東日本大震災

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福島第1原発:造血幹細胞の事前採取に疑問 英客員教授

 チェルノブイリ原発事故などで被ばくした人を治療した英インペリアル・カレッジ・ロンドン客員教授のロバート・ゲイル博士(65)=米国籍=が28日夜、東京都内で会見した。福島第1原発の作業員が大量被ばくした場合に備え、作業員の造血幹細胞を事前に採取する計画について、「合理的な手段ではなく、勧めない」との見解を示した。

 放射線を大量に浴びると、血液を作る骨髄の造血幹細胞が壊れ、死亡することがある。そこで復旧に当たる作業員本人の造血幹細胞を採取・保存し、治療に活用するよう、国立がん研究センターなどが提案している。

 ゲイル博士は26日、同原発から約20キロ離れた、自衛隊や消防などの拠点「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町)を訪れ、作業員らの健康管理に当たる医師と面会。造血幹細胞の事前採取について議論した。

 ゲイル博士は「大線量の放射線による被ばくではさまざまな障害が同時に起こる。過去の事例で直接の死因となったのは、皮膚や肺など他の臓器の損傷だった」と指摘。

 その上で、大量被ばくが実際に起こるか不明な状況で、数百人規模の造血幹細胞を採取することについて、「採取には時間がかかり、痛みなどの副作用も伴う。少人数が大量被ばくすると事前に分かっていれば実施してもいいかもしれないが、現況では合理的ではない。むしろ、作業員が高線量の放射線を浴びないよう警戒することで、彼らの健康を守るべきだ」と強調した。【須田桃子】

毎日新聞 2011年3月29日 18時56分(最終更新 3月29日 21時32分)

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