アニキ奇跡復活弾!落合超えセ界最年長

 2回、1号先制ソロを放った金本は阪神ファンの声援の中、生還する
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 2回、1号先制ソロを放った金本は阪神ファンの声援の中、生還する

 「巨人3-7阪神」(3日、東京ド)

 奇跡だ。箸を持てなかった男が、相手エースの速球をスタンドまで運んだ。一度はあきらめた軌道。「素直にうれしい」。阪神・金本はこの言葉にすべての感情を詰め込んだ。

 衝突音とともに飛ばない統一球が悠々、右翼フェンスをまたいだ。東京ドームの記念すべき今季1号は、アニキが描いた復活の1号アーチ。「あれが突破口。大きかった」。強力打線を預かる和田コーチがたたえるまでもなく、クリーンアップ3連発を誘発したのは、奇跡の一発だった。

 43歳1カ月のアーチで、アルトマンの球団記録、落合博満の持つ最年長本塁打のセ・リーグ記録を更新。「最年長とか、好きやな」。試合後、金本は報道陣を見やり、いたずらっぽく笑った。打ったのは、外角やや低め。仕留めたコースに収穫があった。

 金本の負う棘(きょく)上筋の完全断裂とは、腕を持ち上げる肩の一部筋肉が100%欠如していることを表す。症例では、右腕は胸の位置まで上がらない。プロ野球界で、この重傷を手術抜きで克服した例は、皆無だ。

 「ヒットは打てても、もうホームランは厳しいかもしれん…」。開幕をひと月後に控えた3月中旬。意のままにならない右肩をさすりながら、弱音を吐いた。プロ20年目。掛布、原、秋山、長嶋…歴代のアーチストに並び、超えてきた。「引退するまで、ホームランを期待されるバッターでありたい」。ミスターの通算本塁打444本を超えた昨季、そんな志も口にしたが、現実と向き合う自身もいた。

 昨季終了後、MRI画像を見た担当医師から「もう無理です」とまで言われた。10月からの2カ月間は、悪夢との闘い。「気が狂うほどの痛さ」で就寝後、30分置きに飛び起きた。だが、心は折れなかった。あきらめない気持ちが、肉体を突き動かした。3月にベンチプレスを解禁すると、「まずは20キロから」と指示する伊藤トレーナーに隠れ、40キロを持ち上げていた。現在負荷は80キロに達し、筋力の復元が打球の質に直結してきた。

 復活とは?金本はそう聞かれて「やっぱり、ホームランかな」と答えてきた。前カードのヤクルト戦では「復活の条件」に掲げた左中間への強い打球も放ち、復調気配をのぞかせた。前日は甲子園で休日返上の打撃練習を行い、上京。この日、球場入りすると、真っ先に、節電で薄暗い東京ドームの屋根を見上げた。「デーゲームはこのくらいが打球が見やすいな」と守備への意識を先に立て、左翼で入念に練習球を追って試合に臨んだ。

 「田淵さんの記録を超えたい」。金本には野望がある。奇跡の1本で通算459本を数えた。ミスタータイガースの474本まであと15本。鉄人の欲が再び芽生えた。

(2011年5月3日)

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