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GW、近場の観光地が人気 「自粛やめよう」効果?

2011年5月2日15時5分

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【動画】北上・展勝地の桜並木

写真:パンダ舎前は家族連れでにぎわっていた=2日午前11時、東京都台東区の上野動物園、河合博司撮影拡大パンダ舎前は家族連れでにぎわっていた=2日午前11時、東京都台東区の上野動物園、河合博司撮影

写真:GWでにぎわうUSJ=2日午前、大阪市此花区、諫山卓弥撮影拡大GWでにぎわうUSJ=2日午前、大阪市此花区、諫山卓弥撮影

写真:桜の名所として知られる岩手県北上市の展勝地では、北上川沿い約2キロにわたる桜並木が満開となっている。北上観光協会によると、震災の影響で団体客のキャンセルが相次いでいるという=2日午前10時43分、岩手県北上市、森井英二郎撮影拡大桜の名所として知られる岩手県北上市の展勝地では、北上川沿い約2キロにわたる桜並木が満開となっている。北上観光協会によると、震災の影響で団体客のキャンセルが相次いでいるという=2日午前10時43分、岩手県北上市、森井英二郎撮影

 ゴールデンウイーク(GW)に入り、大都市圏近郊の観光地が意外なにぎわいを見せている。東日本大震災と福島第一原発事故による自粛ムードの広がりで大幅な落ち込みが予想されていたが、「自粛はやめよう」とのかけ声が効いたのか、連休直前に駆け込み予約が相次いで例年並みの客足が戻りつつある。一方で、国内・海外とも遠方への旅行客は思うように回復していない。

 世界遺産の日光東照宮(栃木県)では、4月29日に前年比2割増しの約1万人が訪れ、GWは好調な滑り出しとなった。「観光に出かけることが経済効果にもつながるとのメッセージが報道などで流れたことが影響したのではないか」と東照宮の担当者。ただ原発事故の影響か、関西や外国からの客は少なく、団体客が少ないのも特徴だ。

 神奈川県の箱根登山鉄道も、連休に入ってから一部の駅で客が乗りきれない電車も出るほど観光客が戻っているという。

 東京の名所を巡る「はとバス」は、4月上旬までは予約が少なく、運行会社は例年の5割程度に落ち込むと予想していたが、連休が近づくにつれて予約が急増。都内観光コースは対前年比で3.6%減までV字回復した。広報担当者は「自粛しすぎるのも良くない、という感じで客足が戻ってきていると思う。天気を見ながら近場で楽しもうというニーズを取り込めている」と話す。

 高速道路の渋滞は前年より減ると予想されていたが、連休初日の29日朝には関越道下り線で予想の倍を超える56キロの渋滞を記録した。3〜5日も激しい渋滞が予測されている。

 4月1日からジャイアントパンダ2頭が公開されている東京都台東区の上野動物園の入場者は4月29、30日に3万人を超えた。30日は15分間の入場制限を2度実施し、入場待ちの列ができたという。

 大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、観光客が遠出を控える傾向を見越して大型連休前に近畿や東海などの日帰り圏を中心にテレビなどで宣伝をしたという。広報担当者は「ほどよくお客さんが多く、順調だ」と話す。

 108回目を迎える佐賀県有田町の「有田陶器市」は29日から3日間の人出が昨年より約9万人多い約54万人。「震災で関東や東北方面への旅行を控えた人が、休日を近場で過ごそうとしている」と主催者。長崎県佐世保市のハウステンボスには29日からの3日間で約4万人が足を運び、前年より1万8千人増えた。

■国内旅行申し込み、例年の2倍

 近畿日本ツーリストでは4月10日ごろから、首都圏発の国内旅行の申し込みが例年の2倍ほどのペースで増えている。栃木県の日光、群馬県の草津温泉などが目立つという。

 JTBは国内旅行が昨年比28%減、海外旅行は17%減と推計していたが、連休直前から大都市近郊の駆け込み予約が伸びているという。「準備に時間がかかる海外旅行はあきらめても、どこかに出かけたいと考える人が身近な場所に出かけているのではないか」と広報室の担当者は話す。

 空の便も「1週間ほど前から東北を中心に予約が増えている」と日本航空広報部。被災した家族や親類に会ったり、ボランティアに行ったりする人が増えているとみる。GW中に仙台、花巻、山形を中心に約300の臨時便を飛ばし、国内線は昨年並みの旅客数に近づきそうだという。

 成田空港はGW中の出入国者数が前年比で半減すると推計している。ただ、最近は駆け込み予約の海外旅行者が増えてきたという。成田国際空港会社の広報担当者は「旅行をして日本を元気にしようという雰囲気が出てきた。旅客は推計よりは増えるはず」と話す。

■「応援したい」被災地にも観光客

 被災地の観光地はまだまだ厳しい。

 青森県弘前市で4月23日に始まった「弘前さくらまつり」。東北新幹線が全線復旧した同月29日の観光客数は13万人。4万人だった前日よりは増えたが、それでも例年の半分以下にとどまる。桜は2日が満開の見込みだ。

 国宝の中尊寺金色堂がある岩手県平泉町も、4月29日に町を訪れた人の数は前年より6割減ったという。同県雫石町の小岩井農場は震災の影響に連休前半の悪天候も重なり、首都圏からの観光客が特に減っているという。

 宮城県観光課によると、津波で被災した沿岸部では、観光客を受け入れられない状況が続いている。大型連休を含む昨年5月の全県の観光客の延べ人数は約640万人だったが、県観光課の担当者は「震災の影響がどの程度になるかの試算は難しい」としている。

 同県の松島。4月29日に運航を再開した遊覧船乗り場の人影はまばらだ。午前10時に出発した船の定員は210人だが、乗客は10人ほど。運航会社の関係者は「松島の被害は少ないのに……。人出は例年の10分の1くらいだ」と話した。それでも松島観光協会の担当者は「連休が近づくにつれ、ホテルの空き状況の問い合わせが予想以上に増えている」と期待を寄せる。

 「東北を応援したいと思い、初めて来ました」「がんばってください」。観光客から声を掛け、励ます光景が見られるという。

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