広瀬隆と島村英紀のでまかせ
2011/03/29 6 Comments
(※3月31日:こちらに短い追伸の記事を載せました。※)
皮肉なものである。大衆メディアで知ったかぶりだけの「エセ学者達」を朝日ニュースターの番組『ニュースの深層』で批判していた広瀬隆は、『福島原発で何が起きているのか』という23日に行われた自分の講演で、島村英紀という地震学・地質学者の指摘した事を根拠もない形にねじ曲げるすることで、自分の話に耳を傾ける人たちを堂々と惑わせている。
あらかじめ説明しておくと、広瀬氏の批判は、原子力発電所の設計を知っているかの様にテレビの前に現れて解説する学者達に向けられたものだ。彼の言い分は、学者や大学教授達は全く原子力発電所のことに関して分かっておらず、求められている知識は技術者しか持っていないと指摘している。広瀬氏はこの批判を『ニュースの深層』でも、23日の講演でも同じようにしている。
- 緊急報告 広瀬隆/広河隆一「福島原発で何が起こっているか?-現地報告と『原発震災』の真実」(2011年3月23日、早稲田奉仕園にて)
(Ustream)
- 破局は避けられるか――福島原発事故の真相(2011年3月16日付けのDiamond Onlineの記事)
- 予言されていた“原発震災” 広瀬隆氏インタビュー (2011年3月19日、ビデオニュース・ドットコム)
(無料配信中)
『ニュースの深層』はYouTubeですでに視聴カウント数が110万回を超えており、大分反響があるようだ。そのためにも聞き手が彼の話を鵜呑みにしないように整理する必要があるかと思う。
講演の方もカウント数が9万回を超えていてそれなりの注目を集めているようなのだが、その講演で広瀬氏は気象庁がマグニチュードを9.0に上げたのは、そうしなければ電力会社(つまり東京電力)が破産に追いやられるからだ、と話している。その根拠として、島村氏が指摘しているように気象庁は今までとは異なる単位・スケールで今回の東日本大震災を測定するようにした、と述べている。これについてちゃんと整理するべき点がいくつかある。
確かに島村氏と広瀬氏が指摘するように、気象庁は次のように9.0はモーメントマグニチュードの数値だと示している。
○ 地震の規模について
今回の地震について、詳細に解析した結果、地震の規模(マグニチュード)を、8.8から、9.0とします。
外国の地震観測データを用い、本震による震源域の破壊の進行の様子(破壊過程)を調べたところ、 通常より複雑なかたちで3つの巨大な破壊が連続して発生していることが分かりました。 このため再解析した結果、地震の規模は、マグニチュード9.0であることが分かりました。
なお、今回のような複雑なかたちで破壊した地震は極めて希で、 1つめの巨大な破壊に相当する波形とは異なる通常見られない特殊な地震波形が認められ、 再調査したところ、これが2つめ、3つめの巨大な破壊に相当することが判明しました。
(注)ここで示す地震の規模は、CMT解析によるモーメントマグニチュード(Mw)
しかしまず広瀬氏が指摘しているような点、つまりこの測定単位の変更は外部的圧力によるものとは少なくとも島村氏は(はっきりとは)論じていない。いくつかの点を上げているが、広瀬氏に言わせれば、この変更はまず今回の原発事故による東京電力が損害賠償として負担する金額を減らすためらしい。疑わしい話だと思うが、話すことに関して詳しい説明をしないのでどういう意味なのかすらよく分からない。テレビでも講演でもやたらと大きなことを話しておきながら、説明が全く足りないというのが僕が話を聞いていて持った印象だ。
他にも「想定外」、「前代未聞」の災害だったと煽るために数値を上げたと指摘している。おそらく広瀬氏の言いたいことは、国民に今回の災害は「想定外」だったと思わせることで、政府や電力会社への責任を軽減させるための意図的な策だったということろう。島村氏も同じようなことを書いてある。
すべてのことを「想定外」に持っていこうという企み(あるいは高級な心理作戦)の一環なのではないだろうか。
しかし別に政府やメディアに洗脳されてなくても、誰もが「前代未聞」の大震災だと思ってただろうし、国民が「想定外」と思うのも別に不思議ではない。確かに原発の設計に関してはこのようなスケールの災害を想定して建てられるべきなのは事実だろうが、それは地震の数値をすり替えることとは全く別の問題である。今回の地震が前代未聞だったのは福島原発で事故が起こる前から、そして数値が9.0に変えられる前から全国で誰もが分かっていたことだろう。
