死者3人を出した焼き肉チェーンの集団食中毒を受けて、長野県内の個人経営の焼き肉店では、ユッケの提供を見合わせる動きも出てきた。複数の店によると、多くが加熱用の肉をユッケとして出しているのが実情。店側からは、今回の食中毒の原因究明とともに、国などに対し、生肉の扱いについて実態に合った基準づくりを進めるよう求める声が出ている。
人気メニューの一つとして提供していた中信地方の焼き肉店は4日、集団食中毒を受けて5日以降、メニューから外すと決めた。男性店主(31)によると、加熱用の肉塊を業者から仕入れ、切り分ける段階で新鮮な部位をユッケとして使う。包丁やまな板の消毒など細心の注意を払って出してきたが、「焼き肉屋というだけで敬遠されると経営が厳しくなる」と話す。
松本市の韓国料理店経営者(60)も加熱用の肉をユッケとして提供している。仕入れ先の業者に「ユッケ用」として注文すると、届くのは仕入れ値で100グラム450円の肉。モモの部分の肉で、値段も高いという。「加熱用の肉を生で絶対食べてはいけない−とはなっていないのが実情」とする。
諏訪地方の焼き肉店経営者(49)も、県内外の複数の業者からユッケにする肉を仕入れるが、すべての業者の肉に「加熱用」とのシールが貼ってある。経営者は「どこの業者も『ユッケで出して大丈夫』と言いながらシールを貼っている。(問題が起きた時のための)業者の逃げ道になっている」と指摘。今回の食中毒の原因を徹底的に調べ、「国は実態に合わせた対応をするべきだ」と訴えている。