事件【主張】原発事故調査委 世界の不安と疑念晴らせ2011.5.5 03:19

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【主張】
原発事故調査委 世界の不安と疑念晴らせ

2011.5.5 03:19

 発生から2カ月になろうとしているにもかかわらず、明確な組織の姿もまだ見えない。

 大津波に端を発した東京電力福島第1原子力発電所の事故に関する調査委員会のことだ。政府は今月中旬にも設置する意向だが、遅きに失した感がある。

 今回の事故が国際社会に与えた衝撃は大きい。世界の危惧に応えるには、高い独立性とともに、国際的に通用する視点と公正さを併せ持った調査委員会にすることが必要だ。そのためにも国際原子力機関(IAEA)の参画を求めてはどうか。

 すべての責任と原因を東京電力に押しつけて終わりとすることなく、世界の原子力発電の安全性向上に資する報告書を目指す、志の高い委員会が必要だ。

 現在も進行中の事故は、国際評価尺度で最も深刻な「レベル7」だ。経済産業省の原子力安全・保安院がそう評価したことで、福島事故は、旧ソ連のチェルノブイリ事故(1986年)と同列に並ぶことになってしまった。

 詳しい事情の分からない世界の人々にとっては、25年前の悪夢の再来である。その余波は、ドイツなど諸外国のエネルギー政策の見直しにまで及んでしまった。日本の責任は重大だ。各国が知りたいことに対し、明確に答え得る調査報告としなければならない。

 放射能汚染の実態などで日本が何事も隠していないことを、世界に向けて証明するうえでもIAEAの存在は大きい。

 福島原発事故の調査は難易度が高い。一義的な責任が東京電力にあることは確かだが、津波対策などにおいて東電と国の責任が入り組んでいるためである。

 被災後の対応においては、保安院自身や原子力安全委員会までもが判断や行動の適否を問われる局面もあろう。首相や官邸の影響を排して公正な立場で臨むため、調査委員会は、人選をはじめ審議も随時チェックできるよう国会が関与できる形が望ましい。

 世界初の大事故となった米国のスリーマイル島原子力発電所事故(1979年)では、2週間後に特別委員会が設置されている。

 それに比べて、菅政権の対応は異様に遅い。国際社会に対して、原因解明に不熱心な印象を与えるようなら、日本の信用は一挙に失墜してしまう。汚染に続く汚名の上塗りは避けたい。

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