松本外相就任:「官僚主導」警戒の声 試される手腕

2011年3月9日 21時33分 更新:3月10日 0時40分

辞令交付後の記念撮影に臨み、言葉を交わす菅直人首相(左)と松本剛明外相=首相官邸で2011年3月9日午後6時59分、藤井太郎撮影
辞令交付後の記念撮影に臨み、言葉を交わす菅直人首相(左)と松本剛明外相=首相官邸で2011年3月9日午後6時59分、藤井太郎撮影

 菅直人首相は「外交の継続性」を重視する形で松本剛明副外相を前原誠司氏の後任外相に昇格させた。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの経済外交や日米関係の修復など重要懸案を副外相として担当してきた松本氏の起用を外務省は歓迎している。ただ、知名度の低い中堅議員の抜てきには「官僚主導」の復活を警戒する声が出ているほか、政権自体の「短命」もささやかれ、外交の停滞も懸念される。【犬飼直幸、西田進一郎】

 「強固な日米同盟を基盤として中国、韓国、ロシアをはじめとする近隣諸国との協力関係の推進に取り組む」。松本外相は9日夜の就任記者会見でこう強調した。前原前外相は米軍普天間飛行場の移設問題で傷ついた日米関係の修復に取り組み、中露との関係改善にも意欲を示していた。その路線を引き継ぐ「即戦力」としての起用だが、メア米国務省日本部長の沖縄批判発言や、東シナ海ガス田の「生産段階」報道などへの対応で、早速その手腕が試されることになった。

 19、20両日には日中韓外相会談のため中国の楊潔※外相が来日する予定で、外務省は前原氏が計画していた4月訪中の調整を松本外相に代わっても進めたい考え。外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の5月開催でも調整中だが、菅政権の弱体化が外交懸案の先行きに影を落とし、「どうせ数カ月のワンポイントリリーフ」(政府関係者)との冷めた見方もある。

 前原氏は北朝鮮との直接対話に前のめりな発言をするなど「危うさ」が指摘された。松本外相は会見で、北朝鮮問題に対処するための「日米韓連携の原則」堅持を強調するなど、応答要領通りとみられる発言に終始した。外務官僚の間には「不規則発言がない」との評価も聞かれるが、裏返せば「物わかりの良さ」が歓迎されているともいえ、岡田克也元外相、前原前外相の進めた「政治主導」外交からの後退もちらつく。

 新党改革の舛添要一代表(元厚生労働相)ら党外から重量級を起用する「サプライズ人事」も取りざたされた。国民新党の亀井静香代表は東京都の石原慎太郎知事を首相に薦めたが採用されず、9日の記者会見で「国家の危機を突破するには挙国一致の大改造をやらないといかん」と不満を隠さなかった。

 「ねじれ国会」で野党の攻勢にさらされて民主党内に退陣論も広がる中、「内閣総辞職」を公然と唱える樽床伸二元国対委員長のグループから松本氏を起用することで、党内融和を図るのが精いっぱい。「攻め」の人事で政権浮揚を狙う余裕は首相にはなかった。

 ※は竹かんむりに褫のつくり

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