2011年3月12日 19時38分 更新:3月13日 0時50分
国内観測史上最大のマグニチュード(M)8.8の東日本大震災に見舞われた東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋(たてや)で12日午後3時36分ごろ、爆発音とともに白煙が上がり、建屋の壁と天井部分が失われた。この事故で東電社員ら4人が負傷、敷地では通常と異なる放射線量が検出された。同日午前には1号機から放射性物質の漏えいが確認され、さらに国内初の炉心溶融も発覚した。巨大地震に遭った原発で、未曽有の事態が次々と発生した。地震大国で最も恐れられる「原発震災」。同日夜、炉心溶融を食い止めるため海水が炉心に注入されたが、純水の代わりに塩分を含んだ海水を使うため施設への打撃は大きく、廃炉の可能性もある。
今回の事態を踏まえ、周辺の住民は、福島第1原発から半径20キロ圏、福島第2原発から半径10キロ圏からの避難を求められた。該当する市町村は富岡町、大熊町、双葉町、広野町、楢葉町、浪江町、田村市、南相馬市、葛尾村、川内村で、約2万5000世帯の約7万人が住んでいる。
福島第1原発1号機では、原子炉を覆う鋼鉄製の格納容器は鉄筋コンクリートでできた原子炉建屋内にある。
爆発の原因について、経済産業省原子力安全・保安院は「炉心で発生した水素が格納容器の配管から漏れ出て、水素爆発を起こした」との見方を示した。その結果、建屋は壊れたが、格納容器は損傷していないという。
放射性物質は大量には漏れ出ていない。放射性物質を測定するモニタリングデータによると、爆発直前の放射線量は1015マイクロシーベルトで、これは1年間に一般人が浴びる許容量を1時間で超える値だった。だが爆発後は、午後3時40分で860マイクロシーベルト、同6時58分で70.5マイクロシーベルトと減少。保安院は「炉心溶融が進行しているとは考えていない」との見方を示した。枝野幸男官房長官は「格納容器は破損していない」としている。
一方、今回の爆発は、炉心の水位が低下、燃料棒が露出して起きる炉心溶融によって、燃料棒が高熱になったことでもたらされた。海江田万里・経済産業相は東京電力に1号機の原子炉を海水で満たすよう指示。東電は午後8時20分に着手した。しかし、余震発生のため午後10時15分に中断した。純水ではなく塩分を含む海水を原子炉に使うと、さびやすくなることなどが理由となって廃炉になる可能性も出てくる。また、万が一、再臨界が起きるのを防ぐため、中性子を吸収して核分裂反応を抑えるホウ酸を用いた。
東電の小森明生常務(原子力・立地副本部長)は12日夜の記者会見で「通常と異なる過程で原子炉建屋の上方が開放された。言葉として爆発だった」と認めたが、原因については「会社として水素爆発だったと言えるだけの議論はしていない」と述べるにとどめた。
原子炉内の温度が上がりすぎ、冷却機能が失われた結果、燃料が融解、破損すること。想定される事故では最悪の事象で、重大な原子力事故につながる危険がある。米国では1979年のスリーマイル島原発事故で大規模な炉心溶融が発生した。
経済産業省原子力安全・保安院は12日の会見で、原子力施設事故の国際評価尺度(INES)で考えると、「レベル4程度と推定される」と評価した。国際原子力機関(IAEA)が定めた世界共通の尺度で8段階で評価する。数値が大きいほど深刻さを増し、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)がレベル7、79年のスリーマイル島原発事故(米国)はレベル5。99年のJCOウラン燃料加工施設臨界事故が今回と同じレベル4だった。【八田浩輔】