2011年3月9日 15時0分 更新:3月9日 15時28分
JR東日本は世界唯一のオール2階建て新幹線「Max」(E1系、E4系)を段階的に廃止する方針を固めた。老朽化とともに最新鋭車両の導入に伴う勇退で、来年7月以降、上越新幹線のE1系から順次退役させ、5年後をメドに全廃する計画だ。90年代半ばから上越、東北新幹線で人気を集めた花形車両が姿を消す。【斎藤正利】
Maxは「マルチ・アメニティー・エクスプレス」の頭文字で、乗り心地や内装などさまざまな面(マルチ)で快適さ(アメニティー)を追求した高速鉄道(エクスプレス)。中距離通勤・通学客の混雑緩和や繁忙期の着席サービス向上を目的に94年7月、12両編成のE1系として上越新幹線に登場した。
1両当たり座席数は従来より約40%増え、2階席は1列3+3の6人掛けで座席を固定し、車いす対応席や昇降装置、ベビーベッド、パウダールームも設けた。1~2階はらせん階段でつなぎ、2階席からの車窓風景が人気を集めた。現在、6編成72両が東京-新潟方面間を結んでいる。
E1系をベースに騒音対策に配慮した「ロングノーズ」のE4系は97年12月にデビュー。8両編成を基本に分割や連結が可能なように設計した。8両を2本連結した16両編成の定員は1634人で世界最大。26編成208両が東北を中心に運行している。
車両の取り換えは営業運転開始から15年が一応の目安とされてきたが、メンテナンス技術の進歩で寿命は10年ほど延びている。E1系は導入から17年、E4系は14年だが、一方で利用客から「2階の固定座席が不便」「通路を広げてほしい」「車両の編成がばらばらでホームの乗車位置が分かりにくい」などと改善を求める声も寄せられていた。
東日本管内の新幹線は大宮駅から東北、上越、長野の3方面に分かれ、輸送量や地形、気象条件が異なる上、在来線と併用する山形や秋田のミニ新幹線を抱え、車両の系統や編成をそろえるのが難しかった。Max廃止に伴い、方面別に系統や編成を極力統一することで、ゆったりした車内空間や、乗車位置の固定化などによる利用客に分かりやすい車両編成が可能と判断した。
東北は13年度末までにE5系「はやぶさ」に置き換え、上越は将来的に雪や厳寒期に強いE2系に統一する。Max開発に携わったJR東日本OBは「2階建ては民営化後の自由な発想から生まれたアイデア満載の車両だった。長い間、よく頑張った」とねぎらった。