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年金積立金が危ない!

月明飛錫

逍花 プロフィール

今日は、以前書いたエントリー「年金革命3 年金基金枯渇の可能性」のフォロー。

以前のエントリーのポイントは以下の3つだった。
  • 高齢化社会においては、年金の積立金は徐々に取り崩されていき、マイナスの資本形成になる。
  • 年金積立金の資産額は、ピーク時の2005年度末150兆円から、2009年度末には128兆円に減少しており、今後も積立金の減少は続く可能性が高い。
  • 「100年安心」をうたった現行の年金計画は非常に楽観的な数字に基づいている。厚生労働省は、賃金上昇率や運用利回りが過去10年の平均で推移した場合、2031年度に厚生年金の積立金が枯渇し、年金制度が破綻するという試算を出している。

それから3ヶ月が経過し、早急に手を打たなければ、年金積立金の枯渇がさらに早まる可能性が出てきた。

1.年金財源2.5兆円を東日本大震災の復旧費用に転用



東日本大震災の復旧に向けた2011年度第1次補正予算案が今日成立し、主要財源として、当初予算で「埋蔵金」から確保した基礎年金国庫負担割合2分の1への引き上げのための臨時財源約2.5兆円が転用されることが決まった。

参考:
http://jp.reuters.com/article/jp_quake/idJPJAPAN-20913520110502
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/sy230422/hosei230422a.pdf

国庫負担が当初予算より減る一方、給付額が同じであれば、不足分は年金積立金から取り崩され、ただでさえ悪化している公的年金の財政状況はさらに悪化する可能性がある。

この点についてはさすがに懸念されており、民主党・自民党・公明党は、転用した年金財源については第2次補正予算の際に見直しも含めて検討を行うことと、社会保障改革と税制改革の一体的検討について政府・与党が実行可能な案を可及的速やかに明確に示すとの合意文書を交わした。

参考:http://www.dpj.or.jp/news/?num=20103
しかし、転用分が確実に穴埋めされる保証はなく、今後注視していきたい。

2.年金積立金取り崩し



年金の給付は、以前は保険料収入と年金積立金の運用益と政府負担で賄っていたが、高齢化社会の進展で年金給付額が増加したことで、2009年度から年金積立金の取り崩しが始まっている。取り崩し額は、2009年度が約4兆円、2010年度が約6兆円だ。

4月24日の日経によると、2011年度についても、年金積立金管理運用独立行政法人は約6兆4千億円の積立金を取り崩す計画である。

(以下、引用)
「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2011年度中に、約6兆4千億円の積立金を取り崩す計画だ。
高齢化で年金給付額が増え、保険料収入や税金で賄えないため。」
参考:http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E0E0E2E3858DE0E1E2E6E0E2E3E39797EAE2E2E2
1で書いたように、もし東日本大震災の復旧に向けた財源に転用した2・5兆円の穴埋めがされなければ、積立金の取り崩し額がその分だけ増える可能性もある。

3.東京電力株下落の影響



年金積立金は、債権や株式で運用されており、そのうち日本株が11.8%を占める。

日本株は震災後に下落しており、さらに年金基金が暴落した東京電力株を保有していることを考えると、2010年度末の積立金の評価額は12月時点の116兆円よりも更に減少することが想定される

4.年金積立金枯渇の可能性



以前のエントリーに書いたように、厚生労働省は、賃金上昇率や運用利回りが過去10年の平均で推移した場合には、2031年度に厚生年金の積立金が枯渇し、年金制度が破綻するという試算を出している。
参考:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0526-6f_0002.pdf

今回の積立金の取り崩しや株価下落の影響で、賃金上昇率や運用利回りが改善しなければ、2031年よりも早く年金の積立金が枯渇する可能性が出てきた。

ちなみに年金積立金が減少するということは、運用益が減るということだ。
年金積立金が150兆円あれば、厚生労働省の計画どおり年率4%で運用できれば6兆円の運用益が発生するが、年金積立金が100兆円であれば4兆円、50兆円なら2兆円と運用益は減っていく。

a年金給付額=b保険料収入+c税金+d運用益+d積立金取り崩し
であるので、dの運用益が減ると、aの給付額を引き下げるか、bの年金保険料を上げるか、cの国庫負担(税金)を増やすか、eの積立金を取り崩していくかしかない。
abcを変えるのは国民の痛みを伴う改革であり、それを避けると選択肢はeしかない。

現状では、
積立金取り崩し→運用益の減少→さらに積立金取り崩し・・・ついに積立金枯渇!
という方向に進んでいる。

先週、政府・民主党が高所得者の基礎年金の減額を検討しているとの報道があった。
(以下、引用)
「政府・民主党は27日、年金制度改革に関し、将来すべての公的年金を一元化した際に創設するとしている月額7万円の最低保障年金について、現役時代の平均年収が600万円を超える人から次第に減額していき、1200万円超の人には支給しない方向で検討に入った。」
参考:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110428k0000m010141000c.html
個人的には、年金制度は現行の世代間給付の仕組みから、自分の払った掛金とそれをもとに得られた運用益で給付額が決定する制度へ転換することが一番だと考えている。
しかしそうでないなら、高所得者への年金給付削減は、年金財政破綻を回避するために必要な策といえるだろう。

【関連記事】
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年金革命4 高齢化と貯蓄率低下

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