今年も、大袋小学校3年生のみんなに理科ボランティアで昆虫の授業をしました。昨日、前に勤務していた片倉工業株式会社の生物科学研究所へカイコをもらいに行ってきました。しかし、その帰途、祖父の訃報を受け取ることになりました。祖父は94歳、今月の29日に95歳の誕生日を迎えるはずだったのですが。天寿とは思いますが、常々「もう少しがんばらなきゃ」と言っていたのでとても残念です。でも、子ども達との約束は果たさなければならないし、生き物は待ってくれませんから、予定通りに準備をして授業を行うことにしました。
今回は、スライドに「生物の歴史」を加えました。みんなに昆虫がどれくらい昔からいるものなのか、時の流れの中で知ってもらいたいと思ったからです。4億年前の両棲類が陸に上がった時代にトビムシなどの原始的な昆虫が現れ、3億年前の恐竜が現れた時代にはトンボの先祖が空を飛びまわっていました。哺乳類が現れた時代にはバッタの仲間(直翅目)が現れています。しかし、完全変態する進化した昆虫(鱗翅目など)が出現するのは、恐竜が絶滅した6,500万年前とずっと後になってからです。私が大学院へ進学した時、恩師である故吉武名誉教授から、「自分の研究が時間的・空間的にどこに位置しているのか、を意識して書きなさい」とまず最初に教えられました。仕事をして行く上でも生きて行く上で、大切な教えだと思っています。大げさに言えば、「歴史の中で自分の役割は何なのか?」と。

生物の歴史
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もう一つ、昨晩から熱湯に水酸化ナトリウムを溶かした液に繭をつけておき、絹糸を取り出す実験も行いました。通常は繭を充分に煮てセリシンを溶かしてフィブロインを取り出すのですが、教室では時間的にも難しく危険なので、水酸化ナトリウムを用いることにしました。しかし、若い研究員が、我々(私及び私よりも少し後輩の研究員)が苛性ソーダと言った時に、何のことか分からなかった時にはビックリしましたね。そりゃ、研究している時に苛性ソーダとは言わないけれど、産業の世界では苛性ソーダといった方が通りが良いんだから常識だよ。さて、水酸化ナトリウム水溶液に一晩つけた繭は中が透けて見え、絹糸もほぐれています。良く水で洗って教室へ持って行き、引っ張りながら撚ると紡ぎ糸のようになります。
こういった、実験的な手法も取り入れていくことが、子ども達の興味を理科につなげて行く上で、とっても重要だと考えています。むかし中学校で教育実習をさせてもらった時に、菌類(キノコ)の授業で「生徒達にキノコ:いわゆるエノキダケを配りたい」と申し出た時、「自費で買うなら構わないけど」と許可してもらいました。キノコもカビ同様に、菌糸から構成されている事を観察してもらいたかったからです。後で、理科のノートに、干乾びたエノキダケをセロハンテープで貼り付けている生徒を見た時、笑っちゃう反面、配って良かったなって思いました。

カイコの卵(蚕種)からカイコについて説明を始めます。 |
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繭を配り始めるとみんなおっかなビックリ。 |
子ども達には繭を配りましたが、今回は実用品種(日本種と中国種のF1:一代雑種)がなかったので、落花生型の日本種の繭と楕球形の中国種の繭が混ざっていて、これはこれで子ども達の興味を惹いたようです。さて、あちらこちらの子ども達のもとで、カイコガが羽化して卵を産みまくっているようです。上手く交尾できた雌が産んだ卵からは、孵化した幼虫もいるようですが、越谷市には桑畑はないと思います。自生している桑の木を探すか、インターネットで人工飼料を購入して飼うしかないかなぁ。どうしても飼いたい人は、私までご相談ください。