2011年5月5日23時0分
東日本大震災の直後から、各地の温泉の様子が変だ。湯が突然増えたり、出なくなったり。四国では泉質が変わったところもある。専門家は「地震で大きな地殻変動が起きて温泉にも影響が出た」と話している。
岐阜県飛騨市神岡町の割石(わりいし)温泉。震度2を観測した3月11日の地震直後、数秒湯が止まり、その後、毎分45リットルだった湧出(ゆうしゅつ)量が60リットルに増えた。大震災前の2月27日に震度4を観測した時も、同28リットルから45リットルに増えた。温度も約38度から4度近く上がった。温泉の担当者は「熱くなったので燃料代を節約できるが、被災者を思うと喜べない」。
割石温泉を1998年から調査している岐阜大学総合情報メディアセンターの田阪茂樹教授(放射線物理学)によると、この温泉は飛越(ひえつ)地震(1858年)を引き起こした跡津川断層上にあり、地震のたびにこうした現象が繰り返されるという。能登半島地震(2007年)の直後も湧出量が倍増し、温度も上昇した。
田阪教授は「地殻変動の影響で温泉が流れ込みやすくなったのでは。温泉の変化の大きさで地震の大きさも分かる」と話す。
一方、突然、湯が出なくなった温泉もある。
年間約9万人が訪れる山形県大江町の柳川温泉では、同300リットルの湯が出なくなり、3月下旬から日帰り入浴を休止した。町によると、震度4を観測した3月11日に自噴が止まり、ポンプで吸い上げると黒ずんだ湯が出てきた。4月上旬、深さ700メートルの井戸に機械を下ろすと、地下291メートルで障害物にぶつかった。「井戸自体がずれたのかもしれない。貴重な観光地なので掘削したいが、費用が高い」と困惑する。
震度4だった新潟県弥彦村では観音寺温泉の源泉が突然枯れ、老舗旅館が3月末に閉館に追い込まれた。