株式会社アミューズ
代表取締役会長 大里洋吉 氏
アミューズの日進月歩

●渡辺プロもすごかったけど、今のアミューズだってすごいですよね。
いや…。奥深さとスケールはおよびもしません。でも、渡辺プロ時代のことは本当に思い出すと楽しいですね。あの(キャンディーズの)後楽園球場の演出をしたんですが、あんなにおもしろいことはなかったです。野球場でコンサートをやったのが初めてでしたからね。本舞台があって、デベソ(ステージ中央の飛び出してる部分)を作って、そこにキャンディーズが乗ると、乗ったまま横に動くエスカレーターのように動くんです。今だったら電動でやるんだけど、みんなでヒモを引っ張ってるんですよ、300人で(笑)。300人の裏方に、僕はキューを出してるわけですよね。最後の仕掛け花火まで全部僕のキューで動くので、もう最高でした。もう、この業界やめてもいいと思いましたよ。
●それ初めてですか?
初めてです。誰もやったことがなかったですし、後楽園球場を音楽で使うのも初めてでした。しかも屋根がないので、「雨降ったらどうすんだ?」って話になっていました。あの日は、神宮球場まで雨が降っていたんですが、後楽園には雨が来なかったんです。奇跡ですよね。
●外タレではありましたよね。
いや、グランド・ファンク・レイルロードがやったのは、その後なんじゃないかなぁ?
●そうだったんですか。
その後、西城秀樹さんとかピンクレディーがやりましたけど、キャンディーズが初めてでした。なにしろ紙テープを片づけるトラックだけで250台にもなりました。
●うわあ…。ブロードウェイどころじゃない規模だったわけですよね。
5万5千人びっちり入りましたからね。
●すごいですね。
5万5千しかチケットがないのに、現金書留が10万人分集まっちゃって、それを郵便局に行って返金するのが大変でした(笑)。
●先にお金を振り込むシステムだったんですか?
そうです。ちょっとやり方を失敗しました。渋谷郵便局から青い袋で現金書留を郵便局員が持ってきて、1枚ずつハンコを押して、領収書を渡さなきゃいけないので大変でした。
●私書箱にしておけばよかったのに、って感じですね。総額いくら集まったんですか?
全部1000円札で数億円です。見たこともないですよね?
●数億のキャッシュってものをまだ見たことないんで、ちょっとわかんないですけど……。
1000円札で見たのって僕ぐらいでしょうね。
●ところで、現在アミューズはナスダックに上場なさって、ピークはこれからじゃないですか。
なんとかそうありたいです。
●アミューズより大きい音楽制作会社って言ったら…
それはいっぱいありますよ。
●タレントさんやアーティストさんが増えてるのは安定性を考えられてるからですか。
安定性というのは、上場するときに覚えた言葉です(笑)。ポリシーは「来るもの拒まず、去るもの追わず」で、自由に出入り可です。喜多郎がアメリカにマネージメントを移したいということがありましたけど、それもうちの社員がついてアメリカに行っていますから、あまりうちの会社を辞めたアーティストはいないです。聞かないでしょ?
●はい。聞かないですね。渡辺プロで培った自由な雰囲気っていうのが、やっぱりあるんでしょうかね。
僕とサザンオールスターズのメンバーとの関係なんかはぜんぜん変わらないです。
●会社をここまで大きくすることができて、ビジネス的にもここまで急成長を遂げられたっていうのは…。
急成長じゃないですよ。20年かかっていますから(笑)。
●いや、でも20年経ってもぜんぜん成長しない会社いっぱいありますからね(笑)
誰かが誰かを呼んでくるとか、例えばアーティストが増えたとか、自然に自然に増えてきた結果なんです。
●自然に普通にやってきただけなんですか?
