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[27134] ISネタん編集【のほほんさんと会長編更新】
Name: 失踪予定者◆75f4b8ea ID:77815be2
Date: 2011/05/01 02:56
あてんしょんぷりーず。


・思いついた短編を不定期に更新していきます。
・ノリだけで書いてます。再構成とか多め。本編サイドストーリー多めになるかと。
・基本続きません。が、気分で続くかもしれません。


5/1
【更識さん家の一夏くん】
のほほんさんと会長編更新。七巻読んでないのになんとまぁ無謀な。



[27134] 【オリ主】もうおまえら結婚しろ【一夏×鈴】
Name: 失踪予定者◆75f4b8ea ID:77815be2
Date: 2011/05/01 02:50
 物語に嵌ったとき、好きなキャラができるのは当然の成り行きだろう。
 ほにゃららは俺の嫁。
 ○○×△△はジャスティス。
 この気持ちが発展してできた言葉たち。きっと、どこかで見たことがあると思う。
 訪れた運命の日。
 高校生の俺は友人の家で、今流行りのISについて、熱く議論を交わしていた。

「だからさ、一夏は鈴とくっつくのが一番いいわけよ」
「あー? 何言ってんだよシャルだろシャル。お前あの天然カップル見ててなんとも思わないわけ?」
「思わないわけないだろ! なんだあの可愛い生き物てめぇら結婚しろ!」
「……おーい、鈴が好きなんじゃないのかー?」

 友人の冷めた視線に、はっと自分を取り戻す。いかん、思わず我を失っていた。

「いやだって幼馴染だぜ? ツンデレだぜ? ツインテールだぜ? 貧乳だぜ?」
「最後、必要か?」
「鈴の一夏に対するかまってちゃんな行動と一夏の天然さがもうね、俺のツボをびんびんに刺激するわけ。わかる?」
「わからん……でもないかなぁ。でもさ、こういうのうって普通、鈴みたいな彼女が欲しいとか言わないか?」
「はっ」

 間抜けな発言を鼻で笑い、蔑みの視線をプレゼント。

「お前はなんにもわかっちゃいない。いいか、対岸の火事って言葉があるように、あくまで見てるのが楽しいわけ。傍観者が最高なわけ。当事者になんかなりたくはないね」
「……とりあえず、二次と三次をごっちゃにしていないのはわかった」
「それに俺、ツンデレ好きじゃないし。あくまで鈴と一夏の組み合わせがだな」
「あ、もう結構」

 おなか一杯という顔をしたので、多分納得してくれたのだろう。俺は満足感を味わいつつ、両手を後ろについて天井を見た。

「原作どうなるかなぁ。一夏と鈴付き合わねぇかなぁ」
「さあ? まぁ、待つしかないだろ」

 とまぁ、お互いに譲れぬ主張をぶつけ合った帰り道。
 俺は車にはねられ、宙を舞った。



 意識が途切れ、次に戻ったとき。俺は、目を開けるのも億劫になるほどの体のだるさを感じていた。
 ……どこだ、ここ。
 見上げた天井は、見覚えがなく。自室でないことだけは確かだった。
 状況を把握しようとあたりを見回す。昔、入院していたばあちゃんを見舞ったときを思い出すような白い部屋に、俺は居た。
 首はかろうじて動くが、手足は動かない。正確には動かせるのだが、痛みを感じるので動かしたくない、といったほうが正しい。
 ……病院か。
 記憶が徐々に戻ってくる。車にはねられた事を思い出し、ああ、だからかと納得した。あのときに感じた衝撃までは、思い出したくはなかった。
 すっと目を閉じる。これほどの僅かな動作でも、俺は疲れを感じていた。
 どうやら一命は取り留めたらしい。それがわかれば、十分だ。
 意識が遠のく。今は、とにかく眠いのだ。次に起きたときに、現状を把握すればいいだろう。
 その時の俺は、まだ事の重大さに気がついていなかったのだ。
 今度目を開いた時は、人の気配を感じたときだ。
 点滴を変えようとしている看護士さんと、目が合った。驚いた様子で、俺の意識があるのかを確認してくる。口を開くのはかったるい。俺は首を動かした。
 途端、看護士は先生を呼び出した。
 連れられてやってきた医者の話では、やはり俺は車にはねられたらしい。退院は少し時間がかかるが、後遺症の心配はないとのことだ。
 悪運が強いと、寝すぎたようにぼんやりとする頭で思う。
 両親には連絡したので、すぐに来るだろうとの事。
 そうして三十分。やってきた両親は、確かに俺の両親だった。但し、何故か知っている姿より若い。
 両親と医師の話を聞いていると、俺は小学三年生らしい。
 痛むのをこらえ、なんとか腕を目に晒す。
 ……なるほど。子供だと納得できる腕の細さだ。
 現状を把握し、俺は結論を出した。



 タイプスリップか。どこのSSだ。



 だが現実はそんなものではなかった。
 退院してから世界を知ったのだが、どうも女尊男卑が過ぎる。確かに女性の権力は社会で強くなってきてはいたが、これはいきすぎだ。
 おまけに、ISだとか篠ノ之束博士なんていう、馴染みある単語がニュースから聞こえてくる始末。
 俺は結論を修正した。