(付け加えるならば、なぜ『ニュースの深層』で広瀬氏によれば、国民を混乱に追い込まない、パニックを抑えようとしているだけの政府が、地震の規模を測る数値だけは繰り上げる必要があるのだろうか。報じる情報を制限している政府を批判しているのに数値だけは過剰的に報じるのというような考え方には矛盾が生じないだろうか。日本の国民は今(その番組時点で)チェルノブイリ級の原発事故だとパニックを煽る必要があると指摘していた彼の話とはつじつまが合わないんじゃないだろうか。)
そして測定単位を気象庁が以前から使っていた気象庁マグニチュード(Mj)からモーメントマグニチュード(Mw)に差し替えたことについてだが、気象庁が今回異例な判断を取ったことは事実だろう。(ちなみにマグニチュード測定単位についての説明はWikipediaの記事を参考に。)島村氏は今回の大震災が起こってから気象庁から報告してきたマグニチュード数値の変化を自分のウェブサイトに次のように説明している。
今回の気象庁によるマグニチュードの数値の変更(増大)の経過は、こうなっている。
●3月11日の地震直後にNHKテレビで放送された緊急地震速報では、震源の位置は画面に表示されていたが、マグニチュードは表示されていなかった。
●地震から数分~10分くらいたってから、気象庁から数値が来て、テレビ画面にはマグニチュード7.9が表示された。この値は緊急地震速報のデータ処理過程で求めた数値である。これは、従来からの「気象庁マグニチュード」による数値だ。
今回の大地震では地震断層が破壊していった時間は全部で約150秒と長かった。他方、緊急地震速報でははじめの数十秒間のデータだけを使ってデータ処理を しているので、今回のような地震では、マグニチュードや震度を正しく予測して表示することができなかった。
じつはこのことは、地震直後に出した津波警報(大津波注意報)が「小さく予報しすぎた」ことにつながった。最初の警報発表は14時49分だったから、気象庁は地震後3分で出したことになる。この意味では十分に早かった。しかしそのときの警報は「岩手県と福島県の沿岸は「3メートル以上」だった。その後、15時14分になって、「10メートル以上」と変更になった。この時間は地震後30分近く経っていて、津波が海岸にすでに到達してしまった時間である。
つまり最初に警報した津波の高さは低すぎたのであった。津波警報がオオカミ少年になっていたこともあって、「3メートル以上」という津波警報を聞いた人たちに油断がなかったとはいえなかったのではないだろうか。
つまり緊急地震速報のデータ処理過程で求めた数値では、この種の大地震の姿をとらえられていなかったのである。このマグニチュード7.9は「緊急会話検測 による値(速報値)」というもので、いくつかの地点で、その時刻までに観測された地震計の最大振幅から求めたものだ。
しかし、今回のような 巨大な地震では、地震断層の破壊が広い領域に進んでいくのに、かなりの時間(今回は150秒程度)を要するから、このような緊急地震速報によるマグニ チュード決め方に使っている、地震計新記録の最初だけの、つまり短い時間の地震波形は、破壊の全体がつかめなかった。こうして速報値のマグニチュードは精 度が劣るものになり、その結果、最初の津波警報が小さめのものになってしまったのである。(津波警報の問題点は別頁にある)
●16時直前にマグニチュード7.9からマグニチュード8.4への変更が放送さ れた。このマグニチュード8.4は「気象庁マグニチュード」である。これが気象庁マグニチュードとしての最終的な数値であろう。気象庁マグニチュードは、 国内にある「気象庁の地震計が記録した地震の大きさ」から計算しているものだ。
●その後、17時30分にマグニチュード8.4からマグニチュード8.8に変更 された。このマグニチュード8.8は「モーメント・マグニチュード」の数値である。モーメント・マグニチュードは気象庁マグニチュードとは違い、「地震の 震源で、どのくらい大きな地震断層が、どのくらいの長さで滑ったか」を解析して求めるマグニチュードだ。
気象庁がモーメントマグニチュードを日本に起きた地震のマグニチュードとして発表したのはこれが最初だった。
モーメントマグニチュードは気象庁マグニチュードとは決定の原理が違う。気象庁マグニチュードではこのような大きな数値は出ない。なお、マグニチュードの決め方はこのほかにもあり、全部で7通りもある。
