ゲンナイという人物からスピリットデバイスを受け取った3人。
そして・・・・・・
第八話 激突!デジタル組VSフォワード陣!
スピリットデバイスを手に入れた泉、友樹、純平は、魔法を使えるという事でウキウキしていた。
「私はスピリットデバイスの事については殆ど分からないから、魔法を教えるのはお兄さんに任せていいですか?」
なのはが、拓也にそう言ってきた。
「そう言われてもな・・・・・・・」
拓也は悩む。
拓也は頭で理解しているわけではなく、デジモンの時と同じ感覚で魔法を使用しているため、口ではなんとも言い表せなかった。
それでも拓也は考える。
「・・・・・・・やっぱこれしかねえか」
拓也は何か思いついたらしく、なのはに向き直る。
「なのは。信也を除いたフォワードの新人達と、この3人で模擬戦をやらせてくれ」
その言葉に、なのはは驚く。
「ええっ!?いきなりですか!?」
そう叫ぶなのは。
「まあ、俺たちのやり方は習うより慣れろって感じだからな。デジタルワールドの冒険の時もそうだったし」
そう呟く拓也。
「そういえばそうよね」
「デジタルワールドの時は命懸けだったしな」
拓也の言葉に、泉と純平が同意する。
「そういうわけだ。頼む」
「わ、わかりました・・・・・」
拓也の言葉に、驚きつつもなのはは頷いた。
シュミレーターが展開され、廃棄都市街が現れる。
その中で、泉、友樹、純平とスバル、ティアナ、エリオ、キャロが向かい合っていた。
『じゃあ皆、準備はいい?』
「「「「はい!」」」」
なのはの言葉にフォワード陣が返事をする。
『ついでに言っとくと、手加減なんかしなくていいからな』
拓也がそう言うと、
「い、いいんですか?」
ティアナがちょっと困惑気味に声を漏らす。
『ああ。それに、魔法初心者だからって舐めてると、足元すくわれるぞ。ブランクがあるとはいえ、実戦経験はお前らよりも格段に上なんだからな』
その言葉に、ハッとするフォワード陣。
すると今度は、デジタル組の方に通信を繋げる。
『じゃあお前らは、自分のデバイスに名前を付けてやれ。そうすれば、バリアジャケットが展開されるから。バリアジャケットは自分のイメージで決まるけど、大体は決まってるよな?』
「ええ!」
「おう!」
「もちろん!」
3人が元気良く返事をする。
『それじゃ、名前を呼んでみろ』
拓也の言葉に3人はそれぞれのデバイスを構える。
泉がピンクのデバイスを掲げ、
「風を運んで、シルフィード!!」
『Yes,Mam. Stand by, Ready. Set up.』
ピンクの宝石が輝く。
泉が風に包まれ、バリアジャケットを纏っていく。
薄いピンク色のタイツのようなインナーに手、足、胸、腰に薄い紫の軽鎧が装着される。
背中には蝶のような翼。
まるでフェアリモンのような姿。
『Fairy form.』
友樹が水色の宝石を掲げる。
「勇気を固めて。セルシウス!!」
『OK. My friend. Stand by, Ready. Set up.』
友樹が氷に包まれる。
そして、その氷が砕けたとき、白のインナーに緑の鎧を足と胸部に纏い、肩にも装甲を付け、顔には緑のフェイスガード。
背中にはミサイルランチャーのような物を背負った友樹の姿があった。
『Chakku form.』
純平が濃い青の宝石を握り締める。
「轟け!ヴォルト!!」
『Yes,My commander. Stand by, Ready. Set up.』
純平が雷に包まれる。
全身を濃い青と黄色の装甲で包み、頭にも小さな角の突いたフェイスガードを装備している。
3人の中で一番パワーのありそうな姿となった。
『Blitz form.』
3人が自分のバリアジャケットの姿を確認する。
「やっぱり2人ともデジモンの姿を元にしたのね」
泉がそう言う。
「そりゃあな。一緒に戦ってきた一番馴染みのある姿なんだ。当然さ」
純平が答えた。
「同じく」
友樹も同意する。
