株式会社アミューズ
代表取締役会長 大里洋吉 氏
アナログとデジタルの融合…エンターテインメントの理想を追い求めて

●では最後に、今後の夢というか、展望をお聞かせ下さい。
そうですね…ずっと音楽をやってきましたけれど、映画でも例えば『シュリ』とか、海外の映画をやってきて、おかげさまで「アミューズピクチャーズ」の知名度が非常に高くなってきたと思います。ブロードバンドの時代になってきて、やっぱり、音楽と映像とはますます密接になってきますので、そういうことをもっとどんどんやるべきだと思っています。今までもプロモーションビデオがありましたが、ああいうものか、もっと進化したものかはわからないですが「映像と音」もしくは「映像と音とプラスアルファ」が合わさったもので、エンターテインメントにまた一つ大きな流れが出てくると思うんです。そういう流れに対応できるだけの映像技術をアミューズの中に取り込んでいかなきゃいけないと思っています。
それは劇映画にも繋がる話で、映像分野のクリエーターと、ミュージシャンやプロデューサーをいろいろコラボレーションさせて何か作っていくっていうことをやっていきたいです。つまり僕が小学生のころから虜になっている古い映画の影響力と、今度は全く別の影響力を持つメディア、例えばインターネットなどです。全くやり方は違っていますが、要は35mmのフィルムがデジタルの信号になっているというだけで、おおもとは実は変わらないんです。
●そうですね。
そういうメディアに対応していくだけの進化と進歩がアミューズにはなくちゃいけないと思います。それを圧倒的にやりきれた時には、少なくとも最低アジアは完璧な共通マーケットになっていくだろうと思います。あとは欧米諸国のものすごく進んだエンターテインメントに、どこまで我々が肉迫して、一矢報いることができるかということと、逆に、やっぱりいつまでも生のエンターテインメントの原点を忘れちゃいけないと思うんです。例えば三宅裕司がやっているSET(劇団スーパーエキセントリックシアター)とか、岸谷五朗&寺脇康文の「地球ゴージャス」とか、伊東四郎さんと三宅(裕司)がやっているコントライブ、それにサザンオールスターズや福山雅治のコンサートとか、そういう生の魅力がアナログの原点だと思います。音楽でもアートでも、表現者が歌やギターや芝居という形で表現する。お客さんがそこにいて、生でそれを見る。汗をかいている姿もぜったい同じものじゃないし、コピーじゃない。毎日違うんです。コンサートの曲目は一緒でも、歌い方もノリで違うし、お客さんの反応も違えば、トークの内容も変わるんです。この生でアナログで本当の、平安時代や江戸時代から続いているエンターテインメントの原点の仕事と、今言ったデジタルの仕事の両方をうまくバランスを取りながらやっていく。アミューズの原点はそこです。それがうまく融合したものが、陽の目を見るときこそ、アミューズが本当に僕がやりたかった会社になっていくのかもしれないと思います。
●それが理想の形なんですね。プライベートタイムはなさそうですけど、なにをなさってますか。
家で本を読んだり、テレビを見たりする位です。あとはたまに社員を呼んで麻雀をやったり…あとは女房と月に2回行くゴルフぐらいです。あまりゴルフはうまくないので、コンペとかには出ないです。
●健全ですね。じゃあ、基本的には少年時代と変わらないんですね。
そうですね。そういえば、福岡に映画館がたくさん入ってるホテルがあるんですよ。
●キャナルシティですか。
そう、キャナルシティです。福岡では、僕は必ずキャナルシティの中のホテルに泊まるんです。それで例えば、仕事の次の日がオフで、その後また長崎とかで仕事があったりすると、1日そのホテルにいるんです。ホテルの部屋には全部の映画館のスケジュール表があるんです。それでホテルのすぐ横には劇団四季の芝居小屋があって、ライブハウスもあるんです。この映画見て、そのあとこの映画見てって、スケジュールを全部考えるんです。つまんない場合は15分で出てきてこれに間に合うとか…、それで一人でラーメン食べようとか…、ドキドキするんですよ。僕、昔から映画はぜったい一人で観に行ってましたし。
●青森の商店街でやってたことができるっていう…。
そうですね。一人でラーメンを食べて、サンドウィッチをほおばりながら映画を観るんです。映画館の中で、牛乳を飲みながらサンドウィッチとかを食べるのは大好きですね。
●ほんとにお好きなんですねぇ。
そうですね。それで映画を続けて10本観たりするんですよ。僕はわがままで気がどんどん変わるので、映画は本当に一人で行きます。
●それで、例の右側の席から左に足を伸ばして見る。
そうです。それが唯一の僕のプライベートで、好きなことです。だけど、それがどんどんできなくなっていますね。
●この先も大里さんのプロデュースで映画を作る予定はあるんですか?
いっぱいあります。でも秘密です(笑)。映画製作のプロデューサーや映像を作れる優秀なクリエーターをこれからガンガン集めたいと思っています。これは世界に発信できるっていうようなものを絶対作ります。
●スケールの大きそうな話ですね。
いや、ほんとに作りますよ。全世界に仕掛けるつもりです。
●楽しみです。
期待しててください。
●発表されるのを首を長くして待ってますよ。じゃあ本日は長い時間、どうもありがとうございました。

(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)

---少年時代からなんら変わりのない大里氏の好奇心と情熱、そしてさまざまな人々との運命的な出会いが、アミューズ成長の原動力になっていることを改めて知らされるお話しでした。20年以上もトップの座にありながら、「新しい企画はたくさんあります。僕はやりますよ。」と微笑む大里氏の姿に、氏の自信と今後のアミューズのさらなる発展を見る思いがしました。

さて、大里氏の幅広いご人脈のなかからご紹介いただいたのは、渡辺プロ時代の同期生、(株)スペースシャワーネットワーク代表取締役社長の中井猛氏です。日本にビデオクリップ産業を定着させた立て役者、スペースシャワーの軌跡について伺います。お楽しみに!

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キャンディーズの解散、原田真二との別れ、そしてサザンオールスターズとの出会い
アミューズの日進月歩
▼アナログとデジタルの融合…エンターテインメントの理想を追い求めて
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