2011年5月3日10時48分
野党提出の内閣不信任案に、民主党の80人以上で同調して可決する――。小沢一郎元代表が描く倒閣シナリオは、第1次補正予算が成立し、大型連休が明けた途端に動き出すはずだった。ところが小沢氏の思うとおりに事態は進んでいない。
4月30日夜、都内の居酒屋。小沢氏は若手議員15人を前に座ると、あいさつもなしに酒を飲み始めた。福島第一原発の話題になると「安定しているというより安定的に放射能が漏れ続けているだけだ。決死隊みたいなものを送り込んで内部で止めることが必要だ」と語気を強めた。だが、側近議員がわざわざ中間派議員を呼んだのに、倒閣への決意は語らずじまい。「元気がない」と出席者の一人は感じた。
小沢氏に近い山岡賢次元国会対策委員長が4月26日に開いた勉強会の出席者は衆参64人にとどまり、中間派はほとんど姿を見せなかった。中間派から「党内が混乱している印象を与えるだけ」との声が上がり、小沢グループの議員も「完全な失敗だ」と漏らした。
輿石東参院議員会長や鳩山由紀夫前首相ら「盟友」からも倒閣自粛を求められた。昨年6月の代表選で小沢氏が支援した樽床伸二元国対委員長らも様子見を決め込む。
小沢氏の元秘書である石川知裕衆院議員の刑事裁判で業者が1億円の裏金を小沢氏側に渡したとする証言も飛び出し、世論の厳しい批判を覚悟して可決見込みの薄い不信任案に同調する議員が広がる気配はない。
とはいえ、いったん不信任案賛成へアクセルを踏んだ動きを止めれば、小沢グループ内の不満はたまるばかりだ。側近は「進むも地獄、引くも地獄」と語る。自民党が不信任案を提出した場合、小沢氏は離党覚悟で同調する決断を迫られる局面も予想される。
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