「そうね」
泉が微笑み、
「こっちは準備OKよ」
準備完了を知らせる。
『それじゃあ、始めようか』
なのはがそう言い、
『レディー・・・・・・・』
その言葉でデジタル組とフォワード陣は構える。
『ゴー!!』
「行くわよ!」
「おう!」
「わかった!」
開始と共に泉、純平、友樹は相手に向かって突っ込む。
「スバル!あんたは一番パワーがありそうな純平さんを相手して!」
「うん!」
「エリオは泉さんを!昨日のデジモンの戦いを見てたけど、近接戦闘も中々の物よ、注意して!」
「わかりました!」
「私は友樹さんを!キャロは私たち3人のバックアップに専念して」
「了解です!」
ティアナがそれぞれに指示を出し、泉達を迎え撃つ。
「いっくぞぉおおおおおおおっ!!」
スバルのマッハキャリバーのローラーが高速回転し、猛スピードで走り出す。
純平に向かって一直線。
スバルはリボルバーナックルを装備した右拳を振り上げる。
「おりゃぁああああああああああっ!!」
純平に向かって殴りかかった。
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
純平も負けじと拳を繰り出す。
2つの拳がぶつかり合う。
衝撃を撒き散らしながら、2人は負けじと力を込める。
「うぉおおおおおおっ!!」
「はぁああああああっ!!」
やがてお互いに弾かれ、間合いが開く。
「パワーは互角!」
スバルがそう判断する。
すると、純平が右拳を高く掲げる。
その右拳に電撃が走る。
「ミョルニル!サンダー!!」
その電撃を纏った拳を地面に叩きつけた。
電撃が地面を走り、スバルに襲い掛かる。
「やばっ!マッハキャリバー!ウイングロード!」
『OK.Buddy』
スバルがジャンプすると、水色の魔力光の道が現れ、スバルはその道に乗り、電撃を回避する。
「あっぶな~~・・・・・あんな魔法もあるんだ」
スバルが技をかわしてホッとしたのも束の間、
「ライトニング!ボンバー!!」
純平が全身に電撃を纏って突っ込んできた。
「マッハキャリバー!!」
スバルは叫んで右手を突き出す。
『Protection.』
リボルバーナックルから障壁が張られた。
その障壁に純平が突っ込み、魔力の衝突で爆発を起こした。
「えぇええええええええいっ!!」
エリオがストラーダを構え、猛スピードで泉に突進する。
それを泉は舞う様に避ける。
「くそっ!」
エリオが泉に向き直ろうとした時、
「ふっ!」
鋭い蹴りがエリオを襲う。
「うわっ!」
エリオは間一髪ストラーダの柄で受け止める。
吹き飛ばされながらもエリオは体勢を立て直し、地面に着地する。
すると、泉は両手の指の先から竜巻を発生させていた。
「プッレツァ・ペタロ!!」
その竜巻をエリオに向けて放つ。
「このっ!」
エリオはカートリッジをロードし、魔力斬撃を飛ばすことでその竜巻を相殺した。
「やっぱり一筋縄じゃいかないわね」
泉はそう呟くと、エリオに向かって構えなおした。
「シューーーーーーーット!!」
「スノーボンバー!!」
ティアナの放った複数の魔力弾と、友樹の放った氷の弾丸がぶつかり合って相殺する。
ティアナはすぐに物陰に身を潜める。
「流石に拓也さんの仲間なだけはあるわね。これは気が抜けないわ」
そう呟くと、念話でキャロに呼びかけた。
(キャロ、聞こえる?)
(はい、ティアナさん)
すぐに返事が返ってきた。
(友樹さんの気を引いて。その隙に私が仕留める)
(分かりました)
ティアナの出方を窺う友樹に、
「フリード!ブラストフレア!」
キャロの声が聞こえた。
友樹が其方を向くと、キャロと、口の前に火球を作り出したフリードがいた。
「ファイア!!」
キャロの掛け声と共に、火球を放つフリード。
それを友樹は飛び退くことで避ける。
その瞬間、
「クロスファイヤー・・・・・・・・シューーーーーット!!」
ティアナが放った十数発の魔力弾が友樹に襲い掛かった。
(捉えた!)
