「ゼロワン」(3日、宮城県亘理町)
東日本大震災後、被災地となった宮城県で初めてのプロレス大会を開催した。代表の大谷晋二郎(38)、橋本大地(19)らが同日未明に都内から車に便乗して死者・行方不明者270人(2日現在)となった亘理町に駆け付け、屋外駐車場にリングを設置して“街頭プロレス”を被災者に届け、勇気を発信した。大谷は地元のコミュニティーFM局をハシゴし、隣接する山元町内で津波の被害が甚大だった地域にも足を運んだ。
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戦後復興期、力道山の空手チョップが街頭テレビを通じて日本に勇気を与えた。95年の阪神・淡路大震災では“青空プロレス”が神戸で開催された。そして、東北にはゼロワンがやって来た。
会場はパチンコ店の駐車場。もちろん、入場無料だ。カレーライスが炊き出しで振る舞われ、試合前には子どもたちがリングに上がり、選手と触れ合った。メーンのタッグ戦は世界ヘビー級王者・崔領二が駐車場という利点を生かして自転車で入場するサプライズ。20分を超える熱戦に、広い空間での場外乱闘も加味され、立ち見も出た470人の観客を喜ばせた。
テレビでの露出もあって一番人気の声援は橋本に集まったが、19歳の破壊王子は徹底的に痛めつけられた。最後はKAMIKAZEの月面水爆で撃沈。だが、師匠の大谷は「やられても、はい上がってきた」と評価。被災者の心情を体現した橋本は「プロレスを通して元気になっていただければ」と謙虚に語った。
大谷は大会前に、亘理町と、死者・行方不明者が800人となった隣接する山元町のFM局に出演してプロレスの魅力を伝え、さらには山元町の状況を見て回った。「この子どもたちが10年、20年後、立派な大人になってくれることを心から祈っています。心の復興。僕たちはプロレスでやれることをやっていく。また来ます。頼まれなくても、また来ちゃいます」。プロレスを信じる男の偽りのない言葉だった。
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