 トリップか。どこのSSだ。



 オタクとしてそういう想像をしたことがなかったわけじゃない。お陰で、パニックにならずにすんだ。人生何が功を奏するかわからないものだ。
 まぁこうなってしまったのなら仕方ない。現実を受け入れ、生きるしかないのだ。
 幸い、ISの世界ならば特に今までと変わりはないだろう。小学校からやり直せると思えば、むしろもうけものと思えばいい。
 そう思いながらあがった小学四年。

「俺、織斑一夏! よろしくな!」
「佐々木椿だ。よろしく」

 ……ふむ……ふむ。
 なるほど、なるほど。
 これが夢か妄想か現実かはわからない。
 だが一つ確定したのは、ここはISの世界だということだ。
 もしも妄想だとしたら、流石オタク脳と自分を褒めたくなる。現実と全く同じ手触り感触を維持したまま、二次元を構築したのだから。
 つまり、神はこう申しているわけだ。

『一夏と鈴が好きならば、くっつけてみろ』

 よろしい。カプ厨オタクの力、舐めてもらっちゃ困る。
 ――その挑戦、受け取った!
 え、他のヒロインはどうなるのかって?
 俺が知ったことか。



『おまえら結婚しろ』



 神からの挑戦を認識してから時は経ち。俺は一夏と友好を深めていた。
 そして、小学五年生。
 とうとう目当ての人物がやってきた。

「鳳鈴音よ! よろしく!」

 心のなかでどれだけキターーー!!! と歓喜したかわからない。俺の胸の中は、期待と興奮が暴風雨である。
 なにせ原作では碌に語られていない子供時代のやりとりが見れるのだ。鼻息が荒くならないわけがない。
 だが俺は熱を体内に押しとどめ、一夏と鈴に積極的に介入することをしなかった。ただ見守っていただけである。
 もしかしたら、鈴が一夏にデレないかもしれないからだ。それは避けなければならない。原作で出れているのだから、俺が余計な手を加えなければデレるだろう。ちょっかいを出すのはそれからで遅くはない。
 予想は当たる。
 一夏と鈴は、それはもう毎日のように衝突した。
 酢豚にパイナップルを入れるか否か。
 どちらのほうが馬鹿か。
 貧乳はどこからが貧乳か。
 最後は議論にすらならずに鈴が粛清した。あまりの早業に、俺にできたことは、一夏に南無と手を合わせることだけだった。
 事あるごとの喧嘩に、教室のやつらも、ああ、またか程度にしか感じなくなったその頃だ。鈴の一夏への態度が変わってきたのは。
 ――オチたか。
 流石は天下の朴念仁にして一級フラグ建築士。さて……俺が動くとするならば、ここからだ。



 鈴はそれはもう素晴らしいツンデレだった。実物を見るとうぬと唸りたくなる。自分に来るのはごめんだが、見ている分にはやはり楽しい。
 さりげなく鈴と一夏を同じ班にしたり、さりげなく一夏と鈴を一緒に帰らせたり、さりげなく鈴と一夏が二人っきりになりそうなら周囲の人間を排除したり。
 そんなさりげない支援ライフを続けたうちの一日だ。

「おっはよー!」

 朝からもの凄く上機嫌な鈴。そのあまりの機嫌のよさは、クラスメイトが声をかけるのをためらうほどだった。
 一種硬直状態になった教室の空気を打開したのは、五分ほど遅れてやってきた一夏だった。

「おはよう」
「あ、おはよう、一夏!」

 先ほどにも増して輝く笑顔の鈴の姿に、全員が悟った。
 ――ああ、やっぱり原因はお前か。
 クラスメイトの顔を見るだけで、心の声が聞こえてきたようである。

「お、おお。なんだ鈴、えらく機嫌いいな」
「べっつにー? そんなことより、ちゃんと約束憶えてなさいよ!」
「わかってるよ」

 盗み聞く必要も無いほど大きな声で、鈴がびしりと釘を刺していた。
 ……約束? ……約束。
 ふむ、これは、あれか。酢豚を毎日食べてくれる? というやつか。
 それとなく確認してみるとしよう。
 なんて聞くか……。いや、確認するだけじゃだめだ。一夏がどういう認識なのかを、知らないといけない。

「お前ら、約束ってどんな約束したんだ?」

 結局直球である。そしてそれをパカンと打ち返そうとする一夏。

「椿? いや、鈴が料理うまく――」
「ば、ばか一夏! 他の人に話しちゃダメ!」
「はぁ? なんでだよ?」
「それくらいわかりなさいよ! ……だ、だって、恥ずかしいじゃない……」
「恥ずかしいって……」

 ここまで確認できれば、把握するには十分だ。一夏が余計なことを言う前に引くことにしよう。

「ああ、悪かった。二人の秘密の約束なんだな。それなら仕方ない」
「へ、変な言い方すんな!」

 顔が真っ赤だ。なんというツンデレ。
 しかし、これは一夏に仕込みをしなければなるまい。
 いわば運命の分かれ目だ。一夏と鈴をくっつけるには、これを逃してはならない。
 ……ふ、腕が鳴る。
 一夏よ、貴様がした約束がどういったものか、思い知らせてやる!