ティアナは確信した。
だが、
「アイス・・・・・・・」
友樹は全身に魔力を巡らせ、
「・・・・・カーニバルッ!!」
次の瞬間には、全身が氷に包まれ、その氷から無数の氷柱が飛び出し、ティアナの放った魔力弾を砕く。
そして、その氷が割れると、
「危なかったぁ・・・・・・」
ホッと息を吐く友樹の姿があった。
それを見たティアナは、
「流石属性特化型。一筋縄じゃいかないわ」
そう呟いて気を取り直し、勝つための策を考えるのだった。
それから、それぞれは戦い続けていたが、最初こそ新人フォワードメンバーは属性特化型の長所に戸惑いはした。
だが、フォワードメンバーは毎日過酷な訓練を行なっており、かたやデジタル組は、実戦も8年振りに行ったばかりというブランクがあり、その差が少しずつ現れてきた。
先ずは体力。
戦闘開始からあまり時間は経っていないが、デジタル組にはもう疲労の色が見え始めていた。
そして、状況判断力。
「おりゃぁああああっ!」
スバルは、マッハキャリバーで動き回りつつ、純平に攻撃を仕掛ける。
「うわっ!」
純平は、何とかその攻撃を避けて、反撃に転じようとしたが、スバルは直ぐにその場を離れる。
「ちっくしょー!動きが速いぜ!」
純平は愚痴る。
スバルは、スピードは自分の方が上と分かると、一撃離脱を繰り返すヒットアンドウェイで、純平を翻弄していた。
「でやぁあああっ!」
「くぅ!」
泉は、エリオの突撃を必死に避ける。
確かに泉は格闘能力は中々のものだが、一撃の威力は低い。
エリオは、それが分かると、真正面からの力押しに出る。
「まだまだぁ!」
エリオは、避けられても間髪いれず突撃を繰り返す。
泉は小回りが利くが、スピードそのものはエリオに及ばない。
徐々に攻撃をかする様になってきていた。
「シューーーーット!!」
ティアナが魔力弾を放つ。
「そこっ!」
友樹が氷の弾丸を放って相殺する。
だが、その時別方向から魔力弾が飛来した。
ティアナが予め別方向に撃っていた誘導弾である。
「うわっ!?」
友樹は慌てて跳んで避ける。
だが、
「かかった!キャロ!!」
待ちかねていたようにティアナが叫ぶ。
その瞬間、友樹に大きな影が掛かる。
友樹が上を見上げると、そこには成竜形態となったフリードとその背に乗ったキャロ。
そのフリードの口には、炎が集中されている。
「フリード!ブラストレイ!!」
キャロの合図と共に、その炎が友樹に襲い掛かる。
「くっ・・・・・!」
空中での移動手段を持たない友樹は、その炎に成すすべなく飲み込まれる。
「やった!」
ティアナが声を上げる。
流石にこれは決まったと思ったのだろう。
しかし、その炎の中から、1つの火の塊が飛び出し、地面に落下。
それが地面に当たると、火が消え、氷の塊が現れる。
「まさかっ・・・・!?」
ティアナが信じられないといった表情をする。
氷が割れ、中から友樹が現れた。
しかし、
「あっつつ・・・・・ギリギリだったぁ・・・・・・」
流石に無傷とはいかない様で、ダメージが見られる。
「一体どうやって!?」
キャロが疑問の声を上げる。
「多分、炎に呑まれる瞬間に、自分自身を氷で包んで、ダメージを最小限に抑えたんだわ」
ティアナがそう分析して言った。
「そんなっ!?あんな一瞬で!?」
キャロは驚愕する。
「凍結の魔力変換資質の持ち主でも、あの一瞬じゃ無理ね。氷の属性特化型だからこそ出来たんだわ」
ティアナはそう言った。
「1人じゃ不利だ。純平さん達と合流しないと・・・・・・」
友樹はそう呟くと、
地面に手を置き、
「アイスカーニバル!!」
そう叫んだ瞬間、友樹の周りの地面から無数の氷柱が飛び出し、友樹の姿を隠す。
「戦略的撤退・・・・ってね」
友樹は巨大な氷柱で身を隠しつつ、その場を離れた。
それぞれの戦いの様子をモニターで見ていた拓也達。
「このまま行くと、ティアナ達の勝ちかな?」
なのはが呟く。
「まあ、個人の総合的な能力なら、フォワードメンバーの方が上だな。あいつらは8年もブランクあるし」
拓也がそう言った。
「じゃあ、兄さんもティアナたちが勝つと思ってるの?」
信也が尋ねる。
すると、