これから指摘する点は広瀬氏と島村氏の双方が対象となる。まず先程リンクを載せたWikipediaの記事を読めば分かると思うが、気象庁は今まで気象庁独自のマグニチュード測定方式(Mj)を用いていた。
(※投稿後にコメントを頂いて、多少の誤断をご指摘してくださったので、この直下の段に修正を加えました。※)
それはおそらく8.4という数値までは一致して気象庁の測定方式(Mj)で出した数値だろう。(第三報を参照。ここからMwに必要とされるCMT解析を始めた模様。)つまり問題となってくるのはなぜ気象庁がマグニチュードをMjの8.4からMwの8.8に変えたかということだ。(最終的にMw8.8からMw9.0に上がった理由は、単に時間が経過し、より正確な数値で分析を行った結果だと捉えるべきであるため、単位を変更したことと関係は無いと考えておそらく問題ないだろう。)
広瀬氏や島村氏のような陰謀論を用いらなくても十分妥当な解釈は可能だろう。まず気象庁のサイトにはこのような説明がある。
モーメントマグニチュードとは何ですか?
地震は地下の岩盤がずれて起こるものです。この岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとにして計算したマグニチュードを、 モーメントマグニチュード(Mw)と言います。普通のマグニチュード(M)は地震計で観測される波の振幅から計算されますが、規模の大きな地震になると岩盤のずれの規模を正確に表せません。これに対してモーメントマグニチュードは物理的な意味が明確で、大きな地震に対しても有効です。ただし、その値を求め るには高性能の地震計のデータを使った複雑な計算が必要なため、地震発生直後迅速に計算することや、規模の小さい地震で精度よく計算するのは困難です。
太文字にした部分を読めば分かると思うが、モーメントマグニチュードは大規模な地震を測定する時に有効なため、今回の地震を測定するのにモーメントマグニチュードを理由としては、「前代未聞」、「異例」の地震だからだという理由だけで十分なのである。そもそも精密な測定をして批判する専門家がどこにいるのだろう。島村氏は自分の研究などでも主にモーメントマグニチュードを使っていたのだろうに。
先程「CMT解析」という言葉を出したが、それについてWikipediaの記事にも同じように述べられている。
発震機構解を求める方法には、初動発震機構解とセントロイド・モーメント・テンソル (CMT) 解の2種類がある。初動発震機構解は、複数の地震計で観測されたP波のデータを解析すれば算出できるため、広く用いられる。CMT解は長周期の地震波を解析して求めるため、規模がある程度大きな地震でしか用いられないが、セントロイド(地震で最もずれが大きかった部分のこと)での発振機構を算出するため、 より実態に近い結果を算出することができる。
これらに関する気象庁の説明はこちら。(CMT解とは何か) (発震機構解と断層面) (発震機構解とは何か)
今回の地震の規模からもう一つ言えることがある。今回の地震は大きな被害を与え、世界中からの支援が届いたり、通信や情報交換などを今までとは比べられないような次元で行う必要があった。(原発の事故もこういった意味では関わっているのかもしれない。原発の耐久性などを今回の事故をもとに語る場合などでは測定単位が重要となってくるはず。)それもあって今回は世界でも(学者に限らず)幅広く利用されているモーメントマグニチュードを用いる理由があったわけだ。それが意味することは、データが人工衛星や地震計などによって収集できる以上、別に気象庁に頼らずとも誰でも地震の規模を測れるはずなのである。そして今のところ9.0という数値に疑問を投げかけている人は日本でも海外でもこの二人を除いて聞いたことがない。
海外でも気象庁が9.0と数値を改正してからは、9.0を使うようになった。米国も独自に測定していたらしくマグニチュードは8.9だったと発表していたらしい(BBCより)。
0336 It may seem slightly immaterial given what has followed, but Japanese officials have revised up the strength of Friday’s quake from 8.8-magnitude to 9.0. US officials had measured it at 8.9.