 ネタ以外の何物でもないね!
 IS二次はオリ主ものばかりらしい→流行に乗ってみるか!→酒が入る→やっはーーー!→今ここ。



[27134] 中編
Name: 失踪予定者◆75f4b8ea ID:77815be2
Date: 2011/04/14 00:02
 一夏が鈴からのプロポーズもどきを受けたことが判明した翌日。俺は、作戦を決行することにした。
 休み時間に、一夏とクラスメイトの和人の三人で談笑している時に切り出した。

「そう言えば、俺の従姉の話なんだけど」

 こうして同年代で比べてみるとわかるのだが、一夏は年相応よりも落ち着いている。さもありなん。両親がおらず、あの千冬と二人で暮らしていて、さらに一人でいることが多く家事までこなしているのだ。
 まぁようするに、大人びて見える。この年頃の女子は同い年の男子はガキ臭く見えると言う。ならば、一夏が人気なのも納得がいく話だ。
 ちなみに俺も小学生らしからぬ落ち着きを持っているのだが、女子からの評価は『爺臭い』である。
 ……子供ってやつは。
 実年齢を考えれば、一緒に見られる方が問題なのはわかる。だがしかし、理屈と感情は別物だ。影で泣いた俺を誰が責められようか。
 ――せめて、おじさん臭いにしてほしかった……!!
 これ以上自分を追いつめる、どうでもいい余談はここまでにしておこう。

「椿の従姉?」
「そう。もう成人してるんだけど、この間遊びに来たんだ。その時に土産話をされたんだけどさ」

 もぐもぐと口を動かしながら、少しもったいぶって話しに興味を持たせる。目論見どおり、食いついてきた。

「続き早く言えよ」
「プロポーズされたらしくてさ、それはもう人様には見せられないにやけ面でのろけ話を聞かされたんだよ……」

 うんざりといった表情をしたところ、和人からただただ優しく肩を叩かれた。同情と哀れみに、瞳が濡れている。
 ……目と目で通じ合うとはこのことか。子供の早熟化はあなどれない。
 ちなみに一夏は、のろけ? と首を捻っていた。

「もうこっちが聞いてないのにプロポーズの言葉を何度も何度もリピートされてさぁ。『俺に毎日味噌汁を作ってくれ!』って何時の時代のプロポーズだよ」

 一夏までもが引いていた。今の若い子たちには、流石に古すぎるのだろう。

「気になって調べてみたんだけど、このプロポーズの仕方って、結構国によらないんだよな。料理はその国の特徴的なやつになるけど」
「そうなのか?」
「ああ。まぁそうだな……」

 きょろきょろと教室を見渡し――ちょうどいいとばかりに、鈴を指差した。

「ああ、鈴みたいに中国人だったら、酢豚とかあたりが一般的みたいだな。しかも女性から『酢豚を毎日食べてくれ』とかが多いみたいだ」

 この内容はフィクションです。実際の従姉、国、料理には何の関係もありません。

「げほぉ!」

 一夏が吹いた。理由は知っているが、白々しく心配してみる。

「どうした、大丈夫か? 一夏」
「……椿、もしかして昨日……」
「昨日?」

 流石に露骨過ぎたのか、一夏でも疑いを持ったようだ。だがしかし、俺にはアリバイがある。

「あ、和人、今日もやるか?」
「おう。完成まではまだまだ遠いからな」
「今日もって……」
「ああ、昨日学校が終わってからすぐ俺の家に行って、椿と夜中まで戦艦の模型を作ってたんだけど、それがどうかしたか?」

 説明口調乙である。

「い、いや、なんでもない」
「そうか」

 口では引き下がりつつ、一夏の様子をつぶさに観察する。顔色が赤くなったり青くなったり、目が落ち着かなかったり。不自然な汗まで流れてきていて、混乱が見て取れる。
 ……ふむ。鈍感は鈍感だが、まだ拗らせて皆無神経男にまでは至っていないようだな。鉄はまだ熱い。ならば、叩かねばなるまい。

「話は戻るけど、ようするにこれって、男は胃袋で捕まえろってやつだよな」
「なんだそれ?」
「家庭的な女に男は弱いってことさ」

 俺のご高説も、今の一夏の耳には入っていない。その様子に、俺はほくそ笑む。
 一夏が鈴を意識しているのは確実だった。



 さて、まずは軽くジャブを打ち込んだことだし、次だ。
 改めて確認するまでもないが、鈴はツンデレである。

 ――もしも周りが一夏との仲を囃し立てたら、どうなるだろうか?