「さてね。1つ言える事は、デジタルワールドの冒険じゃ、この位の不利な状況は、何度でもあったってことだな」
拓也はそう言って、再びモニターに目を向けた。
友樹と同じように1対1は不利と判断した純平と泉も、合流する為に動いていた。
「純平!」
「泉ちゃん!」
まず、純平と泉が合流する。
そこへ、
「純平さん!泉さん!」
友樹がビルの上から跳躍してきた。
「2人とも、状況は?」
泉が尋ねる。
「正直言って厳しいよ。流石に8年のブランクは大きいや」
友樹がそう言い、
「ああ。年下の女の子に勝てないなんて情けねえぜ」
純平が悔しそうな表情で言った。
「それは仕方ないわよ。向こうは毎日厳しい訓練を受けてるんだから。つい先日まで一般人の私達が勝てるほうがおかしいわ」
泉が気休めのように言う。
「でも、2人とも、このまま大人しく負ける気は無いんでしょ?」
友樹が尋ねると、
「「当然!」」
2人は声を揃えて言った。
純平達と同じようにティアナ達も合流していた。
「このまま行けば勝てそうだね」
スバルが言った。
「調子に乗らない!油断してると足元すくわれるわよ!」
ティアナが釘を刺すように言う。
「あっ!いました!」
フリードに乗って、空から純平達を探していたキャロが声を上げる。
見れば、3人は並んで道の真ん中に立っていた。
周りにはビルが立ち並び、一本道となっている。
「真っ向勝負ってことかな?」
スバルが声を漏らす。
ティアナは考えを巡らしている。
「ティアナさん、どうします?」
エリオが尋ねた。
「・・・・・・・全員で一番強い魔法をぶつけるわ。こっちにはフリードもいるし、4対3。正面衝突なら、こっちの方が有利よ」
「そうこなくっちゃ!」
「分かりました!」
「了解です!」
ティアナの案に、全員が肯定の意思を示した。
「来たわね」
目の前に現れたティアナ達を見て、泉が声を漏らす。
このままの長期戦が不利と判断した3人は、一か八かの真っ向勝負に出る事にした。
道路の真ん中で、4人(+一匹)と3人が対峙する。
「一撃・・・・・必倒ぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・」
スバルが魔力を集中。
右腕を振りかぶる。
「クロスファイヤー・・・・・・・」
ティアナの周りに十数個の魔力弾が発生する。
「はぁあああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
エリオのストラーダに電撃が走り、エリオはそれを振り上げる。
「フリード!」
キャロがフリードの名を呼ぶと、フリードは口を開け、そこに炎が集中する。
そして、
「ディバイィィィィィン・・・・・・・バスターーーーーーーーッ!!」
スバルがディバインバスターを放ち、
「シューーーーーーーーーーーーット!!」
ティアナが十数個もの魔力弾を同時に撃ち出し、
「でえぇぇぇぇぇぇぇい!!」
エリオが地面にストラーダを突き刺すと、地面の表面を砕きながら電撃が走り、
「ブラストレイ!!」
フリードが炎を放つ。
それぞれの攻撃が、同時に3人に襲いかかる。
単純に考えれば、3人には成す術が無いように思えた。
それは、モニターで見ていたなのはや信也もそう思っていた。
しかし、
「合体技よ!」
「ああ!」
「うん!」
泉の声に、純平と友樹が応える。
泉が指先から竜巻を発生させ、
「プッレツァ・ペタロ!!」
その竜巻を放つ。
友樹が右腕を振りかぶり、
「ダイヤモンドダスト!!」
その拳を繰り出すと、氷の粒が混じった冷気が放たれ、その冷気が泉の竜巻と混じりあい、冷気の竜巻と化す。
更に、純平が両手を頭上で合わせると雷が発生し、
「トールハンマー!!」
前方に振り下ろすと共に、その雷が放たれる。
その雷が冷気の竜巻に当たると、氷の粒によって、冷気の竜巻が雷を纏うような形になる。
そして、雷を纏った冷気の竜巻は、スバルのディバインバスターを正面から撃ち破り、ティアナのクロスファイヤーシュートを全て弾き飛ばし、エリオの電撃を地面ごと吹き飛ばし、フリードのブラストレイを掻き消した。
「嘘っ!?」
スバルが声を上げる。
