3月下旬からスタートしたKalafinaの全国ツアー「Kalafina LIVE Spring TOUR 2011″Magia”」も、3月15日・NHKホールを舞台にしたコンサートでファイナルを迎えた。あの日の感動を、ぜひ、この場を通してお伝えしたい!

音楽のMagiaの物語…その序章としての創造と想像

ひっそりと流れる優しい音楽の音色が、NHKホールという会場中へ、静謐で穏やかな空気を注ぎ込んでゆく。同じよう照明も、徐々に、徐々に明かりを落とし、場内がたおやかな雰囲気へ満たされた頃、嬉しい衝撃が、その場の空気を一変した。

力強くも荘厳な演奏が轟き出し、ヴァイオリンの音色が、静けき環境をヒステリカルな音色で切り裂き出した。と同時に、舞台2階後方へ、艶やかな3人の女神が姿を現した。

彼女たちは、背景で大きくたなびく真っ赤な帯を背に、勇壮に、高らかに、その聖なる歌声を会場中へと響かせ出した。主旋律を唄う女性の声へ、2人の歌声が、時には絡み合い。時には、歌声を彩る異なる声の絨毯として、会場内へ、その声色を塗り広げてゆく。もちろん、3人の歌声が一つに重なったときに生まれる三層一体化した歌は、その場に居た人たちの心を、嬉しいくらいの感動を通し揺さぶっていく。

ついに、幕を開けたKalafinaのステージ。冒頭を飾ったのは、今回のツアーのタイトルにも冠された「Magia」だ。

大地を揺るがす演奏と、天空を塗り込めてゆく歌声がシンクロしあったとたん、その空間は、”音楽の新たな創世記”を告げる物語の序章に変わっていった。

そう、この日のコンサートは、Kalafinaが音楽を通して綴れ織った”素敵なMagia(魔術)の物語”。僕らがこれまで体感したことのない、新しい体験のための最初の道標だ。

一つ一つの物語が、心のスクリーンへ消さない感動を焼き付けていくから

荒ぶる赤い感情描き出した「Magia」から、一転。舞台は、青い光に包まれ。その色を声で彩るかのように、3人の歌声が「serenato」を紬ぎ出した。鬱蒼とした世界が広がる空間の中、3人の歌声も、歌を歩めるごとに声のグラデーションを次々と変えながら、荘厳かつ哀惜な表情を描き出していた。

猛々しくもクラシカルな音の旋律たちが、会場中を舞い踊り出した。情熱的な調べは、魂を歓喜させる高揚の宴の合図。何処かダウナーな空気が場内へ落ちてゆく中、Kalafinaは、「闇の唄」を通し、哀愁な想いの調べに身を預けながら、透明な五線譜の上で、華麗に唄い、踊りだした。

次々と場面の変わるステージ。その一つ一つが、観る側の瞼と耳管へ、強烈な感動を焼き付けていく。

「みなさんに、今日は、笑顔になって帰っていただければと思います」(Hikaru)

「音楽の持つMagiaを、一緒に楽しみましょう」(Wakana)

そして、空へ高く、舞い踊り、羽ばたいて…

ピアノとヴァイオリンが連なり導いた、哀愁あふれる音のハーモニーに乗せ、主旋律と麗美なコーラス声が織りなす美しくも優しい歌声のタペストリーが描き出された。「輝く空の静寂には」が導いた、聖なる祈りの調べ。その歌声の純潔さに、心が釘付けになっていく。

軽やかに、高らかに空へ舞い上がるよう、3人の歌声が、会場中の人たちの心へ、小さな翼を植えつけてゆく。「oblivious」が伝えてくれたのは、闇から光へと変わるように、あらゆる想いを”先”へ転化させてゆく、美しい高揚の呪文。演奏が進むごと、気持ちが浄化するように、麗美なコーラスの翼をはためかせながら、僕らは果てぬ空へと舞い上がり始めていた。

舞い踊り、高揚した感情の翼は、一気に切り裂かれた空の一片から差し込んだ閃光へ導かれるよう、高く高く羽ばたき始めた。美しくも重曹に絡み合う3人の歌声は、羽ばたく僕らの感情を、明るい光のベールにと変え、温かく包み込んでゆく。「sprinter」が導いた、心洗われるような美しき感動。そして3人は、静かに舞台から降りていった。

ここは、幻想の森??それとも…。夜の宴の不思議な幻聴物語

場内に流れるピアノと弦楽の調べたちが織りなす、ファンタジックかつ幻想的な物語。演奏が進むごと軽やかに舞い踊る調べは、まるで異境の遊園地で戯れてゆくときの、心の背景音楽のようだ。「from”when the fairytale ends”」が綴り織ったのは、次なる扉を開くための、美しくもメルへンなワンダーランドの風景。

