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首相、浜岡原発の全原子炉停止を要請 防波壁完成まで

2011年5月6日20時53分

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 菅直人首相は6日、東海地震の震源域である静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機のほか現在稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉停止を要請したと発表した。津波対策などで中部電が2〜3年後の完成を目指している新たな防波壁新設までを期限とした。これらの要請は海江田万里経済産業相を通じて中部電に伝えた。

 中部電は判断を保留している。首相の政治判断で稼働中の原発が止まれば、初めてのこととなる。

 首相は同日夜、首相官邸で記者会見して明らかにし、「浜岡原発で重大な事故が発生した場合、日本社会全体におよぶ甚大な影響を併せて考慮した結果だ」と強調。停止要請を出した理由について、浜岡原発が東海地震の想定震源域上にあるとして「30年以内にマグニチュード(M)8程度の地震が発生する可能性が87%という数字も示されている」と説明。特有の事情があるとの認識を示し、浜岡以外の原発への対応については言及しなかった。

 原発停止の期間については「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間、すべての原子炉を停止すべきだと判断した」と説明した。中部電は海岸沿いの高さ10メートル以上の砂丘と原発の間に、高さ15メートル以上の防波壁を2〜3年後をめどに新設する予定だ。

 停止要請までの経緯については「先の震災とそれに伴う原子力事故に直面し、私自身、浜岡原発の安全性について様々な意見を聞いてきた。熟慮を重ねた上で内閣総理大臣として本日の決定をした」と語った。今後の中部電管内の電力需給については「需給バランスに大きな支障が生じないよう政府として最大限の対策を講じていく」と強調した。

 ただ、首相には法律上、原発の運転停止を指示する権限がない。首相も「指示とか命令という形は現在の法律制度では決まっていない」と認めた。首相は、中部電側が要請を断った場合の対応については「十分にご理解いただけるように説得して参りたい」と述べるにとどめた。

 政権が原発停止要請に踏み切った背景には、浜岡原発から20キロ圏に東海道新幹線や東名高速などが走っていることや、東京電力福島第一原発の事故を契機に国民世論に浜岡原発への危惧が高まっていることがある。川勝平太静岡県知事ら地元自治体の首長も、新たな安全基準を満たさない段階での浜岡原発の稼働に難色を示していることがある。

 首相は4月下旬から側近らと意見交換を重ね、具体的な調整を進めてきた。首相は6日、海江田氏や枝野幸男官房長官、仙谷由人官房副長官、細野豪志首相補佐官らと会談し、停止要請を決断して発表した。

     ◇

 中部電力の水野明久社長は「経済産業大臣より、本日午後7時に、浜岡原発の運転停止に関する要請を受けた。当社としては要請内容について迅速に検討する」とのコメントを出した。

     ◇

 〈浜岡原発〉 中部電力では唯一の原発で、静岡県御前崎市にある。1〜4号機は福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)、5号機は改良型沸騰水型炉(ABWR)。1号機(1976年運転開始)と2号機(78年開始)は2009年1月に運転を終了し、廃炉の手続き中。現在、代替として6号機の新規建設の計画がある。中電が発電したり他社から受けたりした電力量実績は、10年度速報値で1423億キロワット時、そのうち浜岡原発の発電電力量は153億キロワット時と、1割強だった。

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