2011年3月14日 21時35分
東日本大震災の影響で、東京電力が初めて実施した計画停電。14日夕から静岡、茨城県などの一部で明かりが消え、夜が深まるにつれ、町を闇が覆った。医療機器が使えない在宅療養する患者、改札口で立ち往生し帰宅できないサラリーマン、津波から逃れた市民が集まる千葉県の避難所までも停電になった。4月まで続く予定の計画停電は、関東地方の市民の生活を脅かす。
■在宅療養患者
「命にかかわることなんです。責任取れますか!」。筋肉の難病で人工呼吸器を手放せない息子2人を持つ茨城県守谷市の山口モト子さん(55)は、電話口の東電の担当者に思わず声をあげた。「計画停電」の話をうわさ話で聞いたのが13日夕。東電が同日夜発表し、翌朝から電気を止めようとしていることが信じられなかった。
バッテリーがなくなり、停電してしまったら息子たちは死んでしまう。自分たちがそばにいる息子たちはまだいいが、難病仲間で親が昼間働いていたり、ヘルパー頼りの高齢者もいる。その人たちはどうするのだと思う。東電は停電によって死に向き合わざるを得ない人の数を把握しているとは思えなかった。
山口さんらの行政への訴えが届き、子供たちが昼間行く施設の電源は確保された。「患者が対処できるように、停電まで少なくとも1日以上余裕をみなければ。本当に命にかかわることなんです」
二転三転する東電の対応に憤るのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で肺機能が低下し、呼吸器や吸引機が手放せない西東京市の生井利恵さん(41)。訪問看護ステーションの危機管理体制が手厚く、呼吸器は停電後6時間持つ内蔵バッテリー式を使っているほか、吸引器も市の助成で電力の不要なポータブル式を購入した。「停電するとかしないとか、簡単に言うけれど、私たちにとっては深刻。人の命を軽く見ないでほしい」と訴える。
大塚耕平副厚生労働相は14日、対象地域内の在宅療養支援診療所124カ所と訪問看護ステーション13カ所に、停電実施までに連絡がつかなかったと明らかにした。
■避難所
津波による死者11人が確認されている千葉県旭市では午後5時ごろ、計画停電が始まった。市内4カ所の避難所に670人が避難する中、3避難所で電気が消えた。市立飯岡小学校では、テレビで災害状況や生活情報を得ていた被災者らは、音が出なくなり何も映らなくなった画面を黙って見つめた。避難所ではプロパンガスは使えるが、水道は復旧していない。