5月2日のながさきニュース
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長崎新聞
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小中学校「20ミリシーベルト」長崎でも波紋広がる
福島第1原発事故で、文部科学省が決めた小中学校などの屋外活動を制限する放射線量基準「年間20ミリシーベルト」の是非をめぐる議論が、被爆地長崎でも波紋が広がっている。被ばく医療の専門家の見解は一様でなく、被爆者からは「基準決定に至る経過が不透明」と政府の対応に疑問を抱く声が出ている。
政府が定めた基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠。勧告では、緊急時の一般人の許容限度を年間20〜100ミリシーベルト、事故が収束に向かうレベルでは同1〜20ミリシーベルトを目安に対応するよう求めている。だが、子どもにそのまま当てはめると比較的高い放射線量の被ばくを認めることになるとして、専門家の批判が相次ぎ、内閣官房参与の小佐古敏荘東大大学院教授が辞任する一因にもなった。
事故以降、被ばく医療や放射線の情報提供のため度々福島入りしている長崎大大学院医歯薬学総合研究科の山下俊一教授は「(ICRPの)緊急時と収束時の境目を取ったのが『20ミリシーベルト』。非常事態に置かれた現地の状況を踏まえれば(数値には)理論的根拠はある」と一定容認。「事態が収束に向かえば放射線量の数値も下がるとみられるが、今は福島の生活、社会環境などを踏まえると政策的に判断せざるを得ないのではないか」との見解を示した。
日赤長崎原爆病院の朝長万左男院長は「(20ミリシーベルトで)特に何か症状が現れるわけではないが、成長期にある子どもは10ミリシーベルト程度で抑える方向で努力してもよかった」と指摘した。
一方、被爆者団体などの思いは複雑だ。長崎原爆遺族会の正林克記会長は「20ミリシーベルトがいいか悪いかではなく、政府は将来を担う子どもたちのことを考え、安全な環境に移すことを最優先に考えるべきだ」。県被爆二世の会の丸尾育朗会長も「大人と同じ基準を成長期の子どもたちにそのまま当てはめるのはどうか」と疑問を呈した。
政府の基準値決定の経過を批判する意見もある。文科省から基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会は正式な委員会を招集しなかった。長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は「何か便宜的に処置したような印象を受ける。もっと議論をすべきだった」と話した。
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