんの様に、護りたいものを、ちゃんと護れる男になりたいんです!」

その言葉を聞くと、士郎は顔つきを変える。

「信也君、顔を上げなさい」

そう言われた信也は顔を上げる。

そして、士郎は信也の目を見て言った。

「その理由は、何処から来る?」

その言葉は、とても重く感じた。

それでも信也は、はっきりと答えた。

「僕は・・・・・僕はなのはが好きなんです!!僕はなのはを!なのはの笑顔を護れる男になりたいんです!!」

信也は、士郎の目を真っ直ぐに見続ける。

暫く目を合わせ続けていたが、

「・・・・・・わかった。君に剣を教えよう」

士郎がそう言った。

「あ、ありがとうございます!」

「ただし条件がある」

信也はお礼を言ったが、士郎は条件を出してきた。

「何でしょうか?」

「まず一つ目。剣を教えるのは、その怪我が完治してからだ。最低でも、1年は療養すること」

「はい」

信也は頷く。

「そして2つ目。修行中の間は、実戦を禁止する。当然、その間は管理局からも離れてもらう」

「えっ?」

「修行中の未熟者を、危険な実戦に出すわけにはいかないからね」

思いがけない条件に一瞬信也は躊躇した。

だが、

「・・・・・わかりました」

信也はそれを了承した。

それを聞くと、士郎は笑顔になる。

「そうと決まったら、今は休みなさい。無理をすると、それだけ治りも遅くなるからね」

士郎は、信也の身体を支えながら、ゆっくりとベッドに寝かせる。

「はい」

信也は返事をして目を閉じた。





その病室の入り口の前で、なのはは立ち尽くしていた。

「・・・・・・・私には・・・・・信也君の気持ちを受け取る資格なんて・・・・・無いよ・・・・・・・・・・・・」

その言葉を残し、なのはは信也の病室の前から立ち去った。







あとがき

幕間その四、なのは撃墜事件(仮)改め信也撃墜事件完成です。

手こずるかと思ったら、割とあっさり書けました。

まあ、拓也があそこまで人の身体に詳しいか?という所はスルーしてくれると助かります。

その辺の説明も結構グダグダしてますし。

さて、なのはの代わりに信也が撃墜されたというか撃墜されにいきました。

この流れは予想した人いるでしょうか?

いると思いますが。

とりあえず、アニメではどういう風に撃墜されたのかが明らかになっていないので、こんな感じにしましたが如何ですかね?

そんで、なのは、空を飛ぶ事がトラウマに。

これは誰もが予想外でしょうね。

サブタイトルの「折れた翼」というのは、なのはのことを指しています。

更に信也、士郎に弟子入り。

信也のパワーアップフラグが立ちました。

しかし、信也となのはの関係が悪い方に。

さて、この先どうなるのか?

StS編を楽しみにしててください。

では、StS編も頑張ります。





[8056] リリカルフロンティアStrikerS プロローグ  (シグナムの設定に追加)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/09/11 22:41

リリカルフロンティアStrikerS





プロローグ 勇気の翼の旅立ち



――闇の書事件から9年。

海鳴市の山中に、かなり広い結界が張られていた。

その中では、

――ドゴォッ

爆発が起こり、木々が吹き飛ぶ。

「はぁあああああああっ!!」

「でやぁあああああああああっ!!」

――ドゴォン

剣を合わせる2人の人影。

「うぉおおおおおおおおっ!!」

片方は、アルダフォームに龍魂剣を持った拓也。

「でぇええええええいっ!!」

もう片方は、ブレイブハートのアルフォースモードを発動した信也。

2人の周りには、激突で出来たと思われるクレーターが無数にあった。

2人は一旦間合いを開ける。

拓也が信也に話しかけた。

「やるな、信也!」

「当然だよ!今日こそ勝たせてもらうよ!兄さん!!」

信也は笑みを浮かべてそう言った。

拓也も笑みを浮かべると、

「そうか・・・・・・なら!全力で行くぞ!!」

バリアジャケットの形態を、カイゼルグレイフォームに変更する。

そして、龍魂剣を地面に突き刺した。

「こいつを破ってみろ!信也!!」

『Nine Headed Dragon Formation』

「九頭竜陣!!」

剣を突き刺した地面の罅が8方向に広がる。

その1つ1つから炎の龍が生み出され、最後に拓也の足元から一際大きな炎の龍が現れ、それを拓也は纏う。

9匹の炎の龍が、信也に襲い掛かる。

それを見た信也は、構えなおす。

「ブレイブハート!取って置き!いくよ!!」

『Yes,Master.』





そして、






――ドゴォオオオオオオオオン!!!






結界を揺るがすほどの大爆発が起こる。

その中心地点には、

「あ~あ、やっぱりまだ敵わないや」

大の字になって倒れている信也と、その前に立つ、拓也の姿があった。

「まだまだだな」

拓也はそう言う。

それでも、信也はスッキリとした表情だった。

その時、2人の近くに魔法陣が浮かび上がり、2人が転送されてくる。

それは、信也の剣の師である士郎と、フェイトの母親であり、信也が魔法の師に選んだプレシアだった。

「士郎さん・・・・・」

信也が呟く。

「強くなったな、信也君」

士郎はそう笑顔で言う。

「負けちゃいましたけどね」

信也はそう返した。

「謙遜することは無いさ。負けたとしても、君の成長を疑う者はいない。君になら、なのはを任せられる」

士郎はそう言って手を差し出す。

信也はその手を掴んで立ち上がった。

「はい。今度こそ、なのはの笑顔を必ず護ります」

信也は、決意の言葉を口にする。

そして、

「士郎さん、プレシアさん・・・・・今日まで本当にありがとうございました」

そう言って、信也は頭を下げる。

「行くんだな?」

士郎の問いに、

「はい!」

しっかりと頷く。

「じゃあ、ミッドチルダまでは、私が転送で送るわ」

「はい、お願いします!」

プレシアの言葉に返事をする信也。

信也の周りに、魔法陣が浮かび上がる。

信也が光に包まれる中、

「兄さん!」

信也が拓也に向き直る。

「いつか必ず追いつくから!!」

その言葉に、拓也は笑みを浮かべ、

「おう!行って来い!」

サムズアップで答えた。

転送される信也。

そして、転送が完了し、魔法陣が消えると、

「・・・・・・いつか追いつく・・・・・・か・・・・・・・」

拓也はそう呟くと、ばったりと倒れる。

「・・・・もう追いついてるっつーの」

拓也は、もう既に限界だった。

さっきまでは、唯のやせ我慢であり、もう完全に足に来ていたのだ。

結界が解かれていき、青い空を寝そべったまま見上げる。

「・・・・・鍛えなおすか?」

拓也はそう呟く。

「その時は手伝うわよ。フェイトの婚約者が、弟に負けるような腑抜けじゃ心配だから」

プレシアの言葉に、拓也は苦笑する。

こうして、勇気の翼は旅立った。

そしてこの1年後、物語は始まる。






次回予告


昇格試験に臨む新人達。

それを見守るのは、翼が折れてしまったなのは。

その翼を蘇らせるために、

今、勇気の翼が舞い上がる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第一話 蘇る翼

今、未来への翼が進化する。





第一話開始時点での主要キャラクター早見表



・神原 拓也

この物語の主人公・・・・・・・の筈なんだけど、最初は暫く出番なし。

闇の書事件に関わった主要メンバーの中で、唯一管理局に入っていない。

信也の修行に付き合っていたため、信也ほどではないにしろ、それなりに腕を上げている。

現在、22歳の大学生。

サッカーの実力は、プロの方から一目置かれるほど。

ただ、拓也自身は将来を決めかねている。

フェイトとの婚約関係はちゃんと続いている。

ただ、フェイトは管理局にいるので、メールなどのやり取りはしているが、直接会えることは少ない。

因みに、稀にフェイトに会いにミッドチルダに行く時があるため、エリオとは面識がある。

魔導師ランクは、アグニフォームでAAA、ヴリトラフォームでAAA+、アルダフォームでS+、カイゼルグレイフォームでSS+。





・神原 信也

19歳。

重傷を負った後から、士郎に弟子入りした。

そして、魔法に関してはプレシアに師事を仰いだ。

成長率が一番高い。

信也は二刀流ではない為、御神流ではない。

一撃の威力は拓也に劣る物の、剣技では拓也を超える。

なのはとは、事件後から避けられるようになり、まともに話をしておらず、中学卒業後からは全く会っていない。

事件後からなのはが飛べなくなった事を知り、次に飛ぶ時はなのはと一緒にという事を自分で決め、それ以来、信也も空を飛んではいない。

プロローグ後は、管理局に再入局する。

ただし、プレシアが管理局にバレない特別なリミッターを掛けていて、魔力をBランク程度まで落している。

リミッターは、ブレイブハートで解除できるようになっている。

信也は、事故の後遺症という名目で、1から出直し、陸士の道を歩んでいる。

現在は、スバル、ティアナと同じ部隊に所属する二等陸士のCランク魔導師。

魔導師ランクはリミッター時はBランク前後。

リミッター解除すれば、S+。

切り札まで使えば、SS+まで行く。




・源 輝二

22歳。

闇の書事件の奉仕活動後、そのまま管理局に入局した。

拓也よりは割り切れるところがあるとはいえ、命令無視することもしばしば。

現在は輝一と共に陸士108部隊に所属する一等陸尉。

はやてとは恋人同士。

因みにリィンからは「とーさま」と呼ばれる。

魔導師ランクは、ヴォルフフォームでAAA,ガルムフォームでAAA+、ベオウルフフォームでS+、マグナガルルフォームでSS+。

しかし、管理局内では殆どヴォルフフォームであり、ガルムフォームですら稀にしか使わないため、登録魔導師ランクはAAAである。




・木村 輝一

22歳。

輝二の双子の兄。

輝二と同じく、闇の書事件の奉仕活動後に、そのまま管理局に入局した。

現在は、輝二と共に陸士108部隊に所属する一等陸尉。

シグナムとは、20歳になった時点で、正式な恋人同士になった。

因みに、闇の書事件の後に、新フォームのライヒフォームを編み出した。

魔導師ランクは、レーべフォームでS-、カイザーレオフォームでS、ライヒフォームでSS-。

登録魔導師ランクは、S-となっている。





・高町 なのは

19歳。

事件後、フェイトやはやて達の努力で笑顔を取り戻すが、どこか影がある。

事件後から信也を避けるようになり、中学卒業後は、逃げるようにミッドで暮らすようになった。

未だにトラウマを克服できておらず、飛ぶ事が出来ない。

故に、陸士の道を歩んでいる。

それでも、空港火災ではスバルを救っており、管理局で有名なエースである。

現在一等陸尉。

魔導師ランクはSランク。




・フェイト・テスタロッサ

19歳。

苗字がテスタロッサのままなのと、拓也と婚約者同士なのを除けば、ほぼアニメと一緒。




・八神 はやて

19歳。

輝二と恋人同士という事以外はアニメとほぼ一緒。

ただし、プライベートではリィンに「かーさま」と呼ばれる。




・リインフォース・アイン

夜天の魔導書の管制人格。

リインフォース、もしくは、アインと呼ばれる。

身体がデジモンと同じくデータで構成されているため、魔法の再現は出来るが、正確には魔法ではない。

ユニゾンも可能ではあるが、非殺傷が設定できないために、前線にはまず出ない。

そのため、デバイスマイスターとしての道を歩む。

シャーリーとは仲が良い。

因みにリィンの誕生にも一役かっており、リィンからは「ねーさま」と呼ばれる。

魔導師ではないので、登録されていないが、戦力的にはSランク並。





・リインフォース・ツヴァイ

はやてが生み出したユニゾンデバイス。

愛称は「リィン」

輝二、はやて、リインフォース・アインをそれぞれ「とーさま」、「かーさま」、「ねーさま」と呼ぶ以外はアニメと殆ど変わりなし。




・シグナム

普段は、輝一と恋人同士になった以外はアニメとほぼ同じ。

ただし、とある特定の条件が揃うと、2重人格かと思わせるほどに性格が変わる。




・ヴィータ、シャマル、ザフィーラ

アニメとほぼ一緒。





・スバル・ナカジマ

アニメとほぼ一緒だが、幕間その一で拓也に助けられた時の、「オレンジ色の翼と噴き上がる炎」が強くイメージとして残っている。(顔は覚えてない)






・ティアナ・ランスター

アニメと一緒。




・エリオ・モンディアル

拓也と面識がある以外、アニメとほぼ同じ。




・キャロ・ル・ルシエ

アニメとほぼ一緒。





・織本 泉、氷見 友樹、柴山 純平

魔法や次元世界のことは知っているが、特に関わる事もなく、それぞれの道を歩んでいる。






あとがき

とりあえずプロローグを投稿します。

早見表のほうには、自分が考えた設定があります。

あんまり変わってない人が多いですが・・・・・・

突っ込みどころ満載かもしれませんが、この設定で行きたいと思います。

では、第一話をお楽しみに。






[8056] 第一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/14 19:12
信也が管理局に再入局して一年。

Bランクへの昇格試験が始まる。



第一話 蘇る翼



――0075年 4月 ミッドチルダ 臨海第8空港近隣 廃棄都市街

今、この廃棄都市街で、2人の少女と1人の青年が昇格試験に挑もうとしていた。

2人の少女の内、一人はスバル・ナカジマ。

この少女は、青髪のショートカットに鉢巻をして、右手にガントレットタイプのデバイス、足にはインラインスケート型のデバイスを履いている。

念入りにウォームアップをしており、全体的にボーイッシュな雰囲気を持つ少女だ。

スバルは、4年前の空港火災でなのはに助けられており、なのはに憧れて魔導師になった。

本人は覚えていないが、10年前に拓也に救われた少女であり、幼い記憶ながらも「オレンジ色の翼と噴き上がる炎」が脳裏に焼きついている。

もう1人の少女はティアナ・ランスター。

オレンジの髪のツインテールで、スバルとはコンビ。

執務官を目指す少女である。

現在は、拳銃型デバイスの最終調整を行なっている。

そして、最後の青年は、野球帽にサングラスをかけており、顔が確認できない。

「ねえ、なんでそんな似合わない帽子とサングラスしてるの?」

その青年にスバルが問いかける。

「これから上官に会うのに、そのカッコは失礼じゃない?」

ティアナもそう言った。

「大丈夫。許可は受けてる」

青年はそう答えた。

と、そこで時間を告げるブザーが鳴る。

目の前の空間にモニターが開き、銀髪の少女と思わしき人物が映る。

『おはようございます!さて、魔導師試験の受験者さん3名、揃ってますか?』

「「「はい!」」」

3人は返事をする。

『ではまず、最初に試験を受ける2名の方を確認します。時空管理局 陸士386部隊に所属のスバル・ナカジマ二等陸士と・・・・・』

「はい!」

『ティアナ・ランスター二等陸士』

「はい!」

『保有している魔導師ランクは陸戦Cランク。本日受験するのは、陸戦魔導師Bランクへの昇格試験で、間違いないですね?』

「はい!」

「間違いありません!」

2人ははっきりと返事をする。

『はい!本日の試験管を務めますのは、わたくし、リインフォース・ツヴァイ空曹長です。よろしくですよ~』

リィンは、敬礼をしながらそう言った。

「「よろしくお願いします!」」

2人も敬礼をしながらそう返す。

『あ、もう1人の方は、お2人の試験が終わるまで、もうしばらくお待ちください。お暇でしたら、お2人の試験の様子がモニターでもわかるようになっていますので、よろしければご覧になってください』

「了解です」

そう返す青年。



その上空で、ヘリからその様子を見下ろしている人物がいた。

「お、早速始まってるなぁ。リィンもちゃんと試験管してる。フフッ」

そう言うのは、はやて。

身を乗り出しながら下の様子を眺めるはやてに、

「はやて。ドア全開だと危ないよ。モニターでも見られるんだから」

座席からそう声をかけたのは、フェイト。

「は~い」

はやてはそう返事をして、ドアを閉めた。

はやては、フェイトの隣に座ると、モニターを開く。

そこに、スバルとティアナ、そして青年の様子が映し出される。

「この3人が、はやての見つけた子達だね」

フェイトがそう尋ねると、

「うん。こっちの2人は、なかなか伸び代がありそうなええ素材や」

はやては、スバルとティアナを指しながらそう言う。

「今日の試験の様子を見て、いけそうなら正式に引き抜き?」

フェイトがそう尋ねる。

「直接の判断は、なのはちゃんにお任せしてるんやけどな」

「そっか」

「部隊に入ったら、なのはちゃんの直接の部下で、教え子になるわけやからな」

「そうだね・・・・・じゃあはやて。こっちの男の人は?見た感じ私たちと同じくらいだと思うけど・・・・・資料にもこの人の情報は無かったよ」

フェイトはそう言う。

「ふふっ、見てみるか?」

はやては軽く笑ってパネルを操作し、その青年の情報を表示する。

「ッ!?はやて、これって・・・・・拓也から1年前に再入局したって話は聞いてたけど、その時には魔力値がAAA以上の入局者はいなかったはずだよ」

思わずフェイトは驚いた表情を浮かべる。

「驚いたか?なのはちゃんには秘密やで。教えた途端に逃げてしまうからな。魔力値に関してはよく見てみぃ」

はやてにそう言われ、フェイトは資料の魔力値の欄を確認する。

「えっ?魔力値Bランク?」

また驚いた声を上げるフェイト。

「入局時の情報では、表向きは事故の後遺症っていう話や」

「表向きは?」

フェイトは不思議そうな表情を浮かべる。

「そや。ちょっと前に本人に直接会って聞いたんやけど、実際は管理局にバレへんように、リミッターがかかっとるらしいで」

「リミッター?でも、なんでそんなことを?」

「AAAランク以上の魔導師は、ほぼ即戦力やからな。そうなれば、あっちこっち引っ張りダコで進路がほぼ勝手に決められてまう。名前も知れ渡るからなのはちゃんに避けられてしまうからや」

「じゃあ・・・・・はやては今回の試験が・・・・・・」

フェイトの言葉にはやては頷き、

「そや。なのはちゃんを立ち直らせる、最後のチャンスやと思っとる」

そう口にした。










とある場所で、なのはが試験コースの確認を行なっていた。

『範囲内に生命反応、危険物の反応はありません。コースチェック終了です』

待機状態のレイジングハートが、そう報告する。

「うん、ありがとうレイジングハート。観察用のサーチャーと、障害用のオートスフィアも設置完了。私達は、全体を見てよっか」

『Yes, My master.』





スバルとティアナは、リィンからコースの説明を受けていた。

そして、説明が終わると、

『何か質問は?』

リィンはそう尋ねる。

「えっ?え~っと・・・・・」

スバルは困惑気味にティアナを見る。

「ありません!」

ティアナがそう返事をすると、

「ありません!」

スバルも気を取り直してそう返事をした。

『では、スタートまでもう少し。ゴール地点で会いましょう・・・・・ですよ』

そう言って、モニターが消えて、カウントが表示される。

「じゃあ2人とも、頑張って」

青年がそう声をかける。

「うん、ありがとう」

「言われるまでもないわ」

そして、2人はカウントゼロと同時にスタートする。

「さて、どうなるかな?」

青年はそう呟く。

『マスターは如何お考えで?』

青年のデバイスらしき男性の声が問いかける。

「そうだね・・・・・2人ともBランクレベルの実力は十分に備えてるから、トラブルが無い限りは大丈夫だと思うよ」



試験が進んでいく。

2人は特に問題も無く、いいタイムで進んでいた。

機転も利かし、次々とターゲットを撃破していく。

だが、終盤に差し掛かったところで、見逃していたスフィアの攻撃をティアナがギリギリでスバルを助け、自身も間一髪でかわすが、床の段差に足を引っ掛け、倒れる。

だが、すぐに転がりながら物陰に避難し、スフィアを打ち落とした。

その際、放った魔力弾の一発がサーチャーに当たり、モニターの画面が途切れる。

「あれ?」

『どうやらサーチャーに流れ弾が当たったようです』

青年に説明するデバイス。

「そっか・・・・・・ティアナ、転んだ時に足を痛めたみたいだったけど、大丈夫かな?」

『今は2人を信じましょう』

「うん、そうだね」





暫くすると、ハイウェイにティアナが駆けて来る。

その様子は、青年もギリギリ見えていた。

しかし、それを狙ってビルの中から大型の中距離狙撃型攻撃スフィアが攻撃を放つ。

その弾は、ティアナに向かって放たれ、直撃した。

「・・・・・・幻影か」

青年は落ち着いて見切る。

再びティアナの姿が現れる。

再び、それに向かって攻撃が放たれる。

今度はその攻撃をティアナは避ける。

「中距離攻撃型の狙撃スフィアか・・・・・・今の2人には荷が重いかな?」

『マスターなら如何されますか?』

「僕なら?そうだね・・・・・・攻撃の方向から位置を割り出して、相手の射程外からの狙撃。もしくは、障壁を張りながら接近して、一気に決めるかのどちらかかな?」

『双方とも、今のあの2人には不可能な方法ですね』

「うん。ティアナには射程外からの狙撃は出来ても、大型スフィアのバリアを破れるほどの威力は無いし、スバルにはバリアを破れるほどの力があっても、射程が無い上、大型スフィアの攻撃を受け止め続けられるバリアの強固さも無いからね」

『なら方法は・・・・・・』

「そうだね。ティアナが攻撃を引き付け、その隙にスバルが懐に潜り込む。今やってるみたいにね」

青年の視線の先には、ビルの屋上でベルカ式魔法陣を展開するスバルの姿。

そして、スバルが拳を地面に叩きつけると、水色の魔力光の道が伸びる。

スバルの魔法『ウイングロード』。

スバルは、その道を駆けて、大型スフィアのいるビルに突っ込んだ。

それから暫くして、ビルの中から爆発音と共に、水色の魔力光が飛び出した。

「無事撃破・・・・かな」

青年は呟く。

しかし、制限時間が迫っている。

スバルは、ティアナを背負ってハイウェイを疾走していた。

ティアナがスバルの背中から、最後のターゲットを撃ち抜く。

そして、スバルはグングンとスピードを上げた。

「・・・・・・・スバル、止まる時の事考えてるのかな?」

そうポツリと漏らす青年。

『全く考えていませんね』

デバイスはそう答えた。

そして、そのまま猛スピードでゴールラインを越え、閃光に包まれた。

スバルとティアナは、魔力の網とクッションに引っ掛かっており、飛んできたリィンに説教を受けていた。

まあ、リィンは身長約30cmなので、2人はその事に唖然としているようだが。

その時、ビルの上から彼女たちの傍に人影が飛び降りた。

その人影は、魔法陣をクッションにして、難無く着地する。

その人影のシルエットを見た青年は、

「・・・・・・なのは」

思わず呟いた。




そして暫くすると、青年の傍にモニターが開き、リィンが話し出す。

『はい、お待たせしました!あなたが受験するのは、同じく魔導師Bランクへの昇格試験で間違いないですか?』

「はい!」

青年は返事をする。

『それでは、試験内容を説明します。試験内容はいたって簡単。Bランク以上の魔導師があなたを追いかけますから、制限時間までに逃げ切る、もしくは追いかけてくる魔導師を撃破すればクリアです。受験者は、バインドで10秒間捕縛されたらそこで終了となります。ただし、10秒以内に脱出すれば試験続行ですよ。それから、追いかけてくる魔導師は、最初は攻撃魔法を使いませんが、残り時間が5分を切ったら攻撃魔法も使ってきます。注意してください。あ、途中で終了しても、試験内容によっては合格する可能性もあるので、最後まで諦めないで頑張ってくださいね。尚、今回の試験の追跡魔導師は、高町教導官が務めます。以上で質問は?』

「何もありません」

『はい、では制限時間は15分。間も無くスタートです。頑張ってくださいね』

そう言ってモニターが消える。

『マスター、セットアップしますか?』

デバイスが聞いてくる。

しかし、青年は首を横に振った。

「いや、なのはのバインドはあくまで補助レベル。フルドライブ状態なら未だしも、通常状態のバインドぐらいお前の補助無しで潜り抜けなきゃダメだ」

『了解です。マスター』

目の前にモニターが開き、スタートのカウントが表示された。




一方、通信を終えたリィンに、なのはが声をかけた。

「リィン、受験者の名前の確認を忘れてたよ」

その言葉に、リィンははっとした顔をして、

「す、すいませんです!うっかりしてたです!」

「次からは気をつけてね」

「はいです!」

そして、なのはの目の前にもカウントが表示された。

カウントゼロになり、試験がスタートする。

「じゃあ、いくよレイジングハート」

『Yes, My master.』

なのはは、自身に身体強化をかけると、ビルの屋上まで跳躍し、そのままビルの屋上を伝って青年の元へ向かった。

その様子をリィンは見送る。

その横にモニターが開いた。

はやてが話しかける。

『ご苦労様リィン。それにごめんな。嘘をつかせる様な事をやらせてしまって』

「かーさま・・・・・・これでよかったですか?」

リィンが心配そうに聞き返す。

リィンが、青年の名前を確認しなかったのはワザとであった。

『うん。なのはちゃんを立ち直らせる可能性があるのは、彼しかおらん』

はやても、フェイトと一緒に上空から様子を見守った。




なのはは、レイジングハートに青年の位置を確認していた。

「レイジングハート、受験者の位置は?」

『スタート地点から、真っ直ぐこちらに向かってきてます』

「真っ向勝負ってことかな?その点は評価してあげなきゃ」

『そうですね』

そして、幾つかのビルを飛び移った後、立ち止まって前を向く。

その目の前のビルに、青年が着地した。

試験が始まってから、まだ1分程度しか経っていない。

「まずは様子見だね」

なのははレイジングハートを向け、チェーンバインドを放つ。

光の帯が青年に向かう。

その青年は最小限の動きで、そのバインドの先を避ける。

だが、その先が向きを変え、青年を縛らんと円を描く。

しかし、その瞬間には青年は跳躍しており、バインドは空を切る。

青年は、違うビルの屋上に着地した。

「身のこなしは中々だね。身体強化のタイミングも良い」

なのはは、今の回避行動だけで只者では無いと判断する。

「じゃあ、次は少しレベルアップしていくよ!」




試験の様子は、スバルとティアナもモニターで見ていた。

「あいつ何でデバイスを起動しないのよ!」

「なのはさん相手に、デバイス無しなんて無茶だよ~!」

モニターの前でティアナとスバルが叫ぶ。

そんな事を言っても、モニターの向こうの青年には聞こえはしないのだが。

しかし、それでも次々と放たれるバインドを回避していく青年。

時には駆け、時には跳躍し、時にはビルの壁すら足場にしている。

そこで気付く。

青年は、身体強化以外の魔法を使っていないことに。

そして、攻撃するチャンスがあるにも関わらず、青年は全く攻撃する様子が無い。

そのまま時間だけが過ぎていき、残り時間が5分を切る。

リィンがモニターを開き、

「なのはさん、残り時間5分を切りました。攻撃魔法の使用が可能になります」

『了解』





なのはは、目の前の青年の動きに心底驚いていた。

攻撃が無いとは言え、無数のバインドを身体強化と身のこなしだけで掻い潜って見せたのだ。

それもデバイスの補助無しで。

「凄いね・・・・・身体強化と身のこなしだけで言えば、Bランクは確実にあるよ。それに判断も良い」

『そうですね』

と、その時、

『なのはさん、残り時間5分を切りました。攻撃魔法の使用が可能になります』

リィンから報告が来る。

「了解」

なのはは返事を返す。

「じゃあ、ここからは攻撃も入るから注意してね」

その言葉を聞いても、青年はデバイスを起動させようとしなかった。

『Accel Shooter.』

なのはの周りに4つの魔力弾が発生する。

「シュート!」

なのはの掛け声と共に、魔力弾が高速で飛来する。

青年は跳躍で避けるが、その後を3発の魔力弾が追ってくる。

青年はすぐにビルの壁を蹴り、向きを変える。

だが、地上に着地した瞬間に、別方向から1発の魔力弾が迫る。

「くっ!」

青年は障壁を張ってその攻撃を防いだ。

だが、次の瞬間には、桜色のフープバインドが青年を拘束した。

「流石にデバイスを展開しなかったのは、油断が過ぎるね」

あっさりと青年を捕まえたなのははそう言った。

『対象者の捕縛を確認。カウントを開始します』

レイジングハートがカウントを開始する。

『9・・・・・8・・・・・・7・・・・・・・』

「それから、せめて上官の前では帽子とサングラスを取ったほうがいいよ」

なのはは、そんな事を言った。

『・・・・・6・・・・・・・5・・・・・・』

その時、

「・・・・・まだ、試験は終わってないよ。なのは」

「えっ?」

不意に名前を呼ばれたことに、声を漏らすなのは。

そして、青年は叫んだ。

「ブレイブハート!リミッター解除!!」

「えっ!?」

叫ばれたデバイスの名に、驚愕の表情を見せるなのは。

「バインドブレイクと同時にバリアジャケット展開!!飛ぶよ!!」

『Yes,Master. Stand by, Ready. Set up.』

その瞬間、バインドが弾け飛び、青い魔力光の柱が立ち上る。

「あ・・・・・・あ・・・・・・・・」

なのはは驚愕の・・・・・いや、若干だが怯えた表情が窺える。

その様子を見ていたはやては、

「さあ・・・・・ここからや・・・・」

そう呟いた。

そして、その魔力光の中から、青い鎧のバリアジャケットを纏い、青い魔力光の翼を広げた信也が姿を見せた。



その様子はスバルやティアナも見ていた。

「し、信也さん・・・・・飛べたんだ・・・・・」

「・・・・・っていうか何よこのバカ魔力・・・・・」

2人は呆然と呟く。




空中からなのはを見下ろす信也。

「し・・・・信也・・・・・君・・・・・・?」

なのはは恐る恐る呟く。

その言葉に信也は微笑み、

「久しぶりだね・・・・・なのは」

そう返した。

なのはは思わず後ずさる。

「なのは!逃げないで欲しい!」

信也は叫んだ。

なのはの身体が、驚いたようにビクッと震える。

信也は続ける。

「なのは、君があの事件の後から僕を避けるようになったのは知ってる。だから、君がこれ以上付きまとって欲しくないなら、これで最後にする。そして、僕が飛ぶのもこれで最後だ」

信也の言葉に、なのはは思わず顔を上げる。

「僕は、次に飛ぶ時は君と一緒にと自分に誓った。だから、ここで君が飛ばなかったら、僕ももう、空を飛ばない」

「・・・・・な・・・・なんで・・・・・・・」

なのはが震える声で問いかける。

その問いに、信也は真っ直ぐになのはの目を見て、

「なのは・・・・・・僕は、君が好きだ!」

そう、告白した。

その言葉に、なのはは心臓が高鳴り、涙が溢れそうになる。

しかし、

「・・・・・・ダメだよ・・・・・」

なのはは俯いて、その告白を否定した。

「・・・・・私には!信也君の気持ちを受け取る資格なんて無いっ!!」

そう叫びながら上げたなのはの顔は、涙を流していた。

「違うよなのは・・・・」

「えっ・・・・・?」

信也はゆっくりと言葉を続ける。

「資格とか・・・・・そんな事を聞いてるんじゃない・・・・・・僕は、なのはの気持ちが知りたい・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「僕に、これ以上付きまとって欲しくないなら・・・・・・・今ここで、僕の事を“嫌いだ”と言って欲しい・・・・・・そうすれば、僕はもう君を追わない・・・・・・・」

「・・・・・・・・わ、私は・・・・・・・」

「・・・・・・・でも・・・・・もし僕の気持ちを受け取ってくれるなら・・・・・・この手を掴んで欲しい・・・・・・」

信也は、空中でなのはに向かって手を差し出しながら、そう言った。

「・・・・・私は・・・・・・・私は・・・・・・・」

なのはは再び俯く。

「なのは・・・・・僕は確かに8年前、重傷を負って空を飛ぶどころか、歩く事もままならなくなる可能性があると言われた。けど、さっきみたいに歩いて、走って、跳んで・・・・・今もこうして飛ぶことが出来る・・・・・そして今は、君の笑顔を護れるように強くなった・・・・もう、前みたいに君を泣かせたりはしない・・・・・・・だからなのは!君の答えを聞かせて欲しい!」

信也は叫んだ。

「・・・・・・私・・・・・・私は・・・・・・」

なのはは、俯いたまま両手を強く握り締める。

左手に握られていたレイジングハートは、数回点滅し、

『Axelfin.』

自分の判断で、なのはの足に桜色の翼を発生させる。

「ッ!?レイジングハート!?」

レイジングハートの行動に困惑の声を上げるなのは。

『飛んでください。マスター』

レイジングハートが言った。

「で・・・・・でも・・・・・・・」

『飛んでください。彼の想いに応える為に。そして何より、マスター自身の為に』

「わ、私・・・・自身のため・・・・・?」

『私はずっとマスターと一緒でした。ですから、マスターがどれだけ彼の事を想っていたのかも知っています』

「・・・・・レイジングハート・・・・・・」

レイジングハートを見つめるなのは。

『飛んでください。マスター』

なのはは、ゆっくりと信也を見上げた。



「飛んで・・・・・・なのは・・・・・・」

「飛ぶんや・・・・・・なのはちゃん・・・・・・・」

ヘリから様子を窺っていたフェイトとはやても、そう祈るように呟いた。



なのはは、信也に向かって手を伸ばし、

「・・・・・・信也君」

そう呟く。

「・・・・・・なのは」

信也は微笑んで呟いた。

なのは膝を軽く曲げる。

そして、足に力を入れ、地面を蹴って飛び上がった。

「――――――ッ!」

そして、フラッシュバックするあの時の光景。

「あ・・・・・」

よろめく自分、迫り来る刃物。

「ああっ・・・・・・」

目をつぶる自分、何かを貫く音と頬に付着する生暖かい感触。

「あああっ・・・・・・・・・」

巨大な刃物が突き刺り墜ちて行く信也、止まらない血液。

「い・・・・・・」

なのはが思わず悲鳴を上げようとした瞬間、

「なのは!!」

その光景を吹き飛ばす、愛しき者の声。

「信也君!!」

なのはは、信也の伸ばされた手を掴んだ。

信也からも、しっかりと握り返す。

信也は、なのはを抱き寄せると、

「なのは、しっかり掴まってて」

「う、うん」

信也の腕にしがみ付くなのは。

次の瞬間、信也はなのはと共に猛スピードで上昇を始めた。

いきなりの事で、目を瞑りながらしがみ付いているなのは。

あっという間に地上からは見えない高度まで来る。

そして、

「なのは、目を開けて・・・・・」

信也の言葉に、なのははゆっくりと目を開けた。

「ああ・・・・・」

思わずなのはは声を漏らす。

なのはの目には、視界一杯に広がる青い空。

不意になのはは涙を流す。

「・・・・・信也君・・・・・私・・・・忘れてたよ・・・・・・・空って、こんなにも広くて、気持ちいい場所だったんだね」

涙を拭い、信也に微笑みかけるなのは。

その顔には、少し前まであった影は無い。

信也も微笑み返す。

すると、なのはは一旦信也から離れる。

「レイジングハート、試験時間、あとどの位残ってる?」

『残り時間、30秒です』

レイジングハートの答えを聞くと、

「信也君、まだ、試験は終わってないよ」

レイジングハートを構えながらそう言った。

「そうだね・・・・・」

信也はブレイブハートのビクトリーモードを構える。

『Starlight Breaker.』

なのはがレイジングハートを掲げると、魔力が収束していく。

「信也君。私の全力全開、受け止めてくれる?」

なのはがそう問いかける。

「もちろん!」

信也が笑みを浮かべて答えた。

信也はブレイブハートのカートリッジを3発ロードする。

信也が、青い魔力光に包まれる。

信也は一旦なのはから距離を取った。

そして、溜め込んだ魔力を一気に解放。

『Dragon Impulse.』

信也の魔力が竜を形作る。

「いくよ!信也君っ!!スターライト・・・・・・ブレイカーーーーーーーーッ!!!」

なのはから放たれる、特大の集束砲。

それに対して、

「ドラゴンインパルス!!!」

青い光の竜を纏った信也が迷わずに突撃した。

せめぎ合う桜色の集束砲と青き竜。

その激突は凄まじい衝撃を撒き散らす。

その様子は、地上からでもよく解るほどであった。

しばらく拮抗していたが、やがて桜色の集束砲が押されだす。

そして、完全に青き光の竜が桜色の集束砲を撃ち破り、なのはを飲み込む・・・・・・

寸前に光の竜が消え去り、

『カウントゼロ。試験終了です』

レイジングハートが試験の終了を告げると同時に、なのはは信也に抱きしめられていた。

「・・・・・やっと捉まえたよ・・・・・なのは」

その言葉に、なのはも信也の背中に手を回し、

「うん・・・・・今までごめんね・・・・・信也君」

そう呟く。

そして、2人は見つめ合い・・・・・・

自然とキスを交わすのであった。






次回予告


はやてが部隊長の新部隊。

集まってくるメンバー。

今ここに、新たな部隊が誕生する。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二話 機動六課

今、未来への翼が進化する。





あとがき

第一話完成。

なんつーか・・・・・ラブコメ・・・・・・じゃなくてラブ?

コメディーではないと思う。

信也君頑張りました。

初っ端から恋愛話って・・・・・・

立ち直らせるの早かったかな?

いや、でも話数で言えば1話だけど、実際は8年たってるわけだし・・・・・・

まあいいや。

とりあえず信也の試験はご都合主義に自分で考えた物です。

ストーリーに合わせた物なのでご都合で当然です。

その辺の突っ込みは無しにしてくれるとありがたいです。

その他にも色々とご都合主義がありますが・・・・・

そして、信也のリミッター解放のシーンからは、バックミュージックに是非『Brave Heart』(デジモンアドベンチャー無印の進化の歌。言わんでも解ると思いますが)を!

自分、これ聞きながら書きました。

そして最後に、なのはの特大砲撃を受け止める信也。

何でこうなったのかな~?

何もせずに終わるのが何かつまらないと思って考えたら、何故かこんな感じに。

ホントに何でだろ?

やはりなのはと仲良くなるには砲撃を受けないとダメだと本能が言ってるんでしょうか?

あ、因みにドラゴンインパルスは、プロローグで使った切り札ではないのであしからず。

とりあえず次も頑張ります。







[8056] 第二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/15 21:24
ようやく結ばれた信也となのは。

そして、新たな部隊が設立される。



第二話 機動六課



青い空の上で口付けを交わす信也となのは。

少しして離れると、なのはは信也に微笑む。

その微笑があまりにも綺麗で、照れくさくなった信也は、赤くなった頬を掻きながら視線を外した。

「信也君」

「何?なのは」

名を呼ばれて、信也は再びなのはの方を向く。

なのはは、信也の目を真っ直ぐ見て、

「大好きだよ」

と、満面の笑みでそう言った。

「僕もだよ・・・・なのは」

信也もそう返し、再び口付けを交わすのだった。



少しすると、2人は揃って地上へと降りていく。

もちろん、何事も無かったかのように装って。

すると、信也が、

「ブレイブハート、リミッターは掛けといてね」

『了解』

リミッターを掛けて、魔力を落とす。

しかし、地上に戻った2人が見たのは、顔を真っ赤にしているスバルと、引き締めた表情をしながらも頬を赤く染めているティアナの姿だった。

「・・・・・・2人とも、如何したの?」

信也が尋ねる。

「い、いえ・・・・その・・・・・」

ティアナは言葉を濁すが、

「な、なのはさん!信也さん!あのっ!お2人は恋人同士になったってことなんですか!?」

スバルは直球で聞いてきた。

「「えっ!?」」

その言葉で、2人は顔を赤くする。

「ス、スバル?何でいきなりそんな話になったのかな?」

なのはが動揺しながら聞き返す。

「そ、その・・・・・実は・・・・・」

ティアナがおずおずと説明を始める。

「先程のやり取りが・・・・・・その・・・・・モニターに・・・・・・・・」

そのティアナの言葉で察した2人の顔が更に赤くなる。

「あ・・・・あの・・・・・もしかして、空の上のやり取りも?」

信也が震えた声で尋ねた。

「え?・・・・いえ・・・・空の上の事は見えませんでしたが・・・・・」

2人は、ティアナのその言葉を聞くと、幾分かホッとした表情になる。

「何かあったんですか?」

その反応を見たスバルが、首を傾げて聞いてくる。

「「な、何でも無いよ(の)!」」

2人揃って慌てて否定した。

その時、フェイトとはやての乗ったヘリが下りてくる。

「なのはーーーーーッ!!」

「なのはちゃーーーーん!!」

着陸した途端にヘリの中から飛び出してくるフェイトとはやて。

そのままなのはに抱きつく。

「なのは・・・・飛べたんだよね」

「なのはちゃん、ほんまによかったわ・・・・」

2人は感極まった表情で呟く。

「フェイトちゃん・・・・・はやてちゃん・・・・・・ごめんね・・・・・もう大丈夫だよ」

そう言って、なのはは微笑んだ。

暫くして2人が離れると、

「ほな、話さないかんこともあるし、移動しよっか」

はやては、ニコニコ顔でそう言った。

「はやて?何でそんなに機嫌がいいの?」

信也が尋ねる。

「いや~、なのはちゃんが飛べるようになったし、序に良い絵も撮れたしな」

「良い絵?」

はやての言葉に、なのはが首を傾げる。

「これや」

そう言って、目の前にモニターを開く。

そこに写っていたものを見て、一瞬にして顔を真っ赤にする信也となのは。

そこに写っていたのは、先程のキスシーンだった。

因みに、スバルはキスシーンを見て、頭から湯気を出しながら真っ赤になって固まっており、ティアナも真っ赤になりながら顔を横に向けるが、チラチラと横目でその写真を見ていたりする。

「「はやて(ちゃん)!!」」

2人同時に叫ぶ信也となのは。

「あははは!心配せんでも、この写真は責任もって2人の両親に送っとくで~!」

はやてはそう言いながら、笑って走り去る。

「なにが心配しなくてもいいなの~~~~ッ!?」

なのはは、顔を真っ赤にしながら怒ってはやてを追いかける。

「まったく・・・・・」

信也は、そう呟いて腕を組む。

その頬は、未だに赤い。

「まあまあ。はやても最近忙しくてコージに会えないから、ちょっとした悪戯だよ。きっと」

フェイトがそう信也に言う。

信也はそれを聞くと、

「はやての場合、本気かもしれないよ」

そう呟く。

「あはは・・・・否定できないかも・・・・」

フェイトは苦笑しながら呟いた。








所変わって応接室。

信也、スバル、ティアナの3人は、はやてとフェイトから新部隊の設立について話を聞いていた。

それは、4年前の空港火災を切っ掛けに、はやてが事件に対して即座に動ける少数精鋭のエキスパート部隊を持ちたいというものだった。

「・・・・・とまあ、そんな経緯があって、八神二佐は新部隊設立のために奔走」

「4年ほどかかって、やっとそのスタートを切れた、というわけや」

「部隊名は、時空管理局本局、遺失物管理部、機動六課!」

「登録は陸士部隊。フォワード陣は陸戦魔導師が主体で、特定遺失物の捜査と、保守管理が主な任務や」

フェイト、はやて、リィンが説明する。

「遺失物・・・・ロストロギアですね?」

ティアナが確認する。

「そう」

はやてが頷き、

「でも、広域捜査は一課から五課までが担当するから、うちは対策専門」

フェイトが捕捉する。

「そうですか」

因みに、ロストロギアの意味が分からなかったスバルが念話でティアナに尋ね、怒られていたりする。

「で、スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士。そして神原 信也二等陸士」

「「「はい!」」」

「私は、3人を機動六課のフォワードとして迎えたいって考えてる。厳しい仕事にはなるやろうけど、濃い経験は積めると思うし、昇進機会も多くなる。どないやろ?」

はやては、真剣な表情で問いかける。

「「ああ・・・・えと・・・・」」

スバルとティアナは困惑する。

そんな2人にフェイトが言った。

「スバルは高町教導官に魔法戦を直接教われるし・・・・・」

「はい・・・・」

「執務官志望のティアナには、私でよければ、アドバイスとか出来ると思うんだ」

「あ・・・いえ、とんでもない!・・・・と言いますか、恐縮です・・・・・と言いますか・・・・・あっ」

困惑を続けるティアナが、近付いてきたなのはに気付いた。

「取り込み中かな?」

なのはが尋ねる。

「平気やよ」

はやてがそう言って、席を詰めてスペースを空ける。

なのははそこに座った。

「とりあえず、試験の結果ね」

なのはの言葉に、スバルとティアナは気を引き締める。

「まずはスバルとティアナ。2人とも、技術はほぼ問題なし」

その言葉に、若干気が緩むが、

「でも、危険行為や報告不良は見過ごせるレベルを超えています」

その言葉で気落ちする。

「自分やパートナーの安全だとか、試験のルールも守れない魔導師が、人を守るなんて出来ないよね」

なのはの言葉にリィンがウンウン頷く。

「はい・・・・・」

ティアナが力なく返事を返す。

「だから残念ながら、2人とも不合格」

その言葉で、2人が俯く。

だが、

「・・・・・なんだけど」

なのはの言葉には続きがあった。

「「え?」」

2人は顔を上げる。

「2人の魔力値や能力を考えると、次の試験まで半年間もCランク扱いにしておくのは、かえって危ないかも。っていうのが私と試験管の共通見解」

「ですぅ!」

なのはの言葉にリィンが相槌をいれる。

「ということで、これ」

そう言いながら、なのはは書類を2人に差し出す。

「特別講習に参加するための申請書と推薦状ね。これを持って本局で3日間の特別講習を受ければ、4日目に再試験を受けられるから」

「え・・・・ええ?」

「・・・・・あ・・・・」

2人は少し呆けたようになる。

「来週から、本局の厳しい先輩たちにしっかり揉まれて、安全とルールをよく学んで来よ。そしたらBランクなんて、きっと楽勝だよ。ねっ?」

なのはは笑みを浮かべてそう言った。

その言葉で、2人の表情が明るくなり、

「「ありがとうございます!」」

2人揃って頭を下げた。

「合格までは試験に集中したいやろ?私への返事は、試験が済んでから、ってことにしとこうか」

はやての言葉に、

「「すみません!恐れ入ります!」」

2人は揃って立ち上がり、敬礼をしながらそう言った。

そして、お互いに顔を見合わせ、微笑み合うのだった。

「それで、信也君の方なんだけど・・・・・」

なのはが話を続ける。

2人は再び席につく。

「リミッターがかかった状態でも、魔力、能力、判断力。どれをとっても問題なし。文句なしの合格だね」

なのははそう言う。

「それでな信也君」

はやてが話しかける。

「信也君の魔力値は、リミッターがかかった状態で登録してあるから、その事は今までどおり秘密にしててほしいんよ」

「それは解ってる。そうしないと、一部隊の規定保有魔導師ランクをオーバーしちゃうんでしょ?」

「その通りや。私が考えとるメンバーやと、隊長陣は全員リミッターを掛けて魔導師ランクを落とさなあかんのや。信也君の自由にリミッター解除が出来ることは、いざという時に絶対に役に立つと思う」

「うん。了解」

話が一区切りつくと、

「あ、あの~・・・・」

スバルがおずおずと言い出した。

「如何したの?スバル」

なのはが尋ねる。

「参考のために聞きたいんですけど、信也さんってリミッター解除すると、どの位になるんですか?」

それを聞くとなのはは、

「う~ん・・・・・デバイスをフルドライブさせてないから正確なことはなんとも言えないんだけど、多分Sランクは確実にあるんじゃないかな」

そう推測する。

「「エ、Sランク!?」」

スバルとティアナは同時に驚く。

「2人ともっ!しーっ!」

2人が大きな声を出したので、はやては慌てて黙らせる。

「「す、すいません・・・・・・」」

2人は縮こまる。

スバルが気を取り直すと、

「え?でも、じゃあ何で態々リミッターをかけてまで陸士で登録してたんですか?それだけの実力があれば、昇進も簡単ですよね?」

そう尋ねる。

「それは、僕の目的のためかな」

信也が答えた。

「目的?」

ティアナが首を傾げる。

「そ。僕の目的はなのはの笑顔を護る事。なのはと同等のランクになれば、同じ部隊になれる確率は低いからね。リミッターをかけて低ランクになっていれば、部下として、なのはの傍に居られるんじゃないかって思ったんだよ」

信也はさらっと恥ずかしい事を言ってのける。

なのははその言葉を聞いて顔を真っ赤にしていたが、信也にしてみれば「なのはの笑顔を護る事」は、8年間ずっと心に誓い続けてきたことなので、今更言葉に出す事に、何の恥じらいもなかった。

因みにその言葉を聞いたスバルとティアナは呆気にとられ、フェイトは苦笑し、はやては面白そうに笑っていた。






その頃、とある駅で赤毛の少年が、誰かを探す仕草をしながらしきりに時間を気にしていた。

そして、エスカレーターで上がってくるシグナムに気付いた。

すると、その少年は、

「お疲れ様です!私服で失礼します!」

そうシグナムに声をかける。

シグナムがその少年に振り向くと、その少年は敬礼をして、

「エリオ・モンディアル三等陸士です!」

そう自己紹介した。

「ああ、遅れてすまない。遺失物管理部、機動六課のシグナム二等空尉だ。長旅ご苦労だったな」

シグナムはそう返す。

「いえ!」

すると、シグナムは辺りを見回す仕草をして、

「もう1人は?」

そう尋ねる。

「はい。まだ来てないみたいで・・・・・・あの、地方から出てくるとのことなので、迷っているのかもしれません。探しに行ってもよろしいでしょうか?」

エリオのその言葉に、シグナムは僅かに微笑み、

「頼んでいいか?」

と尋ねる。

「はい!」

エリオは元気良く返事を返した。




しばらくして、

「ルシエさーん!ルシエさーん!」

エリオが駅の中を探し回っていた。

「管理局機動六課新隊員のルシエさーん!いらっしゃいませんか!?ルシエさーん!」

その時、

「はーい!私です!」

その声が聞こえてエリオが振り向く。

そこには、エスカレーターを駆け下りてくるフードを被った小柄な少女。

フードの隙間からは、桃色の髪が覗いている。

「すみません!遅くなりました!」

その少女は謝りながら駆け下りてくる。

「あ!ルシエさんですね!僕は・・・・・」

エリオがその少女に自己紹介をしようとした時、

「きゃっ!」

その少女が足を踏み外し、エスカレーターの上で倒れそうになる。

「ああっ!」

エリオは驚愕したが、

『Sonic move.』

咄嗟に高速移動魔法を発動させ、一瞬にして少女の元に駆け、投げ出された身体を受け止める。

その時に、一瞬2人の目が合う。

そして、そのまま上の階まで駆け上がった。

が、着地の時にバランスを崩し、少女の持っていた荷物は投げ出され、

「うわぁああっ!」

「きゃぁあっ!」

何とかエリオがその少女を庇うように倒れた。

「あいててて・・・・・すみません、失敗しました」

エリオが自分の上に乗っている少女に謝る。

その少女が身体を起こし、

「い、いえ、ありがとうございます。助かりました・・・・・ん?」

その少女が何かに気付いたように視線を下に向ける。

そこには、少女の胸に置かれているエリオの手。

「あっ!」

それに気付いたエリオは固まった。

だが、その少女は、

「あっ、すみません。今退きます」

余程の天然なのか、特になんとも思ってないようで、エリオの上から退く。

「あっ!あのっ!こちらこそすみません!」

エリオは慌てて謝った。

その時、少女の投げ出されたバッグがもぞもぞと動き、

「キュー」

白い小さな竜が顔を出した。

「あ、フリードもごめんね。大丈夫だった?」

少女がそう言う。

「キュクルー!」

その白い小さな竜は、大丈夫と自己主張するようにその場で翼を羽ばたかせ、宙に浮いてみせる。

「竜の・・・・子供・・・・?」

エリオが呟く。

少女がエリオに向き直る。

「あの、すみませんでした。エリオ・モンディアル三等陸士ですよね?」

少女が確認するように尋ねた。

「あ、はい!」

エリオは返事をする。

すると、その少女はフードを外し、

「初めまして。キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります」

その少女、キャロが敬礼をしながら言った。

「それから、この子はフリードリヒ」

キャロがそう言うと、フリードがキャロの手元に飛んでくる。

「私の竜です」

「キュクー」

フリードが、自己主張するように鳴いた。



因みに、そんなやり取りを少し離れた所から見ていたシグナムが、

「フッ・・・・若いな」

笑みを浮かべながらそんな事を呟いてたりした。




日が落ち、辺りが暗くなった街の一角に結界が張られていた。

その中で、シャマルが念話で指示を送っていた。

(ヴィータちゃん、ザフィーラ。追い込んだわ。ガジェットⅠ型。そっちに3体!)

路地裏に、宙に浮く円柱状の形の機械が3体、かなりのスピードで移動していた。

だが、その前に狼形態のザフィーラが待ち伏せていた。

「ておぁあああああっ!!」

ザフィーラが叫ぶと、地面から鋼の軛が飛び出し、ガジェットの1体を串刺しにして破壊する。

その爆煙の中から残った2体が飛び出すが、

「でぇえええええええいっ!!」

空中からヴィータがグラーフアイゼンで殴り飛ばし、もう1体を破壊する。

最後の1体が、ザフィーラを避けるように空中へ逃げていくが、

「アイゼン!!」

『Schwalbefliegen』

ヴィータが鉄球のような魔力弾を打ち出し、最後の1体も破壊する。

「片付いたか・・・・」

ザフィーラが呟く。

「シャマル、残りは?」

ヴィータがシャマルに確認を取る。

(残存反応なし・・・・・全部潰したわ)

そう報告を受ける。

ザフィーラが、ガジェットの残骸を見ながら、

「出現の頻度も、数も増えてきているな」

そう言った。

「ああ。動きも段々賢くなってきてる」

ヴィータも同意した。

「でも、これくらいならまだ私たちだけでも抑えられるわ」

2人に合流したシャマルがそう言う。

「そうだな・・・・・」

「ド新人に任せるには、ちょっとめんどい相手だけどな」

「仕方あるまい。我らだけでは手が足らぬ」

「そのための、新部隊だもの」

「はやての・・・・いや、あたし達の新部隊・・・・・・・」




「機動六課・・・・か・・・・・」

列車に乗っていたスバルが、外を見ながら呟いた。






次回予告


いよいよ本格的に始動する機動六課。

集まる隊員達。

そして、フォワード陣の訓練がいよいよ始まる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第三話 集結

今、未来への翼が進化する。





あとがき

第二話完成。

とりあえず前回の甘さの後味がまだ残ってました。

今回も結構ラブコメ風味入り。

信也がいる以外は、大体アニメの通りですな。

シグナムがちょっと違いましたが。

とりあえず、次も頑張ります。





[8056] 第三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/15 21:22

機動六課に入る事になった信也たち。

いよいよ、本格的に部隊が始動する。



第三話 集結



海沿いにある機動六課の隊舎。

そこになのは、フェイト、はやて達隊長陣。

信也、スバル、ティアナ、エリオ、キャロのフォワード陣。

そして、その他の機動六課のスタッフたちが集結していた。

隊舎のロビーには、隊長陣以外が集まっており、そこでフォワードメンバーが初顔会わせを行なっていた。

「エリオ・モンディアル三等陸士です。ポジションはガードウイング。コールサインはライトニング03です」

エリオが敬礼をしながら最初に言う。

「キャロ・ル・ルシエ三等陸士です。ポジションはフルバック。コールサインはライトニング04。みなさん、よろしくお願いします」

キャロが同じく敬礼をしながら言う。

「次は私だね。私はスバル・ナカジマ。二等陸士でポジションはフロントアタッカー。コールサインはスターズ03だよ。よろしくね」

スバルが笑顔で言い、

「ティアナ・ランスター二等陸士よ。ポジションはセンターガード。コールサインはスターズ04。よろしく」

ティアナが少しそっけなさげに言った。

「最後は僕だね。神原 信也二等陸士。ポジションは遊撃手。状況によって、どちらの分隊の指揮下にも入るからよろしくね。コールサインはウインド01」

信也がそう自己紹介すると、エリオが反応した。

「神原?すみません信也さん。信也さんってもしかして拓也さんのご家族ですか?」

そう尋ねる。

すると、信也は笑顔になって、

「うん。神原 拓也は僕の兄さんだよ。だから君のことも聞いてるよ、エリオ。やんちゃな雷小僧だってね」

そう言った。

「あ・・・・いえ・・・・」

エリオは、それを聞くとバツの悪そうな顔をする。

しかし、

「でも、『手のかかる息子と思えば可愛いもんだ』って言ってたね」

その言葉を聞くと、恥ずかしくなったのか顔を赤くする。

「まあ、これから一緒に戦う仲間になるんだ。仲良くやっていこう」

「はい」

エリオは気を取り直して返事をする。

すると、隊長陣が現れたので、全員が整列した。





はやての挨拶の後、フォワード陣は訓練を始めるという事で、海沿いの訓練場所へ集合した。

そこには、なのはの他に2人の人影があった。

5人は預けていたデバイスを返される。

「今返したデバイスには、データ記録用のチップが入ってるから、ちょっとだけ、大切に扱ってね。それと、メカニックのシャーリーとリインフォースから一言」

なのはは、横にいるロングヘアーで眼鏡をかけた女性と、リインフォース・アインの方を向く。

「え~、メカニックデザイナー兼通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。皆はシャーリーって呼ぶので、よかったらそう呼んでね」

「メカニック担当のリインフォース・アインだ。一応シャーリーの助手という事になっている。よろしく頼む」

「皆のデバイスを調整したり、改良したりするので、時々、訓練を見せてもらったりします。あ、デバイスについての相談とかあったら、遠慮なく言ってね」

「「「「「はい!」」」」」

元気良く返事をする一同。

「じゃあ、早速訓練に入ろうか?」

なのはがそう言った。

しかし、

「は・・・・はい・・・・・」

「でも・・・・ここでですか?」

スバルとティアナがそう呟く。

2人の言葉も尤もだ。

一同の目の前の海の上には、ただの平らな足場があるだけだ。

なのはは、クスリと笑うと、

「シャーリー」

シャーリーに声をかける。

「はーい!」

シャーリーは返事をすると、空間パネルを開き、操作を開始する。

「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦型空間シュミレーター。ステージセット!」

シャーリーが操作を完了すると、唯の真っ平らな足場があっという間に廃棄都市街に変わる。

「わあ・・・・・・」

「ああ・・・・・・」

「ああっ・・・・・」

「すごい・・・・・」

「へぇ・・・・・・」

5人がそれぞれ驚いた表情をした。




機動六課の隊舎の屋上では、ヴィータがその様子を見ていた。

そんなヴィータにシグナムが近付いていく。

「ヴィータ、ここにいたか」

「シグナム」

「新人たちは早速やっているようだな」

「ああ」

2人はフォワードメンバーを眺めながら言う。

「お前は参加しないのか?」

「4人はまだよちよち歩きのひよっこだ。私が教導を手伝うのはもうちょっと先だな」

「そうか」

「シンヤの方は、今日は様子見だ。管理局から離れて、どれだけ腕を上げたか」

「それは私も興味あるな。話に聞いた所では、高町の父に剣の教えを請うていたとか・・・・・・・」

「ああ・・・・・それだけじゃねえ、フェイトの母親に魔法の師事を受けてたみてえだ。なのはの為に・・・・・ずっと頑張ってきたんだ」

「・・・・・それはお前も一緒だろう?」

「ああ・・・・・同じ分隊だからな・・・・・あたしは、空でなのはを守ってやらなきゃいけねえ」

「頼むぞ」

「ああ・・・・・・・・・・・・そういえば、シャマルは?」

「・・・・・自分の城だ」

その頃、シャマルは医務室の設備を見てご機嫌になっていた。





空間シュミレーターの廃棄都市内に入ったフォワードメンバー5人。

なのはとシャーリー、アインは、ビルの上で訓練の準備をしていた。

「よしっと、皆聞こえる?」

なのはが通信で呼びかける。

「「「「「はい!」」」」」

「じゃあ、早速ターゲットを出していこうか。まずは・・・・・・」

そこでなのはは、考える仕草をする。

少しして頷く。

「うん、まずは15体から」

その言葉に驚いたのはシャーリーだった。

「ええっ!?15体!?いくらなんでも、新人たちには8体が妥当なところじゃないんですか!?」

そう聞き返す。

「いいからいいから」

なのははそう言う。

なのはのその言葉に、シャーリーはしぶしぶ従う。

「じゃあ・・・・動作レベルは1。攻撃制度はEって所ですね?」

「うん」

なのはは再びフォワードメンバーを見下ろす。

「私達の仕事は、捜索指定ロストロギアの保守管理。その目的の為に私たちが戦う事になる相手は・・・・・・これ!」

なのはの言葉と共に、魔法陣からガジェットⅠ型が現れる。

「自立行動型の魔導機械。これは、近付くと攻撃してくるタイプね」

「攻撃はかなり鋭い、注意しろ」

シャーリーとアインが説明する。

「あと、信也君に言っておくけど、訓練でのリミッター解除は禁止ね」

「了解」

「それから、信也君が1人で倒していいのは7体まで。7体倒したら抜けてね」

それを聞くと、

「なるほど、信也さんに甘えるなってことですね」

ティアナがそう言った。

「そういう事。じゃあ、第1回模擬戦訓練、ミッション目的、逃走するターゲット15体の破壊、または捕獲。15分以内」

「「「「「はい!」」」」」

一同は元気良く返事を返す。

「それでは!」

「ミッション!」

「「スタート!!」」

なのはとシャーリーの合図と同時にガジェットは逃げ出した。




暫くして、

「うぉおおおおおっ!!」

逃げる4体のガジェットをスバルが追いかける。

「でやぁ!」

そして、リボルバーシュートを放つが、ガジェットはあっさりと避けた。

その動きを見て、

「何これ!動き速っ!」

その速さに驚く。

別の場所では、エリオがガジェットを待ち伏せていた。

「はぁあああああっ!!」

ガジェットからの攻撃を避け、空中から魔力斬撃を飛ばす。

しかし、その攻撃もあっさりと避けられる。

「ダメだ。ふわふわ避けられて、当たらない」

そう息を吐きながら呟く。

「前衛2人!分散しすぎ!少しは後ろの事考えて!」

「は、はいっ!」

「ゴ、ゴメン!」

ティアナの言葉にエリオとスバルは謝る。

ティアナは、待機していたビルの屋上から逃走するガジェットを狙う。

「チビッ子、威力強化お願い」

キャロに威力強化を頼む。

「はい。ケリュケイオン!」

『Boost Up. Barret Power.』

キャロの魔法で、ティアナの魔法弾が強化される。

「シューーーーーートッ!!」

掛け声と共に4連射する。

その魔法弾は、4体のガジェットに直撃するコースだった。

だが、その魔法弾はガジェットに当たる寸前に掻き消える。

「バリアー!?」

「違います!フィールド系!」

ティアナの言葉をキャロが訂正する。

「魔力が消された!?」

スバルも驚いている。

「その通り。ガジェットには、ちょっと厄介な性質があるの。攻撃魔法をかき消す、アンチ・マギリング・フィールド、AMF。普通の射撃は通じないし・・・・・・・」

なのはが説明している最中に、再びガジェットが逃げ出す。

ガジェットはビルを飛び越えて逃げたため、

「くっそ、このっ!」

スバルはウイングロードを発生させて後を追おうとした。

「スバル!バカッ、危ない!」

ティアナが止めようとしたが、スバルは駆け出す。

「それに、AMFを全開にされると・・・・」

なのはの言葉で、シャーリーがパネルを操作する。

ガジェットのAMFが広がり、スバルのウイングロードがかき消される。

「えっ?あ、ええっ!?」

その事実に驚愕したスバルは、如何する事も出来ずに、

「きゃぁあああああああっ!!」

途切れたウイングロードから落下。

派手にビルの窓に突っ込む。

「地象や足場作り、移動系魔法の発動も困難になる。スバル、大丈夫?」

ビルに突っ込んだスバルに声をかける。

「ッ~~~~~な、何とか・・・・・」

スバルは何とか起き上がる。

「まあ、訓練場ではみんなのデバイスにちょっと工夫をして、擬似的に再現してるだけなんだけどね。でも、現物からデータを取ってるし、かなり本物に近いよ」

シャーリーが説明する。

「対抗する方法はいくつかあるよ。如何すればいいか、素早く考えて、素早く動いて」

なのはがそういった時、

「高町教導官」

アインが話しかける。

「如何したの?リインフォース」

「神原二等陸士のノルマ達成を確認した」

「もう!?」

アインの報告に驚いた声を上げるなのは。

いくら信也でも、Bランクの魔力量では、AMFにもう少し手こずると予想していたのだ。

「とりあえず、見事と言う他ないな」

アインはそう言うと、記録したデータを再生した。




信也は、8体とは別方向に逃げた7体を追っていた。

エアロウイングを使い、先回りしてガジェットを待ち伏せる。

「はぁああああっ!!」

そして気合一発、身体強化魔法で一瞬でガジェットの懐まで飛び込むと、魔力刃を一閃する。

確実に捉えた一撃。

しかし、その魔力刃が当たる前に、AMFによって刃が消される。

「ッ!?ブレイブハート!今のは!?」

『魔力結合を解き、攻撃を無効化するフィールドのようです』

「アンチ・マギリング・フィールド・・・・・か。プレシアさんがそういうものがあるって言ってたっけ」

信也は冷静に判断する。

だが、特に困ったような表情はせず、

「それでも、やり様は幾らでもある!」

そう叫んで駆け出す。

信也は落ちていた鉄パイプを拾うと、魔力刃で斜めに切り、先端を鋭くして、即席の槍にする。

「はぁああっ!!」

ガジェットを一突きにする。

「まず1つ!」

その鉄パイプを引き抜き、飛び退いた所で爆発。

信也は着地した瞬間に、腕に強化をかけ、鉄パイプを投擲する。

単なる鉄パイプにAMFは無意味なので、その鉄パイプはガジェットに突き刺さる。

「2つ!」

再び爆発するガジェット。

信也に残ったガジェットは攻撃してくるが、

「はっ!せいっ!でやっ!」

全て魔力刃で迎撃する。

「ブレイブハート、形状を刀に」

『Yes,Master.』

信也の言葉で、今まで直剣型だったブレイブハートの魔力刃が、刀のような曲刀型に変化する。

信也は、抜刀術の構えのように、ブレイブハートを腰溜めで構える。

「・・・・・・・ハッ!!!」

精神を集中させ、利き手を全力で強化し、一気に横薙ぎに振るう。

その超高速の抜刀術により、真空波が発生。

離れた位置にいるガジェットを両断した。

「・・・・・・単なる思い付きでも上手く行くもんだね」

最後の抜刀術は単なる思い付きだったらしい

自分が行なった事に信也自身が驚いていた。

「残りは4体。じゃあ、一気に行くよ、ブレイブハート!」

『Aero Wing.』

信也は背中にエアロウイングを発生させ、魔力刃の形状も元に戻す。

「はぁああああっ!!」

一気に飛び立ち、ガジェットに向かう。

その時、ガジェットがAMFを全開にする。

本来なら、エアロウイング、魔力刃共に消えるはずが、

「でやぁあああああっ!!」

信也は何の問題もなくAMFの中を突っ切って来て、ガジェットを横一文字に両断する。

「せぇええええええいっ!!」

残り3体のガジェットも、逃がす隙を与えず魔力刃を振るう。

3つの閃光が走る。

3体のガジェットは、それぞれ横一文字、縦一文字、斜め一文字に両断されて爆散した。





その記録を見たなのはは驚いていた。

「すごい・・・・・一瞬でAMFの特性を見抜いてそれに対抗する判断力も凄いけど、最後の4体を倒した時は、何で飛行魔法と魔力刃が無効化されなかったんだろう?」

「魔力量にも変化はありませんでした。リミッターを解除したわけではないようです」

アインが捕捉するように説明した。

「うん、それは解ってる」

そうは言うが、なのはの疑問は尽きない。

そんななのはを見て、

「神原二等陸士に直接聞いたほうが早いのでは?」

アインはそう提案する。

「あ、そうだね」

なのははモニターを開き、

「信也君。ガジェット7体の撃破を確認したから、こっちに来て」

『了解』

なのはの言葉に頷く信也。

すると、

「はーい、みんなー。信也君、もう7体撃墜したよ」

残りのフォワードメンバーに呼びかける。

「嘘ッ!?もう!?」

スバルが、

「速ッ!」

ティアナが、

「信也さん、凄い・・・」

エリオが、

「す、凄いですぅ・・・・」

キャロがそれぞれ驚く。

「皆も信也君に負けないように頑張ってね」

なのはの言葉に、全員は気合を入れなおした。

すると、信也が飛んでくる。

信也はなのは達がいるビルの屋上に着地すると、

「ノルマ達成しました。高町教導官!」

信也はそう敬礼する。

「し、信也君・・・・・そういうイジワルやめてよ・・・・・なのはでいいからさ・・・・」

なのはの反応を見て、信也はクスリと笑う。

「ごめんごめん。一応上官だからさ、こういう事はしっかりした方がいいと思って」

ほのぼのとした雰囲気が流れる。

「そ、そういえば信也君。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

なのはは、信也を呼んだ目的を思い出す。

「何?」

なのはは先程の信也の戦闘記録の、最後の4体を倒したところを映し出す。

「ここなんだけど、何でAMFの影響下でエアロウイングも魔力刃も無効化されなかったの?」

なのはの問いに、

「ああ、やったこと自体は単純なことだよ。魔力結合を解かれる以上のスピードで再結合を繰り返しただけだから」

信也はあっけらかんとして答える。

「「「・・・・・・・・・・・」」」

信也の言葉に、3人は呆気に取られる。

確かにやったこと自体は単純だが、再結合を繰り返す事など並大抵の集中力では不可能だ。

「す、すごいね・・・・・そんなこと並大抵の集中力じゃ出来ない事だけど・・・・」

なのはが何とか呟く。

「まあ、士郎さんとの打ち合いや、プレシアさんの嵐のような魔力弾の回避訓練に比べれば・・・・・・」

そこまで言って、信也は顔を青くする。

「ど、どうしたの信也君!?顔が真っ青だよ!」

いきなり顔色が悪くなった信也を見て、なのはが慌てる。

「あ、あはは・・・・・ごめん、久々に修行時代を思い出してさ・・・・・・」

思い出すだけで顔色を悪くする修行とは一体なんなのかと、信也以外の3人は戦慄する。

そして、気がつけば残りのフォワード陣はガジェットを全滅させていた。





その夜。

中央から戻ってきたはやては、ヴォルケンリッター達と一緒に夕食を食べながら話をしていた。

「中央の方はどうでしたか?」

シグナムがはやてに尋ねる。

「まあ、新設部隊とはいえ、後ろ盾は相当しっかりしてるからな。そんなに問題は無いよ」

「後見人だけでも、リンディ提督にレティ提督にクロノ君・・・・じゃなくて、クロノ・ハラオウン提督」

「そして、最大の後ろ盾、聖王教会と教会騎士団の騎士カリム。ま、文句の出ようがありませんね」

はやての言葉に、シャマルとシグナムが納得する。

「現場の方はどないや?」

はやてはヴィータに尋ねる。

「なのはとフォワード隊は、挨拶後すぐから夜まで、ずっとハードトレーニング。新人たちは今頃グロッキーだな。うん。全員やる気と負けん気はあるみたいだし、何とかついてくと思うよ」

ヴィータの言葉通り、スバル、ティアナ、エリオ、キャロは、現在ロビーでぐったりとしていた。

「ああ。でもシンヤだけはピンピンしてたな。訓練が終わった後も、剣の素振りしてたし。やっぱ相当鍛えたみたいだな」

ヴィータが思い出したように補足した。

「バックヤード陣は問題ないですよ。和気藹々です」

シャマルがそう言い、

「グリフィスも相変わらず、しっかりやってくれてます。問題ありませんね」

シグナムもそう言った。

「そうか・・・・私たちが局入りしてかれこれ10年。やるせない、もどかしい思いを繰り返して、やっと辿り着いた、私達の夢の部隊や。レリック事件をしっかり解決して、カリムの依頼もキッチリこなして、皆で一緒に頑張ろうな」

はやては笑顔でそう言った。

「うん、頑張る!」

ヴィータが、

「もちろんです!」

シャマルが、

「我ら守護騎士、あなたと共に・・・・・」

シグナムが頷く。

テーブルの下にいた狼形態のザフィーラも無言ながら同意する。

「ところで主はやて、少し気になっていたことがあるのですが・・・・・」

シグナムがはやてに尋ねた。

「何やシグナム?」

「はい、何故主はやては、ミナモトを機動六課に誘わなかったのですか?S-ランクのコウイチはともかく、AAAランクで登録されているミナモトなら、なんとか引き抜けたのではないですか?」

シグナムはそう問いかける。

「ああ、その事か。まあ、確かにそれも考えたんやけどな。私だけコーにぃと一緒やったら、なのはちゃんはともかく、フェイトちゃんとシグナムに悪いやないか」

はやては笑みを浮かべながら言った。

「そ、それが理由ですか?」

シグナムは予想外の答えに呆気に取られる。

「そや」

はやての顔は笑っているが、嘘を吐いている様子は無い。

「家族想いな主でよかったなシグナム」

ヴィータがからかう様に言った。

その一言で笑いに包まれた。





なのはとフェイトの部屋。

「新人たち、手ごたえは如何?」

フェイトが上着を脱ぎながら寝巻き姿のなのはに尋ねる。

「うん、みんな元気でいい感じ」

「そう・・・・・・立派に育ってくれるといいんだけどね」

「育てるよ・・・・・・・あの子達が皆、自分の道を戦っていける様に・・・・・ね」

なのはは真剣な眼でそう呟いた。







その後、フェイトがシャワーを浴び、寝巻き姿で出てくると、なのははベッドに座ったまま悩むような仕草をしていた。

「なのは?如何したの?」

気になったフェイトが尋ねる。

「・・・・・フェイトちゃん・・・・・」

なのはは顔を上げる。

「何か悩みでもあるの?」

「悩みっていうか・・・・・・・その・・・・・・変な事聞くけど・・・・・いいかな?」

なのははおずおずと問いかける。

「変な事?」

フェイトは首を傾げる。

「えと・・・・・その・・・・・・」

なのはは、尋ねようかやめようか迷っていたようだったが、

「あ、あのね・・・・・フェイトちゃん・・・・・」

思い切って口に出した。

「は、初めてって・・・・・痛かった?」

その言葉を聞いた瞬間、フェイトは固まった。














「・・・・・・・え?」

フェイトは自分の耳を疑ったが、頬を染めながら真剣な眼で自分を見ているなのはの顔を見て、聞き間違いではない事を確信する。

「な、なのは・・・・?」

フェイトは困惑し、何故なのはがそんな事を聞いてくるのか一瞬解らなかったが、ふと目が合った時、その理由を感じ取った。

なのはの瞳の奥にあるもの。

それは“不安”であった。

フェイトはその事に気付くと、困惑していた気持ちが急に落ち着いてくる。

真剣な瞳の奥に不安を抱えるなのはの姿を見て、

「・・・・・・確かに・・・・・・痛かったよ」

フェイトは正直に答えた。

「そ、そんなに?」

フェイトの言葉で、不安が増すなのはだが、フェイトは、ここで偽るのはなのはの望むところではないと考え、

「かなり」

深く頷きながら言った。

その言葉で、更に不安になるなのは。

「でもね・・・・・」

しかし、続けてフェイトが言った。

「それ以上に・・・・・嬉しかったよ」

ほんのり頬を染めながら、フェイトは呟いた。

「フェイトちゃん・・・・・」

そんな仕草を見せるフェイトに、なのはの不安は薄れてゆく。

「だからなのは・・・・頑張って」

フェイトはそう言って、なのはの手を握る。

「・・・・・・フェイトちゃん」

「・・・・・私に出来る事は、なのはの背中を押してあげることだけだから・・・・・」

「フェイトちゃん・・・・・・うん」

なのはは立ち上がる。

「頑張れ・・・・・なのは」

「ありがとう・・・・フェイトちゃん」

なのははそう言うと、部屋を出た。





尚、翌日の朝にこの部屋のベッドで寝ていたのは、フェイト1人だけだったと記しておこう。








次回予告


毎日の訓練をこなす新人たち。

そんな新人たちに新たなデバイスが渡される。

しかし、そんな時・・・・・・

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第四話 ファーストアラート

今、未来への翼が進化する。








あとがき

第三話完成。

一応最初にフォワードメンバーの初顔会わせを出して、その時にエリオと拓也の繋がりを少々。

因みに拓也はエリオの電撃受けてます。

故に雷小僧。

んで、訓練の時はぶっちゃけ信也無双?

アルフォースの真似事(分解を超える速度での再構築)をしてます。

あと、修行の内容が少々。

思い出すだけで気分が悪くなる内容です。

んで、最後が賛否両論ありそうな内容。

一応クロス物でも、違う作品のキャラの男女の〇〇な関係を堂々と書くのは、拙いかなと思ったので、悩みに悩んでこんな感じに。

相手の名前を出さなかったのが自分なりの気遣いなんですけど・・・・・・(信也はぶっちゃけオリキャラみたいなもんですが)

やっぱやめた方がよかったです?

それより寧ろ、もっと堂々とやった方がよかったでしょうか?

自分では微妙なとこなんですがね。

ともかく、次回も頑張ります。






[8056] 第四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/21 22:02


いよいよ訓練が始まった新人たち。

2週間ほど、時が流れて・・・・・・



第四話 ファーストアラート



現在、フォワードメンバーは、早朝の訓練を行なっていた。

新人の4名は、肩で息をするほどボロボロの状態である。

信也だけは涼しい顔だが。

「はーい!整列!」

空中でバリアジャケット姿のなのはが声をかけ、フォワードメンバーを集める。

「本日の早朝の訓練、ラスト一本。皆、まだ頑張れる?」

「「「「「はい!」」」」」

「じゃあ、シュートイベーションをやるよ。レイジングハート」

『All right. Accel Shooter.』

なのはの呼びかけにレイジングハートが応え、無数の魔力弾をなのはの周りに出現させる。

「私の攻撃を5分間、被弾無しで回避しきるか、私に一撃を入れればクリア。ただし、信也君の攻撃はクリーンヒット以上じゃないと駄目。誰か1人でも被弾したら最初からやり直しだよ。頑張って行こう!」

「「「「「はい!」」」」」

レイジングハートを構えるなのはに、フォワードメンバーは返事をする。

「このボロボロの状態でなのはさんの攻撃を5分間、捌き切る自信ある?」

ティアナが全員に問いかける。

「無い!」

「同じくです!」

「ありません!」

スバル、エリオ、キャロが即答する。

「ある」

信也だけは違った答えだが、1人だけ捌き切れても意味は無い。

「じゃあ、何とか一発入れよう」

ティアナがそう判断する。

スバル、エリオ、信也の前衛陣が構える。

「準備はオッケーだね。それじゃ・・・・・・」

なのはが手を掲げると、飛び回っていた魔力弾が一旦停止する。

「レディー・・・・・・・ゴー!!」

なのはが手を振り下ろすと共に、魔力弾が5人に襲い掛かる。

「全員!絶対回避!2分以内に決めるわよ!」

「「「「おう!」」」」

襲い掛かる魔力弾を散開して避ける。

その直後、なのはの背後にウイングロードが出現する。

その上を疾走してくるスバル。

また、近くのビルの窓からはティアナがなのはを狙撃しようとしていた。

それに気付いたなのはは、

「アクセル!」

『Snipe Shot.』

2発の魔力弾を操作し、それぞれをスバルとティアナに向けて放つ。

その魔力弾は、それぞれに直撃すると思われた。

だが、魔力弾は2人をすり抜け、2人の姿が消える。

「シルエット・・・・・・やるねティアナ」

なのはがそう呟いた時、上空よりウイングロードがなのはの背後に現れた。

それに気付いたなのはが空を見上げると、姿を隠していたスバルが突撃してきた。

「でぇりゃぁああああああああっ!!」

スバルはリボルバーナックルで殴りかかる。

それをなのはは障壁で受け止めた。

「く・・・・うう・・・・・」

スバルは力を込めるが、障壁が破れる兆しは無い。

「・・・・・ッ」

なのはは再び2発の魔力弾をコントロール。

両サイドからスバルを狙う。

「はっ!」

それに気付いたスバルは飛び退く。

「うん、いい反応」

なのはは感心した声を漏らした。

飛び退いたスバルは、ウイングロードに着地しようとしたが、

「う、うわぁあああっ・・・・っと・・・・」

着地の時にバランスを崩し、倒れそうになりながらも何とか持ち直す。

そのままなのはから離れるように走るが、その後ろを2発の魔力弾が追う。

(スバルバカ!危ないでしょ!)

