東北新幹線が全区間で運行を再開し、被災地の復興計画も動き始めている。だが、東日本大震災の避難者は今も12万人を超す。被災者にどう寄り添うべきか。本紙「急接近」で精神科医の野田正彰氏が触れている。「『頑張ろう』という言葉は「もう頑張れない」と思っている人には酷なメッセージ」と。その通りだと思う。
我々マスメディアは「被災者」とくくるが、震災による心の傷も境遇も一人一人違う。頑張れる被災者がいれば、生きることへの執着心を失った被災者もいる。今はがれきの山と化した被災地でも、復興計画が軌道に乗ると、震災の痕跡は表面上は急速に消えていく。その時、「頑張れない被災者」はますます孤立しかねない。
野田氏の言う「悲しみの共有」は被災地と距離を置く者には難しい。せめて私たちにできることは、目に見えるインフラが復興していく速度にごまかされ、被災者を「頑張れ」と励まし、せかさないことだ思う。【金塚祐司】
毎日新聞 2011年5月3日 地方版