きょうの社説 2011年5月4日

◎バイオマス活用 新エネルギーの地産地消に
 東日本大震災の福島第1原発事故を受けて、大規模発電優先への反省から、規模はまだ まだ小さいものの、太陽光や風力を活用した再生可能エネルギーに、目を向ける動きが加速している。北陸では、能登を中心に、おがくずなどからつくるバイオマス燃料の生産拡大をめざす動きも見えてきた。今年は国連が定める国際森林年でもあり、こうした取り組みを、樹木の有効活用による豊かな森づくりへの試みととらえ、地域から新エネルギーの地産地消の動きを広げたい。

 豊富な森林資源を抱える北陸の各自治体では、発電も含め、バイオマスによる資源活用 に乗り出すところが多くなってきた。2010年からバイオマスタウン構想を掲げる能登町は、地元製材所から出る木くずを使った燃料「木質ペレット」の生産拡大を図るため、製造者の養成に乗り出した。南砺市のNPO法人は富山県とともに、同市の間伐材の活用策として木質ペレット燃料の活用に着目し、昨年末に実証調査を行った。

 木質ペレットは東日本大震災の被災地支援でも活用されたペレットストーブに使われて おり、今後の需要増も見込まれる。地元産木材を地元で無駄なく活用することで、環境配慮の町としてのイメージアップにもつながろう。

 米シンクタンクの報告書によると、2010年の世界の発電容量は、風力や太陽光など の再生可能エネルギーが、初めて原発を逆転した。福島第1原発事故の影響で、今後、廃炉になる原発が増え、新設も大幅には増えず、その差は大きくなるとの見通しも示した。

 翻って日本では、再生可能エネルギーは、発電量で言えば全体の1%程度で、発電の多 様化という側面では、世界標準と異なる状況だ。逆に普及に本腰を入れれば、再生可能エネルギーの今後の伸びしろは大きいとも言えよう。

 政府は、バイオマス活用による地域暖房を完備したエコタウン構想を復興案として打ち 出したが、北陸でも、樹木の適切な間伐を促進し、持続可能な森林経営を後押しする意味でも、風土の恵みをフルに生かして、発電を含めたエネルギーの生産を促したい。

◎食中毒で男児死亡 リスク高い「肉の生食」
 砺波市の焼き肉店で、ユッケなどを食べた男児が「O111」に感染し、死亡した事件 は、生肉を安全に食べることの難しさ、食中毒の恐ろしさをあらためて実感させた。O111や「O157」など腸管出血性大腸菌による感染は、乳幼児や高齢者の場合、重症化するケースが多い。細菌性中毒は気温が高くなる5月から夏場に多発するだけに、感染のリスクがある生肉を子どもに食べさせるのは極力控えたい。

 食の安全というと、食品添加物やトランス脂肪酸などが注目されがちだが、最大のリス ク要因は今も昔も食中毒である。私たちは「肉は新鮮なら安全」と思い込みがちだが、これは大きな錯覚だ。腸炎ビブリオの培養実験では、1匹の菌が10億匹にまで増えるのにわずか5時間しかかからないという。

 特に腸管出血性大腸菌の場合、新鮮であっても、ごく少数の菌が付いている肉を生で食 べると、食中毒になる可能性がある。最近は生食を提供する店舗が増えていることもあって、肉が食中毒の原因食品となる例が右肩上がりに増えている。牛肉のほか、鶏の刺し身などで感染するカンピロバクター菌にも十分な注意が必要だ。

 厚労省の「生食用食肉の衛生基準」は、生食用の肉やレバーの出荷に厳しい基準を設け ているが、法的強制力はなく、あくまで目標にとどまっている。この基準をクリアできる食肉加工施設は全国に十数カ所しかないうえに、多くが馬の肉とレバーを専門に出荷しており、牛肉と牛レバーを手掛けるケースはほとんどない。このため、業者が自己判断で「生食用」として流通させる例が絶えない。

 富山県厚生部は、食中毒予防のポイントとして▽肉は十分な加熱(75度1分間以上) を心掛ける▽ユッケや生レバーなど生肉は避ける▽生肉を処理した包丁やまな板は十分な洗浄、消毒をする▽焼き肉の時、焼くはしと食べるはしを使い分け、生肉に触れたはしを使わない▽冷蔵庫では、生肉や生肉のドリップが他の食品に触れないよう容器に入れるよう注意喚起している。飲食店に限らず、家庭でも生肉の管理に十分注意したい。