ティアナから念話が飛ぶ。

「ゴ、ゴメン」

スバルが謝る。

(待ってなさい、今撃ち落すから)

ティアナが援護しようとアンカーガンを構えて魔力を溜める。

そして、引き金を引いたとき、

――カスッ

「へっ?」

気の抜けた音と共に不発に終わった。

「うわぁああっ!ティア援護~~~~!」

スバルが情けない声を上げながら助けを求める。

「この肝心な時に~~~!」

ティアナは慌ててカートリッジを再装填する。

ティアナは再び構えて4発の魔力弾を放った。

「来たっ!」

スバルは嬉しそうな声を上げる。

ティアナの放った4発の魔力弾の内、2発はスバルを追うなのはの魔力弾を撃ち落すために動き、残りの2発はなのはを直接狙う。

その時、地上ではエリオがストラーダを構え、キャロが補助魔法を唱えていた。

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」

『Boost Up. Acceleration.』

ストラーダが桃色の光に包まれ、エリオの展開しているベルカ式魔法陣が輝きを増し、ストラーダの後から激しいジェット噴射が起こる。

「あのっ、かなり加速がついちゃうから、気をつけて!」

キャロが心配そうに言った。

「大丈夫、スピードだけが取り柄だから!行くよ!ストラーダ!!」

エリオの声に応える様に、ジェット噴射が激しさを増す。

空中では、ティアナの魔力弾を避けるなのはの姿。

そこに、フリードが火球を放つ。

それに気付き、その炎を避けるなのは。

その瞬間、

「エリオー!今!」

ティアナが合図を送る。

「いっけーーーーーーっ!!」

『Speerangriff.』

その合図で、エリオが一気になのはに突撃した。

そのエリオになのはは微笑む。

そして、

――ドゴォオオオオン

激突と共に爆発が起こった。

「うわぁっ!」

エリオが爆煙の中から吹き飛ばされ、ビルの壁に着地する。

「エリオ!」

「外した!?」

スバルとティアナが叫ぶ。

すると、爆煙が晴れてなのはの姿が現れる。

『Mission complete.』

「お見事!ミッションコンプリート!」

なのははそう言う。

「ホントですか!?」

エリオは思わず聞き返した。

「ほら、ちゃんとバリアを抜けて、ジャケットまで通ったよ」

なのはは、攻撃を受けた部分を指差しながら言った。

「それに、今の一撃が外れていたとしても・・・・」

なのははそう言いながら、後方のビルの屋上を見上げる。

そこには、アーチェリーモードのブレイブハートを構えた信也の姿。

「信也君の攻撃は避けられなかっただろうしね」

なのはは、そう笑みを浮かべて言った。

「じゃあ、今朝はここまで。一旦集合しよ」

「「「「「はい!」」」」」



なのはは地面に降りてバリアジャケットを解除する。

「さて、みんなもチーム戦に大分慣れてきたね」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

「ティアナの指揮も、大分筋が通ってきたよ。指揮官訓練、受けてみる?」

なのはは、ティアナにそう尋ねたが、

「あ、いえ、戦闘訓練だけで一杯一杯です」

そう言って遠慮する。

「ふふっ」

そんなティアナの姿にスバルが笑みを零した。

そんな時、

「キュク?キュクルー?」

フリードが不思議そうな鳴き声を漏らした。

「フリード、如何したの?」

キャロが尋ねる。

「なんか・・・・焦げ臭いような・・・・」

エリオもそう呟く。

「あっ、スバル、あんたのローラー!」

「え?」

ティアナの言葉にスバルがローラーに視線を落とす。

すると、スバルのローラーからは、黒い煙が立ち上っていた。

「あっ!うわ、やっば~~・・・・・・あっちゃぁ~~・・・・・・」

スバルは慌ててローラーを脱ぐ。

「しまったぁ、無茶させちゃった」

スバルはローラを抱えてそう漏らした。

「オーバーヒートかな?後でメンテスタッフに見てもらお?」

「はい・・・・・」

なのはの言葉に頷くスバル。

「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」

「あ、はい・・・・騙し騙しです・・・・・」

その答えを聞くと、

「皆も訓練に慣れてきたし、そろそろ訓練用の新デバイスにきりかえかなぁ・・・・・」

そう呟くなのは。

「新・・・・」

「・・・デバイス?」

なのはの言葉にきょとんとする新人4名であった。




隊舎に戻る道すがら、

「じゃあ、一旦寮に戻ってシャワー使って、着替えてロビーに集まろっか」

「「「「「はい!」」」」」

なのはの言葉に返事をする全員。

「あれ?あの車って・・・・・・」

ティアナがこっちに向かってくる黒い車に気付き、声を漏らす。

その黒い車は、一行の前で止まる。

その窓が開き、中にいたのは、

「フェイトさん!八神部隊長!」

キャロが声を上げる。

「うん」

その言葉に、フェイトは微笑む。

「すごーい!これフェイト隊長の車だったんですか?」

スバルがそう声を上げる。

「そうだよ。地上での移動手段なんだ」

フェイトがそう答える。

「皆、演習の方はどないや?」

はやてがそう尋ねると、

「あ~、いや~・・・・」

スバルは、如何答えたもんかと迷っている。

「頑張ってます」

ティアナがそう答えた。

「エリオ、キャロ、ごめんね。私は2人の隊長なのに、あんまり見てあげられなくて」

フェイトが申し訳なさそうにそう言う。

「あ、いえ、そんな」

「大丈夫です」

エリオとキャロはそう答えた。

「信也君はもとより、新人4人の方もいい感じで慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫」

なのはがそう言う。

「そうかぁ。それは頼もしいなぁ」

はやての言葉に、新人4人は嬉しそうな声を漏らす。

「2人は、どこかにお出かけ?」

なのはが尋ねる。

「うん。ちょっと6番ポートまで」

「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」

「私は昼前には戻るから、お昼は皆で一緒に食べようか?」

「「「「はい!」」」」

「ほんならな~!」

そう言って、車は走り出し、フォワードメンバーは敬礼で見送った。




フォワードの女性陣がシャワーを浴びていると、キャロが切り出した。

「あの、ちょっといいですか?」

「ん?」

「何?」

キャロの言葉に、スバルとティアナが尋ねる。

「私の気のせいかもしれないんですけど、なのはさん、最初の頃と比べると、綺麗になった気がしませんか?」

キャロがそう言う。

「そうかなぁ・・・・・なのはさんは元々綺麗な人だとは思うけど・・・・・・」

スバルはそう答える。

「なんていうのか・・・・・今までフェイトさんにあって・・・・・なのはさんに無かったものが、なのはさんにも出てきたというか・・・・・」

キャロは自信無さげにそう呟く。

「ん~~~・・・・・・そう言われてみれば・・・・・綺麗というか・・・・・・色っぽくなった気が・・・・・・」

ティアナが考え、思い当たる事を言った。

「あ、やっぱりティアナさんもそう思いますか?」

キャロが尋ねる。

「まあ、なのはさんと信也さんはこの前から恋人になったんだし、なのはさんも女性なんだから、好きな人の前で綺麗でいようと思うのは当然なんじゃないかしら?」

ティアナはそう言う。

「ええっ!?そうだったんですか!?」

キャロが驚いて聞き返す。

「あれ?キャロ知らなかったっけ?」

スバルが尋ねた。

「は、はい、フェイトさんや八神部隊長と同じく、幼馴染としか聞いてません」

「私達のBランク魔導師への昇格試験の時にね、信也さんがなのはさんに告白したんだよ。いや~、あれはビックリしたね」

スバルがキャロにそう言う。

「そうだったんですか・・・・・・」

キャロは相槌を打つ。

そのとき、

「あれ?っていう事は、フェイト隊長にも恋人がいるって事なのかな?キャロ知ってる?」

スバルが気付いたように言った。

「あ、はい、それらしい人がいるという事は聞いてます。実際に会った事は無いんですけど・・・・・・・」

キャロが呟く。

「そうなんだ。どんな人なんだろ?」

スバルは好奇心に満ちた声でそう言った。

「その辺にしときなさい。他人のプライベートを詮索するなんて失礼よ」

ティアナがスバルに釘を刺した。





その頃、階段では女性陣を待ち呆けるエリオと信也、フリードの姿があった。






ミッドチルダ北部、ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂。

はやてはここで、教会騎士である、カリム・グラシアと会談を行なっていた。

「ごめんな、すっかりご無沙汰してもうて」

「気にしないで。部隊の方は、順調みたいね」

「カリムのお陰や」

「そういうことにしとくと、色々お願いもしやすいかな?」

「あはは。何や、今日のあって話そうは、お願い方面か?」

はやては笑ってそう言うが、カリムは難しい顔をした後、パネルを開いて操作する。

すると、カーテンが閉じて部屋が暗くなり、モニターがいくつか開く。

そのモニターには、今までとは違ったガジェットが表示されていた。

「これガジェット・・・・・・新型?」

はやてが尋ねる。

「今までのⅠ型以外に新しいのが2種類。戦闘性能はまだ不明だけど、これ、Ⅲ型は割と大型ね」

カリムはパネルを操作して、Ⅲ型のモニターを拡大する。

人間と比率させても、直径は2mを超える。

「本局には、まだ正式報告はしてないわ。監査役のクロノ提督には、さわりだけお伝えしたんだけど・・・・・」

するとはやては、モニターの1つに映し出されている四角い箱に目がいった。

「これは・・・・」

「それが今日の本題。一昨日付けでミッドチルダに運ばれた不審貨物」

「レリックやね・・・・・」

「その可能性が高いわ。Ⅱ型とⅢ型が発見されたのも、昨日からだし・・・・」

「ガジェットが、レリックを見つけるまでの予想時間は?」

「調査では、早ければ今日明日」

「せやけどおかしいな・・・・・レリックが出てくるのがちょい早いような・・・・・・」

「だから会って話したかったの。これを如何判断するか、如何動くべきか。レリック事件も・・・・・その後に起こるはずの事件も・・・・対処を失敗するわけには行かないもの」

カリムは思い詰めた顔をする。

はやてはそんなカリムを見て、パネルを操作しカーテンを開ける。

「はやて?」

「まあ、何があってもきっと大丈夫。カリムが力を貸してくれたお陰で、部隊はもういつでも動かせる。即戦力の隊長たちはもちろん、新人フォワード達も実戦可能。予想外の緊急事態にも、ちゃんと対応できる下地が出来てる。そやから、大丈夫!」

はやては自信を持って言った。

「はやて・・・・・」

そんなはやてにカリムは微笑む。

「それでなカリム、もう1つの予言なんやけど、そっちでは何か進展あったんか?」

その言葉に、カリムは首を振る。

「ううん。こちらでは何も・・・・はやては?」

「・・・・・・・正直な話、思い当たる単語はあったんや・・・・・・」

はやてはそう呟く。

「えっ!?」

その言葉にカリムは驚く。

「それは一体?」

「うん。何を指すかはまだ言えんけど、“電子の世界”と“電子の獣”この2つの単語が示すものは思い当たるものがある。多分、クロノ提督も気付いてると思う」

はやては神妙な顔で言う。

「そう・・・・・・それにしても、2つ目の予言は解らない単語ばかりね。“無限の欲望”はともかく、“傲慢なる天使”、“電子の世界”、“電子の獣”、“人と獣の姿を持つ10の魂を受け継ぐ戦士たち”、“7つの大罪”、“10の魂集いし竜戦士と狼戦士”、“幼き聖王”、そして、“電子の獣を従えし英雄たち”・・・・・何を指しているのか全然わからないわ」

カリムが呟く。

「まあ、大丈夫や。きっと何とかなる」

はやては、笑顔で言い切った。







その頃、機動六課では、新人メンバー達に新デバイスが渡されていた。

その説明をシャーリーやアイン、リィンから受けている。

まあ、信也は10年来の相棒であるブレイブハートのままだが、カートリッジシステムが最新型の物に交換されている。

そこで出力リミッターの話になり、隊長陣は全員リミッターをかけていることを知る。

「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長たちは大体2ランクダウンかな」

なのはがそう説明する。

「4つ!?八神部隊長ってSSランクのはずだから・・・・」

「Aランクまで落してるんですか!?」

ティアナとエリオが驚愕する。

「かーさまも色々と苦労してるです」

リィンが呟く。

「なのはさんは?」

スバルが尋ねた。

「私は元々Sランクだったから、2ランク落してAA。だからもうすぐみんなの相手を1人でするのは辛くなってくるかな?」

なのはの言葉にスバルはなんとも言えない顔をする。

「隊長さんたちはかーさまの。かーさまは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役、クロノ提督の許可がないとリミッター解除が出来ないですし・・・・・・許可はめったな事では出せないそうです・・・・・」

リィンが気落ちしながら答える。

「そうだったんですね・・・・・・」

エリオが呟いた。

「まあ、もしもの時のために、信也君っていう隠し玉があるんだけどね」

なのはが笑って言った。

「信也君は、自分でリミッターを掛けてるだけだからね。リミッターを解除するのは自由なの」

「思ったんですけど、それって違反にならないんですか?」

エリオが尋ねる。

「まあ、登録されているランクはBランクで間違いないから、一概に違反とは言い切れないね」

なのははそう言う。

「じゃあ、信也さんはどの位リミッターを掛けてるんですか?」

キャロが尋ねる。

「え~っと、たしか4,5ランク落してるはずだよ」

「よ、4,5ランク落としてるって事は・・・・・元はS+!?」

信也の答えにエリオが驚愕する。

「まあ、実際に計ったわけじゃないけど、プレシアさんが言うにはその位だよ」

信也の言葉に新人4人はポカーンとする。

同じフォワードメンバーが隊長たちと同等以上の実力の持ち主であることに驚いている。

だがその時、警報が鳴り響く。

「こ、このアラートって!」

「一級警戒態勢!?」

スバルとエリオが叫ぶ。

「グリフィス君!」

『はい!教会本部から出動要請です!』

通信がつながり、はやてが映る。

『なのは隊長!フェイト隊長!グリフィス君!こちらはやて!』

「うん!」

なのはが返事をして、

『状況は?』

車で移動中のフェイトにも通信が繋がる。

『教会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった!場所はエーリモ山岳地区!対象は、山岳リニアレールで移動中!』

『移動中って・・・・』

「まさか!」

はやての言葉でフェイトとなのはが気付く。

『そのまさかや。内部に侵入したガジェットの所為で、車両の制御が奪われてる!リニアレール内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型、未確認タイプも出てるかもしれへん!いきなりハードな初出動や。なのはちゃん!フェイトちゃん!いけるか!?』

『私はいつでも!』

「私も!」

2人は頼もしい返事を返す。

『スバル!ティアナ!エリオ!キャロ!信也君!皆もオッケーか!?』

「「「「「はい!」」」」」

『よし!いい返事や。シフトはAの3。グリフィス君は隊舎での指揮。リィンは現場管制!』

『はい!』

「はい!」

『なのはちゃん、フェイトちゃんは現場指揮!』

「うん!」

『ほんなら・・・・機動六課フォワード部隊・・・・出動!!』

「「「「「「はい!!」」」」」」

『了解!』

こうして、機動六課の初出動の時がきたのだった。








次回予告


初出動する機動六課のフォワード陣。

だがその頃、地球で平穏に暮らす拓也達にも、オファニモンより新たな戦いを告げる知らせが届く。

再び戦いに身を投じる拓也達。

今ここに、戦士たちが集結する。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第五話 集結する戦士達!

今、未来への翼が進化する。






あとがき

第四話完成。

まあ、これといってたいした事はなし。

流れ自体はさほど変わってないです。

カリムとの話で、予言の話がちょこっと出てきてます。

まあ、読者様には大体解るかと・・・・・

さて、次回はいよいよ拓也が出てきます。

そこで皆様に質問。

拓也無双見たいですか?

次の次に、典型的なアホ上司を出して、拓也にボコらせようかな~と考えていたり。

ただ、話の流れ的に、どっかでみたことあるような内容になってしまうかもしれないのが問題。

下手すれば盗作扱いにされてしまうかも・・・・・・・

まあ、そうならないように努力はするつもりですが・・・・・

無くても良いなら飛ばしますが、見たいなら頑張って書きます。




序に18歳以上の方に質問。

18禁見たいです?

自分としては、クロス物の18禁って受け入れない人が多いんじゃないかな~って考えていたり。

まあ、既に半分ぐらいはオリキャラみたいなモンですけど。

自分としては、見たい人がいるなら書いてもいいかな~って思ってる程度です。

ただし、感想の返信にも書いたとおり、作者は、四捨五入すれば30歳になる20代の童貞ちゃんなんで、内容は期待しない方がいいです。




話がかなりズレましたが、次も頑張ります。




[8056] 第五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/11/29 12:50
――第97管理外世界“地球”

機動六課にアラートがかかる少し前。

海鳴にいる拓也の携帯電話にメールが届いた。

その内容は、

【スタートしますか?しませんか?  Yes. No.】

そのメールを見た瞬間、拓也は驚愕した。

「これは!?」

拓也は迷わずYesを選択する。

すると、時間と場所が表示される。

拓也はそれを確認すると、自宅に電話をして、今日明日中に連絡が無ければ、大学に休学届けを出してもらうようにお願いする。

由利子は、拓也の頼みに何も聞かずに承諾してくれた。

拓也は由利子に感謝すると、指定された場所へ急いだ。

指定された場所は、人気の無い公園だった。

一見、何も無いように見えたが、指定の時間になった時、公園の中央にデジコードで出来た円が現れる。

拓也は、迷わずにそれを潜り抜けた。

すると、そこは渋谷駅の地下ホーム。

そして、1台のトレイルモンと、仲間である泉、友樹、純平の姿があった。

4人は互いに顔を見合わせると、頷いてトレイルモンに乗り込んだ。




デジタルワールドに着くと、三大天使が待っていた。

「待っていました」

オファニモンが口を開く。

「何が起こったんだ?オファニモン」

拓也が尋ねる。

オファニモンは神妙な顔をして黙り込んだ後、口を開いた。

「・・・・・・・・ルーチェモンが、復活しました」

「「「「なっ!?」」」」

オファニモンの言葉に、4人全員が驚愕する。

「そんなバカな!ルーチェモンはあの時倒したはずだ!」

純平が叫ぶ。

「はい・・・・・あなた達は確かにルーチェモンを倒し、そのデータを浄化しました・・・・・しかし、ルーチェモンの怨念は、予想以上に凄まじかったのです」

「まさか・・・・・データを浄化仕切れなかったの?」

泉の言葉に、オファニモンは頷く。

「その通りです。ルーチェモンは以前の記憶を持ったまま生まれ変わったのです」

「そんな・・・・・」

友樹が声を漏らす。

「それだけではありません。ルーチェモンは、別の世界へ逃亡し、協力者を得たと思われます」

「「「「!?」」」」

「ルーチェモンは一度別世界へ逃亡した後、一度この世界へ戻ってきました。その際に多くのデジタマを持ち出したのです。そして、残されていた形跡を調べたところ、複数の人物がいることが確認できました」

オファニモンはそう言う。

だが、それ以上にオファニモンの表情は深刻そうに思える。

「オファニモン、それ以外にも、何か拙い事があるのか?」

拓也は尋ねる。

「・・・・・・・・持ち出されたデジタマの中には、七大魔王のデジタマも含まれています」

オファニモンはそう言った。

「七大・・・・・」

「・・・・魔王?」

聞いた事のない単語に、友樹と泉は首を傾げる。

「はい。七大魔王とは、その余りに強大で邪悪な意思と力の為に封印された、7体の魔王型デジモンです」

その言葉に4人は戦慄する。

「憤怒のデーモン、暴食のベルゼブモン、色欲のリリスモン、強欲のバルバモン、嫉妬のリヴァイアモン、怠惰のベルフェモン。そして、傲慢のルーチェモン フォールダウンモード。ルーチェモンはもちろんの事、全てのデジモンがルーチェモンと同等。もしくは、それに迫る力を持っています」

「な、なんだよそれ!もしそんな奴らが全員復活したら・・・・・」

純平が大声を上げる。

オファニモンは頷いた。

「はい、今の私たちでは対処する方法がありません。何としても、七大魔王復活の前にルーチェモンを倒し、復活を阻止しなければならないのです」

「・・・・・俺達は、何をすればいい?」

拓也が問いかけた。

「あなた達には、ルーチェモンが逃亡したと思われる世界に行ってもらい、ルーチェモンを倒して欲しいのです。本来ならば我々が行かなければならないのですが、デジモンがデジタルワールド以外の世界に行くと、世界のバランスが不安定になってしまいます。ですので、私達は世界を支えなければなりません。デジタルワールドの事を、貴方達に頼むことは、真に心苦しいのですが・・・・・・」

「そんな水臭いこと言わないでくれよ!」

「デジタルワールドは、私達にとっても第2の故郷よ!」

「そのデジタルワールドの為なら、手助けだって幾らでもするよ!」

純平、泉、友樹がそれぞれの思いを口にする。

「・・・・・皆さん、ありがとうございます」

オファニモンは礼を述べる。

「出来れば源 輝二さんと、木村 輝一さんにも来て頂きたかったのですが、連絡が取れず・・・・・」

オファニモンが呟く。

「まあ、輝二と輝一は仕方ないさ。あいつらは別の世界にいるからな。輝二と輝一のスピリットは俺が持っておくよ」

拓也がそう言った。

すると、三大天使の後ろに十闘士達が現れる。

それを見ると、4人は携帯電話を取り出した。

十闘士がスピリットの形をとり、それぞれの携帯電話に吸い込まれる。

そして、携帯電話はデジヴァイスに形を変えた。

「・・・・・お願いします・・・・・デジタルワールド・・・・・いえ、全ての世界の為に・・・・・」

オファニモンがそう言うと、三大天使はそれぞれの力を結集し、ゲートを作り出す。

「任せてくれ!」

拓也がはっきりと言った。

「じゃあ、行こうぜ皆!」

「「「おう(ええ)!!」」」

4人はゲートへ飛び込んだ。





第五話 集結する戦士達!




機動六課のフォワード隊は、機動六課のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニックの操縦するヘリで現場に向かっていた。

だが、ロングアーチが接近する航空型ガジェットを捕捉する。

そこで、なのはとフェイトが空で航空型ガジェットを押さえることになった。

その時、はやてからなのはに通信が届く。

『なのはちゃん、聞こえるか?』

「はやて部隊長、如何したの?」

『これからの出撃やけど、念のために信也君も連れてってや』

「えっ?どうして?私とフェイトちゃんなら・・・・・」

なのはが不思議そうに尋ねる。

『戦力的には問題あらへん。けど、なのはちゃんはトラウマを克服したから大丈夫やとは思うけど、万が一という事もある。空を飛んでの実戦は8年振りやろ?信也君がおった方が戦力的にも余裕が持てるし、何よりなのはちゃんが安心できる』

「了解!」

信也が返事をした。

「信也君!?」

「はやてのいう事も尤もでしょ?なのはは、空での実戦は8年振りなんだ。それは僕も一緒だけど、だからこそ一緒に行った方が良い」

「信也さんの言うとおりです!」

リィンが叫んだ。

「かーさま・・・・・じゃなくて、八神部隊長もなのはさんの事を心配して言ってるんです。心配事は少ないに越した事はありませんから。フォワード陣も信也さんがいなくても大丈夫ですよね?」

リィンが新人4人に問いかけた。

「もちろんです!」

ティアナが即答し、

「信也さんに頼りきりじゃないところを見せてあげます!」

スバルが立ち上がりながら言って、

「だからなのはさん、気にせずに信也さんと行ってください!」

エリオが言った。

「皆・・・・・ありがとう」

なのははそう呟く。

その時、なのはは1人緊張しているキャロに気付く。

「キャロ」

「えっ?」

「大丈夫、そんなに緊張しなくても」

なのはは両手をキャロの頬に添える。

「離れてても、通信で繋がってる。1人じゃないから、ピンチの時は助け合えるし、キャロの魔法は皆を守ってあげられる、優しくて強い力なんだから。ね?」

なのはは優しくキャロに微笑みかけた。





その頃、車で移動していたフェイトはパーキングに到着する。

車から飛び出して、バルデッシュの待機モードを構える。

「バルデッシュ・アサルト!セットアップ!!」

『Set up.』

フェイトが金色の光に包まれる。

『Barrier Jacket, Impulse Form.』

フェイトは、黒いバリアジャケットに白いマントを纏った姿になる。

「行くよ!バルデッシュ!」

『Yes,sir.』

フェイトは空へ飛び立つ。

「ライトニング01、フェイト・テスタロッサ、行きます!」

フェイトはスピードを上げて、一気に雲の上まで出る。

そのまま、猛スピードで目的地へと向かった。




ヘリから、なのはと信也が飛び降りる。

「レイジングハート!」

「ブレイブハート!」

「「セットアップ!!」」

2人は同時にデバイスを起動する。

桜色と青色の光が迸る。

2人は、バリアジャケットを纏った。

『Axelfin.』

『Aero wing』

なのはは、足に桜色の翼を。

信也は、背中に青色の翼を発生させて飛び立つ。

「スターズ01、高町 なのは!」

「ウインド01、神原 信也!」

「行きます!!」

2人はガジェットのいる方へと向かった。




ヘリで新人たちに作戦内容の説明がされている時、信也となのはは、フェイトと合流する。

(一緒に飛ぶのは久しぶりだね、フェイトちゃん)

なのはがフェイトに念話を送る。

(うん。また一緒に飛ぶことが出来て嬉しいよ。なのは、シンヤ)

フェイトもそう返す。

(こうして3人で飛ぶのも8年振りかな)

信也がそう言った。

(タクヤがいれば、もっと良かったんだけど)

(あはは、仕方ないよ。お兄さん、管理局・・・・っていうか、組織とかの上下関係が苦手だし・・・・・)

(理不尽な命令をされれば、間違いなく上官を殴るだろうね)

フェイトの言葉に、なのはと信也が笑みを浮かべて答える。

そんな念話をしていると、航空型ガジェットが、集まってくる。

3人は気を引き締めなおし、ガジェットの撃破を開始した。

なのははお得意の砲撃魔法で、AMFを貫くほどの魔力を込めて放つ。

ガジェットはAMFでは防ぎきれず、ボディを貫かれて爆散する。

フェイトもAMFで無効化しきれないほどの魔力を込めた魔力刃で、次々とガジェットを切り裂く。

信也は、リミッターを掛けた状態ではAMFを貫くほどの魔力は出せないので、模擬戦でやっていた魔力結合を解かれる以上のスピードでの再構築を使い、ガジェットを撃破していった。






新人達を乗せたヘリは、順調に降下ポイントに近付いていた。

だがその時、ロングアーチが別の反応を捉える。

「リニアレール上空に局所的次元震発生!?」

「空間湾曲反応確認!ワームホール、開きます!」

ロングアーチ組が騒然となる。

ロングアーチの言葉通り、リニアレールの上空の空間に穴が開いた。

そこから出てきたのは・・・・・・





拓也、泉、友樹、純平は、三大天使が開けたゲートを潜った。

その瞬間、

「へ?」

「え?」

「あれ?」

「ん?」

地面が無くなり、落下を開始する。

「おわぁあああああっ!?」

「きゃぁあああああっ!?」

「うわぁあああああっ!?」

「いきなり空の上かよぉっ!!」

それぞれが喚く。

拓也は、いきなりの事に驚きながらも周りを見渡す。

すると、山岳地帯を走っているリニアレールに気付いた。

「皆!ひとまずあの列車の上に着地するんだ!」

拓也が、リニアレールを指差して叫んだ。

「ええ!」

「うん!」

「わかった!」

それぞれがデジヴァイスを構える。

「「「「スピリット!エボリューション!!」」」」

4人がデジコードに包まれ進化する。

「アグニモン!!」

「フェアリモン!!」

「チャックモン!!」

「ブリッツモン!!」

アグニモンとチャックモンは上手く着地し、フェアリモンとブリッツモンは空を飛べるので、着地の瞬間に制動をかけ、ゆっくりと着地した。

4人は、とりあえず現状を確認する。

「ここは一体?」

ブリッツモンが呟く。

「とりあえず、列車が走ってることから、それなりに文明がある所なのは間違いないな」

アグニモンが言った。

だがその時、4人は一斉に下を向く。

「「「「・・・・・・・・・」」」」

下に・・・・いや、車両の中に不穏な気配を感じる。

「・・・・・・来るぞ!」

アグニモンが叫んだ。

その瞬間、車両の屋根が吹き飛び、レーザーと思わしき攻撃が来る。

4人はそれを落ち着いて回避。

中から出てくるガジェットに警戒する。

「何だこいつら?警備ロボットみたいな物か?」

ブリッツモンがそう言うが、

「多分違うわ」

フェアリモンが否定した。

「うん。警備ロボットだったら、無闇に車両を壊したりはしないはずだよ」

チャックモンが捕捉する。

「そ、そうだな・・・・」

冷静に考えればすぐに分かることだった。

「それで、如何する?」

ブリッツモンが尋ねる。

「そんなの、決まってるだろ」

アグニモンが拳を握りながら言った。

「襲ってくるなら、返り討ちにするだけだ!」

アグニモンは近くにいたガジェットに殴りかかった。

アグニモンの拳は、ガジェットの装甲を易々とぶち抜いて貫通する。

アグニモンが腕を引き抜いて飛び退くと爆発。

それが切っ掛けになったかのように、次々とガジェットが現れる。

全員が戦闘開始に備えた。




その様子は、ヘリからも見えていた。

「彼らは一体?」

ティアナが呟く。

「ワームホールから出てきたらしいですから、要保護対象になるんでしょうけど・・・・・」

リィンがそう言う。

リィンは、進化する前は見ていないので、4人の内の1人が拓也である事に気付いていない。

「とりあえず、注意しつつ彼らとコンタクト。こちらの指示に従ってくれるのであれば、作戦続行。もし戦闘になった場合は無理はしない様に」

リィンは無難な指示を出す。

「「「「了解!」」」」

ヘリのメインハッチにスバルとティアナが近付く。

「スターズ03、スバル・ナカジマ!」

「スターズ04、ティアナ・ランスター!」

「「行きます!」」

2人はヘリから飛び出す。

「行くよ、マッハキャリバー」

「お願いね、クロスミラージュ」

2人は、それぞれのデバイスに語りかける。

「「セットアップ!!」」

2人は光に包まれ、バリアジャケットを纏う。

続いて、エリオとキャロが準備した。

しかし、キャロは不安そうにしている。

そんなキャロに気付いたエリオは、

「一緒に降りようか?」

そうキャロに問いかける。

「え?」

キャロはハッとしてエリオを見た。

エリオは微笑んで手を差し出す。

「うん!」

キャロはその手を握った。

「ライトニング03、エリオ・モンディアル!」

「ライトニング04、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」

「キュク~」

「「行きます!!」」

2人は手を繋いだまま飛び降りた。

「ストラーダ!」

「ケリュケイオン!」

「「セットアップ!!」」

2人も光に包まれ、バリアジャケットを纏った。

スターズ分隊は前方車両に、ライトニング分隊は後方車両に着地する。

そして、自分のバリアジャケット姿を見ると、

「あれ?このジャケットって・・・・・」

「もしかして・・・・・」

スバルとエリオが呟く。

「デザインと性能は、各分隊の隊長さんのを参考にしてるですよ。ちょっと癖はありますが、高性能です」

リィンが説明する。

「わぁ~」

スバルは感動している。

「スバル!感動は後!」

ティアナが気を取り直して叫ぶ。

近くに現れたガジェットと戦闘を開始する。

ティアナは射撃でガジェットを撃ち抜き、スバルはリボルバーナックルで殴り飛ばす。

その時の破砕音で、アグニモン達はスバル達に気付く。

「人?」

ブリッツモンが呟く。

すると、リィンが飛んできて言った。

「私達は時空管理局です!あなた達は何者ですか!?」

そう問いかける。

「リィン?」

アグニモンが呟く。

いきなり自分の名を呼ばれたリィンはキョトンとする。

「え?なんでリィンの名前を知ってるですか?」

リィンは首を傾げる。

アグニモンは少し考えると、

「リィンがいるって事は、この世界はミッドチルダなのか?」

そう問いかけた。

「え?は、はい、そうですけど・・・・・」

「そうか・・・・・それなら都合が良いな」

アグニモンはそう呟く。

「リィン、聞きたいことはあるだろうけど、話は後だ。俺達は敵じゃない。一先ずこいつ等を片付ける」

アグニモンは後ろのガジェット達に向き直って言った。

「リィン曹長。如何しますか?」

ティアナが尋ねる。

「う~ん、とりあえず協力する方向で。ただし、警戒だけは怠らないようにです」

「「了解!」」

スバルとティアナも構えた。

「そういえば・・・・・」

アグニモンが口を開く。

「後方車両にも一組降りたな?」

「え?あ、はい」

「そうか。なら、俺はそっちの援護をしてくる。フェアリモン、チャックモン、ブリッツモン!この場は任せるぞ」

「ええ!」

「わかった!」

「任せろ!」

3体はそれぞれ返事を返す。

アグニモンは、後方車両に向かう。

その途中、ガジェットが攻撃してくるが、アグニモンはあっさりと避けて、ガジェットの包囲を突破した。





その頃、空で戦っている信也、なのは、フェイトの3人は、航空型ガジェットをもうすぐ全滅させる所まで来ていた。

フェイトが再びガジェットを切り裂き、破壊する。

だがその時、

――・・・・・・ゥゥゥゥゥゥン

何かの音が聞こえた。

「何の音?」

フェイトは耳を澄ます。

――ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

「・・・・・・・・虫の・・・・・羽音?」

その音はどんどん大きくなる。

――ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

フェイトは、その音源に気付いた。

地上近くをかなりのスピードで飛んでいる、赤く、巨大なクワガタのような生物。

「何、あれは!?」

フェイトは見たことの無い生物に驚愕する。

なのはや信也もそのクワガタのような生物に気付いた。

その時、その生物が3人に向かって襲い掛かってきた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――クワガーモン

・成熟期 昆虫型 ウイルス種

 巨大なクワガタの姿をした、狂暴な成熟期デジモンだ。

 必殺技は、巨大な顎で敵を切断する『シザーアームズ』。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




3人は、クワガーモンの体当たりを散開して避けるが、クワガーモンが羽ばたいた時の気流の乱れに巻き込まれ、バランスを崩す。

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

「くっ!?」

3人は何とか体勢を立て直す。

そして、それぞれが射撃魔法を準備する。

『Accel Shooter.』

『Plasma Lancer.』

『Arctery mode. V-Breath Arrow MAX.』

「シューーーーーット!!」

「ファイア!!」

「いけぇっ!!」

それぞれの攻撃がクワガーモンに直撃する。

だが、すぐに爆煙の中から大したダメージを受けていないと思われるクワガーモンが姿を見せる。

「くっ!硬い!」

信也が声を漏らす。

なのはは、再びレイジングハートを構え、バスターモードにする。

「ディバイン・・・・・・バスターーーーーーーッ!!」

なのははディバインバスターを放つ。

先程よりも強力な砲撃がクワガーモンを襲う。

クワガーモンは爆発に飲まれた。

「これなら!」

なのはは、直撃した事を確認して、少し気を緩める。

だが、信也は未だ警戒していた。

「ブレイブハート、リミッター解除」

『Yes,master.』

信也は念のために、ブレイブハートにリミッター解除を命じる。

そして次の瞬間、

「えっ!?」

なのはは驚愕した。

クワガーモンが煙の中からなのはに向かって一気に突っ込んできたのだ。

なのはは驚愕して、一瞬身体が硬直している。

その一瞬でクワガーモンには十分だった。

なのはがシザーアームズの間合いに入ると、クワガーモンは顎を広げ、一気に閉じようとした。

その時、

『Aero Wing. Full Speed.』

一瞬でなのはの姿が消え、シザーアームズは空振る。

なのはは、信也に抱きかかえられていた。

「大丈夫?なのは」

「えっ?あ、う、うん!」

なのはは一瞬何が起きたか解らなかったが、信也に抱きかかえられていることに気付き、顔を若干赤くする。

なのはは信也の腕から離れる。

信也は魔力刃を構えると、カートリッジをロードし、一気に斬りかかった。

「はぁあああああああっ!!」

――ドキャァ

その一撃で、クワガーモンは怯む。

その隙を逃さず、瞬時にブレイブハートをアーチェリーモードへと変更し、ブイブレスアローMAXを撃ち込む。

「いけっ!!」

――ドゴォン

クワガーモンは更に吹き飛ばされる。

「止めっ!!」

ブレイブハートがビクトリーモードに戻り、剣を真っ直ぐに構える。

信也の体が魔力に包まれ青く発光。

エアロウイングまで合わせてVの字が形成される。

『V-Wing Blade.』

「はぁああああああっ!!」

一気に突撃。

直撃を受けたクワガーモンは吹き飛び、そのまま地上に叩き付けられた。

生きてはいるが、痙攣したようにピクピクとしており、虫の息のようであった。






リニアレールの後方車両に着地したエリオ、キャロは、現れるガジェットを撃破しながら7両目の重要貨物車両を目指していた。

エリオたちが、9両目のガジェット達と戦っていた時、

「ファイアダーツ!!」

炎が幾つも飛んできて、あっという間に9両目のガジェットを全滅させる。

「「え?」」

2人は声を漏らした。

その時、2人の目の前にアグニモンが着地する。

「あ、あなたは?」

エリオが尋ねた。

「とりあえず、お前達を援護しに来た・・・・・・って、エリオか」

アグニモンがそう言った。

「えっ?何で僕の名前を?」

エリオが再び尋ねる。

「その話は後だ。今はやるべき事をやれ・・・・・・・・それにしても」

アグニモンは、キャロに視線を向ける。

「君は何故戦いに出てきた?」

アグニモンが問いかける。

「え?」

「君は力を使うとき、若干だが怯えが見える」

「そ、それは・・・・・・」

アグニモンのいきなりの確信をつく言葉に、キャロは言葉を詰まらせる。

「自分の力が怖いなら、戦いに出ないほうが良い。全力を出さずに失敗すると、それだけ後悔も大きくなるぞ」

アグニモンの言葉は重い。

「わ、私も、誰かを守りたいからです・・・・私の力で・・・・誰かを守れるようになりたい・・・・・・」

キャロは、自信なさげにそう呟く。

アグニモンはその言葉を聞くと、

「ならば次の相手、お前たちだけで倒してみろ。今言った言葉、嘘ではないと示してみろ!」

そう言い放った。

アグニモンは、エリオはともかく、キャロはこのまま戦い続けるのは危険だと判断した。

キャロの姿は、かつてビーストスピリットの制御に失敗して、仲間を傷つけてしまった自分の姿に重なる。

その時の自分は仲間の言葉で恐怖を乗り越え、ビーストスピリットの制御に成功した。

キャロも、自分の力への恐怖を乗り越えなければ、いつかは潰れてしまうと感じたのだ。

エリオとキャロは、8両目に突入する。

そこには、直径2mを超える、ガジェットⅢ型の姿があった。

アグニモンは、気配で既にどのような敵がいるのか、判断が出来ていたのだ。

アグニモンは下がって腕を組み、完全に傍観に徹する構えだ。

ガジェットⅢ型は、長いアームを伸ばしてくる。

エリオとキャロは、飛び退いてそのアームを避ける。

キャロは着地すると、

「フリード!ブラストフレア!!」

フリードに指示を出す。

フリードは火球を作り出し、

「ファイア!!」

一気に放った。

だが、その火球はガジェットⅢ型のアームに軽々と弾かれる。

エリオは懐に一気に飛び込み、電撃を纏わせたストラーダで斬りかかる。

「おりゃぁああああああっ!だあっ!!」

だが、ガジェットⅢ型の分厚い装甲に阻まれる。

「か、硬い!」

その時、ガジェットⅢ型がAMFを広げた。

エリオの電撃は解除され、後方で展開していたキャロの魔法陣も消え去る。

「AMF!?」

「こんな遠くまで!?」

2人は驚愕する。

エリオはアームでの攻撃をストラーダで受け止める。

だが、AMFによってパワーダウンしているため、支えるだけでも必死である。

「あ、あのっ」

キャロが声をかける。

「だ、大丈夫!任せて!」

エリオはそう言うが、防戦一方である。

やがて、アームに弾き飛ばされるエリオ。

「うわぁああああっ!」

「ああっ」

その様子を見て、声を漏らすキャロ。

「何故力を使わない?」

そんなキャロに、アグニモンが問いかけた。

キャロが驚いて振り向く。

「君にはまだ上の力がある。違うか?」

アグニモンが問いかけ、キャロが俯く。

その様子を見て、アグニモンは確認した。

「君がその力でどんな経験を送ってきたかはわからない。だけど、これだけは言える。力を、どのような力にするかを決めるのは、その力を使う者の心次第だ」

アグニモンは続ける。

「力を持つ者の心次第で、闇の力だって護る力になるし、光の力も傷つけるだけの力になる」

「・・・・・・」

キャロは、その言葉を黙って聞いていた。

「自分の力を恐れるな!勇気を持て!君は、誰かを護れるようになりたいんだろ!!」

アグニモンのその言葉は、キャロの心を揺さぶる。

「わ、私は・・・・・」

その時、エリオが投げ出される。

「エリオ君!」

力なく崖下へ落下してゆくエリオ。

「私は・・・・守りたい!」

キャロは、1つの決意を胸に、エリオを追って飛び降りた。

(守りたい・・・・優しい人を・・・・・私に笑いかけてくれる人たちを・・・・・・自分の力で・・・・・・)

「守りたい!!」

キャロは、エリオの手を掴んだ。

『Drive ignition.』

ケリュケイオンが光を放つ。

2人が桃色の光に包まれた。

落下速度が弱まり、フリードがその光の中に入ってくる。

「フリード、不自由な想いさせててごめん。私、ちゃんとコントロールするから!」

その時、エリオが目を覚ます。

キャロに抱きかかえられていることに気付き、少し慌てたが、次の瞬間、そんな思いは吹き飛んだ。

「行くよ!竜魂召喚!!」

四角い魔法陣が展開される。

「蒼穹を走る白き閃光。我が翼となり、天を駆けよ。来よ、我が竜フリードリヒ。竜魂召喚!」

フリードが巨大な姿となり、力強く羽ばたく。

エリオはその光景に圧倒されていた。

「進化・・・・・か?」

アグニモンはその光景を見て呟く。

2人を背中に乗せたフリードは再びガジェットⅢ型と対峙する。

「フリード!ブラストレイ!!」

フリードの口の前に、今までとは比較にならないほどの炎が凝縮される。

「ファイア!!」

その炎がガジェットⅢ型に向かって放たれた。

ガジェットⅢ型は、AMFを張って、何とか耐え切る。

「・・・・・あのバリア・・・・魔力を打ち消してるのか?」

アグニモンはガジェットⅢ型を分析していた。

「やっぱり硬い!」

キャロはそう言う。

「あの装甲形状、砲撃じゃ抜きづらいよ。僕とストラーダがやる」

「うん」

エリオの言葉に、キャロが頷いた。

キャロは補助魔法を唱えだす。

「我が乞うは、清銀の剣。若き槍騎士の刃に、祝福の光を」

『Enchanted Field Invalid.』

「猛きその身に、力を与える祈りの光を」

『Boost Up Strike Power.』

「行くよ!エリオ君!」

「了解!キャロ!」

エリオは飛び出す。

「だぁあああああああっ!!」

「ツインブースト!スラッシュアンドストライク!!」

キャロが2つの補助魔法を同時に行使する。

その魔法の光がストラーダに宿る。

『Empfang.』

ガジェットⅢ型のアームが迫る。

「はぁあああああああっ!!」

エリオがストラーダを振りかぶる。

『Stahlmesser.』

ストラーダの穂先が鞭のように撓り、迫ってきていたアームを切り裂く。

エリオは車両の上に着地すると、

『Explosion.』

カートリッジを2発ロード。

魔法陣を展開させ、電撃を纏う。

「一閃必中!!」

そして、一気に突撃。

ガジェットの中央を貫く。

「でぇりゃぁああああああああああっ!!」

そのままストラーダを斬り上げ、ガジェットⅢ型を真っ二つにした。

それと共に爆発するガジェットⅢ型。

「やった!」

キャロが喜びの声を上げる。

だが、

「あっ!」

別の車両を突き破り、もう1体のガジェットⅢ型が姿を現す。

「もう1体!?」

そのガジェットⅢ型がエリオにアームを伸ばしてくる。

「はっ!」

しかし、エリオは疲労でろくに動けず、その攻撃を避けられない。

「くっ!」

エリオは思わず目を瞑った。

――ガシィ

だが、一向に痛みはエリオを襲わない。

エリオは恐る恐る目を開けた。

エリオの目の前には、2つのアームをそれぞれの手で受け止めているアグニモンの姿。

「あ・・・・・・」

その姿に、エリオは思わず声を漏らす。

「戦いの最中に目を瞑るのは、良くないぜ」

アグニモンはそう言った。

「けど・・・・・良くやった」

「え?」

アグニモンの言葉に声を漏らす。

「見せてもらったぞ。お前たちの想いとその覚悟!」

――バキィ

その言葉と共に、アグニモンはアームの掴んでいた部分を握りつぶす。

すると、アグニモンは両拳を合わせた。

両手の甲から炎が発生し、その炎を両拳に纏う。

「バーニング!サラマンダー!!」

その炎を、ガジェットⅢ型に向け放った。

魔法の炎より遥かに熱量を持った炎。

更には魔法ではないので、AMFも無意味。

2つの火球はガジェットⅢ型に直撃と共に爆発。

ガジェットⅢ型を完全に破壊した。

「す、すごい・・・・あのガジェットをあんなにあっさりと・・・・・」

その事実にエリオは驚愕した。





――???

とある場所で、1人の男性が今までの出来事を観測していた。

『レリック、相手側に確保されました。追撃戦力を送りますか?』

その男性に、通信で女性が問いかける。

「止めておこう。レリックは惜しいが、彼女たちのデータが取れただけでも十分さ。それにしても、この案件はやはり素晴らしい」

その男性は、モニターに視線を戻して言った。

「私の研究にとって、興味深い素材が揃っている上に・・・・・」

モニターが切り替わり、フェイトとエリオの姿が映し出される。

すると、その男性は思わず笑みを浮かべる。

「この子達・・・・・・生きて動いているプロジェクトFの残照。手に入れるチャンスがあるだろう・・・・・・フッフフフフ」

その男性が笑い声を漏らした時、

「楽しそうだね、ジェイル」

別の声が響いた。

声からして、子供のような声だ。

その男性は振り向く。

「ああ、君か。そうだな、楽しみで仕方ないよ。私の探究心を擽ってくれる素材ばかりだからね」

その男性は本当に楽しそうに言った。

「それにしても、君の言っていたデジモン。思ったほどの戦果は上げてくれなかったよ・・・・・・」

その男性は、今度は少しガッカリした声で言った。

モニターが切り替わり、虫の息であるクワガーモンが映し出される。

「フフフ・・・・・何を勘違いしているんだいジェイル?」

そのクワガーモンを見て、その声は面白そうな雰囲気を感じさせる。

「何?」

男性は声を漏らす。

「面白くなるのはここからだよ!さあ、進化しろ!クワガーモン!」

その声は、モニターの向こうのクワガーモンに向かってそう言った。

「これは、ほんの挨拶代わりだよ、十闘士」





クワガーモンを行動不能にした後、信也、なのは、フェイトの3人は残ったガジェットⅡ型の掃討を行なっていた。

その時、虫の息であったクワガーモンが起き上がる。

「アイツ、まだ動けたのか!?」

信也がそう言う。

だがその時、クワガーモンを青い光の帯、デジコードが包む。

「「「!?」」」

そのデジコードを見たとき、3人は相手の正体に気がついた。

「まさか・・・・・デジモン!?」

フェイトが驚愕した声で叫んだ。

そのデジコードが消えると、身体が一回り大きくなり、体色も灰色となったクワガーモンがいた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――オオクワモン

・完全体 昆虫型 ウイルス種

 クワガーモンが進化した完全体デジモン

 必殺技『シザーアームズΩ』は、ダイヤモンドをも切断する。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




オオクワモンは今までのダメージが消えているらしく、自然な動作で動き出す。

オオクワモンは羽根を広げて羽ばたく。

そして次の瞬間、先程のスピードを大きく上回るスピードで突撃してきた。

「なっ!?速い!!」

信也は驚愕するが、迎え撃つために動く。

「はっ!」

信也は、オオクワモンの突撃を紙一重で避け、飛行の衝撃に体勢を崩されながらも、ブイブレスアローMAXをオオクワモンに放つ。

直撃するオオクワモン。

だが、多少揺らいだものの、効いている様子は全くない。

「くっ・・・・さっきとは桁違いだ」

信也はそう漏らしながらも、オオクワモンに立ち向かった。






リニアレールでは、レリックを確保した後、アグニモンたちとフォワード陣及びリィンが対峙していた。

「では、もう一度聞きます。あなた達は何者ですか?」

リィンが問いかける。

すると、アグニモンがデジコードに包まれ、進化を解く。

「リィン、エリオ。久しぶりだな」

進化を解いた拓也がそう言った。

「「拓也さん!?」」

リィンとエリオが同時に驚いた声を上げる。

「エリオ、知り合い?」

「リィン曹長もですか?」

スバルとティアナがそれぞれ問いかける。

「あ、はい。え~っと・・・・・皆さんには、信也さんのお兄さんと言えば解り易いと思います」

そうエリオが言った。

「信也さんのお兄さん!?」

キャロが驚いたように言う。

「で、でも、何で拓也さんがミッドチルダにいるんですか!?」

リィンが驚いた表情で尋ねる。

「ああ・・・・それなんだが・・・・」

その時、一同の目の前にモニターが開く。

『拓也さん!』

はやてが余裕のない声で叫んだ。

「おう、はやて。久しぶりだな」

『あ、はい、お久しぶりです・・・・・ってちゃいます!そんな場合じゃないんです!』

はやては思わず挨拶を返してしまったが、慌てて話を戻す。

『現在、なのはちゃん、フェイトちゃん、信也君がデジモンと思わしき生物に襲撃されてます!』

「何!?」

その言葉には、拓也も驚愕する。

『最初は大丈夫やったんですけど、いきなり進化して・・・・・・』

「わかった!すぐに向かう!」

拓也は即答した。

拓也はフェアリモン、チャックモン、ブリッツモンに向き直ると、

「皆はもしもの時のためにここに残っててくれ。もしかしたら別のデジモンが出てくるかもしれない」

「わかった」

ブリッツモンが頷いた。

「あ、あの・・・・・?」

リィンが声を掛けるが、

「すまんリィン。話は後だ!」

そう言って、拓也はみんなから少し離れる。

そして、デジヴァイスを構えた。

デジヴァイスの画面に、獣の顔のシルエットが現れ、咆えると、ビーストスピリットの形が浮かび上がる。

突き出した左手に、長い帯が集まり球状となったデジコードが発生する。

そのデジコードに、デジヴァイスの先をなぞる様に滑らせる。

「スピリット!エボリューション!!」

拓也の身体をデジコードが包む。

溢れるエネルギー、力の奔流。

「うああああああああああっ!!」

拓也は叫び声を上げる。

激しい力の奔流の中、拓也はスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

身体に、

足に。

拓也の身体にスピリットが合わさる。

「ヴリトラモン!!」

デジコードの中から現れたのは、大きく炎のようなオレンジ色をした翼を持った、赤き竜。

その光景にリィンを含めたフォワード陣は驚愕した。

ヴリトラモンは、皆に背を向け、翼を広げる。

「えっ?」

その瞬間、スバルの脳裏に引っ掛かる物があった。

ヴリトラモンは羽ばたいてそのまま飛び去る。

はやては、急いでなのは達に報告した。

『なのはちゃん、フェイトちゃん、信也君!もう少し頑張ってや!もうすぐ頼もしい応援が行くから!』

スバルは、飛び去ったヴリトラモンの後姿をボーっと見ていた。

「・・・・・・・オレンジ色の・・・・・大きな翼・・・・・」

スバルは、ポツリと呟く。

そんなスバルに、ティアナが声を掛けた。

「スバル?何ぼうっとしてるのよ?」

「へっ?」

ティアナの声に現実に引き戻される。

「あ、ううん。何でも無い」

「しっかりしなさいよ」

「うん、ゴメン」

スバルは謝った。

その時、

――ガクンッ

突如として、リニアレールがスピードを上げる。

「な、何だ!?」

ブリッツモンが驚く。

「スピードが上がってる」

チャックモンが気付く。

「そ、そんな!」

リィンは慌てて車両のプログラムにアクセスしようとしたが、

「だ、駄目です!操作を全く受け付けないです!」

リィンの言葉通り、操作を全く受け付けない。

「こ、このままこのリニアレールが止まらなかったらどうなるの?」

スバルがティアナに問いかける。

「聞かなくても解るでしょ!?このままスピードを上げていけばいつかは脱線!今の場所みたいな何も無いところならいいけど、もし街中で脱線したら大惨事よ!」

ティアナはそう答える。

「そんな!」

「何とかならないんですか!?」

エリオとキャロが叫ぶ。

その時、ブリッツモン、チャックモン、フェアリモンが互いに顔を見合わせ、頷く。

そして、フォワード陣に尋ねた。

「この列車、破壊してもかまわないか?」

「えっ?」

「暴走を止めるために、この列車を破壊する!」

ブリッツモンが言った。

その言葉に、はやては少し考えるが、

『許可します!』

その言葉に、全員が驚く。

『そのリニアレールは、そのスピードやと、あと30分足らずで市街地に入ってしまいます!30分でコントロールを取り戻すのは難しい!なら、確実な方法を選んだ方がええ!』

はやては言い切った。

『皆さん!どうかお願いします!』

「わかった!任せろ!」

「必ず止めるわ」

「任せて!」

ブリッツモン、フェアリモン、チャックモンはそう言った。

すると、ブリッツモンがリニアレールの進行方向に先行して飛んでいく。

フェアリモンとチャックモンは、互いに顔を見合わせ、頷き合うと、デジコードに包まれる。

「「スライドエボリューション!」」

使用スピリットを、ヒューマンスピリットからビーストスピリットに移行する。

「シューツモン!!」

フェアリモンがシューツモンに、

「ブリザーモン!!」

チャックモンが、ブリザーモンに進化する。

その光景に再び言葉を失うフォワード陣。

シューツモンとブリザーモンは、2両目の連結部分へ向かう。

「行くわよブリザーモン!」

「おお!」

「はっ!」

シューツモンが、鋭い爪で連結部分を切り裂く。

先頭車両と後続車両が切り離される。

すると、ブリザーモンがその間へ飛び降り、2両目以降を止めようとする。

「はぁあああああああああっ!!」

ブリザーモンは押されるが、後続車両のスピードはグングン落ちている。

シューツモンも上で押さえることにより、スピードは更に低下し、やがて止まる。

そのパワーに、フォワード陣は驚かされる。

「な、なんて力・・・・・」

ティアナが呆然と呟く。

ただし、先頭車両は、軽くなったことにより、更にスピードを上げていた。

だが、その進行方向に、ブリッツモンが待ち受けていた。

「ブリッツモン!」

ブリッツモンがデジコードに包まれる。

「スライドエボリューション!」

ブリッツモンも、使用スピリットをビーストスピリットに移行する。

「ボルグモン!!」

ブリッツモンはボルグモンとなり、リニアレールの前に立ち塞がる。

ボルグモンは、両手を地面に付け、頭部の砲門をリニアレールに向ける。

そして、目標をロックオンし、

「フィールドデストロイヤー!!」

その砲門から、超強力なエネルギー砲を放った。

――ドゴォオオオオオオオン!

その凄まじいエネルギーの前に、リニアレールは完全に消滅する。

「嘘・・・・・・」

「粉々どころか・・・・・完全に消滅させるなんて・・・・」

「信じられない・・・・」

スバル、エリオ、キャロが呆然と声を漏らした。





一方、信也、なのは、フェイトの3人は、オオクワモン相手に苦戦を強いられていた。

オオクワモンは、クワガーモンの時と比べて、パワー、防御、スピード、全てにおいて上回っている。

リミッター解除した信也の攻撃も、少し怯ませる程度しか効果はない。

信也は既にフルドライブであるアルフォースモードを発動させていた。

しかし、事態は一向に好転しない。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

信也は息を吐く。

流石の信也も、疲れが見え始めた。

「・・・・・・・切り札・・・・・使うしかないかな?」

信也は呟く。

その時、オオクワモンがなのはへ突撃する。

なのはのスピードでは、あの突撃は避けられない。

「なのはっ!」

そう判断した信也は、すぐに超スピードでなのはを救い出す。

「あ、ありがとう、信也君」

なのはは礼を言う。

その時、残存していたガジェットⅡ型が、フェイトの後方より襲い掛かる。

「このっ!」

それに気付いたフェイトは、一瞬だけオオクワモンから視線を外し、すぐにハーケンフォームでガジェットⅡ型を真っ二つにする。

フェイトの後ろで爆散するガジェット。

フェイトは、すぐにオオクワモンに視線を戻したが、もう既にそこにオオクワモンはいなかった。

「何処にっ?」

フェイトはオオクワモンの姿を探そうとした。

だが、

「フェイトちゃん!後ろっ!!」

なのはの悲痛な叫び。

フェイトは後ろを振り向く。

そこには、猛スピードで移動してきたオオクワモンの姿。

そして、フェイトは完全にシザーアームズΩの間合いに入ってしまっている。

閉じられようとする顎。

ダイヤモンドをも切断するシザーアームズΩは、多少は厚くなったとはいえ、防御力の低いフェイトのバリアジャケットなど・・・・・いや、例え防御力の高いなのはのバリアジャケットすら紙の如く切断するだろう。

そして、その後に待つ結果は、『死』の一文字。

止められはしない、絶対的な力の差。

目を瞑るフェイト。

だが、不思議とフェイトは恐怖を感じてはいなかった。

なぜならば、

(私が本当に危なくなった時は、何時だって・・・・・どんな時だって・・・・・・助けてくれる)

フェイトは信じていた。

自分の危機には、何時も駆けつけてくれた、最愛の男性。

――ガシィ!

(そして、助けてくれた後にこう言ってくれるんだ。“大丈夫か?フェイト”って)

そして、フェイトはゆっくりと目を開ける。

目の前には、紙一重で止められているオオクワモンの顎。

そして、

「大丈夫か?フェイト」

その言葉が聞こえた時、フェイトは思わず涙が溢れそうになった。

オオクワモンの顎が力ずくで広げられる。

フェイトは、後ろを振り向いた。

そこには、過去に2度しか見たことがないが、忘れることはない最愛の人物の複数ある姿の1つ。

炎の魔竜、ヴリトラモンがそこにいた。

「タクヤ・・・・・」

「下がってろ。フェイト」

「うん・・・・」

フェイトは言われたとおり離脱し、なのはと信也の所に合流する。

ヴリトラモンはそれを確認すると、目付きを変えて、オオクワモンを睨み付ける。

顎を握る手にも力が篭り、オオクワモンの甲殻に罅が入り、やがて砕ける。

「テメェ・・・・・・俺の女に・・・・・・何してやがった!!!」

ヴリトラモンはその叫びと共にオオクワモンを掴んだまま急降下。

岩山にオオクワモンを叩き付ける。

粉砕される岩山。

ヴリトラモンの両腕のルードリー・タルパナが反転。

銃口が前を向く。

「コロナブラスター!!」

その銃口より連続で放たれる炎の弾丸。

それは、信也たちの攻撃にも耐えた甲殻に、確実にダメージを与えていく。

オオクワモンは、多少のダメージは無視して、空に逃げようとした。

だが、

「おらぁ!!」

先回りしたヴリトラモンに頭部を殴られ、再び地面に叩き落される。

すると、ヴリトラモンが炎に包まれた。

「うぉおおおおおおっ!!」

更に激しく炎が噴きあがる。

「フレイム!ストーム!!」

オオクワモンに向かって尾を振ると、凄まじい炎がオオクワモンを襲い、炎に包む。

オオクワモンは炎に焼かれ苦しんでいたが、やがてがくりと崩れ落ち、デジコードを浮かび上がらせた。

ヴリトラモンは、オオクワモンの近くに着地する。

すると、デジコードに包まれた。

「ヴリトラモン!スライドエボリューション!」

ヴリトラモンは、使用スピリットをヒューマンタイプへ移行する。

「アグニモン!!」

アグニモンになると、オオクワモンへ歩み寄る。

「穢れた悪の魂を!」

アグニモンの手には、いつの間にかデジヴァイスが握られている。

「このデジヴァイスが浄化する!デジコード!スキャン!!」

アグニモンはデジヴァイスで、オオクワモンのデジコードをスキャンする。

オオクワモンのデジコードは、アグニモンのデジヴァイスに吸い込まれ、オオクワモンの身体は消滅していく。

その際、データの一部が集まり、デジタマとなって空へ上っていった。

ある程度空へ上るとゲートが開き、デジタマはその中へ吸い込まれていった。

「なるほど、デジタマはオファニモンたちが回収してくれるって事か」

アグニモンは、そう呟くとデジコードに包まれ拓也に戻る。

拓也が空を見上げると、フェイトが飛んできた。

「タクヤ!!」

そのまま飛び込んでくる。

「うおっととと・・・・」

拓也は飛び込んできたフェイトを受け止める。

「タクヤ・・・・」

フェイトは拓也の名を呟く。

フェイトは目に涙を滲ませ、身体を震わせていた。

恐らく安心したことで、今になって先程の恐怖が襲いかかって来たのだろう。

そんなフェイトを拓也は優しく撫でる。

「大丈夫だ。安心しろ。お前は俺が護ってやるから」

拓也はそう言葉をかける。

フェイトは、涙を滲ませた目で拓也を見る。

そんな不安そうなフェイトの顔を見て、

「・・・・・フェイト」

拓也はゆっくりと顔を近づける。

「・・・・・タクヤ」

フェイトは、目を瞑った。

そんなフェイトの不安を拭い去るように、拓也は優しく口付けを交わすのだった。






次回予告


機動六課に合流する拓也達。

そこで拓也達の目的を話そうとするが、

管理局の一佐を名乗る人物が、拓也達を犯罪者だと宣言した。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第六話 拓也達は犯罪者!? 拓也、怒りの鉄拳!!

今、未来への翼が進化する。





あとがき

疲れた~~~、けど第五話完成。

いや~、すんげー長くなった。

大筋はアニメの流れをベースにしましたが、オリジナル展開入れまくり。

その結果、ここまでの文章量に。

拓也達のミッドチルダへ来る理由と方法は余り気にしないでください。

とりあえず、キャロのフリード覚醒?は、まああんな感じで。

だって、普通に拓也戦わせたら、フリード覚醒しなくても楽勝ですし。

とりあえずご都合主義ですがご容赦を。

んで、早速デジモンの登場。

栄えある一番手はクワガーモン。

元々は、いきなりオオクワモンを出して、ピンチにさせる心算だったんですけど、こっちのほうが面白いかなと思ったんで。

とりあえず、Sランクにもなれば成熟期には勝てます。(クリサリモンは規格外だったってことで)

しかし、完全体に勝つのは難しいです。

3人ともリミッター解除してたら勝てる可能性がある程度です。

成熟期と完全体の能力差は10倍ぐらいありますからこんなもんでしょう。

拓也とフェイトの絆の強さがすんげー強いです。

そして、拓也の性格も(恋愛に関して)かなり変わってます。

いやはや、最終的にラブコメになりましたけどね。

さて、次回は、拓也無双見たい人が多かったので、無双させることにしました。

お楽しみに。

序に言えば、18禁もチマチマ書いていこうかな~って思ってます。

何時完成するかはわかりません。(完成しない可能性もあります)

全ては自分の気まぐれ次第(爆)

では、次も頑張ります。






[8056] 第六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2009/12/16 01:30
オファニモンの導きでミッドチルダにやってきた拓也達。

しかし・・・・・・




第六話 拓也達は犯罪者!? 拓也、怒りの鉄拳!!




オオクワモンを倒した拓也とフェイトが抱き合っていると、

「あ、あの~~~~・・・・・」

気まずそうになのはが声を掛けてくる。

それに気付いた拓也が顔を向ける。

「おう、なのはか。久しぶりだな」

そう言う拓也。

因みにフェイトの肩を抱いたままである。

「は、はい・・・・お久しぶりです、お兄さん」

「その様子だと、信也とはうまくいってるようだな」

拓也にそう言われ、なのはは顔を赤くする。

「それで、兄さんが何でミッドチルダにいるのさ?」

信也が、拓也のからかいをスルーして尋ねた。

『そや、それは私も聞きたいで』

突如モニターが開き、はやてもそう尋ねた。

「ああ・・・・・それなんだが・・・・・・」

『もしかして、それってデジタルワールドに関する事ですか?』

はやてが確認を取るように尋ねた。

「・・・・ああ」

拓也は頷く。

『・・・・・じゃあ、やっぱり2つ目の予言と何か関係が・・・・・』

はやてが何やら呟いている。

「・・・・・どうした?」

気になった拓也が尋ねる。

『あ、いえ。詳しい話は隊舎で聞きますんで、一先ず皆さんと機動六課に来てくれませんか?』

はやての言葉に拓也が頷き、

「ああ、俺もそのつもりだった。頼みたいこともあるしな」

そう言った。









デジタルワールド組が機動六課の部隊長室で、ミッドチルダに来た経緯を説明していた。

因みに、デジタルワールド組以外にこの場にいるのは、はやて、なのは、フェイト、信也、リィン、シグナム、ヴィータである。

「七大魔王・・・・・・」

はやてが呟く。

「そのタマゴがミッドチルダに持ち込まれたの?」

フェイトが尋ねた。

「ああ。オファニモンの説明では、ルーチェモンが逃亡したのはこのミッドチルダみたいなんだ。とは言え、俺もこの世界に来るまで解らなかったんだけどな」

拓也はそう言う。

「その七大魔王とやら、どの位の力か検討はつくのか?」

シグナムが尋ねる。

「ある程度は・・・・・俺達は10年前にルーチェモンと戦った事がある。その時のルーチェモンは、月を破壊した」

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

拓也の言葉に、デジタルワールド組以外が驚愕する。

「七大魔王は、全てがルーチェモンに迫る力の持ち主らしい」

拓也は続ける。

「その話が本当なら、もし七大魔王が全て蘇ったら、俺達には打つ手が無い。だから、何としても七大魔王が復活する前にルーチェモンを見つけ出さないといけないんだ。俺達がはやてに頼みたいのは、デジモンに関する情報の収集だ」

「それは、出来ないこともないんですけど・・・・いいんですか?デジタルワールドの事が、管理局に知られても」

「ああ。問題はデジタルワールドだけの事じゃない。全ての次元世界の危機なんだ。俺達の個人的な想いで問題を大きくしたくはないしな。まあ第一、よく考えてみたら、デジモン達を管理局がどうこう出来るわけないしな」

拓也はそう言った。

「それなら、その事も含めてクロノ提督に報告しときます」

「頼む」

と、その時、

「あのよう・・・・」

ヴィータが尋ねてきた。

「さっきちょっと気になったんだけど、七大魔王の名前の前についてる、憤怒とか怠惰とかって一体何のことだ?」

ヴィータがそう聞くが、拓也も意味が分からないために答えられない。

だが、

「傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲って言うのは、俺達の世界のとある宗教じゃ、七つの大罪って呼ばれてて、人間を罪に導く可能性があるっていう欲望や感情のことだよ」

純平が答えた。

「良く知ってるわね」

「流石純平さん、雑学王だね」

泉と友樹が呟く。

その時、

「今!七つの大罪って言いました!?」

はやてが、凄い勢いで立ち上がった。

それにビックリする一同。

「あ、ああ・・・・・」

純平が頷く。

「・・・・・七つの大罪・・・・・・七大魔王・・・・・もしかして・・・・・」

はやてがブツブツと呟き、

「あの・・・・・」

何か尋ねようとした時だった。

――コンコン

部隊長室のドアがノックされる。

「何や?・・・・どうぞ~!」

はやてが入室を許可する。

「失礼します」

グリフィスが入ってくる。

「グリフィス君、何かあったんか?」

はやてが尋ねた。

「八神部隊長、セイマ・ダヌカノータ一佐がお見えになってます」

「・・・・・何でダヌカノータ一佐が機動六課に来るんや?」

はやては首を傾げる。

「何でも、犯罪者を引き渡せと仰っているんですが・・・・・・」

「犯罪者?なんのことや?」

思い当たる事が無いはやては、何のことかと再び首をかしげた。

「まあ、とりあえず会ってみるわ」

はやては席を立った。




セイマ・ダヌカノータは、ロビーに数人の部下を引き連れ立っていた。

そこにはやてが現れる。

気になった拓也達も、少しはなれた所で様子を窺っていた。

はやてはセイマの傍に来ると、

「機動六課部隊長、八神 はやて二等陸佐です。本日のご用件は何でしょうか?」

はやては敬礼しながら尋ねた。

「用件も何も無い。直ちに犯罪者をこちらに引き渡したまえ」

セイマは唯それだけを言った。

「あの、お言葉ですがダヌカノータ一佐、犯罪者とは一体何のことでしょうか?」

はやては尋ねる。

「惚ける気か!今日、貴様たちが犯罪者を確保した事はわかっているんだぞ!」

セイマは怒鳴る。

「ダヌカノータ一佐。私達は、ワームホールから出てきた別世界の人物達を要保護対象として保護しましたが、犯罪者は確保しておりません」

はやてはそう答えた。

「まだ解らんのか!その保護した人物達が犯罪者だと言っているのだ!!」

「「「「はぁっ!?」」」」

少し遠くで見ていた拓也、泉、友樹、純平は思わず声を漏らした。

その声で、セイマが拓也達に気付く。

「何だ、いるではないか。おい、お前たち、あの犯罪者達を捕まえろ」

「「「「「はっ!」」」」」

5人の武装局員は、命令に従い拓也達の方へ駆けて行く。

その5人は拓也達を囲おうとするが、フェイト、なのは、信也、シグナム、ヴィータが庇うように前に出る。

セイマが拓也達に近付いてくる。

「お、お待ちくださいダヌカノータ一佐!何故彼らが犯罪者なのですか!?」

はやてがセイマに問いかける。

「何を言うか!これを見ろ!」

そう言って、セイマはモニターを開いた。

そこには、デジモンとなって戦う拓也達の姿。

ガジェットを次々と破壊し、最後にはボルグモンがフィールドデストロイヤーで、リニアレールを消滅させる映像が映っていた。

「これは明らかに質量兵器だ!しかもこんな強力なものを!そんな犯罪者達を野放しにして置けるものか!!」

「し、しかし彼らはこの世界の人間ではありません。全ては自己防衛による行動です!それをいきなり犯罪者扱いするのはどうかと・・・・・」

「黙れ!元犯罪者がっ!!」

セイマが叫ぶ。

「ッ!」

はやては声を漏らした。

その時、

――ピキッ

拓也が青筋を立てる。

「ダヌカノータ一佐!今のは明らかに失言です!」

シグナムが叫んだ。

だが、

「煩い!プログラム風情が!」

セイマの暴言は止まらない。

――ピキピキッ

拓也に青筋が増える。

それに気付いたヴィータが拓也を宥め始めた。

「お、落ち着けタクヤ。気持ちは嬉しいけどよ、あれ位の陰口はあたしら慣れてるから」

ヴィータがそう言って、拓也を落ち着けようとする。

拓也にとっては、大切な仲間があんな風に言われて平気でいられるわけが無い。

「ダヌカノータ一佐!今の発言は取り消してください!」

フェイトが叫んだ。

が、

「クローン如きがこの私に意見するなッ!!」

セイマはフェイトにも暴言を浴びせた。

「ッ!」

フェイトは僅かに声を漏らす。

その瞬間、

――ブチィッ!!

「「「「「「「「あ」」」」」」」」

その音を、なのは達は確かに聞いた。

確実に幻聴ではあろうが、拓也を良く知る人物達は確かに聞いた。

「・・・・・・おい、おっさん」

そう言いながら、拓也はセイマの肩に手をかける。

「ん?」

セイマは拓也の方に顔を向けようとしたが、

――バキャァ!!

「ぐはぁっ!?」

次の瞬間には顔を殴られ、吹っ飛ばされた。

セイマは床を転がる。

「き、貴様!?」

武装局員たちは、杖を拓也に向ける。

その様子をみて、はやては頭を抱えた。

「あちゃ~・・・・・・やってもうた・・・・・・(でも、ちょっとスッキリ)」

「・・・・・・・兄さんの前でフェイトにあんな事を言うなんて、なんて命知らず・・・・・・」

信也もそう呟く。

拓也は、周りの局員など気にもせずに、

「てめぇ・・・・・さっきから聞いていれば、ふざけた事をゴチャゴチャと!」

セイマに言い放つ。

「き、貴様・・・・・この私にこんな事をして唯で済むと・・・・・」

「知るか!」

セイマの言葉をぶった切る。

「な、何をしている貴様ら!早くこの犯罪者を・・・・」

「別に犯罪者でもかまわねえよ。だったら、てめえが犯罪者を捕まえるみたいに俺を叩きのめしてみろよ」

「な、何?」

「簡単に言えば賭け試合だ。てめえらが俺に勝ったら、逮捕でも何でも好きにしろよ。その代わり、俺が勝ったらフェイトたちに謝って、とっととどっかに消えろ!何、安心しろ。俺は魔導師でもあるから、ハンデとして、ちゃんと非殺傷で戦ってやるよ」

拓也は挑発するように言い放つ。

セイマは少し考えると、ニヤリと口元を歪め、

「・・・・いいだろう。この私を殴った事を後悔させてやる」

そう口にした。







訓練で使っている空間シュミレーターで作った廃棄都市の中で、拓也とセイマ及び5人の武装局員は対峙していた。

その様子は、フェイト、なのは、はやて、信也、リィン、シグナム、ヴィータ、泉、純平、友樹に加え、騒ぎを聞きつけた新人フォワード陣の4人と、シャマル、ザフィーラ、アインも見ていた。

「拓也さん・・・・・大丈夫かなぁ」

スバルが呟く。

「エリオ、あんたって拓也さんの実力知ってる?」

ティアナがエリオに尋ねる。

「いえ、拓也さんが魔導師という事は聞いてるんですけど、戦ってる所は一度も・・・・・・」

エリオはそう言った。

「ダヌカノータ一佐の魔導師ランクってAAA+ですよね?しかも、あの5人のランクはAA~AA+だった筈ですけど・・・・・」

キャロが言った。

と、その時、空の彼方から20人ほどの武装局員が飛んでくる。

「えっ?」

キャロが声を漏らした。

その武装局員は、セイマの近くに降り立つ。

「ダヌカノータ一佐!武装隊20名、集合しました!」

「うむ、ご苦労。それで、今回の緊急任務だが、アイツを叩きのめせ!」

セイマは拓也を指す。

「彼を・・・ですか?」

流石に隊長らしき人物は戸惑う。

隊員を集合させたと思ったら、たった一人を叩きのめせという命令をしたのだ。

無理も無い。

「かまわん!奴は犯罪者だ!情けなど無用!」

好き勝手に言うセイマ。

そんなセイマを見て、

「私用で一部隊動かすなんて、職権乱用にも程があるだろ?」

拓也は呆れたように呟いた。





そんな様子を見ていた新人4人は、

「卑怯だよ!」

スバルが叫んだ。

「流石にあれは無理があるわね」

ティアナが呟き、

「拓也さん・・・・・」

エリオは心配そうな顔で拓也を見る。

「し、信也さん!止めないんですか!?」

キャロが信也に呼びかける。

だが、信也は笑みを浮かべて、

「皆、兄さんを一体誰だと思ってるの?」

そう尋ねた。

「「「「え?」」」」

4人は声を漏らす。

「なんていったって、僕の兄さんなんだよ?」

信也は言った。






総勢26名に囲まれる拓也。

隊長らしき人物が拓也に声を掛ける。

「君にはすまないが、これも命令だ。悪く思わないでくれ」

それを聞いて、

「難儀だなあんたらも。あんな奴の部下だなんてな」

そう答えた。

((((((((((((((((((((わかってくれるか!))))))))))))))))))))

後から来た20名の心は1つになった。

しかし、拓也はこれといって困った顔はせず、

「それに、謝る必要はねえよ」

拓也はサラマンダーを取り出す。

そして、

「勝つのは俺だ!」

そう宣言した。

『Stand by, Ready. Set up.』

その瞬間、拓也は炎に包まれる。

そして、その炎の中から、アグニフォームを纏った拓也が姿を現した。

「それじゃ、いっくぜぇええええっ!!」

拓也は駆け出した。

その瞬間、武装隊から無数の魔力弾が放たれる。

拓也はそれを上に飛んで避けた。

そして、両腕に炎を纏わす。

「バーニング!サラマンダー!!」

拓也は、バーニングサラマンダーを火球にして放つのではなく、辺りを薙ぎ払うように放出するタイプで放った。

「「「「「うわぁあああっ!!」」」」

その炎に巻き込まれ、5人ほどが吹っ飛ぶ。

拓也は着地すると、左手の甲から炎を発する。

「ファイアダーツ!!」

その炎を、右手で手裏剣のように無数に飛ばす。

「ぎゃっ!?」

「ぐえっ!?」

「あじゃぁ!?」

その炎に当たり、3人がダウンする。

すると、1人が魔力弾を放ってきた。

だが、拓也は避けようとはせず、

「はあっ!」

右腕を裏拳を放つように振り、魔力弾を弾いた。

「なっ!?」

攻撃を放った局員は驚愕する。

「ぐはっ!?」

因みに、その弾いた魔力弾が別の武装局員に当たり、また1人がダウンする。

拓也は、魔力弾を弾かれて呆然となっていた局員の懐に入り込み、

「おらぁっ!」

「ぐぼっ!?」

ボディーブローで意識を刈り取る。

あっという間に10人が倒され、浮き足立っている武装局員の中心に拓也が飛び込み、炎に包まれながら回転を始める。

「ぎゃぁああっ!?」

「うそぉおおっ!?」

「おたすけぇっ!?」

拓也は炎の竜巻となり、その炎の竜巻に次々と局員が飲み込まれていく。

「サラマンダー・・・・・ブレイク!!」

その炎の竜巻に飲み込まれた10人に、拓也は回し蹴りを叩き込んだ。

次々に吹っ飛んでいく局員たち。

瞬く間に、応援でやってきた武装局員は全滅した。

「・・・・・・準備運動にはなったかな」

そんな事を拓也は言った。

まあ、B~Cランク前後の魔導師では、拓也相手では荷が重いだろう。




一方、その様子を見ていた新人4人はポカーンとしていた。

20人もの武装局員を、瞬く間に倒した拓也に驚愕している。

「た、拓也さん・・・・・・こんなに強かったんですね」

エリオは呟く。

「僕も兄さんに模擬戦で勝ったことは、一度も無いからね」

信也の言葉に、4人は驚愕する。

「ええっ!?信也さんって、S+ですよね!?それで一回も勝ったこと無いって・・・・・・」

スバルが信也の言葉に驚愕する。

「兄さんが本当に本気を出せばSS+は行くよ。まあ、今のフォームじゃAAAぐらいだけどね」

「ダ、SS+・・・・・・八神部隊長よりも上ですか!?」

ティアナが叫ぶ。

「うん。僕が知ってる中で、1対1で兄さんに勝てる可能性がある人は、1人しか思いつかないし」

信也はそう言う。

「あの、さっきから気になってたんですけど、拓也さん、何で魔法を使うときに魔法陣が現れないんですか?」

キャロが尋ねる。

「ああ。それは兄さんが属性特化型魔導師だからだよ」

その言葉に、

「ええっ!?属性特化型っていったら、レアスキルに並ぶかそれ以上の希少技能じゃないですか!?管理局でも2人しかいないって話ですよ!」

ティアナが驚愕しながら叫ぶ。

「そう。だから魔法陣が現れないの。本人の意思とは無関係に魔力を変換するからね」

信也がそう言った。




拓也は、残った6人に向かって、

「おら、どうした?さっさとかかって来いよ」

挑発するようにそう言った。

「おのれ・・・・だが、この5人は今までの奴らとは訳が違うぞ。この私の精鋭部隊なのだからな」

セイマはそう言う。

「はいはい。御託はいいからかかって来い」

そんな余裕の態度の拓也に、セイマは怒りを露にし、

「かかれぇえええええっ!!」

セイマの叫びと共に5人が飛び出し、拓也を囲う。

「我々を舐めると、如何いう事になるか、教えてぐぼぉあ!?」

拓也の目の前でペラペラと喋っていた相手に、話の途中で拓也がボディーブローを叩き込んで沈黙させる。

「どうでもいいけどよ、お前ら油断しすぎ」

残った4人に拓也はそう言った。

因みに、拓也は油断しているのではなく、いい意味での余裕である。

「なんだとっ!?」

1人が後ろからデバイスの槍で襲い掛かってくるが、拓也はその一撃を僅かな動きで避け、その槍を掴んだ。

そのまま引っ張り、流れるような動きで肘打ちを鳩尾に叩き込む。

「がはっ!?」

また1人が気絶する。

「こ、こいつ!」

1人が至近距離から魔力弾を放った。

だが、拓也はそれをしゃがんで避ける。

「なっ!?よ、避けた!?こんな至近距離でっ!」

拓也はそのまま全身のバネを使い、

「はあっ!」

アッパーをその局員に叩き込む。

その局員は綺麗な放物線を描いて地に落ちた。

その時、別の局員が剣型のデバイスで斬りかかって来た。

拓也はその一撃を白刃取りする。

「あら、よく見れば中々カッコいいじゃない」

その局員が口を開く。

その局員は女性で妖しい魅力を醸し出していた。

「どう?私のモノにならない?」

その女性局員は拓也を誘惑してきた。

「断る。俺にはフェイトがいれば十分だ」

即答でぶった切る拓也。

「フェイトって、あのクローンの女でしょ?あんな偽者の女なんか捨てて、私のモノになりなさいよ。本当の女を教えてあげるわ」

その言葉に、

「・・・・・・・・・・・お前みたいなオバサンとフェイトを比べるだけでもフェイトに失礼だ」

拓也はそう返した。

「なっ!?言ってくれるじゃないこのっ・・・・・・・」

「隙だらけ」

その女性局員が激昂した瞬間に拓也は後ろに回りこみ、首筋に手刀を落して気絶させた。





「す、凄い・・・・・っていうか、何でフェイトさん?」

スバルが疑問を口にする。

「あ、それは拓也さんがフェイトさんの婚約者だからです」

エリオが言った。

その瞬間、

「「「えええええええええっ!!??」」」

スバル、ティアナ、キャロが驚く。

「フェ、フェイトさんの恋人って拓也さんだったんですか!?」

キャロが驚きながら口にする。

「そ、そうだったんだ・・・・・・」





拓也は残った1人に顔を向ける。

「まだやるか?」

そう問いかけた。

「やめたいのは山々なんだけどよ~、悲しいことにあんな上司だからよ」

最後の1人は全くやる気が無く、セイマのことも快く思っていない。

そう言いながらも、両手にナックル型、足にも靴型のデバイスを展開させる。

「まあ、お手柔らかに頼むわ」

そう言いながらその局員が突っ込んでくる。

「くっ」

拓也はその拳を受け止めた。

(こいつ!かなりできる!)

拓也は、その一撃で只者で無い事を悟る。

その局員は、巧みな格闘術で拓也を攻撃してくる。

拓也はその攻撃を捌いていく。

「うおぅ!今のを防ぐか!」

その局員は、驚き半分、嬉しさ半分といった声を漏らす。

「っていうかお前、AAAランクはあるんじゃねえか?」

拓也はそう問いかける。

「買いかぶるなよ。俺はしがないAAランクさ」

「謙遜すんなよ。お前は強い」

そう言いながら、2人は戦い続ける。

いつの間にか、拓也もこの戦いを楽しんでいた。

だが、

「ッ!?」

拓也は戦っていた局員の腕を強引に掴み、後方に思いっきり投げ飛ばした。

「うおっ!?」

その局員が驚くが、その瞬間、

――ズドドドドドドドドドッ!