悠久の調べが、ふたたび舞台上を幻惑的な世界へと誘ってゆく。哀切な物語を語るように唄うWakana。彼女のリード・ヴォーカルへ麗美に寄り添ってゆくHikaruとKeiko。和心も見え隠れする「fairytale」は、僕らが迷い込んだ森の中へこだまする、心穏やかに潤す子守であるかのよう。

なんて穏やかな、穏やかな歌の囀りなんだろう。まるで、母の腕の中で揺さぶられ聞かされた子守歌のように、「intermezzo」が、ジワジワと優しくも美しい歌声の調べたちを、柔肌へ触れるように届けていった。

そして、空に、朧がかった赤い月が輝き出した。場内へ敷き詰められた白い霧の絨毯。闇の中へ輝いた、朧な赤い希望。楽曲が進むごとに、歌声と演奏はクレッシェンドを上げ、雄大な景観を描き出していく。美しくもシンフォニックな音楽が、心へ歪つな興奮を与えてゆく。夜を舞台にした幻惑的な宴は、まさにクライマックスへ達しようとしていた。

興奮の宴は、感情さえも、夢幻の彼方の住人へと変えていく

物語は、ふたたび舞台を様変えてゆく。シタールの音色を合図に始まった、「テトテトメトテ」を通した妖しげな宴。アラビアンな旋律の数々に合わせ、3人もまた、会場中へ敷きつめた透明な五線譜たちの上で、軽やかに、気高きアラビアンなダンスを舞い、唄い出した。

和な旋律とデジタルなダンスビート。そして3人の、悠久な世界へ誘う声がフュージョンし出した。「love come dowm」が描き出したのは、身体を思いきり躍動させゆく”クワイア・ダンス”。民族的な調べが、デジタルな音の記号と融合し出したとたん、その旋律は、身体を激しく揺さぶる民族の踊りへと転化していった。

その情熱的な音の調べに合わせ、満員の観客たちも、興奮のレベルゲージを、グングンと赤い空間の中にまで上げだした。

ゴシック/ダンスビート/オペラな躍動的世界観が炸裂。麗美で跳躍的なメロディック&デジタリズムな歌「fantasia」が流れ出した。激しくも躍動的なビートが会場中を蹂躙してゆくだけに、観客たちも、思いきり身体を動かしながら、メロディック/ゴシック・シンフォニアな世界観へ身も身体も預けていた。

是永巧一のギターが歪んだ咆哮を上げた。紺野均のヴァイオリンが悠久の調べを奏で始めるや、3人の力強いハーモニーが、放たれた矢のように、会場中へ勢い良く飛び出した。荒々しい「progressive」の演奏の上で、3人の美しい歌声が、幾重にも彩られた声色のタペストリーを綴れ織ってゆく。突き上げた拳は、もぅ下ろせそうにない。いや、下ろしたくはないっ!

ダウナーなデジタルグルーヴが、会場中を支配してゆく。加速度を上げた四つ打ちビートの炸裂した演奏の上で、3人は、とても”たおやかで艶やかな歌声と合唱”を重ね合わせてゆく。”美しく躍り狂う”、そんな表現をしたくなる「Kyrie」を通したステージングだ。

興奮と熱気は、ますます昂ってゆく。激しいビートの雨が、身体へ一気に降り注ぎ出した。Kalafinaの中でも、とくに”攻め”な姿勢を強く感じる「音楽」に触れたとたん、高揚/興奮した感情の昂りは、もう抑えが効かない状態だっ!場内中へ天高く突き上げられた拳の数々が、その想いを象徴しているかのようだ。

 

Kalafinaの心のコスモへ、僕らの魂も絆の道を通って吸い込まれ……

舞台は終盤へ。美しいバラード・ナンバーの「snow falling」では、櫻田泰啓の奏でる、哀愁満載な切々としたピアノの調べのみを背景に、3人が歌声を重ねてゆくスタイルで表現。1曲の中、Wakanaの歌声を先導に、Hikaruの歌声を合図に、Keikoの歌声をきっかけにと、それぞれがリード・パートを取り、そこへ2人が歌声を優しく重ね合わせてゆく形で「snow falling」を表現。音数が少ないからこそ、3人の繊細かつ微妙な声の揺れさえも、楽曲を彩る素敵な表情の一つ一つになってゆく。

終盤では、天空から白々と雪が舞いだした。その白い雪が、淡い光に反射し、キラキラと輝きながら舞い降りてゆく。その美しい光景と、3人の静謐/聖なる歌声の連なりとの重なりは、観る者の心へも、涙の雫を呼び起こしていた。

