三人が死亡した焼き肉チェーン店での集団食中毒は、富山、福井両県警は合同捜査本部を設置して、業務上過失致死などの疑いで捜査のメスを入れていく。生食用の肉をめぐっては、国の基準を満たさない肉の流通が常態化していた事実も浮き彫りとなり、焼き肉業界のあり方も問われそうだ。
「ユッケ用として精肉店に注文を出すが、伝票は『生食不適』。店が生で出すことは伝わっている。そこは暗黙の了解」。金沢市内の焼き肉店経営者は、ユッケ肉の仕入れの実態についてこう打ち明ける。
石川県内の食肉加工・販売業者は「生で使われる肉だとしても、こちらは『生食不適』『加熱用』として表示する。生食を保証はできないから、勧めないし、自分でも食べない」と生肉の危うさを指摘する。
食中毒を起こした焼き肉店を経営するフーズ・フォーラスは「卸業者と互いに肉を生で使用する認識があった」と説明。一方で同社に肉を卸した大和屋商店(東京都)は「生食用は出していない」。互いの言い分は食い違っているように見えるが、これが焼き肉業界の“常識”だっただけだといえる。
原因とみられる生肉ユッケがどの時点で菌に汚染されたのか。
フーズ社の説明によると、ユッケ用の肉は各店舗が大和屋商店に発注し直接、真空パックで配送される。だとすれば汚染は大和屋商店でのパック詰め前か、各店舗で開封した後のいずれか。両県警は、衛生管理の状況や流通経路について調べることにしている。
フーズ社は、二〇〇九年七月末まで店で出す肉について細菌検査を実施していたと説明する。しかし、そもそも生肉は劣化が早く、「検査に回した上で『大丈夫』だという結果を待っている時間はない」という声も石川県内の卸業者から上がる。食中毒を防ぐため、検査がどこまで有効なのか、捜査のポイントになりそうだ。
この記事を印刷する