その雷を纏った冷気の竜巻はそのまま突き進み、フォワードの4人を巻き込んだ。
その様子を見ていた拓也達は、
「純平達の勝ちだな」
拓也は笑みを浮かべて言った。
「でも、何で純平さん達の攻撃は、ティアナ達の攻撃を撃ち破る事が出来たんですか?合計の威力ならティアナ達の方が上の筈なんですけど・・・・・」
なのはが疑問に思ったことを言った。
「まあ、それは同時に撃っただけなのと、合わせて撃った事の違いだ。そのままの力より、集中された力のほうが強いのは当たり前だろ」
拓也がそう言う。
「なるほど・・・・・個人の能力ではティアナ達のほうが上でも、結束力は敵わなかったってことだね」
信也がそう言う。
「そういう事だ。あと、ブランクがあるとはいえ、命を賭けた戦いを潜り抜けた強さを持つあいつ等が、その辺の奴らに負けるとは思わないけどな。その強さは、お前達も持っていないものだ」
拓也が、なのは達を見て言う。
「え?私達もですか?・・・・・でも、ティアナ達はともかく、私やフェイトちゃん達は、何度も危険な任務を潜り抜けてきたんですけど・・・・・・」
拓也の言葉に、疑問を持ったなのはがそう漏らす。
すると拓也は、
「まあ、お前達をバカにする気は無いけど・・・・・・俺から言わせれば、お前らの危険な任務って言うのは、あくまで命の危険がある・・・・・といった程度・・・・・・・相手にするのも格下が多かったはずだ。10年前の闇の書事件の時でも、シグナム達には完全な殺意はなかったしな。でも、俺達は違う。負ければ即、死に繋がるような戦いの連続・・・・・・しかも相手は自分達よりも同等から格上が殆ど・・・・・・・ちょっとでも間違っていたら俺達は死んでいてもおかしくはなかったんだ」
悪の五闘士との戦い。
ケルビモンとの決戦。
ロイヤルナイツとの激闘。
そして、ルーチェモンとの最終決戦。
何れも、本当に命を賭けた戦いだった。
特に、ロイヤルナイツとの初戦で、デュナスモンのブレスオブワイバーンを喰らって生き残れたのは、単純に運が良かっただけ。
ブレスオブワイバーンのエネルギーで出来た空間の裂け目に飲み込まれ、月まで飛ばされたから助かった。
本来なら死んでいたのだ。
それだけの命を賭けた戦いを乗り越えた拓也達の持つ強さは、互角の力を持つものの戦いの上ではそうとうなアドバンテージになる。
今回の戦いでも、8年ものブランクがある純平達が勝つことが出来たのも、その強さをもっていたからである。
なのは達は、拓也の言葉を聞くと、私達もまだまだだねと、心の中で思ったのだった。
同じ頃、はやてとリィンは陸士108部隊の隊舎を訪れていた。
理由は、レリックの密輸ルートの捜査協力である。
はやては、108部隊の部隊長であり、スバルの父親でもあるゲンヤ・ナカジマ三佐に協力要請を申し出ていた。
はやての説明にゲンヤは、
「いいだろう。引き受けた」
そう言って、引き受けることを了承した。
「ありがとうございます!」
はやては礼を言う。
「人選は・・・・・そうだな・・・・・カルタスとギンガ。それに・・・・・」
ゲンヤは、はやての顔を見ると、
「お前に縁の深い、あの2人もつけてやる」
そう言った。
「えっ?いいんですか!?あ、いえ、私も元々レリックの事とは別で要請しようとしてたんですけど・・・・・」
その言葉で誰の事か見当をつけたはやてが驚く。
「別の事?」
はやての言葉が気になったゲンヤが尋ねる。
「ええ。ナカジマ三佐は聞いていますか?デジモンと呼ばれる生物のことを」
はやてがそう言うと、
「まだ小耳に挟んだ程度だが・・・・・デジタルモンスター・・・・略してデジモンだったか?」
ゲンヤは確認するように呟く。
「はい、その通りです。で、そのデジモン対策として、あの2人をお借りしたかったんです」
はやてがそう言う。
「それは元々協力させるから構わんが、何であの2人なんだ?」
「あの2人は、10年以上前にデジモンに深く関わっているんです。そして、デジモンに対抗する力を使える6人の内の2人でもあるんです」
はやては簡単に説明する。
「なるほどな・・・・・・まあ、好きに使ってくれ。どちらにしろ、知った顔なら使いやすいだろう」