何もしなかったような気がしますけどね…。なんか運がいいんです。うちの本当の経営者は山本(久氏:代表取締役社長)さんで、僕は金を使う係なので(笑)。
●そこが会長っていう名前の素晴らしいところですかね。本多宗一郎と藤沢武夫の関係に近いと。
山本さんが経営者で、僕がモノを作らせる方です。言い換えると山本さんが稼ぐ方で、僕は使う方。それは音楽業界ではものすごく有名らしいんですが、本当なんです。
●完全にお互いの役割を分担してその分野に口を出さないようになさってるんですね。
そうですね。原田真二君が辞めてサザンオールスターズが来たころ、事務所が代官山にあって、下のフロアーにヴィエントソングスという出版会社を創った山本さんが入ってきたんです。それで僕、5階から4階に行って「会社を一緒にしようよ」って誘って、アミューズを株式会社にして、専務になってもらったわけです。自分では社長を1年か2年しかやってなくて、すぐに山本さんになってもらって、僕は会長になったんです。会長になってもう20何年ですよ。
●それもいい出会いだったんですね。
いい出会いですね。TBSの青柳さんという方が紹介してくれたんです。「同い年でおもしろい奴がいるから」ってお互いを紹介してくれたんです。
上場も、実は1年ぐらい前に「上場やってみようか?どんなメリット、デメリットがあるのかな?」って考えている時に証券会社の人に「自然の流れですよ」と言われて「それもそうだよね」と思ったんです。もっともっとガラス張りになりたいと思っていた会社だし、それで次の時代にステップアップできたら、それは悪いことじゃないと思ったんです。
●タイミング的にもいい感じですよね。
アーティストに手紙を送っても「いいんじゃない」みたいな感じで誰も文句言わなかったんです。
●上場後初めての株主総会では、総会後に株主懇親会とかやるわけですよね。
やりますよ。
●これまでの上場企業にはないような面白い企画ですよね。
何か、他がやっていないことをやりたいんです。例えばウォルトディズニーの株主総会はファミリーで来て遊園地を開放したり、みんなでパーティーをやったりするらしいんです。本来の株主総会ってそうあるべきだと思うけれど、日本はそこまで開けていなくて、個人株主の人数が少ないんですよね。だからもっとアミューズシンパが増えれば…と思います。サザンオールスターズのファンクラブにもう10何年入ってて、アミューズが大好きで、株を公開したから、夫婦でお金をためて20何万で株を買ってくれた方とかもいるんです。そういう株主の方、僕は大歓迎だと思うんです。
●なるほど。そういうファンは大切ですよね。
そうすると、サザンオールスターズの後輩でポルノグラフィティが出てくると、応援してくれるんです。それはありがたいことです。三宅裕司とか岸谷五朗とか桑田とか福山とか、ああいうファミリーっぽい匂いを感じとってくれるファンクラブの会員の方とか株主の方がいるんですね。
●アーティストも株主なんですね。
そうです。
●アミューズが社員募集すると、それはそれはたくさん応募があるそうですね。
昨年は3万5千人の応募があって国際フォーラムで2回にわけて説明会をやりました。
●すごいですね(笑)
そこで僕や社長がステージに立って、生の質問を受けて答弁するんです。それで参加した学生達がレポートを書くんです。それで書類選考を経て面接になります。今年は当初は武道館を押さえていたんです。
●はははは(笑)すごい…。
でも、やっぱりやめたんです。上場したら逆にそういうことじゃないなと考え方が変わりまして、急遽キャンセルしました。
●実際3万5千人から何人採用されるんですか。
今年は6人です。もちろん中途採用することもあります。 でも、この会社を創ってから、20数年ずっと新卒を採り続けているんです。
●それは会社が年々成長してる証ですよね。
その中からこぼれ落ちて、同期で2人とか1人とかになっていますけどね。僕が30歳の時の20歳とのギャップと、今55歳になっての20歳とのギャップって大きいじゃ ないですか?そこをみんなに埋めていってほしいですね。そういうわけで、だいたいの世代は社内にいます。
●それは大事なことかもしれませんね。
それはやっぱり渡辺プロで学んだことです。

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学校行かずに映画館へ〜おませな少年時代
ブラスバンドに明け暮れた6年間
大学生活で性格も一変!? ESSで明るい社交家として目覚める
映画会社希望のはずが…勘違いで渡辺プロへ!?
楽しい「学校」だった…渡辺プロ時代
キャンディーズの解散、原田真二との別れ、そしてサザンオールスターズとの出会い
▼アミューズの日進月歩
アナログとデジタルの融合…エンターテインメントの理想を追い求めて
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