 シミュレートによると、真っ赤になって一夏との仲を否定し、一夏がそれに同意して切れる。それはもう見事にぶちきれる。
 この可能性は高い。……というより、ほぼ確実になる。あいつらはそういうやつだ。
 問題はこれで関係を拗らせてしまうことである。ここから関係を発展させる手もあるが、リスクも高い。
 そんなことは、許されない。
 まぁまだ心配しなくてもいいだろう。冷やかされた時に、俺が介入すればいいだけだ。
 それよりも確率が高いのは、約束の真意を尋ねられたときに、鈴がツンを発動させてしまうことだろう。それこそ、本編のように。
 というわけで、鈴にてこ入れをしてみる。

「今日のごみ捨ては椿とね。珍しい」

 ちなみに何時もは俺が工作して鈴と一夏ばっかりにしている。最近は工作せずとも一夏と鈴が大体一緒になるあたり、クラスメイトの順応性は高いと睨んでいた。

「悪いな、一夏じゃなくて」
「べ、別に一夏じゃなきゃやだ! なんて言ってないじゃない!」

 はっはっは、からかわれて真っ赤になるとか可愛いなぁ。しかも否定の仕方が微妙に墓穴っぽいとか、ナイスツンデレ。

「ああ、そう言えば一夏で思い出したけど、何か約束したんだよな?」
「……教えないわよ。あれはあたしと一夏の約束なんだから」

 警戒して睨みつける鈴は、どこかの野良猫のようだった。
 わかっていると手を振る。ならばなんなのかと、鈴が訝しげに眉をひそめる。

「いや、約束で思い出したんだよ。俺の従妹が、子供の頃の約束忘れられてたー、とか泣きついてきてさ」
「わ、忘れられ、てたの?」
「そうらしい。酒飲んで管巻いてたぞ?」

 この従妹はフィクションです。実際の従妹、約束とは何の関係もありません。

「全く、そいつって男の風上にも置けないやつね!」

 などと己のことのように憤慨している鈴。

「いや、それが従妹がそこは後悔してたんだ。忘れられていたのは、アピールしなかった自分にも責任があるって」
「……」
「それにまぁ、全部は忘れられてなかったんだよ。でも一部だけ忘れてて、そこの意味を問われたときに意地張っちゃって、関係こじれたんだと。素直になっておけば恋人になれたかもしれないのになぁ、って言ってたぞ」
「ふん……可能性なら、なんとでも言えるわよ。あたしはそうならないわ」

 だがしかし、俺は聞き逃さなかった。
 鈴が小声で、アピールか……、と呟いていたことを。



 ゴミ袋を焼却炉へ運び、教室へ戻ってくるなり。
 びしりと、鈴が一夏へと宣言をしていた。

「一夏! 今日あんたの家に行くからね!」
「え、なんでだ?」
「どうせあんたまた一人で夕飯なんでしょ? あたしが作りに行ってあげるって言ってるの!」

 流石行動派。思い立ったが吉日の言葉の通り、即座に実行か。
 いいぞもっとやれ。もっと一夏と絡め! そして落とせ!
 が、そこは一夏。一筋縄ではいかない。

「別に鈴が来てくれなくても、俺が食べに行くぞ? 親父さんの料理美味いしな」
「それじゃあたしの料理の腕がわからないじゃない!」
「は?」
「だ、だからその……っ?!」

 説明するのに照れているうちに、自分が教室中の視線を集めていることに気がついたらしい。鈴が焦ったようにツインテールを振り乱し、一夏を引っ張って教室から消えていく。

「ちょ、ちょっとこっちに来なさい!」
「あ、おい! 掃除がまだ――」
「俺がやっとくから、ごゆっくり~」

 ひらひらを手を振って見送ると、幾人かのクラスメイトが手伝うと申し出てくれた。
 厚意を有難く受け入れ、掃除をしている最中。そのクラスメイトたちが、一夏たちの消えていったほうを何度もちら見していることに気がついた。

「一夏たちが気になるのか?」
「気になるって言うか……なぁ?」
「うん、鳳にしては攻めたなって思って」

 ――ほぅ?
 その後も残っているクラスメイトたちが、男女構わずに鈴の一夏に対してのアタックで盛り上がっている。
 鈴が一夏に好意を寄せているのは、公然の秘密というやつだ。あれで気がつかないのは、一夏レベルの朴念仁で、そんな人間が世界中に早々いるわけが無い。
 ようするに、クラスメイトは全員知っているわけだ。
 それでいて、この反応。
 ……ふむ、素質は十分か。これはいけるかもしれない。
 俺は、パンパン! と手を叩き、教卓へと移動。
 全員がこちらへと視線を向けたのを確認し、おもむろに口を開いた。

「諸君。鈴は可愛いと思うか?」

 ……心配はありがたいが、俺は正気だ。
 だから頭大丈夫か? という目で見るのはやめて欲しい。

「もう一度問おう。鈴は、可愛いと思うか?」
「そりゃ、外見なら可愛いと思うけど……」
「性格もさばさばして明るいし、悪くないと思ってるよ?」

 と、溜息。その息には、一夏に惚れてるからなぁ、というやるせなさが含まれていた。

「ならば、普段の勝気さを潜め、一夏の前でもじもじとしている鈴はどう思う? 一夏にツインテールを直してもらい、意識しすぎてカチンコチンに固まっている時は? 体を押し付けているのに、全く意識されなくてむくれている鈴はどう思うのかね!?」

 ああ、言葉にする必要はない。
 皆の表情が、全てを物語っている。

「君たちは今、感じたはずだ。……胸の高鳴りを! ときめきを!! わかるかね諸君! これが、萌えと言うものなのだよ!! さぁ繰り返そうじゃないか、一夏と鈴、即ち一鈴は萌え、一鈴は萌え、一鈴は萌えだと!!」

 最初は小さかった声が次第に大きくなっていく。
 一鈴は萌え。
 一鈴は萌え!
 一鈴は萌え!!!