米国の地質調査所(United States Geological Survey (USGS))が3月14日に独自に計っていた数値をMw8.9から 9.0に引き上げた。これは気象庁とは全く別物で、USGSが独断で測定した数値なのだが、9.0という数値で最終的に一致した。
USGS Updates Magnitude of Japan’s 2011 Tohoku Earthquake to 9.0
Released: 3/14/2011 5:35:00 PMThe USGS has updated the magnitude of the March 11, 2011, Tohoku earthquake in northern Honshu, Japan, to 9.0 from the previous estimate of 8.9. Independently, Japanese seismologists have also updated their estimate of the earthquake’s magnitude to 9.0. This magnitude places the earthquake as the fourth largest in the world since 1900 and the largest in Japan since modern instrumental recordings began 130 years ago.
The USGS often updates an earthquake’s magnitude following the event. Updates occur as more data become available and more time-intensive analysis is performed. There are many methods of calculating the energy release and magnitude of an earthquake. Some methods give approximate values within minutes of the earthquake, and others require more complete data sets and extensive analysis. Due to inherent uncertainties in the modeling of energy and magnitude, the results from different agencies often vary slightly. These magnitude discrepancies arise from the use of different data and techniques.
数値を修正する理由として、やはり厳密に調査するのには時間がかかることや、情報が増えることを挙げている。つまり地震直後の数値はあくまでも予測数値ということで、はっきりとした地震の規模は少なくても情報収集や厳密な測定を測るために数日間はかかるということなのだろう。USGSの東日本大震災に関する詳しい情報はこちら。
それから広瀬氏と島村氏はモーメントマグニチュードだと数値が上がるのが当然かのように想定して話しているが、少なくても必ずしもそうではないことは阪神大震災などを振り返れば分かることだろう。Wikipediaにこう記されている。
地震の規模:マグニチュード7.3(気象庁マグニチュードMj。当初は気象庁マグニチュードMjで7.2だったが、平成13年(2001年)4月23日の気象庁マグニチュードの改訂により7.3に修正された。モーメントマグニチュードは6.9)
この95年に起こった地震でも気象庁は数値を修正しているし、この場合はモーメントマグニチュードの方が低いのが分かる。確かにただ単に高い数値を選ぼうとしているとも言えるのかもしれないが、おそらく今回の9.0という数値事態が今回の規模の壮大を語っているのではないのだろうか。そしてそれをなるべく正確な数値で表すためにも規模の大きい地震に向いているモーメントマグニチュードを用いたのではないだろうか。おそらく他の地震ではモーメントマグニチュードが気象庁マグニチュードを下回ったのは今までのは今回の地震との規模の差を示している。
ちなみにもう一つ地震を調べてみたら新潟県中越地震も同じようにモーメントマグニチュードの方が低かった。
地震の規模 : マグニチュード6.8(モーメントマグニチュードは6.6)
更にもう一つ付け加えると、なぜ数値を気象庁が数値単位をすり替えることを問題視しておきながら広瀬氏自身が同じことをしているのだろうか?