無数の魔力弾が拓也の周りに降り注いだ。

「なっ!?」

その局員は声を漏らす。

見れば、空中でセイマが杖を構えていた。

その顔は、歪んだ笑みを浮かべていた。

爆煙が晴れていく。

「・・・・・・・テメェ・・・・・・如何いうつもりだ!?」

拓也が叫ぶ。

拓也は、頭部から血を流していた。

「フン!貴様は犯罪者だからな。こちらの警告に従わなかったためだ!」

セイマは殺傷設定で放った理由を述べた。

「そうじゃねえ!テメエが殺傷設定使ったことに文句を言うつもりは無い!だが!今、お前は仲間ごと撃つ心算だっただろ!?」

拓也は叫んで問いかける。

「何を言っている?我々管理局員は犯罪者を捕まえるのが使命だ。その使命を果たすために命を賭けるのは当然だろう?それに、そいつは私の部下だ。私が如何扱おうと私の勝手だ」

その言葉に、再び拓也の怒りが湧き上がる。

「テメエこそ何言ってやがる!管理局の使命は民間人を守ることだろ!?犯罪者を捕まえるのはその手段の一つだろうが!第一、自分や仲間を守れない奴に、民間人を守ることが出来るわけねえだろ!!」

拓也は叫んだ。

「犯罪者が何をほざく!」

セイマは聞く耳を持たない。

「・・・・・・・・・・もういい」

拓也は呟く。

「テメエは潰す!」

拓也はセイマを睨み付けた。

その気迫に、セイマは一瞬怯むが、

「フ、フン!強がるのもいい加減にしろ。あれだけの魔力弾を受けたのだ。相当なダメージが入っているはずだぞ」

そう拓也に向かって言う。

「それが如何した!?」

だが、拓也はそう返す。

「今ならば投降する事を許してやろう。これ以上は命の保障は出来んぞ」

セイマは、脅しも含めてそう言うが、

「やってみろよ」

拓也は全く怯みもせずにそう言った。

「な、何!?」

その事にセイマは驚く。

今までの犯罪者は、殺傷設定をチラつかせれば、殆どは投降してきたのだ。

だが、拓也にはそんな脅しは通じない。

拓也は1歩踏み出す。

セイマは、無意識に空中で1歩分下がる。

しかし、セイマは気を取り直すと、

「し、知っているぞ!属性特化型は、自分が持つ属性の他には、基本的な魔法も使えない!ならば、飛行魔法なども使えるわけがあるまい!」

セイマはそう言うと、今までよりも高く飛び、杖を構える。

「こ、これでも降参しないか!?」

セイマはそう言うが、震えた声で言っても全く怖くは無い。

「確かに飛行魔法は使えないけどよ」

拓也はそう呟き、

『Form change.』

炎に包まれる。

「空を飛ぶ方法が魔法だけだと思ったら大間違いだ」

その言葉と共に炎が消え去り、

『Vritra form.』

オレンジ色の翼を持った、ヴリトラフォームへとバリアジャケットが形を変えた。

拓也は翼を羽ばたかせ、空へ飛び立つ。

「く、来るな・・・・」

セイマは完全に怯えている。

「来るなぁあああああっ!!」

その叫びと共に無数の魔力弾を放った。

その魔力弾を受け、爆発に飲み込まれる拓也。

だが、すぐに爆煙の中から拓也が飛び出す。

目の前に現れた拓也にセイマは呆然となった。

拓也は胸倉を掴むと、

「おらぁああああああっ!!」

かなりの勢いを付けて、セイマを地面に叩きつけた。

「がはっ!!」

更にそのまま持ち上げると、

「フレイム!ストーム!!」

拓也が炎に包まれ、そのままセイマを焼く。

「はぎゃぁああああああああああっ!!」

悲鳴を上げるセイマ。

炎が治まったときには、黒コゲになったセイマがいた。

拓也は手を離す。

「・・・・・・わ・・・・私が悪かった・・・・・・も、もう・・・・許して・・・・・・犯罪者と言った事も取り消す・・・・・・だから・・・・・・許して・・・・・・」

セイマはそう許しを請う。

拓也はアグニフォームに戻すと、

「そうだな・・・・・・まあ、俺を犯罪者と言った事は許してやる」

その言葉に、セイマは一瞬ホッとするが、

「けど、フェイトに言った暴言はもちろん、はやてやシグナムに言った暴言も許しはしない」

その言葉で、一気に絶望のどん底に叩き落されるセイマ。

拓也はボキボキと指の関節を鳴らしながら、セイマに近付く。

そして、ニンマリと笑顔を浮かべ、

「ひっ・・・・・ひぃいいいいいいいい!!!」

叫び声を上げるセイマに制裁を加え始めた。

――ドカッ バキッ ズカッ ドコッ ゴスッ ボカッ ボコボコ ズカズカ ゴンゴンゴン・・・・・・・・・

その後には、身体が半分地面に埋まって、顔の形状がわからないほどにボコボコにされたセイマが気絶していた。

すると拓也は、先程まで戦っていた局員に向き直る。

「如何する?続けるか?」

拓也はそう問う。

その局員は首を横に振り、

「いや、降参だ」

そう言った。










その後、すぐに負傷した局員たちは医務室に運び込まれ、セイマも包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態でベッドに寝かされていた。

因みに、医務室が一杯になったので、比較的軽傷の拓也はロビーで治療を受けている。

治療をしている人物はもちろんフェイトである。

そんな拓也にはやてが話しかける。

「やってくれたなぁ拓也さん・・・・・」

はやての言葉が重い。

「あははは・・・・・すまん、一気に頭に血が上って・・・・・・」

拓也は苦笑しながら謝る。

「一応、このことはクロノ提督に報告しとくけど、ある程度の罰は覚悟しといた方がええで」

「だよなぁ・・・・・・」

拓也はゲンナリする。

「でも、ま、個人的にはお礼を言っとくわ。おおきにな、拓也さん」

「こっちこそ、勝手なことして悪かったな」

そんな時、

「あ、あの・・・・」

スバルがおずおずと声を掛けてきた。

「如何したんや?スバル」

はやてが尋ねる。

「拓也さん・・・・・でしたよね?」

「ああ」

スバルの問いに拓也は頷く。

「私はスバル・ナカジマ二等陸士です。あの、失礼ですが、どこかでお会いした事ありませんか?」

スバルはそう質問する。

「スバル・ナカジマ?・・・・・・・スバル・・・・・・・・ナカジマ・・・・・・・・・・どっかで聞いたな?」

拓也は考える。

「ナカジマ・・・・・・・ナカジマ・・・・・・・・あ、もしかして、君の母さんの名前ってクイントだったりする?」

拓也は、何か思い出したようでスバルに確認を取る。

「は、はい、そうです」

スバルは頷く。

「そうか。君はあの時の女の子か」

拓也は思い出したように言った。

「タクヤ、スバルに会った事あるの?」

フェイトが尋ねる。

「ああ。っていうか、そん時にはフェイトも居ただろ」

「え?」

拓也の言葉に、フェイトは首を傾げる。

「ほれ、闇の書事件の後の、はやて達を見送った後の銀行で、犯罪者が立てこもってきただろ?」

「そういえば、そんな事もあったね」

拓也の言葉で、フェイトは頷く。

「そん時に、俺ともう1人女の子が人質にされただろ?」

「うん」

「その時の女の子だよ」

「あっ!」

フェイトも完全に思い出したらしい。

「スバル、あの時の女の子だったんだ」

そうスバルを見ながら呟く。

拓也は立ち上がり、

「大きくなったな、スバル」

そう言って、スバルの頭を撫でる。

「あ・・・・」

スバルの脳裏に、あの時の記憶が蘇る。

「あの時の・・・・・お兄ちゃん・・・・」

「おう」

拓也は笑顔で応える。

すると、

「タクヤ」

フェイトが声を掛けてきた。

「ん?」

拓也がフェイトに顔を向けると、

「浮気は駄目だからね」

そんな事を言ってきた。

ちょっと拗ねた様子のフェイトに拓也は微笑むと、

「そんなことしねーよ」

そう言って、フェイトの肩を抱く。

「うん・・・・」

少し頬を染めるフェイト。

「お~ふ~た~り~さ~~~~ん」

はやてが黒いオーラを纏いながら話しかけてきた。

スバルはそんなはやての様子にビビッてしまっている。

「目の前でいちゃつくのは、最近コーにぃに会えない私への当てつけでっか~~?」

「は、はやて、落ち着いて」

フェイトが必死ではやてを宥めようとしている。

そんな騒ぎを見ていたリィンは、

「これから、騒がしくなりそうです」

と笑顔でそう言った。








次回予告


フォワード陣の訓練に混ざる拓也。

そんなフォワード陣たちの魔法を羨ましそうに見る、泉、純平、友樹。

その時、彼らの前に現れる人物とは?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第七話 伝説のデバイスマイスター

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第六話完成。

微妙な出来だな・・・・・・・

とりあえず拓也無双やってみた。

まあ、自分がやりたかったことは、フェイトたちに暴言を吐く上司を、拓也にブッ飛ばしてもらいたかっただけなんです。

故に無双シーンは唯のおまけ。

ちょっとグダグダになってしまったかな。

オリキャラのセイマについては、名は体を現すってことで。

とりあえず、やっぱりどっかで見たような流れになっているので、盗作と呼ばれないことを祈ります。

盗作と言われれば削除しますが。

では、次も頑張ります。





[8056] 第七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/12 22:55

ムカつく上司をボコった拓也。

そして、



第七話 伝説のデバイスマイスター



「ほな、デジモンについて、詳しい話を聞きますか」

はやてが、落ち着きを取り戻してそう言った。

因みに、今は食堂である。

そこに、デジタルワールド組と、隊長陣を含めたフォワード陣が集まっている。

「え~っと・・・・・まずデジモンの基本的な強さのレベルは、進化の回数で決まる。例外もいるけどな」

拓也がそう言う。

「進化ですか?」

キャロが呟いた。

「そう。デジモンは、デジタマって言うタマゴから生まれるの。そこから進化した回数でおおよその強さが分かるわ」

泉がそう説明する。

「タマゴから孵った状態が幼年期前半。そこから1回進化して幼年期後半。幼年期の時は、戦う力は殆どないから、危険性ば殆ど無い。その辺にいる犬や猫と変わらないよ」

純平が言った。

「戦う強さを身に付けるのは、幼年期から一度進化した成長期から。成長期になると、必殺技で火の玉や電撃を放つようになる」

友樹が続けて、

「そこにいるフリードだっけ?その竜の強さが大体成長期レベルかな?」

拓也がフリードを見ながらそう言った。

全員の視線がフリードに集中し、フリードは一瞬たじろぐ。

「まあ、ある程度の魔導師なら、成長期は問題ない。問題なのは成熟期からだ」

モニターが開き、クワガーモンの姿が映る。

「成熟期になると、戦闘能力が格段に上がり、魔導師ランクで言えば、A+~AA+ぐらいになる」

「え?あの、お兄さん・・・・・」

拓也の言葉に、疑問を持ったなのはが手を上げる。

「ん?」

「私達、3人がかりで成熟期の相手をしたんですけど、リミッターかかってる状態では勝てなかったんですけど・・・・・・」

なのはの言葉に、拓也はああと頷く。

「デジモンの特性には、戦闘フィールドの属性に強く左右されるというものがある」

「戦闘フィールドの属性?」

信也が首を傾げる。

「お前たちがクワガーモンと戦った場所は何処だ?」

「えっと・・・・森の上空かな?」

フェイトが答える。

「そう、森・・・・・・いうなれば自然のフィールドだな。そして、クワガーモンは昆虫型デジモンだ。さて問題。昆虫は普通何処に住んでる?」

拓也の問いに、

「それはもちろん森や林の中ですけど・・・・・・」

ティアナが呟く。

「正解。つまり、昆虫型デジモンは、自然のフィールドと相性が良いという事になる。デジモンは、相性が良いフィールドだと、能力がアップするんだ」

「じゃあ、あのクワガーモンも、自然のフィールドにいたから、パワーアップしてたの?」

「ああ。デジモンは、相性の良いフィールドだと、2倍近い能力を発揮するからな」

「2倍も・・・・・・」

拓也の言葉に、フォワード陣の空気が重くなる。

そんな時、

「もちろん、相性の良いフィールドがあれば、相性の悪いフィールドもあるぜ!」

純平が重い空気を吹き飛ばすように大きな声で言った。

「例えば、火の属性を持ったデジモンなら、水のフィールドでは、その力を半分も発揮できないわ」

泉は例を挙げる。

「デジモンは、見た目どおりの属性が殆どだからね。相手の属性と戦うフィールドを良く見て、有利に戦う事ができれば成熟期でも倒せると思うよ」

友樹が言った。

その言葉で、幾分か空気が軽くなる。

だが、

「それで、問題は成熟期が更に進化した完全体なんだが・・・・・・」

拓也の言葉で、再び黙り込む一同。

「完全体の戦闘力は、成熟期の10倍以上。魔導師ランクで言えば、Sランクオーバーは確実。もしかしたらSSランクに届くかもしれない」

「Sランクオーバー・・・・・・」

新人フォワードメンバーは不安げになる。

「序に言っとくけど、俺達が進化した姿は、全て完全体を超える能力があるからな。まあ、属性がはっきりと分かれてるから、フィールドの相性が悪いと成熟期相手にも苦戦するけど」

拓也がそう捕捉する。

「それで追い討ちをかけるようで悪いんだけど、完全体の更に上、究極体も存在する」

「きゅ、究極体・・・・・・」

エリオが声を漏らす。

「究極体の能力は、完全体の更に10倍以上。はっきり言って、人間じゃ絶対に敵わん。アルカンシェルぐらい使わないと倒せないだろうな」

「ア、 アルカンシェルって言ったら、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を反応消滅させるって奴ですよね!?そんな物を使わないといけないんですか!?」

スバルが驚愕した声を上げた。

「ああ」

拓也が頷く。

「じゃあ、さっきも言っていた七大魔王もその究極体の部類に入るんですか?」

はやてが尋ねる。

「まあ、そうなんだが・・・・・一口に究極体と言っても、ピンからキリまでいてな・・・・・・・七大魔王は最上級クラスだろうな・・・・・・」

「ロイヤルナイツも、究極体を遥かに超える力の持ち主だったわね」

拓也の呟きに、泉が思い出して言った。

「ロイヤルナイツって?」

フェイトが尋ねる。

「ああ、10年前のデジタルワールドを冒険した時の敵で、ルーチェモンに忠誠を誓ってた2体の聖騎士型デジモンのことさ。デュナスモンとロードナイトモンは、並みの究極体を一蹴するほどの力の持ち主だった。初めてロイヤルナイツと戦った時は、手も足も出せずに完敗したっけ」

拓也は懐かしむように呟いた。

その言葉に驚愕する一同。

「ん?如何した?」

その反応を不思議に思い、尋ねる拓也。

「兄さん・・・・・負けたことあるの?」

信也が驚いたように呟く。

「当たり前だ。デジタルワールドじゃ、何回も敗北を味わってるよ。お前らは俺を無敵超人とでも思ってたのか?」

拓也は呆れたように言った。

「いや、ごめん・・・・・兄さんがまともに戦って負ける所なんて見たこと無かったから」

信也は謝る。

「まあ、デジタルワールドでの経験があったから、魔法関係で戦い始めてから不意打ちを除いて負けなしだけど・・・・・っと、話がずれたな」

拓也は話を戻す。

「でだ。そのロイヤルナイツですら並みの究極体を一蹴する力を持っている。けど、七大魔王の1体でもあるルーチェモンは、そのロイヤルナイツすら足元に及ばないほどの能力を持っていた。少なくとも、七大魔王はロイヤルナイツ以上の力は持っていると見て間違いないだろうな」

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

その言葉に、無言になる一同。

「って、そんなに暗くなるなよ!七大魔王さえ復活させなきゃ俺達が何とかするから!」

拓也は元気付けるように言った。

「そ、そうやな!この話はこのぐらいにしとこ!」

慌ててはやてが話を終わらせる。

「さて、気分転換を兼ねて、拓也さんたちに対する質問タイムといこうか!」

「はぁ!?」

はやての言葉に、思わず声を漏らす拓也。

すると、はやてが小声で話してくる。

(こんな暗い空気じゃ問題ありすぎや。少しでも士気を上げるために協力してや)

その言葉を聞いて、拓也はやれやれといった感じで、

「まあ、答えられる質問なら答えるぞ」

そう言った。

「あ、あの・・・・」

キャロがおずおずと手を上げた。

「はい!キャロ!」

はやてがキャロを指差す。

「あの・・・・拓也さんはフェイトさんの恋人だって聞きましたけど、本当ですか?」

「キャ、キャロ!?」

キャロの思いがけない質問に、フェイトは顔を赤くする。

(ナイス質問や、キャロ)

と、はやては心の中でサムズアップしていたりする。

その質問に拓也は、

「ああ。恋人っつーか、婚約者だな」

肯定して頷く。

フェイトは顔を赤くして俯いてしまっている。

「そういえば、君はキャロだっけ?エリオと一緒でフェイトが保護責任者の」

「は、はいそうです」

拓也の言葉に、キャロは頷く。

それを見ると、拓也は笑みを浮かべ、

「だったら、俺の事を『お父さん』とでも呼んでみるか?」

そんな事を言った。

「え?えぇええええ!?」

キャロは突然の事に慌てふためく。

「いや~、エリオにもそう呼んでいいって言ってるんだけど、なかなか呼んでくれなくて」

その言葉にエリオは顔を赤くして、

「そ、それはその・・・・・なんか恥ずかしいですし・・・・・・」

そう呟く。

「え、えと・・・・・・その・・・・・・」

キャロは顔を赤くして言葉にできない。

その様子を見ると、

「まあ、無理にとは言わないよ。けど、そう呼びたくなったら、俺はいつでも大歓迎だぞ」

「は、はい・・・・・」

拓也の言葉に、キャロは顔を赤くしたまま頷いた。

はやては、今までの一連の流れで、重くなっていた空気が軽くなっていることに気付く。

(ありがとうございます。拓也さん)

はやては心の中でお礼を言うと、

「他にはあらへんか?」

そう尋ねる。

「は~い!」

と、元気よく手を上げたのはリィン。

「はい、リィン」

リィンを指名するはやて。

「はい!ご結婚は何時ですか!?」

「ブッ!?」

思いがけないリィンの質問に、流石に拓也も噴出した。

「リ、リィン!」

フェイトも顔を真っ赤にして叫ぶ。

「婚約者ってことは、お2人はご結婚を前提にお付き合いしてるわけですよね?」

更にリィンが問う。

「それは・・・・・そうだけど・・・・・・」

拓也は頬を染めながら肯定する。

因みに、周りのメンバーも興味津々といった雰囲気である。

そんな雰囲気に拓也は折れ、

「まあ、俺の考えでは、まずは大学を卒業して、ちゃんと職について、収入が安定した所で改めてプロポーズするつもりだよ」

半ばヤケになって告白した。

周りからは「おお~」と、どよめきが起こる。

「あうう~」

フェイトは真っ赤になって沈黙している。

「そうですか。是非式には呼んで下さいね!」

リィンはそう笑顔で言う。

「当然俺たちもな」

純平がそう名乗りを上げる。

「当然よね」

「そうだよね、拓也さん」

泉と友樹もそう言った。

「お、お前ら・・・・・からかうな!」

「「「「「「「あはははは~~~!!」」」」」」」」

食堂は、笑いに包まれた。




――その夜。

「で、な~んで俺は此処にいるんだ?俺にあてがわれた部屋は信也と同室のはずなんだが・・・・・・」

「あはは・・・・・・」

拓也の言葉に、フェイトは乾いた笑いを漏らす。

因みに、今いる部屋は本来なら、なのはとフェイトにあてがわれた部屋である。

「その・・・・・・最近なのはは夜になると・・・・・・・その・・・・・シンヤの所に・・・・・・」

フェイトは顔を赤くしながら呟く。

「あ~~・・・・・ストップ。大体分かった。部屋決めの時にはやての言っていた「表向きは」ってそういう意味か・・・・・・・まあ、気を利かせてもらったってことなのか・・・・・・」

拓也は呆れた口調で呟いた。

「タクヤは・・・・・私と一緒じゃ・・・・嫌?」

フェイトが、若干不安そうな雰囲気で尋ねた。

拓也は頬を掻くと、フェイトを抱き寄せ、

「そんなわけ・・・・・無いだろ・・・・・」

そう微笑む。

「・・・・・うん」

フェイトも頬を染めて頷く。

そして2人はゆっくりと唇を合わせた。

少しして離れると、

「タクヤ・・・・・」

「ん?」

「最近、寂しかったんだからね・・・・・」

「そうか・・・・・」

「その分、しっかりと愛してね」

フェイトは、頬を染めながら微笑む。

「ああ・・・・」

拓也は頷き、

「あっ・・・・・」

フェイトをベッドに優しく押し倒した。












――翌日。

フォワードメンバーは個人別の訓練に入っていた。

シュミレーターの設定は森の中である。

その中で、

「おら!いっくぞぉおおおおおおおっ!!」

ヴィータがスバルに向かってグラーフアイゼンを叩き付ける。

「マッハキャリバー!」

スバルがマッハキャリバーに呼びかけると、

『Protection.』

リボルバーナックルから障壁が張られる。

「でやぁああああああっ!!」

グラーフアイゼンが障壁に打ち込まれる。

「くっ・・・・ううっ・・・・・」

スバルはじりじりと押されていく。

「でぇりゃぁあああああああっ!!」

ヴィータが再び振り上げ、もう一度叩き付けると、スバルは勢いに耐え切れず、立ったまま吹き飛ばされ、

「うわぁあああああああああああっ・・・・・・くうっ!」

木に叩き付けられて止まった。

だが、障壁はしっかりと張られている。

「ふむ、やっぱりバリアの強度自体はそんなに悪くねえな」

ヴィータはそう判断する。

「あは・・・・・ありがとうございます」

スバルはそう言うと、ヴィータに近付いていく。

「私やお前のポジション、フロントアタッカーはな、敵陣に単身で乗り込んだり、最前線で防衛ラインを守ったりが主な仕事なんだ。防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間を長く取れるし、サポート陣にも頼らねえで済む。って、これはなのはにも教わったな?」

「はい!ヴィータ副隊長!」

「受け止めるバリア系。弾いて逸らすシールド系。身に纏って自分を守るフィールド系」

ヴィータはそれぞれを実演してみせる。

「この3種を使いこなしつつ、ぽんぽん吹っ飛ばされないよう、下半身の踏ん張りと、マッハキャリバーの使いこなしを身に付けろ」

「頑張ります!」

『学習します』

スバルとマッハキャリバーがそう返事をすると、

「防御ごと潰す打撃は、私の専門分野だからな」

グラーフアイゼンを突きつけられ、スバルは、うっとなる。

「グラーフアイゼンにブッ叩かれたくなかったら、しっかり守れよ」

「はい!」

そう返事をしたその瞬間、

――ドゴォオオオオン

2人の近くに何かが落下してきた。

それは、

「ッ~~~!」

アルフォースモードを発動させた信也であった。

更に、

「はぁああああああああああっ!!」

アルダフォームの拓也が、上空から龍魂剣を振り上げ、信也に向かって斬りかかる。

「くっ、ブレイブハート!」

『Tensegrity Shield.』

信也はテンセグレートシールドを張り、その龍魂剣の一撃を受け止める。

龍魂剣とテンセグレートシールドのぶつかり合いで、衝撃が辺りを襲う。

「うひゃぁああああっ!」

スバルは情けない声を上げた。

やがて、拓也はシールドが敗れないことを悟ると、一旦飛び退く。

そして、2人は激突を繰り返しながらその場を離れていった。

「・・・・・・・」

一瞬の出来事に呆けるスバル。

「まあ、今シンヤが張ったシールドが当面の目標だな」

ヴィータの言葉に、

「が、頑張ります・・・・・」

スバルはやや自信なさげに返事をした。






別の場所では、フェイトがエリオとキャロに指導をしていた。

「エリオとキャロは、スバルやヴィータみたいに頑丈じゃないから、反応と回避がまず最重要。例えば・・・・・・」

フェイトは、訓練用のスフィアに視線を向けると、2つのスフィアからゆっくとしたスピードで攻撃が来る。

フェイトはそれを、分かりやすい動きで避ける。

「こうやって、こんな風に」

その様子を、エリオとキャロは真剣に見る。

「まずは動き回って狙わせない」

フェイトは言葉通りに動き回る。

スフィアは狙いを付けられない。

「攻撃が当たる位置に・・・・・」

フェイトは障害物が無い場所で一度立ち止まる。

すると、当然のようにスフィアは攻撃を仕掛ける。

「長居しない」

そう言うと、フェイトはすぐにその場を離脱する。

「ね?」

「「はい!」」

フェイトの言葉に、2人は返事を返す。

「これを、低速で確実に出来るようになったら・・・・・」

フェイトは再び駆け出す。

「スピードを上げていく!」

スフィアから、先程とは比べ物にならないほどの弾速で攻撃が放たれる。

フェイトはそれを見事に避けていく。

しかし、無数のスフィアに囲まれ、一斉砲撃によって爆煙に包まれる。

「「ああっ!」」

思わず2人は声を上げるが、

「こんな感じにね」

後ろから聞こえたその声に2人が振り向くと、そこにはフェイトがいた。

2人はもう一度攻撃地点に目を向けると、攻撃地点から、大きく回って2人の後ろまで続く、抉れた地面の軌跡があった。

「す、すご・・・・」

エリオが思わず声を漏らした。

「今のも、ゆっくりやれば誰でも出来るような基礎アクションを早回しにしてるだけなんだよ」

「「は、はい・・・・・」」

「スピードが上がれば上がるほど、勘やセンスに頼って動くのは危ないの。ガードウイングのエリオは、どの位置からでも攻撃やサポートが出来るように。フルバックのキャロは、素早く動いて仲間の支援をしてあげられるように。確実で、有効な回避アクションの基礎。しっかり覚えていこ」

「「はい!」」

「キュクルー」

フェイトの言葉に2人+1匹は元気良く返事をした。

その瞬間、

――ガキィイイイイイイイイン

金属音が響き渡る。

その音に3人が顔を向ければ、空中で拓也と信也が剣を合わせていた。

「はぁああああああっ!」

「このぉおおおおおっ!」

鍔迫り合いをする2人。

だが、

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

拓也が力ずくで剣を振りぬき、信也を吹き飛ばす。

「うわっ!」

信也はバランスを崩し、体勢が悪くなりながら地上に着地する。

その隙を見逃す拓也ではない。

「ブラフマストラ!!」

放たれる無数の火球。

それを信也は、

「当たるもんか!」

猛スピードのステップで避ける。

しかし、次の瞬間、

「ブラフマシル!!」

特大の豪火球が信也に襲い掛かる。

爆発に飲まれる信也。

「信也さん!」

エリオは思わず叫ぶ。

「ッ!」

だが、フェイトは拓也のいる方を見上げた。

拓也は龍魂剣を頭上に構える。

すると、

――ガキィイイイン

青い刃を受け止めた。

信也は、猛スピードで拓也の後ろに回りこみ、攻撃を加えていた。

「今のをかわすとはな」

「あれでやられてちゃ、兄さんに勝つのは夢のまた夢だしね」

「へっ」

再び2人は斬り合いながらその場を離れた。

「「ああ・・・・・・・」」

呆けているエリオとキャロ。

「2人とも、随分驚いてるようだけど、今のシンヤの動きも、単純なアクションを早回しにしてるだけだからね」

「今のも・・・・・ですか・・・・・」

「凄いです・・・・・」

2人は呆然と呟いた。







また別の場所では、なのはがティアナに訓練をしていた。

なのはの操る魔力弾を、ティアナが撃ち落していく。

「うん、いいよティアナ。その調子」

「はい!」

「ティアナみたいな精密射撃型は、いちいち避けたり受けたりしてたんじゃ、仕事が出来ないからね」

なのはは、そういいながら手元に2発の魔力弾を寄せる。

それに気付いたティアナは、

「バレット!レフトV!ライトRF!」

『All right』

クロスミラージュに指示して弾の種類を変更する。

だが、ティアナの後方より3発の魔力弾が襲い掛かる。

それにギリギリで気付いたティアナは転がって避ける。

「ほら!そうやって動いちゃうと後が続かない!」

なのははティアナを叱りながら、魔力弾を放つ。

ティアナは体勢を立て直すと、なのはが放った魔力弾の種類を見極め、それに対応した弾丸で撃ち落す。

「そう!それ!足は止めて、視野を広く!射撃型の真髄は・・・・・」

「あらゆる相手に、正確な弾丸をセレクトして命中させる!判断速度と命中精度!」

なのはの言葉を続けて、ティアナが答える。

「チームの中央に立って、誰よりも早く中長距離を制する。それが、私やティアナのポジション、センターガードの役目だよ」

「はい!」

その上空では、

「ブラフマストラ!!」

拓也が無数の火球を放つ。

それに対し、

「アルフォースセイバー!!」

信也は青き斬撃を放つ。

青き斬撃は火球を次々と切り裂き、拓也に向かって飛ぶ。

だが、

「はぁあああっ!!」

拓也の龍魂剣の一振りで減衰したアルフォースセイバーはかき消される。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

2人は息を吐く。

「やっぱり、兄さんは強いや・・・・・・」

信也は呟く。

何処となく嬉しそうな雰囲気である。

(信也の奴・・・・・また腕を上げてやがる・・・・・・このままじゃ抜かされるのも遠くないかもな・・・・・・けど・・・・・・・)

拓也は心の中でそう呟くと、再び龍魂剣を構える。

信也もアルフォースセイバーを構えて、再び激突した。






その訓練の様子を、モニターで見ている人物達がいた。

その人物は、シグナムとヴァイス。

そして、泉、友樹、純平であった。

「あ~あ・・・・・魔法かぁ・・・・・」

泉が羨ましそうな声を上げた。

「やっぱり泉ちゃんも魔法って憧れるの?」

純平がそう尋ねる。

「そりゃあね・・・・昔は魔法少女とか憧れてたわよ」

泉はそう答える。

「確かに、魔法とかって憧れる時期があるよね」

友樹もそう言う。

「けどさぁ、拓也が魔法使えるんなら、俺たちも使えないのかな?」

純平がそう呟く。

「そう言えば、輝二さんと輝一さんも魔法が使えたよね」

友樹も思い出したように言った。

その時、

「魔法を使うためには、リンカーコアと呼ばれる器官が必要になる。こればかりは先天性の問題だからな。地球ではリンカーコアを持つ者は稀だ」

シグナムがそう言う。

「そうなんですか・・・・・」

泉がガッカリしたように肩を落した。

「まあ、それでも可能性はゼロじゃねえから、シャマル先生に頼んで検査してもらったら如何だ?」

ヴァイスがそう言う。

「そうだな、検査ぐらいなら私から言えばシャマルも引き受けてくれるだろう。如何する?」

シグナムが泉達に尋ねる。

「是非!」

「俺も興味有るかな」

「僕もお願いします」

3人は嬉しそうに頼んだ。





――昼食時。

「ふ~ん、お前らリンカーコアの検査を頼んだのか」

泉、友樹、純平の3人の話を聞き、拓也が呟く。

因みに、拓也と信也の模擬戦は、僅差で拓也の勝利である。

「それで、リンカーコアはあったのか?」

拓也がそう尋ねると、

「まだ分からないわ。今は検査の結果待ちなの」

「そうか・・・・・」

暫くすると、シャマルがシャーリーを伴って複雑そうな表情でやってきた。

シャマルは、先ずはやてに近付き、小声で結果を報告する。

それで、はやては驚いた表情を見せる。

その後、はやてはシャマルとシャーリーと一緒に拓也達がいるテーブルに来た。

「ほな、先ずは結果から伝えさせてもらいます。検査の結果から言って、3人ともリンカーコアはありました」

はやての言葉に、嬉しそうな表情を浮かべる3人。

「せやけど・・・・・そのリンカーコアが3人とも特殊で・・・・・・」

はやては言いよどむ。

「もしかして、3人とも属性特化型か?」

気付いた拓也が聞いた。

「驚く事にその通りです」

はやてはそう言った。

属性特化型は非常に稀なのだ。

それが、3人揃って属性特化型なので、信じられないのも無理は無い。

「非常に言い難い事なんですけど・・・・・このままやと魔法は使えません」

はやてはそう言った。

「何で!?」

泉が尋ねる。

「3人は拓也さんと一緒で、属性特化型と呼ばれる魔導師です」

「属性特化型?」

「はい、属性特化型とは、その魔導師自身がもつ属性以外の魔法がからっきし使えないんです。その代わり、その属性による魔法は非常に強力です」

「でも、なんで魔法が使えないの?」

友樹が尋ねる。

「魔法を使う際には、デバイスと呼ばれる、魔法を補助する機能を持った道具が必要になります。熟練者になれば、デバイスが無くても魔法を使うことは出来ますが、初心者なら、デバイスが無いと魔法の発動は難しいんです。普通の魔導師なら、管理局で使っているデバイスで事足りるんですけど、属性特化型は、普通のデバイスは使えないんです」

「え?じゃあ、何で拓也は魔法が使えるの?」

「拓也さんのデバイスは、属性特化型専用のデバイスで、スピリットデバイスと呼ばれるものです。属性特化型魔法を使うには、自身の属性に合ったスピリットデバイスを使う必要があるんです」

「じゃあ、そのスピリットデバイスって言う物を使えばいいんじゃないのか?」

純平が尋ねる。

その問いには、シャーリーが答えた。

「それなんですけど、現在には、スピリットデバイスの造り方が殆ど伝わっていないんです。私達デバイスマイスターの資格を取るときも、スピリットデバイスについては殆ど触れません」

シャーリーは申し訳なさそうに答えた。

「ああ!そんな顔しないでくださいよ!そりゃ魔法がつかえたらな~って思ってましたけど、使えないなら使えないでしょうがないですよ」

泉が慌ててそう言った。

「すみません」

シャーリーがもう一度謝る。

「そういえば、拓也さんは何処でスピリットデバイスを手に入れたの?」

友樹が話を変えるようにそう言った。

「俺か?俺の場合は、露天商で買ったアクセサリーが偶々デバイスだったからな・・・・・誰が作ったかは知らないぞ」

拓也はそう言う。

「まあ、魔法を使えないのは残念だけど、しょうがねえよな!」

純平は大きな声でそう言った。




フォワード陣が午後の訓練に入るため、付いて来た拓也達。

そして、訓練場の前に何故かある露天商。

その光景に唖然となる一同。

「あ、あの~・・・・・」

なのはがその露天商に声をかける。

「ここは管理局の私有地なので、そのように無断で店を出されると困るのですが・・・・」

しかし、その店主である老人は、

「心配せんでもええよ。此処に来たのはワシの作ったデバイスを必要としておるだろう者達に渡すためじゃ」

そんな事を言った。

言っている事の意味が分からないなのはは、如何したモノかと考えていると、

『我が創造主』

拓也のサラマンダーが声を上げた。

「何!?」

拓也は思わずサラマンダーを取り出して聞き返す。

「おお、炎の子か。久しぶりじゃな。良き主には出会えたか?」

『うむ。最高の主だ。それから今の我はサラマンダーという名を貰っている』

「サラマンダー・・・・・火の精霊を意味する言葉じゃな。うむ、良き名じゃ」

何故か語り合うサラマンダーと老人。

「おい、サラマンダー。その爺さんが創造主ってホントか?」

『うむ、相違ない』

「・・・・・・ああ!思い出した!爺さん、サラマンダーを売ってた露天商か!」

拓也が思い出したように声を上げた。

「ホホホ・・・・・そういうお主はあの時の少年じゃな。相変わらず真っ直ぐな目をしておる」

その老人は笑ってそう言う。

「その爺さんが何でこんな所にいるんだよ?」

拓也がそう言うと、

「先程も言ったじゃろ。ワシの作ったデバイスを必要としている者に渡すためじゃ」

「何でそんなことが分かるんだよ?」

「ワシにはわかるんじゃよ。時代が変わるために必要なデバイスを何時、何処で渡せばよいかがな。それがワシのレアスキル『運命の創造主(デスティニーマイスター)』じゃ。お主にサラマンダーを託したのも、その能力の導きじゃよ」

「そうだったのか・・・・・・」

「ワシが今回作ったのはこの3つじゃ」

そう言って、その老人が取り出したのは、ピンク、水色、濃い青の3つの宝石。

すると、その3つは淡い輝きを放つ。

「ホッホッホ・・・・・必要としている者が近くに居るらしいな」

その老人はそう言う。

「この3つって、もしかしてスピリットデバイスか?」

「その通りじゃ」

拓也の言葉にその老人は頷く。

すると拓也は、

「泉、友樹、純平」

3人を呼ぶ。

3人は前に出てくると、

「如何したんだ拓也?」

純平がそう聞いてくる。

「この宝石を見て、何か感じないか?」

拓也は、3人にスピリットデバイスを見せる。

すると、3人はそれぞれのデバイスに釘付けになった。

「「「あ」」」

すると、それぞれのデバイスが勝手に浮き上がり、ピンクのデバイスが泉の元に。

水色のデバイスが友樹の元に。

濃い青のデバイスが純平の元に飛んできた。

3人は、それぞれを手に取る。

「ホッホッホ、お主達が選ばれたようじゃな。後は名をつけてやりなさい。そうすれば、それはお主達だけのデバイスとなる」

すると、その老人はいつの間にか店をたたんでおり、立ち去ろうとする。

「あ、爺さん!」

拓也は一度呼び止めた。

その老人は振り向く。

「なんじゃ?」

「俺は神原 拓也、爺さんは?」

「ホッホッホ、ワシの名はゲンナイじゃ。ではな」

そう言うと、その老人、ゲンナイは立ち去った。

その時、

「ごめんなさ~い!遅れました!」

シャーリーが走ってくる。

「あれ?皆さん如何されたんですか?」

シャーリーは、皆の様子に首を傾げる。

「あ、うん。今、ゲンナイって言う人が来て、泉さん、友樹さん、純平さんにスピリットデバイスを渡していったんだ」

なのはがそう言うと、

「ゲンナイ!?ゲンナイって言いましたかなのはさん!?」

シャーリーは突如として叫ぶ。

「う、うん、そうだけど・・・・・知ってるの?シャーリー」

「知ってるも何も、ゲンナイって言ったら伝説のデバイスマイスターと呼ばれる人物で、あの伝説の三提督のデバイスを作ったのもその人物という話ですよ!」

シャーリーは、興奮した様子で捲くし立てる。

「あのお爺さん、そんなに凄い人だったんだ・・・・・」

「人は見かけによらないって、本当ね・・・・・」

スバルと、ティアナが驚いたように呟く。

そんな中、主に出会えたことを喜ぶように3つのデバイスは、3人の手の中で輝くのだった。









次回予告


デバイスを手に入れた泉、友樹、純平。

拓也の案で、腕試しをするために、フォワード陣と模擬戦をすることになる。

その結果は!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第八話 激突!デジタル組VSフォワード陣!

今、未来への翼が進化する。





オリキャラ



ゲンナイ

とりあえず無印編から出ていた露天商。

外見はデジアド無印のゲンナイさんそのもの。

ただし別人。

此処まで話が続くとは思わず、特に考えてなかった露天商の正体を即興で立てた設定。





あとがき

第七話完成。

出来はイマイチ。

最初と最後がかなりグダグダ。

やばいです。

こっちもスランプにはまり掛けてるかも・・・・・・

デジモンの強さは、多少下方修正しました。

クワガーモンたちの強さは、フィールドの恩恵ってことで。

次回の模擬戦ですけど・・・・・どっちを勝たせようかな~~?

ともかく、次も頑張ります。



























































――ピコン

メールが一件届いています。



【18禁が完成してしまいました。投稿しますか?しませんか?   Yes.  No.】


ファイナルアンサー?




[8056] 第八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/20 14:42
ゲンナイという人物からスピリットデバイスを受け取った3人。

そして・・・・・・



第八話 激突!デジタル組VSフォワード陣!



スピリットデバイスを手に入れた泉、友樹、純平は、魔法を使えるという事でウキウキしていた。

「私はスピリットデバイスの事については殆ど分からないから、魔法を教えるのはお兄さんに任せていいですか?」

なのはが、拓也にそう言ってきた。

「そう言われてもな・・・・・・・」

拓也は悩む。

拓也は頭で理解しているわけではなく、デジモンの時と同じ感覚で魔法を使用しているため、口ではなんとも言い表せなかった。

それでも拓也は考える。

「・・・・・・・やっぱこれしかねえか」

拓也は何か思いついたらしく、なのはに向き直る。

「なのは。信也を除いたフォワードの新人達と、この3人で模擬戦をやらせてくれ」

その言葉に、なのはは驚く。

「ええっ!?いきなりですか!?」

そう叫ぶなのは。

「まあ、俺たちのやり方は習うより慣れろって感じだからな。デジタルワールドの冒険の時もそうだったし」

そう呟く拓也。

「そういえばそうよね」

「デジタルワールドの時は命懸けだったしな」

拓也の言葉に、泉と純平が同意する。

「そういうわけだ。頼む」

「わ、わかりました・・・・・」

拓也の言葉に、驚きつつもなのはは頷いた。





シュミレーターが展開され、廃棄都市街が現れる。

その中で、泉、友樹、純平とスバル、ティアナ、エリオ、キャロが向かい合っていた。

『じゃあ皆、準備はいい?』

「「「「はい!」」」」

なのはの言葉にフォワード陣が返事をする。

『ついでに言っとくと、手加減なんかしなくていいからな』

拓也がそう言うと、

「い、いいんですか?」

ティアナがちょっと困惑気味に声を漏らす。

『ああ。それに、魔法初心者だからって舐めてると、足元すくわれるぞ。ブランクがあるとはいえ、実戦経験はお前らよりも格段に上なんだからな』

その言葉に、ハッとするフォワード陣。

すると今度は、デジタル組の方に通信を繋げる。

『じゃあお前らは、自分のデバイスに名前を付けてやれ。そうすれば、バリアジャケットが展開されるから。バリアジャケットは自分のイメージで決まるけど、大体は決まってるよな?』

「ええ!」

「おう!」

「もちろん!」

3人が元気良く返事をする。

『それじゃ、名前を呼んでみろ』

拓也の言葉に3人はそれぞれのデバイスを構える。

泉がピンクのデバイスを掲げ、

「風を運んで、シルフィード!!」

『Yes,Mam. Stand by, Ready. Set up.』

ピンクの宝石が輝く。

泉が風に包まれ、バリアジャケットを纏っていく。

薄いピンク色のタイツのようなインナーに手、足、胸、腰に薄い紫の軽鎧が装着される。

背中には蝶のような翼。

まるでフェアリモンのような姿。

『Fairy form.』




友樹が水色の宝石を掲げる。

「勇気を固めて。セルシウス!!」

『OK. My friend. Stand by, Ready. Set up.』

友樹が氷に包まれる。

そして、その氷が砕けたとき、白のインナーに緑の鎧を足と胸部に纏い、肩にも装甲を付け、顔には緑のフェイスガード。

背中にはミサイルランチャーのような物を背負った友樹の姿があった。

『Chakku form.』




純平が濃い青の宝石を握り締める。

「轟け!ヴォルト!!」

『Yes,My commander. Stand by, Ready. Set up.』

純平が雷に包まれる。

全身を濃い青と黄色の装甲で包み、頭にも小さな角の突いたフェイスガードを装備している。

3人の中で一番パワーのありそうな姿となった。

『Blitz form.』





3人が自分のバリアジャケットの姿を確認する。

「やっぱり2人ともデジモンの姿を元にしたのね」

泉がそう言う。

「そりゃあな。一緒に戦ってきた一番馴染みのある姿なんだ。当然さ」

純平が答えた。

「同じく」

友樹も同意する。

「そうね」

泉が微笑み、

「こっちは準備OKよ」

準備完了を知らせる。

『それじゃあ、始めようか』

なのはがそう言い、

『レディー・・・・・・・』

その言葉でデジタル組とフォワード陣は構える。

『ゴー!!』

「行くわよ!」

「おう!」

「わかった!」

開始と共に泉、純平、友樹は相手に向かって突っ込む。

「スバル!あんたは一番パワーがありそうな純平さんを相手して!」

「うん!」

「エリオは泉さんを!昨日のデジモンの戦いを見てたけど、近接戦闘も中々の物よ、注意して!」

「わかりました!」

「私は友樹さんを!キャロは私たち3人のバックアップに専念して」

「了解です!」

ティアナがそれぞれに指示を出し、泉達を迎え撃つ。

「いっくぞぉおおおおおおおっ!!」

スバルのマッハキャリバーのローラーが高速回転し、猛スピードで走り出す。

純平に向かって一直線。

スバルはリボルバーナックルを装備した右拳を振り上げる。

「おりゃぁああああああああああっ!!」

純平に向かって殴りかかった。

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

純平も負けじと拳を繰り出す。

2つの拳がぶつかり合う。

衝撃を撒き散らしながら、2人は負けじと力を込める。

「うぉおおおおおおっ!!」

「はぁああああああっ!!」

やがてお互いに弾かれ、間合いが開く。

「パワーは互角!」

スバルがそう判断する。

すると、純平が右拳を高く掲げる。

その右拳に電撃が走る。

「ミョルニル!サンダー!!」

その電撃を纏った拳を地面に叩きつけた。

電撃が地面を走り、スバルに襲い掛かる。

「やばっ!マッハキャリバー!ウイングロード!」

『OK.Buddy』

スバルがジャンプすると、水色の魔力光の道が現れ、スバルはその道に乗り、電撃を回避する。

「あっぶな~~・・・・・あんな魔法もあるんだ」

スバルが技をかわしてホッとしたのも束の間、

「ライトニング!ボンバー!!」

純平が全身に電撃を纏って突っ込んできた。

「マッハキャリバー!!」

スバルは叫んで右手を突き出す。

『Protection.』

リボルバーナックルから障壁が張られた。

その障壁に純平が突っ込み、魔力の衝突で爆発を起こした。






「えぇええええええええいっ!!」

エリオがストラーダを構え、猛スピードで泉に突進する。

それを泉は舞う様に避ける。

「くそっ!」

エリオが泉に向き直ろうとした時、

「ふっ!」

鋭い蹴りがエリオを襲う。

「うわっ!」

エリオは間一髪ストラーダの柄で受け止める。

吹き飛ばされながらもエリオは体勢を立て直し、地面に着地する。

すると、泉は両手の指の先から竜巻を発生させていた。

「プッレツァ・ペタロ!!」

その竜巻をエリオに向けて放つ。

「このっ!」

エリオはカートリッジをロードし、魔力斬撃を飛ばすことでその竜巻を相殺した。

「やっぱり一筋縄じゃいかないわね」

泉はそう呟くと、エリオに向かって構えなおした。







「シューーーーーーーット!!」

「スノーボンバー!!」

ティアナの放った複数の魔力弾と、友樹の放った氷の弾丸がぶつかり合って相殺する。

ティアナはすぐに物陰に身を潜める。

「流石に拓也さんの仲間なだけはあるわね。これは気が抜けないわ」

そう呟くと、念話でキャロに呼びかけた。

(キャロ、聞こえる?)

(はい、ティアナさん)

すぐに返事が返ってきた。

(友樹さんの気を引いて。その隙に私が仕留める)

(分かりました)

ティアナの出方を窺う友樹に、

「フリード!ブラストフレア!」

キャロの声が聞こえた。

友樹が其方を向くと、キャロと、口の前に火球を作り出したフリードがいた。

「ファイア!!」

キャロの掛け声と共に、火球を放つフリード。

それを友樹は飛び退くことで避ける。

その瞬間、

「クロスファイヤー・・・・・・・・シューーーーーット!!」

ティアナが放った十数発の魔力弾が友樹に襲い掛かった。

(捉えた!)

ティアナは確信した。

だが、

「アイス・・・・・・・」

友樹は全身に魔力を巡らせ、

「・・・・・カーニバルッ!!」

次の瞬間には、全身が氷に包まれ、その氷から無数の氷柱が飛び出し、ティアナの放った魔力弾を砕く。

そして、その氷が割れると、

「危なかったぁ・・・・・・」

ホッと息を吐く友樹の姿があった。

それを見たティアナは、

「流石属性特化型。一筋縄じゃいかないわ」

そう呟いて気を取り直し、勝つための策を考えるのだった。





それから、それぞれは戦い続けていたが、最初こそ新人フォワードメンバーは属性特化型の長所に戸惑いはした。

だが、フォワードメンバーは毎日過酷な訓練を行なっており、かたやデジタル組は、実戦も8年振りに行ったばかりというブランクがあり、その差が少しずつ現れてきた。

先ずは体力。

戦闘開始からあまり時間は経っていないが、デジタル組にはもう疲労の色が見え始めていた。

そして、状況判断力。





「おりゃぁああああっ!」

スバルは、マッハキャリバーで動き回りつつ、純平に攻撃を仕掛ける。

「うわっ!」

純平は、何とかその攻撃を避けて、反撃に転じようとしたが、スバルは直ぐにその場を離れる。

「ちっくしょー!動きが速いぜ!」

純平は愚痴る。

スバルは、スピードは自分の方が上と分かると、一撃離脱を繰り返すヒットアンドウェイで、純平を翻弄していた。



「でやぁあああっ!」

「くぅ!」

泉は、エリオの突撃を必死に避ける。

確かに泉は格闘能力は中々のものだが、一撃の威力は低い。

エリオは、それが分かると、真正面からの力押しに出る。

「まだまだぁ!」

エリオは、避けられても間髪いれず突撃を繰り返す。

泉は小回りが利くが、スピードそのものはエリオに及ばない。

徐々に攻撃をかする様になってきていた。





「シューーーーット!!」

ティアナが魔力弾を放つ。

「そこっ!」

友樹が氷の弾丸を放って相殺する。

だが、その時別方向から魔力弾が飛来した。

ティアナが予め別方向に撃っていた誘導弾である。

「うわっ!?」

友樹は慌てて跳んで避ける。

だが、

「かかった!キャロ!!」

待ちかねていたようにティアナが叫ぶ。

その瞬間、友樹に大きな影が掛かる。

友樹が上を見上げると、そこには成竜形態となったフリードとその背に乗ったキャロ。

そのフリードの口には、炎が集中されている。

「フリード!ブラストレイ!!」

キャロの合図と共に、その炎が友樹に襲い掛かる。

「くっ・・・・・!」

空中での移動手段を持たない友樹は、その炎に成すすべなく飲み込まれる。

「やった!」

ティアナが声を上げる。

流石にこれは決まったと思ったのだろう。

しかし、その炎の中から、1つの火の塊が飛び出し、地面に落下。

それが地面に当たると、火が消え、氷の塊が現れる。

「まさかっ・・・・!?」

ティアナが信じられないといった表情をする。

氷が割れ、中から友樹が現れた。

しかし、

「あっつつ・・・・・ギリギリだったぁ・・・・・・」

流石に無傷とはいかない様で、ダメージが見られる。

「一体どうやって!?」

キャロが疑問の声を上げる。

「多分、炎に呑まれる瞬間に、自分自身を氷で包んで、ダメージを最小限に抑えたんだわ」

ティアナがそう分析して言った。

「そんなっ!?あんな一瞬で!?」

キャロは驚愕する。

「凍結の魔力変換資質の持ち主でも、あの一瞬じゃ無理ね。氷の属性特化型だからこそ出来たんだわ」

ティアナはそう言った。

「1人じゃ不利だ。純平さん達と合流しないと・・・・・・」

友樹はそう呟くと、

地面に手を置き、

「アイスカーニバル!!」

そう叫んだ瞬間、友樹の周りの地面から無数の氷柱が飛び出し、友樹の姿を隠す。

「戦略的撤退・・・・ってね」

友樹は巨大な氷柱で身を隠しつつ、その場を離れた。






それぞれの戦いの様子をモニターで見ていた拓也達。

「このまま行くと、ティアナ達の勝ちかな?」

なのはが呟く。

「まあ、個人の総合的な能力なら、フォワードメンバーの方が上だな。あいつらは8年もブランクあるし」

拓也がそう言った。

「じゃあ、兄さんもティアナたちが勝つと思ってるの?」

信也が尋ねる。

すると、

「さてね。1つ言える事は、デジタルワールドの冒険じゃ、この位の不利な状況は、何度でもあったってことだな」

拓也はそう言って、再びモニターに目を向けた。






友樹と同じように1対1は不利と判断した純平と泉も、合流する為に動いていた。

「純平!」

「泉ちゃん!」

まず、純平と泉が合流する。

そこへ、

「純平さん!泉さん!」

友樹がビルの上から跳躍してきた。

「2人とも、状況は?」

泉が尋ねる。

「正直言って厳しいよ。流石に8年のブランクは大きいや」

友樹がそう言い、

「ああ。年下の女の子に勝てないなんて情けねえぜ」

純平が悔しそうな表情で言った。

「それは仕方ないわよ。向こうは毎日厳しい訓練を受けてるんだから。つい先日まで一般人の私達が勝てるほうがおかしいわ」

泉が気休めのように言う。

「でも、2人とも、このまま大人しく負ける気は無いんでしょ?」

友樹が尋ねると、

「「当然!」」

2人は声を揃えて言った。





純平達と同じようにティアナ達も合流していた。

「このまま行けば勝てそうだね」

スバルが言った。

「調子に乗らない!油断してると足元すくわれるわよ!」

ティアナが釘を刺すように言う。

「あっ!いました!」

フリードに乗って、空から純平達を探していたキャロが声を上げる。

見れば、3人は並んで道の真ん中に立っていた。

周りにはビルが立ち並び、一本道となっている。

「真っ向勝負ってことかな?」

スバルが声を漏らす。

ティアナは考えを巡らしている。

「ティアナさん、どうします?」

エリオが尋ねた。

「・・・・・・・全員で一番強い魔法をぶつけるわ。こっちにはフリードもいるし、4対3。正面衝突なら、こっちの方が有利よ」

「そうこなくっちゃ!」

「分かりました!」

「了解です!」

ティアナの案に、全員が肯定の意思を示した。





「来たわね」

目の前に現れたティアナ達を見て、泉が声を漏らす。

このままの長期戦が不利と判断した3人は、一か八かの真っ向勝負に出る事にした。

道路の真ん中で、4人(+一匹)と3人が対峙する。

「一撃・・・・・必倒ぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・」

スバルが魔力を集中。

右腕を振りかぶる。

「クロスファイヤー・・・・・・・」

ティアナの周りに十数個の魔力弾が発生する。

「はぁあああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」

エリオのストラーダに電撃が走り、エリオはそれを振り上げる。

「フリード!」

キャロがフリードの名を呼ぶと、フリードは口を開け、そこに炎が集中する。

そして、

「ディバイィィィィィン・・・・・・・バスターーーーーーーーッ!!」

スバルがディバインバスターを放ち、

「シューーーーーーーーーーーーット!!」

ティアナが十数個もの魔力弾を同時に撃ち出し、

「でえぇぇぇぇぇぇぇい!!」

エリオが地面にストラーダを突き刺すと、地面の表面を砕きながら電撃が走り、

「ブラストレイ!!」

フリードが炎を放つ。

それぞれの攻撃が、同時に3人に襲いかかる。

単純に考えれば、3人には成す術が無いように思えた。

それは、モニターで見ていたなのはや信也もそう思っていた。

しかし、

「合体技よ!」

「ああ!」

「うん!」

泉の声に、純平と友樹が応える。

泉が指先から竜巻を発生させ、

「プッレツァ・ペタロ!!」

その竜巻を放つ。

友樹が右腕を振りかぶり、

「ダイヤモンドダスト!!」

その拳を繰り出すと、氷の粒が混じった冷気が放たれ、その冷気が泉の竜巻と混じりあい、冷気の竜巻と化す。

更に、純平が両手を頭上で合わせると雷が発生し、

「トールハンマー!!」

前方に振り下ろすと共に、その雷が放たれる。

その雷が冷気の竜巻に当たると、氷の粒によって、冷気の竜巻が雷を纏うような形になる。

そして、雷を纏った冷気の竜巻は、スバルのディバインバスターを正面から撃ち破り、ティアナのクロスファイヤーシュートを全て弾き飛ばし、エリオの電撃を地面ごと吹き飛ばし、フリードのブラストレイを掻き消した。

「嘘っ!?」

スバルが声を上げる。

その雷を纏った冷気の竜巻はそのまま突き進み、フォワードの4人を巻き込んだ。





その様子を見ていた拓也達は、

「純平達の勝ちだな」

拓也は笑みを浮かべて言った。

「でも、何で純平さん達の攻撃は、ティアナ達の攻撃を撃ち破る事が出来たんですか?合計の威力ならティアナ達の方が上の筈なんですけど・・・・・」

なのはが疑問に思ったことを言った。

「まあ、それは同時に撃っただけなのと、合わせて撃った事の違いだ。そのままの力より、集中された力のほうが強いのは当たり前だろ」

拓也がそう言う。

「なるほど・・・・・個人の能力ではティアナ達のほうが上でも、結束力は敵わなかったってことだね」

信也がそう言う。

「そういう事だ。あと、ブランクがあるとはいえ、命を賭けた戦いを潜り抜けた強さを持つあいつ等が、その辺の奴らに負けるとは思わないけどな。その強さは、お前達も持っていないものだ」

拓也が、なのは達を見て言う。

「え?私達もですか?・・・・・でも、ティアナ達はともかく、私やフェイトちゃん達は、何度も危険な任務を潜り抜けてきたんですけど・・・・・・」

拓也の言葉に、疑問を持ったなのはがそう漏らす。

すると拓也は、

「まあ、お前達をバカにする気は無いけど・・・・・・俺から言わせれば、お前らの危険な任務って言うのは、あくまで命の危険がある・・・・・といった程度・・・・・・・相手にするのも格下が多かったはずだ。10年前の闇の書事件の時でも、シグナム達には完全な殺意はなかったしな。でも、俺達は違う。負ければ即、死に繋がるような戦いの連続・・・・・・しかも相手は自分達よりも同等から格上が殆ど・・・・・・・ちょっとでも間違っていたら俺達は死んでいてもおかしくはなかったんだ」

悪の五闘士との戦い。

ケルビモンとの決戦。

ロイヤルナイツとの激闘。

そして、ルーチェモンとの最終決戦。

何れも、本当に命を賭けた戦いだった。

特に、ロイヤルナイツとの初戦で、デュナスモンのブレスオブワイバーンを喰らって生き残れたのは、単純に運が良かっただけ。

ブレスオブワイバーンのエネルギーで出来た空間の裂け目に飲み込まれ、月まで飛ばされたから助かった。

本来なら死んでいたのだ。

それだけの命を賭けた戦いを乗り越えた拓也達の持つ強さは、互角の力を持つものの戦いの上ではそうとうなアドバンテージになる。

今回の戦いでも、8年ものブランクがある純平達が勝つことが出来たのも、その強さをもっていたからである。

なのは達は、拓也の言葉を聞くと、私達もまだまだだねと、心の中で思ったのだった。







同じ頃、はやてとリィンは陸士108部隊の隊舎を訪れていた。

理由は、レリックの密輸ルートの捜査協力である。

はやては、108部隊の部隊長であり、スバルの父親でもあるゲンヤ・ナカジマ三佐に協力要請を申し出ていた。

はやての説明にゲンヤは、

「いいだろう。引き受けた」

そう言って、引き受けることを了承した。

「ありがとうございます!」

はやては礼を言う。

「人選は・・・・・そうだな・・・・・カルタスとギンガ。それに・・・・・」

ゲンヤは、はやての顔を見ると、

「お前に縁の深い、あの2人もつけてやる」

そう言った。

「えっ?いいんですか!?あ、いえ、私も元々レリックの事とは別で要請しようとしてたんですけど・・・・・」

その言葉で誰の事か見当をつけたはやてが驚く。

「別の事?」

はやての言葉が気になったゲンヤが尋ねる。

「ええ。ナカジマ三佐は聞いていますか?デジモンと呼ばれる生物のことを」

はやてがそう言うと、

「まだ小耳に挟んだ程度だが・・・・・デジタルモンスター・・・・略してデジモンだったか?」

ゲンヤは確認するように呟く。

「はい、その通りです。で、そのデジモン対策として、あの2人をお借りしたかったんです」

はやてがそう言う。

「それは元々協力させるから構わんが、何であの2人なんだ?」

「あの2人は、10年以上前にデジモンに深く関わっているんです。そして、デジモンに対抗する力を使える6人の内の2人でもあるんです」

はやては簡単に説明する。

「なるほどな・・・・・・まあ、好きに使ってくれ。どちらにしろ、知った顔なら使いやすいだろう」

「はい。こちらはテスタロッサ執務官が捜査主任になりますから、ギンガもやり易いんじゃないかと」





別の部屋では、リィンとスバルの姉であるギンガが話し合っていた。

「そうですか・・・・・フェイトさんが」

「はいです。六課の捜査主任ですから、一緒に捜査に当たってもらうこともあるかもですよ」

「これは、凄く頑張らないといけませんね!」

「はい!・・・・・あ、そうだ」

リィンが思い出したように言う。

「捜査協力に当たって、六課からギンガにデバイスを一機プレゼントするですよ」

「デバイスを?」

「スバル用に作ったものの同型機で、ちゃんとギンガ用に調整するです」

「それはその・・・・・凄く嬉しいんですけど、良いんでしょうか?」

ギンガはちょっと困った顔をする。

「大丈夫です!フェイトさんと一緒に走り回れるように、立派な機体にするですよ」

「ありがとうございます!リィン曹長!」

と、その時、

「リィン?」

とある2人がギンガの後ろに立っていた。

「あ、源一尉、木村一尉!」

ギンガは振り向いて言った。

その2人は、輝二と輝一。

この2人は108部隊の隊員であり、丁度リィンの声を聞きつけて、様子を見に来たのだ。

リィンは、輝二がいる事に気付くと、顔が見る見るうちに喜びの表情になり、

「とーさま!!」

喜びを表すように輝二の周りをくるくると飛び回り、

――ポンッ

という音と共に、リィンのサイズが身長30cmから、普通の少女の大きさに変わり、輝二の背中に抱きついた。

「おっと・・・・」

輝二は抱きつかれた勢いで少し体勢が崩れたが、問題なく立て直す。

そして、

「久しぶりだな。リィン」

そう微笑みかけた。

「はいです!とーさまも久しぶりですぅ!」

リィンも背中に抱きついたまま、笑顔でそう言った。

「リィン、久しぶり」

輝一も笑いかける。

「はい!おじさまもお久しぶりです!」

リィンは輝一にも笑顔でそう言った。

その様子を見ていたギンガはクスリと笑い、

「相変わらず仲がよろしいですね」

そう言った。

「はいです!リィンはとーさまが大好きですぅ!」

そう言うリィンは見た目相応の少女に見えて、微笑ましい。

「リィンがここにいるって事は、はやても来てるのか?」

輝二がそう尋ねる。

「もちろんです!かーさまは、今はナカジマ三佐に協力要請を頼んでいて、了承された所ですぅ。とーさまやおじさまも協力要員の中に含まれているですぅ!」

リィンの言葉に、輝二と輝一は驚いた表情をした。





「スバルに続いて、ギンガまでお借りする形になってしもうて、ちょっと心苦しくはあるんですけど・・・・」

はやてが少し言いにくそうに言った。

「なぁに、スバルは自分で選んだ事だし、ギンガもテスタロッサのお嬢と一緒の仕事は嬉しいだろうよ」

「はい!」

「それに、あの2人もな」

ゲンヤはそう言って茶をすすると、

「お前ら最近忙しくて会って無いだろ?」

そう尋ねる。

「えっと・・・・その・・・・」

ゲンヤの言葉に、はやては困ったように言葉を濁す。

「全く、若いモンが無理しやがって。若い内はもっと好きなことをやるんだな。恋でも何でも」

「あうぅ・・・・・」

ゲンヤの言葉に、はやては顔を赤くして俯く。

その時、通信が繋がり、

『失礼します。ラッド・カルタス二等陸尉です』

「おう。八神二佐から、外部協力任務の依頼だ。ギンガと源、木村連れて、会議室でちょいと打ち合わせしてくれや」

『はっ!了解しました!』

モニターが閉じる。

「つーことだ」

ゲンヤがはやてに向き直りながら言った。

「あ、ありがとうございます」

はやては、気を取り直して、そう言って立ち上がった。

「打ち合わせが済んだら、飯でも食うか?あいつ等も誘ってな」

「あ、は、はい!ご一緒します!」

はやては、少しどもりながらも返事をした。



はやてが会議室の前に来ると、

「あ、かーさま!」

輝二に肩車されたリィンがはやてに気付き声を上げた。

「あ、コーにぃ、イチにぃ」

はやてが声をかける。

「久しぶりだな、はやて」

「はやて、久しぶり」

輝二と輝一もそう返す。

すると、リィンが輝二の肩から降りると、左右それぞれの手で、輝二とはやての手を取り、

「えへへ・・・・こうして3人揃うのは久しぶりですぅ!」

リィンは本当に嬉しそうに言った。

「ああ、そうだな」

輝二は小さく頷く。

「ふふっ・・・・」

はやては、少し頬を赤くしながらも微笑んだ。

因みに、傍にいた輝一、ギンガ、カルタスが、この3人を見て、本当の親子のようだと思っていたのは言うまでも無い。






その夜、フェイトとシャーリーは、首都中央地上本部で、データの確認を行なっていた。

データは、レリックの物。

そして、ガジェットのもの。

ガジェットの残骸データを確認していた時、フェイトがある物に気付いた。

「ちょっと戻して!さっきの三型の残骸写真」

フェイトの言葉でシャーリーがパネルを捜査して問題の場所を表示する。

「それ!」

写真には、回路が写されており、その中央部分には、青い宝石のようなもの。

それは正に、

「ジュエルシード・・・・・・」

フェイトが呟く。

「随分昔に、私となのはが探し集めてて、今は、局の保管庫に保管されている筈のロストロギア」

「ほ~、なるほど・・・・・・って!?何でそんなものが!?」

「シャーリー!ここ。この部分を拡大して!何か書いてある」

フェイトが、同じ写真に写っていた金属プレートを拡大するように指示する。

シャーリーが指示通りに拡大すると、金属プレートに文字が刻まれていた。

「これ、名前ですか? ジェイ・・・・・」

「ジェイル・スカリエッティ・・・・・・・・Dr.ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連事件を始めとして、数え切れないぐらいの罪状で、超広域指名手配されている、一級捜索指定の次元犯罪者だよ」

フェイトがそう説明する。

「次元犯罪者・・・・・」

「ちょっと事情があってね。この男の事は、何年か前から、ずっと追ってるんだ」

「そんな犯罪者が、何でこんな分かりやすく自分の手がかりを?」

「本人だとしたら挑発。他人だとしたらミスリード狙い。どちらにしても、私やなのはがこの事件に関わっている事を知ってるんだ。だけど、本当にスカリエッティだとしたら、ロストロギア技術を使ってガジェットを製作できるのも頷けるし、レリックを集めている理由も想像がつく」

「理由?」

「シャーリー。このデータを纏めて、急いで隊舎に戻ろう。隊長達を集めて、緊急会議をしたいんだ」

「はい、今すぐに」

そう言って、シャーリーはデータを纏めだす。

事態は今、大きな進展を迎えようとしていた。






次回予告


ホテル・アグスタで行なわれるオークションを護衛する事になった機動六課。

そこへ襲い来るガジェット達。

そして、デジモンの姿もその中にあった。

機動六課は、無事にホテル・アグスタを守り抜けるのか!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第九話 ホテル・アグスタ

今、未来への翼が進化する。





あとがき

こちらではお久しぶりでございます。

約七ヶ月振りの更新です。

いや、まさかこれだけの期間が開くとは思いもしなかった。

只今、スランプという泥沼から顔を出し、岸に生えている草を掴んだ所です。

このまま這い上がれるか、草が切れて再び泥沼にはまるかは分かりません。

まあ、とりあえず頑張っていきます。

因みに、デジタル組3人のデバイス名は、

泉のシルフィード⇒これしかないと初めから思ってた。

純平のヴォルト⇒電圧のVの発音を少し濁した。

友樹のセルシウス⇒シヴァとどっちにするか悩んだ結果、名前の響きでこっちに決まりました。

友樹の技については、

ツララララ~~~~~⇒アイスカーニバル

ガチガチカッチン⇒ダイヤモンドダスト

となっております。

流石に20歳で「ツラララララ~~~~」とか「ガチガチカッチン」なんて言わせたくなかったし。

スノーボンバーはともかく。

あと、大概の人は知っているでしょうが、とらハ板にて、『リリカルなのは~生きる意味~』を新しく投稿しています。

もし、見て無い人がいれば覗いて見て下さい。(オリ主最強この上なく、ハーレムなので、苦手な人は注意)

リリフロとゼロ炎と比べると、人気がぶっちぎってますが・・・・・・・

では、次も頑張ります。





[8056] 第九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/20 14:39


第九話 ホテル・アグスタ




現在、機動六課メンバーと拓也達デジタル組は、ヘリで移動していた。

その中で、はやてからレリックの収集者及びガジェットの製作者の確率が高い、ジェイル・スカリエッティ、そして、今回の任務先であるホテル・アグスタの説明が行なわれている。

因みに、拓也達デジタル組は、正式にデジモン対策の協力者として機動六課に協力する事になった。

後、一佐をぶっ飛ばした拓也については、過剰防衛という事で、管理局での数ヶ月の奉仕活動という罰が下された。

もともと協力する気でいる拓也にとって、罰はあって無いようなものであるが、そのあたりはクロノがいろいろと頑張ってくれたらしい。

そして、デジモンの進化については、対デジモン戦においてのみ使用可能という措置がとられた。

非殺傷が出来ないデジモンの進化には難色を示した人物が多く、質量兵器と同じ扱いで禁止すべきという声も上がったが、クロノ及びリンディの尽力により、上記の措置となった。

デジモンを甘く見すぎていると拓也達は思ったが、実際にデジモンを目の当たりにしたことが無い人たちにとっては、実感が湧かないのだろう。

そして、ヘリは今回の目的地である、ホテル・アグスタに到着した。





「あ~あ、堅っ苦しいな~・・・・・」

拓也がぼやく。

「兄さん、我慢我慢」

拓也を宥めるように信也が言った。

「けどよ~・・・・・俺にはこんな格好似合わないって・・・・・・」

そういう拓也と信也の格好は、しっかりとしたスーツ姿だ。

拓也と信也は、はやて、なのは、フェイトと同じく館内警備という役割なのだが、ホテルに着いた途端ケースを渡され、これに着替えるようにと指示があった。

2人が疑問に思いながら着替えた姿がこの格好。

どうやら、オークションに来る人物は正装なので、それに紛れての警備という名目らしい。

2人が暫く待っていると、

「お待たせや~」

はやての声がしたので、2人が其方を向くと、ドレスを着て、綺麗に着飾ったはやて、なのは、フェイトの姿があった。

「どや、感想は?」

はやてが、なのはとフェイトを拓也達に見せ付けるようにしながらそう言った。

「え・・・・えと・・・・・・」

「どう・・・・・かな?」

なのはとフェイトは、顔を赤くしながらそう呟く。

「う・・・・うん・・・・・似合ってるよ」

信也が少し動揺しながらそうなのはに言う。

「ああ、良く似合ってるぞ。俺とは大違いだな」

拓也がそう言うと、

「そ、そんなことないよ・・・・・タクヤも格好良いよ・・・・・」

フェイトは顔を赤く染めながら、そう返す。

「そっか、サンキュー」

拓也は笑顔で答えた。

「ほんなら、はよ受付にいこか。なのはちゃん、フェイトちゃん、打ち合わせの通りにな」

はやてがそう言うと、なのはは信也の、フェイトは拓也の腕に自分の腕を絡める。

「ちょ・・・?」

少し動揺する信也。

流石に人前で腕を組む事は恥ずかしいらしい。

「えへへ・・・・・よろしくね、信也君」

なのはは、頬を染めながら微笑んでそう言った。

「タクヤは驚かないんだね?」

フェイトがそう聞くと、

「まあ、こんな事だろうと思ってたし」

そう動揺せずに言う拓也。

この2人は信也たちとは違い、既に人前で腕を組む事など慣れっこらしい。

「こういう場では、男性は女性をエスコートしてあげなあかんのやで、信也君」

はやてが信也を見ながら笑みを浮かべていった。

「・・・・・はやて、もしかしてこれがやりたかったから僕と兄さんを館内警備に回したんじゃないよね?」

「あははは・・・・・・・・・・・・まさか」

「今の間が気になるところだけど、まあいいや」

5人は、受付へと向かった。







それから暫くして、シャマルのクラールヴィントのセンサーがガジェットの接近を捉えた。

それに伴い、新人フォワード組と泉、友樹、純平が防衛線を張り、シグナム、ヴィータ、ザフィーラが迎撃に出る事になった。

数十機ものガジェットⅠ型と数機のガジェットⅢ型がホテルに向かって接近してくる。

しかし、シグナム、ヴィータ、ザフィーラによって、それらは次々と破壊されていった。

その様子をモニターで見ていた新人達と純平達。

「副隊長達とザフィーラ、すごーい!」

スバルは、シグナム達の強さに賞賛の声を上げるが、

「これで・・・・・能力リミッター付き・・・・・?」

ティアナはどこか複雑な表情をしていた。

「?」

そんなティアナの様子を不思議に思う純平。





ホテルから少し離れた森に大柄の男性と、薄い紫の髪をした少女がいた。

その2人の前に、通信モニターが開く。

『ごきげんよう、騎士ゼスト、ルーテシア』

その人物は、機動六課が追っているジェイル・スカリエッティ。

「ごきげんよう」

ルーテシアと呼ばれた少女が挨拶を返し、

「何の用だ?」

ゼストが素っ気無く用件を求める。

『冷たいねえ。近くで状況を見ているんだろ? あのホテルにレリックは無さそうだが、実験材料として、興味深い骨董が1つあってね。少し協力してくれないか? 君達なら、実に造作もないことの筈なんだが・・・・』

スカリエッティはそう言うが、

「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めた筈だ」

ゼストは即答で断った。

すると、スカリエッティは、ルーテシアのほうを向き、

『ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?』

そう頼む。

「いいよ」

ルーテシアは了承する。

『優しいな・・・・ありがとう。今度是非、お茶とお菓子でもおごらせてくれ。君のデバイス、“アスクレピオス”に、私が欲しいもののデータを送ったよ・・・・・・ああ、それから、手駒として使えるデジモンを幾つかリストアップしておいた。好きに使ってくれたまえ』

「うん・・・・・じゃあ、ごきげんようドクター」

スカリエッティの言葉に、ルーテシアは頷く。

『ああ、ごきげんよう。吉報を待っているよ』

スカリエッティがそう言うと、モニターが閉じる、

ルーテシアは纏っていたローブを脱ぎ、ゼストに手渡す。

「いいのか?」

ゼストが尋ねる。

「うん。ゼストやアギトはドクターの事嫌ってるけど、私はそれほどドクターの事嫌いじゃないから」

「そうか」

すると、ルーテシアは四角い魔法陣、召喚陣を展開する。

「我は請う・・・・・」




その時、キャロのケリュケイオンが、召喚の反応を捉える。

「はっ!?」

キャロがそれに気付いて声を上げる。

「如何したの?キャロ」

エリオが尋ねると、

「近くで、誰かが召喚を使ってる!」

キャロが叫ぶ。

同じく、シャマルやロングアーチでもその反応を捉えていた。




ルーテシアの召喚陣から、無数の小さな虫のような召喚獣が現れる。

そして、それらが一斉に飛び立つ。

その虫のような召喚獣は、ガジェットに取り付く。

召喚獣に取り付かれたガジェットは、目に見えて分かるほど動きが良くなり、シグナム達でも動揺するほどであった。

更に、

「ッ! 遠隔召喚! 来ます!!」

キャロが叫ぶ。

新人達の近くに召喚陣が現れ、そこから十数機のガジェットが現れる。

「あれって・・・・召喚魔法陣!?」

「召喚って、こんな事も出来るの!?」

エリオとスバルが驚く。

「優れた召喚師は、転送魔法のエキスパートでもあるんです!」

キャロが説明する。

「何でもいいわ!迎撃行くわよ!」

ティアナがそう言った。





襲い来るガジェットに、ティアナはクロスミラージュで魔力弾を放ち、攻撃するが、あるものは避けられ、またあるものは当たりはするものの、装甲に罅を入れるだけで、撃墜まで行かない。

「くっ!」

ティアナは悔しそうな声を漏らす。

一方、

「うぉおおおおおおおっ!!」

純平がガジェットに殴りかかるが、純平のスピードでは捉えられず、あっさりと避けられる。

だが、

「やぁああああああっ!!」

純平の攻撃を上空に避けたガジェットに、泉の蹴りが叩き込まれる。

泉の蹴りも、装甲表面を凹ませただけで撃墜まで行っていないが、そのガジェットは純平の方に蹴り飛ばされる。

「純平!」

泉が純平に呼びかける。

「オッケー泉ちゃん!!」

純平が元気良く応え、蹴り飛ばされたガジェットに拳が叩き込まれる。

そのガジェットは、くの字に折れ曲がり、吹き飛ばされて爆散した。

「ダイヤモンドダスト!!」

友樹が拳から冷気を放つ。

その冷気は、地上付近にいた数機のガジェットを地面に縫い付けるように凍らせ、動きを封じる。

「今だよ!純平さん!!」

「おう!」

友樹の掛け声に純平は拳を上に振り上げ、

「ミョルニル!サンダー!!」

雷を纏った拳を地面に叩きつけ、電撃を飛ばす。

電撃は地を這うように進み、氷で縫いとめられているガジェット全てに伝わり、その全てを破壊した。

「凄い・・・・息がピッタリだ!」

エリオが驚いたように言う。

「ッ!? 空から来ます!」

キャロが叫ぶ。

上空から、残りのガジェットが飛来する。

「プッレツァ・ペタロ!!」

泉が竜巻を放つ。

その竜巻は、破壊まで行かなくとも、動きを封じる事に成功する。

「スノーボンバー!!」

「トールハンマー!!」

それに向かって、友樹が氷の弾丸を、純平が雷を放つ。

雷を纏った氷の弾丸は、泉の風に乗り、竜巻内の全てのガジェットを貫通する。

一瞬後に、全てのガジェットは爆散した。

「す、凄いや・・・・」

スバルが呆然と呟く。

(・・・・・私だって、あの位!)

ティアナは心の中でそう思う。

その時、残ったガジェットⅢ型がアームを伸ばしてくる。

「うわっと!」

純平は慌てて両手で受け止める。

しかし、召喚獣が取り付いたガジェットはパワーもアップしているらしく、純平を押し始める。

「ぐぐぐ・・・・・・」

純平は力を込めるが、一方的に押されるばかり。

しかし、

「仲間一番の力持ちを・・・・・・舐めんなよ!!」

純平がそう叫ぶと、純平が雷に包まれる。

『Form change.』

そして、その雷が消えると、先程よりも更に重装甲であり、足にはキャタピラ。

背中には巨大な砲身を背負い、完全にスピードを捨てて、防御とパワーに特化した姿。

『Borugu form.』

「うぉおおおおおおっ!!」

ボルグフォームとなった純平は、足のキャタピラを回転させ、踏ん張り、ガジェットのアームを更に強く掴む。

やがて、アームが負荷に耐え切れなくなったのか、所々から火花が飛び始める。

すると、ガジェットは、センサーからレーザーサイトで純平の頭部にロックしようと・・・・・

「やらせない!」

する前に、上空から泉が急降下してくる。

『Form change.』

泉が風に包まれ、

『Shutsu form.』

茶色の翼を持ち、格闘能力を捨て、手には鋭い爪の付いた、一瞬の瞬発力に特化した姿となった。

「はぁああああっ!!」

泉はガジェットの目の前に辿り着くと、一瞬でセンサーとレーザー発射口を全て潰す。

「おりゃぁああああああっ!!」

純平は、掴んでいたアームを思い切り広げるように引っ張る。

すると、アームは根元から引きちぎられ、ガジェットは単なる鉄の球体と化す。

止めとばかりに飛び上がった友樹が氷に包まれ、

『Form change.』

氷が割れると、両手に巨大な戦斧を持ち、毛皮のような白いバリアジャケットに先に銛の付いたロープを何本も垂らした姿。

『Blizzar form.』

友樹は両手の戦斧を振り上げ、

「でやぁあああああああああっ!!」

気合と共に振り下ろす。

ガジェットは、見事3枚に下ろされ、爆発した。

「凄い凄ーい!」

スバルが純平達を賞賛する。

しかし、

(魔法に触れて1週間足らずで、もうこんなレベルまで・・・・・・)

ティアナは、純平達に対して、焦燥感。

そして、劣等感を感じていた。

ガジェットの全滅を確認して、一息吐こうとした所、

「ギャオオオオオオォォォォォォッ!!」

そんな叫び声と共に、木々が倒れ、森の中から赤い恐竜のような生物が姿を現す。

「キェエエエエエエ!!」

上空からは緑色で両手が鎌のカマキリのような姿の大きな生物。

そして、茂みが揺れたかと思うと、そこから赤い皮膚をして、手には骨の棍棒を持ち、虎柄のパンツを穿いた鬼のような生物が飛び出す。

「ガァアアアアアアアアアッ!!」

更には森の中から、

「バケェェェェェェェェェェ!!」

白い布を被ったようなお化けのような姿の生物が10匹ほど出てくる。

「な、何?こいつら?」

ティアナが見たことも無いような生物に少したじろぐ。

「デジモンだ!」

純平が叫んだ。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





≪Digimon Analyzer≫


――ティラノモン

・成熟期 恐竜型 データ種

逞しい腕と巨大な尾を武器にする恐竜型デジモンだ。

本来は大人しく知性がある。

必殺技は、口から炎を吐き出す『ファイヤーブレス』だ。




――スナイモン

・成熟期 昆虫型 ワクチン種

 両手に巨大な鎌を持つ、昆虫型デジモン。

 ワクチン種だが、狂暴で残忍な性格をしている。

 必殺技は、両手の鎌からエネルギー状の斬撃を飛ばす、『シャドウ・シックル』




――フーガモン

・成熟期 鬼人型 ウィルス種

 赤い皮膚を持つ、鬼のようなデジモン。

 同じ成熟期であるオーガモンの亜種である。

 必殺技は、『イビルハリケーン』。




――バケモン

・成熟期 ゴースト型 ウィルス種

 白い布で体を覆った幽霊のようなデジモン。

呪われたウイルスプログラムの塊で、こいつに取り付かれたコンピューターはシステムを破壊されてしまう。

布の中は異次元に繋がっているらしい。

必殺技は、『ヘルズハンド』。

尚、日中の戦闘力は余り高くなく、成長期デジモンに破れる事も多々ある。

余談ではあるが、ありがたいお経も弱点である。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「ロングアーチ!デジモンが出てきた!進化するけど良いよな!?」

純平が叫ぶように問いかける。

『こちらでも確認しました。デジモンへの進化、承認します!』

シャーリーが叫ぶ。

「よっしゃあ!行くぜ!」

「「ええ(おお)!」」

純平の掛け声に、泉と友樹が返事をする。

そして、3人はデジヴァイスを構えた。

「「「スピリット!エボリューション!!」」」

3人はデジコードを纏い、進化する。

「ブリッツモン!」

「フェアリモン!」

「チャックモン!」

ブリッツモンは空中に飛び上がり、スナイモンと。

チャックモンはティラノモンと。

フェアリモンはフーガモンと、それぞれ対峙する。

「あなた達は、バケモンの相手をして!バケモンはゴーストタイプだから、昼間は弱体化する筈。あなた達でも、十分に倒せるレベルよ!」

フェアリモンが新人フォワード達に呼びかける。

「わ、わかりました」

スバルが返事をした。

「行くわよ!」

フェアリモンがフーガモンに飛び掛り、顔面に蹴りを食らわす。

「ギャッ!?」

フーガモンは怯むが、すぐに棍棒で殴りかかってくる。

「フッ」

しかし、フェアリモンはヒラリとかわし、後頭部に蹴りを叩き込んだ。




「ガァアアアアッ!!」

ティラノモンが、ファイヤーブレスを放つ。

「うわっと!」

チャックモンは、飛び退く事で避けるが、ファイヤーブレスの炎が木に燃え移り、広がりだす。

それに気付いたチャックモンは、

「いけない!森が火事になる!ガチガチコッチン!!」

口から強力な冷気を吹き出し、燃えていた場所を凍らせて鎮火させる。

「余り時間はかけられないや。だったら、チャックモン!」

チャックモンがデジコードに包まれる。

「スライドエボリューション!!」

使用スピリットをビーストタイプへ変更する。

「ブリザーモン!!」

ブリザーモンへと進化すると、

「うおおおおっ!!」

ファイヤーブレスを吐かれないように、ティラノモンに組み付いた。





「はっ! おりゃ!」

ブリッツモンがスナイモンを殴りつける。

「キェエエエエエッ!」

スナイモンも負けじと腕の鎌を振り下ろすが、

――ガキン

ブリッツモンの厚い装甲の前に歯が立たない。

「おりゃぁ!!」

ブリッツモンがお返しとばかりに、再び顔面を殴りつけた。




ブリッツモンたちが優勢に戦いを進める中、

「リボルバー・・・・・シューーーーーット!!」

スバルのリボルバーシュートが、バケモンの1体に直撃。

バケモンは吹き飛ばされ、木に激突して気絶する。

「せいっ! でりゃ!」

エリオが魔力斬撃を放ち、バケモンを2体気絶させる。

「フリード!ブラストフレア!」

キャロの掛け声で、フリードが火球を生み出し、

「ファイア!」

それを放った。

火球はバケモンに当たると、燃え上がり、バケモンは一頻り転げまわった後、動かなくなる。

「泉さんの言った通りだ!こいつ等なら私達でも何とかなるよ!」

スバルが嬉しそうにそう言う。

『皆!その調子よ!そのまま純平君たちが戻ってくるまで持ちこたえて!』

ロングアーチからそう指示が出るが、

「心配要りません!全部私達で倒します!」

ティアナがそう言う。

『ちょ、ティアナ、大丈夫?無茶しないで』

「大丈夫です!毎日朝晩、練習してきてるんですから!」

ティアナはそう言いながら、カートリッジを装填する。

「エリオ!センターに下がって、私とスバルのツートップで行く!」

「え、あ、わかりました!」

ティアナの言葉に、エリオは若干戸惑いながらも返事をする。

「スバル!クロスシフトA! 行くわよ!!」

ティアナは、上空をウイングロードで駆け回っているスバルに呼びかける。

「応!!」

スバルは元気良く返事を返した。

スバルは、バケモンたちのすぐ上をウイングロードで駆け抜ける。

すると、バケモンはスバルに狙いを定め、スバルを追う。

その隙に、ティアナは魔法陣を展開する。

(証明するんだ!)

ティアナはカートリッジを4発ロードする。

(特別な才能や、凄い魔力が無くたって・・・・・・一流の隊長たちの部隊でだって・・・・・どんな危険な戦いだって!)

ティアナの周りに、20発近い魔力弾が発生する。

それは、今迄でも最大の数。

「私は・・・・・・ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

ティアナは、スバルに気を取られているバケモン達に狙いを定める。

『ティアナ!4発ロードなんて無茶だよ!それじゃティアナもクロスミラージュも!』

ロングアーチから警告が来るが、

「撃てます!」

『Yes.』

ティアナが言い切り、クロスミラージュも同意する。

ティアナはクロスミラージュを構え、

「クロスファイヤー・・・・・・・シューーーーーーーーーーーーーーーーーット!!」

ティアナは魔力弾を一斉に放つ。

その魔力弾はバケモン達を次々と撃ち抜く。

「でやぁああああああああああああっ!!」

ティアナはクロスミラージュを乱射し、撃ち漏らしたバケモンを狙う。

ティアナの魔力弾は、バケモン達を撃ち落していくが、

「バケェ!?」

偶然にもティアナの魔力弾に気付いたバケモンが、その魔力弾を避けた。

外れた魔力弾の射線軸上には、スバルの姿。

「ッ!?」

ティアナはそれに気付き、声を上げようとした瞬間、

――ドォン

影がその射線に割り込み、その魔力弾を受けた。





その少し前。

「でやぁああああああああああああっ!!」

スナイモンと戦っていたブリッツモンは、ティアナの叫び声に其方を向く。

ブリッツモンが目にしたのは、クロスミラージュを乱射するティアナの姿。

そして、囮となって駆け回るスバル。

「何て危険なことを!? 囮役がいるのにあんな風に乱射したら、誤射の確立が・・・・・ッ!!」

ブリッツモンは、ティアナを見る。

その表情は必死だ。

「何か知らないけど、焦っているのか!?」

その時、一発の弾丸が放たれた時、ブリッツモンの感覚は、その魔力弾がスバルに直撃する事を悟る。

「拙い!」

ブリッツモンは慌てて、飛び出す。

予想通りバケモンはその魔力弾を避ける。

そしてブリッツモンは、その射線軸上に割り込み、魔力弾を受けた。

煙が晴れ、ティアナからもブリッツモンの姿を確認できるようになると、

「何をやっているんだ!?」

ブリッツモンはティアナを怒鳴りつける。

「ッ!」

「今のはスバルへ直撃する所だったんだぞ!!」

ブリッツモンの怒号に、ティアナはビクつく。

「何を焦っているかは知らないが、それでチームワークを乱して如何する!? お前の射撃の長所は精密射撃! それをあんな風に乱射して誤射しないはずが無いだろう!!」

「あ・・・・あ・・・・・」

「それに! 今回の任務は、あくまで防衛戦! 持ちこたえれば良いだけで、急いで敵を全滅させる必要は何処にも無いはずだ!!」

ブリッツモンの言葉に、呆然となるティアナ。

その時、スナイモンが上空から襲い掛かる。

「シャドウ・シックル!!」

斬撃が跳んでくるが、ブリッツモンの装甲はそれを弾く。

「ふん!  はっ!!」

ブリッツモンは、スナイモンを捕まえ、地面に投げ落とす。

「うぉおおおおおっ!!」

ブリッツモンは両手に雷を纏わせ、頭上で合わせると、

「トールハンマーーーッ!!」

そのままスナイモンに急降下。

両腕を叩きつける。

「ギィエエエエエエエエエェェェェェェ!!」

スナイモンは叫び声を上げて、デジコードを浮かび上がらせる。

ブリッツモンはスナイモンの前に来ると、

「悪に染まりし魂を、我が雷が浄化する!」

その手にデジヴァイスを持ち、

「デジコード!スキャン!!」

スナイモンのデジコードをスキャンした。

スキャンされたスナイモンはデジタマに戻り、上空へ消えていく。

ブリッツモンは、未だ呆然としているティアナに近付くと、

「君が必死だという事は伝わった。だが、今回の君の行動は、仲間を危険に晒したという事を忘れるな」

ブリッツモンは、それだけ言ってティアナに背を向ける。

そのときには、ブリザーモン、フェアリモンの戦いも終わっていた。





その頃、ホテルの駐車場のトラックの荷台が破壊され、何かが盗まれた跡があった。

「うん、ガリュー、ミッションクリア。良い子だよ。じゃあ、そのままドクターに届けてあげて」

ルーテシアが自分のデバイスを通じて、ガリューと呼ばれる召喚獣と連絡を取っていた。

ルーテシアは目的のものが手に入ったと知ると、召喚陣を消した。

「品物は、なんだったんだ?」

ゼストが尋ねる。

「わかんない。オークションに出す品物じゃなくて、密輸品みたいだけど・・・・」

「そうか」

ルーテシアの答えに、ゼストは相槌を打ち、ローブを手渡す。

「戦いも、もう終わりだ。前線の騎士達が、中々良い戦いをした」

ルーテシアは、ローブを着ると、ゼストの服を掴む。

「さて、お前の探し物に、戻るとしよう」

ゼストの言葉に、ルーテシアは頷いた。





ホテルでは、危険がなくなったため、オークションが開催される。

「ではここで、品物の鑑定と解説を行なって下さいます、若き考古学者達をご紹介したいと思います」

司会がそう言うと、ステージにとある男女が現れる。

そのステージの近くでは、拓也、信也、なのはがフェイトから外の戦闘の結果の報告を聞いていた。

「ミッドチルダ考古学士会の学士であり、かの無限書庫の司書長、ユーノ・スクライア先生と、ユーノ先生の助手であり無限書庫の副司書長、エリス・スクライア先生です」

司会の言葉に、驚きながら振り向く拓也達。

ステージの上には、ユーノとエリスがいた。









次回予告


ユーノ達との再会を喜ぶなのは達。

しかし、ティアナは自分の失敗を引き摺り、今まで以上に無理な自己訓練に励む。

ティアナを心配するスバルもティアナの訓練に付き合う。

そして、なのはとの模擬戦の時、2人が見せた戦い方はなのはの教導とはかけ離れたものになる。

無理を続けるティアナに対して、なのはがとった行動とは!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十話 心の傷

今、未来への翼が進化する。






あとがき

第九話完成~。

って、あるぇ~?

