東京電力福島第1原発事故で東電は2日、高い放射線量が計測されている1号機原子炉建屋内に人が立ち入って作業しやすい環境を作るため、フィルター付き換気装置の設置作業を始めた。換気を開始するまでには数日かかる見通しという。同建屋内の空気中の放射性物質を除去し、放射性物質の濃度を10分の1~100分の1に下げることを期待している。
換気装置は、原子炉建屋とつながるタービン建屋に4台設置する。それぞれの換気装置から、直径約30センチの配管2本を原子炉建屋内に引き込む。片方の配管から空気を吸い込んでフィルターに通し、放射性物質を除去した上で、もう一方の配管で建屋内に戻す。
原子炉建屋内ではロボットによる調査で毎時1120ミリシーベルトと、緊急時の被ばく上限である250ミリシーベルトをわずか十数分で超える高い線量値が計測されている。現状のままだと通常の作業装備で立ち入った場合、チリ状の放射性物質でマスクがすぐに詰まってしまうなどの恐れがあるという。
このため、作業員は防護服と酸素ボンベを装着。2人1組の4グループに分かれて原子炉建屋に入り、1組約10分ずつで交代して配管の設置作業をする。
東電は原子炉建屋内を換気して人が入り込める環境にし、原子炉内の水を冷やす循環型冷却システムの新設作業や格納容器の状態をより詳細に把握するための水位計の新設などを行いたい考え。
循環型の冷却システムについては当初、タービン建屋に設置してあるポンプを使って海水を循環させて冷却するシステムの復旧を目指していた。【藤野基文】
毎日新聞 2011年5月2日 11時38分(最終更新 5月2日 13時19分)