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警戒区域で家畜を殺処分へ 県が所有者の同意を得て

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 県は24日、東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域で、瀕死(ひんし)状態となった牛や鶏などの家畜を所有者の同意を得た上で殺処分すると発表した。死んだ家畜から害虫が発生し、衛生状態が悪化するのを防ぐ緊急措置。放射線量が高い場所を除く警戒区域の9市町村を対象に25日から作業を始める。ただ、原子力災害に伴う家畜の殺処分は法的な根拠がない上、埋却処理や家畜の損失に対する賠償も課題で、県は国に早急な対応を求める。

 県によると、警戒区域内の畜産農家は376戸。家畜は昨年10月現在、牛3500頭、豚3万匹、鶏68万羽、馬100頭が飼育されている。

 福島第一原発事故に伴う避難指示で、農家は家畜を畜舎に残すか、野放しを余儀なくされ、捜索に入った警察官からは「家畜が死んだり、死にかかったりしている」との通報が相次いでいる。

 県は、気温が上昇し、放置された家畜による衛生状態の悪化を防ぐ観点から早急な対策が必要と判断。国が方針を明確にしていないため、県独自に実施する。

 瀕死状態の家畜は所有者の同意の上で、獣医師が殺処分する。死亡した家畜には害虫の発生を抑える消石灰を散布し、ブルーシートで覆う。現段階で埋却の見通しは立っておらず、今後、処分の在り方が課題となる。

 一方、野放し状態の家畜が野生化し、家屋を荒らしたり、住民が一時帰宅する際に危害を加える懸念も出ている。このため、所有者の意向を踏まえ、殺処分や畜舎に戻すなどの対策を講じる。

 相馬野馬追のために管理されている馬は食用外のため、例外的に除染し、区域外に移送することも検討する。

 作業は防護服を着用した県の職員と獣医師らが放射線量を測りながら進める。25日に南相馬市小高区、26日に田村市都路町で行い、その後は警戒区域内の市町村と日程を調整して実施する。5月上旬までに終えたいとしている。環境放射線量の数値が高い地域では作業を見送る。

 鈴木義仁県農林水産部長は24日、報道陣に対し「畜産の良好な産地で緊急対応を取ることは苦渋の決断」と述べた。農林水産省は「県の判断を尊重し、支援したい」としている。

 家畜の殺処分は、伝染病の場合、家畜伝染病予防法に基づき都道府県が行う。宮崎県の口蹄(こうてい)疫では牛6万8千頭、豚22万匹が処分された。原子力災害の場合は殺処分に法的な根拠がない。県は既に国に対し、死んだ家畜も含めて損害賠償するよう求めている。

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このページは、東日本大震災の2011年4月25日の記事です。

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