何故か純平大活躍。

拓也と信也が外にいたら、即行で決着がついてしまいますので中に入れたらこんな流れに・・・・・・・

とりあえず、純平は仲間内でも、拓也に次ぐ仲間思いかと自分では勝手に思っております。

故に、仲間を危険に晒したティアナが許せないために怒ったということで。

因みに、余談ですが、ティアナの気持ちを一番理解できるのも、デジタル組の中では純平ではないかと。

スピリットを手に入れたのも、輝一を除けば一番最後なので、ティアナの焦る気持ちも少しは分かるかと・・・・・・・

あと、「生きる意味」の方ですが、やりたい事はほぼ決まってるんですけど、やはりオリジナルは難しい為に、リリフロを書きながらチマチマ書いていこうと思ってます。

では、続きをお楽しみに。






[8056] 第十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/08/14 21:48
焦りからミスショットをしてしまったティアナ。

その心の中には・・・・・・


第十話 心の傷







オークションが終わった後、

「えっと・・・・・報告は以上かな?」

なのはがフォワード新人メンバーに確認を取る。

「現場検証は調査班がやってくれるけど、皆も協力してあげてね。 暫く待機して何も無いようなら、撤退だから」

「「「はい!」」」

スバル、エリオ、キャロが返事をする。

しかし、ティアナの雰囲気だけは暗い。

「で、ティアナは・・・・・・」

その言葉を聞くと、スバルは心配そうな視線をティアナに向ける。

ティアナの様子を見たなのはは、

「ちょっと、私とお散歩しようか」

その言葉に、ティアナは一瞬動揺して、

「・・・・・・はい」

力なく返事を返した。



なのはとティアナは森の中を歩く。

「失敗しちゃったみたいだね」

なのはがそう切り出した。

「すみません・・・・・・一発、逸れちゃって・・・・・・」

ティアナは呟く。

「私は現場に居なかったし、純平さんが叱って、大事な事は伝えたみたいだから、改めて叱ったりはしないけど・・・・・・・ティアナは時々、少し一生懸命すぎるんだよね。 それでちょっと、やんちゃしちゃうんだ」

なのはは、ティアナの肩に手を置く。

「でもね、ティアナは1人で戦っているわけじゃないんだよ。 集団戦での、私やティアナのポジションは、前後左右、全部が味方なんだから。 その意味を、今回のミスの理由を・・・・・ちゃんと考えて、同じ事を二度と繰り返さないようにね・・・・・・・約束できる?」

なのはの言葉に、

「・・・・・はい」

ティアナは、小さな声だが返事をした。

それを聞くと、なのはは微笑み、

「なら、私からはそれだけ。 約束したからね?」

「・・・・・・・はい」

ティアナは俯きながら返事をした。








品物の鑑定と解説に呼ばれたユーノとエリスに再会する信也達。

「やあ、信也」

「久しぶりだね、ユーノ」

信也とユーノが、ガッチリと握手をしていた。

「身体の方は大丈夫?」

「うん。もうすっかり」

「そっか、よかった」

2人は笑いあう。

その近くでも、エリスとフェイトが話し合っていた。

それぞれが久しぶりに会った友人と会話していると、

「あの、拓也さん・・・・」

「ん?」

事後処理をしつつ、楽しそうに話している4人を見かけたキャロが、拓也に尋ねた。

「フェイトさんと信也さんが話しているあのお2人って、考古学者のユーノ先生とエリス先生って窺ったんですけど・・・・・?」

「ああ。 あの2人は幼馴染みだよ。 10年前からの付き合いだな。 そして、信也となのはが、魔法に出会う切っ掛けになった2人でもある」

「そうなんですか・・・・!?」

拓也の言葉に、キャロは驚いた。

そのとき、フェイトとエリスは、

「そう・・・・ジュエルシードが・・・・・・」

「うん。 局の保管庫から、地方の施設に貸し出されてて、そこで盗まれちゃったみたい」

フェイトが、モニターを開きながら説明した。

「そっか・・・・・」

エリスは暗い表情になる。

そんな表情を見て、

「まあ、引き続き追跡調査はしてるし、私がこのまま事件を追っていけば、きっとたどり着くはずだから・・・・・・」

「フェイトが追ってる、スカリエッティ?」

「うん・・・・・でも・・・・・」

フェイトはふと微笑む。

「ジュエルシードを見て、懐かしい気持ちも出てきたんだ・・・・・・・私の全てが始まった、切っ掛けでもあったから・・・・・・」

フェイトの様子を見て、エリスは、

「そうだよねー・・・・・・・フェイトにとっては、恋の始まりでもあったわけだし・・・・・・正にキスから始まる2人の恋の物語ってね」

そう茶化すように言った。

「エ、エリス・・・・・」

フェイトは顔を赤くする。

「あははっ!」

その様子を見て、エリスは笑う。

その時、

「エリスちゃん!フェイトちゃん!」

なのはが駆け寄ってくる。

「なのはぁーーっ!!」

エリスも一目散に駆け寄った。

「えへっ! 久しぶりだね、エリスちゃん!」

なのはが笑いかける。

すると、エリスがなのはの顔をジッと見つめる。

「エリスちゃん?」

なのはが首を傾げると、突然エリスは笑みを零した。

「うん!すっかり立ち直ったみたいだね!」

エリスがそう言う。

「あ、うん・・・・・心配かけて、ゴメンね」

エリスの言った意味を理解したなのはは、少しバツの悪そうな顔をして謝る。

「なのは、私は現場検証に戻るから、アコース査察官が戻るまで、エリス先生の護衛をお願いね」

「うん、了解」

フェイトの言葉に、なのはは軽く敬礼をして返事をした。





やがて、問題なしと判断した機動六課は撤収していった。


その日は、午後の訓練は休みとされ、フォワードメンバーは解散したが、ティアナは1人自主練に励んでいた。

そんな中、隊長陣と一緒に行動していたデジタル組。

「なあ、ちょっと聞いていいか?」

その中で、純平が切り出した。



休憩室に集まると、

「俺、今までの訓練で何となく気になってたんだけど、今日改めて確信した。 あのティアナって子、強くなることや戦果を挙げることに一生懸命を越えて、焦ってるぜ」

純平がそう言う。

「あ、それ私も思った」

泉が同意し、

「僕も何となく・・・・・」

友樹も頷いた。

「実はアタシもそれは気になってた。 アイツ、ここに来る前に何かあったのか?」

ヴィータも便乗して、なのはに問いかけた。

なのはは、それを聞くと俯き、

「・・・・・・ティアナには・・・・・・・お兄さんが“いた”の・・・・・・」

そう呟く。

「えっ? アイツに兄キがいたのか?」

ヴィータはそう返す。

「うん・・・・・執務官志望の魔導師だったんだけど、事故で両親を亡くしてからは、1人でティアナを育ててたんだ・・・・・」

「でも、任務中に殉職して・・・・・・」

なのはとフェイトが答える。

すると、なのはがモニターを開いて、その人物のデータを表示する。

「ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター・・・・・・当時の階級は一等空尉。 所属は首都航空隊。 享年21歳・・・・・」

「結構なエリートだな」

なのはの説明を聞き、ヴィータがそう漏らす。

「そう・・・・・エリートだったから・・・・・・なんだよね・・・・・」

「どういう事だ?」

ヴィータの言葉を聞いて、フェイトが呟いた意味ありげな言葉が気になった拓也がフェイトを見る。

「ティーダ一等空尉が亡くなった任務の時、逃走中の違法魔導師に手傷は負わせたんだけど、取り逃がしちゃってて・・・・・・」

「まあ、地上の陸士部隊に協力を仰いだお陰で、犯人はその日のうちに取り押さえられたそうなんだけど・・・・・」

「その事で、心無い上司がちょっと酷いコメントをして、一時期問題になったの・・・・・」

フェイトとなのはの言葉に、

「酷いコメント?」

泉が尋ねる。

「うん・・・・・『犯人を追い詰めながらも取り逃がすなんて、首都航空隊にあるまじき失態だ』とか、『たとえ死んでも犯人を取り押さえるべきだった』とか・・・・・・もっと直球に、『任務を失敗するような役立たずは・・・・・』とか・・・・・・・」

フェイトは俯いて答える。

「何て酷い上司だ!」

「うん!命を賭けた部下にそれは無いよ!」

純平と友樹も、怒りを露にする。

「当時のティアナはまだ10歳・・・・・たった1人の肉親を亡くして、しかもその最後の仕事が、無意味で役に立たなかったって言われて・・・・・きっともの凄く傷ついて・・・・・悲しんで・・・・・」

「だからティアナは、きっと証明しようとしてるんだ・・・・・・お兄さんの魔法は役立たずなんかじゃないって事を・・・・・・そして、そのお兄さんが叶えられなかった、執務官になるって夢を、代わりに叶えるために・・・・・・・」

「なるほどね・・・・・・」

拓也は、納得したように頷き、

「けど、だからこそ危ないな」

続けてそう言った。

「お兄さん?」

なのはが気になったのか、問いかける。

「・・・・・自分を省みない無理を続ける者がどうなるのかは、お前達がよく知っている筈だが?」

拓也はそう返した。

その言葉に、なのは、信也、ヴィータは俯く。

「? 何かあったのか?」

純平が尋ねる。

「まあな」

拓也はそう曖昧に答えた。






それからの数日間、ティアナ、そしてスバルは、なのはの訓練以外にも、早朝と夜間に自主訓練を行なうようになる。

だが、それは2人の・・・・・特にティアナの体力の限界を超えており、周りから見れば、無茶以外の何物でもなかった。

ある夜、2人の訓練を見かけた拓也は、

「お前ら、少しは休んだら如何だ?」

そう2人に問いかける。

「拓也さん?」

スバルは、一時的に訓練を止めて、拓也の方を向くが、

「ご心配なく。 私は凡人ですから、休んでる暇なんて無いんです」

ティアナはそう言って、訓練をやめようともしない。

「そうは言うけどな、体力の限界を超えて無理したって、何も身につかないぞ」

拓也はそう忠告するが、

「拓也さんみたいな才能溢れる天才に、凡人の気持ちは分かりませんよ」

ティアナはそう言うだけで訓練を続ける。

「はぁ・・・・・・俺が天才ね・・・・・」

拓也は一度ため息を吐いて呟く。

「じゃあ、お前が天才と思ってる俺からの忠告だ。“勇気”と“無謀”が別物なのと同じように、“努力する”事と“無理、無茶をする”事が別物だという事は覚えておけよ」

ティアナは一瞬動きが止まる。

だが、

「ご忠告、感謝します」

それだけ言って訓練を再開する。

拓也はそんな2人に背を向け、その場を立ち去ろうとしたが、一旦足を止め、

「ああ、それから・・・・・・」

背を向けたまま2人に向かって言った。

「あのお人好しのなのはが、お前らの目標を蔑ろにしてるとは、とても思えないけどな」

拓也はそれだけ言って立ち去った。






それから更に数日後。

新人メンバーの成長を見るための模擬戦の日。

まずは、スバルとティアナVSなのはの戦い。

それを、拓也達デジタル組を含めた他メンバーは、ビルの屋上から見学していた。

模擬戦が始まって少しすると、屋上のドアが開き、

「あ、もう模擬戦始まっちゃってる?」

「フェイトさん!」

現れたフェイトにエリオが名を呼んだ。

「私も手伝おうと思ってたんだけど・・・・・」

「今はスターズの番」

フェイトの言葉に、ヴィータが答えた。

「本当は、スターズの模擬戦も私が引き受けようと思ってたんだけどね」

「ああ。なのはもここん所、訓練密度濃いーからな。少し休ませねーと」

見学メンバーで話をしていると、

「お、クロスシフトだ」

ヴィータの言葉で、全員が地上のティアナの方を向く。

そこには、10発前後の魔力弾を発生させたティアナ。

「クロスファイヤー・・・・・・シューーーーット!!」

ティアナは、それを上空のなのはに向けて放つ。

だが、その魔力弾の動きに何時ものキレがなく、動きも鈍かった。

「ん? なんかキレがねえな?」

「コントロールは、良いみたいだけど・・・・・」

その事に気付いたヴィータとフェイトは声を漏らす。

「・・・・・・疲労だろうな」

拓也がティアナを見ながら言った。

「タクヤ?」

フェイトが尋ねる。

「連日の度を越えた自主訓練の疲労がティアナの動きを鈍らせてるんだ。 昨日は流石に早めに自主訓練を切り上げたようだけど、その程度じゃ今まで蓄積された疲労は改善されなかったんだ。 まあ、なのはの訓練ですら限界ギリギリなのに、そこから無理をして自主訓練を続ければ、疲労が溜まる一方なのは当然なんだが・・・・・・・」

そう言った拓也に、

「お前、そこまで分かってて止めなかったのか!?」

ヴィータは叫ぶように言ってくる。

「止めようとはしたさ。 でも、俺が言っても逆効果にしかならなかった。 ティアナから言わせれば、俺は“天才”なんだそうだ」

「はぁ? お前が天才? 何でだよ?」

ヴィータが呆れたような声を上げる。

「多分、ティアナは自分の短所ばかりを見る傾向にある。 それで、ティアナの短所は、一撃の攻撃力、近接戦闘技能、あとは防御力。 それらは全て、俺の長所でもある」

拓也がそこまで言った時、フェイトが気付いたように言った。

「そっか! ティアナからすれば、タクヤは自分の欠けている所を全部持ってるから、それで・・・・・」

「ああ。あいつが俺より優れてる所なんて、いくらでもあるって言うのに、そこんとこに眼を向けようとしないからな・・・・・・」

「なるほど・・・・・・」

ヴィータが納得したように頷く。

その間にも、模擬戦は続いていくが、

「おいおい・・・・・ちょっとこれって酷すぎないか・・・・・・?」

純平が声を漏らす。

「そうね・・・・・訓練でやってる事が、全然活かされて無い」

泉も同意するように呟く。

2人の言った通り、スバルとティアナの動きは、何時もの訓練の動きがほとんど取り入れられていなかった。

「兄さん、この事は知ってたの?」

信也が拓也に振り向いて聞く。

「いや・・・・・俺もてっきり、奇襲の為に訓練の動きの中に訓練外の動きを組み込むだけだと思ってたんだけど・・・・・・まさかここまでかけ離れた事をやるなんて・・・・・・・」

拓也も顔を顰める。

拓也だって、この事を知っていれば、無理矢理にでも止めていた。

訓練、練習の大切さは、拓也もよく分かっている。

拓也とて、得意なサッカーでも練習して無いプレーをやれと言われて行き成り出来るなどとは思っていない。

そして、そのプレーを試合・・・・・・つまり、本番で成功させる為には、繰り返し練習するほか無いのだ。

だが、今スバルとティアナがやっている事は、焼き付け刃の動きをがむしゃらに繰り出しているだけ。

そんなものは、実戦では危険な事以外の何物でもない。

スバルが殴りかかって、なのはの動きを止めている隙を狙って、ティアナがクロスミラージュの銃身に発生させた魔力刃でなのはを狙う。

その攻撃をかわした所で、

「どうしちゃったの!? 2人とも!!」

なのはが堪らず声を上げた。

「強くなりたくて頑張ってるのは分かるけど、練習の時だけいう事聞いて、本番でそんなふうに勝手な事したら、毎日の訓練の意味が無いよ!!」

なのははティアナの方を向き、

「ティアナも、動きが鈍る位無理して訓練しても、危険が増すだけだよ!」

そう叫んだ。

「そんなことは分かっています!!」

ティアナは叫んで答える。

「でも・・・・・でも・・・・・私は凡人だから・・・・・・・・誰も傷つけないために強くなるには・・・・・・・・無理するしか無いじゃないですかぁっ!!」

「ティアナ! 誰も傷つけたくないなら、尚更無理しちゃ駄目だよ!」

ティアナの言葉に、なのははそう叫ぶ。

だが、ティアナはクロスミラージュを構え、魔力を集中させる。

「私は・・・・もう誰も傷つけたくないから・・・・・・・だから、強くなる為に自分に気を使ってる余裕なんか無いんです!!」

そう叫ぶティアナの瞳からは、涙が溢れている。

『誰も傷つけたくない』というのはティアナの本心だろう。

だが、

「・・・・・・・・・ティアナ・・・・・・・やっぱり何も分かって無いよ・・・・・・」

なのはの雰囲気が変わる。

静かな・・・・・それでいて、途轍もなく重い声。

なのはは右手をティアナに向ける。

「・・・・・・・・・ちょっと・・・・・・頭冷やそうか・・・・・・・」

なのはがそう呟くと、なのはの右手の周りに、複数の魔力弾が発生する。

「クロスファイヤー・・・・・・」

「うわぁああああああああっ!! ファントムブレ・・・・・・・」

ティアナが砲撃魔法を放とうとした瞬間、

「・・・・シュート」

それよりも早く、なのはの魔力弾が放たれた。

「ッ!?」

――ドォォォォン!

魔力弾がティアナに直撃し、爆煙に包む。

「ティア! ッ!? バインド!?」

ティアナに駆け寄ろうとしたスバルにバインドが掛けられた。




ティアナが撃たれた様子を地上から見ていた拓也は、

「うおっ・・・・・相変わらず、やる時は容赦ないな、なのはの奴・・・・・・」

そう感想を漏らす。

拓也とて、今の一撃は仕方ないと思っている。

だが、次の瞬間拓也は眼を疑った。

スバルがバインドに掛けられ、なのはは次弾を用意している。

「チッ! なのはの奴!」

拓也は、瞬間的にヴリトラフォームを発動させ、飛び出す。

「あっ! タクヤ!?」

フェイトが叫んだが、拓也は一直線に、ティアナへと向かう。



「ジッとして・・・・・良く見てなさい・・・・・・」

なのはが静かにスバルに告げる。

煙が晴れていく先には、朦朧とする意識で、何とかウイングロードの上に立ちすくむティアナの姿。

なのはは、ティアナに向けたままの右手に再び魔力を集中する。

なのはは、ティアナから視線を外していない。

だが、その瞳に映っていたのは、ティアナではなかった。

なのはの瞳に映っていたのは、今のティアナと同じように、自分を省みず無理を続けていた、幼き頃の自分自身。

――ギリッ

なのはは無意識に歯を食いしばり、歯軋りの音がした。

「なのはさっ・・・・・・!」

スバルが止めようと叫ぼうとしたが、

「・・・・・・シュート」

魔力弾が放たれた。

一直線にティアナに向かう魔力弾。

ティアナには避ける力は残っていない。

そのまま直撃するかに思えたその瞬間、

「うぉおおおおおおおおおっ!!!」

ヴリトラフォームの拓也がティアナの前に立ち塞がり、その魔力弾を受けた。

爆煙に包まれる拓也。

だが、それほどダメージを受けていない拓也は堂々とした姿でなのはを見下ろした。

「お兄さん・・・・・」

「た、拓也さん・・・・・・」

突然割り込んだ拓也に、2人は声を漏らす。

「なのは・・・・・何故2発目を撃った・・・・・いや、“誰”に向かって撃った!?」

拓也は強い口調でなのはに問いかける。

「う・・・・」

なのはは少したじろぐ。

「1発目は仕方ない。 あれは必要な事だったしな。 だが、2発目・・・・・・お前は、ちゃんとティアナを見て撃ったのか!?」

「そ、それは・・・・・・」

「お前がちゃんとティアナを見て撃ったと自信を持って言い切るのなら、邪魔した事は謝ろう・・・・・・やり過ぎ感は否めないが、それがお前の教導のやり方だというのなら、俺が口を挟む事じゃない」

拓也は一旦一呼吸置き、再びなのはを見据える。

「だが! ティアナではない、ティアナに似た誰かを見て撃ったのだとしたら、俺はここを退く訳にはいかない! それは、もう教導なんかじゃない。 単なる八つ当たりだ!!」

拓也はそう叫ぶ。

「部下に八つ当たりする上司なんて、最低だぞ」

続けて拓也はそう言った。

「・・・・・・・・・・」

なのはは俯く。

「・・・・・・・ふう」

すると、拓也は突然ため息を付いた。

「だからな、なのは・・・・・・」

拓也はさっきとは打って変わって、穏やかな口調でなのはに言葉をかける。

「八つ当たりするなら、俺にしろよ」

拓也の言葉に、驚いた顔で顔を上げるなのは。

「お、お兄さん?」

「ガス抜きぐらいなら、付き合ってやるって言ってるんだ。 ティアナの姿を見て、似てると感じたんだろ? 昔のお前に・・・・・」

拓也の言葉に、再び俯くなのは。

「スバル!ティアナを連れて下がってろ!」

拓也はスバルに呼びかける。

「あ・・・・は、はい!」

いつの間にかスバルに掛けられていたバインドは解けており、既に限界で気を失ったティアナに駆け寄る。

スバルはティアナを肩に担ぐと見学組がいる屋上に向かってウイングロードを伸ばした。

スバルたちが下がった事を確認すると、

「これで多少暴れても問題ないだろ?」

拓也はなのはに言う。

「お兄さん・・・・・何で・・・・・」

なのはが問いかける。

「お前は昔から我慢しすぎなんだよ。 偶にはガス抜きも必要だろ? ・・・・・それに・・・」

「え?」

「俺は、お前の兄貴になるんだからな」

拓也は、笑みを浮かべてそう言った。

「う・・・・・うう・・・・・・・」

その言葉が切っ掛けになったのか、レイジングハートを持つ手が震えだし、

「うぁあああああああああああっ!!」

なのはは叫びながらレイジングハートを構え、アクセルシューターを放った。

十数発の魔力弾が拓也に向かう。

だが、拓也は身構えるだけで避けようともしなかった。

魔力弾全てが直撃し、拓也は爆煙に包まれる。

だが、

「まだまだぁ! こんなもんか!?」

拓也はそう叫ぶ。

「あああああああああああああっ!!」

なのはは、全ての鬱憤を吐き出すかのように叫び続けながら、レイジングハートをバスターモードに変形させ、砲撃を放つ。

拓也はその砲撃に飲み込まれるが、

「おら! 如何した!? お前の不満はこの程度か!?」

拓也はなのはを挑発するように叫ぶ。

「うぁあああああああああああっ!!!」

なのはは、砲撃を乱射する。

拓也は、その全てを避けようともせずに受け止める。

「タクヤッ!」

その様子を見かねたフェイトは飛び出そうとしたが、

「フェイト!」

信也に肩を掴まれ止められる。

フェイトが振り向くと、信也は首を横に振る。

それだけで、言いたいことを悟ったフェイトは、今にも飛び出しそうな気持ちを我慢しながら、心配そうな表情で2人を見上げた。

やがて、十数発の砲撃を撃ち終えたところで、

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・」

限界を迎えたのか、なのはが砲撃を撃つ事をやめ、肩で息をする。

そして、

「うっ・・・・・・」

気が抜けたなのはは、今までの訓練の疲労もあってか、気を失う。

それによって、アクセルフィンが消失し、なのはは落下を始める。

だが、それを予想していたのか、信也がなのはを受け止めた。

信也がなのはを連れて屋上に戻ると、拓也がゆっくりと降りてくる。

「兄さん・・・・・」

「信也、2人が起きたら、ティアナに無理をした者がどうなったのかをしっかりと話すことだな」

拓也の言葉に、

「うん・・・・・」

信也は俯きながらも頷いた。






次回予告


目を覚ましたティアナに語られるなのは達の過去。

それを聞いたティアナ達は・・・・・

そして、それと同時に襲来したガジェットに、拓也とフェイトが立ち向かう。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十一話 たいせつなこと

今、未来への翼が進化する。








あとがき

どうもです。

なのはの魔王化。

アニメとちょっと変えました。

自分ではこんな感じにしましたが如何ですかね?

納得できます?

まあ、次回は信也撃墜事件を語るお話。

さて、どうなるのでしょうか?

次回もお楽しみに。































































PS.  アダルトステージを覗いてみると・・・・・・・・・・?




[8056] 第十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/08/14 21:47
打ちのめされたティアナと、八つ当たりを指摘されたなのは。

2人の想いは・・・・・・・



第十一話 たいせつなこと





「う・・・・ん・・・・・・・」

医務室のベッドで、なのはが目を覚ます。

「あれ・・・・・・? 私・・・・・・・」

何故自分が医務室のベッドで寝ているのか不思議に思っていたが、隣のベッドで眠っているティアナを見つけ、その理由に思い至る。

「そっか・・・・・私、あの後気絶しちゃったんだ・・・・・・・」

なのはがそう呟いた時、医務室の扉が開き、シャマルが入ってくる。

「あ・・・・・・シャマルさん・・・・」

「あ、起きたのね、なのはちゃん」

シャマルはなのはに微笑む。

その時、なのはは時計に気付いた。

時計の針は、6時過ぎを指している。

「ええっ!? もう6時!?」

「ええ、ぐっすりと寝ていたわよ。 多分、今までの訓練の身体的疲労と、今回の精神的な疲労が重なったんだと思うわ」

「そうですか・・・・・・あのっ、訓練はどうなりましたか?」

「訓練なら、なのはちゃんが気絶したのは自分の責任だって言って、拓也君が見てくれたわ」

「そうですか・・・・・・お兄さんが・・・・・・」

なのはが俯く。

「それから、拓也君からの伝言よ」

シャマルの言葉に、なのはは顔を上げる。

「『ティアナが起きたら、無理した奴がどうなったか、ちゃんと話してやれ』、だそうよ」

「お兄さん・・・・・・・」

なのはは、その言葉を聞くと、未だ眠り続けるティアナに視線を向けた。





そして、午後9時過ぎ。

漸くティアナが目を覚ました。

「う・・・・・・・あれ?」

ティアナは身体を起こすが、今の状況が理解できていないのか声を漏らす。

その時、ドアが開いてシャマルが入ってくる。

「あら、ティアナ。 起きた?」

「シャマル先生・・・・・・えと・・・・?」

ティアナは、周りの様子を窺う。

「ここは医務室ね」

シャマルが、ベッドの横の椅子に腰掛けながら口を開く。

「昼間の模擬戦で、撃墜されちゃった事は覚えてる?」

シャマルの言葉で、ティアナにその時の記憶が蘇る。

「・・・・・・はい」

ティアナは小さく頷く。

「なのはちゃんの訓練用魔法弾は優秀だから、身体にダメージは無いと思うんだけど・・・・・・・」

シャマルは立ち上がり、ティアナのズボンを取りに行く。

ティアナは、ベッドから降りようとして、ズボンを穿いてない事に気付き、頬を染めた。

「どこか、痛いところはある?」

シャマルはズボンを手渡しながら尋ねる。

「いえ・・・・・・大丈夫です・・・・・」

ティアナはそうバツが悪そうに呟くと視線を外し、ふと時計に目が行く。

そこで時計の指していた時間を見て驚愕する。

「9時過ぎ!?」

ティアナは思わず窓の外を確認する。

「えっ!? 夜ぅ!?」

「すごく熟睡してたわよ。 まるで死んでるんじゃないかって思うくらい」

シャマルがティアナにそう言う。

「最近、碌に寝てなかったでしょ? その疲れが、纏めて来たのよ」

シャマルの言葉に、ティアナは呆然とした。

「ああ、それから・・・・・・」

シャマルは言葉を続ける。

「ティアナが起きたら、なのはちゃんの方から新人達に大事な話があるって事だから、ロビーに集合ね」

「・・・・・はい・・・・分かりました」

シャマルの言葉に、ティアナは小さく返事をした。




ロビーには、既にティアナ以外のフォワードメンバーと隊長陣、デジタル組が揃っていた。

ティアナがロビーに現れると、

「あ! ティア~~!!」

スバルが一目散に駆け寄る。

「スバル・・・・・」

ティアナはスバルの名を呟く。

「ティア! 大丈夫!? 怪我は無い!?」

スバルは次々に問いかける。

「ええ・・・・・大丈夫よ」

ティアナは、小さいながらも返事を返す。

すると、なのはが歩いて近付いてきた。

「教官・・・・・・」

なのはがティアナの前で立ち止まると、

「ティアナ・・・・・ごめんね」

なのはは頭を下げた。

「ちょ!? 何で教官が謝るんですか!?」

いきなり頭を下げたなのはに、ティアナは慌てる。

「私が教官に撃墜されたのは、私達が教官の言う事を無視していたからで、教官が謝る必要は・・・・・・!」

「ううん、違うの」

ティアナの言葉を遮って、なのはは首を横に振る。

「ティアナは、私が2発目を撃った所は覚えてるかな?」

なのはの言葉に、ティアナはその光景を思い出した。

「あ・・・・・」

「その2発目は、ティアナに対する罰じゃない。 単なる私の八つ当たりだったんだ・・・・・・」

「え? 八つ当たり・・・・?」

なのはの言葉に疑問に思うティアナ。

「その2発目は、お兄さんが止めてくれたけど、ティアナに対して八つ当たりしようとしてたことは事実だから・・・・・・・」

「拓也さんが・・・・・」

拓也に助けられたと聞いて、複雑な思いを抱くティアナ。

「部下に八つ当たりする上司なんて、最低だよね」

なのはは、自称気味な笑みを見せた。

「いえ・・・・・・」

ティアナは気を取り直すと、

「それで、話というのは・・・?」

そう尋ねる。

「うん・・・・・今言った八つ当たりに関係する話なんだけど・・・・・・」

と、そこまで言いかけた所で、警報が鳴り響いた。

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」





ロングアーチでは、海上に現れたガジェットの反応を捉えていた。

「東部海上に、ガジェットドローンⅡ型が出現しました!」

「機体数、現在40機!旋回飛行を続けています!」

「レリックの反応は!?」

「現状では、付近に反応はありません!・・・・・ただ、これ・・・・・今までよりも機体速度が大分・・・・・・いえ、かなり速くなっています!」

「5機編隊が8つ。 それぞれ別の定演機動で旋回飛行中です」

はやて達は、隊長陣に意見を求める事にした。






『・・・・・っていうことなんやけど』

はやてからの通信で、現在の状況を知ったなのはは、出撃メンバーを選定する。

「海上ってことは、空戦になるから、出撃は私とフェイト隊長、ヴィータ副隊長。 後は信也君ってことに・・・・・・・」

「ちょっと待て」

なのはの言葉に、拓也が待ったをかける。

「お兄さん?」

「なのはも、ヴィータも信也も、こいつ等に話さなきゃいけないことがあるだろ?」

「そ、そうですけど・・・・・・・」

「俺にとっちゃ、出撃よりそっちの方が大事に思える・・・・・・だからよ」

拓也は一旦言葉を区切り、

「ここは、俺とフェイトで行く」

拓也の言葉に、驚いた顔を見せる一同。

「タクヤ・・・・・でも・・・・」

しかし、フェイトは心配そうな表情を拓也へ向ける。

「心配すんなよ。 俺とお前が力を合わせれば、ガジェットの40機ぐらいあっという間だぜ」

拓也は笑みを浮かべてそう言った。

「・・・・・うん」

フェイトは頷いたが、心配そうな表情は戻らない。

その時、

「・・・・・・・また、見せ付ける気ですか?」

「ん?」

ティアナの呟いた言葉に、拓也は其方を向く。

「また、才能の違いを見せ付ける気なんですか!?」

「ティ、ティア?」

拓也を睨むような視線と共に発せられたティアナの言葉に驚くスバル。

だが、拓也は、

「ティアナの言ってる才能がどんなものかは知らないけど、今の俺じゃ1人で40機のガジェットを一度に相手するのはちょっときついぜ」

「えっ?」

拓也の呟いた言葉に、声を漏らすティアナ。

「けどな・・・・・1人じゃ無理でも、仲間と力を合わせれば出来るんだよ」

拓也はそう言って、ヘリポートへ向かって歩いていき、フェイトもその後を追った。



2人がロビーから居なくなると、

「なんで・・・・・・あの人ならガジェットの40機ぐらいあっという間に・・・・・」

ティアナがそう悔しそうに呟くが、

「ホントにそう思ってんのか?」

ヴィータが確認するように問いかける。

「当たり前じゃないですか!? 信也さんだって言ってましたよ! 拓也さんは、本当に本気を出せば、SS+は行くって!」

ティアナの言葉を聞いて、ヴィータはため息を漏らす。

「まあ、確かにアイツが本気を出せば、SS+の力は出せる」

ヴィータはそう肯定する言葉を言う。

「だったら!」

「精々5分だけどな」

「ッ!?」

叫ぶように言葉を吐き出そうとしたティアナだが、続けて言ったヴィータの言葉で声を詰まらせる。

「如何・・・・・いう・・・・・・?」

ティアナの漏らした疑問の言葉に、シグナムが口を開いた。

「カンバラの魔力は、精々AA程度しかない。」

「「「「えっ?」」」」

新人全員が声を漏らした。

「属性特化型の特性として、魔力放出量の限界が、通常の魔導師と比べると遥かに大きい。 故に、魔力を一気に放出すればAA程度の魔力でも、SS以上の力は出せる。 だが、それと同時に、魔力の枯渇も早い」

「しかも、アイツの魔法の有効射程範囲は、全てが中近距離。 長距離なんてもってのほかだし、誘導弾だって使えねえよ」

シグナムの言葉に続いて、ヴィータが拓也の魔法について捕捉する。

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

「確かにカンバラは強い。 カンバラ相手に1対1の戦いでまともに戦えるのは、管理局の中でも数える程度だろう。 だが、だからと言って、多人数相手に強いかといえば、そうでも無い。 属性特化型魔導師が、自分の魔力レベル以上の力を発揮する場合、持久戦に持ち込まれると、非常に弱い」

「この前のクソやろ・・・・・じゃなくて、セイマ一佐との戦いだって、セイマ一佐が拓也を舐めてたお陰で、中近距離戦であっという間に片が付いた。 けど、距離を取って砲撃や射撃を中心に攻撃されてたら、もっと苦戦してた筈だ」

2人の言葉に唖然となる新人達。

「じゃあ、今回のガジェットの相手は・・・・・・」

「ああ、はっきり言って、カンバラには相性の悪い相手だ。 少なくとも、カンバラ1人ではティアナが考えていたような殲滅戦は不可能だ」

「あ・・・・・・」

シグナムの言葉に、ティアナは俯く。

「まあ、それでも普段の兄さんなら、各個撃破で時間はかかるけど勝てただろうね」

信也がそう言うと、

「普段の拓也さんならって・・・・・まるで今の拓也さんは普段道理じゃないような言い方ですね?」

信也の言葉が気になったのか、エリオがそう漏らす。

「なんだよ? 気付いてなかったのか?」

純平がそう言った。

「え?」

エリオが首を傾げるが、

「仕方ないよ。 拓也さん、気付かれないようにしてたから・・・・」

友樹がそう言い、

「でも、フェイトは気付いてたみたいだけどね」

泉もそう言った。

「「「「?」」」」

新人達は、何のことか分かって無いようだ。

と、その時、

「なのはさん、準備できました」

シャーリーがロビーへやってくる。

「シャーリー・・・・・うん、お願い」

シャーリーもロビーの椅子に腰掛けると、手元にパネルを開き、操作する。

そして、パネルを操作しながら口を開いた。

「昔ね・・・・・1人の女の子と男の子がいたの。 その子達は、本当に普通の女の子と男の子で、魔法なんて知りもしなかったし、戦いなんてするような子じゃなかった」

モニターが開き、全員が其方に注目する。

そこに映っていたのは、幼き頃のなのはと信也。

「友達と一緒に学校へ行って、家族と一緒に幸せに暮らして・・・・・そういう一生を送る筈の子達だった。 だけど、事件が起こったの。 魔法学校に通っていたわけでもなければ、特別なスキルがあったわけでも無い。 偶然の出会いで魔法を得て、偶々魔力が大きかったってだけの、たった9歳の子供達が・・・・・・」

モニターには、なのはと信也のジュエルシードとの戦いの様子が映し出されている。

「魔法と出会って、僅か数ヶ月・・・・・・命がけの実戦を繰り返したの・・・・・・」

「その2人に少し遅れて、その男子の兄も魔法と出会った」

シグナムの言葉と共に、モニターに子供の頃の拓也と、ジュエルシードに寄生された白熊の映像が映し出される。

「そいつが初めて相手にしたのは、とあるロストロギアが寄生した原生生物。 はっきり言えば、魔法に出会ったばかりのヒヨっこが勝てるような相手じゃなかった」

「だが、偶然にもその人物は、既に管理局の任務などとは比較にならぬほどの命がけの戦いを経験していた」

ヴィータとシグナムの言葉に新人達は拓也から聞いた話を思い出す。

「その戦いの経験は、魔法初心者という点を差し引いても、十分すぎるほどの強さをその者に与えていた」

モニターには白熊を圧倒する拓也が映っていた。

続けて、なのは、信也とフェイト、アルフが争い合う場面が映る。

「これ・・・・・」

「フェイトさん?」

「あ・・・・・」

新人達は、今では仲がとても良いなのはとフェイトが争い合っていることに困惑していた。

「フェイトちゃんはね、昔家族関係が複雑で、あるロストロギアを巡って、敵同士だったんだって・・・・・」

シャマルが新人達に説明する。

「この事件の中心人物は、テスタロッサの母。 その名を取って、プレシア・テスタロッサ事件。 あるいはジュエルシード事件と呼ばれている」

モニターには、スターライトブレイカーを放つなのはの姿が映る。

「集束砲!? こんな大きな!?」

「9歳の・・・・女の子が・・・・?」

「唯でさえ、大威力砲撃は身体に酷い負担がかかるのに・・・・・」

エリオ、スバル、キャロは、その姿に驚愕し、ティアナは複雑そうな視線を向けていた。

新人達の言葉に、なのはは俯き気味になる。

「その後もな、然程時を置かず、戦いは続いた」

「私達が深く関わった、闇の書事件・・・・・」

シグナムとシャマルがそう言う。

「襲撃戦での撃墜未遂と、敗北・・・・・」

ヴィータに倒されるなのはと、ダスクフォームの輝一にやられる信也がモニターに映る。

「「「「あ・・・・」」」」

「・・・・・それに打ち勝つ為に選んだのは、当時はまだ安全性が危うかった、カートリッジシステムの使用・・・・・・・身体への負担を無視して、自身の限界値を超えた出力を無理矢理引き出すフルドライブ」

モニターに映るのは、無茶な戦いを続ける2人。

「「「「ああっ・・・・・」」」」

その戦いの危うさに、思わず新人達は声を漏らす。

「だが、闇の書事件が終わった後、2人には決定的な差が現れた」

シグナムの言葉に、なのはは益々顔を俯かせる。

「2人は、カンバラから忠告を受けた。 カートリッジシステムの使用や、フルドライブを控えるようにとな。 カンバラは、本能的に2人の負担を見抜いていたのだろう」

シグナムの言葉をシャーリーが引き継ぐ。

「男の子の方は、自分のお兄さんからの忠告だけあって素直にその忠告に従い、カートリッジやフルドライブの使用を極力避けた。 ・・・・・・・でも、女の子の方は・・・・・・・・」

「私は、その忠告を聞かなかった。 私が頑張れば頑張った分だけ助かる人が増えると思って・・・・・・事実そうだったから、私は自分のことを考えずに、私は無茶を続けた」

なのはは俯きながらそう言う。

「無茶を続けた理由には、自分の想いを通したい気持ちもあったし、それに、万が一の事が起きても傷つくのは自分だけだと思ってたから・・・・・・ティアナも、そう思ってたんでしょ?」

なのはは、ティアナに確認するように問いかける。

「・・・・・・はい」

ティアナは頷く。

すると、なのはは目で先を促した。

シャマルが説明を続ける。

「事故が起きたのは、入局2年目の冬。 異世界での演習任務の帰り。 正体不明の反応が現れたから、なのはちゃん、ヴィータちゃん。 そして、信也君が調査に向かった。 そこで出会った未確認体。 何時ものなのはちゃんだったら、きっと何の問題も無く味方を守って、落とせるはずだった相手・・・・・・・だけど、溜まっていた疲労・・・・続けてきた無茶が、なのはちゃんの動きを、ほんの少しだけ鈍らせちゃった・・・・・・」

「・・・・・なのはさんが・・・・・怪我を?」

スバルがその先を予想してそう聞いたが、なのはは首を横に振って頭を抱えるように怯えた仕草をする。

その様子を見て、シャマルは少し躊躇したが、

「その結果が・・・・・・これ」

モニターを操作し、画面を切り替えた。

「「「「えっ!?」」」」

新人達の驚愕の声が上がる。

そこに映っていたのは、なのはではなく、重傷を負って身体中に包帯が巻かれ、人工呼吸器も取り付けられた信也の姿。

「な!何で信也さんが!?」

エリオが立ち上がりながら叫ぶ。

ティアナは驚愕の余り、モニターに目を奪われたまま固まっている。

すると、信也が口を開く。

「スバルに聞くけど、もしティアナが任務中に攻撃を受けそうになって、自分の居る位置からならギリギリ間に合うという位置に居たら、スバルなら如何する?」

「え? そ、それは勿論助けに・・・・・あっ!」

自分の言った言葉で、信也がどういう状況になったのかを悟るスバル。

同時に、ティアナもそれに気付き、目を見開く。

「そういう事だよ。 僕は、なのはを守ろうとして、失敗。 なのはの代わりに自分が攻撃を受ける形になったんだ」

信也がそう言う。

「そして、それはなのはに取って、自分が攻撃を受けるよりも深い傷を心に刻んだ」

「なのはは、その事がトラウマになって、空を飛ぶことが出来なくなった。 空を飛ぼうとすると、その時の光景がフラッシュバックしちまうようになったんだ」

ヴィータも、悔しそうにそう言葉を吐き出す。

「そして、更に拙かったのが、その当時の2人の間には、既に恋心があったことだ。 自分の大切な人物が、自分の無茶の所為で生死を彷徨うほどの重傷を負った。 その苦しみはどれ程のものか・・・・・・・・・・」

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

新人達は、シグナムの言葉に声を失う。

「なのはは、その後から、信也を徹底的に避け続けた・・・・・いや、信也から逃げ続けたんだ。 お前らの昇格試験の時まで、碌に口もきいてなかったんだ。 でも、その事件の後から、なのはは無茶な事だけは絶対にしないように徹底してきた」

ヴィータの、

「そして、現在。 その当時の自分と同じような無茶をする部下」

そしてシグナムの言葉が、ティアナの心に深く突き刺さる。

「確かに時には無茶をする事が必要な場面もあるだろう・・・・・・だが、今までお前が無茶をしてきた場面は、必ずしも無茶をしなければ切り抜けられない状況だったのか?」

その言葉に、ティアナは何も言えなくなる。

「なのはさん・・・・・皆にさ、自分と同じ思いさせたくないんだよ・・・・・だから、無茶なんてしなくてもいい様に、絶対絶対、皆が元気に帰ってこられるようにって、本当に丁寧に、一生懸命頑張って教えてくれてるんだよ・・・・・・・」

その言葉に、涙ぐむ新人達。

だがそこに、

「・・・・・・でもさ、ティアナが無茶をした理由・・・・・少しきついかもしれないけど、なのはにも少しは責任があると思うんだ」

信也がそう言った。

その言葉に、驚愕する一同。

「なのはってさ、皆に訓練の目的をしっかりと話してないから、ティアナみたいに、しっかりと目標が立っている人にとっては、目標に近付いている気がしなかったんだと思うよ。 まあ、まだ基礎的な能力をしっかりと身に付けさせる段階だろうから、仕方ないのかもしれないけど・・・・・・・」

「信也さん・・・・・それ・・・・・如何いう・・・・・?」

ティアナが動揺した雰囲気で問いかける。

「僕も士郎さんに剣を教わってたんだけど、最初の1年間は剣にも触らせてもらえなかったよ。 身体作りばっかりだったからね」

「え?」

「まあ、事前に説明があったから文句は無かったけど、実際に剣の訓練に入ってから、その身体作りは本当に必要なものだったんだって実感したよ」

信也はティアナの方を見ると、

「ティアナ、どんなに応用を覚えようとしても、基礎がしっかりしてなきゃ出来るわけ無いよ。 基礎があってこその応用だからね。 それに、焦って近距離用魔法を覚えなくても、その位はなのはも考えてると思うよ。 違う?」

信也はなのはに問いかける。

「・・・・・・ティアナ。 ちょっとクロスミラージュを出してみて」

「あ、はい・・・・・」

ティアナはなのはに言われるままにクロスミラージュを出す。

なのははそれを受け取ると、

「システムリミッター、テストモードリリース」

『Yes.』

なのはは、ティアナにクロスミラージュを返すと、

「命令してみて、モード2って」

ティアナは少し呆然としながら、

「モード・・・・2」

『Set up. Dagger Mode.』

ティアナの命令で、クロスミラージュが少し変形し、銃口の先から魔力刃が発生し、更にグリップの下から銃口にかけて魔力刃が伸び、ティアナが考えたものより、より実戦向きの近距離形態に変形した。

「これって・・・・・」

スバルが声を漏らす。

「ティアナは執務官志望だからね。 ここを出て、執務官を目指すんだったら、如何しても個人戦が多くなるし、将来を考えて、用意はしてたんだ・・・・・・」

ティアナは思わず涙を零す。

「バカだ私・・・・・・拓也さんの言った通りだ・・・・・なのはさんはちゃんと私達のこと考えてくれてたのに・・・・・勝手に1人で焦って・・・・・・・・」

「ううん・・・・・・ちゃんと説明しなかった私が悪いんだよ」

「いえ、そんなことは!」

このままだと、同じやり取りを繰り返すと思った信也は、

「まあ、ここは2人とも悪かったってことだよ」

お互い様という事で、2人のやり取りを終わらせた。

と、そのとき、

『フェイト隊長と、拓也さんが現場に到着しました!』

ロングアーチから報告が来る。

そして、その様子がモニターに映し出された。

「皆、これから2人のやる事を良く見ていて、力を合わせるという事が良く分かるから」

なのはがそう言った。






拓也とフェイトは、ヘリの後部からガジェットの様子を窺っていた。

「相変わらず、5機編隊が8か・・・・」

拓也は呟く。

「タクヤ・・・・・・本当に大丈夫?」

フェイトは心配そうな表情で拓也に問いかけた。

「・・・・・・心配するなって。 如何しても心配なら、さっさと片付けようぜ」

拓也はフェイトに笑いかける。

「うん・・・・・わかった。 じゃあ、『アレ』で一気に決めよう」

フェイトの言葉に、拓也は驚く。

「いや、『アレ』を使うほどの相手じゃ・・・・・・」

拓也はそう言うが、

「それ以外だったら、タクヤは行かせないよ」

フェイトは真剣な眼でそう言ってくる。

「・・・・・・・ふう。 分かったよ」

フェイトはこれ以上譲らないと感じたのか、拓也は折れる。

「ヴァイス!」

拓也はヴァイスに呼びかける。

「へ~い!」

ヴァイスは返事をする。

俺達が出撃したら、なるべく高い位置に・・・・・最低でも、俺達以上の高度は取る様にしろよ!」

「了解!」

拓也の言葉に素直に返事を返すヴァイス。

「じゃあ、行くぞ。 フェイト!」

「うん!」

2人は、ヘリから飛び出す。

「サラマンダー! カイゼルグレイフォーム!!」

「バルディッシュ!!」

『『Set up.』』

2人はバリアジャケットを纏うと、空高く舞い上がる。

そして、ある程度の高さまで来ると、フェイトが巨大な魔法陣を発生させ、呪文を唱えだす。

「アルカス・クルタス・エイギアス・・・・・煌きたる天神よ、今導きの元、降り来たれ・・・・・」

更に、拓也が龍魂剣をフェイトの魔法陣の中心に突き刺す。

それと同時に、炎が八方向に広がった。

「バウエル・ザルエル・ブラウゼル・・・・・炎の龍よ、天神の導きにおいて、雷と化せ!!」

拓也がそう唱えると、八方向に広がった炎が、フェイトの電気の魔力変換資質により雷へと変化する。

そして次の瞬間、



「「八雷神やくさのいかずち!!!」」



8匹の雷の龍が夜空を駆けた。

それぞれの雷の龍は、ガジェットの編隊に襲い掛かり、一瞬にして全滅させる。

「・・・・・マジかよ」

ヘリから直接その様子を見たヴァイスは思わず声を漏らした。




その後、ロングアーチからの報告で、この場に残る必要が無いとの事で、2人はヘリへと戻る。

ヘリの内部に入り、バリアジャケットを解いて、拓也は椅子に腰掛けた。

すると、フェイトがその横へ座り、

「えい」

拓也の頭を掴んで、強引に自分の方へ引っ張るように倒した。

そうなると、拓也の頭は自動的にフェイトの膝の上に来る訳で、

「お、おい、フェイト!?」

「タクヤ、これ以上の無茶は許さないよ」

フェイトは有無を言わさないような雰囲気で、そう言葉を発する。

「なのはの砲撃のダメージがまだ残ってるよね?」

フェイトは確信を持った言葉で問いかけた。

「・・・・・・分かってたのか・・・・・・」

実際、拓也はなのはの砲撃の影響で、ぶっ倒れる寸前だった。

ここまで意識が持ったことは、奇跡に等しい。

「すまん、実を言えば、もう限界だ・・・・・・」

フェイトの前では、素直になる拓也。

「じゃあ、ゆっくり休んで良いよ」

フェイトは拓也を見下ろしながら微笑んだ。

「・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうな」

拓也はそう呟くと、気合で繋ぎとめていた意識を手放した。

「タクヤ、ありがとう。 そして、お疲れ様・・・・・・」

フェイトはそう呟いて、拓也の髪を撫でる。

そんな様子を、こっそりと見ていたヴァイスは、

(やれやれ、お熱いこって・・・・・)

そんなことを思っていたのだった。






次回予告


なのはと和解したティアナ。

そんな折、新人達に初の休日が訪れる。

新人達の休暇には!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十二話 機動六課の休日。

今、未来への翼が進化する。










あとがき

十一話完成。

で、早速ごめんなさい!orz

ぶっちゃけますと、この小説ではスサノオフォームは出ません。

と言うか、出来ません。

属性特化型の特性では、拓也にスサノオフォームは如何しても無理だという事が分かった。

因みに気付いたのはA`S編の中盤辺り。

故に技だけは今回のように出そうと思ってます。

結構無理あるかな?

あと、なのはとティアナの扱いはこんなもんでよろしいでしょうか?

結構グダグダになったような気が・・・・・・・

あと、デジタル組となのはキャラをくっ付けた方がよろしいでしょうか?

あんまり自分的には意識してなかったんですけど・・・・・・・

ともかくご意見お待ちしてます。

では、次も頑張ります。




[8056] 第十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/08/14 21:46


なのはとティアナの和解。

それから………



第十二話 機動六課の休日。



なのはとティアナの和解から2週間。

いつも通りの早朝訓練と、模擬戦を行ない、バテバテのフォワード陣。

「はい、今朝の訓練と模擬戦も無事終了。 お疲れ様。 でね、実は何気に今回の模擬戦が、第二段階クリアの見極めテストだったんだけど………」

「「「「えっ?」」」」

なのはの言葉に、新人達は声を漏らす。

「どうだった?」

なのはは、後ろにいるフェイトとヴィータに尋ねる。

「合格!」

フェイトが即答する。

「「早っ!」」

おもわずスバルとティアナが声を漏らした。

「ま、こんだけみっちりやってて、問題あるようなら大変だ、ってこった」

ヴィータの言葉に、エリオとキャロが苦笑する。

「私も皆良いセン行ってると思うし、じゃ、これにて二段階終了!」

なのはの言葉に喜びの声を上げるフォワード陣。

「デバイスリミッターも一段解除するから、後でシャーリーの所に行ってきてね」

フェイトがそう言い、

「明日からは、セカンドモードを基本にして訓練すっからな」

「「「「はい!」」」」

ヴィータの言葉に、フォワード陣は返事を返した。

だが、

「えっ? 明日?」

キャロが、確認するように尋ねる。

「ああ、訓練再開は明日からだ」

ヴィータはそれを肯定する。

「今日は、私達も、隊舎で待機する予定だし」

「皆、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」

「ま、そんなわけで……」

「今日は皆、一日お休みです。 街にでも行って、遊んでくるといいよ」

隊長達の言葉に、フォワード陣は笑顔になり、

「「「「は~い!」」」」

喜びの声を上げるのだった。



因みに別の場所では、

「よし、結構皆戦いの勘が戻ってきたな」

拓也が、目の前でバテバテの泉、友樹、純平に向かって言った。

「はあ……はあ……まあ、これだけみっちり訓練すればね」

泉がそう言った。

「拓也さんは流石だね。 これだけ訓練して、へっちゃらな顔してるもん」

友樹の言葉に、

「まあ、俺は日常生活の中でも、サッカーの練習で体力は付いてたし、信也に付き合って訓練とかしてたからな。 体力には自信があるぞ」

拓也はそう言った。

「そういえば、今日は新人達は休みって言ってたから、ついでにお前らも休んどけ」

拓也は続けてそう言う。

「そいつは助かるぜ。 結構疲れが溜まってたんだ」

純平が嬉しそうにそう言った。





テレビでやっていた管理局の中将、レジアス・ゲイズの演説がちょっと話題になったが、おおむね何事もなく進む朝食。

そんな時、拓也が一緒に食事をしていたフェイトに話しかける。

「そういえば、今日俺達は休みだけど、フェイト達は違うんだよな?」

「うん、私達は隊舎で待機の予定だから」

フェイトはそう答える。

「そうか………じゃあ、俺はどうすっかな………」

拓也は、今日の予定について考えていた。

すると、

「あ、そうだ。 タクヤ、予定が無いんだったら、ちょっと頼みたい事があるんだけど、いいかな?」

フェイトがそう言った。

拓也は、その内容を聞くと、

「ようするに、エリオとキャロが2人で街に出かけるけど、それが少し心配だから、陰ながら見守って欲しいと?」

「うん、駄目かな?」

そう言ってくるフェイトに、

「まあいいけどさ。 でも、ちょっと過保護すぎないか?」

拓也はそう言う。

「そ、そうかな……? でも、心配だし……」

フェイトは、本当に心配そうな表情でそう言う。

「わかったわかった。 そんな顔すんなよ」

拓也はフェイトを宥める。

拓也が了承した事が分かると、フェイトは顔をパッと明るくし、

「ありがとう、タクヤ」

そう言うのだった。

と、その時、

「あ、拓也~!」

泉を先頭に、友樹、純平の3人が揃ってやって来た。

「ん?」

拓也が顔を3人の方に向けると、

「折角だからさ、ミッドの街を案内して欲しいんだけど……」

そう頼まれる。

「ん~~……俺って案内できるほど詳しくないし、たった今先約が入ったところなんだけど……」

と、拓也が悩んでいた所に、丁度良くスバルとティアナが通りかかる。

「あ、お~い! スバル! ティアナ!」

拓也は2人を呼び止める。

「あ、拓也さん!」

「何でしょうか?」

2人は、近くに寄ってくる。

「2人って、今日街に遊びに行く予定なんだろ?」

「はい、そうですけど」

拓也の言葉に肯定の意を示すティアナ。

「悪いんだけどさ、その序に、この3人にミッドの街を案内してやってくれないか?」

拓也がそう頼むと、

「えっと……案内するのは良いんですけど、私達、ヴァイス陸曹からバイクを借りて、それで行く予定なのですが………」

ティアナはそう言った。

「そうか………」

拓也はそれを聞くと、一旦考え込む。

すると、

「なら、俺が3人を街まで送っていくから、そこから案内頼めるか?」

拓也が思いついたように顔を上げ、そう尋ねる。

「あ、はい。 それなら大丈夫ですけど……」

ティアナがそう返す。

「よし! じゃあフェイト、車貸してもらっていいか?」

今度はフェイトにそう尋ねる。

「うん。 大丈夫だよ」

「なら、決まりだな」

こうして、今日一日の予定が決まった。




拓也がフェイトの車に乗って隊舎の入り口まで来ると、そこにはもう泉、友樹、純平の3人と、バイクに跨ったティアナとスバルが待っていた。

3人は車に乗り込み、ティアナの運転するバイクを追って走り出す。

「拓也って、こっちでも車乗れるんだな」

助手席に座った純平が、車を運転する拓也にそう言う。

「まあな、こっちでも、車乗れた方が色々便利だし」

拓也はそう答える。

因みに、拓也がミッドでも車の免許を取った理由は、デートの時、フェイトばかりに運転させるのは男として情けないからという理由である。




その頃、デバイスルームでは、シャーリーとリインフォース・アインが新人達のデバイスのリミッターを外したことについて、作業しながら話し合っていた。

「新人達のデバイスの最初のリミッター解除、無事に済んだな」

アインがそう言った。

「はい! 明日からは4機の調整で慌しくなりますし、今の内に、なのはさんとレイジングハートさんの限定解除モード、エクシードモードの最終調整もしておきたい所ですね」

シャーリーがそう答え、

「テスタロッサ執務官の、ザンバーもな」

「ああ……忙しいですねぇ……楽しいですねぇ!」

アインの言葉に、本当に楽しそうにそう語るシャーリー。

そこへ、リィンが飛んでくる。

「ねーさま~! シャーリー!」

「あ、リィン曹長。 どうかしたんですか?」

シャーリーが其方を向く。

「どうかしたという訳ではないんですが、私にも何か手伝えないかと思いまして」

リィンがそう言う。

「ありがとうございます、リィン曹長。 ですが、今のところ私とアインさんだけで間に合っていますから大丈夫です」

シャーリーはそう答える。

その時、

「そうだ、我が妹よ」

アインが声をかける。

「はい、なんですか? ねーさま」

リィンがそう尋ねると、

「お前も、そろそろメンテナンスチェックをした方がいい時期だろう?」

アインがそう言う。

「あ、そうですね。 お願いしていいですか? ねーさま、シャーリー?」

「了解です」

「承った」

リィンの頼みに、2人は頷いた。





拓也は3人を街まで送り届けると、適当な駐車場に車を止め、

「さてと、サラマンダー。 エリオたちの現在位置は?」

サラマンダーにそう聞く。

『現在の場所は、レールウェイの駅だ。 どうやらレールウェイで移動するようだな』

「そうか……あ、そういえば、シャーリーから2人の今日のプランを貰ってたよな? それを出してくれ」

サラマンダーが、そのプランを表示して、拓也はそれを読む。

その途端脱力した。

「シャ、シャーリーの奴……まるっきりデートプランじゃねえか………」

拓也はそう呟く。

『しかし、あの2人の場合、そうとは気付かずに、真面目にプラン通りに行動すると思うのだが……』

「確かに」

サラマンダーの言葉に、拓也は同意する。

「まあ、とりあえず、最初の目的地に先回りするとしますか」




その頃、スバル、ティアナと行動を共にしている泉、友樹、純平は、

「「「…………」」」

目の前の光景に呆然としていた。

それは、

「なはははは~~~。 やっぱりここのアイスは見た目から素敵だ~!」

涎を垂らしながら、手に持ったアイスを見つめるスバル。

しかし、そのアイスは、普通は2段アイスなのだが、スバルの持っていたアイスは、合計7個ものアイスが乗った特大サイズ。

「ス、スバルって、そんなにアイスが好きなの?」

思わず友樹が問いかける。

「うん! 好き好き、大好き!」

スバルは迷いなくそう答える。

3人は、スバルが大食漢という事は既に知っているが、アイスを見つめるスバルの眼は、今までの比ではない。

更には、

「あむっ!」

アイス一玉を一口に食べるスバル。

それを見て、頭が痛くならないのかと3人は同時に思う。

「皆さん、スバルの食べる事に一々驚いてたら、キリがありませんよ」

ティアナの言葉で再起動する3人。

とりあえず、気持ちを切り替える為に、泉達もアイスを食べる事にした。





エリオたちの目的地に先回りしていた拓也は、人込みに紛れて駅から出てくるエリオとキャロを発見する。

しかも、

「あの2人、手を繋いでるよ………なんかあったのか? 既に結構いい雰囲気だし……」

エリオとキャロの2人は手を繋いでいる。

とりあえず、拓也は2人にばれない様に、少し距離を取って2人の後を追いかけた。



暫く歩いて、拓也はふと気になった。

すれ違う人誰もが、というわけではないが、時折、拓也の顔を見て、驚いたような表情をしたり、ひそひそと話しあう人達がいるのだ。

拓也は、自分の格好がおかしいのかとも思ったが、私服でミッドチルダをうろつくのは初めてではないので、それはないだろうと考える。

それでも、自分に時々集まる視線が気になる拓也は、ちょうど雑誌と自分を見比べるようにひそひそと話している、スバルと同年代前後の4人の少女グループに声をかけた。

「あの、ちょっといいかな?」

「は、はいっ!?」

いきなり声をかけられた少女達は驚きで声を上げる。

「ちょっと聞きたいんだけど、さっきから偶に俺の顔見て君達みたいな反応する人がいてさ。 その理由って何?」

拓也はそう尋ねる。

すると、その少女達は顔を見合わせ、おずおずと言い出す。

「あの……それは多分、これの所為じゃないかと………」

そういいながら、少女の1人が手に持っていた雑誌を拓也に見せる。

その瞬間、

「ブッ!」

拓也は思わず噴出した。

「この写真に写ってるのって、あなたですよね?」

その少女はそう尋ねてくる。

少女の差し出した雑誌に掲載されていた写真には、この前のホテル・アグスタで行なわれたオークションの時に、正装した拓也とフェイトが腕を組んで歩いている所が映っている。

しかも、同じページには、信也となのはの写真まで掲載している。

更には、【あの管理局のエース、高町 なのは一等陸尉と、若き美人執務官、フェイト・テスタロッサ執務官に恋人発覚!?】なんてレッテルも貼られている。

拓也が少し掲載された記事を読んでみると、【高町一尉のお相手は、同年代の管理局員、神原 信也二等陸士。 現在は、同じ機動六課に所属している為、そこで恋に発展した模様。 一方、テスタロッサ執務官のお相手については、管理局員ではないようで詳しい事は分からないが、神原二等陸士に似ているところが多々あるため、神原二等陸士の血縁であるという意見が……】などというようなことが書かれていた。

拓也は思わず固まる。

「あ、あの……ここに書かれている記事は本当なんでしょうか?」

少女達は、興味津々と言ったような目で拓也に尋ねてくる。

「………まあ、俺とフェイトが恋人だって所は本当だな」

拓也がそう肯定すると、少女達は、きゃー、っと言った感じに興奮する。

「とりあえず理由は分かったよ。 教えてくれてありがとう」

拓也はそう言って、エリオたちの追跡を再開した。



拓也は、何処からかサングラスを取り出し、それをかけている。

これならパッと見では、顔は分からないだろう。

今は、公園のベンチで2人がゆっくりしている為、拓也は2人から見えない木の陰で、飲み物を飲んでいた。




丁度同じ頃、ギンガがとある場所で起きた現場検証の手伝いに行った所、そこには破壊されたガジェットと壊れた生体ポッドが残されていた。




再び、エリオとキャロが移動し始めたので、拓也もそれを追う。

ところが、しばらく歩いた所で、エリオが何かに気付いたらしく。

路地裏の方に走っていく。

拓也はそれを追って路地裏を覗くと、マンホールから出てきたと思われる、金髪の小さな女の子を目撃した。

その女の子の左手には鎖が巻かれており、その鎖の先にはケースが繋がっている。

女の子は、マンホールから這い出ると、力尽きたのか気を失う。

「あっ!」

慌ててエリオたちが駆け寄ろうとした。

が、その前にエリオ達を追い抜き、その少女が地面に倒れる前に拓也が受け止める。

「た、拓也さん!?」

いきなり現れた拓也にエリオとキャロは驚く。

が、拓也はその少女の状態を診る。

「酷いな……かなり衰弱してる………しかも、コイツは……」

拓也は、少女の左手に鎖で繋がったケースを見る。

それは、レリックが入っているケースと同一のものだった。

「エリオ! キャロ! 至急隊長達に連絡!!」

「「は、はい!」」

拓也の言葉に驚きつつも、2人は、機動六課に報告を入れる。

当然といえば当然だが、レリックの確保と少女の応急処置及び保護を言い渡される。

拓也はとりあえず身体強化をすると、少女の左手に巻き付いていた鎖を引きちぎった。

「キャロ、回復魔法を頼む!」

「はい!」

拓也の言葉にキャロが応え、回復魔法を少女にかける。

拓也は、少女を見つめながら、

「一体……なんでこの女の子がレリックを……」

そう呟くのだった。





次回予告


下水道の調査を開始する機動六課。

しかし、それと時を同じくして、ガジェットとデジモン達が襲い掛かる。

機動六課は、無事レリックを確保できるのか?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十三話 復活の光と闇

今、未来への翼が進化する。






あとがき

短いですが、第十二話の完成。

ちと手抜きが目立ちますな。

何気にアインの久々の登場です。

短いのは、中途半端になりそうだったためです。

次回頑張りますんでお楽しみに。





[8056] 第十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/10/04 00:05
休日に、レリックと共に幼い少女を保護した拓也達。

そして…………



第十三話 復活の光と闇



少女を保護してから少しして、スバル、ティアナ、純平、泉、友樹が拓也達と合流する。

そして、レリックを引き摺っていた鎖には、もう1つのレリックのケースが繋がれていた痕跡があることを報告する。

それから、暫くしてヘリで現場に駆けつけたシャマルが少女の容態を診る。

「バイタルは安定してるわね。 危険な反応も無いし、心配ないわ」

「はい!」

「よかったぁ~!」

シャマルの診察の結果に、安堵の声を漏らすキャロとスバル。

「ゴメンね皆。 お休みの最中だったのに」

「いえ!」

「平気です!」

申し訳無さそうに言うフェイトに、エリオたちはそう答えた。



その頃、ロングアーチでは、ガジェットの反応を捉えた。

「ガジェット、来ました!」

シャーリーが報告する。

「地下水路に少数のグループで、総数16……20!」

「海上方面、12機単位が5グループ! それから、デジモンと思わしき生物も多数!」

報告を聞いたはやては考える。

「多いな……」

「如何します?」

その時、ヴィータから通信が入った。

『スターズ02からロングアーチへ。 こちらスターズ02。 海上で演習中だったんだけど、ナカジマ三佐が許可をくれた。 今現場に向かってる。 それから……』

ヴィータがそう言ったところで、別方面から通信が入る。

『108部隊、ギンガ・ナカジマです。 別件捜査の途中だったんですが、其方の事例とも関係ありそうなんです。 源一尉、木村一尉と共にそちらに参加してもよろしいでしょうか?』

「うん、お願いや」

ギンガの言葉にはやては頷き、

「ほんならヴィータはリィンと合流。 協力して、海上の南西方向を制圧」

『南西方向、了解です』

「なのは隊長と、フェイト隊長は、北西部から」

『『了解』』

「ヘリの方は、ヴァイス君とシャマル………それから念のために、信也君を護衛に」

『お任せあれ』

『しっかり守ります』

『了解』

「ギンガ達は、地下でスバルたちと合流。 道々、別件のほうの話も聞かせてな」

『はい!』

はやては、それぞれに通信で行動を伝えると、最後に拓也達に通信を繋いだ。

「拓也さん、実は、デジモンが海上方面に多数確認されました」

『何? だったら、俺達もそっちに……』

拓也がそう言いかけた所で、

「いえ、まだ確認されていませんが、地下水路にもデジモンがいる可能性があります。 そうなると、新人達だけやと危険です」

『そうか……じゃあ、俺達も2手に分かれるしかないか……そうなると、2人ずつの方が……』

「その事なんですけど、地下でコーにぃやイチにぃと合流する手筈になってます」

はやての言葉に、

「輝二と輝一が?」

拓也はそれを聞くと、決めるのは早かった。

『じゃあ、地下水路へは俺が行く。 3人は海上のデジモン達を頼む』

『わかったわ』

『任せとけ』

『了解だよ』

拓也の言葉に3人は頷く。

拓也は、輝二と輝一のスピリットを持っているため、最終的にデジモンに進化できるメンバーが3人ずつに分かれるので、このような分け方にしたのだ。

純平、泉、友樹の3人はデジモンに進化して海上方面に向かう。

そして、拓也とフォワード陣もバリアジャケットを纏い、地下水路へと降り立った。

同じく、地下へ降り立ったギンガ達と連絡を取りつつ、ギンガの報告を聞く一同。

その報告の中で、保護した少女は人造魔導師ではないかという疑惑が浮かび上がる。

スバルとティアナがキャロに人造魔導師についての説明をしている最中、エリオは顔を俯かせていた。

そんなエリオの様子に気付いた拓也は、エリオの肩に手を置き、

(エリオ、大丈夫か?)

念話で声をかける。

エリオは拓也に顔を向けると、

(拓也さん……はい! 大丈夫です!)

直ぐに笑みを浮かべて返事を返した。

すると、キャロのデバイスがガジェットの接近を伝える。

「小型ガジェット、6機来ます!」

全員は身構える。

水路の奥から、ガジェットが姿を現す。

ガジェットたちは、拓也達を見つけると、間髪いれずレーザーを放ってきた。

全員が飛び退き、レーザーを避ける。

そして、

「ヴァリアブルシュート!!」

ティアナが魔力弾を放ち、

「おりゃぁああああああっ!!」

スバルが殴りかかり、

「でぇえええええええいっ!!」

エリオが貫き、

「フリード!!」

フリードが火球を吐く。

4機がそれぞれの攻撃で破壊され、

「サラマンダーブレイク!!」

拓也の炎を纏った回し蹴りで残る2機が破壊される。

6機全てを破壊した事を確認して一息ついたとき、

――ドゴォ!

突然、水路の壁が爆発する。

「「「「「ッ!?」」」」」

全員が身構えるが、その煙の中から出てきたのは、

「ギン姉!」

「ギンガさん!」

スバルとティアナがそう叫ぶ。

壁の向こう側から現れたのはスバルの姉であるギンガ。

ギンガは、ニッコリと笑みを浮かべ、

「一緒にケースを探しましょう。 ここまでのガジェットは………」

と、ギンガが言いかけた瞬間、ギンガの後ろから白い影が飛び出す。

「「「「「え?」」」」」

ギンガとフォワード陣が思わず声を漏らす。

その白い影は、一直線に拓也へと向かい、

――ギィン!

次の瞬間には、手に持った光の剣で拓也に斬りかかり、その剣を拓也が腕の手甲で受け止めていた。

「え? あの、源一尉……」

ギンガが声をかけようとした瞬間、

――ガキギギィン!

一瞬にして、幾度もの剣が振るわれ、拓也はそれを全て防ぎきる。

そして、再び手甲と剣がぶつかり合った所で静止した。

「………やれやれ、随分な挨拶だな」

拓也が軽い口調で言った。

すると、相手………輝二は、光の剣を消し、柄を腰に納めながら、

「フッ、ウデは落ちてないようだな」

軽い笑みを浮かべてそう言った。

そして、

――ガシッ

と、硬く手を握り合い、

「久しぶりだな、輝二!」

「そっちもな、拓也」

そう笑いあった。

そして、呆然としていたギンガとスバル達に向き直る。

「輝一も久しぶりだな」

拓也がそう言うと、

「ああ。 久しぶりだな、拓也」

ギンガの後ろにいた黒いバリアジャケットを纏った輝一が返事を返す。

「うわっ!? ビックリした!」

「い、いつの間に……」

気配を感じられなかったスバルとエリオが驚く。

ギンガ、輝二、輝一の3人が軽い自己紹介をして、先を急ごうとした時、

――ズル ズル ズルルッ

何かを引き摺るような音が聞こえた。

一同は、音が聞こえた方向である後ろを振り向き、眼を凝らす。

「何かいる?」

ティアナがそう呟いた時、暗闇の中から、緑色をした巨大なナメクジのような生物が無数に姿を現した。

「何あれ!? 気持ちワルッ!」

思わずスバルがそう漏らす。

「うげっ! ヌメモンかよ……」

拓也が嫌そうな声でそう言った。

「あ、あれもデジモンなんですか?」

エリオが尋ねる。

「あ、ああ。 まあな………」

拓也が若干引き気味に答える。

「どうかしたんですか?」

そんな様子のおかしい拓也に気付いたのか、キャロが尋ねる。

すると、

「……この場は逃げるか」

輝二が呟き、

「賛成だ。 ここじゃ狭すぎる」

輝一が賛同する。

「え? え?」

ギンガが困惑していると、

「ギンガ、この場は逃げるぞ」

輝二がギンガにそう言う。

「「「「「え、え?」」」」」

突然の輝二の言葉に、拓也と輝一以外は困惑する。

「ほら、何してんだ? さっさと逃げるぞ」

拓也に促され、ギンガとフォワード陣は困惑しながらもヌメモンたちとは反対の方向に走り出す。

「あのっ、拓也さん。 あのデジモンってそんなに強いんですか? 見た限りそう大した事は無いように思えるんですけど……」

スバルは走りながらそう尋ねる。

スバルとて、見かけによらず強い可能性も考えているが、スバルから見たヌメモン達はどうしてもそうは見えなかった。

「いや、あいつらは見かけ通り弱い。 つーか、成熟期の中じゃ最弱クラスに弱い」

「「へっ?」」

スバルとティアナが、予想外の答えに声を漏らす。

「じゃ、じゃあ、どうして逃げるんですか!?」

エリオが思わず尋ねる。

「………汚物系デジモンの相手は、女の子じゃ気の毒だ」

輝二がそう呟く。

「えと……如何いう事ですか?」

「そうです。 確かに見た目は気持ち悪いですけど、その位で怯んでいては管理局員は勤まりません!」

キャロとギンガがそう言うが、

「……お嫁に行けなくなるぞ」

輝一の呟きに、

「「「「はい?」」」」

女子メンバーが口をそろえて声を漏らした。

すると、ヌメモンが『何か』を拓也達に投げつける。

「避けろ!!」

拓也が叫ぶ。

その言葉で全員が回避行動を取り、ヌメモンが投げた『何か』は壁に当たった。

だが、

――ビチャッ!

壁に当たった何かを見て、瞬時に『それ』が何かを悟り、ティアナは顔を青くした。

「た、拓也さん………い、今のって………まさか………!」

ティアナの震えた声に、

「これだから汚物系デジモンの相手は嫌なんだ……」

拓也がため息を吐きながらティアナの言葉を肯定する。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ヌメモン

・成熟期 軟体型 ウイルス種

 ナメクジの姿をしたような軟体型デジモン。

 性格はおとなしく臆病。

暗く湿った場所を好む。

 必殺技は、自分のウ〇チを投げつける『ウ〇チ投げ』だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



拓也の言葉に女性陣の顔が真っ青に染まり、

「「「「「いやぁああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」」」」」

大きな悲鳴を上げて、走るスピードを上げる。

あっという間に視界から消え去る女性陣。

取り残され、ポカンとなる男性陣+フリード。

「ど、どうします?」

「如何するって言われてもな………」

――ドゴッ バキィ ドン ドゴォ ドカァ

女性陣が走り去った先では、破砕音やら爆発音が連続して聞こえてくる。

恐らくガジェットを破壊しているのだろう。

「いやぁああああああっ!! ゴキブリぃいいいいっ!!!!」

ギンガの悲鳴と共に、

――ドゴン!!!

と、地下水路全体に響き渡りそうな衝撃が走った。

「………とりあえず、あいつらを倒そう」

拓也はヌメモン達に向き直る。

「だな」

「後を追うにしても、こいつ等を何とかしないと止まりそうも無いし」

輝二と輝一も頷いた。

拓也達が足を止めた事が分かると、ヌメモンたちは再びウ〇チを投げようとするが、

「熱消毒!!」

拓也がそう叫びながら、バーニングサラマンダーを放つ。

炎に包まれるヌメモン達。

エリオがストラーダを振り上げ、

「サンダーレイジ!!」

地面に突き刺すと共に電撃が走り、ヌメモン達を襲う。

更に、

「リヒト・クーゲル!!」

「エントリヒ・メテオール!!」

輝二と輝一が、光と闇の魔力砲で攻撃した。

デジコードを浮かび上がらせるヌメモン達。

そのデジコードを、拓也はデジヴァイスを取り出してスキャンした。

気を取り直して女性陣を追う男性陣。

水路のあちこちには、木っ端微塵に破壊されたガジェットの残骸が転がっていた。

「な、なんか凄いですね……」

エリオがその光景に思わず声を漏らす。

「ははは………」

拓也は苦笑するしか出来なかった。

もう少し進むと、壁に頭から突き刺さってデジコードを浮かび上がらせつつ、身体をピクピクと痙攣させている昆虫型デジモンと思わしき生物を発見した。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ゴキモン

・成熟期 昆虫型 ウイルス種

 ゴキブリのような姿をした昆虫型デジモン。

 必殺技は、何処からともなくゴミを降らせて相手を埋める『ドリームダスト』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「「「「…………………」」」」

ゴキモンの哀れな姿に、哀愁漂う一同。

「………とりあえず、スキャンするか?」

そう呟いた拓也の言葉に、他の3人は、無言で頷くのだった。



4人が更に進むと、広いエリアに出る。

そこでは女性陣と、1人の少女ルーテシア。

召喚獣らしき異形の生物。

そして、リィンと同じぐらいの身長を持った、赤髪の小さな少女がいた。

「っと、どういう状況だ?」

拓也がそう漏らす。

その呟きで女性陣が拓也に気付く。

「あ、拓也さん」

スバルが拓也の名を呼ぶが、

「え、え~っと……」

恐る恐る拓也達の後ろを覗き込もうとしている。

「ああ、ヌメモン達なら全部片付けたぞ」

スバルの言いたいことを悟った拓也はそう答える。

その答えを聞いた女性陣は、全員が安堵の息を吐いた。

「で、今は如何なってるんだ?」

拓也は再び尋ねる。

「あ、はい。 このエリアでレリックのケースを見つけたんですが、その直後にあの少女と召喚獣にケースを奪われてしまって、それから、何とか追い詰めたんですけど、今度はあのユニゾンデバイスらしき少女に邪魔をされて………」

ティアナが、現在の状況を簡単に説明する。

「なるほど………」

拓也達は、ルーテシアの腕の中にあるレリックのケースを見る。

「輝二、輝一」

拓也が2人に呼びかける。

「ああ」

「分かった」

輝二と輝一が頷くと、3人は一斉に飛び出した。

それを見て、

「ガリュー………」

ルーテシアは、自分の召喚獣、ガリューに呼びかける。

その言葉と共に、ガリューは3人に向かって突撃する。

ガリューは、腕の先から爪のようなものを伸ばして突き出す。

「うぉおおおおおおおっ!!」

――ガキィ!

その爪を、輝一が持っていた槍で受け止める。

「コイツは俺に任せろ!!」

輝一の言葉を聞くが早いか、2人はルーテシアに向かっていた。

「ルールーに近付くな!!」

ユニゾンデバイスの少女――アギト――が放った火球が拓也に直撃し、拓也を炎に包む。

「へっ! どんなモンだ!」

アギトは、拓也を倒したと思ってそう言った。

だが、

「はぁあああああっ!!」

ヴリトラフォームへと姿を変えた拓也によって、炎が吹き飛ばされる。

「何っ!? アタシの炎を受けて無傷!?」

アギトが驚く。

「この位の炎で俺を燃やせると思うなぁ!!」

拓也はそう叫んで、翼を羽ばたかせ、飛び立つ。

「えっ?」

その姿を見たギンガが、何かに気付いたように声を漏らした。

「このっ……ヤロー!!」

アギトは、今度は数発の火球を放った。

「コロナブラスター!!」

それに対して、拓也は腕のルードリー・タルパナから炎の弾丸を放って相殺する。

アギトは拓也から距離を取りつつ火球で攻撃するが、その全てを拓也が撃ち落す。

その様子を見たアギトが、

「コイツ、まさか属性特化型!? しかも『炎』!?」

驚きつつ拓也を避けるように動く。

「チックショー……折角見つけた『炎』の属性特化型魔導師が管理局員かよ」

アギトが、悪態を吐く。

拓也がそんなアギトを怪訝に思いながら牽制していたとき、

「そこだ!」

拓也とアギトの攻撃によって煙が発生し、視界が悪くなっていたのを利用して、輝二がガルムフォームとなり、超スピードでルーテシアに接近。

一瞬でレリックのケースを奪い取り、腕のブレードをルーテシアに突きつけた。

「手荒なマネをしてすまない。 だが、これを君に渡すわけにはいかないんだ」

輝二は、ルーテシアにそう言い聞かせるように呟く。

「!」

その時、それに気付いたガリューが、視線をルーテシアに向けるが、その瞬間、輝一がガリューの腕を受け止めた状態のまま、

「エントリヒ・メテオール!!」

胴の獅子の口から闇の魔力砲撃を放った。

ガリューは、それをモロに受け、吹き飛ばされて壁に叩き付けられる。

「ルールー!!」

アギトもルーテシアに気を取られ、拓也から注意を逸らした瞬間、

「隙あり!」

拓也はその隙を見逃さず、一瞬で間合いを詰めて、アギトをその手で捕らえる。

「捕まえた!」

拓也はそう叫んだが、

「あ、バカッ! お前がアタシに触ったら……!」

アギトは捕まえられた事とは、別の理由で焦った表情をした。

拓也が、何のことかと首を傾げた瞬間、

――ドクン!

「なっ!?」

拓也は自分の身体に異常を感じた。

――ドクン! ドクン!

と、心臓が強く脈打つ感覚を感じるが、それは心臓の鼓動ではない。

「ぐっ!?」

拓也は、思わずアギトから手を離し、胸を押さえる。

「な、何だ?」

拓也は思わずそう漏らすが、

「チクショー! やっぱり起こりやがった」

アギトは何が起こったのか理解している言動をする。

そして次の瞬間、

「うわぁあああああああああああああっ!!!」

拓也が叫び声を上げると共に、拓也が激しい炎に包まれる。

「拓也っ!?」

輝二が異変に気付く。

拓也が地面に落下し、輝二と輝一が駆け寄ろうとするが、

「ぐっ……ああああああああああっ!!!」

拓也を包む炎が更に大きく広がる。

「ぐっ!」

「何て炎だ! 近づけない!」

輝二と輝一はそう漏らす。

「源一尉! 木村一尉!」

ギンガ達が駆け寄ってくる。

「一体、拓也さんの身に何が!?」

エリオが、驚愕した表情で問いかける。

輝二が、観察するように拓也を凝視していたが、突然何かに気付いた。

「まさか! 共鳴現象による暴走か!?」

輝二がそう叫ぶ。

「共鳴現象?」

「何ですか、それは?」

スバルとティアナが聞いた事の無い言葉に首を傾げる。

「魔導師とユニゾンデバイスの相性が良すぎる事によって発生する現象だ」

輝一がそう説明する。

「え? 何で相性が良くて暴走するんですか?」

キャロが疑問を口にする。

「………魔導師とユニゾンデバイスの相性が良すぎる場合、触れただけでリンカーコアがユニゾンデバイスに反応し、一気に活性化する。 だが、いきなり活性化したリンカーコアに身体が付いて来ずに制御不能に陥り、暴走するんだ!」

輝二はそう説明した。

「そういう事ですか。 じゃあ、止める方法は?」

ティアナがそう尋ねる。

だが、

「……俺の時は魔力切れを待った。 魔力切れになった後はぶっ倒れたが、特に命に関わる事は無かったし、それ以来共鳴現象を起こすこともなかった……」

輝二の言葉に、

「じゃあ、暫く待ってればいいんですね?」

スバルがそう確認するように問いかけてくる。

だが、輝二の表情は厳しい。

「ぐああっ!! うあっ! うあああああっ!!」

拓也は苦しみの声を上げる。

「……くっ! やっぱりか!」

輝二はそう吐き捨てるように行った。

「え? ど、如何したんですか?」

エリオが尋ねると、

「拓也の身体が、自分の炎に耐えられないんだ! このままじゃ、魔力切れまで拓也が持たない!」

輝二が焦った表情で言う。

「そんな!」

キャロが悲痛な声を上げる。

その時、

「おい! テメーら! アイツを助けたかったら、アタシの言う事を聞け!」

アギトがそう叫んだ。

「どういう風の吹き回しだ?」

輝一がそう聞くと、

「アタシらだって、人死にはゴメンだ」

アギトはそう答える。

輝一は、暫くアギトを見ていたが、

「如何すればいい?」

拓也を救うための方法を尋ねた。

「木村一尉!?」

ギンガが驚いた声を上げる。

「このままじゃ拓也は助からない! だったら、少しでも可能性のあるほうに賭けてみるべきだ」

輝一はそう答え、アギトに向き直る。

輝二も、既にアギトの協力を得るつもりであった。

「うし! やる事自体は単純だ。 何とかあの炎を吹き飛ばすんだ。 そして、アタシがアイツの傍に行ってユニゾンする。 ユニゾンすれば、暴走は収まる筈だ」

アギトの言葉に、

「分かった!」

「了解だ!」

輝二と輝一は頷くと、

「コイツを頼む!」

輝二は手に持っていたレリックのケースをティアナへと投げ渡す。

「わわっ!?」

ティアナは、驚きながらもケースを受け止める。

すると、輝二と輝一が、それぞれが構えを取る。

「ソーラーレーザー!!」

「エントリヒ・メテオール!!」

光と闇の砲撃が放たれる。

2つの砲撃は、一直線に拓也へと向かう。

だが、

「「なっ!?」」

2人は驚愕の声を漏らした。

2つの砲撃は、拓也の炎の前に、あっさりとかき消されたのだ。

「くっ、ならば!」

輝二は気を取り直し、バリアジャケットをベオウルフフォームに変更した。

「えっ? 源一尉? その姿は……」

ギンガが初めて見る輝二のベオウルフフォームに驚愕し、

「こ、この魔力! 拓也さんのアルダフォームに匹敵する!」

エリオは、拓也と互角の輝二の力量に驚愕する。

輝二は大剣を掲げ、

「ツヴァイハンダー!!」

光の魔力で狼を形作り、それを放った。

ツヴァイハンダーは炎に接触すると、一旦拮抗し、それから徐々に炎を切り裂いていく。

だが、

――ゴウッ!!

拓也から噴出す炎の勢いが増し、ツヴァイハンダーはかき消される。

「何だと!?」

輝二は驚愕する。

「くっ! この魔力、SSランクに匹敵するぞ!!」

輝一が、拓也の炎を見てそう判断する。

「ぐがっ!! あああっ!!」

拓也の苦しむ声が聞こえる。

「くそっ! マグナガルルフォームじゃ拓也ごと吹き飛ばしてしまう!」

輝二が叫び、

「ライヒフォームも無理だ。 無効出来る魔力量を超えてしまっている!」

輝一もそう言った。

2人が、打つ手無しかと思いかけたその時、

――ドゴォ!

突然天井が破壊され、

「おい! 一体どういう状況になってるんだ!?」

そこから現れたヴィータが叫ぶ。

「ヴィータ副隊長!?」

ティアナが叫ぶ。

「はわわ~! 拓也さんが凄い勢いで燃えてます~!?」

ヴィータと一緒にいたリィンが拓也の状況に気付いた。

「リィン曹長も!」

スバルもリィンの名を叫んだ。

「リィン!?」

スバルの声で輝二がリィンがいることに気付く。

すると、

「リィン!!」

輝二がリィンに呼びかける。

「はわっ!? とーさま!?」

いきなり呼ばれたリィンが驚きながらも輝二に応える。

輝二は、リィンに向かって右手を伸ばし、

「来い!!」

そう叫んだ。

「は、はいっ!!」

その意味を理解したリィンは、輝二に向かって飛んでいく。

リィンは、未だに現在の状況が把握できていないが、父親と慕う輝二の事を心の底から信じているため、迷わずに行動する。

そして、輝二の差し出した右手にリィンが触れると、

「「ユニゾン・イン!!」」

輝二とリィンがユニゾンした。

輝二の黒髪が銀髪に変わり、更にバリアジャケットに変化が起こる。

『Form change.』

輝二のバリアジャケットが光り輝き、ヴォルフフォームとガルムフォームの特徴を全て取り入れ、ベオウルフフォームより重装甲でありながら格闘に適し、両手にはそれぞれ大剣を持った形態。

『Ancient form.』

リィンとユニゾンした場合にのみ使用可能な、エンシェントフォームへと変化した。

「「「「「なっ!?」」」」」

その変化を見たギンガとフォワード陣は驚愕の声を漏らす。

だが、輝二はそれに構わず、炎に包まれた拓也を見据える。

輝二は、大剣を持った両手を前に突き出し、剣と剣の間に魔力を集中させていく。

そして、

「『アブソリュート・ゼロ!!』」

全てを凍てつかせる、超低温レーザーを放った。

そのレーザーは、拓也を包んでいた炎を貫き、一時的に拓也への道を作り出す。

「今だ!!」

輝二はアギトへ呼びかけた。

「おう!!」

アギトは応え、拓也に向かって一直線に飛んでいく。

そして、拓也の身体に触れ、

「ユニゾン・イン!!」

拓也とユニゾンした。

その瞬間、アブソリュート・ゼロが途切れ、拓也が再び炎に包まれる。

その様子を見守る一同。

そして、

『Ancient form.』

そんなサラマンダーの音声が聞こえた後、拓也を包んでいた炎が徐々に縮小していった。

そして、その炎が完全に収まった後、

「はぁ……はぁ……」

魔力の消費と、耐え切れなかった炎にダメージにより息を吐く拓也と、

「……………」

既にユニゾン・アウトし、拓也の近くで何とも言えない表情をして浮いているアギトの姿があった。

アギトは、少しの沈黙の後、ヴィータが開けた穴から飛んでいってしまう。

「拓也!」

輝二と輝一が拓也に駆け寄る。

「大丈夫か!?」

「ああ……何とかな……」

拓也は、辛そうな表情で呟くが、とりあえずは落ち着いているようだ。

「……そう言えば、さっきの女の子は?」

拓也がそう呟いた。

「「「「「「「あ!」」」」」」」

その言葉で、全員がルーテシアが居ない事に気付く。

その時、

――ドォォォォォン!

