東京電力福島第一原子力発電所の事故で、損害賠償の指針を作る国の審査会に対し、東京電力側が、負担可能な賠償限度を念頭に指針を作るよう求める要望書を提出していたことが分かりました。審査会の会長は「指針に影響を与えようとしていると取られかねず、不適切だ。審査会は公正中立に指針作りを進めていく」と話しています。
福島第一原発の事故を巡っては、被害の救済を迅速に図ろうと、文部科学省が中立で専門的な立場からなる審査会を設定し、損害賠償を判定するための指針作りを進めていて、先月28日、1次指針をまとめました。東京電力の要望書は、その3日前の先月25日に、清水正孝社長名で審査会の能見善久会長に対して提出されていたことが分かりました。要望書には、被害者への補償の手続きを円滑に行うための方策や、補償額の算定にあたって損害を的確に判断する基準、それに、損害と認めるための証拠のあり方の基準を示すことなどが盛り込まれています。そして、東京電力がすべての賠償を負担するとした場合、最大限の経営努力を行ってもその費用を調達するのは困難で、国による支援が不可欠だとして、負担可能な賠償限度を念頭に指針を作るよう配慮を求める内容となっています。数兆円にも上るとみられる賠償金の支払いの枠組みを巡っては、公的資金を活用した東京電力に対する支援について、政府内で議論が行われています。審査会の能見会長は「今回の行為は、指針に影響を与えようとしていると取られかねず、不適切だ。要望書に影響されることなく、公正中立に指針作りを進めていく」と話しています。一方、東京電力は「補償を行う当事者として、1次指針の策定にあたって配慮してほしい事項を要望した」と話しています。