地震による揺れは、宮城県栗原市築館(つきだて)で2933ガルを観測し、重力加速度の3倍である。しかし2008年の岩手・宮城内陸地震では、マグニチュード7.2で、岩手県一関市内の観測地点で上下動3866ガルを記録している。今回より大きい。
最初にリンクした広瀬氏のDiamond Onlineの記事からの文章なのだが、なぜここに限って彼はギルという単位で比べているのだろうか?震度やマグニチュードで比べれば今回の東日本大震災ほど高くなかったのは明らかだろう。(広瀬氏がどこから今回の地震のデータを入手したかは分からないが、場合によってはギルを使ってもそうなるかもしれないが。)数値は宮城内陸地震の数値は次のように示されている。
地震の規模:マグニチュード7.2(暫定値)。アメリカ地質調査所(USGS)によるモーメント・マグニチュードは6.8。
最大震度:6強 宮城県栗原市一迫、岩手県奥州市衣川区
(東日本大震災は震度7と発表されているので、宮城県内陸地震よりも震度、気象庁マグニチュード、モーメントマグニチュード、全ての数値で今回の方が高かったのと思うが。広瀬氏がなんでも自分に都合の良い風に事実をねじ曲げて評論や陰謀説などを、大した根拠もなく語っているのが分かるかと思う。そんな人が原発の危険性をテレビの前や講演で訴えてもおそらく逆効果で、日本で一生懸命原発を減らそうと取り組んでる人たちの立場が逆に軽く見られるだけな気がする。)
つまり広瀬氏と島村氏の二人が指摘するように「想定外」のシナリオに見せかけようという様な議論は成り立たないのである。なぜなら少なくてもモーメントマグニチュードで統一させた場合でも、9.0と6.9という差が(東日本大震災と阪神大震災を比べた場合は)明確だからである。ただ上記でも話したように、規模の大きい地震だと気象庁マグニチュードは適していないため今回そっちを選んだという判断だったのだろう。
この測定単位を変えた理由に、「想定外」のシナリオと煽って、この原発事故に対しての東京電力の損害の負担を軽減するものだとは全く思えない。ましてや訂正した報告『「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第15報)』は3月13日の12時55分に公開された資料だ。ちょうど原発事故と照らしながら考えると、タイミングとしては最初の一号機が爆発(12日の15時ごろ)してから一日経たずといった時である。一瞬で決めて発表したわけでもないだろうし、おそらく原発がここまで酷くなるとはまだはっきりとはほぼ誰にも分かってなかっただろう。
(言うまでもなくモーメントマグニチュードという測定単位もれっきとした測定方法で、正式に世界中で使われているのだからいろんな意味で気象庁マグニチュードよりも信頼がおける数値である。それもあり当然日本が数値をでっち上げたわけでもないのだからこの点にこだわる必要は全く無いかと察する。そしてこれも先程述べたが、モーメントマグニチュードであれ気象庁マグニチュードであれ地震の規模を測定するのには時間がかかるのだから、気象庁が13日に正式な数値を発表することに不思議はほとんどない。)
なのでDiamond Onlineで、広瀬氏が言っているのもでたらめだろう。
2011年3月11日14時46分頃、北緯38.0度、東経142.9度の三陸沖、牡鹿半島東南東130km付近、震源深さ24kmで、マグニチュード 9.0の巨大地震が発生した。マグニチュードが当初8.4→次に8.8→最後に9.0に修正されてきたことが、疑わしい。原発事故が進んだために、「史上 最大の地震」にしなければならない人間たちが数値を引き上げたのだと思う。これは四川大地震の時に中国政府のとった態度と同じである。
述べたように13日に数値を増やした時点では原発事故自体あまり分かってなかったというのが現状だっただろう。
ついでに書いておくが島村氏が言う下記の点も間違っていると言えるだろう。
●16時直前にマグニチュード7.9からマグニチュード8.4への変更が放送された。このマグニチュード8.4は「気象庁マグニチュード」である。これが気象庁マグニ チュードとしての最終的な数値であろう。気象庁マグニチュードは、国内にある「気象庁の地震計が記録した地震の大きさ」から計算しているものだ。
●その後、17時30分にマグニチュード8.4からマグニチュード8.8に変更 された。このマグニチュード8.8は「モーメント・マグニチュード」の数値である。モーメント・マグニチュードは気象庁マグニチュードとは違い、「地震の 震源で、どのくらい大きな地震断層が、どのくらいの長さで滑ったか」を解析して求めるマグニチュードだ。
気象庁は第15報までに公開されたマグニチュード数値は暫定値だと示してある。つまり9.0が最初で最後の正式な数値だと言えるだろう。
(※4/16修正:二つ目の点に関しては、確かに島村氏の述べていたとおりMj8.4からMw8.8への変更であった。※)