地下道全体に衝撃が走る。

「何だ!?」

ヴィータが叫んだ。

「大型召喚の気配があります。 多分、それが原因で……」

キャロがそう言う。

「一先ず脱出だ! スバル!!」

そう判断したヴィータがスバルに呼びかける。

「はい!」

ヴィータの言いたいことを理解したスバルは右手を掲げ、

「ウイングロード!!」

そのまま地面に拳を打ち込むと、ウイングロードが螺旋状にヴィータの開けた穴から外へ繋がる。

「スバルとギンガが先頭で行け! アタシは最後に飛んで行く!」

「「はい!!」」

ヴィータの指示に、2人は返事をする。

その時、ティアナがキャロに話しかける。

「キャロ、レリックの封印処理お願いできる?」

「はい、やれます!」

「ちょっと考えがあるんだ。 手伝って」

「はい!」

2人は密かに行動に移った。




その頃、地上ではルーテシアが巨大な虫のような召喚獣――地雷王――を召喚し、局地的な地震を発生させていた。

「駄目だよルールー! これは拙いって!」

アギトがルーテシアにそう進言する。

「埋まった瓦礫の中から、どうやってレリックのケースを探す? あいつ等だって局員とはいえ、つぶれて死んじゃうかもなんだぞ!」

そう叫ぶが、

「……あのレベルなら……多分……これ位じゃ死なない……ケースは……クアットロとセインに頼んで探してもらう……」

ルーテシアは、感情の篭っていない声でそう呟く。

「よくねーよルールー! あの変態医師やナンバーズ連中と関わっちゃ駄目だって、ゼストの旦那も言ってたろ? あいつら口ばっか上手いけど、実際のトコ、アタシ達の事なんて精々実験動物ぐらいにしか………」

と、そこまでアギトが言いかけた所で、

――ドゴォ!!

「はっ!」

アギトが其方に視線を向けると、

地面が陥没し、地下道が潰れてしまったと思われる光景があった。

「……やっちまった……」

アギトはその光景を見て項垂れる。

対するルーテシアは、そんな事には微塵も心配を見せずに、

「ガリュー……怪我……大丈夫?」

傍らに控えていたガリューに呼びかける。

ガリューは、ルーテシアの言葉に頷いた。

「戻って良いよ……アギトが居てくれるから……」

ルーテシアの言葉に、ガリューはもう一度頷くと、召喚陣が現れ、ガリューはその場から消え去る。

「地雷王も……」

そう呟きながらルーテシアが地雷王に視線を落とすと、

「ん?」

何かに気付いたようにアギトが声を漏らす。

地雷王の真下に、ピンク色の召喚魔法陣が現れ、そこから伸びた鎖が地雷王を拘束する。

「な、何だ?」

アギトが声を漏らすと、少し離れたビルの屋上に、魔法を行使するキャロの姿に気付き、さらにその向こうから青と水色のウイングロードが伸びてくる。

おまけにヴィータも飛んで来た。

「くっ……はっ!」

その時、別のビルから2人を狙っていたティアナに気付いた。

ティアナは、クロスミラージュで魔力弾を放ってくる。

2人はそれぞれ別方向に避けた。

そして、

「でりゃぁ!!」

アギトはティアナに向かって火球を放ち、

「…………」

ルーテシアは無言で無数のダガーを召喚し、それをスバル、ギンガ、ヴィータに向かって射出する。

ティアナは跳躍で火球を避け、スバル、ギンガ、ヴィータはその機動性で回避する。

そして、ルーテシアが廃棄都市のハイウェイに降り立った時、超スピードで接近してきたエリオがストラーダをルーテシアに突きつけていた。

更にアギトの周りには、氷の刃物が浮遊しており、身動き出来ない状態であった。

「ここまでです!」

いつの間にか輝二とユニゾン・アウトしたリィンがそう言って、ルーテシアとアギトにバインドをかける。

「くっ……ちっくしょー!」

アギトがそう言葉を吐きながら、地面に下ろされ、その前にヴィータが降り立ち、

「子供虐めてるみたいでいい気はしねーが、市街地における危険魔法使用及び公務執行妨害。 その他もろもろで逮捕する」

そう宣言した。

そこに、輝二と輝一が拓也に肩を貸しながら現れる。

「なかなかやるじゃないか、そっちの新人達も」

輝一がそう言った。

「まあな。 まだまだヒヨッコだけど、見込みはあるだろ」

ヴィータはそう笑みを浮かべながら答える。

「とーさま達もご苦労様です!」

リィンがそう言う。

「ああ。 ありがとうリィン」

輝二がそう答えた。

そこに、

「あ、あの、リィン曹長?」

ティアナが若干引き攣った表情で尋ねる。

「はい? なんですかティアナ」

リィンがそう聞くと、

「リィン曹長は、源一尉の事を『とーさま』と呼んでいますが、それは……?」

ティアナはそう質問した。

「それはとーさまが、リィンのとーさまだからです」

リィンは迷いなく答える。

するとスバルが、

「リ、リィン曹長って、八神部隊長の事を『かーさま』と呼んでましたよね? ってことは……」

スバルは結論は出ているものの、確認するように尋ねる。

「おう。 お前らが思っている通り、はやてとそこにいるコージは恋人同士だ。 108部隊の中じゃ有名な話だぞ」

ヴィータがそう答えた。

「「「「ええっ!?」」」」

驚く新人達。

輝二は若干恥ずかしいのか、顔を背けていた。

「それにコーイチは……」

ヴィータはそう言いながら輝一を見る。

だが、

「やっぱいいや。 これは黙っといた方が面白そうだし」

「「「「「?」」」」」

ヴィータの発言に、フォワード陣とギンガは首を傾げる。

そんな時、

(おやおや、ルーお嬢様。 なにやらピンチのご様子で?)

ルーテシアにしか聞こえない念話が届く。

(クアットロ……)

(其方には応援を送っておきました。 ご心配なく)

そう言って念話が途切れると、

ふとルーテシアに影がかかる。

それに気付いた輝一が叫んだ。

「気を付けろ! 何か来る!」

その一瞬後に、ルーテシアの目の前に黒い狼男のような姿をしたデジモンと、猿の着ぐるみのようなデジモンが降り立った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ワーガルルモン(黒)

・完全体 獣人型 ウイルス種

 狼男のようなデジモン。

 ウイルス種の性格は卑怯な性格。

 必殺技は、鋭い爪で敵を切り裂く『カイザーネイル』。




――エテモン

・完全体 パペット型 ウイルス種

 強化サルスーツに身を包んだ正体不明のパペット型デジモン。

自称キングオブデジモンを名乗るが、その実力は決してはったりとは言えず、侮れない。

 必殺技は、暗黒球体を作り出し、それを投げつける『ダークスピリッツ』と、歌声で格下の敵の力を奪う『ラブセレナーデ』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「デジモンか!」

輝二が叫ぶ。

ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶり、

「おりゃぁああああああっ!!」

エテモンに殴りかかった。

「ま、まてヴィータ!」

輝一が止めようとしたが、ヴィータはかまわず振り下ろす。

エテモンは、防御することなくその一撃を頭に受けた。

だが、

「人間にしては中々の威力じゃな~い♪ で・も、アキチの相手をするには百年早いわ!」

そう言いながらエテモンはグラフアイゼンを掴むと、ヴィータごと無造作に振り回す。

「うわぁあっ!」

ヴィータは空中に投げ飛ばされるが、何とか制動をかけ、持ち直す。

それを見たティアナが、

「スバル! エリオ! キャロ! ヴィータ副隊長を援護するわ! 今回は拓也さんには頼れない! 私達だけで何とかするわよ!」

「「「うん(はい)!!」」」

3人は返事をする。

「待て!」

輝二は止めようと叫ぶが、フォワード陣は動き出してしまう。

「このっ!」

ティアナは、エテモンに向かって魔力弾を放つ。

だが、

「ウキッ!」

エテモンはそれを虫を払うように弾き飛ばした。

そんな余裕ぶっているエテモンに、

「でりゃぁああああああああっ!!」

エリオがストラーダを構えて突撃する。

「甘いわ!」

だが、エテモンは、ストラーダの切っ先を人差し指と中指で挟むように受け止めた。

「そんな!?」

これにはエリオも驚愕する。

「おりゃぁああああああっ!!」

そこに、スバルが殴りかかろうとするが、

――バシィ!

横から伸びてきた手に、拳を止められる。

「おいおい、俺様も混ぜてくれよ」

ワーガルルモンは、そんな楽しそうな声で言った。

そして、スバルの腕を掴むと、無造作に投げ飛ばす。

「うわっ!?」

完全体のワーガルルモンにとっては軽くでも、スバルにとってはもの凄い力で投げ飛ばされたように感じる。

「くっ!」

スバルは何とか空中で体勢を立て直し、地面に着地した。

その時、余裕ぶっていたワーガルルモンの懐にギンガが飛び込み、リボルバーナックルを装備している左腕を引き絞る。

そして、

「だぁああああっ!!」

全身のバネを使った渾身のアッパーカットをワーガルルモンの顎に叩き込んだ。

「おう?」

ワーガルルモンは、何が起こったのか分からないといった声を漏らす。

だが、平然と顔を前に戻し、ニヤリと笑ってギンガを見据える。

(そんな!? 完璧に急所に入ったはずなのに!?)

ギンガは心の中で驚愕する。

すると、ワーガルルモンは右腕を振り上げた。

その手には鋭い爪が光る。

その光景を見て、ゾッとするギンガ。

(あれは受けちゃいけない! 絶対に防ぎきれない!)

本能的にそう直感するギンガ。

だが、ワーガルルモンに攻撃した際、飛び上がったので咄嗟には行動できない。

「ギン姉!」

スバルが叫ぶ。

その爪が振り下ろされようとした時、

「させません!!」

その腕にバインドがかけられ、腕が止められる。

「あん?」

ワーガルルモンが視線を後ろに向けると、リィンが魔導書を手にしながら、ワーガルルモンの手にバインドを発動させていた。

その一瞬の隙に、ギンガは地面に着地し、直ぐに飛び退く。

しかし、

「邪魔すんじゃねえよ!」

ワーガルルモンは不機嫌な声を発し、バインドで拘束されていた腕に少し力を込める。

それだけで、あっさりとバインドは破られた。

そして、そのまま腕をリィンに向かって振る。

「きゃっ!?」

直撃はしなかったものの、その時に起こった風圧で、リィンは吹き飛ばされ、地面を転がる。

「ううっ………」

痛む身体に声を漏らしながらも、何とか身を起こした。

それと同時にリィンに影がかかる。

「はっ!」

リィンが上を向くと、ワーガルルモンが右腕を振り上げていた。

「テメーは潰れてな」

そう言って、容赦なく右腕が振り下ろされた。




渾身の突撃をあっさりと受け止められたエリオ。

その時、

「エリオ君! 下がって!」

その声に振り向けば、キャロが成竜形態のフリードの背に跨っていた。

エリオはそれを確認すると、咄嗟に飛び退く。

「フリード! ブラストレイ!!」

フリードが口に炎を集中させていく。

「ファイア!!」

キャロの掛け声と共に、炎が放たれる。

「ウキッ?」

エテモンは成す術なくその炎に呑まれる。

だが、エテモンが腕を振ると、あっさりとその炎はかき消された。

「そんなっ!?」

キャロは驚愕する。

「ウキキッ! 火遊びするなんていけない子ね………そんないけない子には………おしおきよ!」

エテモンはそう叫ぶと、手に暗黒球体を作り出す。

「ダーク……」

エテモンが必殺技のダークスピリッツを放とうとした時、

「シュバルツ・ドンナー!!」

別の方向から闇の魔力弾が飛んで来て、エテモンの視界を奪う。

「ウキャッ!?」

エテモンはその攻撃で眼が眩み、ダークスピリッツを見当違いの方向へはなった。

「いきなり何よ!」

エテモンが叫ぶ。

そこには、カイザーレオフォームとなった輝一の姿があった。




ワーガルルモンの右腕が振り下ろされる。

「リィン曹長!!」

スバルが叫ぶ。

だが、

――ガキィィィン!!

金属音が響き渡る。

「え?」

眼を瞑っていたリィンは、攻撃が来ない事に気付き、恐る恐る眼を開ける。

すると、そこにはワーガルルモンの爪を、ベオウルフフォームとなり、その大剣で受け止める輝二の姿があった。

輝二は、爪を受け止めたままワーガルルモンに対し、

「……俺の娘に、手を出すな!!」

そう言い放った。

「とーさま!」

リィンが叫ぶ。

「リィン! 逃げろ!」

「は、はいです!」

輝二の言葉で、リィンは直ぐにその場を離れる。

輝二は少しの間ワーガルルモンと力比べをしていたが、

「フン!」

突如、ワーガルルモンが蹴りを放ち、輝二はそれをモロに腹に受け、吹き飛ばされる。

「がはっ!!」

吹き飛ばされた輝二は、ハイウェイの壁に叩き付けられた。

「とーさま!」

リィンが心配そうに輝二の傍に飛んでくる。

「ぐっ……心配するなリィン。 この位平気だ」

輝二はそう言いながら立ち上がる。

だがその時、輝一と相対していたエテモンが、何処からともなくマイクを取り出す。

「アンタ達、意外と鬱陶しいわ。 このアキチの歌声で黙らせてあげる」

そう言うと、エテモンは息を大きく吸い込み、

「ラブセレナーデ!!」

エテモンはそう叫ぶと、いきなり歌いだす。

最初はエテモンの不可解な行動を怪訝に思っていたが、

「くっ!?」

輝一はいきなり膝をつく。

いや、輝一だけではない。

輝二や、ヴィータ、スバル達も次々に膝をつく。

「な、何だこれは!?」

「力が……入らないっ……」

急激な脱力感に襲われる一同。

フリードに至っては、地面に落下し、成竜形態から、元の幼竜の姿に戻ってしまった。

「アキチのラブセレナーデは、格下の相手の力を奪う効果があるの」

エテモンはそう言う。

「さあ、これで終わりよ!」

エテモンは死の宣告に等しい叫びをあげる。

だがその時、少し離れた場所で休まされていた拓也は、自分のデジヴァイスが光っている事に気付く。

拓也がデジヴァイスを取り出すと、デジヴァイスの画面が……いや、正確には、デジヴァイスの中の『光』『闇』『水』『鋼』のスピリットが反応していた。

拓也はそれを確認すると、軽く笑みを浮かべ、

「よし、行け。 スピリット!」

拓也がそう言うと、デジヴァイスから、白い光と黒い光が飛び出した。

その光は一直線に輝二と輝一に向かう。

そして、輝二を白い光が、輝一を黒い光が包み込んだ。

だが、それも一瞬。

その光は直ぐに消える。

「な、何だったの? 今の光……」

エテモンはそう漏らす。

しかし、その一瞬で、輝二と輝一の2人は何が起こったのかを理解した。

「う……おおおおっ!」

「ぐぅううっ!」

2人は力を振り絞って立ち上がる。

そして、バリアジャケットを解除した。

「あら? 鎧を消したって事は、もう観念したって事かしら?」

「グハハ! いい心がけじゃねえか! お望みどおり、切り刻んでやるよ!」

その2体は、調子付いた言葉でそう言った。

だが、2人はそんな言葉を気にせず、一旦眼を瞑る。

「「……………」」

そして、精神を集中させ、力強く眼を見開く。

それを同時にデジヴァイスを構えた。

2人の突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、ヒューマンスピリットの形が描かれる。

突き出した左手に、デジコードの輪が発生。

そのデジコードに、デジヴァイスをなぞる様に滑らせる。

「「スピリット!エボリューション!!」」

2人の身体がデジコードに包まれる。

その中で2人はスピリットを纏っていく。

顔に、

腕に、

体に、

足に、

2人の身体にスピリットが合わさる。

そして、そのデジコードが消えた時、

「ヴォルフモン!!」

「レーベモン!!」

『光』と『闇』の闘士がここに復活した。

「な、何だテメーら!?」

ワーガルルモンがデジモンに進化した2人に驚愕する。

「『光』の闘士、ヴォルフモン」

「『闇』の闘士、レーベモン」

2人は静かに告げる。

「あ、アンタ達、まさか十闘士!?」

エテモンが驚いた声を上げた。

2人は伝説の闘士が相手と知って、若干怯えているようだ。

すると、ヴォルフモンが光の剣、リヒト・ズィーガーを腰から抜き、レーベモンが手に持っていた槍を構える。

「こ、こうなりゃヤケクソだ! 死にやがれ!!」

ワーガルルモンが、ヴォルフモンに飛び掛る。

「カイザーネイル!!」

鋭い爪で攻撃を仕掛ける。

対してヴォルフモンは、

「リヒト・ズィーガー!!」

光の剣でその爪を受け止めた。

「うぉおおおおっ!」

「おおおおおおっ!!」

互いに鍔迫り合いの状態になっていたが、互いに弾きあう。

間合いを開けたところで、ヴォルフモンは左腕をワーガルルモンに向け、

「リヒト・クーゲル!!」

光のレーザーを放った。

その光のレーザーは、ワーガルルモンの顔面に直撃する。

「ぐはっ!?」

ワーガルルモンが怯んだ隙に、ヴォルフモンはもう一本のリヒト・ズィーガーを抜き、跳び上がる。

そして、2本の剣でワーガルルモンに斬りかかった。

「ツヴァイ・ズィーガー!!」

――ズバッ!!

切り裂かれる音がする。

そして、

「やっぱり、十闘士は強かったぁ!!」

そんな台詞を残して、ワーガルルモンはデジコードを浮かび上がらせた。



一方、レーベモンとエテモンは、

「ダークスピリッツ!!」

エテモンが暗黒球体を放つ。

それに対し、

「エントリヒ・メテオール!!」

レーベモンが、胴の獅子の口から闇のエネルギー波を放つ。

2つの必殺技はぶつかり合い、一旦拮抗するが、

「うぉおおおおおっ!!」

レーベモンが更に力を込め、ダークスピリッツを吹き飛ばす。

「そんなっ!?」

エテモンは驚愕するが、闇のエネルギー波はそのまま直進し、エテモンに直撃する。

「ぎゃぁあああっ!」

エテモンは叫び声を上げるが、ダークスピリッツによって威力が幾分が減衰していたらしく、エテモンは耐え切った。

「ま、まだよ! こんな所で……」

エテモンはそう言うが、すでにレーベモンは槍を構えてエテモンに飛び掛っていた。

「そ、そんなぁああああっ!!」

エテモンは悲鳴を上げる。

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

闇のエネルギーを込めた槍が、エテモンを貫いた。

そして、エテモンは、デジコードを浮かび上がらせた。

ヴォルフモンとレーベモンは、それぞれの相手の前に立つ。

そして、

「闇に蠢く魂よ。 聖なる光で浄化する!」

「乱されし邪悪な心よ、闇に埋もれて眠るがいい!」

ヴォルフモンとレーベモンの手には、デジヴァイスが握られている。

「「デジコード! スキャン!!」」

デジヴァイスをデジコードになぞらせる様に滑らせると、デジコードがデジヴァイスに吸い込まれ、それぞれのデジモンの身体が消え、デジタマが残り、そのデジタマは空へと上っていった。

ヴォルフモンとレーベモンは、それを見届けると、デジコードに包まれ、輝二と輝一に戻る。

そして、それぞれのデジヴァイスを見つめ、

「またよろしくなヴォルフモン」

「レーベモン……また一緒に頑張ろう」

そう呼びかけるのだった。





次回予告


デジモンを倒した輝二達だが、まだ事件は終わっていなかった。

狙われるヘリ。

新たに見え隠れする敵。

機動六課は、この危機を乗り越える事が出来るのか!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十四話 ナンバーズ………そして混沌

今、未来への翼が進化する。





オリジナル設定



・リィンと輝二のユニゾン

この物語のリィンは、「コーにぃもリィンとのユニゾンが可能に」というはやての思いつきで輝二に合うように調整が施されている。

というより、輝二を中心に他のメンバーでもユニゾン可能にしたと言った方が正確。

そのため、輝二とリィンの相性が良くなりすぎで、初めて触れ合ったときに、輝二は共鳴現象による暴走を起こしている。

ただし、『光』そのものに力は少ない為、魔力切れで倒れた程度だった。

輝二とリィンがユニゾンすると、殆どリスク無しでSSランクの力が出せる。



・共鳴現象

ユンゾンデバイスと魔導師の相性が良すぎる事によって起こる現象。

魔導師がユニゾンデバイスに触れただけで魔導師のリンカーコアが活性化。

急激に活性化したリンカーコアに身体の制御がついて行かない為に、殆どの場合暴走する。

暴走した場合、魔力切れを待つか、ユニゾンデバイスがユニゾンして魔力を制御するかしないと収まらない。

あと、一度共鳴現象が起こると、耐性が出来るためか、二度と起きない。







あとがき

第十三話の完成です。

遅れてすいません。

先週、書いてる途中に閃きが起こり、それを書いていたら時間が掛かりまくりました。

今回は長めになったのでそれで勘弁を。

グダグダになってますがね。

リィンと輝二のユニゾンはともかく、アギトと拓也のユニゾンは反対ありそうな気がするなぁ……

設定も強引な気がするし。

まあ、属性特化型でも、相性の良いユニゾンデバイスならユニゾン可能となっています。

こんな感じでエンシェントフォームを出してみました。

あと、更に思いつきでシグナムの設定に追加があります。

その時をお楽しみに。

次回は新たなオリキャラが!?

では、次も頑張ります。




[8056] 第十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/10/24 17:09
再びスピリットを手にし、敵デジモンを撃破した輝二と輝一。

その頃、別行動のメンバーは……



第十四話 ナンバーズ………そして混沌



「ライトニングボンバー!!」

ブリッツモンが、ガジェットと共に現れたプテラノモンに、電撃を纏った体当たりを仕掛ける。

ブリッツモンの一撃を受けたプテラノモンは、成す統べなく墜落する。

しかし、周りにはまだ十数体のプテラノモンがガジェットⅡ型と共に飛行している。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――プテラノモン

・アーマー体 翼竜型 フリー

 翼を持つデジモンの中でも最も高い高度で飛行する事が可能とされる。

「蒼い爆撃機」の異名を持ち、高空域から爆撃できる。

 必殺技は、『ビークピアス』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




プテラノモンは、旋回しながら両翼についているミサイルを撃ってくる。

すると、

「プッレツァ・ペタロ!!」

フェアリモンが風でそのミサイルを防ぐ。

ブリッツモンとフェアリモンは背中合わせとなり、

「くっ……負ける気はしないが、キリがないな」

ブリッツモンがそう呟く。

「ホントね……ガジェットの方は如何ってことはないけど、目晦ましになるから少し厄介ね」

そう言いながら、視線を海上に移す。

そこには、海面を凍らせて足場にし、海にいた数匹のシードラモンを、ブリザーモンとなった友樹が相手をしていた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――シードラモン

・成熟期 水棲型 データ種

 ウミヘビのように長い身体を持ちネットの海や湖を本能の赴くままに回遊する水棲型デジモン。

 必殺技は、口から氷の矢を放つ、『アイスアロー』だ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




シードラモンたちが、一斉にアイスアローをブリザーモンに放つ。

「ふっ!」

ブリザーモンは、軽く飛び退き、着地したところで、

「アラヴァンチスロー!!」

手に持っていたバトルアックスを振りかぶり、投げつけた。

投げられたバトルアックスは、1体のシードラモンの頭部に直撃し、気絶させる。

だが、他のシードラモンが次々と襲い掛かってくる。

「くっ!」

何とかその攻撃をかわし、ブリザーモンはシードラモン達へ向き直った。




それから暫くして、少し手こずりながらも、漸く終わりが見えてきた。

「これならあと少しね」

フェアリモンがそう呟く。

「ああ。 なのはやフェイト達の方も、もうすぐ終わる」

ブリッツモンがそう言いながら、なのは達の方に目をやる。

その2人は、ガジェットを撃ち落し、数を残り10機ほどまで減らしていた。

ブリザーモンの方を向けば、たった今最後のシードラモンを倒した所だった。

だがその時、

「ん?」

ブリッツモンが気配を感じ、其方を向くと、数十機のガジェットとプテラノモンの編隊がこちらに向かっていた。

「増援!?」

フェアリモンが叫ぶ。

「その位で!」

ブリッツモンは、新たに現れたプテラノモンに殴りかかろうとした。

だが、ブリッツモンの繰り出した拳は、プテラノモンをすり抜ける。

「何っ!?」

ブリッツモンは驚愕の声を漏らす。

その隙に、別のプテラノモンがブリッツモンの背中にミサイルを撃ち込んだ。

「ぐあっ!?」

ブリッツモンは一瞬怯むが、

「この野郎!」

ミサイルを撃ってきたプテラノモンを殴り飛ばす。

今度はすり抜けずに当たり、プテラノモンが吹き飛んだ。

「これは………?」

ブリッツモンが怪訝そうな呟きを漏らす。

フェアリモンが、向かってきた3体のプテラノモンに蹴りを放つ。

1体目と2体目は手応えがあり、吹き飛んだが、3体目はすり抜けて当たらなかった。

「これって、本物と幻が混ざってるの!?」

フェアリモンはそう叫んだ。




ブリッツモンたちが戦っている戦域から少し離れた上空。

そこに、魔法陣のような光の円の上に1人の人影があった。

「フフッ……クアットロのインヒューレントスキル、シルバーカーテン。 嘘と幻のイリュージョンで、回ってもらいましょ」

その人影は、楽しげにそう呟くと何かを発動させた。




ロングアーチでは一気に増えたガジェットやデジモンの反応に驚愕していた。

センサーやレーダーの反応も、全て実機としか認識せず、本物と偽者の区別が付かなかった。

そんな中、はやてが何かを決意したように立ち上がり、

「グリフィス君!」

そう呼びかける。

「……はい!」

グリフィスもはやてが何を言いたいのかを悟り、頷いた。




ブリッツモン達が、幻に苦労しながら戦っていると、はやての方から通信が入ってきた。

『いきなり失礼します』

「はやてか!?」

ブリッツモンが答える。

『簡単に説明します! この敵の団体は、陽動の可能性が高いです。 よって、これより私が広域殲滅魔法で空の敵を一掃します。 リミッターもSランクまで解除許可を貰いました。 なのはちゃん達は、もうヘリと地下道の方へ向かってもらっています。 今いるデジモンなら、私でも十分に倒せます。 ですので、純平さん達にも、本命が向かっていると思われるヘリと地下の方に応援に行ってもらいたいんです』

はやての言葉に、ブリッツモンとフェアリモンは頷こうとしたが、

「グガァァァァァァァァァァァッ!!」

そんな雄叫びが聞こえ其方を向いた。

すると、

「すまんはやて。 どうやら応援は無理のようだ」

ブリッツモンはそう呟く。

『え?』

はやてがそう漏らすと、

「完全体のお出ましね!」

フェアリモンがそう言った。

2人の視線の先には、2体の身体が機械化された竜型のデジモンがいた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――メガドラモン

・完全体 サイボーグ型 ウィルス種

 完全体のドラモン系の中では最大級のパワーを誇る。

 必殺技は、両腕から無数の有機体系ミサイルを発射する『ジェノサイドアタック』



――ギガドラモン

・完全体 サイボーグ型 ウィルス種

 メガドラモンを更に強化した完全体デジモン。

 メガドラモンを越える破壊力を持つ。

 必殺技は、『ジェノサイドギア』



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「「グギャァアアアアアアアッ!!」」

2体は、叫び声を上げると、ブリッツモン達に襲い掛かった。






廃棄都市のとあるビルの屋上に、2人の人影があった。

その人影は、2人とも女性で、青いボディスーツに身を包んでいる。

片方は、眼鏡をかけてセミロングの茶髪を後ろで2つに纏めた女性。

もう1人は、茶髪で後ろの髪が長い女性で、布に巻かれた巨大な何かを持って屋上から都市の方を見つめていた。

「ディエチちゃ~ん。 ちゃんと見えてる?」

眼鏡の女性がもう1人に話しかける。

「ああ。 遮蔽物もないし、空気も澄んでる。 よく見える」

ディエチと呼ばれた女性がそう言った。

ディエチの目には、遥か遠くを飛ぶ、ヴァイスが操縦するヘリが映っていた。

「でも良いのかクアットロ、撃っちゃって? ケースは残せるだろうけど、マテリアルの方は破壊しちゃうことになる」

ディエチがそう尋ねると、

「ウフフ……ドクターとウーノ姉さま曰く、あのマテリアルが当たりなら……本当に聖王の器なら、砲撃くらいでは死んだりしないから大丈夫、だそうよ」

クアットロと呼ばれた女性がそう答えた。

「フーン……」

ディエチは、如何でもよさげに相槌を打ち、持っていた布に包まれた物の布を剥ぎ取った。

その布の下からは、巨大なライフルが姿をあらわす。

すると、クアットロのすぐ横にモニターが開く。

そのモニターには女性が映っており、

『クアットロ、ルーテシアお嬢様とアギトの救出を任せたデジモンの2体がやられたわ』

そうクアットロに言った。

それを聞くと、クアットロは呆れたような仕草をして、

「やられちゃったんですかぁ。 力はあっても役に立たない人たちですねぇ」

そんな事を言った。

『それだけの力を持った彼らを倒せるほどの実力を持った相手という事よ。 今はセインが様子を窺っているけど……』

「フォローします?」

クアットロがそう聞くと、

『お願い』

モニターに映った女性は頷いた。





とある施設で、クアットロと通信を行なっていた女性が通信を切ると、

「何かあったのかい? ウーノ姉さん」

女性の後ろから男性の声が聞こえた。

ウーノと呼ばれた女性は振り向くと、

「カオス……ええ、ルーテシアお嬢様とアギトが管理局に捕まったの。 クアットロにフォローを頼んだから大丈夫と思うけど……」

「ッ……そうか………」

カオスと呼ばれた男性は、ウーノの「捕まった」という言葉で、一瞬動揺したが、その後の言葉を聞いて、落ち着いたように頷いた。

そして、カオスと呼ばれた男性は踵を返して、ウーノに背を向けると立ち去ろうとした。

「ああ、それから……」

ウーノは、カオスの背中に呼びかける。

「ルーテシアお嬢様を捕まえた局員の中に、あなたの“オリジナル達”もいたわ」

ウーノのその言葉で、カオスの足が止まる。

すると、カオスはウーノに振り向き、

「俺も、あいつ等のフォローに回らしてもらう。 クアットロは、調子に乗ると詰めが甘くなる」

そう言った。

「そう……そういう事にしておくわ」

ウーノがそう言うと、カオスは再び歩き出した。







クアットロが念話を飛ばす。

(セインちゃん?)

クアットロの念話に、

(あいよー! クア姉!)

セインと呼ばれる誰かが答える。

(こっちから指示を出すわ。 お姉さまの言うとおりに動いてね)

(了解~)

セインが応えると、クアットロは続けてルーテシアに念話を繋げた。






2体の完全体デジモンを撃破した輝二と輝一が、進化を解いて皆の所に戻ると、

「えっ? 同じ顔!?」

スバルが驚いた表情でそう言った。

見れば、輝二と輝一の素顔を初めて見たフォワードメンバーは全員驚愕の表情を浮かべていた。

すると、輝一が苦笑し、

「俺と輝二は双子の兄弟だからな。 似てるのは当然だよ」

そう説明する。

「そうだったんですか!」

キャロが驚きながらそう言った。

「おい、オメーら。 気持ちは分からんでもないが、今は任務中だって事を忘れんなよ」

ヴィータが、驚くフォワードメンバーに注意する。

その言葉で、気を引き締めなおすフォワード陣。

その時、今まで黙っていたルーテシアが口を開いた。

「逮捕は……いいけど………」

「「「「「「ッ!?」」」」」」

いきなり喋りだしたルーテシアに注意を向ける一同。

「大事なヘリは、放って置いて良いの?」

その一言に衝撃が走る一同。



その頃、ヘリに向かっていたなのはとフェイトが、視界にヘリを捉えた。

「見えた!」

なのはがそう言い、

「よかった。 ヘリは無事」

フェイトは安堵の言葉を漏らす。

だがその時、

「あっ!?」

大きな力を感じた。

ロングアーチでもその反応は捉えており、

「市街地に、エネルギー反応!」

「大きいっ!」

「そんな……まさかっ!?」

慌しくなるロングアーチスタッフ。

「砲撃のチャージ確認! 物理破壊型……推定Sランク!」




その時、ビルの屋上では巨大なライフルをディエチが構えていた。

「インヒューレントスキル……へヴィバレル、発動」

ライフルにエネルギーがチャージされていく。

「ああ、お嬢様もう一言追加いいですかぁ?」

クアットロが、ルーテシアに指示を出す。

それと共に、ルーテシアがヴィータに向かって再び口を開いた。

「あなたは……また……守れないかもね」

「っぐ!?」

その一言で、ヴィータが激しく動揺した。

その瞬間、

「発射!」

ディエチが引き金を引く。

大威力砲撃が、ヘリに向かって放たれた。

それは、ロングアーチでも捉えており、全員が絶句する。

その砲撃は、一直線にヘリに向かい、狙い違わずヘリを爆発で覆いつくした。



その事実に、ロングアーチは静まり返る。

「砲撃……ヘリに直撃……」

「そんな筈無い! 状況確認!」

「ジャミングが酷い……データ点きません!」

次々と送られてくるロングアーチの情報に、唖然とするフォワード陣。

「そんな……」

「ヴァイス陸曹や、シャマル先生……信也さんも……」

エリオとティアナが信じられないといった表情で呟く。

「テメェェェッ!!」

ヴィータが思わずルーテシアに掴みかかる。

「ヴィ、ヴィータ副隊長! 落ち着いて!」

スバルが何とか宥めようとするが、

「ウルセーッ!!」

ヴィータは、スバルの手を払う。

「おい! 仲間がいんのか!? 何処にいる! 言え!」

ヴィータが、ルーテシアに詰め寄る。

だがその時、レリックのケースを持つエリオの足元に、人の手が地面から突き出ていた。

「エリオ君! 足元に何かっ!」

それにギリギリで気付いたギンガが叫ぶ。

「えっ?」

エリオは慌てて足元を見るが、その前にその手は水面に沈むように地面の中に沈み、次の瞬間、水色のセミロングの少女が、地面から飛び出してきた。

「うわぁっ!」

一瞬でその少女にケースが奪われる。

「いただき!」

その少女は、してやったりと言わんばかりの表情を浮かべ、再び地面に潜ろうとインヒューレントスキルを発動させようとした。

その瞬間、

――ガキィ!

突然その少女の目の前に、光の剣と黒い槍が交差し、その少女の動きを止める。

「いいっ!?」

その少女は驚きの声を上げた。

その少女の両側には、一瞬でセットアップした輝二と輝一の姿。

「最後の一言は余計だったな」

輝一が言った。

「ああ。 その子は見る限り感情が欠落している。 そんな子が、あんな風に感情を逆撫でするような言動をする筈がない。 ならば、どこかで指示を出している人物がいることは、容易に想像できたぞ」

輝二がそう言った。

「ぐっ……だ、だけどヘリは!」

その少女が苦し紛れにそう言うが、何とか歩ける程度に回復した拓也がその少女の目の前に来て、

「その子に指示を出していたのが、お前か別の仲間かは知らないけどよ、一つ言っておく事がある」

拓也はそこで一呼吸置き、

「俺の弟を舐めるな!」

そう言い放った。




セインが掴まった報告を受けて、クアットロは唖然としていた。

「うっそぉ~……セインちゃん捕まっちゃったの?」

自分の計画が崩された事に焦りを隠せない。

しかもその原因が、調子に乗って追加した自分の一言だという事もショックの理由の1つだ。

そしてディエチは、命中の確認をしていたが、拓也の一言も気になっていた。

ヘリを覆っていた爆煙が晴れていく。

だが、ヘリは無傷だった。

更に、そのヘリを青い結界が覆っている。

「嘘……まだ飛んでる……?」

「そっちも!?」

ディエチの言葉に、クアットロは更にショックを受けた。



ロングアーチに通信が入る。

『こちらウインド01。 テンセグレートシールド発動。 ヘリの防御に成功』

信也から、そう報告が入った。

「信也さん!」

ロングアーチは安堵感に包まれる。

すると、信也は、

「ヴァイス陸曹! ヘリを2時の方向に向けて、後部ハッチを開けてください!」

そうヴァイスに進言する。

ヴァイスはそれを聞くと、

「っておい! まさか!?」

信也のやろうとしている事に気付いたのか、驚いた声を上げる。

「なるべく揺らさないようにしてくれると助かります」

信也はそう言った。

ヴァイスは、操縦席から後ろを振り向いて信也を見るが、その迷いない眼に、

「へっ! お任せあれ! パイロットとしての腕の見せ所だぜ!!」

そう応え、操縦桿を握りなおした。

ヘリが向きを変え、後部ハッチが開かれる。

そして、そこにブレイブハートをアーチェリーモードにした信也が立っていた。

「ブレイブハート、視力強化!」

信也は魔力で視力を格段に上げる。

その様子は、ディエチも確認できていた。

「な、何をする気だ?」

ディエチはそう怪訝に思ったが、ふと信也と目が合ったような気がした。

その瞬間、背中に冷たいものを感じる。

「ま、まさか……こっちが見えてるのか? い、いや、そんな筈ない! 唯の人間にこの距離で見えるはずが!?」

ディエチはそう否定しようとするが、信也は迷い無くブレイブハートを構える。

信也は魔力の矢を引き絞る。

「………狙撃が失敗したら、何時までも同じ場所にいちゃいけないよ」

信也はそう呟くと、なのはに念話を送る。

(なのは。 今から攻撃元を狙撃する。 それを目印に犯人の確保を!)

(了解! お願いね。 信也君)

なのはの返事を聞くと、信也は完全に狙撃に集中し、

「ブイブレスアローMAX!!」

青いVの字の魔力矢を放った。

信也の放ったブイブレスアローは一直線にクアットロとディエチのいるビルの屋上に突き進む。

「やばい!」

2人は慌てて飛び退いた。

ブイブレスアローが直撃し、吹き飛ぶ屋上。

2人は、別のビルの屋上に着地するが、

「見つけた!」

2人の後ろに、フェイトが着地する。

「こっちも!?」

「速い!」

2人は驚きながらも逃走を開始する。

フェイトはそれを追い、

「止まりなさい! 市街地での危険魔法使用、及び殺人未遂の現行犯で、逮捕します!」

そう宣言する。

「今日は遠慮しときます~~~!」

クアットロはそう叫ぶと、

「IS発動、シルバーカーテン」

インヒューレントスキルを発動させ、フェイトの視界から2人が消える。

「っ!? はやて!」

2人の姿を見失ったフェイトは、はやてに呼びかける。

その上空で、はやては魔法を唱えていた。

「位置確認。 詠唱完了。 発動まで、あと4秒!」

その言葉を聞くと、

「了解」

フェイトはUターンしてその場を離れる。

その様子を怪訝に思った2人は、

「離れてく……何で?」

「まさか!?」

クアットロが上空を見上げる。

そこでは、はやてが巨大な魔力球を作り出していた。

「広域……空間攻撃!?」

「うっそぉ~ん!」

2人は悲鳴を上げそうな表情になる。

「遠い地にて、闇に沈め……デアボリックエミッション!!」

魔力球が膨れ上がり、あたり一帯を蹂躙していく。

「「うわぁあああああああああっ!!」」

悲鳴を上げながら逃げ出す2人。

途中でクアットロがディエチを抱えて飛んで逃げる。

だが、

『投降の意思なし……逃走の危険ありと認定』

バルディッシュがそう告げると、フェイトは魔法陣を発生させて、魔力を集中する。

「はっ!」

2人はその事に気付き、動きを止める。

更にはその後ろで、なのはが砲撃の準備をしていた。

『砲撃で昏倒させて捕らえます』

レイジングハートがそう告げた。

進退窮まった2人が立ち往生していると、

「ディエチ! クアットロ! ジッとしてろ!!」

そんな声が聞こえた。

「「あっ」」

2人はそんな声を漏らす。

すると、

「IS発動。 ライドインパルス!」

青い髪の女性が、インヒューレントスキルを発動させる。

その時、

「トライデント……」

フェイトが構えると、バルディッシュがカートリッジを2発ロード。

「……スマッシャー!!」

3本の雷撃砲を放った。

同時になのはも、レイジングハートのエクシードモードを構え、

「エクセリオン……バスターーーーーッ!!」

砲撃を放った。

その2つの大砲撃に、2人は成す統べなく飲み込まれた、様に見えた。

しかし、実際は、青い髪の女性によって2人は助け出されていた。

廃棄都市の一角にクアットロとディエチを抱えた青髪の女性が現れる。

青髪の女性は2人を下ろす。

すると、

「ふ~~……トーレ姉さま。 助かりましたぁ」

「感謝……」

2人は安堵の息を吐く。

トーレと呼ばれた青髪の女性は、

「ボーっとするぐらいならさっさと立て。 バカモノ共め。 監視目的だったが、来て良かった」

腕を組みながら、そう言う。

すると、クアットロは恐る恐る口を開く。

「あ、あの~トーレお姉さま。 実はセインちゃんが捕まっちゃったんですけど……」

そう進言する。

それを聞くとトーレは、

「心配いらん。 そっちにはカオスが向かったそうだ」

そう言った。





セインをバインドで縛り付けたヴィータ達。

「さて、コイツには色々聞かなきゃならねー事もあるし、知ってることは全部吐いて貰うぞ」

ヴィータがセインに向かってそう言う。

因みにセインはそっぽを向いている。

しかし、その時、

「悪いが、そういう訳には行かないんでね」

何処からか男性の声が聞こえた。

「誰だっ!?」

ヴィータが叫ぶ。

すると、ビルの屋上からヴィータ達のいるハイウェイを見下ろしている人影に気付く。

その人影は、ビルから飛び降りると、ハイウェイに着地する。

そして、その人物が顔を上げた瞬間、

「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」

全員が驚愕する。

その中でも、特に輝二と輝一の驚きは大きかった。

何故ならば、その人物は、青いボディスーツに身を包み、灰色の短髪ではあるものの、その顔は輝二と輝一に瓜二つだったからだ。

「カオス兄ぃ!」

セインが叫ぶ。

その瞬間、カオスと呼ばれたその男性が右手を拳にして

「ヘヴンズナックル!!」

輝二に向かって繰り出した。

すると、その拳から白い光が放たれる。

「何っ!?」

輝二は驚愕した事で反応が遅れ、その光をモロに食らって吹き飛び、ハイウェイの向こうにあるビルに突っ込んだ。

「輝二!」

輝一が叫ぶ。

するとカオスは、今度は左手を輝一に向けると、

「デスクロウ!!」

その左手から、手を模った黒い闇が放たれ、輝一の首を掴むとそのまま輝一もビルに叩き付けた。

「コージ! コーイチ!」

ヴィータが叫ぶ。

更にカオスは左手から発生した闇を鞭のように細長くすると、

「ブラッディストリーム!!」

「「うわぁあああああっ!!」」

「「「「きゃぁああああああっ!!」」」」

それを振り回し、その場にいたセイン、ルーテシア、アギト以外を弾き飛ばした。

更に闇の鞭を器用に操って、レリックのケースを確保する。

すると、カオスはセインに向き直る。

「大丈夫か? セイン」

「カオス兄ぃ! 助かったぁ!」

セインは嬉しそうにそう言った。

すると、カオスが手を翳すと、セインのバインドが解除され、それからルーテシアとアギトの拘束具を外した。

「この場は引くぞ」

カオスのその言葉に、

「了解~」

セインは頷くと、ルーテシアを連れて地面の中に沈む。

その直前、

「……カオス……ありがとう……」

ルーテシアはそう呟いていた。

カオスは一度、輝二と輝一が吹き飛んだビルを一瞥して、憎悪の篭った表情をした後、その場を立ち去った。




それから暫くして、全員の無事を確認したヴィータがはやてに報告をしていた。

ヴィータからすれば、レリックのケースも奪われ、犯人も逃がしたという散々な結果であった。

しかも、輝二と輝一にそっくりな敵まで現れたのだ。

そんな時、

「あのっ、ヴィータ副隊長。 ずっと緊迫してたんで言い出すタイミングが無かったんですけど……」

「レリックには、私達で一工夫してありまして……」

ティアナとスバルがおずおずと言い出す。

「ケースはシルエットではなく本物でした。 私のシルエットは衝撃に弱いので、奪われた時点でばれちゃいますから」

「なので、ケースを開封して、レリック本体に直接厳重封印をかけて……」

「その中身は……」

スバルがそう言いながら、キャロの帽子を取る。

「ん?」

すると、キャロの頭には、何故か髪留めについた花。

「こんな感じで……」

ティアナがそう言いながら指を弾くと、シルエットが解除され、その花がレリックに変化する。

「敵との直接接触が少ないキャロに持っててもらおうって事になって」

エリオがそう言った。

「なるほどー!」

リィンは感心した様子でそう言い、

「は、ははは………」

ヴィータは引き攣った笑みを浮かべていた。




その頃、とある施設では、フォワードの新人達に一杯喰わされた彼女達の姿があった。







次回予告


目を覚ます謎の少女ヴィヴィオ。

その子がなのはに懐いてしまう。

そして、機動六課設立の秘密が、今明かされる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十五話 命の理由

今、未来への翼が進化する。






オリキャラ設定



・カオス


灰色の短髪で、輝二と輝一にそっくりな戦闘機人。

光と闇を扱う。

その正体は、スカリエッティが輝二と輝一の細胞を元にクローン培養した存在。

何故、元が2人なのかといえば、双子の細胞なら1つに出来るんじゃないかというスカリエッティ思いつきで、2人の細胞を混ぜ合わせて作り出されたため。

その結果、色々な運と突然変異などが重なり合って、光と闇を同時に扱えるという大成功を収めた。

ただし、本当に突然変異や運が良かっただけなので、同じ存在を生み出す事は不可能。

戦闘力では、トーレをも上回る。

ただし、光と闇は、同時に扱えるだけであり、1つにすることはできない。

普段は、輝二、輝一と同じで温厚。

基本的に自分よりも前に目覚めていたナンバーズを姉と呼び、自分よりも後に目覚めたナンバーズを妹扱いしている。

ただし、クアットロは別で、クアットロの性格が気に入らない為、自分よりも前に目覚めているが姉扱いはしていない。

目覚めた時期は、クアットロの後でセインより前。

オリジナルである輝二と輝一に憎しみにも似た感情を持っている。

名前の由来は、光と闇の相反する力を使えるため、混沌カオスと名付けられた。





あとがき

第十四話完成!

出来はそこそこかな?

そして、出してしまったオリジナル戦闘機人。

輝二と輝一のクローン培養で生み出された存在です。

自分の頭ではこれが限界だった。

皆さんはどう思うでしょうか?

話の流れも納得できます?

では、次も頑張ります。





[8056] 第十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/10/24 17:08


謎の敵と接触した機動六課。

そして、保護した少女は………



第十五話 命の理由



前回の事件の翌日。

拓也ははやてに呼ばれて、隊長室に向かっていた。

拓也が隊長室に入ると、はやてとフェイトがいた。

「で、用って何だ?」

拓也はそう切り出す。

「うん。 用って言うのは、これから私らと聖王教会に行ってほしいんよ」

「聖王教会に?」

はやての言葉に、拓也はそう漏らす。

拓也は、聖王教会の存在自体は知っているが、自分が聖王教会に行く理由に心当たりがなかった。

「何で俺が聖王教会に?」

拓也はそう尋ねると、

「フェイトちゃんやなのはちゃん達に、機動六課設立の本当の目的を教える序に、ちょっとした謎解きをやってほしいんよ」

「謎解き?」

「それは聖王教会で話すわ」

拓也は、謎解きとは何かと思うが、ここは一旦納得しておき、話を区切る。

「で、聖王教会へは何時行くんだ?」

「ん~と、なのはちゃんも一緒に行くから、なのはちゃんが帰って来たらすぐに行くつもりやよ」

はやてはそう答える。

「時間的にはそろそろの筈だけど………なのは、戻ってるかな?」

フェイトがそう言いながらパネルを捜査し、モニターを開く。

その瞬間、

『ウエェェェェェェェェン!!』

いきなり泣き声が聞こえてくる。

「な、何だぁ!?」

拓也が驚いてモニターを覗くと、

『ああ! ほら、泣かないで! 泣かないで!』

なのはに抱きつきながら大声で泣く金髪の少女と、なんとかその少女を慰めようとしているなのは。

その周りで、如何したらいいか分からずオロオロするフォワード陣及びデジタル組。

「あの……何の騒ぎ?」

フェイトがなのはにそう尋ねると、

『ああ、フェイト隊長。 実は……』

と、なのはがそう言いかけた所で、

『やだぁ! いっちゃやだぁ!!』

その少女がそう泣き喚く。

とりあえず、3人は現場に向かうことにした。



3人がその場に行くと、

(はやてちゃん、フェイトちゃん、えと……助けてぇ)

なのはが念話で少々情けない声で助けを求めてくる。

拓也は、純平達を見ると、

「すまん拓也。 俺達、子供の相手は如何したらいいか分からなくて」

純平がそう言ってくる。

「まあ、仕方ないけどさ。 っと、そうだ純平………」

拓也は純平に何か言うと、純平は懐から何かを取り出し、拓也に渡す。

そして、拓也は泣き喚く少女に目線を合わせるように座り込むと、

「お嬢ちゃん」

その少女に声をかけ、握った手を少女の顔の前に持ってくる。

「ふえっ?」

一瞬だが、少女の気が拓也の手に向く。

拓也はその時を見計らい、

――ポンッ

という音と共に、拓也の手に花が現れる。

因みにこの手品のタネは純平から借りたものである。

「あっ」

少女が興味を示す。

そこで、

「こんにちは」

フェイトが、ウサギの人形を持って、少女に声をかける。

「この子は、あなたのお友達?」

フェイトは、ニッコリと笑って少女に尋ねる。

「ヴィヴィオ。 こちら、フェイトさんと拓也さん。 フェイトさんは、なのはさんの大事なお友達。 拓也さんは……」

「なのはの未来のお兄ちゃんだ。 よろしく」

なのはの言葉に被せる様に拓也が行った。

「お、お兄さん!」

顔を真っ赤にするなのは。

「別に良いだろ? ホントの事なんだし」

悪びれも無くそう言う拓也。

そんな様子を見て、フェイトは笑いながら、

「ヴィヴィオ、如何したの?」

優しくヴィヴィオに問いかける。

(とりあえず、病院から連れて帰ってきたんだけど、なんか離れてくれないの)

なのはが念話でそう言うと、

(フフッ、懐かれちゃったのかな?)

フェイトが笑顔でそう返す。

(それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど……)

なのはが念話でそう言いながらフォワード陣のほうに視線を向けるが、

((((すみません……))))

全員が申し訳無さそうに謝る。

(クスッ、いいよ。 任せて)

フェイトがそう応えると、

「ねえ、ヴィヴィオは、なのはさんと一緒にいたいの?」

フェイトがその少女、ヴィヴィオに尋ねる。

「……うん」

ヴィヴィオは頷いた。

「でもなのはさん、大事なご用でお出かけしなきゃいけないのに、ヴィヴィオがわがまま言うから困っちゃってるよ」

「わがまま言うと、この子も困っちゃうぞ」

フェイトと拓也がそう言うと、フェイトがウサギの人形を操って困った仕草をさせる。

「こんな風に、ほら」

「……ううっ」

その言葉に反応を示すヴィヴィオ。

「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね」

「うん……」

そんな風にヴィヴィオをあやす2人を見ていたフォワード陣とデジタル組。

(な、なんかフェイトさんと拓也さん……達人的なオーラが……)

スバルが念話で呟くと、

(兄さんはああ見えて昔から年下の面倒見が良かったから、ご近所の子供達の面倒もそれなりに見てきたんだよ)

信也がそう言う。

(い、意外ね……)

泉がそう呟くが、

(僕も小学生の頃は、『拓也兄ちゃん』って呼んで慕ってたっけ)

友樹が自分の過去を顧みてそう言う。

(そういえばそうだったな)

純平が納得したように頷く。

(フェイトさんは……年下の家族がいますし……)

エリオが呟き、

(使い魔さんも育ててますし……)

キャロが続き、

(ああ! それにあんたらのちっちゃい頃も知ってるわけだしね!)

ティアナが納得する。

((ううっ……))

エリオとキャロは、顔を赤くして俯く。

そんな事をしている内に、

「だからねヴィヴィオ、いい子で待ってよ?」

「なっ?」

フェイトと拓也がそう言いながらウサギの人形をヴィヴィオに差し出す。

ヴィヴィオはその人形を受け取り、

「……うん」

頷いた。

「ありがとね、ヴィヴィオ。 ちょっとお出かけしてくるだけだから」

なのはがそう言うと、

「……うん」

ヴィヴィオは、涙を浮かべながらも頷いた。




4人はヘリで聖王教会に向かう。

そして、ある一室に通されると、そこには、聖王教会の騎士カリムと、今は提督になっているクロノがいた。

「失礼いたします。 高町 なのは一等陸尉であります」

なのはが敬礼しながらそう言い、

「フェイト・テスタロッサ執務官です」

同じくフェイトも敬礼してそう言った。

「民間協力者の神原 拓也です」

拓也は普通にそう言う。

「いらっしゃい。 初めまして。 聖王教会、教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します」

カリムが自己紹介する。

「どうぞ、こちらへ」

4人は、クロノが座っている奥のテーブルに通される。

「「失礼します」」

なのはとフェイトは一礼して席につき、

「おっす。 久しぶりだなクロノ。 それともクロノ提督と呼んだほうがいいか?」

拓也は、フレンドリーにクロノに言葉を投げる。

「よしてくれ。 君は僕から、掛け替えの無い友人を奪うつもりか?」

「ははっ、冗談だよ」

クロノの言葉に、拓也は笑ってそう返す。

「クスッ、其方のお2人もそんなに硬くならずに、私達は個人的にも友人だから、いつも通りで大丈夫ですよ」

カリムは、なのはとフェイトにそう言う。

「と、騎士カリムが仰せだ。 普段と同じで」

「平気や」

クロノとはやてがそう続いた。

「じゃあ、クロノ君久しぶり」

「クロノ、元気だった?」

2人は、普通の話し方に戻る。

「ああ。 2人も元気そうで何よりだ」

クロノはそう返す。

「さて、昨日の動きについてのまとめと、改めて、機動六課設立の裏表について。 それから、今後の話や」

はやてがそう切り出した。



部屋のカーテンが閉まる。

そして、クロノが話し出した。

「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア、レリックの対策と、独立性の高い、少数部隊の実験例。 知っての通り、六課の後見人は、僕と騎士カリム。 それから僕の母親で上官、リンディ・ハラオウンだ」

クロノの言葉と共に、モニターが表示されていく。

「それに加えて、非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」

「「えっ?」」

クロノの言葉に、なのはとフェイトが声を漏らす。

すると、

「その理由は、私の能力と関係があります」

カリムが席を立ち、手のひらに纏められている紙の束を取り出す。

カリムは、その紙の束を纏めている紐を解くと、その紙の束がバラバラになり、カリムの周りに浮遊する。

「私の能力、『預言者の著書プロフェーティン・シュリフテン』。 これは最短で半年、最長で数年先の未来。 それを詩文形式で書き出した、預言書の作成を行う事ができます。 2つの月の魔力が上手く揃わないと発動出来ませんから、ページの作成は、年に一度しか出来ません」

すると、その内の2枚がなのはとフェイトの前に飛んでくる。

「預言の中身も古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わることもある難解な文章」

なのはとフェイト、そして拓也もその紙を覗き込むが、全く読めない。

「世界に起こる事件をランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば、的中率や実用性は、割とよく当たる占い程度。 つまりは、あまり便利な能力ではないんですが……」

カリムは苦笑しつつそう言う。

「聖王教会は勿論、次元航行部隊のトップもこの預言には目を通す。 信用するかどうかは別にして、有識者による予想情報の一つとしてな」

「因みに、地上部隊はこの預言がお嫌いや。 実質のトップが、この手のレアスキルとかが嫌いやからな」

クロノとはやてがそう言った。

「レジアス・ゲイズ中将……だね」

なのはが確認するように呟く。

「そんな騎士カリムの預言能力に、数年前から少しずつある事件が書き出されている」

クロノがそう言って、カリムに目配せすると、カリムは1枚の預言書を取り出す。

「旧い結晶と無限の欲望が交わる地 

死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る

死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち

それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる」

「「ッ!?」」

カリムの言葉を聞いて、驚愕するなのはとフェイト。

「それって……」

「まさか……」

「ロストロギアを切っ掛けに始まる、管理局地上本部の壊滅と、そして、管理局システムの崩壊」

その言葉に驚愕するなのはとフェイト。

「ショックを受けている所悪いが、預言はもう一つあってな」

「拓也さんを連れて来たのはその為や」

クロノとはやてがそう言って、カリムに目配せする。

カリムは、もう1枚の預言書を取り出し、

「無限の欲望、傲慢なる天使の導きにおいて、電子の世界より電子の獣を解き放つ

電子の獣止めるべく、人と獣の姿を持つ10の魂を受け継ぐ戦士達が現れる

蘇りし彼の翼が堕ちる時、7つの大罪蘇り、世界は絶望に包まれ

10の魂集いし竜戦士と狼戦士もその力の前に倒れ伏す

幼き聖王の願い、青き石に届く時

電子の獣を従えし英雄達が集い、希望を繋ぐ」

カリムが預言を読み終える。

「これが、2つ目の預言や。 無限の欲望はジェイル・スカリエッティ。 電子の世界はデジタルワールド。 電子の獣はデジモンで、恐らく7つの大罪は七大魔王。 いまんとこ私達で解釈できるのはこの位なんやけど……拓也さん、何でもいいです。 思い当たる事はないですか?」

はやてが、拓也に尋ねた。

「…………」

拓也は少しの間考えていたが、

「……多分、傲慢なる天使はルーチェモン……」

拓也はそう呟く。

「え? 確かにルーチェモンは傲慢に当たるデジモンだったけど、ルーチェモンって魔王型じゃないの?」

拓也の言葉に疑問を持ったフェイトが問いかける。

「ああ。 完全体のルーチェモン フォールダウンモードは、光の力と闇の力を兼ね備えた魔王型だ。 でも、ルーチェモンの成長期は、完全な天使型デジモンなんだ。 でも、成長期といっても、その力は究極体と同等以上だ」

「「「「ッ」」」」

拓也の言葉に戦慄する一同。

「それで、人と獣の姿を持つ10の魂っていうのは、十闘士のスピリットで間違いないと思う。 で、それを受け継ぐ戦士達って事は、俺達ってことだと思う。 10の魂集いし竜戦士と狼戦士って言うのは、俺と輝二が進化したカイゼルグレイモンとマグナガルルモンだと思うぞ。 俺がわかるのはこの位だ」

拓也の言葉で、はやてとフェイトはハッとなり、

「9年前のあの進化やな。 確かに言われて見ればその通りや」

はやてが納得したように頷く。

「でも……だとしたらこの預言の意味は……」

フェイトが、不安の表情を浮かべて呟く。

「彼の翼が何を表しているのかは分からないけど、それが堕ちた時、七大魔王が復活して、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンに進化した俺と輝二がやられるって事だろうな……」

拓也がその言葉の続きを言った。

「その先の預言には心当たりは無いのか?」

クロノがそう尋ねると、

「ああ。 幼き聖王は元より、デジモンを従えた英雄なんて心当たりはない。 俺達は自分自身がデジモンになるからな」

「そうか……」

拓也の答えに、クロノは若干気落ちした雰囲気を見せる。

「あっ、でも」

拓也が思いついたように言った。

「願いが青い石に届くんじゃなくて、願いを叶える青い石って言うならジュエルシードじゃねえのか?」

拓也はそう言う。

「なるほど、解釈ミスの例もある。 その事も考えの中に入れておいたほうがいいだろう」

クロノがそう言った。

「まあ、預言でそう出ても、七大魔王が復活する前にルーチェモンを探し出す事が出来れば何とかなる。 だからそんなに暗い雰囲気になる事はねーって」

拓也は、皆を元気付ける為に、明るい声でそう言った。

「君は相変わらずだな。 よし! ルーチェモンの捜索にも、僕も可能な限り協力しよう」

クロノがそう言いい、

「私達聖王教会も、ご協力いたします」

カリムもそう言った。

「頼みます」

拓也は頭を下げる。

その内心で、拓也は七大魔王復活の前にルーチェモンを止める事を強く決意するのだった。





次回予告


機動六課に慣れてきたヴィヴィオ。

そんな中、なのはがヴィヴィオの保護責任者となり、

フェイトが後見人になった事で……

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十六話 Families

今、未来への翼が進化する。




あとがき

第十五話の完成。

タイトルが全然掠ってもない。

ちょっと短い気もする。

とりあえず、預言考えるのに苦労しました。

ちゃんと詩文形式になってます?

拓也の設定弄くりまくり。

でも、面倒見がいいのは間違ってないと思う。

純平の職業はマジシャンなのか?

終わりも結構強引です。

因みに次回のタイトルはファミリーズですけど……

アレであってますかね?

ともかく次も頑張ります。





[8056] 第十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/12/19 22:30

六課で面倒を見ることになった少女、ヴィヴィオ。

そして……



第十六話 Families



ヴィヴィオが六課に来てから数日が経ったある日。

拓也が食堂に来ると、なのはとヴィヴィオが手を繋いで歩いてきた。

「あ、お兄さん。 おはようございます」

なのはが挨拶する。

「ああ、おはようなのは」

拓也がそう返すと、なのはが座り込み、

「ヴィヴィオ。 お兄さんにおはようって」

ヴィヴィオにそう告げる。

「うん」

ヴィヴィオは頷いてから、

「おはよう」

そう言った。

「うん。 おはようヴィヴィオ」

拓也は微笑んでそう返す。

「よくできました」

なのはがヴィヴィオを誉める。

「うん、なのはママ」

そうヴィヴィオが口にした瞬間、拓也は軽く驚いた顔をする。

「ママ?」

拓也がなのはに尋ねると、なのはは苦笑して、

「私、ヴィヴィオの保護責任者になったんです。 それで、その事をスバルが説明したらこんな風に」

そう説明した。

「ふ~ん。 でも、満更じゃないって顔してるな」

拓也がなのはを見てそう言う。

「そ、そうですか?」

なのはは、少し頬を赤くする。

拓也はそれを見ると、

「お、そうだ」

何かを思いついたように食堂のとある席に向かった。

そこは、信也を含めた新人フォワード陣が集まっているテーブル。

「おーい。 信也」

拓也は信也を呼ぶ。

「あ、兄さん。 おはよう」

拓也に気付いた信也が挨拶する。

「おう、おはよう」

拓也はそう返すと、

「ところで信也。 なのはがヴィヴィオの保護責任者になったって知ってるか?」

そう尋ねる。

「え? 知ってるけど……」

信也が頷くと、

「じゃあ、なのはがママって呼ばれてることは?」

拓也は更に尋ねる。

「それも含めて、たった今スバル達から話を聞いてたところなんだけど……」

信也はそう答える。

「そうか。 丁度いい、ちょっと来い」

拓也はそう言うと、信也の腕を掴んで引っ張っていく。

「え? ちょっと兄さん?」

信也は訳が分からないといった声を上げるが、拓也は気にせずに信也をなのはとヴィヴィオの前に引っ張っていく。

それを呆然と見送るフォワード陣。

拓也が信也を引っ張りながら、再びなのはとヴィヴィオの前に来ると、

「あ、あの、お兄さん?」

なのはは、拓也の突然の行動に困惑した声を漏らす。

すると、拓也はヴィヴィオの前で目線を合わせるように座り込むと、ゆっくりと話かける。

「なあ、ヴィヴィオ。 ママが出来て嬉しいか?」

「うん」

拓也の言葉に、ヴィヴィオは迷い無く頷く。

「じゃあさ、パパは欲しくないか?」

拓也は笑ってそう言う。

「パパ?」

ヴィヴィオは首を傾げて呟く。

「そう、ママがいるなら、パパもいなきゃおかしいだろ?」

拓也がそう言うと、

「……パパ………パパも……欲しい……」

ヴィヴィオがそう言った。

「ま、まさかお兄さん!?」

拓也の行動が予想できたなのはは声を上げる。

「よし! コイツがヴィヴィオのパパだ」

そう言って、信也をヴィヴィオの前に引っ張り出す。

「に、兄さん!?」

信也が困惑した声で叫んだ。

「信也がヴィヴィオのパパだ」

拓也は信也の声を無視して、ヴィヴィオにそう言う。

「パパ?」

ヴィヴィオが、ほんと?と言う様に首を傾げながら信也を見上げる。

「うっ………」

困惑していた信也も、ヴィヴィオのその仕草に、何かクるものがあったらしく、動揺する。

「しんや………パパ?」

ヴィヴィオは、なのはと同じように信也の名をつけてパパと呼ぶ。

「ううっ………」

先程よりも大きな動揺を見せる信也。

ヴィヴィオは、何とも保護欲をかき立てるような瞳で信也を見上げる。

「う…………うん、僕がヴィヴィオのパパだよ」

遂に信也が折れた。

その後ろでは、拓也が小さくガッツポーズをする。

「パパ……しんやパパ!」

ヴィヴィオが少し大きな声で呼んだ。

「うん、ヴィヴィオ」

信也は頷いて応える。

「パパ!」

ヴィヴィオは笑顔になって抱きついた。

信也は、ヴィヴィオの頭を撫でながら、なのはに視線を向ける。

「にゃはは………」

なのはは嬉恥ずかしといった具合で、笑みを零す。

信也も、なのはに微笑み返す。

だが信也は、このまま拓也の思い通りになるのも少し癪だったので、

「ねえ、ヴィヴィオ………」

「うゆ?」

小声でヴィヴィオに話しかけた。

「……わかった?」

「うん」

信也の言葉にヴィヴィオは頷くと、トコトコと歩いて未だに笑っている拓也の元に行く。

「……ん? どうしたヴィヴィオ?」

自分の元に来たヴィヴィオに拓也が尋ねると、

「えと、よろしくね。 たくや“おじちゃん”!」

――ドスッ!

「ぐはぁっ!?」

拓也は崩れ落ちる。

食堂にいた全員が、拓也の胸に言葉の矢が突き刺さるのを幻視した。

「お……おじちゃん………いや……確かに信也の兄貴だから伯父だけどさ………なのは達よりも3歳年上だし…………小さな子から見ればおじさんかもしれないけどさ…………」

拓也は、意外と精神的に大ダメージを受けたらしく、暗いオーラを纏いつつ、ブツブツ言いながら床にのの字を書く。

「仕返し完了」

信也がそう口にする。

その様子を見ていたフォワード陣は、

「た、拓也さん………」

エリオが引き攣った顔でそう呟き、

「策士策に溺れるって言うのかな? こういうの………」

スバルが苦笑し、

「自業自得でしょ」

ティアナが我関せずと言わんばかりに食事を口に運ぶ。

キャロは何ともいえない表情だ。

すると、

「えっと………どういう状況なのかな?」

遅れて食堂にやってきたフェイトが、困惑したようにそう言う。

「あ、フェイトさん。 実は………」

キャロは、拓也がおじちゃんと呼ばれて落ち込むまでの経緯を話した。

すると、フェイトは苦笑しながらヴィヴィオの近くに行くと、

「ねえ、ヴィヴィオ」

そう言って、ヴィヴィオに声をかける。

「あ、フェイトママ!」

ヴィヴィオは嬉しそうにそう言う。

「ねえヴィヴィオ。 シンヤがパパになってくれたんだってね?」

フェイトがそう尋ねると、

「うん!」

ヴィヴィオは、嬉しそうに頷く。

「でもね、タクヤも言い様によってはパパなんだよ?」

フェイトは、優しく言い聞かせるようにそう言う。

「ふえ?」

ヴィヴィオは首を傾げる。

「シンヤはね、なのはママに対するパパなの。 でね、フェイトママに対するパパがタクヤなんだよ?」

フェイトがそう言うと、

「うゆ………たくや……パパ?」

ヴィヴィオがそう呟く。

「うん、そう」

フェイトは笑顔で頷く。

ヴィヴィオは、顔を上げてなのはを見る。

「なのはママと……しんやパパ」

なのはから信也に視線を移しつつそう呟き、

「「は~い」」

なのはと信也がそう返事をして、ヴィヴィオは今度はフェイトを見る。

「フェイトママと……たくやパパ?」

同じようにフェイトと拓也に視線を移しながらそう呟いた。

「そうだよ、ヴィヴィオ」

フェイトはその言葉を肯定する。

するとヴィヴィオは、トコトコと拓也の傍に駆け寄ると、

「たくやパパ!」

座り込んでいた拓也の背中に抱きついた。

「ヴィヴィオ?」

正気に戻った拓也が、背中に抱きつくヴィヴィオに振り返る。

「これならいいよね?」

フェイトが笑いながらそう言ってくる。

「はは………そうだな」

拓也はそう言うと、ヴィヴィオを背負ったまま立ち上がる。

その様子を見ていたフォワード陣は、

「し、信也さんと拓也さんがパパって………」

「ヴィヴィオが更に無敵になりましたね」

エリオとキャロがそう口にすると、

「これでヴィヴィオに何かあったりしたら………」

スバルが何となくそう言い、その場合にどうなるかを想像する。

4人全員が、犯人ごと街が火の海瓦礫の山になるところが思い浮かぶ。

「とんでもないわね………」

ティアナが4人を代表してそう呟く。

すると、

「お~い。 エリオ、キャロ」

拓也がヴィヴィオを背負ったまま、フォワード陣のテーブルに近付いてくる。

「は、はい」

「なんでしょう?」

呼ばれた2人がそう応えると、

「お前らはまだ”お父さん“と呼んでくれないのか? 今なら可愛い妹が付いてくるぞ」

拓也がそう言うと、2人は顔を赤くする。

「い、いえ……それは、その……」

「あ、あう……」

2人は言いよどむ。

「ま、前も言ったけど、俺はいつでも大歓迎だからな」

拓也は笑いながらそう言うと、フェイトたちの方へ戻っていく。

その様子を別のテーブルで見ていたデジタル組は、

「何ていうか………」

「もしかして拓也って…………」

「親バカなのかな?」

純平、泉、友樹の順番でそう呟くのだった。

尚、食堂の全員がその呟きに同意したのは言うまでもない。






次回予告


時が経ち、輝二、輝一、ギンガの3人が機動六課へ出向してくる。

そして、ギンガVSスバルに始まり、拓也VS輝二、輝一VSシグナムの模擬戦が行なわれる。

更に、その翌日には驚愕の事実が!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十七話 Sisters&Lovers

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第十六話の完成。

短い………というより、作品内での時間が経ってない。

朝の出来事約5分でした。

とりあえず出来は普通かな。

次回から漸く輝二と輝一の本格参戦。

お楽しみに。





[8056] 第十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/01/30 13:16
ヴィヴィオのパパとママになった拓也、信也、フェイト、なのは。

それから………



第十七話 Sisters&Lovers



ヴィヴィオが機動六課に保護されてから、暫くの時が流れたある日………

フォワードメンバーがいつもの朝練の為に集合した時、

「さて、今日の朝練の前に、1つ連絡事項です」

なのはがそう切り出す。

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、今日から暫く六課へ出向となります」

「はい。 陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。 よろしくお願いします」

なのはに紹介され、ギンガが敬礼をしながら名乗る。

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

新人メンバーもそう返す。

「それからデジモン対策の為に、源 輝二一尉と木村 輝一一尉も特例でギンガ・ナカジマ陸曹と同じく、六課へ出向扱いになります」

なのはが続けて輝二と輝一を紹介する。

「源 輝二一等陸尉だ。 よろしく頼む」

「木村 輝一一等陸尉です。 よろしく」

2人も、敬礼しながら名乗る。

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

新人達が返す。

「後、もう1人」

フェイトがそう言うと、

「どうも~」

と言って、気軽に挨拶をする女性。

「10年前から、ウチの隊長達のデバイスを見てきてくださっている本局技術部の精密技術官……」

「マリエル・アテンザです」

フェイトの言葉の後に続いて、マリエルが名乗った。

「地上でのご用事があるとのことで、暫く六課に滞在していただく事になった」

シグナムが言い、

「デバイス整備なども見てくれたりするそうですので」

シャーリーが続き、

「気軽に声をかけてね」

マリエルが笑顔で締めた。

「「「「「はい!」」」」」

返事をする新人メンバー。

「さて、紹介も済んだ所で、今日も朝練いっとくか!」

ヴィータが叫んだ。

「「「「「はい!」」」」」

新人達はそれぞれアップを始める。

すると、

「ギンガ」

なのはがギンガに声をかける。

「はい?」

ギンガが尋ねると、

「ちょっと、スバルの出来を見てもらっていいかな?」

「あ……はい」

なのはが答え、ギンガが頷く。

「一対一で軽く模擬戦。 スバルの成長、確かめてみて」

「はい!」

なのはの言葉に、ギンガは力強く頷き、スバルは笑みを浮かべつつ真剣な眼差しで挑むのだった。




隊長達や新人メンバーが見守る中、

「はぁああああああっ!!」

「クッ!」

「はぁっ! やぁ! てやぁ!」

「ふっ! はっ! くぅっ!」

スバルとギンガが同じシューティングアーツで激しい攻防を繰り広げていた。

シュミレーターの地形は森である。

最初こそスバルは押されていたが、毎日続けてきた訓練は伊達ではなく、反撃に移る。

「おりゃぁあああああああっ!!」

「くうっ!」

途中、ギンガが冷やりとする場面もあり、2人の戦いはウイングロードを用いての空中戦に移る。

2人は空中で何度も交差し、互角の戦いを繰り広げる。

そして、互いの渾身の一撃がぶつかり合った瞬間、

「………あ」

スバルが声を漏らす。

ギンガの左手のリボルバーナックルが、スバルの鼻先で寸止めされていた。

「はーい! そこまで!」

なのはが模擬戦の終了を告げる。

ギンガが、スバルの前から拳を引くと、

「いいね。 色々、上手くなった」

スバルにそう言った。

「まだまだ………全然」

スバルは、悔しそうな口調でそう言う。

2人が地上に戻ると、フォワードメンバーを含めた反省会が開かれる。

全員で意見を交換し合っていると、

――ドゴォオオオオオオオオオン

突如、訓練の地形となっていた森の中で爆発が起こる。

「な、何!?」

ギンガが驚く。

すると、

――ドゴォン ズドォン ドカァ

立て続けに爆発が起きた。

信也が空を飛んで様子を窺うと、

「え~と……兄さんと輝二さんだね」

何故か戦い合っている2人の姿を見つけた。

すると、2人が戦っている方向から、輝一を含めたデジタル組がこちらに歩いてくる。

因みに輝二と輝一は、スピリットデバイスの使い手という事で、デジタル組の訓練を見ていた。

「何があったんですか?」

ティアナが尋ねると、

「ああ。 どうやらギンガとスバルの模擬戦に感化されたみたいでね」

「いきなり模擬戦をおっぱじめちまったんだ」

輝一と純平が答える。

すると、なのはは苦笑して、

「折角だから、見学させてもらおっか」

そう言うのだった。




「おおおおおおおおっ!!」

「はぁああああああっ!!」

――ドォオオン

拓也の炎を纏った拳と、輝二のリヒト・ズィーガーがぶつかりあう。

その度に爆発にも似た衝撃波が発生する。

互いを弾き合い、間合いが開くが、輝二はすぐに地面を蹴ってリヒト・ズィーガーを振りかぶり、上段から切りかかる。

「はぁっ!!」

「何のっ!!」

拓也は、両手に炎を纏わせると、リヒト・ズィーガーを白刃取りする。

「甘い!」

だが、輝二はすぐに左手を腰の後ろに持っていくと、もう一本のリヒト・ズィーガーを抜き、そのまま逆手で拓也の腰部目がけ、斬りかかる。

「ちいっ!」

拓也はすぐに右膝を挙げ、足でその一撃を防御する。

「くっ!」

防がれた輝二は、すぐに離れようとしたが、

「逃がすか! サラマンダーブレイク!!」

拓也は炎に包まれ、回転回し蹴りを放つ。

「くぅっ!」

輝二は、咄嗟に2本のリヒト・ズィーガーを交差させ、体勢を崩しながらもその蹴りを受けきった。

そこで一旦間が空き、2人は口元に笑みを浮かべる。

すると、拓也は炎に、輝二は光に包まれ、ビーストタイプへとバリアジャケットを変更した。

「「いくぞっ!!」」

そして、2人は同時に突撃した。




2人の戦いを、少し離れた所から見ている一同。

「凄い……あの源一尉と互角に戦ってる………しかも、滅多に見せないガルムフォームまで………」

ギンガは2人の戦いに声を漏らす。

だが、ギンガの考えている事はそれだけではなかった。

(あの人……確か、神原 拓也さん………前会った時も感じたけど、あの人のあの姿………私は……あの人を知ってる?)

何故か記憶の片隅に引っ掛かりを感じるギンガ。

「あれ? どうかしたギン姉?」

物思いにふけるギンガの様子を不思議に思ったのか、スバルが声をかける。

「うん……拓也さんなんだけど………昔……何処かで会ってる気がして……」

ギンガが呟くと、

「うん、会ってるよ」

スバルが、迷い無く肯定した。

「え?」

ギンガが思わず声を漏らす。

「私も拓也さんに会ってから思い出したんだけど、ほら、10年前に銀行で……」

スバルの言葉に、ギンガはその時の事を思い出す。

「あっ! あの時の!」

ギンガは、改めて拓也を見つめる。

「そうなんだ……拓也さんが……あの人……」

ギンガは、憧れに似た視線で拓也を見る。

すると、ポンと肩に手を置かれ、

「ねえギンガ……」

その言葉にギンガが振り向くと、満面の笑みを浮かべたフェイトがいた。

「フェ、フェイトさん? な、なんか怖いんですけど……」

満面の笑みを浮かべるフェイトだが、目が全く笑っていない事に気づいたギンガは困惑した声を漏らす。

「いくらギンガでも、タクヤに手を出したら承知しないからね」

「え? えっ? え?」

ただ肩に手を置かれているだけなのに、全く動かない身体に、ギンガは戦慄を覚える。

「ギン姉、ギン姉」

そんなギンガに、スバルが声をかける。

ギンガがスバルに顔を向けると、

「拓也さん、フェイト隊長の婚約者だから。 拓也さんには手を出さない方がいいよ」

スバルの言葉に、一瞬呆けるが、

「え? ええっ!?」

スバルの言葉を理解すると、驚愕の声を上げた。




ヴリトラフォームとガルムフォームで決着がつかない2人は、既にアルダフォームとベオウルフフォームになっていた。

それに伴い、激突による衝撃は大きくなっていく。

そんな中、

「おーおー。 早速やっとるなぁ」

そう言いながら、はやてがヴィヴィオとリィンを伴い、訓練場へやってきた。

「あ、はやてちゃん」

なのはが振り返ってそう言う。

「ママ~」

ヴィヴィオが駆け寄ってきた。

「ヴィヴィオ!」

「あぶないよ。 転ばないでね」

なのはとフェイトがそう言い、

「うん!」

ヴィヴィオはそう返事をする。

が、

「あ」

言った傍からヴィヴィオが躓く。

倒れていくヴィヴィオ。

「おっと」

だが、倒れる寸前に高速移動した信也がヴィヴィオを受け止めた。

「ほらヴィヴィオ。 言った傍から気をつけないと」

「しんやパパ?」

信也が、ヴィヴィオに言い聞かせるように言った。

その時、

――ドゴォオオオオオオン

拓也と輝二の渾身の一撃がぶつかり合い、拓也のルードリー・タルパナと輝二の大剣での鍔迫り合いになる。

「うおおおおっ!」

「ぐぅうううっ!」

2人は拮抗するが、やはり拓也の方が力は上回っているのか、徐々に拓也が押していく。

すると、

「とーさまー! 頑張れですぅー!!」

リィンが輝二に向け叫んだ。

その声が耳に届いた輝二は、

「くっ………うぉおおおおおおおおおっ!!!」

その言葉に応えるように気合を入れ、拮抗状態に持ち直し、今度は逆に拓也を押していく。

「ぐぐぐ………お、お前……娘の声援で頑張るって、そんなキャラじゃねえだろ!」

拓也は、押し返された事に思わずそう漏らす。

「ほっとけ!」

輝二は、関係ないと言わんばかりに言葉を吐いた。

そして、そのまま輝二が拓也を押し切るかに思われたとき、

「負けるな~! たくやパパ~!!」

ヴィヴィオが叫んだ。

すると、拓也は目付きを変え、

「よっしゃぁああああああっ!!!」

そう叫ぶと共に、また拮抗状態へと持ち直す。

「………お前も、人の事は言えないな!」

輝二が皮肉げにそう言う。

「へっ! 皆から言わせれば、俺は親バカらしいからな!」

拓也は、笑みを浮かべながらそう言った。

次の瞬間、互いに弾き合い間合いを開ける。

「次で勝負だ!」

拓也が叫ぶ。

「望むところだ!」

輝二も応える。

すると、拓也が激しい炎に包まれ、焔の鎧を身に纏い、龍魂剣をその手に持つ。

「カ、カイゼルグレイフォーム!? 拓也さんが本気に!?」

エリオが驚いた声を上げる。

すると、輝二も光に包まれ、水色の重武装を纏った姿になる。

「えっ!? 源一尉のあの姿は!?」

ギンガは、更なる輝二の変化に驚愕する。

「おおおおおおっ!!」

拓也は龍魂剣を力強く地面に突き刺す。

だが、

「マシンガンデストロイ!!」

その隙を突いて、輝二が武装を乱射する。

無数のミサイルや銃弾の嵐に、拓也は瞬く間に爆発に飲まれる。

「「ああっ!」」

エリオとキャロが、声を上げる。

しかし、その爆煙を切り裂き、煙の中から8匹の炎の龍が現れる。

「くっ!」

その8匹の龍は、輝二の各部に喰らい付き、動きを止める。

「もらったぁっ!!」

爆煙の中から、9匹目の炎の龍を纏った拓也が龍魂剣を振りかぶりつつ飛び出してきた。

「とーさま!!」

リィンが叫ぶ。

その時、

「甘いっ!!」

輝二はバリアジャケットをパージし、身軽になると、炎の龍の拘束から抜け出す。

そして、すぐに2本のレーザーソードを装備し、

「スターライトベロシティ!!」

その身を光で包み、拓也に向かって突撃した。

「うぉおおおおおおおおおっ!!!」

「はぁあああああああああっ!!!」

2人は渾身の力で激突。

――ドゴォオオオオオオオオオオオオン

大爆発が起こる。

すると、爆煙の中から2人がそれぞれ反対方向に飛ばされていき、同時に地面に叩き付けられる。

「う………く………」

「くぅ…………」

2人は最後の力を振り絞って立ち上がろうとしたが、

「「ッ!?」」

結局は、2人同時に力尽き、その場に倒れるのだった。





力尽きた拓也と輝二を介抱するフェイトとはやて。

そして、ヴィヴィオとリィン。

「全く、いくら久しぶりやからって、やりすぎやで」

はやてが、呆れたように呟く。

「ホント。 今回は自業自得だよ」

フェイトも同意して頷く。

魔力切れで動けない2人は、説教を受けることしか出来ない。

そんな様子を微笑ましく見つめる一同。

だが、

「そうだ、コウイチ」

シグナムが輝一に声をかける。

「何だ?」

「カンバラとミナモトがこの様だ。 回復するまでしばしの時間があるだろう。 その間に、軽く手合わせしないか?」

シグナムが輝一にそう言った。

「そうだな……久しぶりにやるか」

「フッ、そう来なくてはな」

輝一の答えに、シグナムは嬉しそうな笑みを浮かべる。

「レオン。 俺の魔力を今のシグナムと同じ位までセーブしてくれ」

『了解』

輝一は、リミッターが掛かっているシグナムと同じランクまで魔力を落とす。

2人は、一同から少し離れた所で剣と槍を構える。

「「…………………」」

一瞬の静寂の後、

「はぁあっ!!」

「おおおっ!!」

――ガキィン

剣と槍が交差する。

「はぁっ!!」

輝一が槍を突き出す。

「ふっ!」

シグナムは身体を逸らす事でその突きを避け、

「はあっ!」

その隙を突き、斬りかかる。

だが、

「せやっ!」

輝一は槍を反転させ、石突を剣に当てることで剣先を逸らす。

それからも、2人の戦いは続く。

――キィン ガキィ キィン

鳴り響く剣と槍がぶつかり合う音。

お互いの技量を試し合うその姿は、まるで舞い踊っているかのようだ。

「わぁ~…………」

キャロが思わず声を漏らした。

「なんて言うか……綺麗ですね」

エリオが感想を漏らす。

「そうね。 拓也さんと輝二さんみたいな派手さは無いけど、見る人を引き付ける何かがあるわ」

ティアナもそう言って同意する。

「うん。 2人とも楽しそうだし、まるで、2人でダンスをしてるみたい」

スバルが、2人の姿を見てそう現す。

「ホントね。 これで2人が正装してたら、お似合いのダンスパートナーじゃないかしら」

ギンガがそう言うと、5人は一瞬、舞踏会場で舞い踊る、赤いドレスを着たシグナムと、黒いタキシードを着た輝一を幻視した。

思わず5人は目を擦る。

だが、視線の先には剣と槍をぶつけ合うシグナムと輝一しか映っていない。

「い、今のは……?」

「き、気のせいかしら?」

思わず困惑する5人。

「まあ、あながち間違いでもないしね」

信也がボソっと呟いた。

「「「「「え?」」」」」

5人が声を漏らした時、

「レヴァンティン!」

シグナムが、カートリッジをロードして、剣に炎を纏う。

「紫電………」

シグナムが振りかぶる。

対して輝一も槍に闇の魔力を集中させる。

「エーヴィッヒ………」

そして、2人同時に飛び出し、渾身の一撃を繰り出す。

「……一閃!!」

「……シュラーフ!!」

――ガキィイイイイイイン

今迄で一番大きい音が鳴り響く。

互いの炎と闇は、相殺しあって打ち消された。

「「………………」」

暫く2人は互いの武器を合わせていたが、

「「……フッ」」

お互いに笑みを浮かべ、同時に武器を引いた。

「今日の所は、こんなものか」

シグナムが笑みを浮かべつつ、剣を納める。

「そうだな」

輝一も、バリアジャケットを解除した。

そんな2人を呆然と見つめる5人であった。




その後の食堂で、美味しそうに食事するヴィヴィオの姿を見て、

「しっかし、子供って感情の切り替えが早いわよね」

ティアナがそう漏らす。

「スバルも、ちっちゃい頃は、あんなだったわよね~」

同じ席で食事していたギンガが、スバルを見つつそう呟いた。

「えっ? そ、そうかな~………」

スバルは恥ずかしいのか、若干頬を染める。

その話を聞いていた別のテーブルで食事していたシャマルが、

「リィンちゃんもね」

リィンを見ながらそう言った。

「ええ~!? リィンは初めから割と大人でしたぁ~!」

だが、リィンはシャマルの言葉が不服だったようで頬を膨らます。

「嘘を吐け」

「身体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねえか」

シグナムとヴィータが追い討ちをかける。

「うぅ~………とーさま! かーさま! 違いますよね~!」

リィンは縋る様に輝二とはやてにそう聞く。

「フフッ、どうやったかなぁ」

はやてはそうはぐらかすが、

「……俺の姿が見えないだけで一晩中泣き喚いて、はやて達を寝不足にしたのは、どこの誰だったかな?」

輝二は、かつての出来事を口にする。

「うう~~~」

唸るリィン。

その後、食べ物の好き嫌いの話になるも、平和な一時であった。





因みに、その翌日の朝。

1人の女性が、廊下を歩いていた。

その女性は腰まで届く桃色の髪をストレートに下ろし、女性らしい柔らかな雰囲気を醸し出している。

その時、その女性の前方から、朝練に向かうギンガを含めた信也以外の新人メンバーが歩いてきた。

その女性がすれ違う時、

「おはよう」

その女性は優しい笑みを浮かべて挨拶した。

「「「「「お、おはようございます……」」」」」

新人メンバーは、困惑しつつ挨拶を返す。

その女性は、そのまま歩いていく。

その後姿を見ながら、

「スバル、今の誰?」

ギンガがスバルに尋ねる。

だが、

「えっと……六課にあんな人いたかなぁ?」

スバルは見覚えが無いのか答えられない。

「ティア~。 ティアは知ってる?」

スバルは、ティアナに尋ねるが、

「私も今の人は見たことないんだけど……」

ティアナもそう答える。

スバルは、全員を見渡すが、誰もが首を捻っている。

「でも………」

ふと、キャロが切り出す。

「今の人の声って、何処かで聞いてません? っていうより、毎日聞いてるような………」

キャロが気になったことを口に出す。

「そういわれれば………何処かで……」

エリオも、キャロの言っている事に同意する。

5人は不思議に思いつつ、その女性の後姿を見ている。

その時、その女性の前方に輝一が歩いてきた。

すると、

「コウイチ!」

その女性は、嬉しそうに声を上げ、満面の笑みで輝一の腕に抱きついた。

輝一は特に驚いた様子も無く、その女性に笑みを向ける。

その女性は、どうやら輝一を探していたようで、輝一の腕に抱きついたまま新人達の方に再び歩いてくる。

その様子を呆然と見ている新人達。

「あ、皆。 おはよう」

輝一が、新人達に気付き、挨拶をする。

「お、おはようございます木村一尉」

ギンガが代表して、困惑しつつ挨拶を返す。

「あ、あの、木村一尉。 つかぬ事をお聞きしますが、その女性は………」

と、聞こうとしたところで、

「何やってんだ道の真ん中で?」

そんな声が聞こえ、振り向けば、拓也、フェイト、信也、なのはの4人がいた。

「ああ。 おはよう」

輝一が挨拶すると、

「皆さん、おはようございます」

桃色の髪の女性も優しい笑みで挨拶した。

「おう。 おはようさん」

拓也がそう返す。

「それで、如何したの?」

フェイトが尋ねると、

「あの、フェイトさん。 其方の女性は一体……?」

エリオがそう聞いてくる。

フェイトは、一旦その女性に顔を向けると、ちょっと苦笑して、

「まあ、分からないのも無理ないかな?」

そんな風に呟く。

「ふふっ、皆驚くよ」

なのはは、笑いながらそう言う。

「えっと、一体誰なんですか?」

スバルが尋ねると、拓也が口を開いた。

「シグナムだ」

「「「「「………………はい?」」」」」

拓也の言葉を聞いた瞬間、全員が呆けた声を漏らした。

「えっと、すみません。 今、信じられない名前が聞こえたんですが……」

ティアナが新人メンバーの心情を代表してそう言った。

が、

「だから、シグナムだ」

拓也はもう一度そう言う。

「……えっと……?」

「……………本当に……?」

「……………………シグナム……?」

「………………………………副隊長……?」

「………………………………………なんですか?」

上から順にティアナ、スバル、エリオ、キャロ、ギンガの順である。

「だからそうだって言ってるだろ?」

拓也は続けて肯定する。

「「「「「…………………………」」」」」

一瞬の沈黙の後、

「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!???」」」」」

大絶叫が響き渡った。

すると、

「あははは! 早速おどろいとるようやなぁ」

はやてが笑いながら、輝二、ヴィータと共に現れた。

「や、八神部隊長………」

ティアナが驚愕が抜けない顔で呟く。

「如何や、シグナム乙女モードは?」

はやてがそう聞く。

「そ、そんなに分からないでしょうか?」

シグナム(乙女モード)が、頬を染めつつ、はやてにそう尋ねる。

「分かるわけねーだろ。 普段とイメージ変わりすぎなんだよオメーは!」

ヴィータが呆れたようにそう言う。

「そ、そんなに変えてるつもりはないんですけど………」

シグナム(乙女モード)は、自覚がないらしい。

「し、信じられない………」

「こ、これが、あのシグナム副隊長?」

ティアナとスバルが思わずそう漏らす。

「証拠みせたろうか?」

はやてはそう言うと、何処からとも無くシグナムのリボンを取り出す。

「ほい、シグナム」

はやては、そのリボンをシグナム(乙女モード)に渡す。

「はぁ」

シグナム(乙女モード)は、はやてからリボンを受け取ると、慣れた手つきで髪を纏め、いつものポニーテールにする。

そして、髪を縛り終えて、目を開けると、先ほどの優しそうな目は吊り上り、いつもの鋭い眼光を宿し、身にまとっていた柔らかい雰囲気も、戦士が持つ厳しい雰囲気に変化した。

「ん? どうかしたか?」

いつもの硬い口調で、呆然と見つめる新人達にシグナムが尋ねる。

「ほ、本当にシグナム副隊長だったんだ………」

スバルが、未だに信じられないといった表情でそう呟く。

「それよりも、シグナム副隊長に恋人がいた事が驚きだわ」

ティアナがそう呟く。

「何だティアナ? 私に恋人が居てはおかしいか?」

シグナムは、若干きつめの言葉でティアナに尋ねる。

「い、いえ! そういう意味ではなくて! シグナム副隊長は根っからの騎士ですから、恋愛などにうつつを抜かせるかーというイメージでしたから!」

ティアナは焦って弁明する。

「フッ、冗談だ。 私とて、以前ならばそう言っていただろうからな」

シグナムは、態度を変えると、落ち着いてそう言った。

ティアナはホッとする。

「それじゃ、驚くのもこのぐらいにして、今日も一日、頑張ろう!」

なのはが声をかけ、

「「「「「「はい!!」」」」」」

新人達が答えた。








次回予告


公開意見陳述会の警備の為に地上本部へ出動する機動六課。

そんな中、地上本部がガジェットとデジモンの攻撃を受ける。

拓也達は、無事に地上本部を守りきれるのか!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十八話 絶望への序曲

今、未来への翼が進化する。





あとがき

第十七話の完成。

如何だったでしょうか?

