リビア:NATOが介入示唆 米国と思惑の違い鮮明に

2011年3月8日 21時20分 更新:3月8日 22時34分

 【ブリュッセル福島良典、ワシントン草野和彦】欧米の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO、加盟28カ国)のラスムセン事務総長が7日、リビアへの「人道的介入」の可能性を示唆した。背景には、政府軍による反体制派攻撃が鎮まる気配のない戦況への人権上の懸念がある。人道を重視する欧州では英仏が飛行禁止空域設定を求め、国連安保理決議草案も準備するが、空爆被害は重くないとみる米国は慎重姿勢を崩さない。リビアへの軍事介入を巡る欧米の思惑の違いは一層鮮明になっている。

 NATOが「飛行禁止空域」の設定などの軍事作戦立案に着手したのは、リビアで空軍力を使った事実上の内戦に突入したためだ。カダフィ政権による民間人に対する組織的な無差別攻撃は「NATOに対する直接の脅威ではないが、言語道断」(同事務総長)であり人道上、看過できないという思いがある。

 ただ、イラク戦争などの記憶から「外国の軍事介入」を嫌うアラブ世界の空気が二の足を踏ませている。アラブ諸国の地域機構・アラブ連盟は飛行禁止空域設定に賛同する構えだが、市民レベルでは反対意見が強いとみられ「国際社会はジレンマに直面している」(同事務総長)。

 人道的介入の代表例はコソボ紛争でのNATOによるユーゴスラビア空爆(99年)だ。ミロシェビッチ政権によるコソボでの「民族浄化」を理由に人道目的で実施されたが、国連安保理決議の裏付けがなかったため、正当性に疑問符が付いた。ラスムセン事務総長が安保理決議を介入条件に強調するのはユーゴ空爆の教訓がある。

 一方、米国は飛行禁止空域設定という軍事介入になお慎重だ。飛行禁止空域が暴力停止に有効か、という本質的な疑問も背景にあるようだ。

 ダールダー駐NATO米大使は7日、飛行禁止空域の設定について「戦闘機には効果的だが、ヘリコプター(による攻撃)や地上戦への効果は限定的だ」と指摘。カダフィ政権による空爆の減少を挙げ、飛行禁止空域でも「今起きていることにあまり影響を及ぼさない。すべての問題が解決するわけでもない」と述べた。

 しかし、カダフィ政権への圧力の意味合いもあり、米国は軍事介入の可能性は否定せず「無防備の市民が重大な危機に陥る」(オバマ大統領)事態になれば介入する場面も出てくるとみられる。

 中東の衛星放送アルジャジーラによると、北中部ラスラヌフでは、8日も民家周辺などで空爆があり、市民数人が死亡した。西部のミスラタとアズザウィーヤでも激しい戦闘が行われ、少なくとも18人が死亡した。

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド