焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒問題を受け、他の焼き肉チェーン店ではユッケの販売自粛が広がっている。業界からは「小さな子供のいる家庭を中心に、焼き肉店全体に対する不安が生まれるのではないか」と、問題の影響拡大を懸念する声が上がった。
関東と静岡県で焼き肉店など250店を展開する「安楽亭」(本社・さいたま市)では、3日からユッケの販売を自粛している。同社は卸業者の細菌検査に合格したものだけを仕入れ、自社工場でさらに細菌検査を実施、加熱用とは分けて加工している。店舗でも、注文を受けてから肉を解凍するなど注意を払ってきた。しかし、利用客から「ユッケを食べたが大丈夫か」との問い合わせが多数寄せられ、販売自粛を決めたという。
全国に焼き肉店など143店舗がある「さかい」(本社・名古屋市)も2日からユッケ販売を取りやめた。広報担当者は「被害が拡大し、子供のいる家庭や女性を中心とした不安の声に配慮した。自社の衛生基準に従い細菌検査なども行っており万全と自負している。ただ、これを機に改善できる部分があれば見直しも検討したい」と話す。
「牛角」約630店を全国展開する「レインズインターナショナル」(本社・東京都港区)も5日、ホームページ上で同日からユッケの販売を休止すると発表。理由については「厳格な基準による安全なメニューとして提供していることから継続を検討してきたが、業界全体に対するお客様の不安や不信感に最大限配慮するため」としている。
一方、全国に約50店舗ある「叙々苑」(本社・東京都港区)はユッケ販売を継続している。広報担当者は「問題発覚後、『(叙々苑は)ユッケやっていますか』という問い合わせも来ている。そういうニーズにも応えなくては」と理由を説明。ただ、同社も業界に対する利用客の不安感を懸念しているといい、「今後、ユッケを取り扱う店舗を限定する可能性はある」という。【曽田拓、吉住遊、野口由紀】
毎日新聞 2011年5月6日 11時56分(最終更新 5月6日 12時42分)