2007年08月16日

忍者・スッポン・マムシ?:高山通史

 好調な日本ハムの陰のキーマンは、忍者にスッポンにマムシにetc…。一見、関連性のないキーワードだが、実はこれ球団編成の源流ともいえる、日本ハムのスカウト陣の愛称です。ちなみに「忍者」とは、スカウトを束ねるトップの山田正雄シニアディレクター(SD)。「マムシ」は今成泰章スカウト、「スッポン」は石川晃スカウトのことです。この3人以外にも、元高校教師に、自球団、他球団の2軍監督経験者が2人に、元アマ全日本の4番でOBの中島輝士スカウトら、バラエティーに富んだスタッフがそろっています。

 現在の1軍選手を見てみると、そのスカウティング力が見てとれます。近年は、投手中心の方針をかたくなに維持。特に顕著なのは本拠地移転の04年以降で、同年の1巡目はダルビッシュ。高校時代の故障の不安などで他球団が敬遠する中で、堂々と1本釣りした。4巡目にはロッテも狙っていたマイケルを水面下での激しい駆け引きの末に指名し、今や守護神。最下位の9巡目で、現在レギュラー奪取目前の工藤を獲得したのです。

 05年の高校生は1軍に定着している陽、今季プロ初勝利を挙げた木下。大学・社会人では昨季新人王の八木を、興味を示していた他球団以上の高い評価をして希望枠で獲得し、4巡目で今季の先発左腕エース格の武田勝。昨年も、高校生ですでに3勝でローテに定着した吉川を、楽天田中の「外れ1位」で指名しているのだ。名前を見てみると、ほぼアマ時代に“超有名”ではない選手たちを、しっかりとした自軍の評価の上で、したたかに指名してきているのです。

 山田SDの「忍者」の由来は、大切な時に、球場などで姿をほとんど他球団のスカウト陣に見せないことだといいます。今成スカウトの「マムシ」は難交渉の際などに、一瞬で相手を落とすことから。石川スカウトの「スッポン」は、指名対象選手などに1度、食らい付いたら離れないなどからきているといいます。ほかスカウトもそうでですが、いずれも他球団と迎合することを少なくし、群れることなく単独で活動していることが多いと聞きます。球団方針としても、その方向性でいくようにと伝えてあるということです。

 昨季はあるスカウトが有名大学生選手の指名に踏み切ろうとし、その選手が入団を希望していたとされる球団のスカウトが激怒。それでもシステム上の正当性を訴えて、公衆の面前でも激しく口論したとの「武勇伝」も聞きました。高田GMも熱心にアマ野球の現場に足を運び、指名するか否かを決める「最高機関」として機能しています。

 今、甲子園のバックネット裏で真っ黒に日焼けして連日、目を凝らしている各球団のスカウトたち。日本ハムの今を築く一因になった立役者たちが、その中にいます。

August 16, 2007 10:51 AM 投稿者:高山通史

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/12192