検証・大震災

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検証・大震災:原発事故2日間(5)現地に首相の怒声「早くベントをやれ」(2/3ページ)

 午前3時、東電は官邸に「2号機は冷却装置が働いている」と報告した。それでも、官邸にいた班目委員長は「これからベントですね」と語った。

 ◇政府と東電 微妙な食い違い

 ほどなく、海江田経産相と小森明生・東電常務が会見した。海江田経産相は「ベントを開いて圧力を下げる措置を取る旨、東電から報告を受けた」と説明し、すぐに小森常務にバトンを渡した。これに対し、小森常務は「国、保安院の判断を仰ぎ、(ベント実施の)判断で進めるべしというような国の意見もありまして」と述べる。「東電の判断」という海江田経産相の説明と微妙な違いを見せた。

 方法は、水蒸気を直接大気に出す「ドライベント」ではなく、いったん水にさらして放射性物質を100分の1程度に減らす「ウエットベント」だった。いずれにしても前例がない。

 会見で、小森常務は当初、2号機でベントを実施すると表明したが、代わった東電の担当者は「今入った情報では、2号機は冷却機能が働いていると確認できた。1号機になるかもしれない」と説明した。記者を混乱させた。

 原発敷地内では放射線量が上昇し、保安院は午前6時、1号機の中央制御室で通常の約1000倍の放射線量が計測されたと発表した。原発正門付近でも通常の約8倍を記録した。今回の東日本大震災で初めて放射性物質の漏えいが確認された。

 政府は原子炉等規制法に基づき、東電にベントをするよう命令した。午前6時50分だった。

2011年4月4日

 

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