2011年5月5日20時4分
焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」(本社・金沢市)の集団食中毒を受け、厚生労働省は5日、罰則のある食品衛生法に基づいて、牛肉を生食として販売する際の基準を新たにつくると発表した。基準ができるまでは、生肉を出している飲食店への監視指導を強めるとして、緊急的な立ち入り調査の実施を都道府県に要請した。
牛肉などの生食については厚労省の衛生基準があるが、強制力がないため飲食店の独自の判断で客に提供しているのが実態だった。
新たな基準は、汚染部位を取り除く際の指標や「生食用」の表示を定めた現行の衛生基準を基本とする。
法改正ではなく、内閣府の食品安全委員会や厚労省の薬事・食品衛生審議会の意見をふまえて決める。厚労省の担当者は「可及的すみやかに検討する」(厚労省の担当者)という。
また、緊急的な立ち入り検査の対象は、ユッケなど牛肉の生肉を扱う飲食店や食肉処理業者、食肉販売業者。現行の衛生基準を満たしているかどうか確認し、適合しない場合は、改善するまで飲食店への販売や客への提供の中止を求める、としている。
厚労省によると、5日現在、「焼肉酒家えびす」をめぐる腸管出血性大腸菌による食中毒の疑いのある患者は、富山、福井、神奈川3県で計75人にのぼる。うち23人が重症、4人が死亡している。
細川律夫厚労相は、朝日新聞の取材に対し、被害が拡大していることについて「重く受け止めている。汚染原因を調査し、食品衛生法の基準をつくることを検討する」と述べた。(北林晃治、及川綾子)