「はい。こちらはテスタロッサ執務官が捜査主任になりますから、ギンガもやり易いんじゃないかと」
別の部屋では、リィンとスバルの姉であるギンガが話し合っていた。
「そうですか・・・・・フェイトさんが」
「はいです。六課の捜査主任ですから、一緒に捜査に当たってもらうこともあるかもですよ」
「これは、凄く頑張らないといけませんね!」
「はい!・・・・・あ、そうだ」
リィンが思い出したように言う。
「捜査協力に当たって、六課からギンガにデバイスを一機プレゼントするですよ」
「デバイスを?」
「スバル用に作ったものの同型機で、ちゃんとギンガ用に調整するです」
「それはその・・・・・凄く嬉しいんですけど、良いんでしょうか?」
ギンガはちょっと困った顔をする。
「大丈夫です!フェイトさんと一緒に走り回れるように、立派な機体にするですよ」
「ありがとうございます!リィン曹長!」
と、その時、
「リィン?」
とある2人がギンガの後ろに立っていた。
「あ、源一尉、木村一尉!」
ギンガは振り向いて言った。
その2人は、輝二と輝一。
この2人は108部隊の隊員であり、丁度リィンの声を聞きつけて、様子を見に来たのだ。
リィンは、輝二がいる事に気付くと、顔が見る見るうちに喜びの表情になり、
「とーさま!!」
喜びを表すように輝二の周りをくるくると飛び回り、
――ポンッ
という音と共に、リィンのサイズが身長30cmから、普通の少女の大きさに変わり、輝二の背中に抱きついた。
「おっと・・・・」
輝二は抱きつかれた勢いで少し体勢が崩れたが、問題なく立て直す。
そして、
「久しぶりだな。リィン」
そう微笑みかけた。
「はいです!とーさまも久しぶりですぅ!」
リィンも背中に抱きついたまま、笑顔でそう言った。
「リィン、久しぶり」
輝一も笑いかける。
「はい!おじさまもお久しぶりです!」
リィンは輝一にも笑顔でそう言った。
その様子を見ていたギンガはクスリと笑い、
「相変わらず仲がよろしいですね」
そう言った。
「はいです!リィンはとーさまが大好きですぅ!」
そう言うリィンは見た目相応の少女に見えて、微笑ましい。
「リィンがここにいるって事は、はやても来てるのか?」
輝二がそう尋ねる。
「もちろんです!かーさまは、今はナカジマ三佐に協力要請を頼んでいて、了承された所ですぅ。とーさまやおじさまも協力要員の中に含まれているですぅ!」
リィンの言葉に、輝二と輝一は驚いた表情をした。
「スバルに続いて、ギンガまでお借りする形になってしもうて、ちょっと心苦しくはあるんですけど・・・・」
はやてが少し言いにくそうに言った。
「なぁに、スバルは自分で選んだ事だし、ギンガもテスタロッサのお嬢と一緒の仕事は嬉しいだろうよ」
「はい!」
「それに、あの2人もな」
ゲンヤはそう言って茶をすすると、
「お前ら最近忙しくて会って無いだろ?」
そう尋ねる。
「えっと・・・・その・・・・」
ゲンヤの言葉に、はやては困ったように言葉を濁す。
「全く、若いモンが無理しやがって。若い内はもっと好きなことをやるんだな。恋でも何でも」
「あうぅ・・・・・」
ゲンヤの言葉に、はやては顔を赤くして俯く。
その時、通信が繋がり、
『失礼します。ラッド・カルタス二等陸尉です』
「おう。八神二佐から、外部協力任務の依頼だ。ギンガと源、木村連れて、会議室でちょいと打ち合わせしてくれや」
『はっ!了解しました!』
モニターが閉じる。
「つーことだ」
ゲンヤがはやてに向き直りながら言った。
「あ、ありがとうございます」
はやては、気を取り直して、そう言って立ち上がった。
「打ち合わせが済んだら、飯でも食うか?あいつ等も誘ってな」
「あ、は、はい!ご一緒します!」
はやては、少しどもりながらも返事をした。
はやてが会議室の前に来ると、
「あ、かーさま!」
輝二に肩車されたリィンがはやてに気付き声を上げた。
「あ、コーにぃ、イチにぃ」
はやてが声をかける。
「久しぶりだな、はやて」
「はやて、久しぶり」
輝二と輝一もそう返す。
すると、リィンが輝二の肩から降りると、左右それぞれの手で、輝二とはやての手を取り、
