ジャンプSQ.
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マンガ家 直撃インタビュー[モノガタリ]

――おお、それはすごい!やはり人気が出てくると描きながら徐々に楽しくはなっていきましたか。

●河下 そうですね、だんだん楽しくなっていきました。あとあれからだいぶ時間が経っているから、楽しい思い出だけが残ってるというのもあると思います。多分当時は泣きながら描いてたと思う(笑)。

――週刊で、長い間連載をされるというのは相当きついですもんね。

●河下 そうですね。連載中はずっと描いているだけなので、出かけたりもあまりしないし、実家にも帰らないし。だからどのくらい反応があったのかも、連載が終わるまであまりわかってなかったんですよ。地元に戻ったときに近所の人からサインを頼まれたりして、初めて実感するような感じでした。

――普段はずっとお仕事場ですしね。

●河下 会う人はアシさんか担当さんかという感じで。だから今こうやって「SQ.19」みたいな季刊誌でやっているとゆとりがあっていいなあって思います(笑)。

――激しい時代を経験していらっしゃるから、さらに強くそうお感じになるかもしれませんね。

●河下 そうですね。やっぱり週刊連載の時は納得しないうちに原稿を担当さんに渡さないといけないのが、すごくつらかったので。

――締め切りが来たらその時点で終わらせないといけないんですもんね。以前「1週間が10日あればいいのに」というようなことをおっしゃっていました。

●河下 本当にそう思ってましたね。でも、実際あったら余分の3日間は結局ダラッと過ごしちゃうと思うんですけど(笑)。でもよく考えると『いちご』の前半までは、原稿が終わった途端にアシさんたちとカラオケに行ったりしてましたね。ゲーム大会をしたり。徹夜明けなのに遊ぶ!みたいな感じでした。きちんと休まないといけないのに。プロ意識が薄かったんでしょうね。

――そうすると後半はプロ意識が強くなっていったんですか。

●河下 そうですね。やっぱりアンケートも気になるようになって、頑張るしかないなと。

――頑張るしかないというのは、時間をかけてしっかり描くということですか。

●河下 そうですね。作画時間は初期は短かったんですけど、後半になるにつれて長くなりました。

――描くスピード的には上がっていくと思うんですけど、時間をかけて描くようになったということでしょうか。

●河下 はい。速く描けるようになった分、線の数が増えたりとか。絵に関しては、多分そこで本当のプロ意識が芽生えたんじゃないですかね。デビューした時点でプロ意識をちゃんと持ってなきゃいけないんですけどね(笑)。さらに芽生えた、みたいな感じでしょうか。

――今までを振返ってみて、一番つらかったなあというのはいつですか?

●河下 『りりむ』が終わるって聞かされたときが一番つらかったですね。初めての打ち切りだったので。少女漫画のときは最初から全何話、という限定での連載だったんですよ。だから『りりむ』が終わると聞いたときはつらくて、電話線を抜いて、1日泣いてましたね……。

――1日泣いて、本当につらい状況からまた立ち上がるわけですよね。どうやって気力を奮い立たせたんですか。

●河下 いやあ、締め切りが迫ってるからです(笑)。立ち上がらざるを得ない、みたいな。多分どの漫画家さんもそうだと思います。やっぱり投げられないじゃないですか。プロですからね。

――終了まで何話か『りりむ』の続きを描かなきゃいけなかったということですか。

●河下 あと5話分ですね。やりたいと思っていたネタを、残り5話でやらせてもらった感じですね。

――そして、『いちご』へと続いていくわけですね。その次の『初恋限定。』に関してはいかがですか。

●河下 『いちご』が終わった時点でだいぶ燃え尽きまして(笑)。次の連載は何を描いていいのかわからない、みたいな感じでした。そうしたらそのときの担当さんが「オムニバスがいいよ」と無茶ぶりみたいなことを(笑)。毎週キャラクターが変わるっていうのは読者の方も覚えづらかったと思う。

――かなり複雑な人間関係でしたよね。

●河下 そうなんですよねえ。私も全部キャラを出し切ってからはだいぶ楽しくなりましたが、自分でもたまに「この子はどういう子なのかな?」みたいな感じで考えながら描いてました(笑)。

――『初恋限定。』は男の子キャラもすごく個性的でよかったですよね。

●河下 私は男の子キャラも描くのは好きなんですけどね……需要がないんですよ。

――そうなんですか?楠田君とか男の子っぽくて大好きでした。

●河下 あ、私も楠田君すごい好きなんですよ!多分、性格は一番ハンサムだと勝手に思ってます(笑)。正直、彼のことは、まだ描きたいと思いましたね。うん、楠田君だけじゃなくて『初恋』のキャラはみんな、もっと描きたいです。

――それぞれの人生がまだあるという感じがありましたよね。楠田君、ぜひ今度どこかに出してください。女性読者の需要、あると思います。

●河下 あ、『初恋』は女性の方に人気があったというのはよく聞きますね。あの人の話が好き、だとか。

 

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