2011年5月 2日
【産創館レポート】ニーズに応えた「葬祭業」
経済学の用語に「情報の非対称性」というのがある。サービスや商品などについての情報に、提供元と提供先で格差があることを言い、良質な商取引が成立しない状態が起きやすくなることを意味する。
葬祭業で新たなビジネスモデルを確立した田中智也社長(右)と田中慎也副社長 |
その状況にあったのが「葬祭業」だ。「何が適正な価格か分らない」。業者の提案した値段に対し、こうした思いを抱きながらも、しぶしぶ契約した経験のある消費者も多いはず。その不透明さを透明にしようと取り組んでいるのがユニクエスト・オンライン(大阪市西区)だ。
創業は2006年。まず葬儀所から掲載料収入を得る葬儀価格の比較サイトの運営を始めた。次に成功報酬を目的とする葬儀受注代行サービスとビジネスモデルを変化させ、そのために多額の投資も実行してきた。
しかし、思い描く事業展開にならず、もどかしい時間が経過したという。「消費者のニーズや本音に気がついていなかった」と田中智也社長は当時を振り返る。比較ができても、多くの人が業者の掲げる価格自体に納得していないという現実がそこにはあったのだ。
そこで田中氏は社内の反対を押し切り、自らが葬儀屋になることを決意。消費者にニーズがある「小さなお葬式(小さな火葬式、小さな一日葬、小さな家族葬)」に限定し、料金はすべて込み、追加料金不要の明朗会計の葬儀プランを開発・発売したのである。
実際の葬儀運営は、システムに賛同してくれる全国の葬儀社1000社に依頼。このビジネスモデルは値段を下げてでも空席を埋める航空業界に似ている。
既存業者の行う一般的な葬儀形式とは異なり、消費者は明朗会計・低価格、業者は葬儀所の空時間を埋められ、しかも従来の葬儀業者の行う形式とも競合しないという。
この商品を販売して1年半。消費者に支持され大手業者の受託件数に迫る勢いとなり、業界トップも視野に入ってきた。
田中氏は「葬儀に関するビジネスモデルは完成した」という。業界大手に成長し、注目され、そして追われる立場となった今、先を見据えたビジネス領域拡大が次なる課題となっている。
(大阪産業創造館経営相談室室長 田口光春)
(2011年5月 2日 07:17)
タグ:ユニクエスト・オンライン, 大阪産業創造館, 産創館レポート
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