株式会社アミューズ
代表取締役会長 大里洋吉 氏
学校行かずに映画館へ〜おませな少年時代

●まず、子供の頃のお話を伺いたいんですが、お生まれはどちらなんですか?
青森駅から5分ぐらいの所です。今は「アスパム」(青森県観光物産館)という三角の大きなビルが海辺に建っているんですが、そこの…ほんと100mぐらいのところです。海岸から100m、駅も200mぐらいで、繁華街のど真ん中で育ったんです。 今はちょっと駅前通りもさび付いていますけど、昔は駅前通りが一番の繁華街で、その真ん中ぐらいのちょっと裏側です。そこで育ったんです。そういう環境だから映画館が近くにあって、小学生の頃から映画ばかり観ていました。半径100m以内に東映、東宝、大映と松竹があって、その他歩いて1分ぐらいの所に洋画館が5〜6軒はあったと思います。学校に行かないで映画ばかり観ていましたから(笑)。
●低学年の頃からですか?
そうですね…小学校3〜4年の頃からですね。家には「学校に行く」って言って、学校には「熱が出て病欠します」って担当の先生に連絡して(笑)。それで3本立てとか4本立てをやっている2番館3番館のような安い映画館で朝から夕方3時ぐらいまで観て、家に「ただいま」って帰るんです。
●じゃあ、ほんとに映画少年だったと。
もう完全な映画少年です。小学校の時からずっと「映画をやりたい」と思って育っていましたから。 昭和30年代というのは、もう世界的にも日本的にも映画の最隆盛期で、東映でも松竹でも東宝でも日活でも大映でも、毎週2本ずつ変わるんです。2本立てだったからぜんぶ観るのに忙しいんですよ(笑)。邦画も日活以外はほとんど観ました。日活はなんとなく不良の観る映画というイメージだったからあまり行きませんでしたけどね。
●(笑)
洋画と日活以外の邦画大手5社の作品はタイトルも覚えていないし監督も覚えていないけど、ほとんど観ています。
●どうしてそんな映画好きの小学生になっちゃったんですか?
いや、単に好きなんですよ。漫画もちっちゃい頃からよく読んでいました。小学校1年ぐらいから貸本屋で毎日10冊ぐらい借りてきて、夜寝る前に全部読んで寝るみたいな感じでした。漫画も買うと高いですよね。あのころ貸本って5冊で5円とか10円とかで、まとめて借りると安かったですから。
●そうすると勉強はいつするんですか。
ぜんぜん勉強していないです。漫画と映画から始まって、それから小説に入っていったんです。
●その頃、同じような趣味の友達はいたんですか。 
いや、一人です。 映画も一人で観に行ってました。昼間に行くとガラガラだし、僕は通路の正面向かって右側の通路側で足を通路に出して見る、って決めていました。そこで観ないと気持ち悪いんです。正面に向かってちょっと右側の通路側に足を出せるようにして、こうやって(ちょっとふんぞり返って)観れば邪魔にならないですし。こうやって観る癖がいまだにぬけないんですよ。不思議ですよねぇ。
●なんか試写室に通ってる映画評論家みたいですね(笑)
そうですね(笑)。映画は、ストーリーが好きなんです。 小説を読むように、自分が体験できないようなことが、大人の世界も含めて、ぜんぶ映画の中にあるわけじゃないですか。しかも国内だけじゃなくて、洋画を観るとヨーロッパの海もエーゲ海も全部あるわけですよね。 すごく好きでした。あとは女優さんに惚れたりもしました。それから例えば『禁じられた遊び』とか、『太陽がいっぱい』を観ると、あらゆる音楽が映画から入ってきますよね。それが好きだったんです。
●僕もそうでした(笑)。でも小学生で内容を理解できたんですか?
できました。ベルイマンの『処女の泉』(1960年/スウェーデン)は小学校5年で観ましたがすごく覚えています。
今考えると『処女の泉』という映画には全然そういうニュアンスはないんですが、大人のその非常に秘めやかな「処女」っていう言葉にドキドキしてました。北欧の方の女の子を殺して強姦する、羊飼いの陰惨な話なんです。当時は小学生なんで隠れて見に行ってましたよ(笑)。
●それは隠れますよね(笑)
昼間で一番お客さんがこない時間を選んで観に行ったら、お客さんが3〜4人しかいなかったのですごく覚えてるんです。ベルイマンという監督は後で知りました。
●おませですね。
8人兄弟の一番下だから、ませてました。家も商売やってましたし、ちっちゃい時から大人にいじられていたし、無茶苦茶ませてましたよ。親とか姉さんとかにはわからない顔をするんですが、本当は大人の動きとかやってることとかを全部理解してました。 それはたぶん映画と漫画のおかげです。
●なるほど。
そういう意味では、社会勉強になったと思います。

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