「キャ――――――!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
別に佐渡島からでも関係ないだろう。
「あの千冬様にご指導いただけるなんてうれしいです!」
「私、お姉さまの為なら死ねます!」
「・・・・・・・・・毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。関心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」
去年と変わらない、きゃいきゃいと騒ぐ女子達に思わず口から出てしまう。しかし、それも女子に話題という餌を与えるに等しかった。
「きゃあああああっ!お姉さま!もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして~!」
あいもかわらず、馬鹿共が。
しかし、これは言葉にはしない。言っても効果が無いからだ。とりあえず、回りの女子の声を無視して目の前にいる男子。この学園で初めての男子生徒を見る。
「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は―」
パァンッ!本日三度目。この馬鹿者、女子の話題に油を注ぐな。
「織斑先生と呼べ」
「・・・・・・・・はい。織斑先生」
遅い。既に教室は『織斑一夏は織斑先生の弟』の話題でもちきりだ。騒ぐのなら、私のいない所で騒げ。やかましい。
――弟。そう、私の弟。世界で唯一つの肉親。
本来ならこの学園にすら入れないはずの男であり、私が守るはずだった弟。
しかし、何の因果か、この学園に来てしまった。おそらく世界で一番危険なこの学園に。
この学園に入ってしまった以上。弟が(当たり前であるが)男であること。そして、この学園特有の教育方針から世界が彼に『どんなことをしてくるか』わからなくなってしまった。これでは一夏を守ることは難しくなる。
(だが、かわりに身を守る力を手に入れた。か)
起きてしまった誤算は大きい。しかし、代わりに力を弟は手に入れた。今は力を使いこなすことはできないだろうが、使い方を教えればいい。そのためにこの学園はある
(ふふっ、覚悟しろよ一夏。私の教育は―――――)
「ええええええええええええええええええ!?」
教室が揺れるかと思うほどの大声。それはこの教室ではなく、他の教室。おそらく『例のクラス』のものだろう。
ともかく、さっさと自己紹介を終わらせないと次の授業に響く。先ほどの大声のおかげで生徒達はおとなしくなっている。ちょうどいい。
「さっさと自己紹介を進めろ!SHR中に終わらなかったら―――」
「あの、織斑先生。ちょっといいですか。」
「――――。何ですか。村上先生。」
言葉をさえぎったのは3組担当の村上結(むらかみゆい)先生。体育系でいつもジャージを着ている人で、持ち前の明るさで生徒からも信頼されているいい先生だ。おかげで生徒からラブレターをもらったりといろいろ話題に尽きない先生とも言われている。…らしい。よくわからん。
そんな悩みを持つことを知らないような人が、珍しく困った顔でこちらに手招きをしている。
「まったく。――山田君。後を頼む。」
「は、はい!」
一組を副担任の山田真耶に任せると廊下に向かう。そこには村上先生と一人の女生徒がいた。
「この女子が何か問題でも起こしたんですか?」
「―彼女じゃないんです。」
―――――うん?
「では、なぜ彼女が?他に何か問題でも?」
「だから、彼女じゃないんですよ!」
わけがわからない。この女生徒に問題が無いのなら、なぜここにいる?それとも他の問題なのだろうか。
村上先生は何かを伝えようとしているのだが、どう伝えたらいいのかわからないようであー、うー、と言いながら悶えている。女子の方も、心底「なぜ自分がここに連れてこられたのか?」という顔をしている。
それから一分ほどして、結局まとまらなかったのか村上先生は大声で言い放った。
「だから、彼女じゃないんです!」
「ですから、その女子が問題じゃないなら―――」
「彼女じゃなくて、彼なんです!!」
村上先生の言葉を聞いて。私は。
「―――――は?」
これしか言えなかった。
あとがき
というわけで始めましたISSS。あ、S三つ。
初めての投稿でいろいろビクビクしておりますが、いかが・・・いかがというほど書いてませんがいかがでしたか?おかしくないっすかね?
今回は織斑先生視点でお送りしましたが、次から(今回もちょろっと出ましたが)主人公視点で始まります。
ああ、出しちまった。これからどうなるのだろう(ガクガクブルブル)
もう逃げられませんよ(ニコ)ひい!
もし気に入られましたら、これからも温かく見下してください。
それでは!