東日本大震災

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東日本大震災:「古代湖」内の被害突出 福島「郡山湖」

東日本大震災で倒壊した福島県矢吹町の民家=小林達也さん提供
東日本大震災で倒壊した福島県矢吹町の民家=小林達也さん提供

 東日本大震災で、10万年前に福島県中部の内陸にあったとされる古代の湖「郡山湖」の内側で、特に家屋倒壊などの被害が大きかったことが、同県玉川村出身で東大大学院生の小林達也さん(23)=地理学専攻=の調査で分かった。同じ地域でも湖岸の外側では被害が少なく、小林さんは「建物の老朽化もあるが、湖と被害の大きかった範囲がぴったり一致した」と話している。今月下旬の学会で発表する予定。

 郡山湖は同県郡山市から矢吹町まで南北に広がっていた巨大な湖で、推定で猪苗代湖(約103平方キロ)の少なくとも3倍以上と考えられている。地層から約2万3000年前までに大部分は泥で埋まったとみられるが、一部はその後、沼地になっていたという。

 県災害対策本部によると、今回の地震で海岸付近では揺れによる家屋倒壊は少なかったのに対し、郡山市や須賀川市など内陸部で家屋倒壊や地盤沈下などの被害が続出。郡山市では、県内で最も多い2732棟の民家が全半壊。須賀川市も郡山に次ぐ1124棟が全半壊し、両市で全体の半数以上を占めた。

 小林さんは地盤の軟弱な河川周辺ではなく、一般的に地盤が硬いはずの台地に被害が集中したことに疑問を持ち、4月中旬に現地調査を実施。同じ内陸部でも、被害が郡山湖の範囲内に集中しており、特に沼地跡の周辺や河川の跡で被害が大きかったことを突き止めた。一方で湖岸の外側にあたる郡山市の緑ケ丘ニュータウンなど、湖から外れた場所では目立った被害はないなど明確な差が出た。

 小林さんは「強固なはずの内陸部でも弱い地盤があることが裏付けられた。古代の湖はあまり一般には知られていないが、同じような例は全国にあるはずで、特別な対策が必要ではないか」と分析している。【稲生陽】

毎日新聞 2011年5月6日 12時01分(最終更新 5月6日 14時47分)

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