「そうだ一鈴は萌えだ! ならば我らのやることとはなんだ?! ……決まっている。そうだ! 鈴と一夏の恋を応援し、その光景をにやにやと楽しむことそれのみ!!」

 グッ。拳を握ると、クラスメイト全員が同じ表情をしていた。
 今ここに、洗脳は完了したのだ。
 バッ! と手を広げ、宣言する。

「今ここに、セカン党を発足する!!」

 歓声を持って、結成が受け入れられた。







 もうテンションがおかしい。たまにはこれくらいお馬鹿な話もいいよね?
 ……一夏誘拐の時期って何時だったかなー。小学校高学年~中学一年くらいだった気がしたんだけど。



[27134] 後編
Name: 失踪予定者◆75f4b8ea ID:77815be2
Date: 2011/05/01 02:43
 結局、一夏は約束について訊ねなかったようである。へたれめ。
 ……ここは、こじれないだけマシだと思うしかない。それに、収穫もあった。
 実は鈴、一週間に一度、一夏の家に料理を作りに行くようになったのだ。腕前の進歩を計ってもらうとのことだが、なんて微笑ましい建前だろうか。
 何故俺が知っているかといえば、土曜に一夏と遊んでいたら鈴が来たからに他ならない。
 なに? 俺も鈴の手料理を食べたのか、だと?
 食べるわけが無いだろう!! 鈴と一夏の邪魔など、セカン党員としてできるはずもない!!
 ちなみにセカン党としての活動は、『気がつかれないように一夏と鈴をサポートし、二人の青春をにやにやと楽しむこと』である。

「そういえば、あたし今度の土曜日両親いないのよ」
「そうなのか? 女の子が一人とか危ないなぁ。うち泊まるか?」
「……え? え、え?! い、一夏の家に?!」
「鈴には最近料理よく作ってもらってるし、ほんのお返しだな。どうだ?」

 鈴は迷うそぶりを見せながらも、勢いよく頷くという器用なことをやってのけた。

「う、うん……それじゃあ、お邪魔するわね」

 ――O・TO・MA・RIだとぉ?!

「あ、椿も来るか?」

 なにそれ。
 え、なにそれみたい。超みたい。一夏と鈴が風呂上りの軽装でじゃれあうとかそれ何処の天国?
 ……だがしかし。
 意外と恥ずかしがり屋な鈴だ。俺が行くことで鈴が一夏に甘えなくなることだろう。それでは……それでは意味が無い!
 ジレンマに苛まれながらも、

「い、いや、俺は遠慮しておく」

 渾身の理性を振り絞り、誘いを断った。
 後に、セカン党員は語る。あの時の椿は、血の涙を流していた、と。

「そうか、残念だな」

 本当に残念そうな一夏とは対照的に、全身から湯気を出しそうなほどにカチンコチンになっている鈴。恐らくお泊りに意識が飛んで、こちらの話など聞こえていないだろう。

「あ、じゃあ和人は」
「いいから」

 懲りずに他のやつに声をかけようとした一夏の肩を掴み、席に押し付ける。

「は? なにがだ?」
「いいから」

 クラスメイト全員からそう言われ、疑問符を浮かべながらも頷いた一夏だった。



 ある日。
 俺がうっかり忘れ物を取りに教室に戻ろうとしたところ、教室に人の気配を感じた。
 誰が残っているのかと軽い気持ちで覗き見――すぐさま、扉の影に隠れた。
 鈴が、一夏に膝枕をしていたからだ。
 どういった経緯で膝枕に至ったのか。そんなことは些細なことだどうでもいい。
 あの満足気な笑顔を見ろ! 薄紅に染めた可憐な頬はどうだ! 一夏の頭を撫でる、優しげな手つきも……! 普段のお転婆な鈴のイメージとは一転、完全に恋する乙女の顔ではないか!
 ならば俺がやることは唯一つだ。
 限界まで目を見開き。
 ぬぅうおぉぉ!!!
 脳裏に焼き付けろ、俺の眼球ぅぅぅぅーーーー!!!!