「えへへ・・・・こうして3人揃うのは久しぶりですぅ!」
リィンは本当に嬉しそうに言った。
「ああ、そうだな」
輝二は小さく頷く。
「ふふっ・・・・」
はやては、少し頬を赤くしながらも微笑んだ。
因みに、傍にいた輝一、ギンガ、カルタスが、この3人を見て、本当の親子のようだと思っていたのは言うまでも無い。
その夜、フェイトとシャーリーは、首都中央地上本部で、データの確認を行なっていた。
データは、レリックの物。
そして、ガジェットのもの。
ガジェットの残骸データを確認していた時、フェイトがある物に気付いた。
「ちょっと戻して!さっきの三型の残骸写真」
フェイトの言葉でシャーリーがパネルを捜査して問題の場所を表示する。
「それ!」
写真には、回路が写されており、その中央部分には、青い宝石のようなもの。
それは正に、
「ジュエルシード・・・・・・」
フェイトが呟く。
「随分昔に、私となのはが探し集めてて、今は、局の保管庫に保管されている筈のロストロギア」
「ほ~、なるほど・・・・・・って!?何でそんなものが!?」
「シャーリー!ここ。この部分を拡大して!何か書いてある」
フェイトが、同じ写真に写っていた金属プレートを拡大するように指示する。
シャーリーが指示通りに拡大すると、金属プレートに文字が刻まれていた。
「これ、名前ですか? ジェイ・・・・・」
「ジェイル・スカリエッティ・・・・・・・・Dr.ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連事件を始めとして、数え切れないぐらいの罪状で、超広域指名手配されている、一級捜索指定の次元犯罪者だよ」
フェイトがそう説明する。
「次元犯罪者・・・・・」
「ちょっと事情があってね。この男の事は、何年か前から、ずっと追ってるんだ」
「そんな犯罪者が、何でこんな分かりやすく自分の手がかりを?」
「本人だとしたら挑発。他人だとしたらミスリード狙い。どちらにしても、私やなのはがこの事件に関わっている事を知ってるんだ。だけど、本当にスカリエッティだとしたら、ロストロギア技術を使ってガジェットを製作できるのも頷けるし、レリックを集めている理由も想像がつく」
「理由?」
「シャーリー。このデータを纏めて、急いで隊舎に戻ろう。隊長達を集めて、緊急会議をしたいんだ」
「はい、今すぐに」
そう言って、シャーリーはデータを纏めだす。
事態は今、大きな進展を迎えようとしていた。
次回予告
ホテル・アグスタで行なわれるオークションを護衛する事になった機動六課。
そこへ襲い来るガジェット達。
そして、デジモンの姿もその中にあった。
機動六課は、無事にホテル・アグスタを守り抜けるのか!?
次回!リリカルフロンティアStrikerS
第九話 ホテル・アグスタ
今、未来への翼が進化する。
あとがき
こちらではお久しぶりでございます。
約七ヶ月振りの更新です。
いや、まさかこれだけの期間が開くとは思いもしなかった。
只今、スランプという泥沼から顔を出し、岸に生えている草を掴んだ所です。
このまま這い上がれるか、草が切れて再び泥沼にはまるかは分かりません。
まあ、とりあえず頑張っていきます。
因みに、デジタル組3人のデバイス名は、
泉のシルフィード⇒これしかないと初めから思ってた。
純平のヴォルト⇒電圧のVの発音を少し濁した。
友樹のセルシウス⇒シヴァとどっちにするか悩んだ結果、名前の響きでこっちに決まりました。
友樹の技については、
ツララララ~~~~~⇒アイスカーニバル
ガチガチカッチン⇒ダイヤモンドダスト
となっております。
流石に20歳で「ツラララララ~~~~」とか「ガチガチカッチン」なんて言わせたくなかったし。
スノーボンバーはともかく。
あと、大概の人は知っているでしょうが、とらハ板にて、『リリカルなのは~生きる意味~』を新しく投稿しています。
もし、見て無い人がいれば覗いて見て下さい。(オリ主最強この上なく、ハーレムなので、苦手な人は注意)
リリフロとゼロ炎と比べると、人気がぶっちぎってますが・・・・・・・
では、次も頑張ります。