腎不全や死亡に進行しやすい慢性腎疾患患者を予測する上で、より正確性の高い2つの新しい検査法が米国医師会誌「JAMA」4月20日号に掲載されるとともに、カナダ、バンクーバーで開催された世界腎臓病学会議(WCN)で報告された。これは、最も治療を必要とする患者に対する治療の効率化につながることが期待される。
1件目の研究で、米サンフランシスコ・VAメディカルセンターのCamen A. Peralta氏らは、現行の標準検査法となっているクレアチニンの血中濃度測定に基づく糸球体濾過率(GFR)に加えて、やはり腎臓経由で体外に排泄される蛋白(たんぱく)であるシスタチンcystatin C測定に基づくGFRと蛋白尿(アルブミン尿)という2つの測定値を追加した新しい検査法を考案した。
Peralta氏らは、クレアチニンに基づくGFR単独の場合と3つのマーカーを用いた場合を比較した結果、3つのマーカーを組み合わせることで、患者2万6,643例のうち腎不全や死亡に進行する可能性の高い患者をより正確に予測することができた。多くの組織では、すでに蛋白尿検査を新しいガイドランに追加しているという。
2件目の研究では、米タフツ大学メディカルセンター(ボストン)のNavdeep Tangri博士らが、いくつかの一般的な臨床検査データを組み合わせて、中等度~重度の腎疾患患者における腎不全の短期リスクを正確に予測するモデルを考案し、新しい検査法を開発した。
この新しい検査法を用いて、腎疾患を有する計8,500人近くのカナダ人男女2群を対象に検討。その結果、年齢、性差、推定GFR、蛋白尿、カルシウム、リン、重炭酸塩、アルブミンの血中濃度という8つの変数を考慮に入れたモデルは、年齢、性差、GFR、蛋白尿のみを考慮に入れた4因子のモデルよりも短期リスクの予測がより正確であった。Tangri氏は「すでにオンライン電卓やスマートフォン用のアプリケーションを開発済みで、医師がこのモデルを診療で使用可能である。これらは通常の受診時に行う臨床検査であるため幅広く利用することができる」と述べている。
米ノースショア・ロングアイランド・ユダヤ人ヘルスシステムNorth Shore-Long Island Jewish Health System(ニューヨーク州)のErnesto P. Molmenti博士は、「新しいマーカーにより、末期前の腎疾患に対処できる機会が得られ、早期治療により生活の質(QOL)が向上し、生存率も高まる可能性がある」と指摘。一方、米ネブラスカ大学メディカルセンター(オマハ)のTroy Plumb博士は「これらの検査法を臨床現場へ導入する前に、妥当性の確認された臨床試験が必要である」と述べている。シスタチンC測定については、現状ではすぐに日常臨床に用いるのは難しいとみられている。(HealthDay News 4月11日)
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