2011年5月4日5時3分
被災地の教員不足が深刻化するなか、東京都教育委員会が宮城県教委の要請を受け、公立校の現役教員68人を来年3月まで同県に派遣する。送り出す東京の学校では、新年度が始まったばかりでクラスや教科の担任が代わるケースが出てくる異例の支援だ。
都教委は「存続が危ぶまれている被災地の学校を助けるため理解していただきたい」と言い、他の被災県からも要請があれば前向きに検討するとしている。
派遣先は、小学校35人、中学校19人、高校11人、特別支援学校3人。現地で住むアパートや炊飯器、洗濯機といった生活用品も都教委側が用意する。欠員が出た東京の学校は、教員免許を持った人を期限付きで採用するなどして補充するという。
派遣した教員が教壇に立つのは9日からの予定で、2日には都庁で結団式があった。都立武蔵台特別支援学校から石巻市の特別支援学校に派遣される長山昌弘教諭(31)は宮城県白石市出身。大学時代の先輩や後輩には、今も連絡がとれない人がいる。「ふるさとのために、直接力になりたいと思っていました。ショックを受けている子どもたちを支えたい」
ただ、これで教員不足が解消されるわけではない。同県では沿岸部からの避難者が多い内陸部で教員を増やす必要があるが、県教委は「被害が大きかった学校では特に手厚いケアが必要」と、子どもが減った沿岸部でも教員数は維持したいという。県教委の算定では、都教委派遣分も含めて約220人の教員増が必要で、県内で講師を急募しているが確保のめどは立っていない。
県教委の担当者は「今回を教訓に、全国で災害時に派遣する教員の人材登録の仕組みや教委間の支援協定のひな型をつくっておくべきだ」と話す。(見市紀世子、岡雄一郎)