拓也と輝二。

親バカな2人です。

そして、輝一とシグナムのダンス(笑)

更にはシグナム乙女モード(命名はやて)

因みに、シグナムの乙女モード発動条件は、平常時に輝一の前で髪を下ろすことです。

さて、皆様の反応が怖い。

ともかく、次も頑張ります。





[8056] 第十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/01/10 14:23

機動六課に集結した十闘士のスピリットを受け継いだ者達。

そして、運命の分かれ目となる公開意見陳述会が近付く。



第十八話 絶望への序曲



公開意見陳述会の前日、機動六課のなのは、ヴィータと、ギンガを含めたフォワード陣6名は、夜間警備の為に出発した。

はやて、シグナム、フェイトと拓也達デジタル組は、当日の朝に現場に向かう事になっている。

大体はなのは、信也と寝ているヴィヴィオも、今日はフェイトと寝る事になっている。

まあ、当然というか何というか、拓也も一緒に居るのだが…………

フェイトがヴィヴィオをパジャマに着替えさせると、通信を知らせる音が鳴る。

「あれ? 家からだ」

フェイトがそう呟き、モニターを開くと、

『やっほー! フェイト、元気にしてる?』

フェイトよりも若干若いが、フェイトと同じ顔をした少女、アリシアがそう切り出した。

「あ、姉さん……こんばんは」

『うん、こんばんは。 ヴィヴィオもこんばんは。 アリシア“お姉ちゃん”だよ』

なにやらお姉ちゃんを強調するアリシア。

まあ、ヴィヴィオから見れば、アリシアは義理の伯母に当たるかもしれない位置づけなので、流石にまだオバサンとは呼ばれたくないらしい。

「あ………こんばんは!」

ヴィヴィオが挨拶を返す。

「それで、今日はどうしたの?」

フェイトがそう尋ねると、

『もう、「どうしたの?」、じゃないよ。 いくら新部隊が出来たからって、こっちから連絡しないと、電話もしてこないじゃん』

「あ、あはは……ごめんなさい」

アリシアの言葉に、フェイトは苦笑いして謝る。

『明日は、公開意見陳述会らしいけど、それの警備任務なんだってね?』

「うん。 そうだよ」

『何度も言うけど、無理しちゃダメだよ。 怪我でもしたら、私もお母さんも心配するからね』

「わかってるよ。 心配してくれてありがとう」

その時、部屋に拓也が入ってきた。

「おっ、アリシアか? 久しぶりだな」

『あ、お兄ちゃん』

「たくやパパ!」

アリシアとヴィヴィオが嬉しそうに声を上げる。

『お兄ちゃんも、明日の警備にいくんだよね?』

「ああ。 デジモン達が出てくる可能性もあるからな」

『言うまでもないと思うけど、フェイトの事、ちゃんと守ってあげてね』

「もちろん! 言われるまでもねえよ」

拓也の自信たっぷりな姿に、アリシアは微笑み、

『じゃあ、明日に差し障るといけないから、今日はこのぐらいにしとくね。 おやすみフェイト』

「うん。 おやすみなさい、姉さん」

そう言って、通信が切れる。

「んじゃ、俺達も寝るか」

「うん!」

「うん」

拓也の言葉に、ヴィヴィオとフェイトが頷く。

因みに寝る位置は、ヴィヴィオを真ん中にした川の字である。

だが、この平和な親子の光景も、翌日に崩される事になるなど、この時は拓也ですら予想できてはいなかった。






そして、公開意見陳述会当日。

朝から、続々と陳述会の参加者が地上本部に集まってきていた。

その中には、はやて、シグナムの姿や、聖王教会の騎士、カリムやシャッハの姿もある。

拓也達とヴィータ、リィン、ギンガ、信也、新人フォワード陣は、外部警備に当たり、なのは、フェイトが内部警備。

尚、内部警備にはデバイスは持ち込めないため、なのはのレイジングハートを信也が、フェイトのバルディッシュを拓也が、はやてとシグナムのデバイスをヴィータが預かっている。

そして、陳述会が始まり、数時間が経過した。

その頃、とある場所では、

「ナンバーズ、No.3トーレからNo.12ディード及びカオスまで、全機配置完了」

『お嬢とゼスト殿も、所定の位置に着かれた』

『攻撃準備も全て万全。 あとはゴーサインを待つだけですぅ』

「ええ」

ウーノと他のナンバーズが確認を取り終えると、

「……クックック…………アッハッハッハ………クハハハハ…………」

後ろで椅子に座っていたスカリエッティが笑い声を零す。

「楽しそうですね」

「……ああ……楽しいさ……この手で世界の歴史を変える瞬間が………研究者として………技術者として………心が沸き立つじゃないかぁ……そうだろ? ウーノ」

スカリエッティは立ち上がり、

「我々のスポンサー氏にとくと見せてやろう………我らの思いと、研究と開発の成果をな………」

そして、スカリエッティは歪んだ笑みを浮かべ、

「さあ! 始めよう!!」

計画の開始を告げた。



そのスカリエッティの後ろで、

(七大魔王の復活には、まだ少し時間がかかる………この計画が成功するにせよ失敗するにせよ、十闘士は生き残るだろう………ジェイル、しっかりと時間を稼いでくれよ)

そう考えながら小さく笑みを浮かべ、スカリエッティに背を向け通路の奥に消える、ルーチェモンの姿があった。




時間として、日が沈む頃、地上本部では異変が起き始めた。

システムへのクラッキングが起き、司令部で混乱が起きる。

防壁は発動させるものの、その混乱に乗じて、ナンバーズのNo.6セインが麻痺性のガスを散布。

司令部の人員を麻痺させる。

一方、動力部に侵入したNo.5チンクが、ISランブルデトネイターで動力部を爆破。

防壁の出力を低下させる。

それに合わせて、ルーテシアが遠隔召喚で地上本部に直接ガジェットを召喚。

更に混乱が生じる。

更にはNo.10ディエチが、近隣のビル屋上より砲撃。

こちらも麻痺性のガス弾を撃ち込み、多くの局員を無力化する。

すると、ガジェットが地上本部ビルを囲い、AMFを発生させる。

これによって、地上本部のAMF濃度が上がり、デバイスの無い内部警備の魔導師達を無力化し、更には隔壁を下ろす事で、内部に閉じ込めた。



一方、拓也達や機動六課のフォワード陣は、ガスの影響を免れ、行動を起こし始めていた。

「通信妨害がキツイ。 ロングアーチ!」

ヴィータが叫ぶ。

『外からの攻撃は一先ず止まっていますが、中の状況は不明です!』

シャーリーからそう報告が来る。

それを聞くと、

「副隊長! 私達が中に入ります! なのはさん達を助けに行かないと!」

スバルがそう叫んだ。

その言葉に、新人達は頷く。

「俺達もそっちに!」

拓也もそう叫ぶ。

だが、その様子を窺っていたNo.4クアットロが、

「そうはいきませんわ。 貴方達には相応しい相手がおりますの。 ルーお嬢様、例の3体を含めたデジモン達の召喚を」

ルーテシアに連絡を入れる。

すると、拓也達の周りに召喚陣が発生し、

「召喚!?」

キャロが叫ぶ。

すると、その召喚陣から、巨大な戦斧を持った緑色の大男、グリフォンを思わせる姿をした獣、黒い甲殻を持った巨大なクワガタのような昆虫。

そして、紅の目と黒い身体をもった竜が無数に現れた。

「ッ! デジモンか!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ボルトモン

・究極体 サイボーグ型 データ種

 フランケンシュタインのような容姿を持つサイボーグ型デジモン。

 必殺技は、巨大な戦斧を投げつけ敵を切り裂く『トマホークシュタイナー』だ。



――グリフォモン

・究極体 幻獣型 データ種

 グリフォンをモデルにした幻獣型デジモン。

 必殺技は、強力な超音波で敵を破壊する『スーパーソニックボイス』。



――グランクワガーモン

・究極体 昆虫型 ウィルス種

『深き森の悪魔』と呼ばれているクワガーモン系の最終形態。

必殺技は、空間ごと相手を切り裂く『ディメンションシザー』だ。



――デビドラモン

・成熟期 邪竜型 ウィルス種

ダークエリアから召喚された邪竜型デジモン。

 必殺技は、鋭利な爪で敵を引き裂く『クリムゾンネイル』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「「「「「「ッ!?」」」」」」

ヴィータとフォワード陣は、今までのデジモンとは一線を隔す3体に恐怖を感じる。

「な、なんだよこいつら………」

「い、今までのデジモンとはわけが違います!」

ヴィータとリィンも冷や汗を流す。

「………究極体か……!」

輝二がそう呟く。

「究極体!? こいつらが!?」

輝二の言葉に驚愕するヴィータ。

「お前達は、早く中に行くんだ。 究極体との戦いは、その余波だけでも人間にとっては致命的だ!」

そう警告する輝一。

「お、おう!」

輝一の雰囲気から、言っている事が冗談ではないという事を悟ったヴィータは素直に頷く。

ところが、

『本部に向かって航空戦力!?』

『早い!? ランク、推定S+!』

ロングアーチから新たな敵襲の報告が入る。

「リィン! シンヤ!」

「はいです!」

「ああ!」

「そっちには、アタシとリィン、シンヤが上がる! 地上は、こいつ等が行く!」

ヴィータが叫ぶと、

「エリオ!」

「スバル!」

拓也と信也が、エリオとスバルを呼ぶ。

「「はい!」」

「これを!」

そう言って、拓也はエリオにバルディッシュを、信也はスバルにレイジングハートを預ける。

「こいつらのことも、頼む!」

ヴィータがそう言って、レヴァンティンとシュベルトクロイツをティアナに託した。

「届けてあげてくださいです!」

「「「「はい!」」」」

リィンの言葉に全員が返事をして、地上本部へと向かう。

「リィン! ユニゾン行くぞ!」

「はいです!」

2人は飛び立つ。

「「ユニゾン・イン!」」

ヴィータとリィンがユニゾンすると、赤かったヴィータのバリアジャケットが白っぽくなり、髪の毛も朱色から少し薄くなる。

そのまま、迎撃の為に空へ向かうと同時に、信也もバリアジャケットを纏い、リミッターも解除して空へと飛び立った。

拓也達はそれを見届けると、デジモン達に向き直る。

「行くぞ!」

「「「「「おう!」」」」」

拓也の号令に全員が応え、

「「「ダブルスピリット! エボリューション!!」」」

拓也、輝二、輝一がダブルスピリットで進化する。

「「「ぐっ………ああああああああああっ!!」」」

叫び声を上げ、2つのスピリットをその身に纏う。

「アルダモン!!」

「ベオウルフモン!!」

「ライヒモン!!」

3体の融合形態が現れ、

「「「スピリット! エボリューション!!」」」

泉、友樹、純平がヒューマンスピリットで進化する。

「フェアリモン!!」

「チャックモン!!」

「ブリッツモン!!」

6闘士が集結する。

「俺とベオウルフモン、ライヒモンで究極体の相手をする! フェアリモン、チャックモン、ブリッツモンは他の敵を相手にしつつ、俺達の戦いの余波が地上本部に行かないように気をつけてくれ!!」

「「「わかった(わ)!!」」」

アルダモンの言葉に、3人が返事を返す。

そして、戦闘が開始した。




そのころ、ビルの内部に閉じ込められたなのはとフェイトは、

「会議室や非常口への道は、完全に隔壁ロックされてるね」

「うん」

なのはの言葉にフェイトは頷く。

「中とも連絡がつかない」

「エレベーターも動かないし、外とも通信が繋がらない」

2人がふと見ると、エレベーターの扉をこじ開けようとしている管理局員達。

「とにかく、ここでジッとしてるわけにはいかない」

そう言って、なのはがエレベーターの方に行こうとした時、

「きゃぁあああああっ!!」

「うわぁあああああっ!!」

突然悲鳴が聞こえ、2人は振り返る。

その瞬間、

――ガシャァァァァァン

窓をぶち破って、何かが吹き飛ばされてきて、壁に激突する。

煙が晴れてくると、

「ぐっ………」

壁にめり込み、うめき声を漏らすアルダモンの姿があった。

窓の外には、グランクワガーモンが飛行している。

グランクワガーモンの攻撃は、掠っただけでこの地上本部ビルを倒壊させる危険があるので、アルダモンはビルを庇いつつ戦っていた。

そして、ビルを庇って攻撃を受け、偶然ここに吹き飛ばされてきたのだ。

「アルダモン!? タクヤ!!」

フェイトが思わず駆け寄る。

「タクヤ! 大丈夫!?」

アルダモンがフェイトに気付くと、

「フェイトか………よかった、無事だったんだな」

安堵の息を漏らすアルダモン。

「一体何が?」

「究極体デジモンがあらわれた。 3体もな」

「きゅ、究極体が3体も!?」

アルダモンの答えに、驚愕の声を漏らすフェイト。

アルダモンは立ち上がる。

ふと見ると、エレベーターの扉をこじ開けようとした局員も含めて、全員がアルダモンに注目していた。

アルダモンは、そんな視線を無視してエレベーターの扉に近付く。

扉の前にいた局員は、おっかなびっくりといった様子でその場を離れる。

アルダモンは扉の前に来ると、力尽くで、いともあっさりとエレベーターの扉をこじ開けた。

「デジモンは俺達が何とかする。 フェイトとなのはは、エリオ達と合流しろ。 エリオ達がお前達のデバイスを持ってる」

そう言って、アルダモンは窓の外のグランクワガーモンに向き直る。

その時、グランクワガーモンがアルダモン目掛け、ビルに突っ込もうとしていた。

そのまま突っ込めば、ビルが真っ二つになる事は間違いない。

故に、アルダモンは飛び出し、

「させるかぁあああああああっ!!」

突っ込んできたグランクワガーモンの頭部目掛け、拳を繰り出した。

その拳は、突撃してきたグランクワガーモンを跳ね返す。

アルダモンとグランクワガーモンは、再び激しい空中戦に入るのだった。

その様子を心配そうに見ていたフェイトに、

「フェイトちゃん、行こ?」

なのはが声をかける。

「………うん!」

フェイトは、すぐに真剣な表情になり、頷いた。



「うぉおおおおっ!!」

――ガキィィィィン

ベオウルフモンの大剣と、ボルトモンの戦斧がぶつかり合い、衝撃波を撒き散らす。

「スーパーソニックボイス!!」

グリフォモンが全てを破壊する超音波を放つが、

暗黒定理シュバルツ・レールザッツ!!」

ライヒモンの暗黒定理によって無効化される。

ただ敵を倒すだけなら超越形態になればいいのだが、今回はそれだけではなく、地上本部のビルも守り抜かなければならない。

超越形態になると、2体になってしまうので、どうしても手が足らないのだ。




空から地上本部へ向かっていたゼストとアギト。

その2人に警告が発せられた。

『こちら管理局。 あなたの飛行許可と、個人識別表が確認できません。 直ちに停止してください。 それ以上進めば、迎撃に入ります』

だが、その警告にも止まらなかった2人に魔力弾が撃ち込まれる。

「こんにゃろー!!」

アギトがそれを迎撃するが、

「実体弾!?」

鉄球が2人に襲い掛かる。

だが、それをゼストはシールドで防いだ。

その瞬間、

「VブレスアローMAX!!」

雲を切り裂いて蒼い魔力矢が2人を狙う。

「くっ!」

何とかそれを避けるが、雲の中からヴィータが飛び出し、

「ギガントハンマーーーーー!!」

グラーフアイゼンギガントフォルムで殴りかかる。

――ドゴォォォォン

魔力の爆発が起こる。

『外したです。 防がれました』

リィンがそう言うが、

「ダメージは通った。 続けてぶち抜く!!」

ヴィータがグラーフアイゼンを構える。

信也も雲の中から現れ、ブレイブハートのビクトリーモードを構えた。

爆煙が晴れていくと、山吹色の魔力光を身に纏い、アギトとユニゾンして、金髪赤目となったゼストの姿があった。

『いって~! ちっくしょー! 思いっきりぶん殴りやがってぇ~!』

ユニゾンしているアギトがグチを零す。

「すまんなアギト。 助かった」

『なんのなんの』

その様子を見るヴィータとリィン。

『やっぱりユニゾンしました!』

「あたし達と同じか………管理局機動六課 スターズ分隊副隊長 ヴィータだ!」

ヴィータが名乗りを上げる。

「同じく機動六課 遊撃手 神原 信也」

信也もヴィータに習う。

すると、ゼストは槍を構え、

「……………ゼスト」

とだけ名乗った。




新人達は、途中戦闘機人の襲撃に会うものの、なんとかやり過ごし、なのは、フェイトとの合流に成功する。

だが、そこでギンガとの通信が途絶したことと、機動六課の隊舎が襲撃を受けていることを知る。

よって、スターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除を。

ライトニングは、隊舎に戻る事となった。

ライトニングが、地上本部から外に出ると、

「うぉおおおおおおお!!」

アルダモン達とデジモン達の戦いはまだ続いていた。

「ッ!?」

アルダモンが地上本部から出てきたフェイト達に気付く。

アルダモンは、グランクワガーモンから注意を逸らさずにフェイト達の近くに着地すると、

「どうした? 何かあったのか?」

そう尋ねる。

「うん。 ギンガとの通信が途絶して、それと同時に、六課の隊舎も襲撃を受けてるんだ」

「何っ!?」

フェイトの言葉に、驚愕するアルダモン。

「それで、スターズがギンガの安否確認と襲撃戦力の排除を。 そして、私達が隊舎に戻る事になったんだ」

フェイトの説明に、アルダモンは拳を握り締める。

すると、

「アルダモン! お前は戻れ!!」

ベオウルフモンが叫ぶ。

「ベオウルフモン!?」

ベオウルフモンの言葉に思わず声を漏らすアルダモン。

「デビドラモンの数はかなり減っている! 今ならば、俺がマグナガルルモンになればすぐに片付けられる!」

「そして、手が開いた俺と純平がスターズの援護に回る!」

ベオウルフモンとライヒモンがそう言うが、アルダモンはまだ迷っている。

「何やってる!? 早く行け!」

ブリッツモンが、

「あなた、ヴィヴィオの父親でしょ!? 自分の子供ぐらい自分で守りなさい!」

フェアリモンが、

「アルダモン! 行って!」

チャックモンが叫ぶ。

「ッ………すまんっ! ここは任せる!!」

アルダモンは踵を返し、隊舎に向かって飛び立つ。

それに続くフェイトと成竜形態のフリードに乗るエリオとキャロ。

それを見送ると、

「ならば、こちらも手早く片付けるぞ!」

ベオウルフモンが叫ぶと、

「「おう!」」

ライヒモンとブリッツモンが応え、3体は地上に降りる。

そして、進化を解除すると、

「雷は光へ!」

「闇は光へ!」

純平と輝一がデジヴァイスを掲げた。

『雷』と『闇』のスピリットが輝二に集う。

『光』、『雷』、『闇』、『水』、『鋼』の5種類のスピリットの力で輝二は進化する。

輝二の左手にデジコードが宿る。

そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。

「ハイパースピリット!エボリューション!!」

輝二がデジコードに包まれる。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

輝二は叫び声を上げながらスピリットを宿す。

体に『光』のヒューマンスピリット。

右腕に『雷』のヒューマンスピリット。

左腕に『闇』のヒューマンスピリット。

右足に『水』のヒューマンスピリット。

左足に『鋼』のヒューマンスピリットを宿す。

更に『雷』、『闇』、『水』、『鋼』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『光』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、輝二は姿を変えた。

それは、重火器を装備した、高機動爆撃型サイボーグ。

「マグナガルルモン!!」

マグナガルルモンは、3体の究極体を見据え、

「行くぞ!!」

一気にブーストを吹かした。





一方、隊舎へ向かうアルダモンとライトニング分隊。

「ッ!?」

フェイトが攻撃に気付き、障壁を張ってその攻撃を防ぐ。

フェイトの視線の先には、2人の戦闘機人、No.3トーレとNo.7セッテ。

「……戦闘機人」

フェイトは、一瞬の思案の後、

「タクヤ、エリオ、キャロ、先に行って」

そう口にした。

「でも、フェイトさん!」

キャロが声を上げるが、

「すぐに追いかける。 行って!」

フェイトがそう言う。

その言葉に、

「2人とも、行くぞ!」

アルダモンが迷わずにそう言った。

「拓也さん!? でも………」

「フェイトを信じろ」

アルダモンの迷い無くそう言い、再び隊舎へ向かって飛び立つ。

その姿に、

「フリード!」

エリオがフリードを促す。

「エリオ君!?」

「空戦で、アウトレンジで撃てる相手がいるんだ。 僕達がここにいたらフェイトさんが全力で戦えない。 それに、僕達が今やるべき事は、隊舎にいる皆を助けに行く事だ」

そのエリオの言葉に、

「……うん」

戸惑いながらも頷き、前を向くキャロ。

そんな2人の視線の先を、迷い無く飛んでいくアルダモン。

「凄いね……拓也さん。 フェイトさんの事を完全に信じてる………」

キャロが、遥か先を飛ぶアルダモンの後姿を見つめながら呟く。

「そうだね………」

エリオがそう呟くと、少し考え込み、

「……ねえ、キャロ。 僕、決めた事があるんだ………」

エリオは、キャロだけに、自分の考えを話した。

そして、キャロも、その考えに大いに同意した。





「はぁ………はぁ………なんて奴だ。 ユニゾンしたアタシとシンヤを相手にここまで粘るなんて………」

ヴィータがゼストを見て、感心半分、驚愕半分の言葉を漏らす。

「はあ……はあ……」

信也もそれなりに息が上がっている。

目の前には、炎を纏った槍を構えるゼスト。

だが、

「むっ!? S+が数人動き始めている。 ここの守りは、もう復活したか!?」

『くそっ! くそっ!』

ゼストの言葉に、アギトが悔しそうな声を漏らす。

『ヴィータちゃん! シグナムがこっちに!』

シグナムの接近を知らせるリィン。

「ここまでか? 撤退するとしよう」

『ちっくしょ~!』

潔いゼストとは違い、悔し涙まで流すアギト。

『せめて……せめてあいつらだけは………!』

そう言いつつ、ユニゾンが解除される。

『ヴィータちゃん! 上!!』

リィンの警告に上を向くと、アギトが巨大な火球を作り出していた。

「アタシがここで! 叩いとく!!」

「ッ!」

迎撃の為に構えるヴィータ。

「むっ!?」

「ッ!」

動き出そうとするゼストと、それに気付く信也。

そして、

『『フルドライブ・スタート』』

ほぼ同時にフルドライブを発動させた。

高速でヴィータを狙うゼストと、その間に割り込もうとする信也。

――ガキィィィィィ

鳴り響く金属音。

「なっ!?」

声を漏らすヴィータ。

ヴィータの目の前には、ゼストの槍を受ける信也の姿。

その状況は偶然にも、かつて信也がなのはを守ろうとして失敗した、あの時の状況に酷似していた。

「シンヤっ!!」

思わずヴィータが叫ぶ。

「はぁあああああっ!!」

その時、ゼストが槍を振り切り、信也を吹き飛ばす。

地上に落下していく信也。

「シンヤぁああああッ!!」

信也を追うヴィータ。

「アギト! 撤退だ!」

ゼストがアギトに告げる。

「あ……うあっ……うわぁああああああっ!!」

アギトは、自分の軽率な行動がゼストに使わせまいと思っていたフルドライブを使わせてしまった事に、ショックを受けた。

一方、ビルの屋上に墜落する信也。

「シンヤッ!! おいっ!!」

信也を追ってきて、慌てふためき、叫ぶヴィータ。

「シンヤ!! おいっ! 返事しやがれ!!」

思わず涙声になるヴィータ。

「そんなに叫ばなくても聞こえてるよ」

墜落した時に舞い上がった砂埃が晴れていくと、座り込んで腕は押さえているものの、特に大きな怪我は無い信也の姿があった。

「いたた……何とか受け流したけど、凄い威力だったな」

そんな感想まで漏らす余裕がある始末。

「シ、シンヤ?」

呆然とするヴィータ。

「ハハッ、同じ失敗を、2回も繰り返すつもりはないよ」

軽く笑ってそう言う信也。

すると、ヴィータが顔を真っ赤にして、

「紛らわしい事すんじゃねえ!!」

そう叫ぶのだった。





スターズの応援に向かうために、地上本部内の通路を走る輝一と純平。

だが、その前に立ち塞がる者がいた。

それは、輝二、輝一と同じ顔をもった戦闘機人、カオス。

「お前は……」

輝一が呟く。

「ここから先へは行かせん! ISヘルアンドヘブン!」

カオスがそう叫ぶと、右手から光のエネルギーが、左手から闇のエネルギーが発生する。

「光と闇! やはりお前は!?」

輝一は、カオスの正体に察しがついたらしく、そう声を漏らす。

カオスは光の拳を輝一に叩きつける。

輝一はその拳を槍で受け止めた。

「察しのとおりだ! 俺の名はカオス! 貴様と源 輝二の細胞を元にクローン培養で生み出された戦闘機人だ!!」

カオスは、感情をぶちまけるように叫ぶ。

「ッ! そうか」

輝一は、カオスを力尽くで押し返す。

カオスはそのまま飛び退いた。

「貴様はここで倒す……と言いたいが、俺の役目は足止めだ。 あと5分。 ここは通さん!」

カオスはそう叫ぶと、再び構えた。





その頃、六課の隊舎では、ガジェットと戦闘機人の襲撃に必死で耐えていた。

外ではシャマルとザフィーラがNo.8オットーの攻撃を防ぎ、隊舎内に侵入したガジェットも、ヴァイスが何とか撃破していた。

だが、このままではいつかは押し込まれる。

そんな中、非戦闘員として皆と避難していたリインフォース・アインは、1つの決意を固めた。

状況が動いたのは、ヴァイスの前にルーテシアが現れたときだった。

ヴァイスは過去、自分の妹が人質に取られた際、妹を救おうとして犯人を狙撃しようとしたが誤射により、妹の左目を失明させてしまった。

そのトラウマが、同じ年頃のルーテシアを見たことで呼び起こされてしまったのだ。

ヴァイスの手は震え、もはや戦える状態ではない。

だが、ルーテシアは無常にも、

「邪魔」

の一言と共に、ヴァイスに魔力弾を放った。

トラウマにより、回避も防御も出来ないヴァイスは、そのまま吹き飛ばされるかに思われた。

だが、ヴァイスの前に、ベルカ式の魔法陣が浮かび上がり、その魔力弾を防ぐ。

「ッ」

ルーテシアが警戒する。

ヴァイスが思わず振り向くと、そこには騎士甲冑を纏い、黒い翼を生やしたアインがいた。

「アインのあねさん……」

ヴァイスが呟く。

「私も、傍観者に徹している訳にも行かなくなったのでな。 ここも、もう持たないだろう。 お前は全員を避難させろ」

アインはそう呟くと、ルーテシアを見据える。

「小娘。 1つ警告しておく。 私は非殺傷というモノは出来ん。 怪我をしたくなければ下がれ」

アインはそう言って手を翳す。

「刃以て、血に染めよ」

アインの手の周りに赤い刃が発生する。

「穿て! ブラッディダガー!!」

それがルーテシアに向かって放たれた。



外では、オットーの猛攻の前に、シャマルもザフィーラも限界だった。

「たった2人で、良く守った。 だけどもう終わり。 僕のIS、レイストームの前では、抵抗は……無意味だ!」

掲げた右手のエネルギー球から何本もの光線が隊舎に向かって放たれる。

「クラールヴィント! 防いで!」

シャマルが咄嗟に防壁を展開。

それを防ぐ。

「てぁああああああっ!!」

ザフィーラがガジェットの攻撃を掻い潜り、オットーに直接襲い掛かろうとした。

だが、

「ディード」

オットーがそう呟くと、オットーに飛び掛ったザフィーラの前に、No.12ディードが現れ双剣を振り上げる。

「IS,ツインブレイズ」

そう呟くとともに、双剣が振り下ろされる。

「ぐぁああああっ!!」

直撃したザフィーラは吹き飛ばされ、シャマルの近くに勢い良く叩き付けられる。

「きゃぁっ!」

シャマルも、その衝撃に巻き込まれる。

そして、遂にシャマルの防壁が破られた。

そのまま光線は隊舎を破壊するかと思われたが、

「盾」

再び新しい障壁が張られ、その光線を防ぐ。

「何っ?」

オットーが軽く驚いた声を上げる。

すると、

――ドォォォン

隊舎の入り口近くで爆発が起き、ルーテシアを抱いたガリューが飛び出す。

そして、その爆煙の中から、アインがゆっくりと現れた。

「リィンフォース!」

シャマルが叫ぶ。

「主の居場所を、これ以上壊さないでもらおうか!」

アインは、オットーとディードに向けそう言い放つ。

「チッ!」

オットーが舌打ちして、ガジェットに指示を出す。

すると、ガジェットがAMFを全開にした。

しかし、アインは不適な笑みを浮かべ、

「言い忘れたが、私にAMFは無意味だ」

そう言うと共に、ブラッディダガーを放つ。

アインの言葉通り、AMFは何の役にもたたず、ガジェットは破壊される。

「今の内だ。 全員避難しろ」

アインはそう告げる。

すると、隊舎の入り口から非戦闘員や負傷者たちが避難していく。

その中には、アイナに抱かれたヴィヴィオの姿もあった。

「くっ! 聖王の器、逃がしてなるものか!」

オットーはそう叫ぶが、アインが何かに気付き、

「いや、私達の勝ちだ」

勝利を確信した。

「何っ?」

オットーが声を漏らした瞬間、

――ドォン

何かが飛来して、アインの目の前に勢い良く着地する。

そこにいたのは、

「ギリギリセーフか?」

アルダモンだった。

「たくやパパ!!」

アルダモンに気付いたヴィヴィオが声を上げる。

少し遅れて、フリードに乗ったエリオとキャロも到着する。

アルダモンはオットーとディードを見上げ、

「お前達に勝ち目は無い。 大人しく投降しろ」

アルダモンはそう告げる。

「何を!」

オットーはレイストームでアルダモンを攻撃する。

だが、直撃を受けてもアルダモンはビクともしない。

「無駄だ。 その程度の攻撃、俺には蚊に刺された程度にしか感じない」

アルダモンはそう言うが、

「はぁあああっ!!」

ディードがアルダモンの頭上から双剣を振り下ろす。

――ガキィ

だが、アルダモンは右手のルードリー・タルパナで簡単に受け止める。

「止めておけ……」

アルダモンはそう呟きつつ、軽く……

ディードにとってはかなりの勢いで吹き飛ばされる。

「うあっ!?」

すると、続けてガリューが突っ込んでくる。

だが、アルダモンはガリューの攻撃を簡単に受け止める。

「…………やめろと言ってるが分からないのか……!?」

アルダモンはそう言うと、ガリューを投げ飛ばす。

アルダモンは、再びオットー、ディード、ルーテシアを見据え、

「もう一度言う。 投降しろ」

そう言い放った。

悔しそうな顔をするオットーとディード。

彼女ら自身も分かっていた。

この場でアルダモンに勝てる可能性は限りなく0に等しいと。

任務失敗。

彼女達の脳裏にその言葉が過ぎる。

兵器として生み出された彼女達にとっては、己の存在意義が無くなるに等しい。

だが、

「クスクス………どうやらここまでのようだね」

突如響いた声。

その声に、アルダモンは上を向く。

すると、空から輝く12枚の純白の翼を持った子供の天使が舞い降りてくる。

「なっ!?」

アルダモンは思わず驚愕の声を漏らした。

「ルーチェモン………!」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ルーチェモン

・成長期 天使型 ワクチン種

 生まれながらにして、12枚の翼と4つのホーリーリングを持った人間の子供の姿をした天使型デジモン。

 成長期といえど、その力は並みの究極体を上回る。

 必殺技は9つのエネルギー弾を十字に放つ『グランドクロス』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あ、あれが……ルーチェモン? 拓也さん達の敵」

地上から、エリオが見上げてそう呟く。

「ッ!」

アルダモンは突如現れたルーチェモンに一瞬驚愕するものの、すぐに気を取り直して飛び立ち、空中でルーチェモンと対峙する。

「久しぶりだね。 炎の闘士」

ルーチェモンは不適な笑みを浮かべてそう挨拶した。

「ルーチェモン! 何でこのタイミングで出てきた!?」

「ジェイル達には、もう少し時間を稼いでもらわないといけないからね。 人形といえど、ここで捕まってもらうと少々困るんだよ」

「何っ!?」

「七大魔王の復活はもうすぐだ。 それまでの時間稼ぎさ」

「ッ!? だが、今ここで貴様を倒せばその心配もない!!」

「君ごときが僕に勝てるとでも?」

ルーチェモンは自信たっぷりにそう言う。

すると、

「確かに、アルダモンではお前に勝つことは難しいだろう。 だが、時間を稼ぐだけなら可能だ! 皆が戻ってくるまで持ちこたえたら俺の勝ちだ!」

アルダモンはそう言う。

「クスクス……少しは頭を使うようになったじゃないか。 確かに、全員揃われると、僕も危ないだろう。 それは僕も分かってる」

ルーチェモンそう言うと、9つのエネルギー球を発生させ、十字に並べる。

「むっ!」

アルダモンは身構えた。

「だから、すぐに終わらせて貰うよ」

ルーチェモンは、必殺技のグランドクロスを放つ体勢に入る。

(無理に攻撃せずに、回避中心に行動すれば、時間は稼げる筈。 何とか皆が戻ってくるまで……)

アルダモンは、そう考えていたが、ルーチェモンは歪んだ笑みを浮かべ、

「なっ!?」

矛先を六課の隊舎に向けた。

グランドクロスなら、隊舎を含めた広範囲を完全に消滅させてしまうだろう。

そして、

「グランドクロス!!」

ルーチェモンは、躊躇無くグランドクロスを隊舎に向け放った。

「させるかぁぁぁぁぁぁっ!!」

アルダモンは、グランドクロスの射線軸上にその身を滑り込ませる。

そして、

――ドゴォォォォォォォォォン!!

アルダモンはグランドクロスの直撃を受けた。

「「拓也さん!!」」

「たくやパパ!!」

エリオ、キャロ、ヴィヴィオが悲鳴を上げる。

爆煙の中から、進化が解け気を失い、ボロボロになった拓也が落下していく。

そして、そのまま拓也は海に落ちた。

すると、ルーチェモンはその様子を見下ろし、

「この位で死ぬんじゃないぞ炎の闘士。 お前達はもっと深い絶望の中で殺してやるんだからな」

そう言った。

そのまま、ルーチェモンはエリオ達の前に降りてくる。

「うあっ………」

エリオは思わず声を漏らし、後ずさる。

その声には明らかな恐怖が混じっていた。

キャロに関しては、恐怖で体が震えている。

ルーチェモンはそんな2人を見て、満足そうな笑みを浮かべると、ヴィヴィオに視線を向ける。

「そこの君……ヴィヴィオといったかな? 僕らの目的は君さ。 これがどういう意味か分かるかな?」

ルーチェモンの言葉に、

「………私の……所為なの……?」

ヴィヴィオは泣きそうな顔で呟く。

「……皆が怪我したのは………私の所為なの?」

「違うわ! ヴィヴィオちゃんは何も悪くない!」

一緒にいたアイナが思わず声を上げる。

「まあ、理由はどうあれ、僕達の目的は君だ。 君が大人しくついて来てくれるなら、僕はこれ以上手を出さない事を約束しよう」

ルーチェモンは、笑みを浮かべつつそう言った。

「………………」

ヴィヴィオは俯いていたが、躊躇するようにルーチェモンに向かって一歩踏み出した。

「ヴィヴィオちゃん! 行っちゃダメ!」

アイナは慌ててヴィヴィオを止めようとするが、

――バチィ

「きゃ!?」

結界のようなものに弾かれる。

恐らく、ルーチェモンが何かしたのだろう。

ヴィヴィオは、俯いたままルーチェモンに歩いていく。

「いい子だ」

ルーチェモンがそう呟いた瞬間、ルーチェモンに飛びかかる3つの影があった。

「やらせん!」

「行かせないわ!」

「ヴィヴィオは連れて行かせん!」

アイン、シャマル、ザフィーラが一斉に飛び掛った。

だが、

「フ……」

ルーチェモンは余裕の表情を浮かべた後、ギン、と一睨みした瞬間、3人が吹き飛ばされた。

「がっ!?」

「きゃぁ!?」

「ぐぁっ!?」

3人は瓦礫の中に突っ込む。

「君達はこの子の気持ちを無駄にするつもりかい? 言っておくけど、向かってくるなら容赦はしないよ」

ルーチェモンはそう言うと、ヴィヴィオを光で包む。

ふと、恐怖の表情を浮かべているエリオとキャロに気がつき、笑みを向けた。

「クスッ……君達の選択は正しいよ。 弱者はそうやって震えているのがお似合いだよ。 ハハハハハハッ!」

ルーチェモンは、そう笑い声を上げてヴィヴィオを連れて飛び去る。

すると、

「………これより5分後に、上空のガジェットが一斉に施設に殲滅作戦をを行ないます。 我々の目的は施設の破壊です。 人間の抵抗は妨害しません。 抵抗せず、速やかに避難して下さい」

オットーがそう宣言し、ディードと共にその場から消える。

そこで、漸くエリオが膝を付いた。

「……う……うわぁあああああああああっ!!」

両手を地面に叩きつける。

「恐怖で……一歩も動けなかった………」

地面に蹲り涙を流すエリオ。

「何をやってるんだ僕は! これじゃ………僕を捨てたあの人達と一緒じゃないか!!」

エリオは、何度も地面に腕を叩きつける。

エリオには、両親と引き離された過去があった。

ある日、家に男達が押し入り、突然エリオを連れて行こうとした。

両親は、最初こそ抵抗していたものの、エリオがプロジェクトFによって作り出されたクローン体であることが知られていると分かると、そこで抵抗を止めてしまったのだ。

連れて行かれた先で、酷い実験を受け、完全に人間不信に陥り、フェイトがエリオを救出した時も、誰が近付いても牙をむくほどか荒んでいた。

拓也やフェイトの献身により、今でこそ落ち着いているが、今回の何も出来なかった状況が、まるで自分がその両親と同じことをしていたようで、エリオは自分を許せなかった。

「何で……こんな……」

キャロは小さく呟く。

上空には無数のガジェットが飛行している。

キャロは、召喚陣を展開した。

「竜騎……召喚……」

キャロは涙を流しつつ、感情のまま叫んだ。

「ヴォルテーーール!!」

巨大な召喚陣が展開され、その中から全長約15m。

アルザスの大地の守護者、黒き火竜ヴォルテールが現れた。

「壊さないで……」

キャロの呟きと共に、ヴォルテールの口の周囲にエネルギーが集中する。

「私達の居場所を………壊さないでぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

キャロの切なる叫びと共に、ヴォルテールが強力な砲撃を放つ。

それによって、上空のガジェットが一掃された。





カオスと対峙していた輝一と純平。

「ぐっ……」

壁に叩きつけられたカオスと、

「はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

ライヒフォームの輝一とボルグフォームの純平が立っていた。

「行くぞ!」

輝一が先に行く事を促す。

「コイツはいいのか?」

純平が尋ねると、

「今は、ギンガ達が心配だ」

「わかった」

壁に叩きつけられたカオスをスルーして先を急いだ。

「クッ……やはり2人相手はきつかったか……だが、5分は稼いだ。 今回は俺の勝ちだ」

カオスはそう呟くと、その場を離れた。



輝一達が先を急いでいると、

――ドゴォォォォン

通路の先のブロックで爆発が起きた。

2人が急いでそのブロックに辿り着くと、

「うわぁああああああああああああっ!!」

泣き叫ぶスバルの姿。

「スバル!」

駆け寄るティアナとなのは。

スバルはボロボロで、マッハキャリバーもシステムダウンするほどに全壊していた。

そして、何より驚くべきことが、

「えっ?」

純平が思わず声を漏らす。

スバルの一番重傷の左腕。

裂けた皮膚の下には、人の筋肉ではなく、機械のコードや部品。

「純平、訳は後で話す。 今は何も聞かないでくれ」

輝一は静かにそう言う。

「輝一………」

輝一は、ギンガが戦闘機人という事は聞いていた。

その為、スバルも戦闘機人という事は察しがついていたのだ。

その時、外では、

「マシンガンデストロイ!!」

マグナガルルモンが武装を乱射する。

その攻撃は、究極体を含め、残りのデジモン達を撃墜していった。




フェイトは、トーレとセッテが撤退したため、急いで隊舎に戻ってきた。

そこでフェイトが目にしたものは、燃え盛る隊舎。

ボロボロの隊員達。

仁王立ちするヴォルテールと、その足元にいるキャロと蹲るエリオ。

フェイトは、すぐにエリオとキャロの傍に降りる。

「エリオ! キャロ! 大丈夫!?」

フェイトは、そう声をかけた。

「フェイトさん………」

キャロは反応するが、エリオは蹲ったまま答えない。

そこでエリオはハッとして、

「フェイトさん! 拓也さんを助けてください!!」

そう叫んだ。

「タクヤ? タクヤがどうしたの!?」

「拓也さん……僕達を庇って……海に落ちて……」

エリオの言葉は途切れ途切れだったものの、それがどういう意味かを瞬時に悟るフェイト。

すぐに海上に飛び出し、

(タクヤ! タクヤ応えて!)

海中に向かって念話を飛ばす。

だが、反応は返ってこない。

(タクヤッ!!)

フェイトはより強い思いで念話を飛ばす。

すると、

(………フェ………イ……ト………)

今にも消え入りそうな念話で反応が返ってきた。

「タクヤッ!!」

フェイトはその念話を元に、瞬時に居場所を割り出し、海に飛び込んだ。

水中で気を失っている拓也を発見し、フェイトはすぐに引き上げる。

「ぷはっ! タクヤッ! タクヤしっかりして!!」

フェイトが呼びかけるが、拓也の反応が無い。

フェイトは急いで岸に上げると、拓也の状態を確認する。

「ッ! いけない! 呼吸が止まってる! キャロ! すぐに応急処置を!」

「は、はい!」

フェイトは内心の不安を押し込めて、キャロに手伝うように指示をする。

「タクヤッ! 死なないで!!」

そう口にしながら、フェイトは人工呼吸を施すのだった。





次回予告


意識不明の拓也。

ヴィヴィオが攫われてショックを受けつつも、局員として仕事をこなすなのは。

何も出来なかった自分を責めるエリオ。

敗北を喫した機動六課は、再び立ち上がることが出来るのか!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第十九話 失意の中で

今、未来への翼が進化する。




あとがき

第十八話完成。

長くなったんだけど全体的に場面がコロコロ変わるわ、グダグダしてるわで読みにくいかも。

まあ、原作の流れに近いです。

ルーチェモンが出てきたのは予想外かもしれませんが。

拓也を一時的に意識不明にしとかないと、ヴィヴィオの悲鳴を聞いた日にゃカイゼルグレイモンで突撃しかけますんで。

まあ、クライマックスまであと少し。

最後まで頑張ります。





[8056] 第十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/02/20 20:14

ヴィヴィオが連れ去られ、隊舎を破壊された機動六課。

その後………



第十九話 失意の中で



六課の隊舎襲撃によって負傷した者たちは、病院で手当を受けていた。

大半は軽傷であったが、ルーチェモンに立ち向かったアイン、シャマル、ザフィーラのダメージは大きかった。

そして、一番の重傷者は拓也であり、外傷こそ致命的なものは無かったが、海に落ちた事により、溺水による酸素欠乏が原因で、意識不明である。

意識がいつ戻るか分からない上、酸欠による脳への障害も可能性があるとされ、それを聞いたエリオ達はショックを受けていた。

更に、精神的に参っていたのがシャーリーであり、隊舎を守りきれなかった事を嘆いていた。

「ごめんなさい………ごめんなさい!……留守を預かっていたのにっ……六課のことっ……守れなくてっ! うわぁああああん!」

「シャーリーの所為なんかじゃないよ。 泣かないで」

泣き喚くシャーリーを慰めるフェイト。

「それに……ヴィヴィオの事も……なのはさんに……皆に……なんて謝っていいか……」

アルトも落ち込みながら呟いた。

「気休めにもならないけど、ルーチェモンが相手だったのなら、仕方ない……」

その場にいた純平が呟く。

「ええ……その場に私達が居なかったのが悔やまれるわ。 せめてその場に、私と友樹がいたら、拓也がルーチェモンに一方的にやられる事は無かったはずよ………」

「あの時、拓也さんだけを行かせなければ……」

泉と友樹も、自分達の行動を悔やむ発言をした。



ティアナが、スバルの病室を訪れると、ベッドの上で落ち込むスバルと、声をかけるにかけれないキャロの姿があった。

ティアナは、そんなスバルを元気付けるように気軽に声をかけ、その場の空気を変えようとする。

そんな中、エリオの姿が見当たらない事に気付いたティアナが、エリオの事を聞くと、先ほどまでは居たが、その後に部屋から出て行ってしまったという事を知る。

一方、エリオは病院の屋上で、フェンス越しに遠くを見ていた。

その表情は何かを思い詰めているようで、フェンスに手をやり、思い切り握り締めている。

すると、

「どうしたんだ?」

そんなエリオに声がかけられた。

エリオが振り返ると、そこには輝二がいた。

「輝二さん………」

エリオは呟く。

「拓也の事なら心配するな。 拓也はあれ位でくたばる様な奴じゃない」

輝二はそう言うが、エリオは俯く。

「思い詰めているのは、それとは別の理由……か?」

輝二が確信を持った言葉で、確認するように問いかける。

エリオは俯いたまま、拳を握り締めた。

輝二は、思ったとおりだと判断する。

「俺で良ければ、相談に乗るぞ」

輝二はそうエリオに言った。

「聞いて……貰えますか……?」

エリオは、おずおずと尋ねた。

「ああ」

輝二は頷く。

「僕は……物心ついた頃まで、両親の元で暮らしていました………」

そして、ポツリポツリと話し出した。

「その時は、幸せだと思っていました………けど、ある日突然、男の人達が来て僕を連れて行こうとしました………両親は……両親と思っていた人達は、最初こそ僕を連れて行かせまいと抵抗していました。 けど、僕もその時初めて知ったんですけど、本当のエリオ・モンディアルは既に亡くなっていて、僕は、本当のエリオ・モンディアルの細胞を元に作られたクローン体だったんです。 両親と思っていた人達は、押しかけてきた人達がその事を知っていると分かると、途端に抵抗を止めてしまったんです。 僕は、何度も助けを求めました。 けど、その人達は、それっきり助けようともしてくれませんでした………」

エリオは、怒りを隠しきれない表情で続けた。

「僕は、その人達が許せませんでした! そして、連れて行かれた先で人体実験を受けて、誰も信じられなくなって………!」

そう続けるエリオの眼からは、涙が溢れ出してきた。

「でも! 今回ヴィヴィオが連れて行かれそうになったとき! アインさんや、シャマルさん。 ザフィーラはルーチェモンに立ち向かっていったのに! ………僕は唯……震えていることしか出来なかった………怖くて………身体が動かなかった………! 僕は、僕を捨てたあの人達と同じ事をしてしまったんです! 強大な敵に怯え……立ち向かう事すら出来なかった…………僕は逃げたんです!」

輝二は、エリオの懺悔とも言える告白を、黙って聞いている。

「………僕、本当は、今回の事件が終わったら、決めてた事があったんです。 ………拓也さんを、『お父さん』って呼ぼうって………」

思わぬ発言に、輝二は一瞬呆気に取られる。

「先ほどの続きですけど、連れて行かれた先で人体実験を受けていた僕は、完全に人間不信に陥りました。 近付く人皆信じられなくて、持っていた『電気』の魔力変換資質を使って威嚇してました。 僕を助けてくれたフェイトさんですら、最初は信じられなかったんです。 僕を保護していた施設の人達は、防御魔法やバインド、絶縁手袋なんかを使って、僕を取り押さえて治療してました。 けど、そんな行動は、当時の僕にとっては逆効果にしかならなかったんです。 けど、そんな時でした。 フェイトさんが拓也さんを連れて来たのは………そのときの僕は、当然のように電気を発して、威嚇しました。 でも、拓也さんは防御魔法どころか、強化魔法すら使わずに、僕に近付いてきました。 そして、電撃を受けることも厭わずに、ただ微笑んで、僕の頭を撫でてくれたんです………」

輝二は、気を取り直して、エリオの話に集中する。

「その後も、拓也さんは時折僕を尋ねてきてくれました。 その中で、拓也さんは「俺の事をお父さんって呼んでみないか」って言いました。 その時は恥ずかしさもあり、断ってはいたんですが、内心では、拓也さんの子供にならなっても良いかなって思ってたんです。 それから、僕が六課に来て、偶然にも拓也さんが六課の協力者になって、拓也さんと過ごす時間が増えて………その中で、拓也さんの子供にならなっても良いかなって思いが、拓也さんの子供になりたいって思いに変わっていったんです。 だから、この事件が一段落したら、拓也さんを『お父さん』って呼ぼうって、決心したんです………」

すると、そこでエリオは俯いて拳を握り締める。

「でもっ! 守らなきゃいけない人たちを前に逃げた僕にっ、あの拓也さんを『お父さん』って呼ぶ資格なんか…………!」

資格なんか無いと言いかけたエリオの横に輝二は歩いて並び、フェンス越しに遠くを見る。

そして、口を開いた。

「………拓也もな……」

「え?」

「……拓也も……逃げた事があるんだ………仲間を見捨てようとしてまで………」

「えっ!?」

輝二の口から発せられた信じられない言葉に、エリオは驚愕の声を漏らす。

「デジタルワールドの冒険で、暫くたった頃……その時はスピリットを使いこなせるようになって来た頃で、最初は敵わなかった敵にも勝てるようになっていた。 だから、拓也は俺達全員が力を合わせれば勝てないものは無いと自信を持って……いや、正確には舞い上がっていたんだ………そんな時、ダスクモン……今までの敵とは一線を隔す敵が現れた。 その敵には、全員の一斉攻撃すら全く効かず、俺達は手も足も出せずに敗北した………膨らみすぎていた自信を完膚なきまでに打ち砕かれた拓也は、その強大な敵の力に恐怖し、1人逃げ出した」

「あの……拓也さんが………」

エリオは、信じられないといった表情で呟く。

そこで輝二は空を見上げる。

「けどな……拓也は戻ってきた………逃げた先で、大切な事を思い出し、仲間を救うために、アイツは戦いの中に帰ってきた………」

輝二はエリオに向き直る。

「お前は、逃げた事を悔やんでいるようだが、自分の歳を考えろ。 いくら大人びているとは言っても、お前はまだ10歳。 デジタルワールドを旅した頃の俺達よりも年下で、まだまだ子供だ。 そんな子供に、ルーチェモンを怖がるなと言う方が無理な話だ。 それでも逃げた事を悔やむというのなら、その先を如何するかを考えろ」

「え?」

「恐怖から逃げて、そこから如何する? 今のまま逃げた事を悔やみ続けるだけか? 恐怖から逃げ続けるのか?」

輝二の言葉に、エリオはハッとなる。

「少なくとも、拓也は戻ってくる事を選んだ。 お前は如何するんだ?」

エリオは顔を上げる。

その眼に、先ほどまであった悲壮感は無かった。

そんなエリオに輝二は、

「フッ……聞くまでも無かったな」

笑みを浮かべそう言った。

「はい! ありがとうございます! 輝二さん!」

エリオは、はっきりと礼を言った。




その夜、ゲンヤからスバルやギンガの話を聞いたなのはは、屋上で思い詰めるように街を見つめていた。

そこへ、

「なのは………」

信也が現れ、なのはに声をかける。

「信也君……」

そう呟くなのはの表情は暗い。

「ヴィヴィオの事……考えてた?」

信也は、確信を持った思いで尋ねる。

「うん………約束……破っちゃったなって……」

なのはは、眼に涙を浮かべつつ続ける。

「私がママの代わりだよって……守ってあげるって……約束したのに………傍に居てあげられなかった!……守ってあげられなかった! あの子、きっと泣いてる! ヴィヴィオが1人で泣いてるって、悲しい思いや、痛い思いをしてるかもって思うと、身体が震えてどうにかなりそうなの! 今すぐ助けに行きたい! だけど……私は………」

泣きじゃくるなのはを、信也はそっと抱きしめる。

「なのは……僕も一緒だよ……悔しくてたまらない……すぐにでも、飛び出して行きたいと思ってる……」

「信也君………」

信也は、なのはの眼を見つめ、

「2人で助けよう……ヴィヴィオを………僕達の子供を……」

「信也君っ……」

信也は、しばらく泣き続けるなのはを抱きしめ続けた。




その頃、フェイトは拓也の病室を訪れていた。

拓也は、人工呼吸器が取り付けられ、心電図などの精密機械が回りにある。

「タクヤ………」

フェイトはそっと、拓也の手を握る。

「ヴィヴィオは私達で必ず助けるから、タクヤは心配しないで……だから、ゆっくり休んで、早く目を覚ましてね」

フェイトは優しく語り掛ける。

フェイトはそれだけ言うと、手を離し、部屋を出ようとした。

だが、入口の前で一度、心配そうに振り返る。

「……………タクヤ」

一瞬、泣きそうな表情でそう呟き、すぐに気を取り直して部屋を出た。



拓也の病室を出て、フェイトが暫く歩いていると、

「……あ、あれ?」

突如吐き気に襲われ、フェイトは壁に寄りかかる。

だが、耐え切れなかったフェイトは床に座り込んでしまった。

「……うっ……!?」

フェイトは口に手を当てる。

「はぁ………はぁ………」

嘔吐はしなかったものの、突然の症状にフェイトは困惑した。

「おかしいな……疲れてるのかな……?」

少し経ったら落ち着いたので、フェイトは立ち上がろうとした。

すると、

「フェイトちゃん!?」

叫び声に近い声を上げてシャマルが駆け寄ってきた。

シャマルは、アインやザフィーラと比べてダメージが軽く、既に動き回れる状態だった。

恐らく、何か用事があって出歩いた時に、床に座り込んでいるフェイトを見つけたのだろう。

「フェイトちゃん、如何したの!?」

シャマルは心配そうな表情で問いかける。

「だ、大丈夫……ちょっと吐き気がしただけだよ。 多分疲れが溜まってたんだと思う。 少し休めば大丈夫だよ」

フェイトは心配かけまいとそう言うが、

「ダメよ! もし重大な病気だったら如何するの!? ちゃんと検査を受けて!」

元々衛生兵であるシャマルにそんな言葉は通じなかった。

半ば強引に診察室へ連れて行かれる。

医師は、他の六課のメンバーの診察で忙しいのか、その場に居なかった為、シャマルがフェイトを診察した。

勝手に病院の機材を使ってもいいのかとは思うが、その辺りは割合しておく。

フェイトは診察台の上に乗せられ、シャマルはフェイトの身体をスキャンしていく。

モニターに表示されるデータを見つめ続けていたシャマルは、

「えっ!? これって!?」

表示された事実に驚愕の声を漏らした。



シャマルは、その事をフェイトに説明し、

「フェイトちゃん、悪い事は言わないわ。 はやてちゃんに報告して休みを貰って」

そうフェイトに言った。

だが、フェイトは首を横に振る。

「ダメだよ。 今の状況で、私だけ休むわけにはいかない。 それに、スカリエッティを捕まえないと……」

「でも、それじゃ………」

「私は大丈夫」

フェイトは笑顔を浮かべてそう言った。

「ううん。 フェイトちゃんだけじゃない、その「シャマル」」

シャマルの言葉の途中で、フェイトが声をかける。

「大丈夫だから………」

フェイトは真剣な目でそう言った。

「………………」

シャマルは、フェイトの目を見る。

シャマルは、遂に折れたのか、ため息を吐き、

「後2週間…………」

そう呟いた。

「えっ?」

その呟きに、フェイトは声を漏らす。

「後2週間黙っておくわ。 それが限界。 その間にスカリエッティを捕まえても、捕まえなくても、2週間経ったら、私がはやてちゃんに報告して、衛生兵の権限で、フェイトちゃんを任務から外してもらうわ」

シャマルはそう真剣な表情で言った。

「うん。 ありがとうシャマル。 大丈夫、自分で言うよ。 スカリエッティを逮捕した後で………」

そんなシャマルを見て、フェイトはそう呟くのだった。








次回予告


六課襲撃から一週間。

アースラに司令部を移し、フォワードメンバーの傷も癒えた機動六課。

そんな中、ヴェロッサからスカリエッティ発見の報告が来る。

だがその時、ヴィヴィオの力によって彼の翼が蘇る。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十話 ゆりかご

今、未来への翼が進化する。






あとがき

第十九話完成。

だけど、ちょっと短いです。

原作以上に落ち込んだエリオ君。

そんなエリオには、拓也の昔話が一番です。

なのはを励ますのはやはり信也の役目でした。

あと、最後のフェイトとシャマルのやり取り。

まあ、大体の人は分かると思います。

って言うか、俺ってホント、チャレンジャーだな………

まあ、ともかく次も頑張ります。





[8056] 第二十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/02/20 20:14



それぞれの失意の中から立ち上がる者達。

そして、決戦に向けての準備が始まる。



第二十話 ゆりかご



機動六課襲撃から一週間。

はやては、老朽により解体寸前だったアースラを整備して、臨時の六課の司令部とした。

怪我が軽い者達は既に復帰しており、フォワードメンバーもスバルの帰還を待つだけとなった。

だが、拓也の意識は未だ戻っておらず、ザフィーラを始めとした重傷者達は、未だ入院中である。

そして、出動までの時間の使い方も人それぞれであった。

自分の決意を再確認する者。

体調を確認する者。

そして、己の腕を磨く者。

「でやぁああああああああっ!!」

訓練室でエリオがストラーダを振りかぶる。

その先にいるのは輝二。

輝二はリヒト・ズィーガーで迎え撃つ。

――ガキィ

お互いを弾きあった所でブザーが鳴り、訓練終了を伝えた。

「時間だな……」

「はい………はぁ………はぁ………」

エリオは、肩で息をしつつ、構えを解く。

「大分飛ばしていたようだが、大丈夫か?」

輝二はそう尋ねる。

「はい! 大丈夫です!」

「俺は人に教えるのはあまり得意ではないから、これと言えることは無いが………」

「大丈夫です。 色々、盗ませてもらってますから」

「フッ……そうか」

輝二は、バリアジャケットを解除し、エリオに背を向ける。

「本来なら、拓也がお前を教えるのが一番良いのかもしれないが………」

「いえ! 輝二さんの戦い方も勉強になります! 僕の戦い方は、どちらかと言えば、輝二さんの戦い方に近いですから」

「まあ、それならいいが………」

輝二はそう呟くと、訓練室を出る。

すると、廊下にフェイトがいた。

「フェイトか……」

「どうも、うちのエリオがお世話になってます」

フェイトはそう声をかける。

「悪いな。 お前達に何も言わずに」

「エリオが言い出して、あなたが受けてくれたのなら、いいですよ私は。 ちょっと寂しいですけど」

「エリオなりに、フェイトに負担をかけたくないんだろう。 拓也もあの状態だしな」

輝二の言葉に、フェイトは少し俯く。

が、すぐに顔を上げ、

「ところでエリオ、成果の方は如何ですか?」

「ああ。 かなりの成長速度だ。 学んだ事をどんどん吸収していく」

「なのはが、そう教えてくれてるんです。 基礎と基本でしっかりと固めた頑丈な土台と、模擬戦から学ぶ、瞬間的な判断力と応用力。 今まで積み重ねた練習と経験は、あの子達がもっともっと強くなっていく為の準備。 みんなが自分で思い描いたとおりに、昨日よりもっと、今日よりずっと、強くなっていけるようにって………」

フェイトはそう呟く。

「そうか………それにしても、エリオは拓也に似てるな」

輝二は突然そう言う。

「え? そうですか?」

「ああ。 表面上は似て無いかもしれないが、根本的な部分が………愚直といえるほどに真っ直ぐな心が、そっくりだ」

輝二は口元に笑みを浮かべる。

「それはきっと拓也のお陰です。 拓也の真っ直ぐな心に触れたから、エリオも真っ直ぐに生きてこれたんだと思います」

フェイトも笑顔で答えた。




午後になり、スバルがアースラに合流してフォワード陣がそろう。

だがその時、アラートが鳴り響いた。

それは、『地上』の管理局が配備を進めていた兵器、アインヘリヤルが戦闘機人の襲撃を受けているというものだった。

当然ながら、アインヘリヤルにも防衛部隊が展開しているが、そんなのは関係ないと言わんばかりにあっさりと防衛部隊は壊滅し、3基あったアインヘリヤルは全て破壊されてしまった。

しかし、同じ頃スカリエッティのアジトを捜索していたヴェロッサから、アジト発見の報告が来る。

そして、スカリエッティ確保の為に、機動六課からも、戦力を送って欲しいというものだった。

はやては当然了承するも、戦闘機人たちが幾つかのグループに分かれ、地上本部に接近している。

更に、その中にはスカリエッティによって調整を施されたギンガの姿と、アギトと共に別ルートから本部へ向かうゼストの姿もあった。

はやては作戦を考える。

だがその時、地鳴りが響く。

それは、スカリエッティのアジトの周りに召喚されたルーテシアの召喚獣、『地雷王』によるものだった。

そして、それと同時にスカリエッティからの通信が入る。

『さあ、いよいよ復活の時だ。 私のスポンサー諸氏、そしてこんな世界を作り出した管理局の諸君。 偽善の平和を謳う聖王教会の諸君。 見えるかい? これが君達が気にしながらも求めていた絶対の力』

スカリエッティの言葉に合わせて大地が割れ、巨大な何かが浮上を始める。

浮き上がるにつれて、その全貌が明らかになる。

それは、巨大な艦であった。

『旧暦の時代……一度は世界を成形し、そして破壊した、古代ベルカの悪魔の英知………見えるかい? 待ち望んだ主を得て古代の技術と英知の結晶は、今その力を発揮する』

その艦、『聖王のゆりかご』の玉座には、ヴィヴィオが拘束されており、ゆりかごの起動に伴い、ヴィヴィオにも負担を掛ける。

『ッ……!? 痛いよ! 怖いよ! ママッ! パパーッ!!』

ヴィヴィオの悲鳴が、通信を通して六課のメンバーに伝わる。

「ヴィヴィオ………!」

身体を振るわせつつ、レイジングハートを握り締めるなのは。

「ッ…………!」

溢れる怒りに堪える為に、拳を握り締め、歯を食いしばる信也。

『さあ! ここから夢の始まりだ! ハハハハッ! アーッハハハハハハハッ!!』

スカリエッティの笑い声が響く。

一方、アースラのブリッジでは、

「あいつ何馬鹿笑いしてんだ! 七大魔王が復活したら、夢も何も無いだろうが!」

通信を聞いていた純平が叫ぶ。

「純平の言うとおりよ。 ルーチェモンに利用されてる事に気づいてないの!?」

泉も我慢できずに叫ぶ。

すると、

「恐らく………いや、ほぼ間違いなく利用されていることには気づいているだろうさ」

輝一がそう答える。

「じゃあ何で!?」

思わず友樹が問いかける。

「利用されて、尚且つそれを良しとしている。 どうやら本当の狂人のようだなスカリエッティは」

輝二がそう呟いた。

輝二は、ブリッジ上段にいるはやてを見上げ、

「はやて、例の話はどうなった?」

そう問いかける。

はやては、少し俯き、

「無理やった………いくら言っても、対デジモン以外では、デジモンの進化は認められんの一点張りや」

そう答える。

「そうか………」

輝二は軽く肩を落とす。

「クソッ! この前ルーチェモンが言った事が事実なら、七大魔王復活まで時間が無いって言うのに!」

純平は、右の拳を左の掌にぶつけ、悔しそうな声を漏らす。

「仕方あるまい。 上層部はデジモンの脅威を全くと言っていいほど理解していない。 恐らく、七大魔王も管理局の全戦力を投入すれば、何とかなると思っているのだろう」

一緒にいたシグナムがそう言った。

「そんな、ルーチェモン1人だけでも世界を滅ぼす力はあるのよ! それに迫る七大魔王が復活したら、このミッドチルダだけじゃない。 全ての次元世界が滅んでしまうわ!」

泉の言葉に、

「その為に、この事件を早く片付ける方法として、デジモンの進化を容認して欲しかったんだが…………」

輝二の言葉に、デジタル組は全員肩を落とす。

「だが、お前らはそんな事に最後まで縛られるよう奴らじゃないだろ?」

輝一が意味ありげに呟くと、

「「「当然」」」

3人は、笑みを零しながらそう頷いた。




やがて、クロノから通信が入り、本局から次元航行艦隊が援軍として出動している事を伝える。

そして、フォワードメンバーとデジタル組がブリーフィングルームに集まると、通信でクロノと伝説の三賢者の1人であるミゼット・クローベルを交え、作戦会議が行なわれた。

その作戦会議が終わり、全員が部屋を出て行こうとすると、

「フェイトさん!」

キャロがフェイトを呼び止める。

フェイトが振り返ると、キャロとエリオが心配そうな顔でそこにいた。

「あのっ………」

エリオは何か言おうとしたが、

「……別グループになっちゃったね」

フェイトが呟く。

「ゴメンね。 私、いつも大切な時に2人の傍にいられないね……」

「そんな………」

「フェイトさん………1人でスカリエッティの所になんて心配で……」

エリオとキャロは心配そうに呟く。

「緊急事態の為に、シグナムには地上に残ってもらいたいし……」

フェイトが呟くと、

「せめて、拓也さんが起きてたら………」

エリオはそう漏らした。

「大丈夫。 拓也はきっと目を覚ますよ。 それに、アコース査察官やシスター・シャッハも一緒だよ。 1人じゃない………そう……私は1人じゃない……」

フェイトは、視線を下に落とし、手を腹部に当てる仕草をする。

そして、フェイトは2人を抱きしめ、

「2人とも頑張って。 絶対無茶とかしないんだよ」

そう呟いた。

「はい……」

「それは、フェイトさんこそ……」

そのまま少しの間抱き続けた後、

「ねえ、エリオ、キャロ」

「はい」

「なんでしょうか? フェイトさん」

フェイトの言葉に、エリオとキャロが返事をする。

「この事件が終わって、拓也が目を覚ましたら、私、皆に言わなきゃいけないことがあるんだ」

「えっ?」

「なんですか?」

2人は首を傾げるが、

「うん。 それは事件が終わった後で。 だから2人とも、無事に戻ってきてね」

フェイトはそう言って2人から離れた。






やがて、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、リィン、輝二、純平、友樹、泉の降下ポイントに近付き、スバル達はなのはとヴィータから激励の言葉を受ける。

9人は、地上本部に接近する戦闘機人を迎撃する為に。

シグナムと輝一は、別ルートで近付くゼストとアギトを食い止めるために。

フェイトは、スカリエッティの逮捕の為に。

そして、信也、なのは、はやて、ヴィータはゆりかごへと向かう事になっている。

首都防衛グループがヘリで出動したあと、シグナムと輝一もゼストの迎撃の為に飛び立つ。

そして、ゆりかご攻撃グループとフェイトもアースラから飛び立った。

聖王教会のカリムが、はやてを含めた隊長陣のリミッターを解除。

信也も、己のリミッターを解除し、六課最強の魔導師達が枷を解き放った。






次回予告


それぞれの戦いの場へと赴く機動六課と輝二達。

そこで、決戦の火蓋が切って落とされる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十一話 決戦

今、未来への翼が進化する。






あとがき


第二十話の完成。

でも短い。

2話分繋げてこの短さとは……

はっきり言って、書くところが無いんです。

余りにもデジタル組を介入させる所が少なすぎて原作そのまんまな流れになってます。

でも、次は結構変わるかもしれません。

では、次も頑張ります。





[8056] 第二十一話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/06 22:19

それぞれの戦いの場へと赴く若き魔導師達。

今、決戦が始まる。



第二十一話 決戦



スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、リィン、輝二、純平、友樹、泉はヴァイスの操るヘリの中で、作戦の確認を行なっていた。

「俺達はミッド中央市街地方面、敵勢力の迎撃ラインに参加する。 地上部隊と協力して、向こうの厄介な戦力、召喚師や戦闘機人達を最初に叩いて止めるのが俺達の仕事だ」

階級が一番高い輝二がそう言う。

「他の隊の魔導師達は、AMFや戦闘機人戦の経験が殆ど無い」

「だから、私達がトップでぶつかって、とにかく向こうの戦力を削る」

「後は、迎撃ラインが止めてくれる、という訳ですね?」

ティアナ、スバル、キャロの順番で答え、

「その通りだ」

輝二は頷く。

「でも………なんだか………」

エリオが呟いた。

「なんだかちょっとだけ、エースな気分ですね」

「フッ……そうだな」

エリオの言葉に、輝二が笑みを零す。

輝二は、純平、泉、友樹に向き直り、

「3人は、フォワード陣のフォローを頼む。 俺とリィンはカオスの相手をする」

そう言った。

「カオス………とーさまとおじさまの細胞を元に作られた戦闘機人ですね」

「ああ。 あいつはライヒフォームの輝一とボルグフォームの純平を相手にAMF下とはいえ互角に戦ったらしい。 魔導師ランクにすれば、確実にオーバーSだ」

リィンの言葉に輝二は頷き、そう説明する。

「後は、ギンガが出てきたら………」

輝一はそこまで言ってスバルの顔色を窺う。

「優先的に対処!」

「安全無事に確保!」

すると、エリオとキャロがハッキリと答え、スバルに視線を送る。

「………………うん!」

少し間が空いたが、スバルはハッキリと頷いた。

「よし! 行くぞ!!」

輝二の号令でヘリから飛び降りる一同。

廃棄都市のハイウェイに降り立ち、向かってくる戦闘機人に向けて駆ける。

エリオとキャロはフリードに乗り、純平と泉は自分で飛ぶ。

スバルはマッハキャリバーで走り、輝二はガルムフォームで駆け、友樹とティアナは己の足で走る。

一同が暫くハイウェイ沿いに進んでいると、

「あっ……」

キャロが、ビルの上のルーテシアに気づく。

「あの子………」

キャロが呟くと、ルーテシアは無表情のまま、近くを旋回していたヘリを指差した。

「……はっ! フリード!!」

その意味を予想したキャロは、フリードに呼びかけ、フリードをルーテシアの元へ向かわせる。

「キャロ!」

ティアナはキャロに呼びかけるが、キャロはそのまま行ってしまう。

「源一尉!」

ティアナは輝二に視線を向け、確認するように呼びかける。

「泉! 先にキャロ達を追ってくれ!」

「わかったわ!」

輝二の呼びかけに泉は答えると、キャロ達を追って飛んでいく。

すると輝二は、

「それから作戦変更! 先にあの子を確保………ッ!?」

そう指示を出そうとした瞬間、襲い掛かってくる気配に気付き、上を向いた。

そこには、

「IS発動! ヘルアンドヘブン! エクスキャリバー!!」

右腕に光のエネルギーで剣を作り出したカオスが斬りかかって来た。

「くっ!」

輝二は咄嗟に両腕のブレードを展開。

頭上でクロスさせてその一撃を受け止める。

だが、受け止めたブレードには罅が入った。

「チッ! コイツは俺とリィンが引き受ける! ティアナ! 後の指揮はお前に任せる!! ただし個人戦は避けろ! 最低でも2人一組で戦え!」

輝二は、斬撃を受け止めながらそう叫んだ。

「了解!」

ティアナも迷わずに頷く。

だが、その瞬間、上空からオットーのISレイストームによる攻撃が来る。

散開する一同。

ティアナはビルの屋上に着地するが、そのティアナを狙ってディードがツインブレイズで斬りかかる。

ティアナもクロスミラージュをダガーモードに切り替え応戦するが、ディードの一撃に耐え切れず隣のビルに吹き飛ばされた。

スバルの方にも赤髪の少女、No9ノーヴェが襲い掛かり、こちらも手が離せない状況であった。

この様子を上空に退避していた純平が見ていたが、とある事に気付く。

「拙い! ティアナが孤立する! 友樹! 俺はティアナの援護に行く! お前はスバルを!」

「分かったよ!」

純平は、すぐさまティアナの吹き飛ばされたビルに向かって飛ぶ。

だが、突如そのビルが結界のようなものに覆われていく。

「くっ! 間に合え!!」

純平は、全速力で飛ぶ。

だが、僅かに間に合わない。

すると純平は、全身に電撃を纏い、

「ライトニングボンバー!!」

結界が閉じる部分に向かって突撃した。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

結界が閉じた一瞬後に純平がその部分に激突する。

結界が閉じたばかりで本来の強度に到ってなかったのか、純平は何とか結界を打ち破り、内部へと入る事に成功した

だが、

「おわぁっ!?」

結界を破った純平は、勢い余ってそのまま屋上のビルに突っ込む。

そのまま2、3階ほど床をぶち破ってようやく止まる。

「あ痛たたたたた…………」

純平は、頭を押さえながら瓦礫の中から起き上がる。

「じゅ、純平さん……?」

すると、すぐ横にはビックリした表情のティアナがいた。

丁度、ティアナが吹き飛ばされた階層までぶち破ったらしい。

「良かった。 何とか孤立させずに済んだみたいだな」

純平がそう言うと、

「すみません。 助かりました………」

ティアナは、少し申し訳無さそうに礼を言った。

「気にすんなよ。 輝二も言ってただろ? 個人戦は避けろって」

「はい……」

すると、

「余計なのが1人混じったッスけど、まあ、問題ないでしょ?」

No11ウェンディとノーヴェがビルの中に現れた。




一方、友樹がスバルと合流し、少し先に進むと、

「はっ」

スバルが目の前に佇む1人の少女に気付く。

それは、ナンバーズと同じ防護スーツに身を包み、眼が金色になっているものの、間違いなくギンガである。

「ギン姉……」

スバルは思わず呟くのだった。



同じ頃、スカリエッティのアジトに到着したフェイトは、シャッハと共にガジェットを破壊していた。

「烈風一陣!」

シャッハが双剣型アームドデバイス『ウィンデルシャフト』を振り回す。

「切り裂け! ウィンデルシャフト!!」

双剣型というものの、その扱い方はトンファーに近い。

シャッハは、ガジェットⅠ型を次々と切り裂く。

「はぁあああああああああっ!!」

フェイトは、バルディッシュのザンバーフォームで複数のガジェットⅢ型を一刀の下に両断し、近くに居たⅢ型も、天井の崩落に巻き込まれて破壊された。

あらかたのガジェットを片付けると、フェイトとシャッハは微笑み合う。

別働隊からも現在行動が上手くいっていると報告があり、的確な指示を返すフェイト。

「ありがとうございます。 シスター・シャッハ。 お2人の調査のお陰で、迷わず進めます」

「探査はロッサの専門です。 この子達が頑張ってくれました」

フェイトの言葉に、シャッハはそう答え、傍らにいるヴェロッサのレアスキル『無限の猟犬ウンエントリヒ・ヤークト』に視線を落としてそう言った。

「このまま奥へ。 スカリエッティの居場所まで!」

「はい!」

シャッハの頼もしい言葉にフェイトは頷き、先を目指そうとした。

すると、

「ところでフェイト執務官」

シャッハが突然声を掛けてきた。

「はい、何ですか?」

フェイトが尋ねると、

「何処か身体の調子が悪いんですか?」

そうシャッハが聞いてくる。

「えっ? 何故そう思うんですか?」

フェイトは動揺を隠しつつ、そう返す。

「いえ、フェイト執務官の動きが、いつもと違って鈍く……というより、身体を庇いながら戦っているような気がしたので………」

シャッハは、自分が感じた違和感を告げる。

フェイトは、内心先ほどよりも動揺していたが、それを顔には出さず、

「大丈夫です。 恐らくAMFの所為でしょう。 AMFの所為で、自分自身のイメージと実際の動きのズレが、周りから見れば違和感となって見えるんだと思います」

そう説明した。

「それなら良いのですが………」

シャッハは、少し心配そうな表情を見せながらも納得する。

「さあ、先を急ぎましょう」

フェイトは、シャッハを促した。




そして、ゆりかごの方では、巨大な船体に苦労しながらも、必死に航空魔導師隊がガジェットとゆりかご本体に攻撃を加えていた。

その苦労が功を奏したのか、内部に突入できそうな突破口を見つけ、すぐになのは達に報告が行く。

なのは達も、すぐにはやてに確認を取り、内部突入の許可を取った。

そして、信也、なのは、ヴィータがゆりかご内部に突入すると、高濃度AMFにより、魔法の発動が困難になる。

当然ながら、飛行魔法も困難になり、落下スピードが速まる。

「AMF!?」

「内部空間全部に!」

ヴィータとなのはが相判断する。

「2人とも、僕に掴まって!」

信也がなのはとヴィータの手を取り、集中力による魔力結合を解かれる以上の再結合により、飛行魔法を復活させ、ゆっくりと床に降りる。

この方法ならAMF下でも魔力を温存しつつ、いつも通りの魔力行使が可能なのだ。

ただ、集中し続けなければならないために、並の精神力では不可能なのだが。

信也たちは、決意を込めて通路の先を睨み付けた。




結界に閉じ込められたティアナと純平は、ノーヴェ、ウェンディと激しい戦闘を行なっていた。

「だぁりゃぁあああああああっ!!」

純平がノーヴェに殴りかかる。

「チッ!」

ノーヴェはそれを右手でガードする。

「うざってぇんだよっ!!」

ノーヴェは、足を振りかぶり、ジェットエッジのノズルから噴射推進を行い鋭い蹴りを放つ。

「クッ!」

純平もガードするものの、その威力は中々のもので、純平は後退する。

だが、そのときティアナの魔力弾がノーヴェに飛来。

「なっ!?」

突然の事にノーヴェは動けなかったが、横からウェンディのライディングボードが割り込み、ノーヴェを守った。

その間に一旦後退する純平。

ティアナもアンカーで場所を変えていた。

「前より弾丸が鋭いッスね」

ウェンディがそう漏らす。

「あんな豆鉄砲、1発2発位なんてことねえ」

ノーヴェは、強気な発言をする。

「ま、そうッスけど」

ウェンディもそれは肯定した。



純平はティアナと共に上の階層を目指していた。

「拙いな、こんなボロボロのビルの中でドンパチやってたら、ビルが崩れるかも……」

「はい。 何とか結界破りの魔導師が来るまで持ちこたえないと…………」

その瞬間、屋上の吹き抜けから何かが迫ってきた。

「ヤバイ! ティアナ!」

純平が咄嗟にティアナを庇う。

屋上から迫ってきたのはディード。

純平は、ディードのツインブレイズをその身で受けた。

純平とティアナは吹き飛ばされ、とある部屋の中に突っ込む。

「ディード!? アンタも?」

下から上ってきたウェンディが驚いた声を上げる。

「オットーの指示。 あの幻術使いは、確実に仕留めておかないと面倒だって……」

ディードは淡々と言う。



ティアナと純平は、瓦礫の影に身を隠していた。

「っ~~~~……よりにもよって右肩かよ」

純平は、右肩に傷を負っていた。

「純平さん……私を庇って……」

ティアナが心配そうに声をかける。

「くそ、これじゃティアナの足手纏いに……」

純平はそう漏らす。

純平の技の殆どは両手、もしくは右手を使うものであり、右手が使えなくなると、大幅な戦力ダウンは避けられない。

「そんな、純平さんが守ってくれなかったら、今頃私も唯では済みませんでした。 それに………」

ティアナはチラリと戦闘機人たちの様子を見る。

「戦闘機人が3機に、ガジェットまで………」

対して、こちらはティアナと負傷した純平。

戦力差は圧倒的だ。

ティアナの心に、絶望感が漂い、ティアナは俯く。

しかし、その時、

「諦めんなよ」

純平がそう言った。

「この位で諦めんなよ。 俺達はまだ生きてる。 生きてる限り諦めるな!」

純平は、ティアナの目を見てハッキリと言う。

「それに、お前を孤立させて、これだけの戦力を当てる。 確かに余剰戦力かも知れないが、それは裏を返せばティアナを確実に倒して起きたいって事。 つまり、それだけティアナを恐れてるってことだ。 だから自信を持てティアナ。 お前は強い!」