「……ふぅ」

 最新の注意を払い、足音を立てずにその場から去る。
 気がつかれぬように安全圏までやってきたところで、俺は爽やかに額の汗をぬぐう。
 また一つ、大事なメモリアルが増えたことに満足するのだった。



 またある日。
 それは暑い夏の日であった。女子も男子も、学校指定の水着を身に纏い、プールに集合していた。体を消毒し、教師が来るのを待つ自由時間。

「いーちか!」
「おわ! 鈴……お前なぁ、抱きつくなよ」
「なんでよ」
「プールサイドは滑って危ないだろ」

 鈴から体を押し付けられているというのに、一夏は全く動揺した様子がない。平常運転そのものだ。
 ……哀れな。
 文字通り体を張った、健気なアピールを潰されているその様子に、俺は涙を禁じえない。
 貧乳というのも憚れるほどの絶壁。
 そう称される鈴のスタイルは、最早このときには完成していたのだった。……いや、この時に完成して崩れないからこそ、なのだろうか?
 辺りを見ると、じゃれあいを見ていたクラスメイトが鈴と一夏から顔を背け、肩を震わせていた。俺と同じ思考をし――いや何人か笑っているな。

「あんなに勢いつけて……転んだらどうするんだよ」
「あの位で転ぶなんて、一夏ったらやわねぇ」
「鈴の体当たりなんか平気だよ、軽いからな。大体走ってたのは俺じゃなくて鈴だろ?」
「あたしは転ばないわよ」
「だからって走っていいことにはならないぞ。鈴は女の子なんだから、怪我しないように気をつけろよ」

 一夏の気遣いが嬉しいやら恥ずかしいやら。
 鈴は一度一夏の背中に顔を押し当てて隠し、

「せ、先生まだ来ないとか遅いわねぇ。ちょっと一夏肩車しなさい」
「はぁ? なんでだっておい! 返事する前に登るな!」

 持ち前のバランス感覚を発揮し、ネコのように一夏の体を登っていく鈴。
 ……うむ。見事にりんご顔だ。一夏からは隠せても、俺たちには筒抜けである。
 とりあえず拝み、感謝の念を送っておく。
 いやはや、眼福でした。



 とりあえず、恐らくは原作よりも仲良くなったまま中学にあがった一夏と鈴。当然俺も一緒だ。
 そこで弾と合流……というか友人になり、なし崩しに蘭とも仲良くなっていく一夏。そこでぴりぴりするのは、やはり鈴だった。
 できれば、蘭と会うまでには『もう勝負着いてるから』状態にしておきたかったのだが……いやはや、一夏の女心リード能力は底なしのマイナスである。
 近頃は溜息を吐く回数も増えてきた。ちなみに一夏は中学に上がって一層女子からモテてきている。

「ねぇねぇ、織斑君って好きな子いるのかな?」
「好きな子は知らないけど、鈴とは大抵一緒に居るよ?」

 元クラスメイト兼セカン党員お決まりの返事である。
 鈴も鈴で人気者なので、まぁ二重の意味でいい牽制になっている。
 将を討たんとすればまずは馬を射よ。外堀を埋めるのは、決して無駄ではない。
 というわけで、とりあえず弾に応援を頼んだ。
 現時点での鈴最大の敵である、蘭。
 その兄である弾が言うことが、一番説得力があるからだ。
 協力の取り付けは簡単だった。まぁ多少シスコン気味な弾だから、一夏を蘭と離す意味でのってくるに決まっている。

「なぁ鈴、素直にならないと一夏取られちまうんじゃないか?」
「なな、なにい言ってるのよ弾! なんであたしが一夏取られるとかああもうこの馬鹿!」
「せめて最後までちゃんと言えよ……」

 鈴はよほど動揺しているのか、ツインテールを振り乱している。頭が回らないらしく、反論もろくに出てこない。意味のない罵声に変わっていた。
 弾の呆れた指摘を受け、更に頭に血の昇った鈴は、顔を真っ赤にして突っぱねる。

「大体、あたしと一夏がどうなろうがあんたに関係ないじゃない!」
「大有りだ! 蘭があいつにお熱なの知ってるだろ?!」

 絶叫の内容を聞いた鈴は、途端に熱が引くのを感じたようだった。
 目をむき出しにした弾を冷めた目で見。

「……なにそれ。シスコン?」
「うるせぇ! お前に……お前にわかるのか!! 同い年の友人から、お義兄さんと呼ばれる気持ちがぁ!!!」
「う……わ、悪かったわよ……」

 鈴は思わずといった感じに、口から謝罪の言葉を発していた。血涙を流しそうなほどの弾の気迫に、気圧されたらしい。
 ちょっと引いた鈴の様子には気づかず、弾は鷹揚に咳払いをし、

「わかればいい。いいか、一夏は年下には特に優しいというか、甘い傾向があるだろ。蘭もその犠牲になってるわけだが、明らかに鈴と接してるときより気を使ってる」

「う……」

 事実である。けれど、それは裏を返せばまだ気の置けない仲にはなっていないということだ。
 俺の見立てでは、まだまだ鈴が優勢だ。

「とにかく、俺は後悔したくないならツンデレはやめておけ、と忠告はしておくぞ」

 色々な含みはあったものの、友人として感じていたもどかしさから出た忠告。

「誰がツンデレよ!」
「…………お前以外に誰がいるんだ……?」

 後ろで見ていてもはっきりとわかるほど、酔っ払いに認定されそうなくらいに顔を赤らめる鈴。
 無駄だったかなぁと、遠い目をする弾だった。
 
 
 
 さて、炊きつけは順調。
 だが最大の問題が残っている。
 鈴は中学二年の最後で転校してしまうし、一夏もIS学園に行ってしまう。

 ――これでは、俺が鈴と一夏のいちゃラブを見れないではないか!!!

