2011年3月10日 10時21分 更新:3月10日 11時5分
小中学校の校長の6~7割が、11年度からの新学習指導要領の全面実施に伴い、児童・生徒の学力格差が拡大すると考えていることが、ベネッセ教育研究開発センターのアンケート調査で分かった。学習量の増加に、子供たちが対応しきれなくなる可能性を懸念しているようだ。
同社は97年から数年おきに全国の小中学校の校長と教員を対象にした「学習指導基本調査」を実施している。5回目となる今回は、昨年8~9月、校長1133人、教員5515人を対象に新学習指導要領への対応状況などについて尋ねた。
学力格差の拡大については、小学校校長の71%、中学校校長の64%が「とても不安」または「やや不安」と回答した。一方、1割程度増加する学習量への対応策を複数の選択肢を挙げて聞いたところ、小学校教員の55%、中学校教員の35%が「全体的に授業の進度を速める」と答えた。同社は「ついていけない児童生徒が増えることへの懸念があるのでは」と分析している。
調査からは「学力低下」批判を背景に、学校現場が“学力重視”に回帰する傾向も浮き彫りになった。例えば、教師の指導観を探るため(1)自発的に学習する意欲や習慣を身につけさせること(2)たとえ強制してでもとにかく学習させること--の二つのうち、児童・生徒に対して重視する方を選んでもらったところ、(2)の「強制学習」を選んだ教員は小学校が98年調査の12%から27%に、中学校は97年調査の18%から35%に増えた。
また、学校の「教育目標」に「学力向上」や「学力定着」という言葉がある小学校は02年調査の21%から42%に、中学校は25%から36%に増加した。調査・分析メンバーの耳塚寛明・お茶の水女子大副学長(教育社会学)は「全体として子供中心主義が衰退しているようだ」と話している。【井上俊樹】