「純平さん……」

ティアナは顔をあげる。

その目は、決意に満ちていた。




ルーテシア、ガリューと相対するエリオ、キャロ、泉。

エリオとガリューは高速戦闘を繰り広げ、キャロはルーテシアの攻撃を防ぎながら説得を試みている。

「あなたは如何して? 如何してこんな事をするの!?」

「こんな所で、こんな戦いをする理由は何なんだ!?」

「目的があるなら教えて! 悪い事じゃないんなら、私達、手伝えるかも知れないんだよ!」

キャロとエリオが問いかける。

「………ッ」

だが、ルーテシアは表情を僅かに歪ませると、短剣状の魔力弾で攻撃してくる。

「睨むだけじゃ、何を言いたいのか分からないわよっ!」

その攻撃を泉が風を使って防いだ。

そこへ、エリオが急上昇してきてフリードの背に乗り、キャロを守るようにストラーダを構える。

その姿を見て、ルーテシアは寂しそうな表情を浮かべた。



ゆりかごの中、信也とヴィータは迫ってくるガジェットを破壊していた。

「でやぁあああああああああああっ!!」

ヴィータがグラーフアイゼンのラケーテンハンマーで、数機固まっていたガジェットⅠ型を一掃する。

「はぁっ!!」

信也が、すれ違いざまに数機のガジェットⅢ型を切り裂く。

その戦いぶりに、なのはは心配そうな表情をして、

「信也君、ヴィータちゃん。 飛ばし過ぎじゃ……」

そう声を掛けるが、

「うっせーよ………センターや後衛の魔力温存も、前衛の仕事の内なんだよ……」

ヴィータは肩で息をしながらも、そう強く言った。

「僕も大丈夫。 AMF下でも、僕なら無駄な魔力を使わなくてもいいから」

信也も、笑みを浮かべて言う。

「………うん」

なのはは、心配そうにしながらも頷く。

その時、通信が来て玉座の間と駆動炉の詳細ルートが判明する。

だが、それぞれの位置は全くの逆方向。

するとヴィータが、

「仕方ねえ、スターズ2、別行動で駆動炉へ向かう」

「ヴィータちゃん!?」

ヴィータの言葉に、なのはが驚く。

「駆動炉と玉座の間のヴィヴィオ。 片方止めただけでゆりかごは止まるかも知れねえし、両方止めないと止まらねえかもしれねえ。 こうしてる間にも、外は危なくなってる」

「でも、ヴィータちゃん。 ここまでの消耗が……」

「だからアタシが駆動炉に回る。 お前らはさっさとヴィヴィオを助けて来い」

ヴィータは笑みを浮かべてそう言った。

「でもっ……」

なのははまだ言おうとしたが、信也に手で遮られる。

「ヴィータ、駆動炉は頼んでいい?」

信也はそう尋ねた。

「おう! 任しとけ! 破壊と粉砕。 鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン。 壊せねえ物なんかこの世にねえ!」

ヴィータは自信満々にそう言った。

「信也君!?」

「なのは、ヴィータの言ってる事は正しいよ」

信也はなのはに言い聞かせる。

すると、ヴィータは踵を返し、

「一瞬でぶっ壊してお前らの援護に言ってやる。 さっさと上昇を止めて、表のはやてと合流だ」

ヴィータはそう言って駆動炉に向かって歩いていく。

なのは心配そうな表情をした後、

「絶対……絶対にすぐに合流だよ!?」

「たりめーだ!」

なのはの言葉にヴィータは応えた。




シグナムと輝一が、ゼストの予想進路上で待ち構えていると、ゼストとアギトが飛んでくる。

「局の騎士か?」

ゼストが問いかける。

「本局機動六課、シグナム二尉です。 前所属は首都防衛隊。 あなたの後輩という事になります」

「陸士108部隊所属、木村 輝一一尉です。 貴方の事は、ナカジマ三佐から聞きました」

「そうか……私の後輩とゲンヤの部下か……」

シグナムと輝一の答えを聞いて、若干嬉しそうな表情を浮かべるゼスト。

「中央本部へは、壊しにでも行かれるのですか?」

シグナムは問う。

「古い友人に……レジアスに会いに行くだけだ」

ゼストはそう答える。

「それは、復讐の為か?」

輝一が問いかけた。

「言葉で語れるものではない。 道を開けてもらおう」

ゼストはそれだけ言うと槍を構える。

「言葉にしてもらわなければ、譲れる道も譲れません!」

シグナムはレヴァンティンを抜き、輝一は槍を構える。

「グダグダ語る何てなぁ! 騎士のやるこっちゃねぇんだよ!!」

アギトはそう叫んでゼストとユニゾンする。

以前と同じく、金髪赤目になるゼスト。

『剣精アギト! 大義の友人ゼストの為に、この手の炎で押して参る!!』

その言葉と共に、ゼストの槍に炎が宿る。

「烈火の将シグナム。 管理局員として、あなた方を止めさせてもらいます」

レヴァンティンに炎が奔り、

「闇の闘士木村 輝一。 貴方の真意、見定めさせて貰うっ!!」

槍に闇を纏う輝一。

そして、それぞれが同時に動いた。



それぞれの場で、ミッドチルダの命運を掛けた決戦が始まった。

だが、その戦いは本当の絶望の単なる始まりに過ぎないことを知るものは、まだ誰もいない。






次回予告


病院で目覚める拓也。

それぞれの相手と戦い続ける六課メンバー。

戦いは更に激化する。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十二話 Pain to Pain

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第二十一話の完成。

前回で結構変わるかもと言っておきながら、あんま変わりの無い二十一話でした。

まあ、まだ戦いの始まりの方ですし……

次こそは………

ともかく次も頑張ります。




[8056] 第二十二話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/20 18:13
第二十二話 Pain to Pain



グラナガンの空中で金と桃色、黒の三色の光が何度も交差する。

「はぁあああああああっ!!」

「おおおおおおおおおっ!!」

シグナムのレヴァンティンとゼストの槍がぶつかり合う。

互いに距離を取った所で、

「でぇええええええええええええいっ!!」

上から輝一が槍を振り下ろす。

「むん!」

ゼストは、自分の槍を横にしてその一撃を受け止める。

『猛ろ! 炎熱! 烈火刃!!』

ゼストとユニゾンしているアギトが、ゼストの槍に炎を纏わせる。

「はぁああああああっ!!」

今度は、ゼストが炎を纏った槍を輝一に振り下ろす。

輝一は、槍に闇を纏わせると、向かってくる槍に己の槍を叩きつける。

――ガキィィィィン

金属音が鳴り響き、槍はそこで止まるが、ゼストの槍の炎が輝一に襲い掛かる。

しかし、

「炎熱無効!!」

輝一の槍の闇が炎に纏わりつき、始めから存在しなかったかのように熱も残らず消し去った。

『何ぃ!?』

アギトが驚く。

対してゼストは、冷静に輝一を観察した。

「………もしや、属性特化型か?」

ゼストはそう判断する。

「はい。 『闇』の属性特化型魔導師、木村 輝一。 俺の闇は、全てを飲み込み、消し去る。 僅かですが、物理法則すらも無効化できます」

輝一は律儀にそう説明する。

「そうか………珍しいな。 属性特化型魔導師は、全次元世界で同じ時期に1人現れるかどうかと言える位の希少技能………2人目の属性特化型魔導師に会うとは思わなかったぞ」

ゼストがそう言うと、

「序に言えば、俺の仲間の5人も属性特化型ですが」

輝一はそう答える。

その言葉には、ゼストも軽く驚いた表情を浮かべる。

すると、

「その中に、『炎』の属性特化型魔導師はいるか?」

ゼストはそう尋ねる。

「……ええ。 局員ではなく、民間協力者ですが……」

「そうか……」

ゼストは、輝一の答えを聞くと、何処か安心したような表情を浮かべる。

「?」

輝一がゼストの表情を怪訝に思っていると、

「礼を言うぞ。 お前のお陰で、アギトとの約束を守れそうだ」

そう言って、ゼストは再び槍を構える。

「言っている意味は良く分かりませんが……ッ」

輝一はタイミングよくゼストから離れる。

その瞬間、輝一の後ろから、

「飛竜一閃!!」

シグナムが、炎を纏った連結刃でゼストを狙った。

「むっ!」

ゼストは、それに気付くとカートリッジを一発ロード。

槍を振りかぶる。

『炎熱消去! 衝撃加速!!』

アギトが、ゼストの槍に追加効果を持たせる。

「はぁああああああああああああああっ!!」

ゼストは叫び声と共に槍を振るった。

ゼストの槍から衝撃波が放たれる。

その衝撃波が炎を纏った連結刃に触れたとき、炎が消し去られ、続けて衝撃波が連結刃を弾き飛ばす。

「なっ!?」

シグナムは、その事に一瞬だが驚愕し、動きを止めてしまう。

その隙を見逃すゼストではない。

「ぬぁあああああああああああああっ!!」

猛スピードでシグナムに接近、力強く槍を振るう。

シグナムは、レヴァンティンが連結刃となっているので其方で受け止めることは出来ず、左手に持っていた鞘でゼストの槍を受け止める。

だが、

「でやぁっ!!」

ゼストが力を込めると、鞘に罅が広がっていく。

「ッ!?」

「でえぃっ!!」

遂に鞘は破壊され、シグナムは叩き落される。

「うぁあああああああああっ!!」

地上に向かって落下していくシグナム。

「シグナムッ!!」

輝一は、慌ててシグナムを追いかける。

「うぉおおおおおおおっ!」

輝一は限界ギリギリまでスピードを上げ、

「くぅっ!!」

地面に激突する寸前にシグナムを抱き締め、咄嗟に自分を下になるように互いの位置関係を入れ替えた。

そのまま地面を滑るように墜落する2人。

数十メートルほど地面を抉り、そこで止まる。

「だ、大丈夫か、シグナム?」

輝一は抱き締めたシグナムに確認を取る。

「ッ!? コウイチ!?」

シグナムは、輝一に抱き締められている事に気づき、若干頬を赤くする。

「あ、ああ。 私は大丈夫だ………」

シグナムはそう言うと立ち上がろうとするが、

「ッ!?」

足を押さえるように蹲ってしまう。

輝一が確認すると、左の足首から出血していた。

「くっ、すまん。 どうやら先ほどの一撃が、足を掠めていたようだ」

シグナムはそれでも立ち上がる。

「シグナム! 無茶をするな!」

輝一がそう言うが、シグナムは地上本部に向かうゼストを見上げ、

「大丈夫だ。 空戦に影響はない。 今ならまだ間に合う。 追うぞ!」

シグナムはそう言って、飛び立ってしまう。

「おい、シグナム!」

輝一も、シグナムの後を追った。





「はぁああああああああっ!!」

ベオウルフフォームとなった輝二が、カオスに剣を振るう。

「うぉおおおおおおおおっ!!」

カオスもエクスキャリバーで対抗した。

――ガキィィィィン

鍔迫り合いをする2人。

「とーさま! 離れてください!!」

リィンの言葉に、輝二はすぐに飛び退く。

すると、カオスの周りに無数の氷の短剣が発生する。

「喰らいなさい! フリジットダガー!!」

その氷の短剣が、一斉にカオスに襲い掛かる。

「チィ! ブラッディストリーム!!」

カオスは左手から闇の鞭を発生させ、氷の刃を薙ぎ払う。

だが、その瞬間を狙い、

「リヒトアングリフ!!」

輝二が左腕を展開して、レーザーと無数のミサイルをカオスに向けて放った。

「ぐっ!」

爆発に飲まれるカオス。

しかし、

「ッ!?」

爆煙を切り裂き、背中に光の翼と闇の翼を展開したカオスが上空に飛び出した。

「あいつ、空戦にも対応しているのか!」

輝二は驚きながらもカオスを見上げる。

カオスも、今の攻撃はダメージを受けたようで、肩で息をしていた。

「はぁ……はぁ……やるな源 輝二。 俺のオリジナルの1人だけの事はある」

カオスは、輝二を見下ろしながらそう呟く。

「だが、貴様は………貴様達だけはっ!」

カオスは怒りの表情で輝二を睨んだ。

「前も思った………お前が俺と輝一を憎む理由は何だ?」

輝二はそう問いかける。

すると、カオスは一旦俯き、

「…………俺は……貴様達の偽者ではない!!」

そんな叫びと共に襲い掛かってきた。

「何?」

輝二はエクスキャリバーを大剣で受け止める。

「貴様に分かるか!? ルーチェモンに貴様たちの偽者呼ばわりされ続けてきた俺に気持ちがっ!!」

カオスは、鍔迫り合いになりながらそう言葉を吐く。

「俺はっ……俺はっ……!」

「お前はカオスだろ!」

「ッ!」

カオスの言葉に、輝二は叫ぶ。

「お前は俺でも輝一でもない! お前はカオスという1つの命だ!」

輝二はそう言葉を投げる。

その言葉を聞いたカオスは、

「………ッ! そんな事は分かっている!!」

力を込めて輝二を弾き飛ばす。

「ぐっ!」

「とーさま!」

壁に叩きつけられた輝二にリィンが叫ぶ。

「俺は源 輝二でも、木村 輝一でもない! 俺はカオスだ! そんな事は貴様に言われなくても分かっている!!」

カオスは壁に叩きつけられた輝二に向かって、ヘブンズナックルを放つ。

「ぐうっ!」

輝二は声を漏らすが、倒れないように踏ん張る。

「だが、頭で分かっていても、どうしようもない感情というものはある!!」

カオスは再びエクスキャリバーを構え、輝二に突きつける。

「そうだ! これは単に行き場の無い俺の感情を貴様達にぶつけているだけ………ただの俺の八つ当たりだ!!」

カオスはそうハッキリと言った。

カオスの本心を聞いた輝二は、

「そうか………ならばお前の感情、全て俺にぶつけて来い! 気が済むまで付き合ってやる!!」

輝二がそう叫び、

「リィン!!」

輝二はリィンを呼んだ。

「はいです!」

リィンは輝二に向かって飛び、

「「ユニゾン・イン!!」」

2人は光に包まれユニゾンする。

『Ancient form.』

そして、ヴォルフフォームとガルムフォームの全ての特徴を取り入れた、エンシェントフォームとなった。

輝二は両手に持った大剣を構え、

「来いっ! カオス!!」

カオスに向かって叫んだ。

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

カオスは輝二に向かって突進し、

「はぁあああああああああああっ!!」

輝二もまた迎え撃った。





「うわぁっ!」

スバルが吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。

「スバル!」

ブリザーフォームの友樹がすぐにスバルを守るように立ちはだかる。

その先に居るのはギンガ。

友樹は手に持っていた戦斧を振りかぶり、

「アラヴァンチスロー!!」

ギンガに向かって投げつける。

ギンガは、その飛んでくる戦斧をプロテクションで弾く。

すると、

「でぇえええええええい!!」

友樹がもう片方の戦斧を両手持ちして振り下ろす。

だが、ギンガはすぐにブリッツキャリバーを逆回転させ、その戦斧の攻撃範囲から逃れた。

「スバル! しっかり!!」

友樹はギンガから視線を外さずにスバルに声をかける。

スバルは立ち上がるが、少しふらついた。

実は、先ほどからスバルは、ギンガに対して一撃も入れることが出来ていない。

確かに実力差もあるだろう。

だがそれ以上に、スバルの心に問題があった。

スバルは元々優しい性格であり、操られているとはいえ、姉であるギンガに対して攻撃することを戸惑っていた。

以前のようなお互いの力を試しあう模擬戦、もしくは試合であったならば、スバルも力を出し切れていただろう。

だが、お互いを傷つける真剣勝負という事が、スバルの攻撃に無意識だが躊躇を与え、その隙を突かれてギンガに反撃を受けている。

友樹も、それに気付いていたので、自分が前に出ているのだが、如何せん明らかにスピード負けしているので、攻撃が当たらない。

もし当たっても決定打には程遠く、ジリ貧の状態であった。

友樹も、ギンガを止めるには同等のスピードを持つスバルの力が必要不可欠という事は分かっているのだが、スバルが迷いを無くさない限り、それも難しい事だと理解していた。

だが、それでも友樹の眼には諦めの色はない。

スバルが、自分の迷いを振り払う事を信じて。








その頃、拓也が入院している病院では、避難勧告が出されているため、医師や看護師達が患者達を優先的に避難させていた。

そんな中、モニターでやっているゆりかごのニュースを、ボーっとした表情で見つめるベッドに横になった拓也の姿があった。

「起きたか?」

その言葉に、拓也が首を横に向けると、所々に包帯を巻いたザフィーラの姿。

「たった今だけどな」

拓也は上半身を起こす。

「身体に何処か異常は無いか? 怪我自体はたいした事は無かったが、長い時間水中に沈んでいた。 脳に異常が出ても不思議ではないほどな」

ザフィーラの言葉を聞き、拓也は身体の間接を一つ一つ確かめるように動かす。

「いや、特に問題はないみたいだ。 ところで、俺はどの位眠っていたんだ? それから、ルーチェモンは!?」

拓也は気になる事を問いかける。

「あの日から今日で丁度一週間だ。 ルーチェモンは、真にふがいない事だが、目的のヴィヴィオを連れ去り、そのまま行方知れずだ」

「連れ去られた!? ヴィヴィオが!?」

ザフィーラの言葉に、拓也は驚愕する。

「そして、今現在、新たな事件が起こり、動ける六課メンバーは全員出動している」

「ッ!? こうしちゃいられねえ。 俺も!」

拓也はベッドから降りて立ち上がる。

本当にこれといった異常は無いようで、動きに不自然な点はない。

そして、傍らにあったサラマンダーを引っ掴むと、

「はやて! 聞こえるか!」

はやてに通信を繋いだ。

『あっ! 拓也さん! 目が覚めたんですか!?』

いきなりの拓也からの通信にはやてが驚きながらそう返す。

「ああ。 寝坊してすまん! 俺はすぐに出れる! 何処に行けばいい!?」

拓也は、そう叫びながら問いかける。

『そんなら、私らの所に来てください! 今は少しでも戦力が欲しいんです!』

「分かった! すぐに………」

はやての言葉に、拓也はすぐに向かうと答えようとした時、

『待ってください!』

別行動のシャマルから、割り込みの通信が入る。

「シャマル?」

『どうしたんや、シャマル?』

はやてがシャマルに尋ねると、

『拓也君ですけど、フェイトちゃんの応援に行かせてあげてください』

シャマルはそう提案する。

『何でや? 確かに六課からはフェイトちゃんがスカリエッティのアジトに単独で向かっとるけど、向こうには聖王教会の騎士達がおる。 戦力的には問題ないで。 もし理由がシャマルの私情やったら、それは許可できん。 今はゆりかごの方に少しでも戦力が必要なんや』

はやてはそう言って、シャマルの提案を却下しようとした。

すると、シャマルは通信越しにチラリと拓也の方を見るとすぐにはやてに視線を戻し、

(実は…………)

拓也に聞こえないように、はやてに念話を飛ばした。

その瞬間、はやての顔が驚愕に染まっていき、口を開いて固まった。

正に、開いた口が塞がらない状態だ。

『な……ななな…………』

はやては、上手く回らない口を必死に動かし、

『なんやってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!???』

ゆりかご戦域全体に響き渡り、必死に戦っていた魔導師が固まるような大絶叫を発した。

『シャマル!! 今の話は本当なんかっ!?』

はやては血相を変えてシャマルに問いかける。

『はい………』

シャマルは小さく頷く。

『んなっ……!? フェ、フェ、フェ…………フェイトちゃんのドアホーーーーーーーーーーーーーッ!!!! 何でそんな大事な事黙っとるんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

はやては、感情のまま叫ぶ。

すると、すぐに拓也に向き直り、

『拓也さん!! 作戦変更!! すぐにフェイトちゃんの救援に向かってや!!』

先ほどと違う命令を出した。

「いや、でも、はやての所もやばいんだろ?」

拓也は、先ほどとは違う指示に、そう発現するが、

『ガタガタ抜かしとらんでサッサと行くっ!! ヴィヴィオの事は、なのはちゃんと信也君に任せとけばいいんや!!』

「お? おおっ!?」

凄まじいはやての剣幕に頷く事しか出来なかった。

拓也は、慌てて病室から駆け出る。

拓也が居なくなった後、

『ったく、フェイトちゃんは帰ってきたらたっぷりと説教やな』

はやてはそう漏らしたのだった。







次回予告


ゼストの地上本部侵入を許してしまうシグナムと輝一。

ゼストは親友との再会を果たすが、そこには非情な結末が待っていた。

アギトとの約束を守るため、ゼストは最後の力を振り絞り、フェイトの救援の為に急ぐ拓也の前に立ち塞がる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十三話 拓也VSゼスト! 偉大な騎士の最期!!

今、未来への翼が進化する。




あとがき


生きる意味の方でも書きましたが、先ずは地震で亡くなった方の冥福をお祈りします

被災した方々も、苦しいでしょうが頑張ってください。





第二十二話の完成。

決戦の中盤ですね。

アニメに比べると、ゼストのイベントが早いです。

そうしないと、置いてきぼりくらいますからね。

さて、次回はいよいよ拓也のエンシェントフォームが?

次もがんばります。





[8056] 第二十三話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/20 18:11

第二十三話 拓也VSゼスト! 偉大な騎士の最期!!



地上本部へ向かったゼストを追う輝一とシグナムだが、ガジェットの大群に足止めを喰らっていた。

「うぉおおおおおおっ!!」

「はぁああああああっ!!」

輝一の槍と、シグナムの剣がガジェットを貫き、切り裂く。

「くっ! 騎士ゼストが地上本部に突入したぞ!」

確認した輝一が叫ぶ。

「何っ!?」

シグナムが振り返る。

「くそ! 魔力を消費するが仕方ない! シグナム、離れていろ!!」

輝一の言葉に、シグナムは離れる。

輝一は槍を掲げ、

暗黒定理シュバルツ・レールザッツ!!」

自分を中心に巨大な闇の球体を作り出す。

それに飲まれたガジェットは次々と破壊され、輝一達を足止めしていた編隊は全滅した。

「はぁ……はぁ……」

輝一は、軽く息を吐き、

「流石に……魔法で物理法則を無効化すると、かなり疲れるな………」

そう漏らした。

「大丈夫か、輝一?」

シグナムが寄って来る。

「ああ。 少し疲れただけだ。 問題ない」

輝一は直ぐに顔を上げると、

「行こう! 騎士ゼストを追うんだ」

そう言って地上本部へと向かった。





一方、スカリエッティのアジトに侵入したフェイトとシャッハは、人間が入ったカプセルがある通路に出ていた。

「これは……人体実験の素体?」

シャッハがカプセルに入った人間を見てそう漏らす。

「だと思います………人の命を弄び、唯の実験材料として扱う。 あの男がしてきたのは、こういう研究なんです」

フェイトは、怒りを押さえ込むような表情でそう言った。

「一秒でも早く、止めなければなりませんね」

「はい」

シャッハの言葉にフェイトが頷く。

その時だった。

――ズズゥン

衝撃が響く。

上を見ると、ガジェットⅢ型が落下してこようとしていた。

「「ッ!?」」

2人は咄嗟に飛び退こうとしたが、床からセインが現れ、シャッハの足を掴み、その場で動けなくする。

「シスター!」

フェイトは叫んで助けようとしたが、横からブーメランのような刃が迫ってきた。

「くっ!」

フェイトは、ザンバーを盾の様にして、その刃を弾く。

そして、ガジェットⅢ型が落下してくる寸前、

「はぁあああああああっ!!」

シャッハは、カートリッジを一発ロードすると共に、ウィンデルシャフトで床を殴りつけた。

――ドゴォォォン

と、床は砕け、シャッハはセインと共に下の階層へ落下する。

(シスター!?)

フェイトはシャッハへ念話を送る。

(フェイト執務官! こちらは無事です。 大丈夫……戦闘機人を一機捕捉しました。 この子を確保次第、直ぐに其方へ合流します)

「了解しました」

フェイトは、シャッハの言葉を信じ、刃が飛んできた通路の奥へ視線を向ける。

奥から、トーレとセッテが歩いてきた。

「フェイトお嬢様………」

トーレの言葉に、フェイトは嫌悪感を露にする。

「こちらにいらしたのは、帰還ですか? それとも、反逆ですか?」

トーレの言葉に、

「どっちも違う……」

フェイトはバルディッシュ・ザンバーを構えなおし、

「犯罪者の逮捕……それだけだ!」

フェイトはそう言い放った。




地上本部へ突入したゼストを追って、輝一とシグナムは廊下を走っていた。

シグナムは足を怪我しているので、輝一に肩を貸してもらっている状態ではあるが。

すると、通路の先に結界が張ってある。

その前に、アギトが手を横に広げて立ち塞がっていた。

「ここから先は、通行止めだ!!」

アギトは叫ぶ。

「旦那は、酷い事なんてしねぇ! ただ、昔の友達と話をしたいだけなんだ! 旦那には……もう、時間がねぇんだ! だから………そいつを邪魔するってんなら!!」

そう叫ぶアギトの前に、輝一が歩み出ると、槍を引き、一気に突き出す。

「ッ!?」

アギトが眼を瞑ると、

――バキィン

結界が砕け散った。

「こちらは元々、話を聞くつもりだと言った筈だ」

輝一が構えを解きながらそう言った。

「事件の根幹に関わる事なら、尚更な………聞かせて貰わねばならん」




アギトを説得し、共に先を急いでいると、

――ドガァァァァン

突然破砕音が聞こえてきた。

「「「ッ!?」」」

3人が急いでレジアスの司令室に入ると、そこには部屋の隅で気絶しているオーリス。

机の上で胸から血を流し倒れているレジアス。

胸を貫かれた戦闘機人と思わしき女性。

そして、血塗れの槍を持ったゼストが立っていた。

「旦那………」

アギトがなんともいえない雰囲気で声をかける。

「これは………貴方が?」

シグナムが、ゼストに確認するように問いかける。

「そうだ……俺が殺した……」

ゼストはその問いに肯定の意を示す。

「俺が弱く、遅すぎた………」






ルーテシアを止める為に、キャロは必死に呼びかけていた。

「何のために戦っているのか、それだけでも教えて!?」

地上でも、エリオがガリューを抑えている。

「願いとは……僕達は君達を本当に!」

泉も、無数のインゼクトの群れを相手にしている。

「ちゃんとハッキリと、言葉にして言ってみて!」

3人の言葉にルーテシアは、

「ドクターの……お願い事だから………」

そうポツリと呟くと、周りに浮遊していたインゼクトを魔力弾として撃ちだす。

「ッ! ウイングシューター!!」

キャロも迎撃のために魔力弾を放つ。

互いに着弾して爆発がおき、2人は近くのビルの屋上に着地する。

「ドクターは私の探し物、レリックの11番、それを探す手伝いをしてくれる。 だから、ドクターのお願いを聞いてあげてる………」

ルーテシアは、小さい声ながらもそう言った。

「そんな……そんな事の為に……?」

キャロがそう呟くと、

「そんな事?」

ルーテシアは再びインゼクトを放つ。

キャロは障壁を張って防いだ。

「貴方にとってはそんな事かもしれないけど、私にとっては大事な事………」

「はぁ……はぁ……違う違う! 探し物の事じゃなくて!」

「ゼストももう直ぐ居なくなっちゃう。 アギトもきっと、どこかへ行っちゃう。 でも、このお祭りが終われば、ドクターやウーノ達皆で、11番を探してくれる。 そしたら母さんは帰ってくる。 そうしたら私は、不幸じゃなくなるかもしれない」

「違う! それ違うよ!!」

キャロは必死に呼びかけるが、

「あなたと話すの……嫌い」

ルーテシアがそう告げた瞬間、キャロの後ろにガリューが現れ、爪の付いた腕を振り上げる。

「はっ!」

キャロがその事に気付くが、対処が間に合わない。

だが、

「はぁああああああっ!!」

エリオが間一髪間に合い、ガリューを弾き飛ばす。

しかし、ガリューが構えると魔力弾を放った。

「なっ!?」

――ドゴォォン

爆発に飲まれる2人だが、何とか直撃は避ける。

「違うんだよ……幸せになりたいなら、どんなに自分が悲しくて不幸でも、人を傷つけたり、不幸にしちゃ駄目だよ! そんなことしたら、欲しいものも幸せも、何も見つからなくなっちゃうよ!」

キャロは、説得を続ける。

「私! アルザスの竜召喚師! 管理局機動六課の魔導師! キャロ・ル・ルシエ!」

キャロがそう名乗ると、

「同じくエリオ・モンディアルと……飛竜フリードリヒ!」

エリオがそう名乗り、フリードが咆える。

すると、一時的にインゼクトを振り切った泉が飛んできて、

「序に私は民間協力者の『風』の属性特化型魔導師、織本 泉!」

そう名乗った。

「話を聞かせて! レリック探しも、あなたのお母さん探しも! 私達が……機動六課の皆が手伝うから!!」

キャロは切なる叫びで問いかける。

「あなたの名前を!」

キャロの叫びに、何か感じるものがあったのか、ルーテシアは動きを止める。

その時だった。

『あらら~~。 駄目ですよルーテシアお嬢様ぁ~~。 ガリューさんも。 戦いの最中、敵の言う事に耳なんか貸しちゃいけません』

突如モニターが開き、ゆりかごに居るクアットロが通信を繋げて来た。

『邪魔なものが出てきたら、ぶっち殺して罷り通る。 それが私達の力の使い道。 ルーお嬢様にはこの後ぉ、市街地ライフラインの停止ですとかぁ、防衛拠点のぶっ潰しですとかぁ、色々お願いしたいお仕事もありますしぃ♪』

クアットロは、楽しそうな笑顔を作ってそう言う。

「クアットロ……でも……」

ルーテシアのその言葉に、

『あ~~迷っちゃってますね? 無理も無いです。 純粋無垢なルーテシアお嬢様にそこのおチビの言葉は毒なんですね。 というわけで、ポチッと』

クアットロが、ゆりかごでパネルを操作すると、

「ッ!?」

ルーテシアの様子が変わり、ルーテシアの足元には戦闘機人と同じテンプレートが浮かび上がる。

それと同時に、次々と召喚陣が浮かび上がり、そこからインゼクトと地雷王が姿を現す。

「ルーちゃん………」

「ガリュー! これは……?」

キャロとエリオが声を漏らす。

『ルーお嬢様が迷ったりしないようにしてあげまぁす。 ドクターが仕込んでくれた、コンシデレーションコンソールで、誰の言う事にも聞く耳を持たない無敵のハートをプレゼント♪』

クアットロがパネルを操作し終わると、

『ルーお嬢様ぁ、聞こえますかぁ? 目の前に居るのがお嬢様の敵でぇす。 全力でぶち殺さないと、お母さんと会えませんよぉ?』

クアットロの人をバカにしたような物言いに、

「このぉ………!」

エリオが怒りの声を漏らす。

「………インゼクト……地雷王……ガリュー………」

ルーテシアが呟く。

「……こいつらを……殺して……」

ガリューたちは一瞬たじろぐが、

「………殺してぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

ルーテシアの叫びに一気に臨戦態勢に入る。

「ガリュー!」

エリオは呼びかけるが、ガリューは構える。

キャロも、周りを浮遊するインゼクトに動揺するが、ルーテシアの瞳から零れた涙に、何かを決意した表情になった。






地上本部では、佇むゼストにシグナムが問いかけた。

「同行を願います」

だが、

「断る」

ゼストは否定した。

「私の命も、もう長くは無い。 故にこの命が尽きる前に、最後の約束を守らねばならん」

「約束?」

ゼストの言葉に、シグナムは声を漏らす。

ゼストはアギトを見ると、

「アギトのロード………『炎』の属性特化型魔導師の少年を探さねばならん」

「『炎』の属性特化型魔導師の少年……」

「いや、私が会ったのは既に10年も昔の話だ。 今は青年となっているな………」

ゼストは歩き出す。

すると、輝一が口を開いた。

「………拓也は……俺の仲間の、『炎』の属性特化型魔導師は、現在ミッドの病院からスカリエッティのアジトに向かって一直線に移動中だ。 ここからなら、ギリギリ追いつけるだろう」

ゼストはその言葉を聞くと立ち止まり、

「感謝する。 行くぞ、アギト」

「旦那………」

礼を言って、アギトを伴い部屋を出る。

「輝一………」

「すまないシグナム。 でも……」

「言わずとも分かっている。 私達も行くぞ。 この戦いを見届けてやらねば」

「ああ」

2人も、ゼストの後を追った。







スカリエッティのアジトでは、フェイトが2体の戦闘機人を相手に戦っていた。

だが、AMFの影響で、状況は芳しくない。

更にフェイトはアジト制圧後のことも考えており、切り札も使えないでいた。

すると、突然フェイトの前に通信用のモニターが開く。

そこに映っていたのは、スカリエッティだった。

『やあ、ごきげんようフェイト・テスタロッサ執務官』

「スカリエッティ!!」

フェイトは思わず叫ぶ。

同時に、ルーテシア達と対峙していたエリオ達の下にも通信が繋がった。

『私の作品と戦っているのは、Fの遺産と竜召喚師、後は『風』の属性特化型魔導師……聞こえているかい?』

その言葉に、エリオ達がスカリエッティに気付く。

『我々の楽しい祭りの序章は、今やクライマックスだ』

その言葉に、

「何が楽しい祭りだ! 地上を混乱させてる、重犯罪者が!!」

フェイトは思わず叫んだ。

『重犯罪? 人造魔導師や戦闘機人計画の事かい? それとも私がその根幹を設計し、君の母君プレシア・テスタロッサが完成させた、プロジェクトFの事かい?』

スカリエッティは、参ったと言わんばかりに手を横に上げつつそう言った。

「全部だ!」

フェイトはそんなスカリエッティの仕草にイラつきながらもそう答える。

『何時の世でも、革新的な人間は虐げられるものだな』

「そんな事で、人の命や運命を弄んで………」

『貴重な材料を無差別に破壊したり、必要もなく殺したりはしていないさ。 尊い実験材料に変えてあげたんだよ。 価値の無い、無駄な命を!』

その言葉で、フェイトの顔が怒りに染まった。

「ッ!! このぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

バルディッシュ・ザンバーに更なる電撃が宿り、フェイトはそれを振り上げる。

「来る!」

「はい!」

トーレとセッテが身構える。

その時、モニターのスカリエッティが指を弾く。

すると、フェイトの足元から赤い魔力糸が発生する。

フェイトは飛び上がって避けようとしたが、その糸が足に絡まり、ザンバーの刀身も縛り上げる。

「くっ……」

フェイトは思わず声を漏らす。

すると、足音が聞こえ、フェイトが其方を向くと、

「はっ」

スカリエッティがこちらに歩いて来た。

「クックック………フハハハハハ………普段は温厚かつ冷静でも、直ぐに我を見失う」

スカリエッティはそう言うと共に、手袋のようなデバイスをつけた右手を握り締める。

すると、刀身を縛り付けていた赤い糸の拘束力が増し、そのまま刀身を砕いた。

「なっ!?」

その事に、一瞬気を取られる。

その瞬間、フェイトに向けたスカリエッティの右手から魔力弾が放たれた。

「しまっ………」

魔力弾がフェイトに迫る。

だが、その一瞬の間に、フェイトは咄嗟に身体を捻り、魔力弾を腕や肩辺りで受け、胴部へのダメージを最小限にする。

そのままフェイトは落下するも、何とか受身を取る。

しかし、フェイトの周りから赤い糸が多数発生し、檻のようにフェイトを閉じ込めた。

「君のその性格は、正に母親譲りだよ。 フェイト・テスタロッサ」

『フェイトさん!』

モニターに向かってエリオが叫んだ。

スカリエッティは、フェイトを観察するように見つめると、

「だが、少し解せない」

突然そんな事を言った。

「先ほどから観察していたが、幾らAMF下とはいえ、君の動きが鈍すぎる」

「ッ!?」

フェイトは、その言葉に、僅かだが動揺する。

「先ほど私の攻撃を受けたときも、無理矢理身体を捻って胴体へのダメージを減らしていた………」

スカリエッティは、額に指を当て、その理由を考えていく。

「怪我? 違うな、君がそのような怪我をしたという情報は入っていないし、君の性格を考えれば、そんな事で怯むとは思えない………この私を前にしても、胴体……腹部を庇う理由…………」

スカリエッティは、眼を瞑って思考の海に没頭する。

すると、何か閃いたのか眼を開けた。

そして、

「………クックック」

突如スカリエッティは笑い出す。

「………クハハハハハハッ!………ハーッハッハッハッハッハ!!」

顔に手を当てたまま、天を仰ぐように大笑いする。

「ドクター? 如何したのですか?」

スカリエッティの笑う理由が分からないのか、トーレは不思議そうな顔をしながらスカリエッティに声をかける。

すると、スカリエッティは、

「クククク………すまないトーレ。 だが、これを笑わずにいられるものか………」

少し自分を落ち着かせるようにそう言いつつ、顔に手を当てたまま、腹を抱えるような仕草をする。

そして、顔を上げると共に指の隙間からフェイトを歪んだ笑みで睨み付けると、

「ククク………子を成したのだな!? フェイト・テスタロッサ!?」

驚愕の一言を放った。

「ッ!?」

その言葉に、フェイトは激しく動揺する。

『『『ッ!?』』』

モニターの向こう側でも、エリオ、キャロ、泉の3人が驚愕する。

「フフフ………君のその反応を見るに、どうやら図星のようだね?」

フェイトの動揺で、自分の仮説が間違っていない事を確信するスカリエッティ。

『そんな………フェイトさんに子供が………』

キャロが、

『フェイトさん………そんな身体でスカリエッティの所に………』

エリオが、

『誰の子供………って、そんなの決まってるわね』

泉が、驚きと心配の声を漏らす。

「素晴らしい…………素晴らしいよ君は! 作られた存在でありながら、人と交わり、子を成した!!」

スカリエッティは、歪んだ笑みのまま嬉しそうな声を漏らす。

「最高だ……! 最高のサンプルだよ! 君も! その子も!!」

スカリエッティのその様子に、本能的に恐怖を感じるフェイト。

「…………タクヤ」

自然と、思わず拓也の名が零れ出た。






その頃、拓也はスカリエッティのアジトに向けて飛行していた。

すると、視線の先に森が見えてくる。

「森………もう直ぐか!」

拓也は気合を入れなおすように叫び、先を急ごうとする。

しかし、

「ッ!?」

視線の先に人影が立ちはだかる。

拓也がその場で停止して確認すると、その人影はゼストだった。

傍らにはアギト。

そして、輝一とシグナムが居た。

「輝一? 一体如何したんだ?」

拓也が輝一に問いかける。

「拓也、頼みがある。 この人と戦ってくれ」

輝一は拓也にそう言う。

「えっ?」

拓也はゼストに向き直ると、

「久しぶりだな………私を覚えているか? あの時の少年」

ゼストにそう言われ、拓也はゼストをじっと見つめる。

そして、軽く驚いたような顔をした後、

「ゼスト………グランガイツさん………?」

拓也は、確認するように問いかけた。

「覚えていてくれたか。 それならば話は早い。 構えろ少年」

そう言って、ゼストは槍を構える。

「旦那!」

アギトはゼストを止めようとする。

「止めるなアギト。 私の命は間も無く尽きる。 故にその前にこの少年がお前を託せるに相応しいか、確かめねばならん!」

「ゼストさん………」

「少年よ。 いきなりこんな事を言われて戸惑うかもしれん。 だが……」

「いや、言わなくて良い。 少なくとも、半端な覚悟で俺の前に立ったわけじゃない事は、眼を見れば分かる。 それならば、相手をしないわけにはいかない!」

拓也はそう言う。

「そうか……」

ゼストは、若干だが嬉しそうな顔をした。

「だが、俺も先を急いでる。 時間をかけるわけには行かない。 だから、最大の一撃で来い! 俺も最大の一撃で受けて立つ!」

拓也はそう言い放った。

ゼストは笑みを浮かべ、

「良かろう! 元よりこの身体では長くは戦えん! それならば、渾身の一撃をもって見定めさせてもらう!!」

ゼストは、槍を構え、残ったカートリッジを全てロードする。

『フルドライブ!』

ゼストの槍も、フルドライブ状態となった。

一方拓也は地上に降りる。

「サラマンダー、カイゼルグレイフォーム!!」

『Yes. My lord.  KaiserGrey form.』

拓也は炎に包まれ、カイゼルグレイフォームとなる。

更に龍魂剣を地面に突き刺し、八方向から炎の龍が発生した。

しかし、そこから今までとは違い、拓也が剣を引き抜き、剣を掲げると、8匹の龍がその剣に集う。

龍魂剣に凄まじい炎が凝縮され、龍魂剣の刀身が真っ赤に赤熱する。

「少年……いや、名を聞こうか?」

激突の前に、ゼストが尋ねてきた。

「拓也……神原 拓也だ」

拓也は名乗る。

「そうか……ならば往くぞ! 神原 拓也!!」

「かかって来やがれゼスト・グランガイツ!!」

拓也は空中のゼストを見上げ、地を蹴った。

その瞬間9匹目の龍が拓也に纏わり付き、拓也の動きを更に加速させる。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

空中から、ゼストが落下スピードもプラスして突撃してくる。

「はぁあああああああああああああああっ!!」

拓也は剣を振りかぶる。

「九頭龍………」

ゼストも槍を引いた。

「はぁぁぁ………」

そして、

「……一閃!!!」

「……でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

激突した。

――ドゴォォォォォォォォォォォォッ!!

2人の激突は、凄まじい衝撃を辺りに撒き散らす。

木々はへし折れ、地面は抉られ、雲は吹き飛ばされる。

「うぉおおおおおおおっ!!」

「ぬぅぅぅぅぅぅぅんっ!!」

龍魂剣の刀身とゼストの槍の切っ先がぶつかり合っている。

2人の威力は互角に思えた。

だが、

――ビシィ!

ゼストの槍に罅が入る。

その罅がどんどん槍全体に広がっていき、

「はぁああああああっ!!」

拓也の更なる気合と共に、切っ先から龍魂剣によって砕かれていく。

「………見事だ」

ゼストのその呟きとともに、拓也の龍魂剣がゼストの身体を切り裂いた。

その瞬間、

「ッ、旦那ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

アギトの叫びが響いた。



地面に横たわるゼスト。

「っく……ひっく……旦那ぁ………」

その横で泣きじゃくるアギト。

その様子を近くで見下ろすアルダフォームの拓也と輝一とシグナム。

すると、拓也はゼストに近付くと、

「悪いが、俺には護るべき者がいる。 だから、貴方の死を看取る事は出来ない」

「ああ。 騎士ゼストの死は、私達が看取る」

「だから、お前は早く行け。 悪かったな、俺達の我侭に付き合ってもらって」

シグナムと輝一はそう言った。

拓也は、ゼストに背を向けると、

「アギト、如何するかは俺が戻ってきてからお前が決めろ。 俺を恨んでくれても構わない。 例えそうなったとしても、俺は逃げも隠れもしない」

アギトにそう言い、飛び立とうとした。

だが、

「待てよ!」

アギトが拓也を呼び止めた。

アギトは、涙を拭いながら、

「旦那は……アタシをお前に託した……お前は、旦那の想いに真っ向から応えて、そして旦那に騎士らしい最期を与えてくれた………だから……アタシはお前と行く!」

拓也は、軽く驚いた顔で振り返る。

「いいのか?」

拓也は、ゼストの最期を看取らなくていいのかと尋ねた。

すると、

「旦那は……最期までアタシの心配をしてくれた……だから、これ以上情け無い姿を見せて、旦那に心配させたまま逝って欲しくねえんだ!」

アギトは涙を拭って手を差し出す。

「旦那には、アタシの立派な姿をその眼に焼き付けて逝って欲しい」

拓也はアギトの眼を見て、その覚悟を悟る。

「わかった……」

拓也も、アギトに向かって手を差し出す。

アギトは拓也の手に振れ、

「「ユニゾン・イン!!」」

光となってユニゾンした。

拓也の髪が金髪となり、瞳の色が赤に変わる。

その瞬間、凄まじい火柱が拓也を覆う。

『Form change.』

拓也のバリアジャケットが炎と共に形を変える。

輝二のエンシェントフォームと同じく、アグニフォームとヴリトラフォームの特徴を全て取り入れ、腕のルードリー・タルパナは肩へ移動し、背中の羽は一回り大きくなり、炎が燃え盛っている。

これがアギトとユニゾンした拓也の新たなる力。

『Ancient form.』

拓也は、ユニゾンした自分の身体を確認するように見下ろす。

「すげぇ……身体中が熱い……力が漲ってくる」

拓也は、ゼストに向き直ると一礼した。

そして、再び踵を返す。

「行くぞ! アギト!!」

『応よ!』

拓也は飛び立つ。

それを見送る輝一とシグナム。

そしてゼスト。

ゼストは、限界の身体を何とか動かし、

「俺が知る限りの事件の真相は、ここに収めてある」

右手の指輪型のデバイスを見せながらそう言った。

「お預かりします」

シグナムがそれを受け取る。

すると、ゼストは空を見上げる。

「いい空だな」

「はい」

「俺とレジアスが守りたかった世界………お前達は、間違えずに進んでくれ………」

ゼストは、霞み始めた目で、遥か遠くを飛ぶ拓也の姿を見つめた。

「往け、アギト………お前のロードと共に………」

ゼストはそう呟き、息を引き取った。

輝一とシグナムは、ゼストを地面に寝かせ、黙祷を捧げた。




『ッ!?』

「如何した? アギト」

拓也は、アギトの動揺を感じ取り、尋ねる。

『旦那が……旦那が逝っちまった………』

アギトが、泣きそうな声でそう言った。

「………そうか」

『………でも、今は泣かねえ! 泣くのは全部が終わってからだ!!』

アギトは、気丈にもそう言って、気力を奮い立たせる。

すると、拓也の進行方向、スカリエッティのアジト周辺に、無数のガジェットが姿を現す。

「聖王教会の騎士が頑張ってる筈だけど、まだこれだけの数がいるのか…………」

拓也は、ガジェットの大群を見てそう漏らす。

『こっちに向かってるのは、約200機。 如何するんだ?』

アギトの問いに、拓也は笑みを浮かべ、

「決まってる。 全部吹っ飛ばす。 今なら出来るはずだ! 俺と、お前なら!!」

その言葉を聞くと、アギトも笑みを浮かる。

『へっ、上等! やってやろうじゃねえか!!』

アギトもそう言って乗り気だ。

「行くぞ!!」

拓也は炎を纏ってガジェットの大群に突撃する。

「『うおおおおおおおっ!!』」

炎を纏った拓也は、一直線にガジェットの大群を貫いていく。

そして、ガジェットの群れの中心部分に来ると、そこで停止し、

「『はぁぁぁぁぁぁぁ……………』」

魔力を身体に集中させる。

その間にも、ガジェットから次々と攻撃が来るが、拓也はものともしない。

そして、次の瞬間、拓也は両手両足を思い切り広げ、

「『オメガバースト!!!』」

その叫びと共に自分を中心に超爆発を起こした。

その爆発範囲は半径1kmを超え、範囲内にいた全てのガジェットを跡形もなく吹き飛ばす。

そして、爆発の中心部分にいた拓也は勿論無傷である。

「凄いな……これほどの力が出せるなんて………しかも、まだまだ余裕がある……」

拓也はユニゾンの凄さを実感していた。

『(旦那……旦那の眼は間違っていなかった………アタシは行くよ。 新しいロード、拓也と一緒に! だから旦那! 見守っててくれ!)』

アギトはゼストに別れを告げると共に、拓也と共に行く事をここに誓った。

「行くぞ! 相棒!」

『応よ!!』

拓也の言葉にアギトは応え、拓也はスカリエッティのアジトを目指した。






次回予告


玉座の間に突入する信也となのは。

戦闘機人と戦い続ける機動六課。

戦いの行方は!?

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十四話 Stars Strike

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第二十三話の完成。

さらばゼストの回でした。

さて、拓也もアギトが仲間になったことでエンシェントフォームになりました。

こっちのオメガバーストは公式仕様。

敵味方関係ないので、単独でしか使えませんね。

あと、やっと公言しましたフェイトの妊娠。

この最終決戦の前にフェイトを妊娠状態にした理由の1つが、今回のスカさんの反応が書きたかったからです。

いや、だってスカさん喜ぶでしょ?

多分………

ともかく、次も頑張ります。




[8056] 第二十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/04/03 19:35

アギトをゼストから託され、新たな力を手にした拓也。

その頃、フォワード陣は………



第二十四話 Stars Strike



ゆりかごの内部で、信也となのはは玉座の間を目指していた。

「ドラゴンインパルス!!」

「ACSドライブ!!」

2人は、突進系の攻撃で、目の前に立ちはだかるガジェット達を粉砕していく。

『玉座の間までもうすぐです』

レイジングハートがそう知らせる。

「うん!」

なのはが頷き、2人はスピードを上げる。

2人が曲がり角を曲がると、

「「ッ!?」」

ディエチがへヴィバレルを構えていた。

チャージも完了している。

「信也君避けて!」

なのはが叫んでレイジングハートを構える。

「エクセリオン…………」

魔力がレイジングハートに集中する。

その間に、信也は射線上から退避した。

その瞬間、ディエチが通路を埋め尽くすほどの砲撃を放つ。

「………バスターーーーーッ!!」

なのはも、負けじとエクセリオンバスターを放った。

砲撃同士がぶつかり合う。

だが、僅かだがなのはが押されていた。

「くっ! 少し押されてる!」

なのはがそう漏らす。

その時、

「なのは! そのまま堪えてて!」

信也がそう叫ぶと、砲撃と天井の僅かな隙間を掻い潜る。

「なっ!?」

砲撃の隙間を突破されるとは思ってなかったディエチは驚愕する。

信也は右腕の魔力刃を振りかぶり、

「アルフォースセイバーーーッ!!」

ディエチのへヴィバレルを断ち切った。

「しまっ………」

ディエチは声を上げようとしたが、へヴィバレルの砲撃が途切れた為に、遮るものがなくなったエクセリオンバスターに飲み込まれた。

因みに、信也は一瞬で退避している。

通路に横たわるディエチ。

「抜き打ちで私の砲撃と互角の威力と、僅かな天井の隙間を潜り抜ける判断力と飛行能力…………」

そう漏らした時、バインドがかけられる。

(こいつら………本当に人間か?)

そう思うディエチ。

「ジッとしてなさい。 突入隊が貴方を確保して、安全な場所まで護送してくれる」

「この船は、僕達が停止させる!」

なのはと信也がディエチにそう言うと、先を急いだ。



2人の先に玉座の間の扉が見えた。

砲撃でその扉を破壊し、内部に突入すると、

「いらっしゃ~~い。 お待ちしておりました」

クアットロが人をバカにしたような態度で出迎えた。

クアットロの隣には、玉座に拘束されたヴィヴィオの姿。

「こんな所まで無駄足ご苦労様。 さて、各地で貴方達のお仲間は、たぁいへんな事になっていますよぉ?」

クアットロは、相変わらず癇に障るような物言いでモニターを表示させる。

そこには、苦戦する仲間達の姿。

だが、なのははそれを一瞬見た後、クアットロに視線を戻し、

「大規模騒乱罪の現行犯で、あなたを逮捕します。 すぐに騒乱の停止と、武装の解除を!」

そう警告する。

「仲間の危機と、自分の子供のピンチにも、表情1つ変えずにお仕事ですか? 良いですねぇ、その悪魔じみた正義感」

そう言って、クアットロはヴィヴィオに触れようとした。

「ッ!」

なのはは反射的にレイジングハートを構えるが、信也の手がなのはを制した。

「無駄だよ。 あいつはここには居ない」

信也がそう言うと、クアットロの姿が消える。

立体映像だったのだ。

すると、モニターが開き、クアットロの姿が映る。

『よく気付きましたねぇ。 でもぉ、これでもまだ平静でいられますぅ?』

「……あ……ああっ!」

クアットロがそう言うと、突然ヴィヴィオが苦しみだす。

「「ヴィヴィオ!」」

信也となのはが駆け寄ろうとしたが、

「わぁあああああああっ!!」

ヴィヴィオの叫びと共に、ヴィヴィオの身体中から虹色の魔力が吹き出した。

「くっ!?」

「ううっ!?」

その勢いは凄まじく、2人は押し返される。

『ンフフ………いい事を教えてあげる。 あの時、ケースの中で眠ったまま輸送トラックとガジェットを破壊したのはこの子なの。 あの時ようやく防いだディエチの砲撃。 でも、例えその直撃を受けたとしても、ものともせずに生き残れた筈の能力………それが、古代ベルカの王族の固有スキル『聖王の鎧』。 レリックとの融合を経て、この子はその力を完全に取り戻す。 古代ベルカの王族は、自らその身を作り変えた究極の生態兵器。 レリックウェポンとしての力を………』

ヴィヴィオが泣き叫ぶ中、クアットロはそう淡々と告げる。

「パパッ! ママァーーッ!!」

「「ヴィヴィオ!!」」

ヴィヴィオの言葉に、思わず叫んでしまう2人。

「あっ! パパッ! ママッ! やだぁ!!」

「ヴィヴィオ!」

「ヴィヴィオ! ヴィヴィオー!!」

「わぁああああん!!」

2人はヴィヴィオに近付こうとするものの、吹き荒れる魔力にそれも叶わない。

『すぐに完成しますよ。 私達の王が。 ゆりかごの力を得て、無限の力を得た究極の戦士』

「パパァ!! ママァ!!」

「「ヴィヴィオーーーッ!!」」

「わぁあああああああああああっ!!」

ヴィヴィオの叫びと共に、ヴィヴィオの身体が一層強く光り輝く。

思わず眼を庇う2人。

そして光が収まり、2人が眼を開けると、そこには虹色の魔力に包まれたヴィヴィオの姿。

「……………パパ………ママ………」

『ほら陛下ぁ……何時までも泣いてないで………陛下のパパとママが助けて欲しいって泣いてます………陛下のご両親を攫っていったこわーい悪魔がそこにいます。 頑張ってそいつをやっつけて、本当のご両親を助けてあげましょう? 陛下の身体には、そのための力があるんですよぉ………心のままに……想いのままにその力を解放して………』

「う……うあっ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ヴィヴィオが叫び声を上げると、ヴィヴィオの身体が急激に成長し、17、8歳ほどの姿となり、黒いバリアジャケットを纏っていく。

そして、そのヴィヴィオが眼を開けると、

「貴方達は……ヴィヴィオのパパとママを何処かに攫った………」

2人に向かってそう呟く。

「ヴィヴィオ! 違うよ? 私だよ。 なのはママだよ? しんやパパだよ?」

なのはが訴えるようにそう言うが、ヴィヴィオは恐れるように後ずさる。 

「違う!」

「ッ!?」

ヴィヴィオの言葉が、なのはの心に突き刺さる。

「嘘つき………貴方達なんか………パパとママじゃない!」

ヴィヴィオは、表情を険しくすると、

「ヴィヴィオのパパとママを………返して!!」

その言葉と共に、先ほど以上の魔力が吹き荒れる。

『んふ。 その子を止める事が出来たら、このゆりかごも止める事が出来るかも知れませんねぇ?』

信也は魔力刃を構え、なのははレイジングハートを構える。

『さあ、親子で仲良く、殺し合いを』

玉座の間に、魔力の嵐が吹き荒れた。






結界内に閉じ込められたティアナと、右肩を負傷した純平。

だが、それでも2人は必死に戦っていた。

ティアナの幻術で、2人の姿が複数現れている。

「ふん! だから幻術はもう効かねーって…………」

ノーヴェが、幻術の中に混じる本物の純平を見つけた。

「言ってんだろうが!」

ノーヴェが純平に殴りかかる。

「ぐっ!」

純平は、その一撃を左腕でガードするが、

「そんで、アンタの後ろにいる奴が、本物の幻術使いッス!」

ウェンディがエリアルキャノンで純平の後ろにいたティアナを狙い打つ。

「くぅっ!」

ティアナは、直撃は避けるものの、爆風に煽られる。

床に倒れ、体勢を立て直そうとするが、

「遅い」

ディードがツインブレイズで斬りかかる。

「ちぃっ!」

純平は、何とかノーヴェをやり過ごし、ティアナのカバーに入る。

「ぐっ!」

「純平さん!」

ティアナを庇った純平は、背中でツインブレイズを受けた。

「舐めんなぁ!」

だが、純平は左の拳で地面を殴りつけ、砂煙を巻き起こして身を隠す。

「チッ! また逃げやがった」

ノーヴェが舌打ちしながらそう漏らした。

砂煙が晴れると、そこに2人の姿は無い。

「なかなか、しぶとい」

「でも、応援が来るまで逃げ切られても拙い! さっさと潰して、次行かねーと!」

ディードとウェンディがそう漏らすが、

「心配ねーよ! 時間稼ぎのために、行動がワンパターンになってきてる! 次で仕留めてやる!」

ノーヴェがそう強気な発言をした。

その時、オットーからティアナと純平の位置を示した情報が送られてくる。

「見つけた!」

ノーヴェが笑みを浮かべてそう叫んだ。



一方、一時的に身を隠した2人は、

「はぁ………はぁ………」

「大丈夫ですか? 純平さん」

自分以上に消耗している純平を、ティアナが心配していた。

それもその筈、右腕が使えなくなり、攻撃の手段が少なくなっていた純平は、ティアナの盾役として身体を張っていた。

純平が受けた攻撃の数は、ティアナが受けた攻撃を遥かに超える。

「ヘーキヘーキ。 身体を張るのは男の役目だからな」

純平は強がって笑みを見せる。

「純平さん………」

ティアナも、それに釣られて微笑む。

すると、純平は表情を引き締め、

「ここまでは、ティアナの作戦通りだな」

「はい、思ったとおり、こちらの行動がワンパターンになれば、向こうの行動もワンパターンになっています」

「あいつらの弱点………完璧だけど単純な連携………か。 俺なんて、全然気付かなかったぜ」

「…………でも……私の作戦が通用するかどうか………」

ティアナは暗い表情になり俯く。

「ティアナ?」

純平が声をかけると、

「………本当は、随分前から気付いてたんです………」

ティアナはポツリと呟く。

「私はきっと、どんなに頑張っても、万能無敵の超一流になんてなれないって………」

ティアナは俯きながら続ける。

「悔しくて……情けなくて……認めたくなくて………それは今もあまり変わらないんですけど………」

懺悔のようなティアナの言葉を聞き、

「なあティアナ。 “本当の強さ”って何だと思う?」

そう尋ねた。

「えっ?」

ティアナは、不思議そうな顔で声を漏らす。

「いくら“大きな力”を持っていても、それだけで“強い”っていえるのかな?」

純平の言葉をティアナは黙って聞いている。

「俺は違うと思う………俺が思う“本当の強さ”っていうのは、ここに力がある事じゃない………」

純平はそう言いながら右腕に力瘤を作るような仕草をして、左手でそこを軽く叩く。

それから、左手の親指で自分の胸を指し、

「ここに力があることだ」

そう宣言した。

「どんな状況でも、最後まで諦めない不屈の心。 それが俺が思う“本当の強さ”…………そしてティアナ。 ティアナのさっきの思いは、紛れも無く諦めたくないという不屈の心そのもの」

「純……平……さん………」

「ティアナ。 お前は本当に“強い”よ」

純平の言葉に、ティアナの眼に涙が滲む。

その時、

『発見されました。 3方向から接近してきます』

クロスミラージュが、戦闘機人の接近を知らせる。

純平は気を取り直し、

「来るぞ! ティアナ!」

気合を入れて構える。

すると、

「……ティアです」

ティアナが呟いた。

「え?」

純平は突然呟かれた言葉に声を漏らす。

「ティアって、呼んでください………」

ティアナは、僅かに頬を染めつつ、そう呟いた。

純平は一瞬驚くが、すぐに微笑を浮かべ、

「分かった……やるぞ! ティア!!」

「はい!!」

壁を破壊して現れた戦闘機人を迎え撃った。





一方、ギンガと戦っていた友樹とスバルは、

「ぐっ……」

友樹は壁に叩きつけられており、

「あ……ぐ………」

スバルは、ギンガに首を掴まれ、宙吊り状態であった。

「抵抗を止めて、動作を停止しなさい」

ギンガがスバルに警告するように告げる。

「……ッく!!」

スバルは、何とかギンガの襟元と腕を掴んで投げ飛ばそうとするが、

「作業内容……変更」

逆に首下を掴まれ、片手で軽々とギンガに振り上げられ、思い切り地面に叩きつけられた。

「うわぁっ!?」

地面を転がるスバル。

「行動不能段階まで破壊。 その後、回収します」

淡々とギンガは告げる。

「ギン姉ぇっ!!」

スバルは泣き叫ぶようにギンガの名を叫んだ。

その眼からは涙が零れる。

だが、ギンガは無表情のままブリッツキャリバーを高速回転させ突っ込んできた。

そのまま、フラフラと立ち上がったスバルの腹部目掛け、左腕のリボルバーナックルを振りかぶり、一気に繰り出した。

――ドゴッ!

「がはっ!!」

リボルバーナックルが鳩尾に突き刺さり、血を吐き出す。

だがそれは………

「え………?」

呆然と声を漏らすスバル。

スバルは、今の一撃を受けては居なかった。

「ぐっ………げほっ!」

再び咳き込み、血を吐いたのは、友樹であった。

「友樹さんっ!?」

スバルは叫ぶ。

友樹は、腹部に突き刺さったギンガの左腕を掴むと、

「グレッチャートルペイド!!」

友樹が背中に垂れていた銛の付いたロープのような物を操作して、ギンガの身体を縛り上げ動きを封じる。

「ぐっ……」

だが、友樹のダメージも大きいようで、友樹は膝を付いた。

その間にも、ギンガは拘束から逃れようと暴れている。

「友樹さんっ!」

スバルが友樹に駆け寄る。

友樹は、苦しそうな表情をしながらスバルの方を向くと、

「悪いけど……長くは持たない………だからよく聞いて、スバル!」

真剣な声でそう言った。

「えっ?」

「スバル、君が本当に優しい女の子だってことは分かってる。 ギンガと……お姉さんとは戦いたくないって心の中で叫んでる事も分かってるつもりだ」

「ッ!」

スバルは、本心を言い当てられ、少し動揺した。

「気持ちは分かるよ……僕だって、家族と戦うのは嫌だと思う………けど!」

友樹は言葉を強め、

「助けられる力があるのに、戦いたくないという理由だけで何もしないのは違う!!」

「ッ!?」

友樹の言葉に、思わず声を漏らすスバル。

「君は……昔の僕によく似てる………僕も昔は甘ったれだった………いつもお父さんやお母さんに甘えて……虐められれば誰かに泣きつくだけで、“やめて”という一言を言う勇気さえなかった………そんな甘やかされるだけの僕に、兄さんだけは厳しい言葉をかけてきた。 僕は最初、そんな兄さんが嫌いだった。 兄さんは、僕が嫌いなんだと勝手に思ってた………だけど、それは違った! 兄さんの厳しい言葉は、全て僕に強くなって欲しいという、兄さんの優しさだったんだ」

友樹は、スバルに向き直り、スバルの眼を真っ直ぐに見つめる。

「スバル………怒らない事だけが……戦わないことだけが………傷つけない事だけが優しさじゃない! 時には、牙を剥いた優しさも必要なんだ! 守りたいものの前では、特に!」

友樹はそこまで言うと、意識が朦朧になってきたのか、足元がふらつく。

「スバル……それを………忘れないで………」

その言葉を最後に、友樹は気を失う。

力を失い、崩れ落ちる友樹をスバルが支えた。

友樹が気を失った事で、ギンガの拘束が力を失い、ギンガが拘束から逃れる。

スバルは、友樹を壁に寄り掛からせると、立ち上がった。

「…………怒らない事だけが、優しさじゃない………」

スバルはギンガに向き直る。

「戦わない事だけが、優しさじゃない」

スバルは、迷い無い眼でギンガを射抜く。

「傷つけない事だけが、優しさじゃない!」

スバルは、右手を握り締める。

「牙を剥いた……優しさ………」

スバルは右手を胸の前に持ってくると、集中するように眼を閉じた。

「ギン姉を助けるために………ギン姉を倒す!!」

スバルは、その言葉と共に眼を見開く。

「行くよ! マッハキャリバー!!」

『All right Buddy.』

スバルは構えた。

「フルドライブ!!」

『Ignition.』

スバルの足元に、ベルカ式魔法陣が浮かび上がる。

「ギア・エクセリオン!!」

その言葉と共に、マッハキャリバーから水色の魔力光の翼が現れる。

『A.C.S. Standby.』

ギンガも、迎え撃つ為に構えを取った。





その頃、隠れて各地に指示を出していたオットーは、

「ッ!?」

異変に気づいた。

その瞬間、地面から光の槍が護衛のガジェットを貫いていき、全て破壊された。

「なっ!?」

それと同時に、床の穴から光のワイヤーが伸びて、オットーを拘束する。

「あなたが、地上戦の司令塔ね。 各地の結界担当も。 上手く隠れてたけど、クラールヴィントのセンサーからは、逃げられない」

爆煙の向こうから、シャマルとザフィーラが現れた。

「大規模騒乱罪、及び先日の機動六課襲撃の容疑で………」

ザフィーラがそう宣言した瞬間、オットーはワイヤーを引きちぎり逃走を図る。

だが、

「てぁああああああああああああああああああっ!!」

ザフィーラが鋼の軛で逃走経路を塞ぎ、更にシャマルがバインドで再びオットーを拘束した。

「逮捕します!」

シャマルが言い放った。





オットーを確保した事で、ティアナと純平が閉じ込められていたビルの結界が消える。

(オットー……墜ちたっすね……)

その為、ノーヴェ、ウェンディ、ディードの間に、僅かだが動揺が走る。

その3人の周りには、先ほどと同じように幻術で作り出された複数のティアナと純平。

「こんのぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

焦りからか、ノーヴェが叫んで仕掛ける。

ノーヴェの眼には、本物の純平が特定できていた。

ノーヴェは純平に殴りかかり、純平はその拳を受け止める。

「テメエが本物の雷使い! そしてぇっ!」

ノーヴェが純平の後ろにいるティアナを睨み付ける。

「見切るまでもねえ! テメエが本物の幻術使いだ!!」

ノーヴェが叫ぶと、ウェンディがエリアルキャノンで狙い打つ。

ティアナは咄嗟にそれを避けるが、そのタイミングでディードが斬りかかって来た。

「今度はカバーに行かせねえ!」

ノーヴェは、純平の腕をしっかりと掴んでいた。

「終わりだ! ワンパターンの幻術バカが!!」

ノーヴェの叫びと共に、ディードのツインブレイズがティアナを切り裂き………ティアナの姿が消え去った。

「何!?」

「幻術!?」

ディードとウェンディが驚愕の声を漏らした瞬間、

「ワンパターンはどっちかしら?」

「がっ!?」

「がはっ!?」

そう言ったティアナの言葉と共に、ディードとウェンディの後頭部にオレンジ色の魔力弾が直撃、2人は気を失う。

「ウェンディ! ディード!」

ノーヴェが叫ぶと、その隙に今度は純平がノーヴェの腕を掴み、そのままボルグフォームへチェンジする。

「へっ! 右肩は怪我してても、一発ぐらいなら気合と根性で!」

純平がそう言うと、背中に背負われていたキャノン砲が右肩から展開、ほぼ零距離でノーヴェに狙いを定める。

「なっ……!」

ノーヴェが声を漏らした瞬間、

「フィールドデストロイヤー!!」

――ドゴォォォォォォォン!

閃光に包まれた。

煙が晴れると爆心地には、横たわり完全に気を失っているノーヴェ。

そして、右肩を抑えつつ息を吐く純平の姿があった。

「純平さん!」

ティアナが純平に駆け寄る。

純平は、ティアナに笑みを向けると、

「やったな! ティア!」

サムズアップと共にそう言った。

「はい!」

ティアナも、嬉しそうに返事をした。

その時、

――ゴゴゴゴゴッ

ビルに震動が響き、

――ドガァァァァァァァン!

戦闘を行なっていたビルは崩壊した。





睨み合うスバルとギンガ。

「行くよ……ギン姉………」

呟くスバル。

「「……………………」」

一時の静寂の後、

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

「…………………」

2人同時に突撃した。

2人の拳がぶつかり合う。

2人はそのまま交差し、ウイングロードで空中戦に入った。

ウイングロードが空中で交差し、その度に激突する。

お互いの一撃が交差し、間合いを取る2人。

その時、ギンガがカートリッジをロード。

リボルバーナックルと共に、掌が回転する。

それに対抗して、スバルもカートリッジをロード。

リボルバーナックルが回転する。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

そして、再び同時に突撃。

お互いの攻撃をプロテクションで防ぐ。

攻撃と防御の激突で、凄まじい衝撃を撒き散らす。

それでも、互いに一歩も引かない。

「くうっ!」

スバルは、指を広げてギンガのプロテクションに干渉しようとする。

一方、スバルのプロテクションも徐々にだがギンガの攻撃が通ろうとしていた。

「一撃………必倒ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

スバルは、更に気合を入れる。

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

マッハキャリバーが更に高速回転。

遂に、スバルの指がギンガのプロテクションに干渉し、僅かだが指が入る。

だが、それと同時にスバルのプロテクションが破られた。

しかし、それも予想の内なのか、スバルは首を反らす事で、間一髪その一撃を避ける。

その時に掠めていたのか、スバルの鉢巻が吹き飛び、額から血を流すものの、スバルは止まらない。

スバルは、ギンガのプロテクションを握りつぶすように砕くと、右腕を引き、左手に溜めた魔力をギンガの腹部の前にセットする。

「ディバィィィィィィィィン……………」

そして、その魔力の塊に向かって、引いた右腕を打ち出した。

「………バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

その瞬間、ギンガは魔力の奔流に飲み込まれる。

雌雄が決した瞬間だった。




ティアナと純平がいたビルの場所には瓦礫の山。

普通なら、絶望的な状況だった。

しかし、

――ドゴォォォォォォォォン!

瓦礫の一角か吹き飛ぶ。

そこから現れたのは、

「何とか助かったようだな」

ボルグモンに進化した純平と、

「あ、あの、純平さん………許可なく進化しちゃって良いんですか?」

勝手に進化した純平に困惑するティアナ。

更に、近くには気絶したノーヴェ、ウェンディ、ディードが横たわっている。

純平が咄嗟に皆を集めて、ボルグモンに進化して皆を守ったのだ。

「非常時だ。 仕方ないだろう。 何より、問題を起こしたくないから言いつけは守っていたが、元々俺達には言いつけを守らなきゃいけない義理も無ければ義務も無い。 それに……」

ボルグモンは優しそうな瞳でティアナを見下ろすと、

「お前の命に関わる事だ。 そんな小さな事で後悔したくはない」

その言葉に、

「えっ……? あっ………その………」

何故か恥ずかしくなったティアナは、頬を染めながら顔を逸らす。

すると、ティアナは、

「あ、あの、純平さん。 あなたの行動は、管理局員としては注意しなければいけない事なんですけど、これだけは言っておきます………」

気を取り直してボルグモンを見上げ、

「助けてくれて、ありがとうございます。 純平さん」

笑みを見せて礼を言った。








次回予告


ルーテシアを助けるために戦うエリオ、キャロ、泉。

身篭っていた事をスカリエッティに見破られたフェイト。

アギトと共にフェイトの元に急ぐ拓也。

今、戦いは最終局面を迎えようとしていた。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十五話 雷火

今、未来への翼が進化する。





あとがき

第二十四話の完成。

中々上手く書けた気がする。

ティアナは原作とはかなり違ってきました。

スバルの方は……なんか友樹が引き立て役に………

友樹の話はあの場に合ってるかなぁ?

何か違うような気がしないでもない。

しかも2人とも、何かフラグ立てたっぽい?

まあいいや。

さて、次回はお待ちかねスカリエッティ陣対フェイト&拓也の巻。

では、次回も頑張ります。





[8056] 第二十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/01 22:09

それぞれの相手と決着をつけたスターズ分隊。

その頃、ライトニング分隊とフェイトは………



第二十五話 雷火



拓也を見送り、騎士ゼストの最後を看取った輝一とシグナム。

「さて、これから如何するか?」

シグナムがそう言うと、

「俺の意見を言わせて貰えば、地上部隊の援護に行くべきだろう。 普通の魔導師では、AMFを持つガジェット相手にも苦戦するだろうからな」

輝一がそう答える。

「そうだな……ならば……」

シグナムが、ならば行こうと言おうとした時、

「だが、さっき物理法則の無効化を行なった所為で、俺の魔力は残り少ない」

輝一が、問題点を口にする。

「それに、援護とはいえ、地上戦が主になるだろう。 シグナムのその足では、動きに支障が出る」

更に、怪我をしているシグナムの足を見ながらそう言った。

「だ、大丈夫だ。 問題は無い」

シグナムは強がってそう言うが、

「大有りだ、バカ」

輝一はシグナムの頭を軽く拳で叩く。

「もしその怪我が原因で、シグナムに万が一の事があったら、俺は絶対に後悔する」

「コウイチ………」

シグナムを想う輝一の言葉に、シグナムは声を漏らす。

「しかし、このまま放って置くわけにもいかんだろう?」

「それは勿論だ。 だから……」

シグナムの言葉に輝一は頷くと、

「俺が、シグナムの足になる!」

デジヴァイスを取り出した。

輝一の片手に球状のデジコードが発生する。

そのデジコードにデジヴァイスをなぞる様に滑らせた。

「スピリット! エボリューション!!」

輝一がデジコードに包まれる。

「うおおおおおおおおおっ!!」

叫び声を上げながら、輝一はスピリットを身に纏っていく。

そして、漆黒の獅子が咆哮を上げた。

「カイザーレオモン!!」

いきなり進化した輝一に、シグナムは驚く。

「コ、コウイチ? 進化は禁止されている筈では?」

シグナムはそう言うが、

「非常事態だ。 被害を少なくする為の、現場の判断による選択だ」

カイザーレオモンはそう答える。

「第一、安全な場所でふんぞり返っている奴等の命令など、聞いている暇が無い。 もし七大魔王が復活したら、規則も何もも無いからな」

シグナムは、その言葉を聞くと呆れたような顔をして、

「一等陸尉が言っていい言葉ではないな……」

そう呟くが直ぐに笑みを浮かべ、

「だが、非常事態というのは同感だ。 ならば、共に行こう」

「ああ」

シグナムの言葉に、カイザーレオモンは頷くと、身を屈めた。

シグナムが、カイザーレオモンに跨る。

「行くぞ!」

カイザーレオモンが、地上部隊の援護へと駆け出した。






赤い糸の檻に、閉じ込められたフェイト。

『以前トーレが伝えたかな? 君と私は、親子のようなものだと』

フェイトに向かって、スカリエッティがそう言う。

『君の母親、プレシア・テスタロッサは、実に優秀な魔導師だった。 私が原案のクローニング技術を、見事に完成させてくれた………だが肝心の君は、彼女にとって失敗作だった。 蘇らせたかった実の娘アリシアとは、似ても似つかない……単なる粗悪な模造品………フフフッ………それ故、まともな名前すら貰えず、プロジェクトの名をそのまま与えられた。 記憶転写クローン技術、プロジェクトF・A・T・Eの最初の一派、フェイト・テスタロッサ』

その様子をモニターを通じてみていたエリオ達。

「フェイトさん?」

エリオが心配そうな声を漏らす。

「ルーちゃん! 私達が戦う理由なんてない! 私達と戦っても、何にもならないんだよ!」

キャロがルーテシアに呼びかけるが、ルーテシアは敵意の篭った目で睨むだけで何も言わない。

「ガリュー! 君も主人を守る戦士なら、ルーを止めて! ルーはあいつ等に騙されてる……操られているだけじゃないか!」

エリオもガリューに呼びかける。

すると、

「……貴方達にはわからない……」

「「「!?」」」

ルーテシアが呟いた。

「優しくしてくれる人が居て、友達がいて、愛されてる。 私の大切な人は皆、私のことを忘れていっちゃう……………1人は……嫌だっ……!」

悲しそうな声でそう搾り出すように言葉を紡ぐと、ルーテシアの足元に召喚陣が発生する。

すると、空中に巨大な召喚陣が浮かび上がり、そこから白い甲殻の巨大な人型の虫――白天王――が現れる。

「寂しいのはもう嫌だ…………独りぼっちは………嫌だぁぁぁぁぁぁっ!!」

ルーテシアの切なる叫びに呼応するかのように、白天王も鳴き声を上げた。

「キャロ!」

「うん!」

エリオの呼びかけにキャロは応える。

キャロは召喚陣を発生させると、

「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者」

詠唱と共に、巨大な召喚陣を発生させる。

その時、ガリューが襲い掛かってくるが、

「でぇぇい!」

エリオが迎撃を行い、ガリューの攻撃を防ぐ。

互いに間合いを取り、向き合う。

「よく似てるんだ。 僕達とルーは。 ずっと独りぼっちで、誰も守ってくれなくて………誰も信じられなくて………何も解らなくて………傷つける事しか出来なくて………だけど、変われるんだ! 想い一つ! きっかけ一つで! ………変わっていけるんだ!」

エリオが叫ぶ。

「その通りよ!」

泉が肯定する。

「人は変わっていける! 切っ掛けさえあれば! 私も昔は我侭で、他人に合わせるのが嫌いで……でも! 私は変われた! だからあなたも変われるはずよ! ルーちゃん!」

そう叫ぶ泉。

「竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!」

キャロの呼び声に応え、召喚陣からヴォルテールが現れる。

対峙するヴォルテールと白天王。

白天王が腕を振り上げ殴りかかり、ヴォルテールがそれを受け止める。

「あなたのお母さんを助けるのも、私達がきっと手伝う……絶対絶対約束する! だから、こんな事もうやめて!」

キャロが必死にルーテシアを説得する。

「嘘だ……」

「嘘じゃない!」

「嘘だぁああああああああっ!!」

ルーテシアの叫びと共に、ルーテシアの体から魔力が溢れ出る。

すると、白天王の腹部に紫色の水晶球のようなものが現れ、ガリューにも両腕から皮膚を突き破って血塗れの刃が複数飛び出す。

さらにガリューは血の涙を流し、それを見たエリオは動揺する。

「白天王……ガリュー……殺して……私の邪魔をする奴、皆……皆…………殺してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

ルーテシアの叫び。

「ガリュー!」

エリオはガリューに呼びかけるが、ガリューは血の涙を流しながらも、エリオと対峙する事をやめない。

キャロは、ルーテシアに手を差し伸べようとするが、ルーテシアは敵意の篭った目で睨み付け、インゼクトを魔力弾として放つ。

それをキャロは障壁で防ぐと、

「それに、召喚師の我侭で大事な召喚獣を悲しませちゃ駄目だよ。 ガリューも白天王も、泣いてるよ」

その言葉に動揺するルーテシア。

そして、遂に耐え切れなくなったのか、

「あああああああああああっ!! あああああああああああああああああっ!!」

悲痛な叫び声を上げた。

それと共に、数匹の地雷王が飛来してくる。

キャロの後ろにも、フリードが着地した。

少しの静寂の後、

「地雷王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

ルーテシアの叫びで、ルーテシアの背後にいる数匹の地雷王が電撃を溜める。

「フリード! ブラストレイ!!」

キャロも竜使役で、フリードの口に炎を集中させる。

そして、

「うわぁあああああああああああっ!!」

ルーテシアの叫びと共に、4匹の地雷王から電撃が放たれ、

「ファイア!!」

キャロの掛け声と共に、フリードが炎を放つ。

電撃と炎がぶつかり合い、衝撃を撒き散らす。

すると、

「ううっ………」

キャロが声を漏らす。

見れば、フリードの炎が、地雷王の電撃によって押され始めていた。

流石に4体の地雷王の電撃には、フリードのブラストレイも敵わないようだ。

だが、

「足りない分は、私がカバーするわよ!」

そう叫んだ泉が、バリアジャケットをシューツフォームに変更し、

「ウインドオブペイン!!」

風の刃を放った。

泉の放った風の刃は、フリードの炎と混ざり合い、更に勢いよく燃え上がらせる。

押されていた現状を、拮抗状態まで持ち直した。

「キャロ! もう一踏ん張りよ!」

「はい!」

泉の呼びかけに、キャロは応えた。



一方、ガリューと対峙していたエリオは、一度集中するように目を閉じた後、力強く見開いた。

「魔力………全開!!」

ストラーダが、2発カートリッジをロードし、エリオの『電気』の魔力変換資質により、身体中から電撃が迸る。

「はぁああああああああ……………」

ストラーダを両手で持ち、身体ごと捻って大きく振りかぶった。

その時、ガリューが突っ込んでくる。

するとエリオは、ストラーダのブーストを片方だけ噴射させ、勢いを付けて回転を始めた。

「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

雷を纏いつつ回転するエリオは、正に雷の竜巻サンダーストーム

「サラマンダァァァァァァァ…………」

そして、突っ込んでくるガリューに向かって、勢いを付けたままストラーダを叩きつけた。

「………ブレイクッ!!!」

ガリューは、それを両腕に生えた新たな刃で防ごうとする。

だが、エリオの一撃はその刃を軽々と砕き、そのままビルの屋上の床をぶち抜いてガリューを階下に叩き落した。



空中で対峙していた白天王とヴォルテール。

白天王は、腹部に新たに現れた水晶球のようなものから。

ヴォルテールは、両翼に魔力を集中させ、そこから大威力砲撃を放った。

お互いの大威力砲撃がぶつかり合い、大爆発を起こす。

結果はヴォルテールが打ち勝ち、白天王は崩れ落ちた。

キャロは気絶したルーテシアを介抱しようとするが、ルーテシアが突然苦しむように声を上げ、召喚獣たちが暴れだす。

「召喚獣たちが、混乱してる………ルーちゃんがまだ、戦おうとしてるから?」






その頃、スカリエッティから紛れも無い事実を突きつけられたフェイトは、

「………フッ」

不適な笑みを漏らした。

「お前は、一体何時の話をしているんだ?」

「何?」

フェイトの言葉に、スカリエッティは声を漏らす。

「確かに私は姉さんの代わりとして生み出されて、姉さんになれなかった失敗作と言われた時もあった。 フェイトと名付けられた理由を初めて聞いたときは、絶望もした………だけど、今は違う!」

フェイトは立ち上がる。

「姉さんになれないのは当然だ。 私は私、姉さんじゃない。 フェイトという名前も、付けられた理由は如何あれ、今は皆が親しみを込めて呼んでくれる………友達が……」

なのは達の顔が思い浮かぶ。

「家族が………」

プレシアやアリシア、エリオ、キャロの顔が思い浮かぶ。

「そして、私を愛してくれる人が!」

拓也の顔が思い浮かぶ。

「フェイト・テスタロッサ! それが私の名前だ!!」

フェイトは、自信を持ってそう叫ぶと、刀身の砕かれたバルディッシュを構える。

「ライオット!」

『Riot Blade.』

バルディッシュが変形し、片手剣の形を取る。

それを振りかぶり、

「はっ!」

一刀の元に糸の檻を切断した。

だが、檻が破られたにも関わらず、スカリエッティは余裕の表情を崩してはいなかった。

「それが君の切り札かい? なる程……このAMF状況下では、消耗が激しそうだな……」

スカリエッティの言うとおり、フェイトは肩で息をしていた。

「だが、使ってしまって良いのかい? ここにいる私を倒したとしても、ゆりかごも私の作品達も、止まらんのだよ? プロジェクトFは上手く使えば便利なものでね。 私のコピーは、カオスとタイプゼロ・ファースト以外の12人の戦闘機人たちの体内に仕込んである。 どれか一つでも生き残れば、すぐに復活し、一月もすれば私と同じ記憶を持って蘇る」

「馬鹿げてる……」

スカリエッティの言葉を聞き、フェイトは思わずそう漏らす。

「旧暦の時代……アルハザード時代の統治者にとっては、常識の技術さ。 つまり君は、ここにいる私だけでなく、各地に散った12人の戦闘機人達全員を倒さねば、私も、この事件も……止められないのだよ!」