 これは非常に大問題である。
 なので、俺は決意した。
 鈴には日本に残ってもらう。一夏にはIS学園に行ってもらわない。
 ……勿論、本人の意思を確認してから、だが。鈴が残らないのなら、一夏にはIS学園に行ってもらうほかにない。
 物語が始まらない? 俺が知ったことか。
 これは『インフィニット・ストラトスという小説』ではなく、『インフィニット・ストラトスという世界』なのだ。
 物語と言うのなら、俺が目覚めたときから始まっているのだから。






 完。







 この主人公は変態だよ! 変態という名の紳士だよ!
 よし、最後まで主人公ぶれなかったぞ! ……プロローグっぽい感じで終わっちゃったけど!
感想は全て読ませて頂いてます。一括返しですみません。



[27134] 【再構成】更識さん家の一夏くん前編【のほほんさんと会長編】
Name: 失踪予定者◆75f4b8ea ID:77815be2
Date: 2011/05/01 02:57
 目を覚ました一夏がまず感じたのは、左半身を包む温もりだった。
 この一年半ですっかりと慣れた、畳に敷いた布団の感触。
 ――プラス、水色の髪の美少女が伝えてくる、肌の感触。
 ……またか。
 隣に下着姿の女性が寝ているというのに、慌てた様子もなし。一夏はただ頭を掻き、溜息を吐いただけだ。
 所作の諸々に呆れを滲ませつつ、

「起きてください、朝ですよ」

 二度、三度。楯無の体を左右に揺すると、軽い呻きと共に目が開いていく。薄目で一夏の姿を確認した楯無は、穏やかに微笑んだ。

「おはよう、一夏くん」

 下着しか纏っていない肢体を、隠そうともせず。むしろ見せ付けるようし、楯無は伸びをした。背を反っているために、豊かな胸が強調されている。普通の男性ならば、視線が釘つけになるであろうシチュエーションだろう。
 だが、ここに居るのは一夏だ。

「おはようございます」
「いい朝ね」
「そうですね」

 平然と返す。つまらなそうに唇を尖らせた楯無のことなどお構い無しに、布団から起き上がる。
 居候を始めて一年半。楯無の過剰なスキンシップは、これまで幾度も繰り返されてきた。
 普通の思春期ならば、性の衝動が抑えきれずに暴走してもおかしくない。楯無のような美人でスタイル由ならば、むしろ暴走しないほうがおかしいとさえ思う。
 しかしながら、一夏である。
 最初こそドギマギと動揺していたが、次第にそれも落ち着いてしまったのだ。
 結果。

「楯無さん、いい加減服着て寝ないと、この時期じゃ風邪引きますよ?」

 一夏は、枯れた。



 なにやらやることがあるらしい楯無は先に登校。簪は違う学校なので別々だ。
 そして一夏はといえば、家先で本音を待っていた。

「おーりむー!」

 呼びかけに顔だけ振り向くと、手を振りつつ走ってくる本音の姿。手を上げ、軽く挨拶をして合流するのを待つ。
 本音は、後五歩という距離でも減速せず。そのままの勢いで、てやぁ、と一夏に突撃を敢行した。受け止めた一夏の体が揺れるが、本当に微細に、だ。この程度の衝撃ではびくともしない。

「おはよー」
「おはよう、のほほんさん」

 挨拶を交わすと、一夏は抱きついたままの本音を特に気にすることなく歩みを再開する。

「えっへへ~、らくちんらくちん」
「掴まるんだったら、もう少ししっかり乗ってくれ。ちょっと首苦しいぞ?」

 今の本音は、一夏の首に両腕を回しているだけだ。ぶらさがっているだけともいう。本音は背中に回りながら腕に力を込め、一夏の肩に顔を乗せるようにして体勢を安定させる。

「うぃうぃ。運転手さんに従いまーす」
「俺はのほほんさんの乗り物じゃないんだけどなぁ」

 苦笑しながらも、本音を降ろそうとはしない。むしろ背中の本音が落ちないように手を回して支え、学校へと登校していった。



 下駄箱に到着すると、ようやく本音が離れた。クラスは違うので、一夏の教室の前で別れる。
 教室の中にいるクラスメイトは、大体半分といったところだ。一夏は挨拶をしながら席に向かう。鞄を置き、椅子に座ったところで首に腕がかけられた。

「おす」
「よ、弾」
「全く、朝から見せ付けてくれるな、お前ってやつは」

 登校してくる一夏たちを、弾は窓から眺めていたのだ。あれだけ目立てば、それは目にも留まる。
 弾の腕が、一夏の首を絞めていく。本気ではないので息ができないほどではないにしろ、苦しいものは苦しい。一夏は椅子を倒すようにしてスペースを作り手で広げ、無理やり抜け出した。
 弾からすればやっかみ混じりの冷やかしだったのだが、一夏は含むものに気がつかない。