最初にYouTubeに載せてある『ニュースの深層』で広瀬氏の話を聞いた時からでたらめだと思ったが、講演などで自分があたかもすべてのことに関して正しいなどという彼の態度は、予言的な本を書いただけでは正当化できない。2006年に原子力資料情報室でも福島原発事故の通りのシナリオを警告している人がいたことはこの前も書いた。
島村氏は専門的知識を持ってはいるのだろうが、何をどのように考えたら彼の意見に辿りつけるのか自分には全く理解ができない。
そして最後に付け加えれられれば、広瀬氏のような人が偉そうに登場して適当に喋らせるような朝日ニュースターが「メディア報道のあり方」を論じ、語るべきではないだろう。
最終編集日時(中欧時間(CET)):2011年4月17日16時30分
- areteichi
##### リンク #####
- 気象庁報道発表資料
- 『地震について』 気象庁
- 『追記 2011年3月21日。東日本を襲った巨大地震の”マグニチュード9″とは』 島村英紀のサイト
- ニュースの深層『福島原発事故 メディア報道のあり方』(2011年3月17日、朝日ニュースター)
(第一部) (第二部) (第三部) - 『「福島原発で何が起こっているか?-現地報告と『原発震災』の真実』 広瀬隆/広河隆一 (2011年3月23日、早稲田奉仕園にて)
(Ustream) - 『破局は避けられるか――福島原発事故の真相』 広瀬隆 (2011年3月16日付けのDiamond Onlineの記事)
- 予言されていた“原発震災” 広瀬隆氏インタビュー (2011年3月20日、ビデオニュース・ドットコム)
Pingback: でまかせが明らかに? « Tetsudo 哲道
疑問があります。気象庁による「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の地震の規模について(第3報) でマグニチュードが8.4から8.8に変更になっていますが、資料全文を見ると、Mw8.8となっていました。これはMj8.4からMw8.8への変更ではないでしょうか。それともMw8.4からMw8.8なのでしょうか。
sinsanさん、
返事遅れて大変申し訳ありません。
コメントどうもありがとうございました。
まず第三報の情報ありがとうございます。見落としておりました。
ということは最低でも8.8という数値はMwだったということですね。
8.4はどうなのでしょうね。僕は第十五報での注意事項を見たのでてっきりその時点で切り替えたのかと思いましたが、どうやら少なくとも8.8からはMwが使われていたのだとsinsanのご指摘で分かりました。自分の調べが不足でした。申し訳ありません。
僕の勘ですが8.4はおっしゃる通りMjの気がしますね。Mwに重要なのは第十五報に記されている「CMT解析」なのだと思います。第三報(8.8になった時)にはCMT解析が載せられていますが、第一報(8.4の時点)ではそのようなことは記されていません。
なのでMj8.4からMw8.8というsinsanの解釈に賛成です。
もしそうだとすればなおさら僕の論じようとしている点がさらに裏付けられるかと思います。
文章の方は後日修正しておきます。
どうもご指摘ありがとうございました。
sinsanさん、
この見解だと、自分が島村氏に対して指摘した一部の点と噛み合わなくなっていたので、多少の変更を加えました。
全体的な主張にはなんの支障もないかと存じます。
areteichi さんへ、御返事ありがとうございます。ところで、すいませんまた疑問があります。areteichiさんは「この測定単位の変更は外部的圧力によるものとは島村氏は(はっきりとは)論じていない。」と言われてますが、島村氏のホームページでは「しかし、気象庁がモーメントマグニチュードを日本に起きた地震のマグニチュードとして発表したのはこれが最初だったし、気象庁は前歴もあることだから、現場の判断とはとうてい思えず、なんらかの”入力”があったことは十分に考えられる。」と発言しています。この発言は論じているとは言えないのでしょうか?
それと「この測定単位を変えた理由に、「想定外」のシナリオと煽って、この原発事故に対しての東京電力の損害の負担を軽減するものだとは全く思えない。ましてや訂正した報告『「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第15報)』は3月13日の12時55分に公開された資料だ。ちょうど原発事故と照らしながら考えると、タイミングとしては最初の一号機が爆発(12日の15時ごろ)してから一日経たずといった時である。一瞬で決めて発表したわけでもないだろうし、おそらく原発がここまで酷くなるとはまだはっきりとはほぼ誰にも分かってなかっただろう。」と書き込んでますが、気象庁が測定単位を変えたのは11日の17時30分のことのようです。areteichiさんは、13日だとおもいますか?