そう言うと共に、スカリエッティはデバイスをつけた右手を握り締める。

再びフェイトの足元から赤い糸が発生し、フェイトを捕らえんと迫る。

「くっ!」

間一髪それに気付き、その場を飛び退くフェイト。

ところが、

「ああ、余り激しい動きは止めておきたまえ。 お腹の子に障るよ」

「ッ!?」

突如言われたスカリエッティの言葉に、思わず動揺し、動きが鈍る。

「あぐっ!」

その隙を突かれ、再び赤い糸に囚われるフェイト。

「君と君の子は、私にとっても貴重なサンプルだ。 出来れば無傷で手に入れたい……」

スカリエッティは、笑みを浮かべながらフェイトに近付いてくる。

「く、来るな!」

スカリエッティの笑みに、本能的に恐れを感じたフェイトは叫ぶ。

「それにしても、父親は一体誰なんだろうねぇ? ククッ……まあ、どうでもいい。 今私が興味あるのは君達だけだ」

更に近付いてくるスカリエッティ。

フェイトは、拘束されながらもプラズマランサーを放つが、スカリエッティの障壁により、軽々と防がれる。

「なっ!?」

その事に、フェイトは驚愕し、近付いて来るスカリエッティに恐怖を感じる。

「ククッ、良いねぇその表情。 この私を前に、己の子すら守れない無力感を感じているのがわかるよ」

フェイトを見ながら、そう嬉しそうに言うスカリエッティ。

止まらないスカリエッティの歩み。

近付いて来るにつれ、恐怖がどんどんと大きくなる。

そして、遂に耐え切れなくなり、フェイトは叫んでしまった。

「タクヤッ! 助けてっ!」

来れる訳無いと頭では解っていた。

だが、フェイトは叫ばずにはいられなかった。

もしかしたら、と心の何処かで思っていたのかもしれない。

そして………

その願いは届いた。

――ドゴォォォォォン

天井が突然爆発し、何かが勢い良くフェイトの前に着地した。

砂煙が舞い上がり、その姿は見えない。

だが、

「呼んだか? フェイト」

そこから聞こえたその声は、紛れも無く自分の愛する者の声だとフェイトはすぐに解った。

「タクヤッ!」

フェイトは、拘束された状態ながらも、思わず身を乗り出すようにして叫んだ。

砂煙が晴れて、その中から現れたのは、金髪赤目でエンシェントフォームとなった拓也。

当然ながら、初めてその姿を見るフェイトは驚きを隠せない。

「タ、タクヤ? その姿は?」

思わず尋ねる。

「ああ。 頼もしい仲間が出来てな」

『烈火の剣精アギト様だ。 よろしくな』

拓也に続いて、ユニゾンしているアギトがそう言った。

「それにしても………」

拓也は、改めて拘束されているフェイトを見た。

「何処か調子でも悪いのか? 大人しく捕まってるなんて、らしくないぞ」

拓也は、そう言いながらフェイトを拘束していた赤い糸を無造作に引き千切る。

「そ、それは………」

フェイトは思わず言い淀んだ。

すると、

「それも仕方ないだろう」

後ろからスカリエッティが声をかけて来た。

拓也はスカリエッティに向き直る。

「どういう事だ?」

拓也は問いかける。

「彼女は身重の身でこの場にいるのだ。 そちらに気を取られるのは当然だろう?」

スカリエッティの言葉を聞き、

「な………に………?」

拓也は、一瞬スカリエッティの言葉の意味を理解できなかった。

「おや? 知らなかったのかね? ならば教えてあげよう。 彼女は今、子を宿しているのだよ! そのお腹の中に!」

スカリエッティは余裕の笑みを浮かべながら大きな声でそう言う。

「ああ……まったくもって彼女は素晴らしい。 作られた身で子を成すとは私の研究心を大いに刺激してくれる!」

スカリエッティがそんな事を言っているが、拓也は全く聞いていなかった。

拓也は、動揺を隠しきれない表情でフェイトの方を向き、

「本当………なのか………?」

何とかそう問いかける。

「…………うん」

フェイトは小さく頷く。

「……………い、一応確認するけど……………俺の子…………だよな?」

続けて拓也は問いかけた。

フェイトは、頬を少し染めながら、無言で頷いた。

「…………………」

それを聞いた拓也は、呆然とした表情で無言になる。

「ご、ゴメン拓也! こんな身体で作戦に参加するなんて無茶だってことは分かってた! でも………」

フェイトは、無茶した事を怒られると思ったのか、謝ろうとする。

すると、

「…………………は………はは」

拓也が声を漏らした。

「タクヤ………?」

フェイトが、拓也の表情を窺おうとすると、

「はははははっ!!」

拓也は満面の笑みを浮かべてフェイトを抱き締めた。

「きゃっ!? タ、タクヤ!?」

突然抱き締められた事に、困惑するフェイト。

だが、拓也は止まらず、そのままフェイトを抱き上げると、喜びを表現するかのようにクルクルと回転する。

数回回転してフェイトを降ろすと、

「ははっ! やったぞフェイト!!」

そう笑みを浮かべたまま叫ぶ拓也。

そのまま親バカモードに突入しそうになる拓也に、

『おーい、変態ドクターの事も忘れんなよ』

アギトが突っ込みをいれた。

「おおぅ。 今、一瞬マジで忘れてた」

『忘れんな!』

拓也の物言いに、思わず呆れるアギト。

拓也は、気を取り直してスカリエッティに向き直る。

「ふむ、今の話を聞くに、君が父親かね?」

スカリエッティが問いかける。

「そうだ」

「なる程、『炎』の属性特化型魔導師とは………益々君達の子供には興味が沸くねぇ」

スカリエッティは、笑みを浮かべつつそう言った。

拓也はそれを聞くと、不機嫌な顔をして、

「変態ドクターには指一本触れさせねーぞ」

そう言う。

「ほう………それは残念」

スカリエッティは肩を竦める。

「しかし、気付いているかい? 私と君達は良く似ている事を」

「……………」

「ッ!?」

拓也は無言だが、フェイトは動揺を見せる。

「私は自分が作り出した生体兵器たち。 君達は、自分で見つけ出した、自分に反抗する事の出来ない子供達………それを自分の思うように作り上げ、自分の目的の為に使っている………」

「黙れ!」

フェイトは叫ぶが、スカリエッティは続ける。

「違うかい? 君達もあの子達が自分に逆らわないように教え込み、戦わせているだろう? 私がそうだし、君の母親も同じさ…………周りの全ての人間は、自分の為の道具に過ぎん。 その癖君達は、自分に向けられる愛情が薄れる事には臆病だ。 実の母親がそうだった様に、君もいずれああなる。 間違いを犯す事に怯え、薄い絆に縋って震え、そんな人生など、無意味だと思わんかね?」

スカリエッティの物言いに、フェイトは自信を失いそうになった。

だが、

「言いたい事はそれだけか?」

拓也が呆れ口調でそう言った。

「何?」

「俺はお前みたいに頭が良くねーから、そんな風にグダグダと理屈を並べられても理解できねーよ。 少なくとも俺達は、エリオとキャロをそんな風には見ていない。 俺達の接し方を見てテメエが如何判断しようが知ったことか。 大事なのは、本人達が如何思っているかだ。 それにフェイトが道を誤ったときは、俺が意地でも連れ戻す」

拓也はそう言い放つ。

「だが、肝心の君も道を誤ったときは如何する? 君も人間だ。 間違いを犯す可能性はあるだろう?」

スカリエッティは、不安を煽る様にそう言ってくる。

すると、

「ああ、そうだな……」

拓也は肯定の意を示した。

「そこがお前との最大の違いだ。 お前は1人だ。 間違いを正してくれる対等な相手が誰もいない。 けど、俺達には仲間がいる。 共に歩み、道を誤ったときには立ちはだかってでも止めてくれる本当の仲間が」

「私にはそこが理解できない。 何故そこまで他人を信じられる?」

「さっきも言っただろ? そんなもん、理屈じゃねーんだよ」

拓也の言葉に、自信喪失になっていたフェイトが顔を上げる。

そこに、

『『フェイトさん!』』

繋がっていた通信から、エリオとキャロの声がした。

『拓也さんの言うとおりです! 戦いの場に出た事も、自分達で選びました!』

『フェイトさんは、行き場のなかった私に、あったかい居場所をくれた!』

『拓也さんと一緒に、沢山の優しさをくれた!』

『大切なものを守れる幸せを、教えてくれた!』

『助けてもらって、守ってもらって、機動六課でなのはさんに鍛えてもらって!』

『やっと少しだけ、立って歩けるようになりました!』

『フェイトさんも拓也さんも、何も間違ってない!』

『不安なら、私達がついてます!』

『僕もキャロも、家族として!』

『だから、こう言います!』

エリオとキャロは、一呼吸置くと、

『『頑張って!! “お父さん”! “お母さん”!』』

自分達の想いを口にした。

「ッ!」

拓也は微笑み、フェイトは目を見開く。

すると、フェイトは気を取り直し、

「…………ゴメン、タクヤ………今回だけ、無茶を許して……」

そう言った。

「…………今回だけだぞ」

拓也も心配はしていたが、フェイトの気持ちを汲み取って頷く。

「ありがとう…………心配しなくても大丈夫。 この子は、私とタクヤの子。 強い子だから………」

フェイトがそう呟くと、金色の魔力光に包まれる。

『Get set.』

「オーバードライブ………真・ソニックフォーム」

『Sonic Drive.』

フェイトのバリアジャケットが変化し、更に薄く、防御を無視した完全な速さ重視の形態へと変わった。

(ゴメンね。 ありがとう………エリオ、キャロ。)

「疑う事なんて、ないんだよね………」

『Riot Zamber.』

ライオットソードが分離し、2つに増える。

「私は1人じゃない………エリオが………キャロが………皆が………そして、拓也がいてくれるから!」

フェイトは二刀を構え、

「恐れる事なんて、何もないんだ!」

そう言い放った。

「装甲が薄い! 当たれば墜ちる!」

戦闘態勢に入ったトーレが叫ぶ。

その時、スカリエッティの右手が僅かに動く。

フェイトは瞬間的に飛び退いた瞬間、その場が爆発した。

拓也がその爆発に飲み込まれるものの、フェイトは動揺した様子は全く無い。

セッテが飛び退いたフェイトに向かってブーメランブレードを投げつけようとするが、

「ッ!?」

爆煙の中から出てきた拓也の手にブーメランブレードが掴まれ、阻止させられる。

セッテは飛び退き、拓也と対峙する。

その時、再びスカリエッティが右腕を動かすと、床から赤い糸が発生し、拓也を縛り上げ、更にはフェイトにも襲いかかる。

だが、フェイトに向かった赤い糸はライオット・ザンバーによって切り裂かれる。

「もらったぞ!」

一方、セッテは赤い糸に縛られた拓也に向かってブーメランブレードを投げつけた。

しかし、拓也は軽々と赤い糸を引きちぎり、手を前に出すと、ブーメランブレードを掴み取る。

「で? これがどうかしたのか?」

ブーメランブレードを受け止めた拓也は、何でもないように問いかけた。

そして、そのままブーメランブレードを握力で砕く。

次の瞬間には、セッテの懐に潜り込み、

「しまっ……」

叫ぶ間も無く拳がセッテの腹に入り、セッテは気を失う。

「ライドインパルス!」

トーレがフェイトのスピードに対抗する為にISを発動する。

フェイトとトーレが超スピードで空中戦を繰り広げた。

お互いの攻撃が掠めあい、傷が出来ても2人は止まらない。

すると、フェイトが2本の剣を一つに重ね、大剣の状態にする。

「はぁああああああ…………」

トーレも、渾身の一撃を持って迎え撃とうとしていた。

フェイトは大剣を振り上げ、

「はぁああああっ!!」

トーレに向かって振り下ろした。

「でやぁあああああっ!!」

トーレもインパルスブレードを繰り出す。

互いの一撃がぶつかり合い、一瞬拮抗するが、すぐにトーレのインパルスブレードが耐え切れずに砕け散り、トーレはそのまま吹き飛ばされた。

トーレを撃破したフェイトは、そのままスカリエッティに斬りかかる。

「はぁああああああああっ!!」

フェイトはスカリエッティにライオットザンバー・カラミティを振り下ろす。

驚くことに、スカリエッティはそれを両手で受け止めた。

床が大きく陥没する。

「フハハハハハ………素晴らしい………やはり素晴らしい………ああ! この力、欲しかったなぁ! …………だが、私を捉える代償に、君はここで足止めだ………私がゆりかごに託した夢は、止まらんよ!!」

スカリエッティの言葉に、フェイトは一瞬悔しそうな顔をするが、

「その心配は必要ない。 さっきも言った筈だ。 俺達には、仲間がいると! ゆりかごは、あいつ等が必ず止める!」

拓也がそう言い放ち、スカリエッティの懐に飛び込む。

そして、右腕を引き絞り、

「おらぁっ!!」

スカリエッティの顎に、アッパーカットを繰り出す。

宙に浮くスカリエッティ。

更に、

「はぁああああああああっ!!」

フェイトが大剣を振り回し、剣の腹で宙に浮いたスカリエッティを吹き飛ばし、壁に叩きつけた。



戦闘が終わり、フェイトはスカリエッティに歩み寄る。

「広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ。 あなたを、逮捕します」

そう宣言した。






次回予告


ゆりかごでヴィヴィオと戦う信也、なのは。

駆動炉の破壊の為に動くヴィータ。

カオスとの戦いを続ける輝二。

戦いは今、決着を向かえる。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十六話 家族

今、未来への翼が進化する。




あとがき

第二十五話の完成。

う~む、出来はそこそこ。

ただ、ちょっとグダグダになったところがあるのが残念。

はい、拓也も子供が出来た事を知りました。

エリオと、キャロも子供になったことで、3人……ヴィヴィオを入れれば、いきなり4人のパパさんになるわけです。

さて、次回はいよいよ決着。

お楽しみに。





[8056] 第二十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/01 22:08

スカリエッティを捕らえた拓也とフェイト。

その頃、ゆりかごでは………



第二十六話 家族



駆動炉へ向かっていたヴィータは、ガジェットⅣ型の奇襲を受け、重傷を負うものの、全てのガジェットを破壊して駆動炉へ到達していた。

今のヴィータは、バリアジャケットはボロボロで、あちこちから血を流し、グラーフアイゼンも原型を止めているが、少なくないダメージを負っていた。

ヴィータの目の前には、クリスタルのような駆動炉が赤く輝いている。

ヴィータはそれを見上げると、

「コイツをぶっ壊して、この船を止めるんだ!」

グラーフアイゼンを構えなおす。

「リミットブレイク………やれるよな?」

『Jawohl.』

ヴィータの確認の言葉に、グラーフアイゼンは迷わずに答える。

そして、カートリッジを数発ロードし、

『Zerstörungsform.』

ラケーテンフォルムを、ギガントフォルム並みに大きくしたような形態に変形した。

すると、ヴィータは飛び上がり、大きく振りかぶる。

カートリッジが一発ロードされ、後部の噴射口から勢い良くジェット噴射が起こり、駆動炉に振り下ろされた。

「ツェアシュテールングス…………」

駆動炉にたたきつけられると同時に、更にカートリッジがロードされ、ドリルの回転数が増す。

「………ハンマーーーーーーーーッ!!!」

ヴィータの気合を入れた掛け声と共に、叩き込まれた魔力が爆発を起こした。

「はぁ…………はぁ…………」

ヴィータは、肩で息をしながら駆動炉の様子を見つめる。

やがて、爆発で起きた煙が晴れていき、

「なっ!?」

無傷の駆動炉が姿を見せた。

すると、次の瞬間警報が鳴り響く。

それと共に、ヴィータの周りに正立方体の形をした迎撃システムが無数に出現した。

それを見たヴィータは、

「…………へっ、上等だよ」

不適な笑みを浮かべ、その瞬間迎撃システムから攻撃が行なわれる。

ヴィータは爆煙に包まれるが、その煙の中を突っ切り、

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

迎撃システムに殴りかかった。





一方、外で指揮を取っているはやて。

『次元航行部隊の到着まで、あと45分。 ゆりかご、軌道ポイント到達まで、あと38分』

そのはやてに、シャーリーから報告が来る。

「7分差………」

『主砲の標準は、ミッド首都に向けられています。 7分あれば……』

「撃てるやろうね」

はやては、一瞬思案すると、

「防衛ライン! 現状維持! 誰か指揮交代! 今から私も突入する!」

『えっ?』

はやての判断に、シャーリーが驚く。

「軌道上になんて上がらせへん。 地上に攻撃もさせへん」

『八神部隊長!』

『でも……』

グリフィスとシャーリーが心配そうな声をかける。

その時、

『割り込み失礼します』

リインフォース・アインが通信に割り込みをかけた。

「リインフォース!」

『もう少しだけお待ちください我が主。 遅くなりましたが、間も無く私もそちらに到着します』

アインはそう言うが、

「リインフォース、でも、身体は大丈夫なんか?」

はやては心配そうな表情でそう聞いた。

はやての心配も当然である。

アインは、ルーチェモンから受けたダメージがまだ完全には完治しておらず、今回の作戦には参加しない予定であった。

『ご心配ありがとうございます。 しかし、ゆりかごの高濃度AMF内では、私がいた方が有利です』

アインはそう言った。

確かにゆりかご内のAMFの濃度は高く、なのは達でも通常の魔力運用には支障をきたした位だ。

AMFの影響を受けないリインフォースとユニゾンすれば、AMFは関係無しに戦える。

「………………」

はやては僅かに迷うが、

「わかった。 待っとるで、リインフォース!」

『はい!』

はやては了承し、アインは頷いた。





玉座の間でヴィヴィオと相対した信也となのはは、

「くっ………」

信也が、ボロボロになりながら膝をついていた。

「信也君っ!」

なのはが信也に呼びかける。

なのはもダメージを負ってはいるが、信也ほどではなかった。

「僕は大丈夫。 まだまだ平気だよ!」

信也は立ち上がって、空中にいるヴィヴィオを見上げる。

「ヴィヴィオ! お願い、やめて!」

なのはが叫ぶ。

「勝手に……呼ばないで!」

ヴィヴィオは手に魔力刃を発生させると、なのはに斬りかかる。

だが、その前に信也が立ち塞がり、魔力刃を魔力刃で受け止めた。

「ッ……はぁあああああっ!」

ヴィヴィオは一瞬悔しそうな顔をするが、すぐに蹴りを放ってくる。

信也は落ち着いて飛び退くが、ヴィヴィオが追撃してきて殴りかかってきた。

信也はその拳を魔力刃で受け止める。

「はぁあああ………」

ヴィヴィオは、信也に負けじと力を込める。

だが、信也は別の事を考えていた。

(………やっぱり。 ヴィヴィオが使ってる剣技と、格闘術は……)

信也は、思い当たる事があるのかそう考える。

その時、

『Chain Bind.』

なのはがバインドでヴィヴィオを拘束した。

だが、

「こんなの………効かない!!」

その言葉と共に、ヴィヴィオはバインドを振り解く。

そして、

「はあっ!!」

複数の魔力弾を2人に投げつける。

だが、その魔力弾は2人に向かわず、2人の周りに設置されるように動き、

「ッ!?」

そして弾けた。

魔力弾が散弾のように2人に襲い掛かる。

「テンセグレートシールド!!」

信也は咄嗟にテンセグレートシールドで自分となのはを包む。

「ぐっ……!」

衝撃に、信也は声を漏らした。

その時、

「レイジングハート! ブラスタービット!」

なのはが3機のビットを出現させ、飛ばした。

その内2機がヴィヴィオの周りを回るように動くと、ヴィヴィオをバインドで縛り上げる。

「ブラスタービット! クリスタルケージ! ロック!!」

最後の1機がヴィヴィオの周りにクリスタルケージを出現させ、閉じ込めた。

だが、

「これは……もう覚えた!」

ヴィヴィオはあっさりとバインドを振り解き、クリスタルゲージを破らんと殴りかかる。

数発殴っただけで、クリスタルゲージには罅が入った。

その僅かな時間に、

「なのは、後どの位?」

信也がなのはに尋ねる。

「今、エリア1と2が終わった所。 エリア3は、もう少し。 まだ、ちょっとだけ時間がかかっちゃう」

なのははそう答える。

「そう………後ちょっとか……」

信也はそう呟くと、たった今クリスタルゲージを破ったヴィヴィオに視線を向ける。

「………よし!」

信也は、何を思ったかそう頷くと、腕の魔力刃を消して、ヴィヴィオと同じ床に降り立ち、無防備な姿を晒す。

「信也君!?」

なのはがその行動に驚く。

「大丈夫! 僕に任せて!」

信也は、ヴィヴィオから視線を逸らさずそう言った。

ヴィヴィオは、無防備な姿を晒す信也を一瞬怪訝に思うが、すぐに気を取り直し手に魔力刃を発生させる。

「はぁあああああっ!!」

そして、無防備な信也に斬りかかった。

「信也君!!」

なのはは悲鳴に近い声を上げる。

「………………」

だが、信也は何も言わず…………

ほんの僅かに身体を反らしただけでその斬撃を避けた。

「ッ!?」

ヴィヴィオは、その事に驚愕するが、すぐに再び魔力刃を振るう。

しかし、それもほんの少し下がっただけでヴィヴィオの剣は信也に届かない。

「くっ………うわぁああああっ!!」

今度は直接信也に殴りかかる。

それでも、信也が少し顔を逸らしたり、身を屈めたりするだけで、その全ては空を切った。

「はぁ………はぁ………」

ヴィヴィオは、掠りもしないその事実に戦慄を覚えつつ、息を整える。

「無駄だよ。 君の動きは、もう見切った。 いくら型を真似た所で、経験が乏しい君じゃ、動きはどうしても単調になる。 そのぐらいを見切るのは簡単だ」

信也の姿に、ヴィヴィオは焦りを覚える。

「うわぁああああああああっ!!」

ヴィヴィオは、不安を振り解くかのように拳を我武者羅に振るい続ける。

だが、その攻撃は今まで以上に単調になり、信也が見切るのは容易かった。






地上では、陸士魔導師達がガジェットを相手に必死に戦っていた。

だが、次から次へと増えるガジェットに対し、地上の魔導師達は次々にリタイアするため、徐々に戦況は悪化していた。

「くっ、まじいな………」

地上部隊の指揮を取っていたゲンヤがそう吐き捨てる。

ゲンヤ自身は魔法の力が無い為、戦う事は出来ない。

その時、

「ナカジマ三佐!!」

隊員の1人が悲痛の叫びを上げる。

ゲンヤの目の前には、防衛線を突破したガジェットⅢ型が浮遊していた。

「ぐっ! くそったれ!」

ゲンヤが覚悟した時、

「紫電一閃!!」

炎の斬撃がゲンヤの目の前のガジェットⅢ型を切り裂いた。

「なっ!?」

突然の事に驚くゲンヤ。

切り裂かれたガジェットの後ろには、

「大丈夫ですか? ナカジマ三佐」

カイザーレオモンに跨ったシグナムの姿があった。

「シグナム!? それに……」

ゲンヤは、シグナムを驚いた顔で見た後、視線をカイザーレオモンに移す。

「木村 輝一です。 今は進化してカイザーレオモンですが」

カイザーレオモンはそう答えた。

「き、木村!? それが噂のデジモンへの進化か!?」

ゲンヤは驚いた表情でそう尋ねる。

「ええ。 ですが、詳しい話は後で、今は………」

カイザーレオモンはガジェットの大群に向き直る。

「ガジェットの相手が先だ! 行くぞ、シグナム!!」

「ああっ!」

シグナムが頷くと同時に、カイザーレオモンは地を蹴ってガジェットの大軍に飛び込む。

当然ガジェットはレーザーで迎撃しようとするが、オブシダンデジゾイドに包まれたカイザーレオモンの身体には無意味。

「おおおっ!!」

カイザーレオモンは、着地地点にいたガジェットを踏み潰し、爪で切り裂く。

「はぁああああああっ!!」

更にシグナムがレヴァンティンをシュランゲフォルムにして振り回し、辺り一帯を薙ぎ払う。

瞬く間に数を減らすガジェットに、地上の魔導師達は呆然となる。

「………すっげー……」

隊員の誰かが呟く。

だが、空からは次々と新手のガジェットが現れる。

それをカイザーレオモンとシグナムが見上げると、

「シグナム、一気に決めるぞ!」

「ああ!」

カイザーレオモンの身体から闇のエネルギーが吹き出し、シグナムのレヴァンティンに纏わり付く。

「レヴァンティン!!」

シグナムの掛け声と共に、レヴァンティンから炎が噴出し、闇のエネルギーと交じり合って黒き炎となる。

「浄破滅炎!」

シグナムがレヴァンティンを頭上で構え、

「「黒竜……一閃!!!」」

前に突き出すと共に、レヴァンティンから黒き炎の竜が放たれた。

黒竜は、咆哮を上げながらガジェット達を蹂躙していく。

黒竜に飲み込まれ、破壊されていくガジェット達

空にいたガジェットの大群は、あっという間に全滅する。

だが、再び新手が現れる。

「まだ来るか……行けるな!? シグナム!」

「当然だ!」

カイザーレオモンの言葉にシグナムは自信を持って応え、2人はガジェットを見据えた。





「おおおおおおおおっ!!」

「はぁああああああっ!!」

白と灰色の光が何度も交差する。

輝二は2本の大剣、シャープネスクレイモアを。

カオスは右手から光の剣、左手から闇の剣を発生させ、互いに切り結ぶ。

今までは、お互いにヒットアンドウェイを繰り返して、拮抗状態が続いていた。

だが、

「はぁああああっ!!」

輝二が2本の大剣を同時に叩きつけ、カオスはそれを受け止めきれずに吹き飛ぶ。

カオスは地面に叩きつけられた。

「ぐっ………」

カオスは立ち上がろうとするが、今までの消耗もあり、ふらついてしまう。

「もう止めろ! お前の身体は限界だ!」

輝二はそう呼びかける。

「……まだだ! まだ、俺の気は済んでいない!!」

カオスはそう言って無理に立ち上がる。

そして、地面に降りてきた輝二を見据え、

「これが……最後の勝負だ!!」

カオスは右手に光を、左手に闇を発生させる。

そして、

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

その両腕を無理矢理重ねようとした。

「なっ!?」

その行動に驚愕する輝二。

「ぐっ………あああああああああああっ!!」

光と闇の相反する力が暴走し、カオスの身体を傷つけていく。

「無理だっ! 止めろ!!」

輝二はそう呼びかける。

すると、カオスは苦しそうな表情をしながらも輝二を睨み付け、

「………俺には………僅かだが貴様達の記憶を持っている………」

「ッ!?」

カオスの言葉に驚く輝二。

「………その僅かな記憶の中……俺は知っている…………貴様が……光と闇を一つにした事を……!」

カオスの身体の内部の機械が耐え切れなくなったのか、所々で爆発を起こし始めた。

「……ならば………貴様に出来て、俺に出来ない道理は無い!!」

それでもカオスは両手を無理矢理合わせる。

「さあ………構えろ………」

その姿に感じるものがあったのか、輝二は両手の大剣を前に突き出した。

その大剣の間に、光の魔力が集中されていき、リィンの力によって、超低温になる。

「行くぞ……カオス……!」

輝二はそう言うと、

「『アブソリュート・ゼロ!!』」

超低温レーザーを放つ。

「ケイオスフィールド!!」

カオスは光と闇が混ざり合った砲撃を放った。

2つの攻撃がぶつかり合う。

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

「はぁあああああああああっ!!」

せめぎ合う2つの砲撃。

アブソリュート・ゼロの効果によって、地面が凍りだす。

2つは拮抗しているように見えた。

だが、

「ッ!?」

徐々に輝二が押されだした。

「うぉおおおおおっ!!」

カオスの両腕は、もはや原型を止めていない。

それでもカオスは止めようとしなかった。

「がぁああああああああっ!!!」

カオスは、最後の力を振り絞るように叫び声を上げる。

そして遂に、ケイオスフィールドがアブソリュート・ゼロを貫き、輝二の上半身を吹き飛ばした。






駆動炉では、防衛システムを全て破壊したヴィータが、再び駆動炉本体の破壊に挑戦していた。

「はぁあああああああああ………でりゃぁあああああああああああああああっ!!」

ヴィータは、気合を込めてツェアシュテールングスハンマーを振り下ろす。

だが、

「ッ!?」

魔力爆発と共に再び吹き飛ばされた。

駆動炉本体には、未だダメージは無い。

「何でだよ……? 何で通らねえ!?」

ヴィータは泣きそうな表情でそう叫ぶ。

「コイツをぶっ壊さなきゃ、皆が困るんだ!」

ヴィータは立ち上がり、そういいながらグラーフアイゼンを引き摺る。

「はやての事も………なのはの事も、守れねえんだ!!」

ヴィータは再びグラーフアイゼンを構える。

「コイツをぶち抜けなきゃ。意味ねえんだ!!」

ヴィータは叫ぶ。

「だから……アイゼン!!」

『Jawohl.』

ヴィータの呼びかけに応え、グラーフアイゼンはカートリッジを全てロードする。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

ヴィータはグラーフアイゼンを大きく振りかぶる。

それと同時に、ジェット噴射で加速を付ける。

「ぶち抜けぇえええええええええええええええっ!!!」

最後の力を振り絞って、駆動炉に叩き付けた。

駆動炉の表面で、ドリルが火花を散らす。

そして、再びの魔力爆発。

それによって、グラーフアイゼンは砕け散る。

それでも、駆動炉は未だ健在。

ヴィータは遂に力尽き、落下を始める。

(駄目だ………守れなかった………)

ヴィータは涙を流す。

「はやて………皆………ゴメン」

ヴィータはそう呟き、そのまま床に落下するかに思われた。

だが、

――バサッ

一つの羽音。

それと共に、黒い羽根が舞い散る。

ヴィータは白い光に包まれた。

ヴィータは、ゆっくりと目を開ける。

「謝る事なんて、何もあらへん」

そこには、アインとユニゾンしたはやてがいた。

「あ……はやて………アイン………」

「鉄槌の騎士ヴィータと、グラーフアイゼンがこんなになるまで頑張って………」

はやては、そう呟きながら駆動炉を見つめる。

その視線の先には、僅かに食い込んだグラーフアイゼンの先。

そこから、徐々に罅が広がりつつあった。

「それでも壊せへん物なんて………」

はやては軽く杖を振り、ほんの僅かに後押しする。

その瞬間、その罅が駆動炉全体に広がる。

「この世の何処にも………あるわけ無いやんか」

はやてがそう呟いた瞬間、駆動炉は砕け散った。




その頃、スカリエッティのアジトでも異変が起こっていた。

アジト全体に震動が起こる。

「これは……一体?」

フェイトが呟く。

「フッ……クアットロが、この拠点の破棄を決意したようだ」

バインドに縛られたスカリエッティがそう言う。

「止めさせて。 このままじゃ、貴方も一緒に……」

「言ったろう? 彼女の体内には、私のコピーがいる。 こちらの私は、用済みなのさ」

そう言いつつ笑うスカリエッティ。

「じゃあ、さっさと脱出するしかないか……」

拓也がそう呟いた時、

『待ってくれ! このアジトには、ルールーのお母さんが!』

アギトが叫んだ。

拓也はその言葉を聞くと、実験素体のカプセルに目を向ける。

「まだ、生きてる可能性はあるか………フェイト!」

拓也はフェイトに呼びかける。

「うん! 止めてみる!」

フェイトは頷いた。





クアットロは、駆動炉を破壊された事で焦っていた。

「防御機構、フル稼働。 予備エンジン駆動。 自動修復開始。 フフッ……まだまだ………ッ!?」

クアットロが対策に追われていた時、何かに気付いて後ろを振り向いた。

そこには、桜色の球体が浮かんでいる。

「これは………?」

クアットロが声を漏らした時、

『見つけた………』

なのはが呟く。

「エリアサーチ!? まさか、ずっと私を探してた!?」

クアットロは驚愕する。

「だ、だけどここは最深部。 ここまで来られる人間なんて………」

そう言いながら、再びなのはに視線を向けるクアットロ。

だが、そこで目を見開いた。



なのはは、信也に攻撃を繰り返すヴィヴィオを、今まで以上のバインドで縛り付ける。

そして、クアットロの居る位置に一歩踏み出し、レイジングハートを構えた。

『壁抜き!? まさか、そんな馬鹿げた事が………』

驚愕するクアットロの言葉に、

「確かに………私1人じゃ相当無理しないと難しいよ………でもね……」

なのはがそう呟いた時、レイジングハートを握るなのはの手に、信也の手が重ねられる。

「2人なら、確実に出来る!!」

信也が自信を持って言い放った。

レイジングハートの先に、桜色と青色が交じり合った魔力が集中していく。

『あ………ああっ………あああああっ!』

クアットロの顔が、恐怖に染まっていく。

『通路の安全確認。 ファイアリングロック解除します』

レイジングハートがそう宣言する。

「行くよ! 信也君!!」

「ああ! なのは!!」

なのはの呼びかけに信也が応え、

「アルフォース…………」

「………………バスターーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

2人の掛け声と共に、特大砲撃が放たれた。

青色と桜色の魔力が絡み合うように螺旋を描き、次々と壁をぶち抜いていく。

『いや………いやぁああああああああああああああああっ!!』

クアットロは悲鳴を上げて逃げ出そうとするものの、そんな事無意味と言わんばかりに、特大砲撃はクアットロの部屋全体を呑み込み、吹き飛ばした。

その砲撃が収まった後、

「あ………ああ…………ドクターの夢が…………世界が…………」

クアットロはそう呟き、気を失った。







輝二を吹き飛ばしたカオス。

「勝った………」

カオスは、空を仰ぐ。

だがその時、カオスに影がかかった。

「ッ!?」

カオスが目を凝らすと、太陽を背にバリアジャケットのインナーのみを纏い、シャープネスクレイモアの1本をその手にもった輝二の姿。

「なっ!?」

カオスは、慌てて飛び退こうとしたが、

「ッ!?」

足が動かなかった。

見れば、足が凍り付いて地面に縫い付けられている。

先ほどのアブソリュート・ゼロの余波が届いていたのだ。

「うぉおおおおおおおっ!!」

そして、大剣がカオスの身体を一閃した。

魔力ダメージにより、意識が遠くなる。

その寸前、カオスは先ほど吹き飛ばしたと思っていた輝二を見た。

そこには、下半身しか残っていないが、バリアジャケットの外装のみが付けられた氷の身体があった。

(なる程……まんまと騙されたってわけか………)

そう思うのを最後に、カオスは気を失った。

だが、気を失ったカオスの顔は、何処か清々しかった。







ヴィヴィオは、バインドを振り解くと頭を抱えた。

「ヴィヴィオ!」

その様子を見たなのはは、ヴィヴィオに駆け寄る。

なのはの声に、

「なのは……ママ?」

そう呟くヴィヴィオ。

ヴィヴィオの反応に、なのはは笑みを浮かべるが、

「駄目! 逃げてぇ!!」

突如ヴィヴィオがなのはに殴りかかる。

なのはは咄嗟に障壁を張り、それを砕かれながらも何とか防ぎきる。

「………駄目なの?」

ヴィヴィオが呟く。

その時、ヴィヴィオの足元から玉座の間が灰色に染まる。

「ヴィヴィオ……もう帰れないの?」

震えながらヴィヴィオが呟く。

その時、警報が鳴り響いた。

『駆動路破損 管制者不在 聖王陛下、戦意喪失』

そんなアナウンスが流れる。

『これより、自動防衛モードに入ります。 艦載機、全機出動。 艦内の異物を、すべて排除してください』

その言葉と共に、ヴィヴィオが襲い掛かってきた。

「くっ!」

なのはは防ごうとするが、ヴィヴィオの拳であっさりと障壁が砕かれる。

「なっ!?」

吹き飛ばされるなのは。

なのはは何とか体勢を立て直すが、ヴィヴィオが魔力刃を発生させて斬りかかって来た。

「逃げてぇ!!」

ヴィヴィオが泣きながら叫ぶ。

すると、ヴィヴィオの前に信也が立ち塞がり、ヴィヴィオの剣を受け止める。

だが、

「ぐっ!? さっきよりもパワーとスピードが増している!」

ヴィヴィオに力尽くで押し切られ、後退する。

「駄目……さっきまでコントロールしやすいようにリミッターが掛けられてたの。 それが外れちゃった……だから……」

ヴィヴィオは泣きながらそう言うが、ヴィヴィオの意志に反して、ヴィヴィオの身体は信也となのはに襲い掛かる。

2人は、ヴィヴィオの攻撃をやり過ごしながらチャンスを窺う。

その時、ヴィヴィオが砲撃を準備していた。

なのはも、負けじとエクセリオンバスターを放つ。

2つの砲撃がぶつかり合うが、

「ッ!?」

なのはの砲撃が圧倒的に押されている。

「くっ! シャイニングVフォース!!」

信也も砲撃を放ち、何とか拮抗状態に持っていく。

「ヴィヴィオ! 今助けるから!」

なのはが叫ぶ。

「駄目なの! 止められない!!」

「諦めちゃ駄目だ!!」

ヴィヴィオの叫びに信也が叱るように叫んだ。

2人は、ヴィヴィオの砲撃を何とか相殺する。

だが、その一瞬にヴィヴィオは2人の後ろに回りこんでいた。

「なっ!?」

信也が声を漏らした瞬間、

「ううっ!」

ヴィヴィオの拳が2人を吹き飛ばした。

床に倒れる信也となのは。

ヴィヴィオは床に降り立ち、

「もう……来ないで……」

そう悲しそうな表情で呟いた。

2人は、何とか立ち上がる。

「分かったの私………もう、ずっと昔の人のコピーで………なのはマ………なのはさんも信也さんも……フェイトさんも拓也さんも、本当のママとパパじゃ、ないんだよね………」

涙を流しながら呟くヴィヴィオ。

「この艦を飛ばすための、唯の鍵で………玉座を守る、生きてる兵器……」

「違うよ」

ヴィヴィオの言葉に、呟くなのは。

「本当の両親なんて、元から居ないの! 守ってくれて………魔法のデータ収集をさせてくれる人を、探してただけ……」

「違うよ!!」

思わず叫ぶなのは。

だが、

「違わないよ!!」

叫び返すヴィヴィオ。

「……信也さんなら……もう気付いてるんでしょ?」

ヴィヴィオは、信也を見て呟いた。

「信也君?」

なのはは、信也を見る。

「ヴィヴィオの使ってた格闘術が兄さんの物で、剣技が僕。 そして魔法がなのはとフェイトの物だって事かい?」

信也がそう聞く。

「そうだよ! 悲しいのも、痛いのも……全部偽者の……作り物………私は! この世界に居ちゃいけない子なんだよ!!」

ヴィヴィオの悲痛なる叫び。

それを聞いたなのはは、

「………違うよ……生まれ方は違っても、今のヴィヴィオは………そうやって泣いてるヴィヴィオは、偽者でも作り物でもない。 甘えんぼですぐ泣くのも、転んでも一人じゃ起きられないのも、ピーマン嫌いなのも、私が寂しい時に、良い子ってしてくれるのも、私の……私達の大事なヴィヴィオだよ」

そう優しく、涙を流しながら語り掛ける。

「それにね、さっきヴィヴィオは僕達の技術を使ってるって言ってたけど………それの何処が悪いことなの?」

「えっ?」

「子供なら……憧れたモノのマネをするのは、当たり前のことだよ。 ヒーローに憧れれば、ヒーローのマネをする………親に憧れれば、親のマネをする………ヴィヴィオのやってる事は、何も悪くなんかないんだよ」

信也もそう微笑んで語りかけた。

なのはが、ヴィヴィオに一歩踏み出す。

ヴィヴィオは一歩下がる。

「私達は……ヴィヴィオの本当のママとパパじゃないけど……これから、本当のママとパパになれるように努力する」

なのはは、もう一歩踏み出し、ヴィヴィオがまた一歩下がった。

「だから、居ちゃいけない子だなんて、言わないで!」

なのはの切なる叫び。

信也は、軽くなのはを抱き寄せ、

「ヴィヴィオ………助けて欲しいって言うなら、絶対に助ける! 一緒に居たいって言うなら、ずっと一緒にいる!! だからヴィヴィオ! ヴィヴィオの本当の気持ちを……僕達に……パパとママに教えて?」

信也は右手を、なのはは左手を前に差し出し、ヴィヴィオを2人で受け入れる形になる。

それを見たヴィヴィオは、更に涙を流し、

「私は…………パパとママの事が………大好きっ……! パパとママと、ずっと一緒に居たいっ! お願いパパ、ママ………助けてっ……!」

ヴィヴィオが呟く本当の気持ち。

切なる願い。

それを聞いた2人は、

「助けるよ! 何時だって!」

「どんな時だって! 何が起きても!!」

なのはと信也に迷いは無い。

信也はブレイブハートを構え、

「ブレイブハート! 切り札を使う!」

『Yes, Master.』

「バーストドライブ!!」

『Future Mode.』

信也が魔力光に包まれ、バリアジャケットに金の装飾が追加される。

背中のエアロウイングも更に大きくなり、右腕の魔力刃も更に強力になる。

信也は、ヴィヴィオを見据え、

「行くよ……ヴィヴィオ」

信也が床を蹴った瞬間、信也はヴィヴィオの目の前に居た。

「ッ!?」

ヴィヴィオは反射的に拳を繰り出すが、一瞬で残像を残して信也は消え去り、ヴィヴィオの拳は空を切る。

だが、目では僅かに追えていたようで、ヴィヴィオは後ろを振り向き、自分の周りに数発の魔力弾を作り出すために魔力を集めだす。

しかし、

「あっ!?」

その魔力弾が完成する前に、その全ての魔力弾は切り裂かれ、四散する。

ヴィヴィオは信也の姿を確認しようとするものの、信也の姿は何処にも無い。

その時、

――ガシッ

ヴィヴィオは後ろから羽交い絞めにされ、動きを封じられた。

当然ながら、羽交い絞めにしたのは信也だ。

ヴィヴィオは、信也を振り解こうともがく。

だが、

「なのは! 今だ!!」

信也がなのはに呼びかける。

すると、桜色の光がなのはと、3機のブラスタービットに収束されていく。

なのはは、ヴィヴィオを見ると、

「ヴィヴィオ、ちょっとだけ、痛いの我慢できる?」

出来るだけ、優しく聞いた。

「………うん」

ヴィヴィオは、不安そうにしながらも頷く。

「大丈夫だよヴィヴィオ。 僕も付いてる」

「………パパ」

「うん………なのは!」

信也はヴィヴィオに微笑むと、なのはを促す。

なのはは、一度ヴィヴィオに笑いかけ、顔を引き締める。

「防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン。 いけるね? レイジングハート」

『いけます』

なのはは、レイジングハートを振り上げる。

「全力………全開!!」

収束される魔力が、更に膨れ上がる。

「スターライト………」

ヴィヴィオは、目を瞑った。

「………ブレイカーーーーーーーーーーッ!!!」

なのは本人と、3機のブラスタービットのそれぞれから、合計4発の特大集束砲がヴィヴィオに集中する。

「うわ………ああ………うぁああああああああああああっ!!」

痛みに思わず叫び声を上げるヴィヴィオと、

「く………ううっ………」

凄まじい衝撃の中、その一瞬を見逃さない為に堪える信也。

すると、ヴィヴィオの胸辺りから、ヴィヴィオと融合していたレリックが分離を始める。

「これかぁ!」

信也はそれを確認すると、右腕を振り上げ、魔力刃を発生させ、全魔力を集中させる。

そして、

「アルフォース! Vセイバーーーーーーーーッ!!!」

信也は渾身の力を込めて、そのレリックに魔力刃を振り下ろした。

レリックが真っ二つになると共に、魔力爆発が起こる。

部屋が爆煙に包まれ、何も見えなくなる。

なのはは、スターライトブレイカーの反動で、膝をついていたが、煙が晴れてきた所で何とか立ち上がる。

「………ヴィヴィオ……? 信也君………?」

なのはは、フラフラになりながらも、着弾地点に歩み寄る。

すると、

「………大丈夫」

信也の声が聞こえた。

煙が完全に晴れると、着弾地点の中心に、子供の姿に戻ったヴィヴィオを抱き上げた信也の姿。

信也はおぼつか無い足取りながらも、しっかりと一歩一歩踏み出し、なのはの方に歩み寄る。

そして、着弾時に出来た穴からヴィヴィオを先になのはに渡し、なのははヴィヴィオを抱き締めた。

「ママ……」

「ヴィヴィオ……」

抱き合う2人を見て、信也は微笑むと、自分も穴から出るために穴の端に手を掛けようとした。

すると、

「あ……」

差し出される2つの手。

なのはとヴィヴィオが笑みを浮かべながら手を差し出していた。

「ありがとう」

信也は微笑んで、2人の手に手を重ねた。



駆動炉とヴィヴィオを止めた事で、ゆりかごの上昇速度が激減し、次元航行部隊の到着が間に合う事になった。

だが、

『聖王陛下、反応ロスト システムダウン』

そのようなアナウンスが流れる。

「なのはちゃん! 信也君!」

「はやてちゃん!」

はやてが通路の奥から現れる。

すると、

『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします。 艦内の乗員は、休眠モードに入ってください』

そんなアナウンスが続けて流れ、今まで以上に強力なAMFが発生する。

その瞬間、なのはが発動していた飛行魔法がキャンセルされた。

「くっ!」

なのはは何とか無事に着地する。

はやてはリインフォースとユニゾンしているため、AMFの影響は受けなかった。

しかし、魔力が尽きかけの信也となのはではこのAMFに対抗することが出来ないため、脱出が困難になった事を示していた。






次回予告


ゆりかご内に閉じ込められる信也達。

だが、スバルやティアナ、輝二の活躍により事無きを得る。

ゆりかごが消滅し、一件落着に思われたその時、遂に奴等が現れた。

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十七話 目覚める絶望! 七大魔王復活!!

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第二十六話の完成。

ようやくスカリエッティ編が終わります。

次回から七大魔王編に突入。

多分、七話か八話位になると思います。

さて、プロローグから引っ張りに引っ張りまくった信也の切り札が遂に登場。

まあ、予想してた方も多いでしょうが、フューチャーモードです。

さて、次回からオリジナル展開ですが、頑張ります。




[8056] 第二十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/05 17:24


ヴィヴィオの救出に成功した信也となのは。

はやても合流するが、強力なAMFにより脱出が困難になってしまう。



第二十七話 目覚める絶望! 七大魔王復活!!



ギンガを止める事に成功したスバルは、ギンガと友樹を介抱していた。

そこに、

「スバルー!」

ティアナと純平が駆け寄ってくる。

「ティア! 純平さん!」

スバルが、嬉しそうな顔で返事をした。

「大丈夫だった?」

ティアナが確認を取る。

「わ、私は大した事無いけど、友樹さんが………」

壁に背を預ける友樹に視線を移す。

「友樹、大丈夫か!?」

純平が声を駆ける。

すると、友樹は顔を上げ、

「何とかね………動けないけど……」

そう返事を返した。

その時、

「皆! 無事だったか!」

カオスを背負った輝二と、リィンが現れる。

「源一尉! 無事だったんですね!」

ティアナがそう言う。

「ああ。 状況は?」

輝二が尋ねると、

「はい、こちらの戦闘機人、及び召喚師は全員確保しました。 ですが、純平さんと友樹さんが負傷。 エリオとキャロ、泉さんは、フェイト隊長の応援にいくとの事です」

「そうか……」

すると、空からヘリが降りてくる。

そのヘリのハッチが開くと、シャマルとザフィーラが現れた。

「皆、大丈夫だった?」

シャマルが心配そうに聞く。

「「はい!」」

スバルとティアナが返事をして、ティアナがふとハッチから中を覗くと、何時か乗ったヴァイスのバイクが乗せてあった。

その事を不思議に思っていると、

「船の上昇は止められたみてぇだが……」

そう言いながら、ヴァイスがヘリから降りてくる。

「あの中じゃまだ、戦いが続いてんだ」

「突入したなのはちゃん達と、連絡がつかなくなってるの」

「「えっ?」」

ヴァイスとシャマルの言葉に、スバルとティアナは声を漏らす。

「インドアでの脱出支援と救助任務。 陸戦屋の仕事場だぜ!」

「「はい!」」

ヴァイスの言葉に、スバルとティアナは返事をして、ヘリの中に駆け込もうとする。

その時、

「スバル……」

ギンガが、スバルを呼び止めた。

「ギン姉?」

スバルが振り返ると、

「これを……」

そう言って、自分のデバイスを差し出した。

一方、輝二はリィンに向き直ると、

「リィン。 お前はここでシャマルと一緒に純平達の治療を頼む」

「はいです!」

そう言って、リィンも返事を返す。

「お、俺はまだ行けるぜ!」

純平は威勢よくそう言うが、輝二が純平の右肩にポンと手を置いた。

「――――ッ!!??」

純平は、余りの痛みに蹲る。

「無茶をするな」

輝二はそう言う。

「で、でもよ……」

純平は、尚も食い下がろうとする。

すると、輝二は軽い笑みを浮かべ、

「お前達はよくやってくれたよ。 後は俺達に任せろ」

そう言って輝二もヘリに乗り込む。

純平達が見送る中、ヘリは飛び立ち、空へと向かっていった。





ゆりかご内では、はやてがクアットロを玉座の間まで連れてきた所だった。

『やはり、AMF濃度が非常に高いです。 私と融合している主は問題ありませんが、消耗した高町教導官と神原二等陸士では、このAMFに対抗する手段はありません』

アインがそう意見する。

「そんなら……」

はやてが意見を出そうとした時、

「はやて、なのはとヴィヴィオを連れて、先に脱出して」

信也がそう言った。

「えっ?」

「信也君!?」

はやてとなのはが驚いた声を上げる。

「はやてなら、なのはとヴィヴィオ……あと、2人の戦闘機人を連れても、何とか脱出できる筈だ。 僕の事は心配しないで、少し休めば動けるようになるから。 すぐに後を追うよ」

信也はそう言った。

「………………」

はやては信也をじっと見つめていたが、突然信也の右腕を握った。

「―――ッぐ!」

信也は険しい表情をして右腕を押さえる。

「この腕でか?」

はやては淡々と言った。

信也は限界を超えたフューチャーモードだけでなく、スターライトブレイカーの直撃を受けながら最大の必殺技を放ったため、右腕に掛かった負担が半端ではなく、殆ど動かせない状態であった。

「信也君!?」

「しんやパパ!?」

なのはとヴィヴィオが信也に駆け寄った。

「悪いけど、その案は却下や。 いくら信也君でも、そんな腕と残存魔力でこのAMF下を無事に乗り切れるとは到底思えへん」

はやてはそう言い放つ。

「けど……!」

信也はまだ何か言おうとしたが、

「また、なのはちゃんを泣かせるんか!?」

「ッ!」

はやてにそう言われ、信也は言葉を詰まらせる。

「前に信也君が墜ちた時、なのはちゃんがどれだけ泣いたか分かったとるんか!? また、同じ気持ちを……いや、それ以上の悲しい気持ちを、なのはちゃんに味あわせたいんか!?」

はやてに再びそう言われ、信也はハッとなる。

「ゴメン……馬鹿なこと考えてた……」

信也は申し訳無さそうに謝る。

「分かればええ」

はやてはそう言うと、

「仕方ないから歩くんや。 途中で出てくるガジェット達は、私が相手をする」

はやての言葉に、一同は頷く。

だが、

『乗員は所定の位置に移動してくだい。 繰り返します。 乗員は所定の位置に移動してください。 これより、破損内壁の応急処置を開始します。 破損内壁、及び非常隔壁から離れてください』

突然そんなアナウンスが流れる。

すると、穴を開けた壁が魔力壁に覆われていく。

それに気付いたはやてが、

「出口に急ぐんや!」

そう叫び、全員は出口に向かって駆け出すが、既に遅く、出口の隔壁が閉じてしまい、閉じ込められてしまった。





スカリエッティのアジトでは、崩落を止めるべく、フェイトがプログラムのアクセスを試みていた。

生憎拓也にはそういった知識は無いため、傍観する事しか出来ないと思っていたが、

「ん?」

拓也は気配を感じ、通路の奥に目を凝らす。

すると、通路を埋め尽くすほどのガジェットが接近してきた。

「ガジェット!? まだあんなに!」

フェイトは、一瞬驚いて操作を止めてしまうが、すぐに気を取り直して操作を続ける。

「タクヤ!」

フェイトは拓也に呼びかける。

「ああ。 任しとけ! 一体も通さねえよ!」

フェイトの呼びかけに拓也は自信を持って答え、

「うん。 信じてる」

フェイトは、操作を続けながら頷く。

「そんじゃ、いっくぜぇええええっ!!」

拓也は、ガジェットの群れに突撃した。

だが、フェイトの真上の天井に、亀裂が入った事に、2人は気付いていなかった。





その頃、輝二、スバル、ティアナを乗せたヘリが、ゆりかごの空域に到着した。

「いいか!? 船ん中、奥に進むほど強力なAMF空間だそうだ。 ウイングロードが届く距離までくっ付ける。 そいつで突っ込んで、隊長達を拾って来い!」

ヴァイスが、バイクに跨ったティアナとスバルにそう言った。

「「はい!」」

2人は返事をするが、

「あれ? じゃあ、源一尉は如何するんですか? ゆりかごの中じゃ魔法は使えないみたいですし………」

スバルが気になる事を口にした。

「フッ……そんなもの……」

輝二は不適な笑みを漏らし、デジヴァイスを取り出す。

「スピリット! エボリューション!! うぉおおおおおおおっ!!」

輝二はビーストスピリットで進化した。

「ガルムモン!!」

輝二は、ガルムモンに進化すると、

「これなら問題は無い!」

そう言い切った。

「み、源一尉まで進化しちゃった………」

管理局の一等陸尉である輝二までも許可なく進化した事に、ティアナは呆気に取られる。

「フン、後で俺が処罰を受ければ良いだけの話だ! 何より、はやての命がかかっている今、そんな命令など二の次だ!」

そう言い切るガルムモン。

「は、はぁ……」

ティアナは曖昧に返事を返す。

「おら! ぼさっとしてんじゃねえぞ! 行くぜ! ストームレイダー!」

ヴァイスはそう注意すると、スナイパーライフル型のデバイス、ストームレイダーを構える。

そして、目の前に現れるガジェットを次々と撃ち落す。

「あっ」

その射撃に、ティアナは声を漏らす。

「前に言ったな? 俺はエースでも達人でもねえ………身内が巻き込まれた事故にビビッて、取り返しのつかねえミスショットをした………死にてえくれえ情け無い思いもした……!」

この作戦が始まる前、ヴァイスの元に妹であるラグナが尋ねてきた。

ヴァイスは、ミスショット以降ラグナを避けてきたが、ラグナ自身は、昔のように仲良くやっていきたいという意思をヴァイスに伝えた。

それによって、ヴァイスは、ほんの僅かだがトラウマを克服し、再びストームレイダーを手に取った。

「それでもよ! 無鉄砲で馬鹿ったれな後輩の道を作ってやることぐらいならできらぁな!!」

ヴァイスはその言葉と共に、ゆりかごの外壁に設置されたガジェットⅢ型を撃ち抜き、その爆発によって入口を作った。

「ああっ……」

その腕前に、思わず声を漏らすティアナ。

「よし! 行けっ!!」

ヴァイスの号令で我に返る。

「は、はいっ!」

「ウイングロード!!」

スバルがウイングロードで道を作る。

「「ゴーッ!!」」

ティアナはアクセルを全開にして、走り出す。

「うぉおおっ!!」

ガルムモンも後に続いた。



ゆりかご内部に突入すると、

「本当に、全然魔力が結合しない!」

ティアナがそう漏らす。

「でも、私は戦闘機人モードでなら、撃てるし走れる!」

スバルがそう言い、

「行くぞ! 俺達ではやて達を救うんだ!」

「「はい!」」

ガルムモンの言葉に、2人は頼もしく返事を返した。




スカリエッティのアジトでは、

『データ解析、パスコード看破! フェイトさん!』

「うん!」

シャーリーのサポートにより、解除パスコードを入力するフェイト。

パネルを入力し終えると、続いていた振動が停止する。

「止まった……?」

『はい!』

シャーリーの言葉で、フェイトは息を吐く。

少し離れた所では、拓也が最後のガジェットを破壊した所であった。

「おっ、どうやら上手くいったみたいだな」

拓也も内心安堵する。

そして、フェイトの苦労を労う為に、歩き出したその時、

――ドガァン!

フェイトの真上の天井が崩落を起こした。

「ッ!?」

フェイトは気付くが、反応できない。

「フェイトッ!!」

拓也も駆け出そうとするが、遠く、僅かに間に合わない。

それでも駆ける拓也。

そして、フェイトが岩盤の下敷きになるかと思われたその時、

『Sonic move.』

閃光が拓也を追い抜き、フェイトを救い出す。

目を瞑っていたフェイトがゆっくりと目を開けると、そこにはホッと息を吐くエリオの姿。

「エリオ!」

思わずそう呼ぶフェイト。

すると、エリオはニッコリと笑って、

「はい!大丈夫でしたか? お母さん?」

そう言った。

「フェイト! エリオ!」

拓也が駆け寄ってくる。

「僕達は大丈夫です。 お父さん」

そう言うエリオ。

拓也は、その事にホッとする。

そして、エリオの頭に手を置くと、

「よくやったぞ、エリオ」

そう言って頭を撫でる。

「はい!」

エリオは、嬉しそうに返事をした。





ゆりかご内を突き進むガルムモン、スバル、ティアナの前に、無数のガジェットと、防衛システムが立ち塞がる。

すると、

「スバル! 俺が数を減らす! お前は撃ち漏らしを頼む!!」

ガルムモンがそう叫び、背中のブレードを展開して突っ込んでいく。

スバルは、戦闘機人モードを発動させ、ギンガから受け取ったデバイスを見つめる。

「お母さん……ギン姉……ちょっとだけ、力を貸して!」

ギンガのデバイスを握った左手を掲げる。

「うぉおおおおおおおおっ!!」

その左手に、銀河の白いリボルバーナックルが装着され、両方の拳をあわせると、白かったリボルバーナックルが、スバルと同じリボルバーナックルの色へと変化した。

ガルムモンが通った後にも、まだ何体かの敵は残っている。

「はぁあああああああああああっ!!」

その敵に向かって、スバルは拳を振りかぶった。



なのは達は、はやての砲撃によって玉座の間からの脱出に成功するものの、無数のガジェットに足止めを喰らっていた。

「邪魔やぁ!!」

はやては、エネルギー弾を放って目の前の敵を殲滅する。

だが、次から次へと湧いて出てくる。

「ええい! キリが無いで!」

はやては思わずそう愚痴る。

はやては、信也、なのは、ヴィヴィオを守りながら戦っている上に、通路の崩落などの危険性があるため、大規模な殲滅攻撃を使えないでいた。

信也は、はやてが破壊したガジェットⅣ型の破片を拾って、剣代わりにしているが、右手が使えない信也では、気休め程度の物だろう。

その時、

「ッ!?」

信也が気配を感じて、何も無い空間に斬りかかる。

――ガキィン

金属音が響き、ステルス機能によって隠れていたガジェットⅣ型が出現する。

「しもたっ!」

はやてがそれに気付き、そのガジェットに攻撃を加えようとするものの、

『主!』

リインフォースの警告で、自分の後ろでガジェットが刃を振り上げているのに気付く。

「ッ!?」

だが、もうその刃が振り下ろされようとしていた。

(あ………コーにぃ……)

その瞬間思ったことは、やはり輝二のこと。

その時、

――ヴォォォォォォンッ!

そんな唸り声を上げて、超高速でガルムモンが突っ込んでくる。

「ガルムモン! スライドエボリューション!」

ガルムモンは、デジコードに包まれる。

「ヴォルフモン!」

ガルムモンは、ヴォルフモンとなり、

「リヒト・ズィーガー!!」

すぐに光の剣を抜いて、はやてに襲い掛かろうとしていたガジェットを切り裂く。

さらに、

「はぁあああああああああっ!!」

信也達を襲っていたガジェットをスバルが破壊した。

「スバル!」

「コーにぃ!」

なのはとはやてが叫ぶ。

その時、バイクに乗ったティアナが現れ、

「お待たせしました!」

「助けに来ました!」

スバルと2人でそう言った。




こうして、無事に全員が脱出し、ゆりかごは宇宙に待機していた本局次元航行部隊によって破壊された。

これによって、一つの事件は終わりを迎える。

デジタル組を含む機動六課メンバーは、合流する為に廃棄都市区画の一角に集まっていた。

既に、ゆりかご突入メンバーは揃っており、残るは拓也、フェイト、エリオ、キャロ、泉を待つばかりである。

すると、フリードに跨ってエリオ、キャロ、フェイトが。

自分で飛ぶ拓也と泉が現れた。

地上に降りる一同。

それぞれが互いに苦労を労う中、

「フェ~~~~イ~~~~~~ト~~~~~~~ちゃ~~~~~~~~ん…………!」

凄まじく黒いオーラを纏って、はやてがフェイトに迫る。

「は、はやて? ど、どうしたの……? こ、怖いよ……?」

フェイトははやての様子に思いっきり引きながらそう尋ねる。

「よくもまあ、自分の身体の事を何も言わずに出撃してくれたなぁ………?」

はやては、凄まじくドスの聞いた声で、フェイトにそう言う。

「は、はやて…………そ、それは……………」

理由に思い当たったフェイトは、冷や汗を流す。

「え? フェイトちゃんがどうかしたの?」

なのはが首を傾げながらそう尋ねる。

するとはやては、

「丁度ええわ………この際フェイトちゃんの口から、ハッキリと発表してもらうで!」

そう言った。

「ええっ!?」

フェイトは、声を上げる。

「フェイトちゃん……これも黙っとった罰の一つや! さあ、キリキリ吐けやぁ!」

変にテンションが上がっているはやてに押し切られ、フェイトは皆の前に出る。

全員の視線が、フェイトに集中した。

訳を知っているメンバーは、やや苦笑気味。

そして、フェイトは頬を赤く染めながら俯き、

「………えっと………その…………」

少し、モジモジとした後、

「…………子供が…………出来ました……………」

ボソッと呟いた。

「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」

知っていたメンバー以外が、口を揃えて、聞き間違い?といった声を漏らす。

「……………お腹の中に、赤ちゃんがいるんです……!」

フェイトは、もっとハッキリと口にした。

その瞬間、

「「「「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!????????」」」」」」」」」」

当然の如く驚愕の声を上げた。

「嘘っ!? フェイトちゃんホント!? 冗談なんかじゃなくて!?」

なのはが思わず確認を取る。

「う、うん………シャマルに診てもらったから、間違いないよ………」

フェイトはそう肯定する。

他のメンバーは、口を開けて固まっている。

すると、

「ねえ? フェイトママがどうかしたの?」

唯一理解していなかったヴィヴィオが、なのはに問いかける。

「え……? えっとね………なんて言えばいいのかな?」

なのはがどうやって説明したものかと考えていると、

「簡単に言えばな、フェイトちゃんのお腹の中には、ヴィヴィオの弟か妹がおるってことなんよ。 もしかしたら、その両方かも知れへんけどな」

はやてがそう説明する。

「ホント!?」

ヴィヴィオが嬉しそうな顔をして、フェイトを見上げる。

「う、うん………両方って事はないと思うけど………どっちかが居るのはホントだよ」

フェイトがそう言ったとき、

「あ。 両方の可能性ありますよ」

シャマルが思い出したように言った。

「「え?」」

拓也とフェイトが声を漏らす。

「あの時、フェイトちゃんに子供が出来た事に驚きすぎて伝え忘れていたんですけど、フェイトちゃんの子供、二卵性の双子ですから」

シャマルのその言葉に、

「「ええっ!?」」

2人は驚く声を上げた。

「まだ性別は分かりませんけどね」

シャマルがそう付け加える。

「「……………………」」

お互いに顔を見合す拓也とフェイト。

すると、拓也は頭に手を置き、

「あ~……はやて」

はやてに声を駆ける。

「はい。 何ですか?」

はやてがそう返すと、

「俺、管理局に入るわ」

驚くべき一言を口にした。

「ええっ!? で、でも、あれほど管理局に入ることを嫌がっとったのに、いきなりなんで……?」

はやては、驚きながらもそう問いかける。

「仕方ないだろ? 1人ならともかく、双子なら養育費は単純に倍。 そして俺はまだ学生なんだぞ。 就職先もまともに決まってない上に、学校休みまくってるから、留年確実だ。 そんなんで養ってける訳ないだろ」

拓也は理由を述べる。

それを聞くと、

「それだったら、僕達がお金を出します!」

「はい!」

エリオがそう言って、キャロも頷く。

「アホウ!」

拓也がエリオの額にデコピンする。

「あたっ!?」

「そんな情け無いこと出来るわけないだろ!? お前等の親になると決めて、早速子供の脛齧れるか!」

拓也はそう言う。

確かにそうなれば親の威厳もへったくれも無い。

「これは俺が決めた事だ。 後悔はしない!」

拓也はそう言い切った。

「………わかりました。 そんなら、入局手続きをしときます」

はやてはそう言い、

「頼む」

拓也は頭を下げた。

その時、

――パチ パチ パチ

突然響く拍手の音。

その出所に視線を向けると、

「クスクス……中々見応えのある茶番だったよ……」

ビルの屋上の端に腰掛ける、ルーチェモンの姿。

「ルーチェモン!!」

拓也が叫ぶ。

「やあ炎の闘士。 元気そうで何よりだ」

ルーチェモンは、余裕の表情でそう言った。

「おかげさまでな! 何で今姿を現したのかは知らねえけど、丁度いい! ここでお前を倒せば!」

拓也はそう言いながら前に出る。

輝二、輝一、純平、泉、友樹も前に出た。

「クククッ……分かってないねぇ。 何故僕が堂々と君達の前に出てきたと思う?」

ルーチェモンは、余裕の表情を崩さずにそう言った。

「何っ!?」

拓也はそう漏らすが、

「………ッまさか!?」

輝二が何かに思い当たったのか、声を上げた。

「クスクスッ……光の闘士は気付いたようだね……」

ルーチェモンがそう言うと、ルーチェモンの周辺に不気味な闇を纏ったデジタマが浮かび上がる。

「そのデジタマは……?」

「もしかしてっ!?」

泉と友樹が声を上げる。

「その通り……これが七大魔王のデジタマさ。 そして、復活に必要なエネルギーは、もう十分に溜まっている」

「何だって!?」

ルーチェモンの言葉に、純平が驚愕する。

「それから、教えといてあげよう。 君達は、今まで襲ってきたデジモンを僕の手駒と思っていたようだけど、それは違う」

「如何いう事だ!?」

輝一が叫ぶ。

「君達に差し向けたデジモンは、デジタルワールドから持ち出したデジタマの、ほんの一割にも満たない」

「えっ?」

なのはが、声を漏らす。

「僕が七大魔王の復活の為に目を付けたもの。 それは、ロストロギア」

「何!?」

フェイトも驚く。

「この世界のロストロギアは、莫大なエネルギーを持つものが多い。 僕はそれを利用して、七大魔王復活の為のエネルギー源としようとした。 だが、エネルギーの総量はともかく、この世界の技術では、取り出せるエネルギー量は少ない。 それでは復活に時間がかかる。 そこで閃いたのがデジモンさ。 ロストロギアから取り出せるエネルギー量は、七大魔王復活には遠く及ばなくても、通常のデジモンを進化させるには十分だった」

「まさかっ!?」

そこまで話を聞き、はやてが気付いたように叫ぶ。

「そう。 ロストロギアのエネルギーでデジモンを進化させ、そのデジモンのデータを喰らうことにしたのさ。 いわば、デジモン達は、エネルギーの増幅装置であり、僕達の餌に過ぎないんだよ!」

「貴様らぁ!!」

拓也が怒りを堪えきれずに叫ぶ。

ルーチェモンは、歪んだ笑みを浮かべると、

「さあ! 七大魔王復活の時だ!!」

ルーチェモンが叫ぶと、デジタマに纏わりついていた闇が、大きく、怪しく輝く。

「折角だ、紹介してあげよう」

ルーチェモンがそう言うと、空に暗雲が広がってゆく。

すると、デジタマの一つが海に向かって飛んでいった。

そして、海の中にデジタマが飛び込むと、

「嫉妬のリヴァイアモン!!」

ルーチェモンが叫んだ瞬間、海が大きく盛り上がり、その中から全長が軽く1kmを超すと思われる朱色の巨体。

口が身体の半分近くを占め、二股の尾を持ったワニの様な姿のデジモンが姿を現す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――リヴァイアモン

・究極体 魔王型 ウィルス種

 リヴァイアサンをモデルにした嫉妬を司る七大魔王。

ワニのような巨大な顎を持つ魔王型デジモンで「悪魔獣」の異名を取る。

七大魔王の中でも最大級の攻撃力を持ち、その声を聞いただけで天使型デジモンどころか同じ魔王型デジモンすら恐れ慄いて逃げ出してしまうとされる。

デジタルワールドに救う根源的な悪の存在そのものとされるが、その体はデジモンとしてデコード(解読)できる限界と言われており、姿を現す事は皆無に等しい。

 必殺技は、口から放つ破壊光線『ロストルム』。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「な、何て大きさ!?」

ティアナが驚く。

次に、一つのデジタマが凄まじい業火を発し、

「憤怒のデーモン!!」

ルーチェモンの言葉と共に、その炎の中から、赤いローブを纏い、正に悪魔の翼といえる翼を持った人型のデジモン。


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≪Digimon Analyzer≫


――デーモン

・究極体 魔王型 ウィルス種

 数多の堕天使型デジモンや悪魔型デジモンを統率する魔王型デジモン。

もともとは天使型デジモンの中でも最高位の存在である熾天使型のデジモンであった。

しかしデジタルワールドの善の存在(デジタルワールドを構築した人間)に逆らった、あるいは猛威を振るったためにダークエリアへと堕とされたと言われ、善の存在に深い恨みを抱いている。

 必殺技は、手から放つ地獄の業火『フレイムインフェルノ』だ。


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「ッ! 何という凄まじい炎だ!」

シグナムが、地獄の業火とも思える炎に驚愕する。

「強欲のバルバモン!!」

デジタマの一つが、更なる闇に包まれ、その中から、長い髭と杖を持ち、背中に血の様に赤い6枚の翼を持った老人の姿のデジモン。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――バルバモン

・究極体 魔王型 ウィルス種

 強欲を司る七大魔王デジモンの一体。

長い顎鬚を生やし、杖を持った老人の姿をしている。

性格は狡猾かつ残忍。また、高い知能を生かして世界を支配しようとしている策略家でもあり、同じ魔王型の究極体であるデスモンでさえも操る事が可能とされる。

“強欲”の感情を司る通り、あらゆる財宝や金品に執着しており、己の物欲を満たすためならどんな悪事も厭わない。

必殺技は、ダークエリアの邪悪エネルギーを一斉解放し、超高熱の爆破を引き起こす『パンデモニウムロスト』。


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「ぐっ! あいつ、見てるだけで気分が悪くなってきやがる!」

ヴィータが魔王が放つ威圧感に戦慄を覚える。

すると、一つのデジタマが突然落下し、

「暴食のベルゼブモン!!」

ビルの陰に入って一瞬見えなくなったと思ったら、次の瞬間には、爆音を響かせて銀色のバイク『べヒーモス』に跨り、黒い服装と紫の仮面をした人型のデジモンが、ビルの屋上に着地する。



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≪Digimon Analyzer≫


――ベルゼブモン

・究極体 魔王型 ウィルス種

七大魔王の一体で七つの大罪の暴食を司る。

多くの悪魔系デジモンを統べる能力を持ちながら、群れるのを嫌って常にあえて単独行動する。

非常にプライドが高く性格は冷酷無慈悲であるが、弱者を攻撃する事は好まない。

大型バイク型マシーンの愛車ベヒーモスを乗りこなし、攻撃の際は二丁のショットガン「ベレンヘーナ」と自身の爪を用いる。

必殺技は、両手のベレンヘーナで敵を蜂の巣にする『ダブルインパクト』。


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「何て……冷たい目………」

その視線を受け、寒気を覚えるシャマル。

更に、デジタマの一つがビルの中に飛び込み、

「怠惰のベルフェモン!!」

そのビルを内側から吹き飛ばし、身体を怪しく輝く鎖で縛りつけ、長く曲線を描く2本の角を持った、何処となく猫を思わせるような容姿をした10mを超える巨体。


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≪Digimon Analyzer≫


――ベルフェモンスリープモード

・究極体 魔王型 ウィルス種

怠惰を司る七大魔王の眠りの姿で、目覚まし時計を巻いたパグモンに似た形態を持つ。

1000年の間をこの姿で過ごし眠りが醒める“その時”を待つ。

必殺技は、口から放つ衝撃波『エターナルナイトメア』。


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「な、なんて言うか………ちょっとカワイイかも……」

予想とはかけ離れたギャップに、思わずそう漏らすスバル。

残ったデジタマの一つがルーチェモンの後ろに回って見えなくなると、

「色欲のリリスモン!!」

若く、妖美な容姿をもった女性型のデジモンとなって、ルーチェモンの上から現れた。


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≪Digimon Analyzer≫


――リリスモン

・究極体 魔王型 ウィルス種

七大魔王の一体で七つの大罪の色欲を司る。

元はオファニモンと同じく高位の天使型デジモンであったが、堕天して“暗黒の女神”と称される魔王型デジモンになったとされる。

悪なる者には寛大であるが、善に対しては冷酷非道な施しを与えるという。

右腕の爪は触れるあらゆる物を腐食させ、口からの吐息はデジモンのデータを末端から抹消し、死してなおそのデジモンに苦痛を与え続ける。

必殺技は、暗黒の吐息で相手を呪い殺す『ファントムペイン』。


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「綺麗……だけど……凄く怖い………」

思わず身を震わせるキャロ。

「そして!」

ルーチェモンが叫ぶと、デジコードに包まれ、そのデジコードが消えると、白と黒の衣を纏い、背中の右側には天使の翼を思わせる5枚の純白の翼と一番上に付く小さな1枚の翼は黒く染まっており、左側には悪魔の翼を思わせる6枚の漆黒の翼。

金の髪を持った頭部にも、それぞれ天使と悪魔を思わせる翼が左右の側頭部にそれぞれ付いている人型のデジモン。

「この私、ルーチェモン フォールダウンモード」

そう言い放つルーチェモン。


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≪Digimon Analyzer≫


――ルーチェモンフォールダウンモード

・完全体 魔王型 ウィルス種

6枚の天使の翼(首近くの一枚だけ黒く染まっている)と6枚の悪魔の翼を備え、光と闇の双方の力を併せ持つ完全体デジモン。

七大魔王の一人であり、七つの大罪の傲慢を司る。

七大魔王の中で唯一の完全体だが、同時に七大魔王の中でも最強の存在でもある。

天使としての慈愛の心と悪魔としての邪悪な心を併せ持っており、デジタルワールドの全てを滅ぼした後、新たな世界を創造しようと目論んでいる。

必殺技は、秒間数百発の拳のラッシュを叩き込んだあと、高く蹴り上げ叩き落す『パラダイスロスト』と、光と闇の力を一つにして相手を消滅させる『デッドオアアライブ』。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あ……あれが………本当のルーチェモン………」

見るだけで分かるその存在感に、エリオは声を震わせる。

ここに、七大魔王が降臨した。

「パパ、ママ………怖い………」

七大魔王の姿を見て、ヴィヴィオが怯えてなのはと信也にしがみ付く。

七大魔王の圧倒的存在感に、機動六課のメンバーは次々に心が折れそうになる。

そんな中、拓也が一歩前に踏み出した。

「ほう………」

ルーチェモンは感心したような声を漏らす。

「輝二……」

「ああ、分かっているさ」

拓也の言葉に、輝二も前に踏み出す。

「ククク……まさかとは思うが、我々に立ち向かう気か?」

ルーチェモンが見下したようにそう聞いた。

拓也は、ルーチェモンを睨み付け、

「そのまさかだよ!」

そう言い放った。

「例え、限りなく勝率がゼロに近かったとしても!」

「ほんの僅かでも希望が残されている限り!」

「私達は戦う!」

「最後まで、絶対に!」

「諦めるもんか!」

輝二、輝一、泉、純平、友樹もそう言い放つ。

すると、

「クックック………ハハハハハハハハッ!」

ルーチェモンは突然笑い出した。

「安心したよ。 もしここで心が折れてしまったらつまらないからね…………貴様達は、貴様達が言う僅かな希望までも捻り潰し、究極の絶望の中で殺してやるんだからな!!」

ルーチェモンはそう叫び、

「ならば進化するがいい! 徹底的に叩き潰してやろう!!」

そう言い放った。

拓也と輝二は前に出る。

泉、友樹、純平、輝一がデジヴァイスを取り出した。

拓也と輝二もデジヴァイスを取り出し、掲げようとした瞬間、

――ガシッ

その手が突如掴まれた。

「タクヤ……駄目っ……」

「あかん! コーにぃっ!」

フェイトとはやてがそれぞれの手を掴んで止めていた。

2人の身体は震えている。

「フェイト………」

「はやて………」

それぞれの名を呟く拓也と輝二。

「駄目……タクヤ………このままじゃ、カリムの預言の通りに………」

「いくらコーにぃ達でも、無理や……あんな化け物達に敵うわけ無い……」

フェイトとはやての脳裏には、カリムの預言の一説が浮かび上がっている。

『蘇りし彼の翼が堕ちる時、7つの大罪蘇り、世界は絶望に包まれ

10の魂集いし竜戦士と狼戦士もその力の前に倒れ伏す』

この預言は恐らく……いや、ほぼ確実にカイゼルグレイモンとマグナガルルモンが七大魔王に敗れる事を指している。

実際に七大魔王を見て、その予想が確信に変わったのだろう。

必死に2人を止めようとする。

だが、

「心配するなフェイト。 俺達は死なない」

「はやて、俺達は必ず勝つ。 約束だ」

そうフェイトとはやてに言い聞かせる2人。

そして、そっと2人の手を振り解く。

「あっ!」

「コーにぃ!」

再びルーチェモンに向き直る2人。

「ククク……別れの挨拶は済んだかな?」

そう見下すルーチェモン。

拓也達は再びデジヴァイスを構え、

「行くぞ!!」

「「「「「応!!」」」」」

デジヴァイスを掲げた。

「風は炎へ!」

「氷は炎へ!」

『風』と『氷』のスピリットが拓也に集い、

「雷は光へ!」

「闇は光へ!」

『雷』と『闇』のスピリットが輝二に集う。

『炎』、『風』、『氷』、『土』、『木』の5種類のスピリットの力で拓也は進化する。

拓也の左手にデジコードが宿る。

そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。

「ハイパースピリット!エボリューション!!」

拓也がデジコードに包まれる。

「はぁああああああああああああっ!!!」

拓也は叫び声を上げながらスピリットを宿す。

体に『炎』のヒューマンスピリット。

右腕に『風』のヒューマンスピリット。

左腕に『氷』のヒューマンスピリット。

右足に『木』のヒューマンスピリット。

左足に『土』のヒューマンスピリットを宿す。

更に『風』、『氷』、『木』、『土』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『炎』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、拓也は姿を変えた。

それは、焔の鎧を纏いし、紅蓮の竜戦士。

「カイゼルグレイモン!!」




『光』、『雷』、『闇』、『水』、『鋼』の5種類のスピリットの力で輝二は進化する。

輝二の左手にデジコードが宿る。

そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。

「ハイパースピリット!エボリューション!!」

輝二がデジコードに包まれる。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

輝二は叫び声を上げながらスピリットを宿す。

体に『光』のヒューマンスピリット。

右腕に『雷』のヒューマンスピリット。

左腕に『闇』のヒューマンスピリット。

右足に『水』のヒューマンスピリット。

左足に『鋼』のヒューマンスピリットを宿す。

更に『雷』、『闇』、『水』、『鋼』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『光』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、輝二は姿を変えた。

それは、重火器を装備した、高機動爆撃型サイボーグ。

「マグナガルルモン!!」



2体の超越形態が現れる。

それを見たルーチェモンは、

「ベルフェモン! 相手をしてやれ!」

ベルフェモンにそう指示を出した。

すると、

「安心したまえ。 君達の相手はベルフェモンだけだ。 横槍は入れない事を誓おう」

ルーチェモンは余裕を持ってそう言った。

「舐めやがって!」

カイゼルグレイモンはそう叫ぶが、

「だが、好都合だ。 行くぞ!」

冷静なマグナガルルモンがそう判断し、2人同時にベルフェモンに向かっていく。

すると、

「ベルフェモン! エターナルナイトメア!」

ルーチェモンがそう指示する。

すると、ベルフェモンの口が僅かに開き、

「皆! 伏せろ!」

カイゼルグレイモンが皆に指示を出しつつ回避運動を取る。

次の瞬間、その口から衝撃波が放たれ、廃棄都市区画を吹き飛ばす。

「「「「「「きゃぁあああああっ!!」」」」」」

「「「「「「うわぁあああああっ!!」」」」」」

六課メンバーは、その余波に必死で耐えるが、それによってヘリが横転してしまう。

衝撃が収まったところで顔を上げると、

「嘘……」

誰かが声を漏らした。

見ると、廃棄都市区画とはいえビルが立ち並んでいた光景が、一瞬のうちに瓦礫の山へと変わっていた。

だが、

「今更この位でビビるか!!」

カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは止まらない。

ベルフェモンに向かって突撃していく。

「ランプランツス!」

ルーチェモンが更に指示を出す。

鎖が放っていた怪しい輝きが増幅し、光線となって2体に襲い掛かる。

しかし、2体は紙一重でそれを避けると、カイゼルグレイモンはベルフェモンに肉薄し、龍魂剣を突きつけた。

「炎龍撃!!」

ほぼ零距離での炎龍撃。

ベルフェモンは爆煙に包まれる。

更に、

「マシンガンデストロイ!!」

マグナガルルモンが武装を乱射し、その全てはベルフェモンへと命中する。

「やった!」

その様子を見て、スバルは嬉しそうな声を上げる。

他のメンバーも、倒した、もしくは大ダメージを与えたと考えていたのだろう。

煙が晴れていく。

「「なっ!?」」

カイゼルグレイモンとマグナガルルモンが驚愕の声を漏らす。

そこには、

「む……無傷………」

輝一が声を漏らした。

輝一の言うとおり、ベルフェモンには、全くといっていいほどダメージが無かった。

その時、

――ジリリリリリリリリリリリリリ!!!

突然馬鹿でかい目覚まし時計のような音が鳴り響く。

「きゃあっ!?」

「耳が痛い!」

「一体何!?」

六課メンバーはその音に思わず耳を塞ぐ。

「一体何が……」

マグナガルルモンがそう漏らすと、ベルフェモンに巻かれていた鎖が弾け飛び、ベルフェモンが更に大きく、姿を変貌させて行く。

「言い忘れていたが、ベルフェモンは怠惰を司るだけあって怠け者でね……今までの形態はスリープモード……つまり眠っている状態だったわけさ………その状態の力は本来の一割以下………それが君達の攻撃によって目を覚ました………ククク……ベルフェモンレイジモードを相手に何処まで持つかな?」

姿を変えたベルフェモンは、山羊のような顔と6枚の悪魔の翼。

鋭い爪と、腕と足に鎖を巻いた正に魔王と呼ぶに相応しい姿。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪Digimon Analyzer≫


――ベルフェモンレイジモード

・究極体 魔王型 ウィルス種

怠惰を司る七大魔王の1体。

1000年に一度目覚める山羊のような姿の魔王型デジモン。

その力は圧倒的で、眠りから覚めたベルフェモンはその名の通り“怒りの権化”と化し、目に映る全てのものを徹底的に破壊すると言われている。

咆哮だけでも完全体以下のデジモンは即死すると言われ、葬られたデジモンは転生する事なくダークエリアに送られて魔王デジモンの餌にされてしまう。

なお、レイジとは怠惰を意味する「lazy」と激怒を意味する「rage」の二つの意味を持っている。

 必殺技は、口から放つエネルギー波『ギフトオブダークネス』。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

ベルフェモンは咆哮を上げた。

その咆哮は、大気を震わせ、クラナガン全体に響き渡る。

すると、口の前にエネルギーを集中させ、

「ヴォアアアアアッ!!」

それを放った。

「うわぁあああああっ!」

「くぅぅ………!」

カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは、間一髪避けるものの、余波により吹き飛ばされる。

そして、ベルフェモンが放ったエネルギー波の先にあったのは…………





地上本部では、後にJS事件と呼ばれる今回の事件の事後処理の会議が始められていた。

その中で、

「機動六課……よくやってくれた方だな……」

「ええ、しかし、その中で我々の命令を無視し、デジモンに進化した者が何名かいるようです」

「けしからん奴らめ! 法を破るなど、犯罪者と変わらんではないか!」

「しかし、非常事態であるため、幾分かは譲歩するべきとの意見も……」

「非常時だろうと何だろうと、法を破るなどあってはならん! 寧ろ非常時だからこそ法を守って秩序を保たねばならんのだ! 第一、何が世界を滅ぼす七大魔王だバカバカしい! 大方大げさに言っておるだけだ。 管理局が全戦力を投入すれば……」

そのとき会議室に駆け込んでくる人物が居た。

「失礼します!」

「何事だ!? 会議中だぞ!?」

「報告します! 現在、廃棄都市区画に、デジモンと思わしき生物が出現! 現在機動六課が応戦している模様!」

「ふん! 会議中に報告してくる事でもあるまい、さっさと片付けるように六課の連中に言って来い!」

その時、突然アラートが鳴り響く。

モニターが開き、

『超高エネルギー体接近!! 防壁の限界を遥かに超えています!!!』

切羽詰った声でそう報告してくる。

「なっ………」

誰かがそう漏らした瞬間、

――ゴウッ!!

エネルギー波が地上本部の会議室を丁度掠めていった。





「あ……ああ………クラナガンの街が…………」

呆然と呟くスバル。

視線の先にはクラナガンの街を一直線にぶち抜いた、ベルフェモンの攻撃の軌跡。

すると、モニターが開き、

『おい! 一体何が起こりやがった!?』

ゲンヤが叫んだ。

「あ! お父さん! 無事だったんだね!」

スバルが半分泣きそうな顔でモニターに顔を出した。

『スバルか!? ああ。 俺等は無事だが、街の被害はとんでもねえ………地上本部の防壁も軽くぶち抜いたって話だ………不幸中の幸いは、この辺は避難が済んでるから、民間人の被害は殆ど無しって所か?』

すると、はやてがゲンヤに向かって、

「ナカジマ三佐。 このクラナガンに居る全ての部隊を撤退させてください。 少なくとも、クラナガンの外に………はっきり言いますが、勝っても負けても、クラナガンは壊滅します」

そう言い切った。

そのはやてを見て、

『了解だ。 死ぬなよ嬢ちゃん』

そう言ってゲンヤは通信を切った。

はやて達は、七大魔王のほうに視線を向ける。

そこには、衝撃で吹き飛ばされながらも、瓦礫の中から立ち上がるカイゼルグレイモンとマグナガルルモン。

圧倒的な力を見せ付けられても、この2体の目に諦めの色は無い。

再びベルフェモンを見据え、

「「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」」

諦めずに立ち向かっていった。









次回予告


七大魔王の圧倒的な力の前に成す術もないカイゼルグレイモンとマグナガルルモン。

次元航行部隊も、その力の前に壊滅寸前にまで追い込まれる。

だが、ヴィヴィオの願いが、

最後の預言が現実になる時、

次元の壁を越え、デジモンと共に在りし英雄達がここに集結する!

次回!リリカルフロンティアStrikerS

第二十八話 ヴィヴィオの願い………集結! デジモン英雄譚ヒーローズ

今、未来への翼が進化する。







あとがき

第二十七話の完成。

復活までの前置きが長くなりました。

フェイトの子供の双子は、ぶっちゃけ男の子にするか女の子にするか迷ったので、いっその事両方でってことで、双子にしてしまいました。(爆)

七大魔王復活。

やり過ぎ?

ベルフェモンの攻撃に巻き込まれた人は南無~。

さて、次回の英雄とは誰でしょうか?

お楽しみに。




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