「お前だってあれくらいできるだろ。別に俺が体力自慢な訳じゃない」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「違うのか?」

 不思議そうな表情に、弾は本当に意味が通じていないのだと悟る。一夏の鈍さに半分やけになり、心中を暴露した。

「布仏さんみたいな可愛い子と登校できて、羨ましいってことだよ!」
「え、羨ましいのか? あれ結構大変だぞ?」
「二度も言わせんなよ? 憎らしい……!」

 ギチギチと歯軋りを鳴らしながら、弾が暗黒のオーラを増大させていく。

「しかもお前布仏さんに抱きつかれてとか、羨ましいにもほどがあるぞ!」
「そんなものか? 俺は特になんにも思わないけどなぁ」
「……お前それ、本気か?」
「ん? 何が?」
「だから布仏さんにあんな風に抱きつかれて、何も感じないって本気なのかって聞いてるんだよ!」
「ああ、うん。別になにも」

 しれっと答えた。善し悪しはともかくとして、人間とは慣れる生き物である。一夏は三年間、毎日本音に抱きつかれてきた。もはや一夏にとって、本音に抱きつかれるのは当然のこと。いちいち意識などしていられない。
 ……それは、男としての危機ではないだろうか。
 嫉妬などを通り越し、弾の頭に嫌な可能性がよぎった。ひくつく頬をなんとか笑みの形にし、一夏に詰め寄る。

「な、なぁ一夏。ほんっとうになんにも感じないのか? どんな些細なことでもいいから、な? 何かあるだろ、な?!」
「体温とかは感じるぞ?」
「そういうんじゃねぇ!!!」

 やけに必死な弾に目を点にしながらも、一夏は目を閉じ考え込む。

「んー…………」

 弾が固唾を呑んで見守るなか、本音が抱きついてきた時のことを回想する。
 香り、温もり、鼓動。普段から伝わってくる事柄は当たり前すぎて、候補からすり抜けていく。一分ほどしてようやく一つ思い至り、ぽんと手をうった。

「あ。髪の毛が首に当たってくすぐったいっていうのはあったな」

 ――駄目だこいつ、早く何とかしないと……!
 一夏のあまりのずれっぷりに、戦慄を覚えると共に将来が心配になる、友達想いの弾だった。
 と、

「一夏、弾、おはよう!」
「おう、鈴。おはよう」
「朝から元気だな、お前」

 ツインテールがトレードマークである、一夏の幼馴染、鳳鈴音がやってきた。鞄を持っているところを見ると、今来たばかりらしい。

「あんたらが元気ないのよ。何しけた面並べてるの」
「しけた面って、酷くないか?」
「見たとおりに言っただけよ。いやなら元気出しなさい!」

 弾と同じようにヘッドロックをかけてくる鈴に対し、一夏は若干顔を顰める。本音に触発されたのか、最近の鈴はボディースキンシップを仕掛けてくることが多くなった。
 が、

「鈴って、結構体温高いよな。熱いくらいだ」

 一夏は全く動じなかった。



 学校が終わり、

「おりむー、帰ろう」
「ああ」

 クラスに現れるなり一夏の腕に絡んだ本音に、鈴が唸り……一夏の背中に抱きついた。

「鈴、なんで乗ってくるんだ?」
「うっさいわね。朝おんなじことやってたって、弾から聞いたわよ。あたしがやったっていいじゃない」

 一夏にはよくわからない理屈だが、機嫌が悪そうなので好き勝手にさせておく。
 本音は一夏の護衛というか付き人なので、登下校はほぼ確実に一緒だ。無理なときは楯無が一緒に帰っている。

「あ、そうだ」

 呆れと妬みが入り混じった顔をしている弾に、頼まれていた伝言を話す。

「弾、虚さんがお土産あるから会いたいって言ってたぞ」
「なに、ほんとか?!」
「嘘言ってどうするんだよ。今度の日曜に帰ってくるから」
「わかった、絶対にあけておく!」

 遠ざかっていく一夏と本音、鈴に気がつかないほど、日曜という日に想いを馳せていた弾だったが、ここで重大な事実に気がついてしまった。
 ――あれ? 俺が虚さんとうまくいって、布仏さんと一夏がくっついたら、義兄さんって呼ばれるんじゃ……。
 黙考すること五秒。出した結論に、渋々といった表情をつくる。

「まぁ、こっちならまだ我慢はできるか……」

 一夏が誘拐され、救出されてから一年半。彼を取り巻く環境は、中々に変化を見せていた。






鈍感朴念仁に絶食系をプラスしてみようと思った。
気が付いたら書いていた。駄目だこの作者。のほほんさんと会長書きたいけど、本当にやりたいのは弾と虚だったりする。
誘拐された時期、このお話では中学一年生にしてます。アニメでは学ラン着てたし。原作見返したけど、発見できなかったです。


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