――河下先生には『曾根崎心中!』で「SQ.」に初登場いただいて、現在は「SQ.19」のほうで『(G)えでぃしょん』を連載中です。かわいくて、楽しいコメディですね。
●河下 すごく楽しんで描いています。今回はノリ重視でいこうかと思ってるんですよ。
――ノリ重視ですか!テンポもすごくいいですよね。
●河下 ページも短くてぎゅっとつまってる感じなので、無駄がないところがいいのかもしれません。
――『?えでぃしょん』は少女漫画家志望の女子高生「あると」の元に未来から「G丸」というロボットがやって来て、エロ漫画を描かされそうになる……というお話です。もともとどういうところからこの設定が生まれたのですか。
●河下 担当さんが初めに提案してくれたジャンルが3つあって、それが全部、今までは言われたことのなかったジャンルだったんですよ。
――その3つ、ぜひ教えてください。
●河下 キャラものと、時間ものと……あとアイドルものですね。
●担当編集 そこからタイムスリップを使ったキャラものをやりましょうか、ってなったんじゃなかったですか?
●河下 あ、そうですね。アイドルもののほうは『Gまる』を始める少し前に週刊ジャンプのほうで描きました(「ボクのアイドル」)。
――3つの提案をされたときに、いいなと思われたんですか。
●河下 そうですね、はい。特にキャラものはいいなって思いました。やったことがないし、自分ではやろうと思わないだろうなって。というか、思いつきもしなかったので。
――思いつきもしないのを提案されて「いや、ちょっと無理です」というよりは「おもしろそう」と思われたんですね。
●河下 はい。やっぱり漫画は、何でもありなほうがいいですから。
――何でもありですか!ただ実際、描いたことのないタイプの漫画となると、今までとは違う作り方になると思うのですが。詰まったりすることもあるんですか?
●河下 いや、『Gまる』に関しては、本当にストレスなく描いていますね。壁みたいなものも、今のところないです。あくまでも今のところ、ですよ(笑)。そのうちやることがなくなる時が来るのかもしれないですけれど、当分はやりたいことがあるので。今はほんとにこう、ぽこぽことネタが浮かんできますね。
――週刊時代よりも、お色気もちょっとアップした感じですね。
●河下 そうですね。やっぱり「SQ.」なら「ここまでいけるのかな?」って思う感じはあります(笑)。わざと描いているわけじゃないんですけど。ネームを描きながら流れで勝手に生まれてくるのを描いています。
――『曾根崎心中!』ではついに一線を越えた描写がありましたね。
●河下 ああ、はいはい(笑)。ちっちゃいコマでしたけどね。でも多分、コメディだったら出さなかったという気がしますね。やっぱりあれも自然な流れで。照れもあるんですけどね。
――週刊の時は、流れで生まれてきたとしても、ちょっと抑えて描いていた部分はあったんですか。
●河下 そうですね。一応「ここまで」にしておくっていうラインは、担当さんとの約束としてもありますし、自分の中でも決まっていました。
――ここまでというのは……。
●河下 本当に具体的に言うと「胸は50%まで」とか(笑)。
――そんなにはっきり数字が!
●河下 でもだんだんゆるくはなっていっちゃいましたけどね。
――どこまで見せるか、というのが先生の場合絶妙ですよね。見せ過ぎず、見せなさすぎず、という。
●河下 そのほうが夢がありますよね。想像力で補ってもらえた方が自分の漫画にはちょうどいいかなって。でもちょっと年齢が上になっていくと「もう見ちまいたい!」と思ってる人もいたかもしれないですが(笑)。
「あると」と同じく少女漫画家志望でした
――『Gまる』の「あると」は漫画家なので、ちょっと河下先生と重ねて読んでしまう部分があるのですが。
●河下 漫画家を目指している、という設定は、一応自分がたどってきた道でもあるので、未知のジャンルのものよりは描きやすいです。取材も要らないですし(笑)。
――主人公の「あると」とご自分が性格的に似てる、という部分はありますか。
●河下 ないです、ないです(笑)。あ、でもどうなんだろう……この主人公ってエッチなことに本当はすごく興味があるのに、人の目を気にして抑え込んでるところがありますよね。そういうのは多分、この世代の女の子だったら誰でもあると思うんですよね。
――あ、確かに、中高生くらいの女の子は絶対にエッチなことに興味があると思います。
●河下 今の時代はだいぶオープンにはなったと思いますけど、地方の女の子とかはまだオープンにはしづらいと思うんです。私も地方にいたので、そうでした。
――漫画家としての「あると」と重なる部分はありますか?
●河下 私も学生のころは、普通に少女漫画を描きたいと思っていました。
――あるとは少女漫画家志望だったのにエロ漫画を描くことになっていく(?)ようですが、先生も少女漫画から少年漫画へと移行していったという。
●河下 そうですね。
――少女漫画を描こうと思っていらしたというのは、子供のころから読むのも少女漫画だったんですか。
●河下 少年漫画も少女漫画も両方読んでました。雑誌は少女誌を買っていましたね。「りぼん」で『ときめきトゥナイト』が連載していた頃です。少年漫画はコミックスで買っていましたね。ラブコメが多かったです。『きまぐれオレンジ☆ロード』、『ストップ!!ひばりくん!』、『ウイングマン』……たくさんありましたね。その後、私が大きくなったころに弟が「ジャンプ」を買い出して、私も毎週『ドラゴンボール』を読むようになって。
――読みながら、ご自分でも漫画を描きたいな、漫画家になりたいなと思うようになったんですか。
●河下 小学校高学年ぐらいから思っていたと思います。友達とノートを交換して漫画を描いてましたね。
――どんなものを描いていたか覚えていますか。
●河下 いわゆる少女漫画でしたよ。でも恋愛物というよりは……たしか忍者の、「くの一」の漫画を描いた記憶が……気のせいかもしれない(笑)。
――小学生で、くの一の漫画!いいですね。
●河下 はい(笑)。たぶん、何か少年漫画方面から影響を受けてたんでしょうねえ。サインペンでノートに一発描きだったから、絵はめちゃくちゃでしたよ。しばらくは女の子が主人公のばっかり描いてました。少女漫画家になろうと思っていたので。男の子が描けるようになったのは、ずっと後ですね。
――先生の漫画を読んだお友達はなんて言っていましたか?やはり「すごい!」みたいな感じですか。
●河下 友達だから褒めてはくれましたけどね。
――当時からやっぱりほかの方に比べてうまかったのでは。
●河下 どうなんですかね。でも今思うと、うまい子がいっぱいいたのになあと。
――でもみんな漫画家にはなっていない……。子供のころ描いていても、やはり描かなくなっていっちゃうものなんですかね。
●河下 うーん……やっぱり漫画家になるとかっていうのは、非現実的なことだと考えちゃうのかもしれないですね。
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