2011-05-02 12:33:21

長期金利が低い理由

テーマ:ブログ

現在の日本経済は、長期金利が低く、民間が消費を増やさないのだから、政府が国民から金を借りて、需要を造り出せという主張があるようです。 


確かに、企業の資金需要が低迷しているため、金融機関は国債を買い続けています。 このため、長期金利は1.2%前後と低い。 財政危機が企業の資金需要の低迷で、覆い隠された形です。 内閣府(2010)「平成22年度 年次経済財政報告」によると、日本の長期金利が低い要因は、短期金利・物価上昇率の低さやGDPの低迷であると説明しています。 少子高齢化が進む日本では、国内投資環境が悪くなっているためです。 国内の消費が伸びないとなれば、企業は国内投資に積極的にはなれなくなります。 


個人金融資産は1450兆円程度で、最近ほとんど変化はありません。 それでは最近の国債大量発行に見合う資産はどこにあるのかというと、それは企業にあります。 つまり、企業は借金を減らし、一部では余剰資金をため込んでいるわけです。 これが国債の国内消化を可能にしている根本的な理由です。 いま企業はキャッシュフローが潤沢でカネ余りですが、要は設備投資を抑制しているから滞留しているだけで、海外で設備投資しようとか、M&Aをかけようということになると、そのお金はたちまち減ってしまうことになります。


だから企業が海外展開を進めるとなると、国内で国債を消化する資金が減ってしまう。 数年先には、外国に日本国債を大量に購入してもらわなくてはならなくなる可能性が高い。 企業が、設備投資をせず、お金を貯め込み続けるとしても、それは企業活動が活発ではなく、国内の資金が、国債にブラックホールのように吸い込まれ続けるということで、これは、景気回復が起きないことを意味しているわけです。


つまり、現状のままですと、次の二者択一が起きます。 


(1) 国債の消化が困難になり悪い金利上昇が起きる。 つまり、企業活動が活発化したと思ったら、長期金利が上昇し、外国人投資家に国債を大量に販売せざるを得なくなり、長期金利が跳ね上がる。 景気回復はそこで腰折れになる。


(2) 国債の消化はスムースに進むが、いつまでも企業の活動は活発化せず、不景気はいつまでも続く。


このような二者択一は何としても避けなければならない。 いま政府支出を増大させると、国債の消化が難しくなる時期を早めることになります。 従って、今、政府支出を大きく増やすのは間違いです。 今は、震災復興のために、他の支出を削ったり、増税をして復興資金を調達しながら財政再建の道筋をつけるのがよいでしょう。 震災復興と同時に財政を再建しなくてはならないというわけです。


追記 三橋貴明という経済評論家が、国債発行に見合う資産が民間にもバランスシート上、発生するため、国債発行に支障が起きないかのような記述をブログでしています。

http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10877741600.html

しかし、上の議論から分かるように明らかに誤りです。 同じように、個人金融資産をもっと取り崩して使ってもらえば景気回復するというのも、実は誤りです。 



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コメント

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1 ■無題

これについては日銀がバンバンと民間保有国債を買いきって行きましょう。いっそ全額買い取りましょう。毎年100兆以上買い取っていき、過剰なおカネは預金準備率を上げて日銀当座預金に入れ込んで凍結処理して行きましょう。


2 ■Re:無題

>にゃにゃさん

うーんどうでしょう。 民間保有国債を買い取った途端に国債は発行できなくなりますね。 つまり国債市場を殺してしまう政策なので。 
銀行は現金を持っても、使えないとなると国債が没収されたのと同じことではないでしょうか。 こういうものを買う投資家はいるのでしょうか。

3 ■好きなように暴れろ というので遠慮なく

自分の仕事も碌にせず、門外漢の分際で昼夜問わず、他人のブログにいちゃもんを付け、データ付きで反論されても自分にとって都合の悪い事は全てスルー、もしくは意味不明な逆切れを繰り返し、しまいにはアクセス禁止を喰らった
 アンタの母国ならいざ知らず、日本ではこんな人間の言う事など誰も信用してくれんよ。
 こんな者が経済プロの三橋さんと渡り合おうとしていたなどと聞いて呆れるわ。

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