最後は、「symphonia」を歌唱。これまでのドラマへ一つの終止符を打ち、そしてふたたび、朝焼けと共に新しい物語が始まるように、楽曲もまた、晴々と爽やかな歌の風を運んでくれた。彼女たちの歌声は、また新たに始まる物語のナビゲイター。その癒しの表情を携えた歌声に触れ続けながら、僕らの心のコスモもまた、彼女たちの聖なる心のコスモと同化し、一つに溶け合っていた。いや、むしろKalafinaの世界の中へ、すべての感情が吸い込まれ、何時しか僕ら自身が、Kalafinaの音楽の一部を担う存在になっていたような気持ちだった。

異世界の美しき3人の物語は、まだ終幕の声を上げることはない

アンコールの声・声・声

聖なる美しいハーモニーが、会場中へ響き渡ってゆく。汚れた感情をすべて浄化し、無垢な存在へと導くよう、美しくも力強い「adore」が麗々と広がってゆく。観客たちも、思いきり手拍子をしながら、白い幻想世界へ想いを預けていた。

一転、ゆったりとした。でも、壮大な景観描く「傷跡」が流れ出した。ジンと染み渡る旋律の上で、気持ちを切なく痛く掻きむしる歌を、3人は哀愁味たっぷりに唄いあげていた。異世界への誘いの歌声と調べは、まだまだ終幕に辿り着くことはない。

そして、Kalafinaが奏でた音楽のMagiaに揺れて…。

観客たちへ伝えられた、今回のコンサートを開催して本当に良かった想い。今の自分たちに出来ること。このツアーを通じて感じた気持ち。今の素直な言葉などを届けながら、ついに舞台は最終章の扉の鍵を開け放った。

木々の間からいく筋もの光が射し込むように、「I have a dream」の演奏に合わせ、3人の麗々とした歌声の重なりが、ほっこりとした暖かな光の温もりを届けてゆく。きっと魂が無垢な色になり、幸せと共に天へ浄化されるとき、こんな歌が身を包み込んでくれる気がする。美しい感動が心に満ちてく気分って、きっとこの歌を聴いているときのような気持ちなのかも知れない。

「少しずつ、笑顔が広がっていきますように。心を込めて、心を込めて唄います」

最後に、フォルクローレな旋律を敷き詰めた、たおやかで哀切の感情の色を放ってゆくノスタルジック・ナンバー「光の旋律」が流れ出した。Wakana…Hikaru…Keiko…3人の真っ直ぐで純粋な歌声が、真っ直ぐ、真っ直ぐ、心の奥底へ届いてきた。これまでに描き続けた物語のすべてを一つの魂の塊として昇華してゆくように、「光の旋律」が、僕らの魂を喜びの笑顔へと導いていった。でも正直、僕らは笑顔で泣いていた。「Kalafinaが奏でた音楽のMagia」にすっかり魅せられ、僕らはとめどなく(心に)流れる涙をぬぐうことも忘れ、無垢な想いと汚れ泣き笑顔を口元に浮かべながら、ただただKalafinaの歌に、身を、想いを預けていた。

そして、あらためて音楽のMagiaの答えを抱いて

誰しもが、音楽に救われた経験を持っていることだろう。音楽を心の友と感じ、側に置き続けているだろう。Kalafinaの音楽は、確かに”音楽のmagia”だった。でも、僕らはいつも、その”音楽のMagia”を感じながら日々を過ごしている。そんな「当たり前の幸せ」に、改めて気づかされた気がする。

たとえ、目の前にどんな険しい道が立ち憚ろうと、僕らが音楽のMagiaを忘れない限り、きっと前へ進んでいける。歩んだ一歩の歩幅が僅かだろうと、音楽のMagiaを忘れない限り、僕らは絶対に明日へ進んでいける。それを、Kalafinaは。彼女たちのプロデューサーである梶浦由記は、歌のMagiaを通して僕らに教えてくれた。

TEXT:長澤智典

Kalafina
MaxiSingle「Magia」
発売日: 2011/2/16

【初回生産限定盤】 CD+DVD

SECL-939~SECL-940 / ¥1,575(税込)
<CD>
1. Magia
2. snow falling
3. Magia ~instrumental~
<DVD>
1. Magia (Video Clip)

【通常版】

ECL-941 / シングル / ¥1,223(税込)

【まどか☆マギカ盤(期間生産限定盤)】

ECL-942/シングル/¥1,300(税込)
<CD>
1. Magia
2. Magia ~magic mix~
3. Magia ~TV Version~
4. Magia ~instrumental~

LIVE DVD
Kalafina LIVE 2010 “Red Moon” at JCB HALL
発売日: 2010/12/01

SEBL-125 / DVD / ¥5,565(税込)

Kalafina初のライブDVD

リンク

Kalafinaオフィシャルページ http://www.kalafina.jp/